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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220824BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20220824BHJP
   G02B 7/10 20210101ALI20220824BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20220824BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G02B7/08 B
G02B7/10 Z
G03B17/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020527328
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022173
(87)【国際公開番号】W WO2020003921
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018123657
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】592171153
【氏名又は名称】株式会社栃木ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【弁理士】
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】和泉 諭史
(72)【発明者】
【氏名】小泉 健裕
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066916(JP,A)
【文献】特開平07-063970(JP,A)
【文献】特開2013-145272(JP,A)
【文献】特開2016-048283(JP,A)
【文献】特開2004-191668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
G02B 7/10
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を光軸方向に駆動する駆動部と、
前記駆動部を保持し、カムフォロアを有する第1筒と、
前記カムフォロアと係合するカム溝を有する第2筒と、
前記第1筒を光軸方向に付勢する付勢部と、
前記第1筒と前記第2筒との間に配される第3筒と、を備え、
前記第1筒と前記第3筒との光軸方向における位置関係は、焦点距離によって変化する
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記カム溝の幅は、前記カムフォロアの幅より大きい
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記カム溝は、光軸方向における一端には壁を有し、他端には壁を有さない領域を有する
請求項1又は請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記付勢部は、前記第1筒を前記カム溝の前記一端に向かって付勢する
請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記レンズ保持枠は、光軸方向において前記第1筒の外側まで、前記駆動部によって移動可能である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記レンズ保持枠は、光軸を中心とする径方向において前記第1筒と重ならない位置まで、前記駆動部によって光軸方向に移動可能である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記レンズ保持枠は、前記第3筒と当接する状態を有する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記付勢部は、前記第1筒と前記第3筒とを付勢する
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第3筒は、前記レンズ保持枠を光軸方向に案内するガイドバーを保持する
