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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】単一視眼科レンズを決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20220824BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020552856
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057951
(87)【国際公開番号】W WO2019185848
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】18305383.4
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・カリクスト
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・ルゴ
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513985(JP,A)
【文献】特開2012-233959(JP,A)
【文献】特開2008-089618(JP,A)
【文献】特開2008-249828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0176583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0174278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0002191(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103424890(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単焦点眼科レンズを決定する、コンピュータ手段によって実施される方法であって、前記単焦点眼科レンズは、装用者に適合され、前記方法は、
- 少なくとも前記装用者の処方屈折力を示す装用者処方データが提供される、装用者処方データ提供ステップ、
- 前記装用者による前記単焦点眼科レンズの装用パラメータを示す装用データが提供される、装用データ提供ステップ、
- 前記装用パラメータに対応する装用状況において、前記単焦点眼科レンズが、前記装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向及び第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において前記処方屈折力を提供するように前記単焦点眼科レンズが決定される、単焦点眼科レンズ決定ステップ、
を含み、
前記第1の距離及び前記第2の距離は、異なり、且つ前記第1の注視方向及び前記第2の注視方向は、異なり、
前記第1の注視方向と前記第2の注視方向との間の角度は、5.0度以上であり、前記第1の距離と前記第2の距離との違いは0.3m以上である、方法。
【請求項2】
前記装用者処方データは、前記装用者の処方非点収差を更に示し、及び前記単焦点眼科レンズ決定ステップ中、前記単焦点眼科レンズは、前記装用パラメータに対応する装用状況において、前記単焦点眼科レンズが、前記装用者に対して、少なくとも前記第1の距離を注視している場合の前記第1の注視方向及び前記第2の距離を注視している場合の前記第2の注視方向において前記処方非点収差を提供するように決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単焦点眼科レンズ決定ステップ前に、前記単焦点眼科レンズの仕上げ面を示す光学表面データが提供される、光学表面データ提供ステップを更に含み、及び前記単焦点眼科レンズ決定ステップ中、前記仕上げ面に対向する表面の位置及び/又は形状が決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の距離は、遠方視距離に相当し、及び前記第2の距離は、近方視距離に相当する、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも処方屈折力を有する、装用者に適合された単焦点眼科レンズであって、標準装用状況における前記装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において前記処方屈折力を提供し、且つ少なくとも第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において前記処方屈折力を提供し、前記第1の距離及び前記第2の距離は、異なり、且つ前記第1の注視方向及び前記第2の注視方向は、異なり、
前記第1の注視方向と前記第2の注視方向との間の角度は、5.0度以上であり、前記第1の距離と前記第2の距離との違いは0.3m以上である単焦点眼科レンズ。
【請求項6】
