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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】マイクロ波熱分解反応器
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/20 20060101AFI20220824BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20220824BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220824BHJP
【FI】
C10B47/20 ZAB
C10B53/00 A
B09B3/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020503083
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057616
(87)【国際公開番号】W WO2018177997
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】20170495
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519350362
【氏名又は名称】スキャンシップ・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ウィーン,アスゲイル
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102580650(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1536277(KR,B1)
【文献】特開2007-002186(JP,A)
【文献】特表2003-503201(JP,A)
【文献】特開昭60-205169(JP,A)
【文献】米国特許第05366595(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/20
C10B 53/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側パイプ部材(2)と、ハウジング(4)とを備えたマイクロ波熱分解反応器(1)であって、
前記内側パイプ部材(2)が、マイクロ波透過性材料で形成され、第1の開放端(5)と第2の開放端(6)とを備え、
前記ハウジング(4)が、前記内側パイプ部材(2)の周りの環状空間(7,44)を包囲する第1の内表面と、廃棄物入口(10)と、固形物出口(11)と、気体出口(12)と、不活性ガス入口(45)と、マイクロ波導波管(14)のためのポート(13)とを備え、前記廃棄物入口および前記固形物出口が、それぞれ、前記内側パイプ部材の前記第1の開放端および前記第2の開放端と連通し、前記マイクロ波導波管のためのポートが前記環状空間と連通し、
使用中に前記廃棄物入口に進入する物質が前記内側パイプ部材を通って前記第1の開放端から前記第2の開放端へ重力により移送されるように、前記内側パイプ部材が、前記第1の開放端が前記第2の開放端よりも高い垂直レベルにある状態で配置され、
前記気体出口(12)が、前記内側パイプ部材の前記第1の開放端の上流かつ前記ハウジングの前記廃棄物入口の下流に配置され、前記不活性ガス入口(45)が、使用中に不活性ガスを前記環状空間(7,44)内に提供するように配置され、
前記内側パイプ部材(2)が、前記廃棄物入口(10)および前記固形物出口(11)とともに、前記内側パイプ部材(2)の周りの前記環状空間(7,44)とは流体連通していない導管(37)の一部とされており
前記環状空間(7,44)内の前記圧力を監視するための圧力センサ(43)を備える、
マイクロ波熱分解反応器(1)。
【請求項2】
前記廃棄物入口(10)と連通し、熱分解されるべき物質を前記内側パイプ部材の前記第1の開放端に気密な態様で提供するように配置された廃棄物入口アセンブリ(20)と、前記固形物出口(11)と連通し、物質が前記マイクロ波熱分解反応器から気密な態様で出ることを許容するように配置された固形物出口アセンブリ(22)とを備える、請求項1に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項3】
前記廃棄物入口アセンブリおよび前記固形物出口アセンブリの少なくとも一方が、廃棄物入口チャンバ(20)および固形物出口チャンバ(22)をそれぞれ備える、請求項2に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項4】
前記廃棄物入口チャンバおよび前記固形物出口チャンバの各々が、前記各チャンバを隔離するための第1のバルブ(25,29)および第2のバルブ(26,30)を備える、請求項3に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項5】