請求項から請求項のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記第1筒は、前記レンズ及び前記レンズとは異なる他のレンズが固定されていない
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記レンズは、フォーカスレンズである
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記駆動部へ電源を供給する電源部を備え、
前記駆動部は、前記電源部からの電源の供給が停止した状態から供給される状態に変化すると、前記レンズを光軸方向に移動する
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記カム溝は、前記第2筒の端部に設けられる
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光軸方向に一体で移動するレンズ群の間に、他のレンズ群を挟んだ構成のレンズ鏡筒がある(例えば、特許文献1を参照)。
従来、このような構成のレンズ鏡筒の場合、一体で移動するレンズ群に挟まれたレンズ群は、可動範囲が限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-33686号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズを保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を光軸方向に駆動する駆動部と、前記駆動部を保持し、カムフォロアを有する第1筒と、前記カムフォロアと係合するカム溝を有する第2筒と、前記第1筒を光軸方向に付勢する付勢部と、前記第1筒と前記第2筒との間に配される第3筒と、を備え、前記第1筒と前記第3筒との光軸方向における位置関係は、焦点距離によって変化する構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本実施形態のレンズ鏡筒の断面図である。
図2】カム筒、第3-5群レンズ筒、モータ移動筒、第4群レンズ枠の分解斜視図である。
図3】カム筒の展開図である。
図4】カム筒、第3-5群レンズ筒、モータ移動筒、第4群レンズ枠の移動状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(全体説明)
図1は、本実施形態のレンズ鏡筒1の断面図である。図中、左側が光軸OA方向被写体側(前側、プラス側)、右側が光軸OA方向ボディ側(後側、マイナス側)である。レンズ鏡筒1は、望遠(テレ)から広角(ワイド)までの撮影状態と、縮筒状態(収納状態、沈胴状態とも言う)とを有し、図示しないカメラボディに着脱可能な交換レンズである。図1の上部はレンズ鏡筒1が最も短い縮筒状態、下部はレンズ鏡筒1が最も長い望遠状態を示す。
【0007】
レンズ鏡筒1は、第1群レンズL1、第2群レンズL2、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5を備える。第4群レンズL4はフォーカスレンズであり、且つ、第3群レンズL3と第5群レンズL5との間に配置される。
【0008】
レンズ鏡筒1は、外周側(外径側)から、ズーム環2、直進筒3、第1群レンズ筒4、カム筒5、固定筒6、第2群レンズ筒7、第3-5群レンズ筒8、モータ移動筒9、第4群レンズ枠10を備える。
ズーム環2は、ユーザのズーム操作にともなって光軸を中心に回転する。
固定筒6は、マウントに対して固定されている。
カム筒5は、ズーム連動ピンMZと直進筒連結ピンMCが設けられている(図3)。ズーム連動ピンMZはズーム環2の内周側(内径側)の直進溝と係合する。直進筒連結ピンMCは直進筒3の内周側の円周溝と係合する。また、カム筒5は、固定筒6のカムフォロア6aと係合するカム溝MKが形成されている。これにより、カム筒5は、ズーム環2に伴って回転しながら、直進筒3とともに固定筒6に対して繰り出される。
直進筒3は、上述したように、内周側に円周溝を有し、カム筒5の直進筒連結ピンMCとバヨネット結合している。また、直進筒3は内周側に直進キー(凸部)が設けられ、固定筒6に設けられた直進溝に係合する。これにより、ズーム環2の回転によってカム筒5が回転繰り出しすると、直進筒3は固定筒6に対して直進する。
第1群レンズ筒4は、第1群レンズ枠4aを保持する。第1群レンズ枠4aは第1群レンズL1を保持する。また、第1群レンズ筒4に設けられたカムフォロアは、カム筒5の第1群カム溝M1に係合する。また、第1群レンズ筒4の外周側には、直進筒3の内周側の直進溝に係合する連結ピンが設けられ、これにより、第1群レンズ筒4は回転せずに直進する。
