(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンを整備するためのハンドリングデバイス
(51)【国際特許分類】
B25H 1/10 20060101AFI20220824BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20220824BHJP
B23P 6/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B25H1/10
F02F3/00 G
B23P6/02
(21)【出願番号】P 2021512898
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075100
(87)【国際公開番号】W WO2020069874
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】102018124456.8
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エヴァルト・コットレ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・シュテグマイヤー
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207894390(CN,U)
【文献】特開2013-189885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 1/10
F02F 3/00
B23P 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンピン(12)を介してピストン(11)に取り付けられたスモールエンド(13)を備えた前記ピストン(11)を整備するためのハンドリングデバイス(10)であって、
基礎フレーム(14)と、
ピストンピンを介してスモールエンドが取り付けられる、内燃機関から取り外されたピストン(11)のための、前記基礎フレーム(14)に対して回動可能または傾動可能である受けデバイス(19)と、
前記基礎フレーム(14)に対して前記受けデバイス(19)を回動または傾動させるためのアクチュエータ(24)と、
ロックデバイス(27)であって、それを用いて、前記受けデバイス(19)を、異なる回動位置または傾動位置において前記基礎フレーム(14)上でロックすることが可能であるロックデバイス(27)と
を具備
し、
前記基礎フレーム(14)は、脚(15)と、クロスメンバー(17)と、サイドメンバー(16)と、支持ストラット(18)と、を具備し、前記クロスメンバー(17)および前記サイドメンバー(16)は水平方向に延びる平面内にあり、前記脚(15)は、この平面に対して第1の方向に下向きに離れて立ち、かつ、前記支持ストラット(18)は、この平面に対して第2の方向に上向きに離れて立ち、前記受けデバイス(19)は、前記支持ストラット(18)に回動可能または傾動可能に搭載されていることを特徴とするハンドリングデバイス。
【請求項2】
前記受けデバイス(19)は、回動アーム(21)を介して支持ストラット(18)に作用するベースプレート(20)を具備し、前記受けデバイス(19)はさらに、前記ベースプレート(20)に作用するスピンドル(22)と、前記スピンドル(22)に作用するクランプブリッジ(23)と、を具備し
、ピストンピンを介してスモールエンドが取り付けられたピストンを前記ベースプレート(20)上に置き、前記スピンドル(22)および前記クランプブリッジ(23)を介して前記ベースプレート(20)と前記クランプブリッジ(23)との間でクランプすることができることを特徴とする請求項
1に記載のハンドリングデバイス。
【請求項3】
前記アクチュエータ(24)は、ハンドホイール(25)を介して手動で作動可能なセルフロックギア(26)を備え、前記ギア(26)は、前記受けデバイス(19)を所望の回動位置または傾動位置においてセルフロック式に保持することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のハンドリングデバイス。
【請求項4】
前記ロックデバイス(27)はロックピンを具備し、前記受けデバイス(19)は、ロックピンが係合解除された状態でのみ、前記アクチュエータ(24)に支援されて、前記基礎フレーム(
14)に対して回動可能あるいは傾動可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載のハンドリングデバイス。
【請求項5】
前記受けデバイス(19)
のベースプレート(20)と相互作用するアダプター(28)をさらに具備し、前記アダプター(28)は、前記ピストンピン(12)
が前記ピストン(11)から分離させられた状態で前記ピストン(11)内の前記スモールエンド(13)を保持するために、前記ベースプレート(20)上で前記受けデバイス(19)の決められた回動位置または傾動位置に配置できることを特徴とする請求項
2ないし請求項
4のいずれか1項に記載のハンドリングデバイス。
【請求項6】
前記受けデバイス(19)の前記ベースプレート(20)にはリセス(34)が設けられており、前記ピストンピン(12)
が前記ピストン(11)から分離させられた状態では、それを経て、前記アダプター(28)によって保持された前記スモールエンド(13)を前記ピストン(11)から取り外すことができることを特徴とする請求項