前記廃棄物入口チャンバおよび前記固形物出口チャンバの各々が、前記各チャンバの不活性ガス浄化のための気体入口(27)と気体出口(28)とを備える、請求項4に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項6】
周囲圧力未満圧力が使用中に前記気体出口において存在しうるように、前記気体出口(12)が、吸引装置(48)を備えたガス処理システム(47)に接続可能である、請求項1ないしのいずれか一項に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項7】
少なくとも周囲圧力を有する不活性ガスが使用中に前記環状空間(7,44)内で存在しうるように、前記不活性ガス入口(45)が、不活性ガス源(46)に接続可能である、請求項1ないしのいずれか一項に記載のマイクロ波熱分解反応器。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のマイクロ波熱分解反応器と、マイクロ波源(49)と、ガス処理システム(47)と、不活性ガス源(46)とを備えた廃棄物処理システムであって、
前記マイクロ波源(49)がマイクロ波導波管(14)によって前記ポート(13)に接続され、
前記ガス処理システム(47)が、前記気体出口(12)に接続されており、前記気体出口(12)における前記圧力が使用中に周囲圧力未満圧力に維持されうるように配置された吸引装置(48)を備え、
前記不活性ガス源(46)が、少なくとも周囲圧力を有する不活性ガスが使用中に前記環状空間(7,44)内で存在しうるように、前記不活性ガス入口(45)に接続されている、
廃棄物処理システム。
【請求項9】
マイクロ波による加熱を受けやすい物質のマイクロ波支援熱分解のための請求項1ないしのいずれか一項に記載のマイクロ波熱分解反応器または請求項に記載の廃棄物処理システムの使用。
【請求項10】
マイクロ波熱分解反応器の構造的完全性を監視する方法であって、
前記マイクロ波熱分解反応器が、マイクロ波透過性材料で形成された内側パイプ部材(2)とハウジング(4)とを備え、前記ハウジングが、前記内側パイプ部材(2)の周りの環状空間(7,44)を包囲し、前記内側パイプ部材と流体連通する気体出口(12)と、前記環状空間と流体連通する不活性ガス入口(45)と、廃棄物入口(10)と、固形物出口(11)とを備え、前記内側パイプ部材(2)が、前記廃棄物入口(10)および前記固形物出口(11)とともに、前記内側パイプ部材(2)の周りの前記環状空間(7,44)とは流体連通していない、導管(37)の一部をなす、方法において、
前記気体出口(12)に対して吸引を行って前記内側パイプ部材(2)の内部で周囲圧力未満圧力を得る工程と、
前記不活性ガス入口(45)を介して前記環状空間に不活性ガスを導入して前記環状空間において周囲圧力または周囲圧力を超える圧力を得る工程と、
前記内側パイプ部材の内部における熱分解反応の間に前記環状空間における前記圧力を監視する工程と、
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波支援熱分解反応器の分野に関し、より具体的には、廃棄物処理のためのマイクロ波熱分解反応器、廃棄物処理システムにおけるかかるマイクロ波反応器の使用およびマイクロ波反応器を備えた廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば船舶上など洋上廃棄物処理および管理は、一般的には、続いて週ごとに行われる陸上への陸揚げのために焼却炉の利用と、食用油、油スラッジ、紙、プラスチック、段ボール、木製パレットなどの廃棄物の収集と、さらに下水汚泥および生ごみの海への排出とを組み合わせることにより行われる。このため、特に輸送量が多い地域において環境フットプリントは非常に大きい。これは、クルーズ船に関連して特に顕著であり、特定の港湾および海域においては、海洋投棄や燃焼排気ガスとしての排出を禁止する多くの法律がある。後者の禁止は、港湾に停泊中の船舶に適用されるため、船上焼却炉の利用を制限するものである。廃棄物の処理および管理に関する同様の問題や課題の多くが大規模な廃棄物処理施設へのアクセスが制限されている農村部、島嶼部などの地域においてみられる。
【0003】
一般的な焼却炉に加えて、熱分解システムも廃棄物処理システムにおいて利用されている。熱分解は、酸素が存在しない状態での高温での有機物質の熱化学分解であり、これらのシステムにおいては、内部プラズマアークまたは外部加熱によって熱分解反応が得られる。焼却炉に代えて熱分解反応器を利用する利点は、大気汚染および残留物の排出の観点から環境への影響が低い点である。チャーに加えて、熱分解反応器は合成ガスおよび/またはバイオオイルを生成し、これらはボイラおよび/またはガスタービンに燃料を供給して熱または電力としてエネルギーを生成するために利用することができる。かかる熱分解反応器を利用した公知の廃棄物処理システムは、焼却炉を利用したシステムよりも多くの点で優れているものの、依然として改善の点で大きな余地が残る。