第2群レンズ筒7は、第2群レンズ枠11を保持する。第2群レンズ枠11は第2群レンズL2を保持する。また、第2群レンズ筒7に設けられたカムフォロアは、カム筒5の第2群カム溝M2と係合する。さらに、第2群レンズ筒7の外周側には直進キー(凸部)が設けられており、固定筒6の直進溝と係合する。これにより、第2群レンズ筒7は回転せずに直進する。
第3-5群レンズ筒8は、モータ移動筒9の外周側に配置され、光軸方向に移動可能な移動筒である。詳細は後述する。モータ移動筒9は、第3-5群レンズ筒8の内周側に配され、光軸方向に移動可能なである。詳細は後述する。
第4群レンズ枠10は、第4群レンズL4を保持するレンズ枠である。
絞り機構20は第3-5群レンズ筒8の先端に取り付けられている。
【0009】
ズーム環2を回転すると、カム筒5は、ズーム環2と同じ角度を回転しながら、繰り出される。カム筒5の回転により、第1群レンズL1、第2群レンズL2、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5はそれぞれのカム溝に沿って光軸方向に直進する。さらに、第4群レンズL4は、後述するステッピングモータ12の駆動力によっても光軸方向に移動可能である。
【0010】
次に、カム筒5、第3-5群レンズ筒8、モータ移動筒9、第4群レンズ枠10について詳細に説明する。図2はカム筒5、第3-5群レンズ筒8、モータ移動筒9、第4群レンズ枠10の分解斜視図である。
【0011】
(カム筒5)
図3はカム筒5の展開図である。カム筒5には、複数のカム溝が形成されている。図3において実線は外面に設けられているカム溝、又は貫通しているカム溝であり、点線は内面に設けられているカム溝である。
それぞれのカム溝には、対応するカムフォロアが係合する。図3においてそれぞれのカム溝内の点線の丸は、カムフォロアの位置を示し、Sが記載された丸は縮筒状態でのカムフォロアの位置、Wが記載された丸は広角状態でのカムフォロアの位置、Tが記載された丸は望遠状態でのカムフォロアの位置、Mが記載された丸は広角と望遠との間の状態でのカムフォロアの位置を示す。
【0012】
第1群カム溝M1は、第1群レンズL1を保持する第1群レンズ筒4を駆動するカム溝である。
衝撃カム溝M1aは、衝撃対策のために設けられたカム溝である。衝撃カム溝M1aは、縮筒から広角の状態で、第1群レンズ筒4に備えられた衝撃対策ピン(図示せず)と係合する。
第2群カム溝M2は貫通溝で、第2群レンズ枠11を保持する第2群レンズ筒7を駆動するカム溝である。
カム溝MKは、固定筒6から延びるカムフォロア6aと係合し、固定筒6に対してカム筒5の回転により、カム筒5を回転繰り出しさせるカム溝である。
第3-5群カム溝M35とモータカム溝MMについては後述する。
【0013】
また、カム筒5には、ズーム環2の内面に設けられた直進溝と係合するズーム連動ピンMZ、及び、直進筒3の内面に設けられた円周溝と係合する直進筒連結ピンMCが設けられる。
【0014】
(第3-5群カム溝M35)
第3-5群カム溝M35は、第3-5群レンズ筒8を駆動するカム溝である。第3-5群レンズ筒8は、前端に第3群レンズL3、後端に第5群レンズを保持する。第3-5群カム溝M35の幅は、第3-5群カム溝M35内を移動する後述のカムフォロア8aの幅(直径)と略同様である。言い換えると、ある焦点距離でカムフォロア8aが第3-5群カム溝M35内の所定の位置にいる場合、カムフォロア8aは公差の範囲内で光軸方向に移動することはできるが、公差の範囲以上に光軸方向に移動することはできない。
【0015】
(モータカム溝MM)
モータカム溝MMは、モータ移動筒9を駆動するカム溝である。
モータカム溝MMは、後述のカムフォロア9aと係合する。レンズ鏡筒1が望遠、広角、縮筒と状態を変化させる際に、カムフォロア9aがモータカム溝MM内を移動する。モータカム溝MMは、光軸方向における一端が開放されている。言い換えると、モータカム溝MMの光軸方向における一端には、カム溝の壁がない。モータカム溝MMの光軸方向における他端には、カム溝の壁がある。図3で示す例では、モータカム溝MMの後端が開放されている。なお、モータカム溝MMがカム筒5の前方に形成される構成の場合は、モータカム溝MMの前端が開放されていてもよい。