8度の半長径及び4度の半短径の楕円錐に含まれる任意の注視方向について、長径の向きが標準装用状況において水平であり、前記楕円錐が前記第2の注視方向にセンタリングされ、前記任意の注視方向及び屈折力処方において測定される屈折力差が0.15D以下であるように構成される、請求項5に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項7】
前記装用者は、処方非点収差を有し、及び前記単焦点眼科レンズは、標準装用状況における前記装用者に対して、少なくとも前記第1の距離を注視している場合の前記第1の注視方向において前記処方非点収差を提供し、且つ少なくとも前記第2の距離を注視している場合の前記第2の注視方向において前記処方非点収差を提供する、請求項5または6に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項8】
前記処方非点収差と、前記第1の注視方向及び前記第2の注視方向における非点収差との差に対応するベクトルのノルムは、0.05D以下である、請求項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項9】
8度の半長径及び4度の半短径の楕円錐に含まれる任意の注視方向について、長径が標準装用状況において水平であり、前記楕円錐が前記第2の注視方向にセンタリングされ、前記任意の注視方向における測定された非点収差と前記処方非点収差との差に対応するベクトルの平均ノルムが0.05D以下であるように構成される、請求項又はに記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項10】
前記第1の注視方向と前記第2の注視方向との間の角度は、10.0度以上である、請求項5~9の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項11】
前記第1の注視方向と前記第2の注視方向との間の角度は、15.0度以上である、請求項5~10の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項12】
前記第1の注視方向と前記第2の注視方向との間の角度は、20.0度以上である、請求項5~11の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項13】
前記第1の距離は、遠方視距離に相当する、請求項5~12の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項14】
前記第1の注視方向は、角度値(α,β)の組によって識別され、前記角度は、目の回転中心にセンタリングされた基準軸に関して測定され、前記第1の注視方向は、-16.0度以上であり、且つ8度以下である角度α及び-5.0度以上であり、且つ5.0度以下である角度βを有する、請求項5~13の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項15】
前記第2の距離は、近方視距離に相当する、請求項5~14の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【請求項16】
前記第2の注視方向は、角度値(α,β)の組によって識別され、前記角度は、目の回転中心にセンタリングされた基準軸に関して測定され、前記第2の注視方向は、5.0度以上であり、且つ36.0度以下である角度α及び-4.0度以上であり、且つ16.0度以下である角度βを有する、請求項5~14の何れか一項に記載の単焦点眼科レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用者に適合された単一視眼科レンズを決定する、コンピュータ手段によって実施される方法、コンピュータプログラム製品及び装用者に適合された単一視眼科レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
単一視眼科レンズは、通常、遠方視処方を考慮し、無限遠とも呼ばれる遠距離にある物体を見る非老眼の異常屈折装用者の視覚的欠陥を補償するように計算される。しかし、単一視眼科レンズの日常生活での使用中、装用者は、当然のことながら、中間距離又は近距離にある物体、例えば1m未満離れたところにある物体も見る。
【0003】
近距離又は遠距離にある物体からのレイトレーシングが異なるため、単一視眼科レンズを通る光学収差も異なる。遠方視に向けて最適化された単一視眼科レンズは、遠距離にある物体を見ている場合、低い光学収差レベルを有するが、近距離又は中間距離にある物体を見ている場合、光学収差のレベルは、より重要になり、これは、装用者にとって不快さ又は視覚疲労を生じさせ得る。
【0004】
したがって、遠距離を見ているときのみならず、近距離及び/又は中間距離を見ているときにも低レベルの収差を提供する単一視眼科レンズが必要とされているようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目標は、そのような欠点を有さない改善された単一視眼科レンズ及びそのような単一視眼科レンズを決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、単一視眼科レンズを決定する、コンピュータ手段によって実施される方法であって、単一視眼科レンズは、装用者に適合され、方法は、