【0004】
熱分解の分野における近時の重要な発展は、マイクロ波支援熱分解反応器である。これらの反応器においては、マイクロ波は熱分解されるべき物質を加熱するのに利用される。
マイクロ波支援熱分解のためにマイクロ波反応器を利用する廃棄物処理システムが知られている。かかるシステムの例は、例えば米国特許第5,387,321号および米国特許第6,184,427(B1)号に開示されている。廃棄物処理においてマイクロ波支援熱分解を利用し廃棄物をエネルギー用途のために利用する物理的原理、効果および利点は、Lamほか(Energies 2012,5,4209-4232)によって検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、廃棄物処理システムにおける様々なタイプの廃棄物のマイクロ波支援熱分解に適したマイクロ波支援熱分解反応器を提供することにある。特に、本発明は、単純な構造を有し、熱分解される廃棄物の種類およびサイズの多様性に関して堅牢であり、反応器内で熱分解される廃棄物を移動させるための複雑な解決手段に依存しないマイクロ波反応器を提供する。本発明のさらなる目的は、従来技術に係るマイクロ波支援熱分解反応器および廃棄物処理システムの欠点の少なくともいくつかを軽減または除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は添付の請求項および以下において規定されている。
第1の態様においては、本発明は内側パイプ部材と、ハウジングとを備えたマイクロ波熱分解反応器を提供し、
-内側パイプ部材はマイクロ波透過性材料で形成され、第1の開放端と第2の開放端とを備え、
-ハウジングは、内側パイプ部材の周りの環状空間を包囲する第1の内表面と、廃棄物入口と、固形物出口と、気体出口と、不活性ガス入口と、マイクロ波導波管のためのポートとを備え、廃棄物入口および固形物出口が、それぞれ、内側パイプ部材の第1の開放端および第2の開放端と連通し、マイクロ波導波管のためのポートが環状空間と連通している。
【0007】
使用中に廃棄物入口に進入する物質が内側パイプ部材を通って第1の開放端から第2の開放端へ重力により移送されるように、内側パイプ部材が、第1の開放端が第2の開放端よりも高い垂直レベルにある状態で配置され、
気体出口が、内側パイプ部材の第1の開放端の上流かつハウジングの廃棄物入口の下流に配置され、不活性ガス入口が、使用中に不活性ガスを環状空間内に提供するように配置されている。
【0008】
一実施形態においては、このマイクロ波熱分解反応器は、廃棄物入口と連通し、熱分解されるべき物質を内側パイプ部材の第1の開放端に気密な態様で提供するように配置された廃棄物入口アセンブリと、固形物出口と連通し、物質がマイクロ波熱分解反応器から気密な態様で出ることを許容するように配置された固形物出口アセンブリと、を備える。用語「気密な態様(gastight manner)」は、周囲の気体、すなわち空気/酸素が反応器の内側パイプ部材内に吸引されることが防止されるような態様で物質が熱分解反応器の内部へおよび熱分解反応器の外部へ移送されることを意味するものと意図されている。
【0009】
マイクロ波熱分解反応器の実施形態においては、廃棄物入口アセンブリおよび固形物出口アセンブリの少なくとも一方が、廃棄物入口チャンバおよび固形物出口チャンバをそれぞれ備える。
【0010】
マイクロ波熱分解反応器の実施形態においては、廃棄物入口チャンバおよび固形物出口チャンバの各々が、各チャンバを隔離するための第1のバルブおよび第2のバルブを備える。第1および第2のバルブは好ましくはゲートバルブであるが、より一層好ましくはスライドゲートバルブである。
【0011】
マイクロ波熱分解反応器の実施形態においては、廃棄物入口チャンバおよび固形物出口チャンバの各々が、各チャンバの不活性ガス浄化のための気体入口と気体出口とを備える。
【0012】
一実施形態においては、マイクロ波熱分解反応器は、環状空間内の圧力を監視するための圧力センサを備える。
マイクロ波熱分解反応器の実施形態においては、周囲圧力未満圧力が使用中に気体出口において存在するまたは得られうるように、気体出口が吸引装置を備えたガス処理システムに接続可能である。
【0013】
マイクロ波熱分解反応器の実施形態においては、少なくとも周囲圧力を有する不活性ガスが使用中に環状空間内で存在するまたは存在しうるように、不活性ガス入口が不活性ガス源に接続可能である。
【0014】
マイクロ波導波管のためのポートは、マイクロ波源からポートへ案内されるマイクロ波が環状空間内に導入されるように、配置されている。
内側パイプ部材、ハウジングの入口および固形物出口は、内側パイプ部材の周りの環状空間と流体連通していない流路/導管をなしている。