また、モータカム溝MMの一端は、全ての領域において開放されていてもよいし、一部の領域において開放されていてもよい。図3に示す例では、縮筒状態側では両端に壁を有し、それ以外では一端(後端)が開放されている。
また、両端に壁を有する領域においてもモータカム溝MMの幅は、カムフォロア9aの幅(直径)よりも広く(大きく)、カムフォロア9aの光軸OA方向の幅の約2倍以上となっている。これにより、カムフォロア9aは光軸OA方向に移動することができる。言い換えると、ある焦点距離でカムフォロア9aがモータカム溝MM内の所定の位置にいる場合、カムフォロア9aは公差の範囲以上に光軸方向に移動することができる。詳細は後述する。
【0016】
なお、図3の第3-5群カム溝M35において、カムフォロア8aの縮筒状態の位置(Sが記載された丸の位置)を8S、広角状態の位置(Wが記載された丸の位置)を8W、望遠状態の位置(Tが記載された丸の位置)を8T、広角と望遠との間の位置(Mが記載された丸の位置)8Mで示す。
また、モータカム溝MMにおいて、カムフォロア9aの縮筒状態の位置(Sが記載された丸の位置)の前側を9S1、後側を9S2、カムフォロア9aの広角状態の位置(Wが記載された丸の位置)の前側を9W1、後側を9W2で示す。
カムフォロア9aの望遠状態の位置(Tが記載された丸の位置)を9Tで示す。カムフォロア9aの広角状態と望遠状態との間の位置(Mが記載された丸の位置)の位置を9Mで示す。
【0017】
(第3-5群レンズ筒8)
図2に戻り、第3-5群レンズ筒8は、第3-5群レンズ筒本体8Aと、第3-5群レンズ筒本体8Aの後側に取り付けられる第3-5群レンズ筒後端部8Bとを備える。
第3-5群レンズ筒本体8Aの前側には、図1に示す(図2では不図示)の第3群レンズ保持枠81が保持されている。第3-5群レンズ筒後端部8Bの後側には、図1に示す(図2では不図示)の第5群レンズ保持枠82が保持されている。
第3-5群レンズ筒8の外面からは、同一円周状の互いに略120度の位置に配置された3つのカムフォロア8aが外周側に向かって設けられている。カムフォロア8aは、固定筒6の図示しない直進溝を貫通して第3-5群カム溝M35と係合している。また、第3-5群レンズ筒8の外周面には、同一円周状の互いに略120度の位置に配置された3つの直進キー(凸部)が設けられており、第2群移動筒7の内面に設けられた直進溝7cが係合する。以上より、第3-5群移動筒8は、回転せずに直進移動する。
第3-5群レンズ筒8の内周側には、第4群レンズ枠10をガイドする主ガイドバー8cと、副ガイドバー8dとが光軸OAに沿って延びている。また、主ガイドバー8cと副ガイドバー8dとは、第3-5群レンズ筒8の前端と後端とに支持されている。
第3-5群レンズ筒8における同一円周状の互いに略120度の位置には、長穴8bが貫通して形成されており、後述するカムフォロア9aが長穴8bに配される。
【0018】
(モータ移動筒9)
モータ移動筒9の外面には、同一円周状の互いに略120度の位置に配置された3つのカムフォロア9aが外周側に向って設けられている。
カムフォロア9aは、第3-5群レンズ筒8に設けられた長穴8b及び固定筒6の図示しない直進溝を貫通してモータカム溝MMと係合している。また、モータ移動筒9は直進キー(凸部)が設けられており、第3-5群レンズ筒8に設けられた直進溝と係合する。以上より、モータ移動筒9は、回転せずに直進移動する。
モータ移動筒9には、ステッピングモータ12が取り付けられている。
ステッピングモータ12から光軸OA方向に、外周にねじ溝が切られた回転軸12aが延びている。
【0019】
(第4群レンズ枠10)
第4群レンズ枠10は、図2に示すように、第4群レンズL4の外周を覆う枠部10aと、枠部10aから前側に延びる主ガイドバー保持部10bと、枠部10aにおける主ガイドバー保持部10bに対して光軸OAを中心とした逆側(光軸OAを中心として約180度の位置)に設けられた副ガイドバー保持部10cとを備える。なお、副ガイドバー保持部10cは、必ずしも主ガイドバー保持部10bに対して光軸OAを中心とした約180度の位置に設けられていなくてもよい。
【0020】
主ガイドバー保持部10bは、主ガイドバー8cを保持する。第4群レンズL4(第4群レンズ枠10)は主ガイドバーに案内されて光軸OA方向に移動可能である。副ガイドバー保持部10cは、U字形状をしており、副ガイドバー8dが通っている。主ガイドバー保持部10bは、第4群レンズL4(第4群レンズ枠10)の回転を防止する。なお、副ガイドバー保持部10cは、第4群レンズL4の回転を防止できれば、形状はU字形状でなくてもよい。