5に記載のハンドリングデバイス。
【請求項7】
前記ベースプレート(
20)の前記リセス(34)は、前記スモールエンド(13)が取り外された状態では、前記ピストン(11)をピストン上部(11a)およびピストン下部(11b)へと分解するためのツール(35)のための進入路として機能することを特徴とする請求項
6に記載のハンドリングデバイス。
【請求項8】
請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載のハンドリングデバイス(10)を用いて、ピストンピン(12)を介してピストン(11)に取り付けられたスモールエンド(13)を有する前記ピストン(11)を整備するための方法であって、
前記ピストンピン(12)を介して前記ピストン(11)に取り付けられたスモールエンド(13)を備えた、整備されるピストン(11)を内燃機関から取り外すステップと、
前記ハンドリングデバイスの前記受けデバイス(19)上に、前記ピストンピンを介して前記ピストンに取り付けられた前記スモールエンドを備えた前記ピストン(11)を配置し、クランプするステップであって、この目的のために、前記受けデバイス(19)は前記基礎フレーム(14)に対して、決められた回動位置または傾動位置をとり、前記受けデバイス(19)は前記ロックデバイス(27)を介してロックされるステップと、
前記ロックデバイス(27)をロック解除するステップと、
前記アクチュエータ(24)の支援により、前記受けデバイス(19)を、実施される整備ステップのために決められた回動位置または傾動位置へと回動または傾動させるステップと、
前記ロックデバイス(27)をそれぞれの回動位置または傾動位置においてロックし、それぞれの整備ステップを実施するステップと
を具備する方法。
【請求項9】
前記ピストンピンを介して前記ピストンに取り付けられた前記スモールエンドを備えた前記ピストンが前記受けデバイス(19)上に配置され、クランプされる、前記受けデバイス(19)の決められた回動位置または傾動位置においては、前記受けデバイス
のベースプレート(20)は下方に、あるいは前記基礎フレーム(14)の脚(15)に面するように向けられ、かつ、前記ピストンピン(12)および前記スモールエンド(13)を前記ピストン(11)から分離させることができる、前記受けデバイス(19)の決められた回動位置または傾動位置においては、前記受けデバイス(19)の前記ベースプレート(20)は、上方に、あるいは前記基礎フレーム(14)の前記脚(15)から離れる方向に向けられることを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンを整備するためのハンドリングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品からなる組み立てられたコネクティングロッドを含む、例えば船舶用ディーゼル内燃機関などの大型内燃機関の保守中、ピストンの整備のために、通常、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンが内燃機関から取り出され、その後、整備のためにピストンピンおよびスモールエンドがピストンから取り外され、その後、必要に応じて、ピストンがピストン上部とピストン下部とに分解される。ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンの取り扱いは、これまで、重いピストンをパレット上に配置し、ピストンを手動で、さまざまな整備ステップが実施される位置へと回動させることによって、自由な様式で実施されてきた。この過程で、ピストン、ピストンピンまたはスモールエンドが損傷する可能性がある。さらに、このように大きくて重いピストンを取り扱う場合、整備担当者が重傷を負う可能性があるため、この作業は整備担当者にとって危険である。それを用いてピストンを整備のために安全に取り扱うことができる、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンのハンドリングデバイスが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記に鑑みて、本発明は、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンを整備するための安全なハンドリングデバイスを提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンを整備するためのハンドリングデバイスによって解決される。
【0005】
ハンドリングデバイスは基礎フレームを具備する。さらにハンドリングデバイスは、基礎フレームに対して回動可能または傾動可能である、内燃機関から取り外されたピストン用の受けデバイスを具備する(このピストンにはピストンピンを介してスモールエンドが取り付けられている)。さらにハンドリングデバイスは、基礎フレームに対して受けデバイスを回動または傾動させるためのアクチュエータを備える。さらにハンドリングデバイスは、それを介して受けデバイスを異なる回動位置においてベースフレーム上でロックすることができるロックデバイスを備える。
【0006】