【0015】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、内側パイプ部材は実質的に垂直である。垂直な内側パイプ部材は、廃棄物が内側パイプの上側部分にある状態で内側パイプ部材の下側部分において廃棄物から発生した気体/煙の最適な分配/相互作用を提供する。
【0016】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、気体出口が、内側パイプ部材の第1の開放端の上流かつハウジングの入口の下流に配置されている。本出願においては、用語「上流(upstream)」は熱分解されるべき廃棄物の内側パイプ部材内での移動に対する位置をさす。代替的には、気体出口は、内側パイプ部材の第1の開放端のレベルよりも上方のレベルに配置されるものと規定されてもよい。
【0017】
廃棄物入口は、内側パイプ部材の第1の開放端の上流に配置されるものと規定されてもよく、固形物出口は、内側パイプ部材の第2の開放端の下流に配置されるものと規定されてもよい。
【0018】
一実施形態においては、マイクロ波熱分解反応器は、マイクロ波導波管のための複数のポートを備える。
一実施形態においては、マイクロ波熱分解反応器は使用中にポートを介して進入してくるマイクロ波が内側パイプ部材に対して直接影響を与えることを防止するように、内側パイプ部材とマイクロ波導波管のためのポートとの間に配置されたマイクロ波遮断部を備える。
【0019】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、マイクロ波遮断部はマイクロ波導波管のためのポートに対向する板部材であり、好ましくは少なくともマイクロ波導波管のためのポートと等しい断面積を有する。好ましくは、板部材の断面積はポートの断面積よりも大きい。
【0020】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、ハウジングの廃棄物入口は、第1の端部と第2の端部とを有する供給管を備えた入口部の一部であり、廃棄物入口は、供給管とハウジングの第2の内表面との間に円周空間が形成されるように、ハウジング内に延在しかつ内側パイプ部材の第1の開放端に対向している供給管の第1の端部と供給管の第2の端部に配置されている。円周空間は、内側パイプ部材の周りの環状空間とは流体連通していない。
【0021】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、気体出口は、ハウジングの第2の内表面に配置されており、好ましくは供給管の第2の端部よりも上方のレベルに配置されている。
【0022】
マイクロ波熱分解反応器の一実施形態においては、廃棄物入口チャンバおよび固形物出口チャンバはハウジングの廃棄物入口および固形物出口にそれぞれ接続されている。
第2の態様においては、本発明は、第1の態様の実施形態のいずれかに係るマイクロ波熱分解反応器と、マイクロ波源と、ガス処理システムと、不活性ガス源とを備えた廃棄物処理システムを提供し、
-マイクロ波源がマイクロ波導波管によってポートに接続され、
-ガス処理システムが、気体出口に接続されており、気体出口におけるまたは内側パイプ部材内部における圧力が使用中に周囲圧力未満圧力に維持されうるように配置された吸引装置を備え、
-不活性ガス源が、少なくとも周囲圧力を有する不活性ガスが使用中に環状空間内で存在しうるように、不活性ガス入口に接続されている。
【0023】
一実施形態においては、廃棄物処理システムは、廃棄物を反応器の入口に提供するための手段と、反応器の固形物出口を出る固形物を除去するための手段とを備える。
廃棄物処理システムの一実施形態においては、固形物出口チャンバは、固形物コンベヤを介してマイクロ波熱分解反応器の固形物出口に接続されている。固形物コンベヤは、固形物出口と固形物出口チャンバとの間の流体密接続を提供する。
【0024】
第3の態様においては、本発明は、マイクロ波による加熱を受けやすい物質のマイクロ波支援熱分解のための第1の態様の実施形態のいずれかに係るマイクロ波反応器または第2の態様に係る廃棄物処理システムの使用を提供する。
【0025】
第4の態様においては、本発明は、マイクロ波熱分解反応器の構造的完全性を監視する方法を提供し、反応器が、マイクロ波透過性材料で形成された内側パイプ部材とハウジングとを備え、ハウジングが、内側パイプ部材の周りの環状空間を包囲し、内側パイプ部材と流体連通する気体出口と、環状空間と流体連通する不活性ガス入口とを備え、この方法は、
-気体出口に対して吸引を行って内側パイプ部材の内部で周囲圧力未満圧力を得る工程と、
-不活性ガス入口を介して環状空間に不活性ガスを導入して環状空間において周囲圧力または周囲圧力を超える圧力を得る工程と、
-内側パイプ部材の内部で行われる熱分解反応の間に環状空間における圧力を監視する工程と、
を含む。
【0026】
一実施形態においては、この方法は、
-環状空間内の圧力に基づいてマイクロ波熱分解反応器の構造的完全性を評価する工程を含む。