主ガイドバー保持部10bは、第4群レンズL4の倒れ(傾き)を防止するために光軸OA方向に所定の長さを有する。例えば、主ガイドバー保持部10bは、ステッピングモータ12の回転軸12aより長い。主ガイドバー保持部10bは、第4群レンズL4の沈胴状態(又は広角状態)から望遠状態への移動距離よりも長くてもよい。これにより、主ガイドバー保持部10bと主ガイドバー8cとの係合長が長くなり、第4群レンズL4の倒れ(傾き)を防止することができる。なお、図1図2では、主ガイドバー保持部10bは枠部10aより前側に延びている。
【0021】
枠部10aにおける主ガイドバー保持部10bの近傍には、ラック取付部10fが設けられている。ラック取付部10fには、ラック10dが取り付けられている。ラック10dは、断面U字型で内面にねじ溝が切られたモータ係合部10eを備える。モータ係合部10eの内面のねじ溝は、ステッピングモータ12の回転軸12aの外面にねじ溝と噛合している。これにより、ステッピングモータ12が駆動して回転軸12aが回転すると、第4群レンズL4は光軸方向に移動することができる。
【0022】
(バネ部材13)
第3-5群レンズ筒後端部8Bの前面と、モータ移動筒9の後面との間には、互いに略120度の3か所に、バネ部材13a、13b、13cが配置されている。以後、バネ部材13a、13b、13cを区別せずに説明する場合は、バネ部材13と記載する。バネ部材13は、モータ移動筒9を第3-5群レンズ筒後端部8Bに対して前側に付勢している。言い換えると、バネ部材13は、モータ移動筒9と第3-5群レンズ筒後端部8Bとが離れる方向に付勢する。これにより、バネ部材13によってカムフォロア9aは前方に付勢されるので、カムフォロア9aはモータカム溝MMの前方の壁に当接する。つまり、バネ部材13は、モータ移動筒9をモータカム溝MMの前方の壁に向かって付勢する。よって、レンズ鏡筒1の焦点距離が変更された場合、カムフォロア9aはモータカム溝MMの前方の壁に沿って移動することができる。なお、バネ部材13の付勢方向は上記に限定されず、モータカム溝MMの壁に向かって付勢できればよい。
ここで、カム筒5のモータカム溝MMは、後端側が上述のように開放している。又は、モータカム溝MMの幅はカムフォロア9aの幅(直径)より広くなっている。したがって、モータ移動筒9に光軸OA方向でいうとマイナス側(ボディ側)に力が加わった場合、カムフォロア9aはモータカム溝MM内で光軸OA方向に移動可能である。
また、第3-5群レンズ筒8には主ガイドバー8c及び副ガイドバー8dが設けられている。このように、第4群レンズL4を案内する主ガイドバー8cと、第4群レンズL4を駆動するステッピングモータ12を搭載したモータ移動筒9を付勢するバネ部材13と、が同じ部材(第3-5群レンズ筒後端部8B)に設けられているため、第4群レンズL4を高性能に移動することができる。
また、バネ部材13は円錐型のバネ(円錐コイルバネ)である。円錐コイルバネを利用することで、バネが縮んでいる状態でもバネの姿勢が崩れないため、モータ移動筒9と第3-5群レンズ筒8とを高性能に付勢することができる。つまり、バネ密着時の座屈を抑止でき、安定した姿勢を保つことができる。
また、第3-5群レンズ筒本体8Aに第3-5群レンズ筒後端部8Bを固定するためのビス14a、14b、14cと、バネ部材13a、13b13cと、は略同一直線上に配置されている(図2)。つまり、バネ部材13aは、ビス14bと14cよりもビス14aの近くに配される。これにより、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9とを正確に付勢することができる。
また、カムフォロア9aと同じ回転角度位置にバネ部材13を配置することで、OA方向に力が加わっても、第3-5群レンズ筒8に対して安定してモータ移動筒9を移動することができる。
【0023】
レンズ鏡筒1において、ズーム環2を回転させると、カム筒5も回転する。このとき第3-5群レンズ筒8及びモータ移動筒9はそれぞれの第3-5群カム溝M35及びモータカム溝MMによって光軸OA方向に移動する。
また、ステッピングモータ12が駆動すると回転軸12aが回転し、それによってラック10d、第4群レンズ枠10及び第4群レンズL4が、モータ移動筒9に対して光軸OA方向に移動する。このとき、第4群レンズ枠10の主ガイドバー保持部10bは主ガイドバー8cによって、副ガイドバー保持部10cは副ガイドバー8dによって直進ガイドされる。