- 少なくとも装用者の処方屈折力を示す装用者処方データが提供される、装用者処方データ提供ステップ、
- 装用者による単一視眼科レンズの装用パラメータを示す装用データが提供される、装用データ提供ステップ、
- 装用パラメータに対応する装用状況において、単一視眼科レンズが、装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向及び第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方屈折力を提供するように単一視眼科レンズが決定される、単一視眼科レンズ決定ステップ
を含み、第1の距離及び第2の距離は、異なり、且つ第1の注視方向及び第2の注視方向は、異なる、方法を提案する。
【0007】
有利には、本発明の方法によって決定される単一視眼科レンズは、異なる距離を注視している場合、少なくとも注視方向に処方屈折力を提供する。本発明の方法によって得られる単一視眼科レンズの装用者は、第1の注視方向における第1の距離、例えば遠距離を注視している場合及び第2の注視方向における第2の距離、例えば近距離を注視している場合に処方屈折力を有する。
【0008】
したがって、本発明による単一視眼科レンズは、日常生活で装用者の不快さ又は視覚疲労を低減する。
【0009】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
- 装用者処方データは、装用者の処方非点収差の値及び軸を更に示し、及び単一視眼科レンズ決定ステップ中、単一視眼科レンズは、装用パラメータに対応する装用状況において、単一視眼科レンズが、装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向及び第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方非点収差を提供するように決定され、且つ/又は
- 第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度は、5度以上、例えば10度以上、例えば15度以上、例えば20度以上であり、且つ/又は
- 第1の距離と第2の距離との差は、0.3m以上、例えば1.0m以上、例えば4.0m以上であり、且つ/又は
- 装用者データは、標準装用パラメータを示し、且つ/又は
- 方法は、単一視眼科レンズ決定ステップ前に、単一視眼科レンズの仕上げ面を示す光学表面データが提供される、光学表面データ提供ステップを更に含み、及び単一視眼科レンズ決定ステップ中、仕上げ面に対向する表面の位置及び/又は形状が決定され、且つ/又は
- 仕上げ面は、単一視眼科レンズの前面であり、且つ/又は
- 第1の距離は、遠方視距離に相当し、例えば5m以上であり、且つ/又は
- 第1の注視方向は、-16度以上であり、且つ8度以下である角度α及び-5.0度以上であり、且つ5.0度以下である角度βを有し、且つ/又は
- 第2の距離は、近方視距離に相当し、例えば4.0m以下、例えば1.0m以下、例えば0.4m以下に相当し、且つ/又は
- 第2の注視方向は、5度以上であり、且つ36度以下である角度α及び-4度以上であり、且つ16度以下である角度βを有する。
【0010】
本発明は、プロセッサがアクセス可能であり、プロセッサによって実行されると、プロセッサに本発明の方法のステップ、少なくとも単一視眼科レンズ決定ステップを実行させる、記憶された1つ又は複数の命令シーケンスを含むコンピュータプログラム製品に更に関する。
【0011】
本発明は、少なくとも処方屈折力を有する、装用者に適合された単一視眼科レンズにも関し、単一視眼科レンズは、標準装用状況における装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において処方屈折力を提供し、且つ少なくとも第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方屈折力を提供し、第1の距離及び第2の距離は、異なり、且つ第1の注視方向及び第2の注視方向は、異なる。
【0012】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
- 装用者は、処方非点収差(非点収差値及び非点収差軸)を有し、及び単一視眼科レンズは、標準装用状況における装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において処方非点収差を提供し、且つ少なくとも第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方非点収差を提供し、且つ/又は
- 処方非点収差と、第1の注視方向及び第2の注視方向における非点収差との差に対応するベクトルのノルムは、0.05D以下であり、且つ/又は
- 単一視眼科レンズは、8度の半長径及び4度の半短径の楕円錐に含まれる任意の注視方向について、長径の向きが標準装用状況において水平であり、楕円錐が第2の注視方向にセンタリングされ、前記任意の注視方向における測定された非点収差と処方非点収差との差に対応するベクトルの平均ノルムが0.05D以下であるように構成され、且つ/又は
- 第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度は、5度以上、例えば10度以上、例えば15度以上、例えば20度以上であり、且つ/又は