【0027】
マイクロ波熱分解反応器の構造的完全性を監視する方法はまた、マイクロ波熱分解反応器における漏出を検出する方法と称されてもよい。後者の方法は、環状空間内の圧力に基づいて、または、環状空間と内側パイプ部材の内部との差圧に基づいて、漏出の程度またはサイズを評価するさらなる工程を含んでもよい。
【0028】
用語「廃棄物(waste)」は、マイクロ波反応器における熱分解に適した任意のタイプの物質を包含するものと意図されている。
内側パイプ部材の文脈で用いられる用語「垂直(vertical)」は、内側パイプ部材の中心線の方向をさす。
【0029】
用語「上流(upstream)」および「下流(downstream)」は、内側パイプ部材の第1の開放端から第2の開放端への廃棄物流の移動を基準とする。
本発明は、以下の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】発明に係るマイクロ波反応器の縦断面図である。
図2図1に示すマイクロ波反応器の水平断面図である。
図3図3aは、図1に示すマイクロ波反応器の側面図である。図3bは、図1に示すマイクロ波反応器の斜視側面図である。
図4図1に示すマイクロ波反応器を備えた廃棄物処理システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明に係るマイクロ波反応器の実施形態が図1ないし図4に示されている。反応器はマイクロ波に対して透過性の材料で形成されている内側パイプ部材2を具備する。パイプ部材は上端部5(すなわち、第1の開放端)と下端部6(すなわち、第2の開放端)とを有する。外側パイプ部材3(すなわち、マイクロ波分配部材)は、内側パイプ部材2の周りにかつ内側パイプ部材2と同心円状に配置されており、内側パイプ部材と外側パイプ部材との間で第1の環状空間7を画定している。反応器のハウジング4、より具体的にはハウジングの第1の内表面は、外側パイプ部材の周りの第2の環状空間44を包囲しており、第2の環状空間をマイクロ波導波管に接続するためのポート13を具備する。導波管は、マグネトロンまたはソリッドステートジェネレータなどの適切なマイクロ波源からのマイクロ波を伝送するためのものである。ポート13は、マイクロ波に対して透過性の材料で形成された窓部(図示せず)を備える。窓部は、気体が第1および第2の環状空間から出ることを防止しつつマイクロ波がハウジングに進入することを許容する。ハウジング4は、入口10と、固形物出口11と、気体出口12と、不活性ガス入口46とを具備する。ハウジングの入口および固形物出口は、それぞれ、内側パイプ部材の上端部および下端部と連通するように配置されている。気体出口12は、熱分解プロセスで発生したガスが反応器から退避/流出することができるように、内側パイプの上端部よりも上方に配置されている。不活性ガス入口46は、不活性ガス(通常は窒素であるが、二酸化炭素、アルゴン、燃焼排気ガス等の他の任意の適切な不活性ガスであってもよい)を第1の環状空間および第2の環状空間、すなわち、ハウジングの第1の内表面と内側パイプ部材との間の環状空間に提供するように配置されている。ハウジングの固形物入口10は、第1の端部16と第2の端部17とを有する供給管15を備えた入口部の一部であり、固形物入口は、供給管の第1の端部16に配置されており、供給管の第2の端部17は、ハウジングの内部に延在するとともに内側パイプ部材の上端部5に対向している。円周空間18が供給管とハウジング(すなわち、ハウジングの第2の内表面)との間に形成されている。気体生成物の流れ方向により固形廃棄物が気体出口12に向かって移送されることを回避または最小化するために、気体出口は、供給管の第2の端部17より上方のレベルでハウジングの第2の内表面に配置されている。
【0032】
内側パイプ部材2はハウジングの入口および固形物出口とあわせて、内側パイプ部材の周りの環状空間7、44と流体連通していない流路/導管37の一部をなしている。
外側パイプ部材の壁部はらせん状の構成(すなわち、らせん状のスロット配列)で配置された複数のスロット8(すなわち、開口)を具備する。使用中、ポート13を経由して反応器に進入するマイクロ波は、スロットを経由して内側パイプ部材と外側パイプ部材との間の第1の環状空間7に進入することになる。外側パイプ部材の効果は、内側パイプ部材内の廃棄物に影響を及ぼすマイクロ波のより一層均一な分配を提供するという点である。これにより、物質のより一層均一な加熱が可能となる。
【0033】
有利な効果を提供するものの、マイクロ波分配部材(すなわち、内側パイプ部材2)は反応器の機能にとって必須のものではないことに留意すべきである。かかるマイクロ波分配部材を備えていない反応器の実施形態においては、ハウジングは内側パイプ部材とハウジング(すなわち、ハウジングの内表面)との間に単一の環状空間を画定する。以下においては、第1の環状空間と第2の環状空間とを合わせた空間を一般的に環状空間という。
【0034】