このように、第4群レンズL4は、モータカム溝MMに沿って光軸方向に移動可能であり、かつステッピングモータ12によっても光軸方向に移動可能である。
【0024】
図4は、カム筒5、第3-5群レンズ筒8、モータ移動筒9、第4群レンズ枠10、ステッピングモータ12の駆動状態を説明する図である。図3及び図4を使って説明する。
【0025】
図4(a)は、望遠(テレ)における無限遠の状態を示す。
第3-5群レンズ筒8及びモータ移動筒9との光軸OA方向の相対的な位置関係は、第3-5群カム溝M35におけるカムフォロア8aと、モータカム溝MMにおけるカムフォロア9aとの間の距離S1によって決まる。
ここで、バネ部材13によってカムフォロア9aは前方に付勢され、モータカム溝MMの前端の壁と当接している。
したがって、カムフォロア8aの前端とカムフォロア9aの前端との間の距離は、図3及び図4(a)に示すS1となる。
【0026】
図4(b)は、望遠における至近の状態を示す。図4(a)の望遠且つ無限遠の状態において撮影距離(被写体距離、フォーカス位置)が至近に変更されると、ステッピングモータ12の駆動によって、第4群レンズL4及び第4群レンズ枠10は図4(a)に示す矢印に沿って前側に移動し、図4(b)の状態になる。
主ガイドバー保持部10bは、前述のように、第4群レンズL4の倒れを防止するために、主ガイドバー8cとの係合長が長く、枠部10aより前側に延びている。
したがって、第4群レンズL4及び第4群レンズ枠10が前側に移動すると、図4(b)に示すように主ガイドバー保持部10bの先端はモータ移動筒9の先端よりも前方に突き出る。つまり、主ガイドバー保持部10b(第4群レンズ枠10)は、ステッピングモータ12によって、モータ移動筒9の光軸方向における外側まで移動可能である。
【0027】
図4(b)に示すように主ガイドバー保持部10bの先端がモータ移動筒9の先端よりも前方に突き出た状態で、ステッピングモータ12の電源がOFFにされると、第4群レンズL4(第4群レンズ枠10)はモータ移動筒9に対して光軸OA方向に移動不能となる。言い換えると、第4群レンズL4とモータ移動筒9との相対的位置関係が固定される。
【0028】
実施形態のレンズ鏡筒1は、ズーム環2を回すことで、縮筒状態(収納状態)にしたり焦点距離を変更したりすることが可能である。ゆえに、主ガイドバー保持部10bの先端がモータ移動筒9の先端よりも前方に突き出た状態(図4(b)の状態)で、撮影者がズーム環2を回転させることが考えられる。撮影者がズーム環2を回すことで、第3-5群カム溝M35やモータカム溝MMの形状に従い、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9との相対的な位置関係は変化する。
【0029】
図3に示す距離S1は、望遠の状態での第3-5群カム溝M35に配されたカムフォロア8aの前端とモータカム溝MMに配されたカムフォロア9aの前端との光軸OA方向の距離である。図3に示す距離S2は、縮筒状態での第3-5群カム溝M35に配されたカムフォロア8aの前端とモータカム溝MMに配されたカムフォロア9aの前端との光軸OA方向の距離である。距離S2は、距離S1より小さい(S1>S2)。つまり、望遠から広角や縮筒の状態にすると、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9との距離は近くなる。
【0030】
図4(a)に示すように主ガイドバー保持部10bがモータ移動筒9から突き出ていない状態(例えば、望遠かつ無限遠の状態)でズーム環2を回すと、広角や縮筒状態になり、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9とは近づく。
この場合、主ガイドバー保持部10bはモータ移動筒9から突き出ていないので、第3-5群レンズ筒8と主ガイドバー保持部10b(第4群レンズ枠10)はぶつからない。よって、図4(a)でステッピングモータ12の電源がOFFになり、モータ移動筒9と第4群レンズ枠10との相対的な位置関係が固定されたとしても、望遠から縮筒までズーム環2を回すことができる。例えば、望遠かつ無限遠の状態(図4(a))で電源をOFFにし、その後、縮筒状態にした場合を図4(e)に示す。
【0031】
図4(b)に示すように主ガイドバー保持部10bがモータ移動筒9から突き出た状態(例えば、望遠かつ至近の状態)で電源をOFFにすると、モータ移動筒9と第4群レンズ枠10との相対的な位置関係は固定される。