- 第1の距離と第2の距離との差は、30cm以上、例えば1m以上、例えば4m以上であり、且つ/又は
- 第1の距離は、遠方視距離、例えば5m以上に相当し、且つ/又は
- 第1の注視方向は、-16度以上であり、且つ8度以下である角度α及び-5.0度以上であり、且つ5.0度以下である角度βを有し、且つ/又は
- 第2の注視方向は、近方視距離に相当し、例えば4.0m以下、例えば1.0m以下、例えば0.4m以下に相当し、且つ/又は
- 第2の注視方向は、5度以上であり、且つ36度以下である角度α及び-4度以上であり、且つ16度以下である角度βを有する。
【0013】
ここで、本発明の非限定的な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】眼科レンズの決定に使用されるレイトレーシング法を示す。
図2】眼科レンズの決定に使用されるレイトレーシング法を示す。
図3】本発明による方法の異なるステップのフローチャートである。
図4】近接グラフを表す。
図5】従来技術による単一視眼科レンズを示す。
図6】従来技術による単一視眼科レンズを示す。
図7】従来技術による単一視眼科レンズを示す。
図8】本発明による単一視眼科レンズを示す。
図9】本発明による単一視眼科レンズを示す。
図10】本発明による単一視眼科レンズを示す。
図11】眼科レンズの決定に使用されるレイトレーシング法を示す。
図12】近接グラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図中の要素は、簡潔且つ明確にするために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、図中の要素の幾つかの寸法は、本発明の実施形態の理解の改善に役立つように他の要素よりも誇張されていることがある。
【0016】
本発明は、人の目の前に装用されることが意図される単一視眼科レンズに関する。
【0017】
説明の残りの部分において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前」、「後」のような用語又は相対的な位置を示す他の言葉が使用されることがある。これらの用語は、単一視眼科レンズの装用状況において理解されるものとする。
【0018】
本発明は、累進レンズに向けられていないが、この説明で使用される表現は、累進レンズについての国際公開第2016/146590号パンフレットの図1図10に示されている。当業者は、定義を単一視レンズに適合させることができる。
【0019】
本発明の意味では、「注視方向」は、角度値(α,β)の組により識別され、前記角度値は、「CRE」と一般に呼ばれる目の回転中心にセンタリングされた基準軸に関して測定される。より厳密には、図11は、注視方向の定義に使用されるパラメータα及びβを示すそのようなシステムの斜視図を表す。図2は、装用者の頭部の前後軸に平行し、パラメータβが0に等しい場合、目の回転中心を通る垂直面における図である。目の回転中心は、CREと記されている。図2に鎖線で示される軸CRE-F’は、目の回転中心を通り、装用者の前に延びる水平軸である - すなわち、軸CRE-F’は、第1眼位注視方向に対応する。レンズは、軸CRE-F’が、一般にレンズ上に存在して、検眼医によりフレームにレンズを位置決めできるようにするフィッティングクロスと呼ばれる点でレンズの前面をカットするように目の前に配置及びセンタリングされる。レンズの背面と軸CRE-F’との交点は、点Oである。中心が、目の回転中心であるCREにあり、半径q’=O-CREを有する頂点球面は、水平軸の点においてレンズの背面とインターセプトする。25.5mmという半径q’の値は、通常値に相当し、レンズ装用時に満足のいく結果を提供する。他の値の半径q’を選択することもできる。図11において実線で表される所与の注視方向は、CREの周りを回転する目の位置及び頂点球面の点J(図2参照)に対応し、角度βは、軸CRE-F’と、軸CRE-F’を含む水平面への直線CRE-Jの射影との間に形成される角度であり、この角度は、図11の概略図に現れている。角度αは、軸CRE-Jと、軸CRE-F’を含む水平面への直線CRE-Jの射影との間に形成される角度であり、この角度は、図11及び図2の概略図に現れている。したがって、所与の注視ビューは、頂点球面の点J又は(α,β)の組に対応する。下降注視角度が正であり、その値が大きいほど、注視が下降し、値が負であり、その値が大きいほど、注視が上昇する。所与の注視方向において、所与の物体距離に配置された物体空間中の点Mの像は、サジタル及びタンジェンシャル局所焦点長さである最小距離JS及び最大距離JTに対応する2つの点S及びT間に形成される。無限遠における物体空間中の点の像は、点F’に形成される。距離Dは、レンズの後側正面に対応する。
【0020】
通常の単一視眼科レンズは、決定された物体距離、通常遠距離、例えば5m超においてなされた処方球面度数、円柱度数及び軸に対応する特有の光学補償を提供するように計算される。
【0021】
処方が決定された距離に位置する物体の場合、対応する単一視眼科レンズは、装用者に処方球面度数、円柱度数及び軸に対応する平均屈折力、非点収差及び軸を提供する。しかしながら、処方が決定された距離と異なる距離に位置する物体の場合、レンズを通した平均屈折力、非点収差及び軸は、処方から変わり得る。