使用状態において、マイクロ波反応器は、ハウジングの入口10と内側パイプ部材の上端部とを有する垂直方向の内側パイプ部材がハウジングの固形物出口11と内側パイプ部材の下端部よりも上方のレベルに配置されるように、配置されている。これは、熱分解されるべき廃棄物が単純に重力を利用して反応器を通過するという点を含めいくつかの利点を提供する。さらに、熱分解の間、内側パイプ部材の下側部分/低いレベルに形成された気体または揮発性生成物(主に炭化水素ガス/蒸気)が、内側パイプ部材を通って上昇し、内側パイプ内のより高いレベルに存在する廃棄物と反応することになる。気体生成物は一般に、ハウジングの入口に近い廃棄物よりもはるかに高いマイクロ波吸収能力をもち、結果として得られる効果は、したがって、この廃棄物におけるマイクロ波吸収の増加である。後者の効果は、廃棄物のより一層効果的な熱分解を可能にするので非常に有利である。この効果は、効果的な熱分解を得るためにこの効果がなければチャーなどのマイクロ波吸収性添加剤の添加を必要とするであろう物質の効果的な熱分解を提供さえしうる。
【0035】
前述のとおり、この具体的な実施形態においては、マイクロ波分配部材のスロットは、らせん状の構成で配置されている。しかしながら、マイクロ波分配に対する有用または適切な均質化効果は、他のスロット構成によって得られてもよい。そのため、さらなる実施形態が想定され、かかるさらなる実施形態においては、スロットは円形、楕円形、多角形などの様々な断面積を有する開口によって置き換えられている。必要条件は、開口が第2の環状空間から第1の環状空間へのマイクロ波の通過を許容するような寸法とされているという点である。さらに、開口は、好ましくは、開口が外側パイプ部材の直径方向両側部において完全に重なり合わないように、配置されている。かかる重なり合いを回避することで、マイクロ波の大半は第1の環状空間において内側パイプ部材の長手方向に反射して分配される。
【0036】
マイクロ波熱分解反応器は、複数の温度センサ42と圧力センサ43とを備える。センサは、反応器の温度状態および気体出口12における(または円周空間18における)圧力と第1の環状空間7および第2の環状空間44における圧力(すなわち、内側パイプ部材とハウジングの第1の内表面との間の環状空間における圧力)を監視する。例えば後述する廃棄物処理システムにおいて用いられると、様々なセンサが適切な制御および監視システム(図示せず)に接続されている。
【0037】
上述したマイクロ波反応器1を具備する例示的な廃棄物処理システムの主要な構成部が図5に示されている。マイクロ波反応器に加えて、このシステムは廃棄物容器19と、廃棄物入口チャンバ20と、固形物コンベヤ21と、固形物出口チャンバ22とを備える。廃棄物容器は、廃棄物出口33を備え、また、廃棄物を廃棄物入口チャンバの入口24に提供するように配置されたスクリュコンベヤ23(スクリュは図示されていない)を有する。廃棄物入口チャンバは、上側バルブ25(すなわち、入口バルブ)と下側バルブ26(すなわち、出口バルブ)とを備える。上側および下側バルブは両方ともゲートバルブであるが、他の適切なタイプのバルブが用いられてもよい。熱分解プロセスの間、内側パイプ部材の内部容積は、周囲圧力未満圧力に保たれる。以下の説明を参照されたい。バルブは、廃棄物の送給の間に空気/酸素が反応器内に(すなわち、内側パイプ部材2内に)吸引されることが防止されるように、廃棄物入口チャンバを隔離することができる。この具体的な実施形態においては、廃棄物がマイクロ波反応器1に進入する前に、窒素(すなわち、不活性ガス)を用いることにより廃棄物から酸素が除去されてもよい。窒素は気体入口27を介して供給されるとともに気体出口28を介して放出される。しかしながら、窒素浄化は有利でありうるが、隔離された廃棄物入口チャンバ内に存在する酸素の量が小さいので窒素浄化は必要条件ではない。固形物コンベヤ21は、マイクロ波反応器の固形物出口に接続されており、密閉型内部スクリュコンベヤ34(図示せず)を備える。スクリュコンベヤは、マイクロ波反応器を出る固形物を固形物出口チャンバ22に移送するために配置されている。ベルトなどの固形物コンベヤにおける固形物の移送のための他の手段が用いられてもよい。固形物コンベヤは、マイクロ波反応器を出る固形物が固形物出口チャンバに到達する前に十分に冷却されることができるような寸法とされている(すなわち、長さおよび/または周囲を有する)。固形物コンベヤは、固形物出口10を出る固形物の冷却を向上させるための熱交換システムを備えてもよいことが意図されている。固形物の冷却の向上に加えて、かかる熱交換システムは、例えば、水の予熱など、様々な補助システムにおいて熱を利用するために用いられてもよい。
【0038】