その状態でズーム環2を回すと、第3-5群カム溝M35とモータカム溝MMの形状に従って、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9(第4群レンズ枠10、主ガイドバー保持部10b)とは近づく。
この場合、主ガイドバー保持部10bはモータ移動筒9から突き出ているので、第3-5群レンズ筒8と主ガイドバー保持部10b(第4群レンズ枠10)がぶつかってしまう。したがって、望遠かつ至近の状態(図4(b))で電源をOFFにし、その後、縮筒状態にしようとしても、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9とはS2まで近づくことができない。つまり、図4(c)のような状態になることはできない。
【0032】
モータカム溝MMが、後端が開放されていない溝の場合、カムフォロア9aはモータカム溝MMの後端の壁に邪魔されて、カムフォロア8aとカムフォロア9aとは略S3までしか近づくことができない。例えば、カムフォロア8aとカムフォロア9aとは、図3に示す8M、9Mの位置よりも広角側(縮筒側)に進むことができない。
ゆえに、ユーザが望遠かつ至近の状態で電源をOFFにして、縮筒状態にしようとすると、ズーム環2を途中で回すことができなくなり違和感を感じる。
しかし、実施形態のモータカム溝MMは後端が開放されている。したがって、モータ移動筒9と第4群レンズ枠10は、第3-5群レンズ筒8に押されて後ろ側に移動することができる。
これにより、第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9との距離(カムフォロア8aの前端とカムフォロア9aとの前端との距離)をS3に保ちつつ、カムフォロア8a及びカムフォロア9aは、図3の8M、9Mの位置から広角側(縮筒側)に進むことができる。図4(d)は、望遠且つ至近の状態(図4(b))で電源をOFFにし、その後、縮筒状態にした場合を示す。
ユーザが望遠且つ至近の状態(図4(b))で電源をOFFにして、ズーム環2を回すと、モータ移動筒9のカムフォロア9aは、図3に示す位置9Tから9W2を通って9S2へと移動して沈胴状態にすることができる。
【0033】
そして、電源がONにされると、ステッピングモータ12はまず第4群レンズ枠10を無限遠の位置に移動させる。
例えば、ユーザが望遠かつ至近の状態で電源をOFFにしてから広角までズーム環2を回したとする。そうすると、カムフォロア8aとカムフォロア9aの位置は、位置8Wと位置9W2の状態である。
このままユーザが電源をONにすると、表示部には収差やボケのあるスルー画が表示されてしまう。これは、本来、広角状態でのカムフォロア8aとカムフォロア9aの位置は、位置8Wと位置9W1がベストであるにも関わらず、位置8Wと位置9W2の状態になっているからである。
そこで、電源がONにされたらステッピングモータ12が第4群レンズ枠10無限遠の位置へ移動することで、第4群レンズ枠10はモータ移動筒9から出っ張らなくなる。
そうすると、カムフォロア8aとカムフォロア9aとの位置関係は、本来の広角の状態である、位置8Wと位置9W1とになることができ、収差やボケのないスルー画を表示できる。そうすると、カムフォロア9aはモータカム溝MMの前側面にバネ部材13により当接され、初期状態である無限遠状態に復帰することが可能となる。
【0034】
実施形態では、第3-5群レンズ筒8の内側に配置され、カム筒5により光軸方向に進退するモータ移動筒9にステッピングモータ12が固定されている。そして第3-5群レンズ筒8とモータ移動筒9とはズーミングの際に別々の第3-5群カム溝M35,モータカム溝MMで駆動される構成である。したがって第4群レンズL4(フォーカスレンズ)をズーミングに連動して常に一定の撮影距離を保つよう駆動させることが可能となる
【0035】
カム筒5のモータカム溝MMの後端側を開放又はモータカム溝MMの幅を広くして、モータカム溝MMの前側面にカムフォロア9a当接させてズーム時の駆動に用いる。すなわち、後端側は高精度で製造する必要がないため、金型の製造が容易である。モールド部品で構成する場合には、一方の壁が不要のため、製造が容易になる。また、モータカム溝MMの後端壁を構成しなくてもよいため、光軸OA方向へのスペース効率を上げることができ、レンズ鏡筒1の小型化を図ることができる。
【0036】