【0022】
図1は、遠方視の場合に決定された処方を用いて計算された完全な単一視眼科レンズの場合を示す。無限遠から到来した光線は、遠点球面と呼ばれる球面で結像する。国際公開第2016/146590号パンフレットに説明されるように、この注視方向でのレンズを通した平均屈折力(又は装用者屈折力)は、
P=1/無限遠+1/2(1/JS+1/JT)=1/2(1/JS+1/JT)
である。
【0023】
図2に示されるように、図1と同じ単一視眼科レンズに関して、有限距離における図1と同じ注視方向においてレンズから近距離、例えば40cmにある物体Mを考えると、単一視眼科レンズを通った物体Mから到来した光線は、物体Mが遠距離、例えば無限遠にある場合よりも単一視眼科レンズの遠く背後で結像する。
【0024】
近方視距離にある物体Mの場合に単一視眼科レンズを通した平均屈折力は、
P’=1/MJ+1/2(1/JS’+1/JT’)
である。
【0025】
任意の眼科レンズを用いる場合、光学系は、軸対称光学系として見なすことができるのは稀であり、ガウス近似は、決して当てはまらない。したがって、単一視眼科レンズは、無収差として見なすことができず、主面としての通常の考慮事項を考慮に入れることができない。
【0026】
そのような状況では、眼科レンズを通したレイトレーシングのみが、眼科レンズを通る光線が何れの箇所で結像するかを特定することができ、有限距離におけるMの屈折力P’は、無限遠における物体で得られるPと異なる一方、ガウス近似では、P’は、Pに等しい。
【0027】
したがって、単一視眼科レンズが、あらゆる注視方向において、処方決定の近接度に等しい近接度の物体での物体の処方値に対応する平均屈折力、非点収差及び軸を有するように計算され、装用者が、異なる距離にある物体を注視する場合、単一視眼科レンズを通した平均屈折力、非点収差、及び軸は、処方値から変わり、単一視眼科レンズの光学的不履行は、増大し、ぼやけたビジョンを生じさせ、したがって装用者に不快さ又は疲労を生じさせる。
【0028】
本発明は、装用者に適合された単一視眼科レンズを決定する、例えばコンピュータ手段によって実施される方法を提案する。
【0029】
図3に示されるように、方法は、少なくとも、
- 装用者処方データ提供ステップS1、
- 装用データ提供ステップS2、及び
- 単一視眼科レンズ決定ステップS4
を含み、第1の距離及び第2の距離は、異なり、且つ第1の注視方向及び第2の注視方向は、異なる。
【0030】
装用者処方データ提供ステップS1中、少なくとも装用者の処方屈折力を示す装用者処方データが提供される。
【0031】
処方屈折力は、所与の注視距離、好ましくは遠注視距離、例えば5m以上に関して提供される。
【0032】
本発明の実施形態によれば、装用者処方データは、装用者の処方非点収差を更に示し得る。装用者処方データが装用者の処方非点収差を更に示す場合、そのような処方非点収差は、処方屈折力と同じ注視距離について、好ましくは遠注視距離、例えば5m以上について提供される。
【0033】
装用データ提供ステップS2中、装用者による単一視眼科レンズの装用パラメータを示す装用データが提供される。
【0034】
装用状況とは、例えば、装用時前傾角、角膜-レンズ距離、瞳孔-角膜距離、目の回転中心(CRE)-瞳孔距離、CRE-レンズ距離及びそり角によって定義される、装用者の目に対する眼科レンズの位置として理解されたい。
【0035】
角膜-レンズ距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば12mmに等しい。
【0036】
瞳孔-角膜距離は、瞳孔と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、通常、2mmに等しい。
【0037】
CRE-瞳孔距離は、目の回転中心(CRE)と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、例えば11.5mmに等しい。
【0038】
CRE-レンズ距離は、目のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば25.5mmに等しい。
【0039】
装用時前傾角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における垂直面における角度であり、例えば-8°に等しい。
【0040】
そり角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における水平面における角度であり、例えば0°に等しい。
【0041】
標準的な装用状況の一例は、装用時前傾角-8°、角膜-レンズ距離12mm、瞳孔-角膜距離2mm、CRE-瞳孔距離11.5mm、CRE-レンズ距離25.5mm及びそり角0°により定義され得る。
【0042】
単一視眼科レンズ決定ステップS4中、単一視眼科レンズは、装用パラメータに対応する装用状況において、単一視眼科レンズが、装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において且つ第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方屈折力を提供するように決定される。第1の距離及び第2の距離は、異なり、且つ第1の注視方向及び第2の注視方向は、異なる。