固形物コンベヤは、固形物出口11から固形物出口チャンバ22への移送の間の固形物の温度を監視するための温度プローブを備える。固形物出口チャンバ22は、上側バルブ29(すなわち、入口バルブ)と下側バルブ30(すなわち、出口バルブ)とを備える。バルブは、酸素または空気が固形物コンベヤ(およびしたがってマイクロ波反応器の内側パイプ部材)に吸引されることが防止されるように固形物出口チャンバを隔離することができる。廃棄物入口チャンバと同様に、固形物出口チャンバに存在しうる酸素はすべて、窒素の利用によって気体入口31および気体出口32(図示せず)を介して除去されてもよいが、これは必要条件ではない。固形物出口チャンバの固形物出口35は、通常は、固形物の一時的な貯蔵のための固形物容器36(図示せず)に接続されている。
【0039】
他の実施形態においては、入口チャンバおよび出口チャンバが廃棄物を送給するステップや固形物を空にするステップを含む全熱分解プロセスの間に酸素または空気が内側パイプ部材2および流路/導管37に吸引されることを防止することができるかぎり、入口チャンバおよび出口チャンバは、出口チャンバを固形物コンベヤの上流に配置するとともに入口チャンバを廃棄物容器の上流に配置するなど、他の位置に配置されてもよい。隔離可能/気密な入口/出口アセンブリを提供するための最も効果的で耐久性のある解決手段を提供すると考えられるものの、ここに記載された入口/出口チャンバは、代替的には、内側パイプ部材における周囲圧力未満圧力により空気が吸引されることを許容せずに廃棄物を反応器の中に(または固形物を反応器の外に)に供給することができる適切な入口/出口アセンブリで置換されてもよい。かかる代替的アセンブリは、例えば、CN103923673AおよびWO2013/077748A1に開示されており、これらは参照により組み込まれる。
【0040】
マイクロ波熱分解反応器の気体出口12は、反応器内で形成された気体生成物の処理および/または貯蔵のためのガス処理システム47に接続されている。ガス処理システムは、少なくとも吸引装置48(すなわち、ガスファン/コンプレッサ/ポンプ)を備える。吸引装置48は、気体出口12において周囲圧力未満圧力を提供する。このように、内側パイプ部材と直接的に流体連通している反応器の内部容積だけでなく内側パイプ部材の内部容積の大部分またはすべてもまた、使用中に周囲圧力を下回る圧力に維持される。周囲圧力未満圧力は、マイクロ波反応器の外部への気体生成物の高度に効率的な移送を提供する。気体出口12における圧力は例えば約0.5~1.5kPa(5ないし15ミリバール)だけ周囲圧力を下回る圧力に維持されてもよい。いくつかの状況においては、内側パイプ部材の最下部における圧力は、気体生成物の形成のため、およびこれらの生成物が晒される気体出口12へ向かう流動抵抗の増大のために周囲圧力を上回る圧力に達してもよいことに留意すべきである。しかしながら、このことは以下に説明する反応器およびシステムの利点に対して影響を与えないと考えられる。
【0041】
吸引装置48によって提供される周囲圧力未満圧力は、内側パイプ部材2または内側パイプの内部容積を周囲(すなわち、環状空間7,44)から隔離する任意の密閉部材の機械的/構造的完全性の喪失が、圧力センサ43を用いることにより環状空間内の圧力を監視することで容易に検出されうることを確保する。機械的/構造的完全性の喪失は、例えば、内側パイプ部材のひび割れまたは密閉不良に起因しうる。圧力センサ43は、廃棄物処理システムがさらなる損傷を受ける前にシャットダウンされるように、制御システムと通信を行う。反応器内に吸引された空気/酸素は気体生成物との爆発的な反応を引き起こしうるので、機械的完全性の喪失を効率的に検出するとともに熱分解プロセスを停止する能力は重要である。
【0042】
機械的/構造的完全性の喪失の間に空気/酸素が気体生成物と混合する残りのリスクを取り除くため、環状空間は、不活性ガス入口45を介した不活性ガス源46からの不活性ガスで充填される。環状空間内の不活性ガス(通常は窒素であるが任意の適切な種類の不活性ガスが用いられてもよい)は、最低周囲圧力(またはそれを超える圧力)に維持され、この圧力は圧力センサ43によって監視される。不活性ガスの圧力は例えば約0.5~1.5kPa(5ないし15ミリバール)だけ周囲圧力より高い圧力に維持されてもよい。環状空間内および気体出口12における圧力のΔΡは例えば1~3kPa(10ないし30ミリバール)の範囲でありうる。機械的完全性が失われた場合、前述のとおり、不活性ガスのみが内側パイプ部材または流路/導管37内に吸引されることになる。不活性ガス源46は、熱分解プロセスが安全に遮断されるまで不活性ガスを環状空間に提供することになる。
【0043】
ガス処理システム47は、吸引装置48に加えて、気体生成物の少なくとも一部を凝縮物と気体に凝縮/分離するための任意の適切な装置またはシステム、気体および凝縮物の貯蔵システム、熱および/または電力を生成するためのガス駆動発電機または石油炉などのシステムを備えてもよい。一実施形態においては、不活性ガス源46は、燃焼排気ガスが不活性ガスとして使用されうるように、熱および/または電力を生成するためのシステムの1つに接続されてもよい。
【0044】