モータ移動筒9はレンズを直接保持(固定)していないので、モータカム溝MMの一端を開放又はモータカム溝MMの幅を広くしても、光学性能への影響は少ない。また、モータ移動筒9はレンズを直接保持(固定)していないので、バネ付勢していても、光学性能への影響は少ない。
【0037】
また、主ガイドバー8c及び副ガイドバー8dが第3-5群レンズ筒8に保持されている。すなわち、モータ移動筒9がガイドバーを保持していないので、モータ移動筒9のためのモータカム溝MMの一端を開放又はモータカム溝MMの幅を広くしても光学性能への影響が少ない。また、モータ移動筒9はレンズを直接保持(固定)していないので、バネ付勢していても、光学性能への影響は少ない。
【0038】
モータカム溝MMの一端を開放又はモータカム溝MMの幅を広くしている。また、モータ移動筒9と第3-5群レンズ筒8をバネ付勢している。よって、第4群レンズ枠10がモータ移動筒9からはみ出るまで前に移動させることができる。つまり第4群レンズL4(フォーカスレンズ)の可動範囲を広くすることができ、最短撮影距離を短くすることができる。また、主ガイドバー保持部10bの係合長を短くする必要がないため、第4群レンズL4の倒れを抑制しながら、最短撮影距離を短くすることができる。
【0039】
第3-5群レンズ筒8は第3群レンズL3及び第5群レンズL5を保持する筒であるので、モータ移動筒9よりも高精度で製造されている。したがって、第3-5群レンズ筒8に保持された主ガイドバー8cと、副ガイドバー8dとで第4群レンズ枠10をガイドすることにより、例えばモータ移動筒9にガイドバーを設けて第4群レンズ枠10をガイドするよりも第4群レンズ枠10を高精度に駆動することができる。
【0040】
なお、主ガイドバー保持部10bは枠部10aより前側に延びている例で説明したがそれに限らない。主ガイドバー保持部10bは枠部10aより後側に延びていてもよい。その場合、モータカム溝MMの前端の壁をなくし、カムフォロア9aとモータカム溝MMとの後方の壁とが当接するようにバネ部材で付勢すればよい。もしくは、モータカム溝MMの幅をカムフォロア9aの幅よりも広くし、 カムフォロア9aとモータカム溝MMとの後方の壁とが当接するようにバネ部材で付勢すればよい。
【0041】
なお、望遠かつ至近の状態で、第4群レンズ枠10(主ガイドバー保持部10b)がモータ移動筒9から突き出た状態になる例で説明したがこれに限らない。レンズ構成によっては、望遠かつ無限、広角かつ至近、広角かつ無限、その他のいずれの状態で、第4群レンズ枠10(主ガイドバー保持部10b)がモータ移動筒9から突き出た状態になってもよい。
【0042】
なお、第3-5群レンズ筒8は光軸方向に移動可能な構成の例で説明したがそれに限らない。第3-5群レンズ筒8は光軸方向に移動しない構成でもよい。
また、第4群レンズL4を駆動するモータとしてステッピングモータを例に説明したがこれにかぎらない。ボイスコイルモータや超音波モータ等、その他のモータでもよい。
【0043】
なお、第4群レンズL4はフォーカスレンズとして説明したが、それに限らない。ズーム時に(STM)によって駆動されるズームレンズでもよい。
また、第3群レンズL3と第5群レンズL5とが一体で移動し、その間に第4群レンズL4が挟まれる構成で説明したが、それに限らない。例えば、第1群レンズL1と第3群レンズL3とが一体で移動し、その間に第2群レンズL2が挟まれる構成でも良いし、その他の構成でもよい。
上述した構成は必ずしもすべてを備える必要はなく、任意の組み合わせでも良い。
【符号の説明】
【0044】
L1:第1群レンズ、L2:第2群レンズ、L3:第3群レンズ、L4:第4群レンズ、L5:第5群レンズ、M1a:衝撃カム溝、M1:第1群カム溝、M2:第2群カム溝、M35:第3-5群カム溝、MC:直進筒連結ピン、MK:カム溝、MM:モータカム溝、MZ:ズーム連動ピン、OA:光軸、1:レンズ鏡筒、2:ズーム環、3:直進筒、4:第1群レンズ筒、5:カム筒、6:固定筒、6a:カムフォロア、7:第2群レンズ筒、8:第3-5群レンズ筒、8A:第3-5群レンズ筒本体、8B:第3-5群レンズ筒後端部、8a:カムフォロア、8b:長穴、8c:主ガイドバー、8d:副ガイドバー、9:モータ移動筒、9a:カムフォロア、10:第4群レンズ枠、10a:枠部、10b:主ガイドバー保持部、10c:副ガイドバー保持部、10d:モータ取付ラック、10e:モータ係合部、10f:ラック取付部、11:第2群レンズ枠、12:ステッピングモータ、12a:回転軸、13:バネ部材、20:絞り機構、81:第3群レンズ保持枠、82:第5群レンズ保持枠
図1
図2
図3
図4