【0043】
例えば第1の距離を注視している場合の第1の方向において装用者に提供される屈折力と、第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において提供される屈折力との差は、0.1ジオプタ以下、例えば実質的に0ジオプタに等しい。
【0044】
実施形態によれば、処方データは、装用者の処方非点収差を示すデータを更に含み得、及び単一視眼科レンズ決定ステップ中、単一視眼科レンズは、装用パラメータに対応する装用状況において、単一視眼科レンズが、装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において且つ第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方非点収差を提供するように決定される。
【0045】
例えば、第1の距離を注視している場合の第1の方向において装用者に提供される非点収差と処方非点収差との差に対応するベクトルのノルムは、0.1ジオプタ以下、例えば0.05ジオプタ以下である。
【0046】
特に第1の注視方向及び距離が遠方視注視方向及び距離に相当する場合、装用者に提供される非点収差間の差に対応するベクトルのノルムは、実質的に0.0Dに等しい。
【0047】
例えば、第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において提供される非点収差と処方非点収差との差に対応するベクトルのノルムは、0.1ジオプタ以下、例えば0.05ジオプタ以下である。
【0048】
本発明の方法は、2つの注視方向に限定されず、注視方向の組、例えば全ての注視方向で実施され得る。
【0049】
単一視眼科レンズ決定ステップS3中、注視方向の組は、各注視方向で異なることができる物体近接度に関連付けられる。例えば、物体が近いほど、注視下降の程度が大きくなることを使用して、環境物体を記述することができる。単一視眼科レンズの決定において、近い物体を見る場合の目の輻輳も考慮に入れることができる。
【0050】
屈折決定中、アイケア従事者は、無限遠又は少なくとも5m以上の距離から到来する光線を考慮に入れて、必要なレンズの屈折力を決定する。屈折力は、P’=1/fvとして調節遠点を用いて定義され、fvは、後頂点距離、すなわちレンズの背面から点F’までの距離である。
【0051】
図1及び図2に示されるように、注視方向が変わる場合、光線路を、遠点球面に焦点を合わせた状態に維持するために、屈折力を設定する必要がある。
【0052】
本発明の方法によって決定される単一視眼科レンズは、装用者に対して、少なくとも2つの異なる距離にある物体を見ている装用者に正しい屈折力を提供する。
【0053】
遠くにある物体は、通常、レンズの上部を通して見られる。近くにある物体は、通常、レンズの下部を通して見られる。
【0054】
したがって、活動に応じて、注視方向に応じて物体ロケーションを設定することができる。このロケーションは、近接尺度で表される。遠くにある物体がメートル単位でDである場合、近接度は、px=1/Dで与えられ、pxは、m-1単位で表される。
【0055】
図4は、本発明の方法で使用され得る近接グラフの一例である。
【0056】
X軸は、(m-1)単位の近接値を与える。
【0057】
Y軸は、TABO基準に対してα方向における注視方向の度数単位の垂直角を与える。
【0058】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度は、5度以上、例えば10度以上、例えば15度以上、例えば20度以上である。
【0059】
第1の距離と第2の距離との差は、30cm以上、例えば1m以上、例えば4m以上である。
【0060】
本発明の実施形態によれば、第1の距離は、遠方視距離、例えば5m以上に相当する。眼科の分野では、遠距離又は無限遠は、5m以上の距離、例えば5m超の距離に相当する。
【0061】
第1の注視方向は、-16.0度以上であり、且つ8.0度以下である角度α及び-5.0度以上であり、且つ5.0度以下である角度βを有し得る。
【0062】
そのような第1の注視方向は、有利には、遠方視距離に相当する第1の距離と組み合わされる。実際には、そのような注視方向は、遠距離を注視しているときの自然な注視方向に相当する。
【0063】
本発明の実施形態によれば、第2の距離は、近方視距離、例えば4m以下、例えば1m以下、例えば40cm以下に相当する。
【0064】
第2の注視方向は、5.0度以上であり、且つ36度以下である角度α及び-4.0度以上であり、且つ16.0度以下である角度βを有し得る。
【0065】
そのような第2の注視方向は、有利には、近方視距離に相当する第2の距離と組み合わされる。実際には、そのような注視方向は、近距離を注視しているときの自然な注視方向に相当する。
【0066】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度が約5度であり、第1の距離が5m超であり、第2の距離が約63cmであるように構成された単一視眼科レンズは、コンピュータ画面での作業に特に適合される。