使用状態において、廃棄物は、まず廃棄物容器19に提供される。廃棄物容器は、例えば、反応器への導入に適切な形態で廃棄物を提供するためのシュレッダ、ペレタイザおよび/または廃棄物貯蔵ホッパに接続されてもよく、あるいはこれらの一部を構成していてもよい。送給シーケンスにおいては、廃棄物、好ましくはペレット化された廃棄物は、廃棄物容器の出口33に移送され、廃棄物入口チャンバの上側バルブ25が開放されて、廃棄物が廃棄物入口チャンバ内に導入される。導入後、上側バルブが閉鎖されて廃棄物入口チャンバが気体入口27および気体出口28を介して窒素(または任意の適切な不活性ガス)により浄化される。浄化後、下側バルブが開放されて廃棄物が重力により上側入口10を介してマイクロ波反応器に進入することができる。下側バルブが閉鎖されて廃棄物がマイクロ波源をポート13に接続するマイクロ波導波管からのマイクロ波の利用により熱分解される。
【0045】
反応器内に配置されたレベルセンサが、内側パイプ部材内における物質の適切な低いレベルにいつ到達したかを検出し、上記送給シーケンスが繰り返されて廃棄物の新たなバッチを反応器に提供する。当初は、内側パイプ部材内の廃棄物は、内側パイプ部材全体にわたって同一の熱分解レベルにあるが、物質のバッチの反復的な導入がされたある一定の時間後には、固形物出口11に最も近い物質が完全に熱分解される、すなわち、チャーが支配的となる一方、入口10に最も近い物質はそうではない。
【0046】
ポート13を通ってマイクロ波反応器に進入すると、マイクロ波は、スロット8を介して環状空間7および内側パイプ部材に進入し、内側パイプ部材2内において分配される。熱分解の間、廃棄物は主として固形物と気体物質とに変化し、ここでは固形物は主としてチャーからなり、気体物質は主として炭化水素ガス/蒸気からなる。通常は、熱分解は摂氏300度ないし600度の温度範囲内で行われる。炭化水素ガス/蒸気は、気体出口12を介して反応器から出ることができる。少なくとも廃棄物の下側部分、すなわち、反応器の固形物出口11に最も近い部分の熱分解が完了すると、固形物コンベヤ21が固形物を固形物出口チャンバ22に向けて移動させる。垂直方向に内側パイプ部材を配置させる利点は、プロセスにおいて発生した炭化水素ガス/蒸気が、気体が発生した位置と気体出口との間にある廃棄物を通過することになるという点である。この構成は、上述したとおり廃棄物のマイクロ波吸収の増大を提供する。
【0047】
固形物出口がいっぱいである場合、固形物が固形物出口チャンバを出ることができるように、上側バルブ29が閉鎖されかつ下側バルブが開放される。固形物の排出後、下側バルブ30が閉鎖され、酸素が固形物出口チャンバから除去され、上側バルブ29が開放されて固形物の新たなバッチを受け入れる。通常は、固形物出口チャンバは、固形物の中間貯蔵のための固形物容器に接続されている。
【0048】
廃棄物入口チャンバおよび固形物出口チャンバの双方は、任意選択で、気体/空気をチャンバから排出するための構造、例えば、吸引装置に接続されたガスバルブを備えてもよい。窒素浄化をチャンバの予備排出と組み合わせることによって、窒素ガス必要量が削減されてもよい。
【0049】
内側パイプ部材1において用いられる適切なマイクロ波透過性材料は、ホウケイ酸塩や石英などのガラス材料を含み、窒化ホウ素系のセラミックなど低誘電損失の様々なセラミックを含む。
【0050】
熱分解されるべき物質を加熱するためのマイクロ波を利用することは、この物質が好ましくはある一定の固有の特性を有するべきこと、すなわち、電気双極子を有しかつ12cmないし32cmの波長λのマイクロ波を吸収する高い能力を有することを前提とする。多くの事例において、廃棄物は非常に不均一であって、すべてが効果的なマイクロ波加熱に必要とされる特性を有するわけではない。後者の場合においては、上述した垂直内側パイプ部材を有することの有利な効果にもかかわらず、マイクロ波反応器への導入に先立って廃棄物を補助材料と混合することが必要または有利でありうる。かかる補助材は、例えば、マイクロ波反応器内であらかじめ生成されたチャーでありうる。しかしながら、かかる補助材料が必要とされる場合であっても、垂直内側パイプ部材とその有利な効果により、かかる材料の量を最小化することになる。
【0051】
開示されたマイクロ波熱分解反応器は、廃棄物の廃棄における利用において主として説明されており、ここでは得られた生成物、例えばチャー、オイル、タール等は熱分解プロセスの最終目標ではない。しかしながら、得られた生成物はこのプロセスにおいて生成された熱エネルギーと同様に貴重であり、反応器および廃棄物処理システムが、得られた生成物および/または生成された熱エネルギーが主要な目標であるようなプロセスにおいて用いられてもよいことが意図されている。かかるプロセスは、例えば、木質系原料の熱分解によるバイオ燃料の生成、エネルギー生産等であってもよい。このように、廃棄物処理システムという用語は、バイオ燃料や発電所などのシステムをも包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5