【0067】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度が約18度であり、第1の距離が5m超であり、第2の距離が約40cmであるように構成された単一視眼科レンズは、紙上での読み又は作業に特に適合される。
【0068】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度が約20度であり、第1の距離が5m超であり、第2の距離が約40cmであるように構成された単一視眼科レンズは、デジタルタブレットでの読み又は作業に特に適合される。
【0069】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度が約25度であり、第1の距離が5m超であり、第2の距離が40cm未満であるように構成された単一視眼科レンズは、スマートフォンの使用に特に適合される。
【0070】
図12は、本発明の方法で使用され得る近接グラフの一例である。
【0071】
本発明の実施形態では、単一視眼科レンズは、安定化屈折力の第1のゾーンを含み、したがって、装用者が、装用パラメータに対応する装用状況で第1の注視方向を見た場合、外界は、装用者により安定化屈折力の第1のゾーンを通して見られ、処方屈折力は、第1の注視距離において第1の注視方向で提供される。
【0072】
本発明の実施形態では、単一視眼科レンズは、安定化屈折力の第2のゾーンを含み、したがって、装用者が、装用パラメータに対応する装用状況で第2の注視方向を見た場合、外界は、装用者により安定化屈折力の第2のゾーンを通して見られ、処方屈折力は、第2の注視距離において第2の注視方向で提供される。
【0073】
単一視眼科レンズは、第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度が40度以上であり、第1の距離が5m超であり、第2の距離が25cm未満であるように安定化屈折力の第1のゾーン及び安定化屈折力の第2のゾーンを含むように決定され得る。
【0074】
そのような単一視眼科レンズは、特に子供の装用者に適合される。
【0075】
任意の他の実施形態と組み合わされ得る本発明の実施形態では、装用パラメータに対応する装用状況において、単一視眼科レンズは、第3の注視方向において第3の距離で処方屈折力を提供し得、
- 第3の距離は、第1の距離よりも短く、
- 第3の距離は、第2の距離よりも短く、
- 第1の注視方向と第3の注視方向との間の角度は、第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度よりも小さく、
- 第2の注視方向と第3の注視方向との間の角度は、第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度よりも小さい。
【0076】
図3に示されるように、本発明の方法は、単一視眼科レンズ決定ステップS4前に光学表面データ提供ステップS3を更に含み得る。
【0077】
光学表面データ提供ステップS3中、単一視眼科レンズの仕上げ面を示す光学表面データが提供される。
【0078】
仕上げ面は、好ましくは、単一視眼科レンズの前面、すなわち物体面である。しかしながら、本発明は、そのような実施形態に限定されず、当業者は、単一視眼科レンズの後面又は背面である仕上げ面を有して本発明を適合させ得る。
【0079】
そのような実施形態によれば、単一視眼科レンズ決定ステップS4中、仕上げ面に対向する表面の位置及び/又は形状が決定される。
【0080】
本発明は、少なくとも処方屈折力を有する、装用者に適合された単一視眼科レンズにも関する。
【0081】
本発明の単一視眼科レンズは、標準装用状況における装用者に対して、第1の距離を注視している場合の少なくとも第1の注視方向において処方屈折率を、且つ少なくとも第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方屈折力を提供し、第1の距離及び第2の距離は、異なり、且つ第1の注視方向及び第2の注視方向は、異なる。
【0082】
好ましくは、本発明の単一視眼科レンズは、本発明の方法によって決定される。
【0083】
実施形態によれば、装用者は、処方非点収差を有し得、及び単一視眼科レンズは、標準装用状況における装用者に対して、少なくとも第1の距離を注視している場合の第1の注視方向において且つ少なくとも第2の距離を注視している場合の第2の注視方向において処方屈折力を提供する。
【0084】
第1の注視方向と第2の注視方向との間の角度は、好ましくは、5度以上、例えば10度以上、例えば15度以上、例えば20度以上である。
【0085】
第1の距離と第2の距離との差は、30cm以上、例えば1m以上、例えば4m以上である。
【0086】
本発明の実施形態によれば、第1の距離は、遠方視距離、例えば5m以上に相当する。
【0087】
好ましくは、第1の注視方向は、-16度以上、例えば-8度以上であり、且つ8度以下、例えば0度未満である角度α及び-5.0度以上、例えば-2.0度以上であり、且つ5.0度以下、例えば2.0度以下である角度βを有する。
【0088】
本発明の実施形態によれば、第2の注視距離は、近方視距離、例えば4.0m以下、例えば1.0m以下、例えば0.4m以下に相当する。
【0089】
好ましくは、第2の注視方向は、5.0度以上、例えば8.0度以上、例えば16.0度以上であり、且つ36.0度以下、例えば32度以下、例えば28.0度以下である角度α及び-4.0度以上、例えば0.0度以上であり、且つ16.0度以下である角度βを有する。
【0090】
図5図7は、従来技術による方法を使用して決定された単一視眼科レンズを示す。
【0091】
図5図7に示される単一視眼科レンズは、処方屈折力-4ジオプタ及び処方非点収差0ジオプタを有する装用者に対して決定される。
【0092】
単一視眼科レンズ上の基準点は、以下のとおりである:
- フィッティングクロス(α=0度,β=0度)は、装用者の目と位置合わせするために単一視眼科レンズの前面に配置され、
- 中心点(α=0度,β=0度)は、処方が見つけられるべき場所を指し、
- 概ね下降注視方向αに対応する低点は、-20度に等しく、0.4m物体距離ではめ込み値が計算された。
【0093】
装用パラメータは、装用時前傾角-8度、そり角0度及び目ーレンズ距離12mmである。
【0094】
単一視眼科レンズを決定する際、物体は、無限遠に配置され、その場合、各注視方向において、物体近接度は、0m-1である。
【0095】
図5は、度単位で表される子午線に沿ってジオプタ単位の装用者平均屈折力及びその結果としてのジオプタ単位の非点収差を示す。
【0096】
子午線は、3セグメントとして定義される:
- レンズの上から中心点又は第1の基準点まで、第1のセグメントは、第1の基準点の上で垂直であり、
- 第1の基準点及び第2の基準点をリンクするか、又はこの例では中心点及び低点をリンクするセグメント、
- 低点の下の垂直セグメント。
【0097】
図6は、度単位でのα,β注視方向に従ったジオプタ単位の装用者平均屈折力を表す。
【0098】
図7は、度単位でのα,β注視方向に従ったジオプタ単位の結果としての非点収差を表す。
【0099】
表1は、遠距離物体を考慮する場合の基準点における光学値を表す。
【0100】
【表1】
【0101】
中心点における装用者平均屈折力は、-4.00Dである。この値は、離れたところにある物体を見ている装用者に適する。
【0102】
低点において、装用者平均屈折力は、-3.93Dであり、その結果として非点収差0.06Dがある。低点は、軸外点であり、したがって幾らかの屈折力誤差及び不要な収差を示す。
【0103】
しかしながら、本発明によれば、この従来のレンズは、装用者が近距離物体を見ている場合、正しい平均屈折力を装用者に提供しない。近接性を所与として、近距離物体を考慮に入れることができる。
【0104】
したがって、物体の近接性を考慮に入れて従来の単一視眼科レンズを評価することが可能である。表2は、近いところにある物体を見ている場合の同じ従来の単一視眼科レンズの光学値を提供する。
【0105】
【表2】
【0106】
この例では、平均屈折力は、略変わらないままであるが、その結果としての非点収差は、0.11Dに増大する。
【0107】
図8図10は、本発明の方法を使用して決定された単一視眼科レンズを示す。
【0108】
本発明の単一視眼科レンズは、従来技術による単一視眼科レンズと同じ処方に対して決定される。
【0109】
本発明の単一視眼科レンズの基準点は、以下の通りである:
- フィッティングクロス(α=0度,β=0度)は、装用者の目と位置合わせするために単一視眼科レンズの前面に配置され、
- 中心点(α=0度,β=0度)は、処方が見つけられるべき場所を指し、
- 概ね下降注視方向αに対応する低点は、-20度に等しく、0.4m物体距離ではめ込み値が計算された。
【0110】
装用パラメータは、従来技術による単一視眼科レンズと同じである。
【0111】
本発明の単一視眼科レンズを決定する際、図4に示される近接度表が使用される。
【0112】
図8は、度単位で表される子午線に沿ってジオプタ単位の装用者平均屈折力及びその結果としてのジオプタ単位の非点収差を示す。
【0113】
図9は、度単位でのα,β注視方向に従ったジオプタ単位の装用者平均屈折力を表す。
【0114】
図10は、度単位でのα,β注視方向に従ったジオプタ単位の結果としての非点収差を表す。
【0115】
表3は、近いところにある物体を見ている場合の本発明の単一視眼科レンズの光学値を提供する。
【0116】
【表3】
【0117】
装用者平均屈折率誤差及び結果としての非点収差は、従来技術による単一視眼科レンズと比較して低減するようである。
【0118】
一般的な本発明の概念を限定せずに、実施形態を用いて本発明について上述した。
【0119】
上記の例示的な実施形態を参照したうえで、多くの更なる変更形態及び変形形態が当業者に明らかになり、上記の例示的な実施形態は、例としてのみ与えられ、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【0120】
特許請求の範囲では、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外しない。単に異なる特徴が相互に異なる従属クレームに記載されていることは、これらの特徴の組合せを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12