ハンドリングデバイスの基本コンポーネントは、基礎フレーム、受けデバイス、アクチュエータおよびロックデバイスである。ハンドリングデバイスによって、整備されることになる、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンを安全かつ確実に取り扱うことができ、そして、この目的のために、決められた整備位置へと移送することができる。整備中に、ピストン、ピストンピンまたはスモールエンドが損傷したり、あるいは整備中に整備担当者が怪我をしたりするリスクはない。
【0007】
本発明の有利なさらなる展開によれば、基礎フレームは、脚と、クロスメンバーと、サイドメンバーと、支持ストラットとを具備し、クロスメンバーおよびサイドメンバーは、水平に延びる平面内に存在し、脚は、この平面に対して、下に向かって第1の方向に離れて立ち、そして支持ストラットは、この平面に対して、上に向かって第2の方向に離れて立ち、受けデバイスは支持ストラットに回動可能または傾動可能に取り付けられる。このような基礎フレームが特に好ましい。クロスメンバー、サイドメンバー、脚および支持ストラットは、プラグ形材として優先的に具現化され、相互に差し込まれる。ハンドリングデバイスの作業高さは、脚の高さによって調整できる。支持ストラット上で回動可能または傾動可能である受けデバイスを用いて、ピストンを、決められた整備位置へと回動または傾動させることができる。
【0008】
本発明の有利なさらなる展開によれば、受けデバイスは、回動アームを介して支持ストラットに作用するベースプレートを具備し、受けデバイスは、ベースプレートに作用するスピンドルおよびスピンドルに作用するクランプブリッジをさらに含み、ピストンピンを介してスモールエンドが取り付けられているピストンをベースプレート上に降下させ、スピンドルおよびクランプブリッジを介して、ベースプレートとクランプブリッジとの間にクランプすることができる。取り扱われるピストンがベースプレートとクランプブリッジとの間にクランプされる、そうした受けデバイスは、ピストンを異なる回動位置または傾動位置においてしっかりと保持し、その損傷および整備担当者の負傷のリスクを排除するために特に好ましい。
【0009】
本発明の有利なさらなる展開によれば、ハンドリングデバイスは、受けデバイスのベースプレートと相互作用するアダプターを具備し、これは、ベースプレート上で、受けデバイスの決められた回動位置または傾動位置に配置することができ、ピストンピンを分離した状態でピストンのスモールエンドを保持する。アダプターを介して、ピストンピンが分離されたスモールエンドをピストンから落下しないように固定することができる。これにより、ピストンおよびピストンピンが分離されたスモールエンドの安全な取り扱いが可能となる。
【0010】
本発明の有利なさらなる展開によれば、アクチュエータは、ハンドホイールを介して手動で作動可能なセルフロックギアを備え、このギアは、受けデバイスを所望の回動位置または傾動位置においてセルフフロック式に保持する。アクチュエータは、基礎フレームに対して、受けデバイスを、さまざまな回動位置または傾動位置へと安全に移動させることを可能とする。ハンドリングデバイスのアクチュエータがセルフロックギアを備えているという事実のために、ハンドホイールを放すと受けデバイスが自由にまたは自発的に基礎フレームに対して移動してしまうリスクは存在しない。これによって安全性がさらに向上する。
【0011】
本発明の有利なさらなる展開によれば、ロックデバイスはロックピンを具備し、受けデバイスは、もっぱらロックピンが係合解除された状態で、基礎フレームに対して、アクチュエータの助けを借りて、回動可能または傾動可能である。決められた回動位置または傾動位置では、ロックデバイスのロックピンは受けデバイスを基礎フレームに固定する。これにより、ピストン、ピストンピンおよびスモールエンドの取り扱い時の安全性がさらに向上する。
【0012】
本発明の好ましいさらなる展開は、従属請求項および以下の説明から得られる。
【0013】
本発明の例示的な実施形態について、これに限定されることなく、図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ハンドリングデバイスの第1の状態で、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えた、整備されるピストンと共に本発明に係るハンドリングデバイスを示す側面図である。
【
図3】ハンドリングデバイスの第2の状態における
図2の側面図である。
【
図5】ハンドリングデバイスの第3の状態におけるハンドリングデバイスの斜視図である。
【
図6】スモールエンドが分離された、ハンドリングデバイスの第3の状態における
図1の側面図である。
【
図7】スモールエンドが省略された
図6の平面図である。
【
図8】ピストンが分解された、ハンドリングデバイスの第1の状態における
図2および
図3の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ピストンピンを介してピストンに取り付けられたスモールエンドを備えたピストンの整備中に使用されるハンドリングデバイス、および本発明によるハンドリングデバイスを使用して、そうしたピストンを整備する方法に関する。このハンドリングデバイスを用いて整備され、取り扱われるピストンは、例えば、船舶用ディーゼル内燃機関などの大型内燃機関のピストンである。このようなピストンは、通常、ピストン下部とピストン上部とからなる組み立て式ピストンとして具現化される。そうしたピストンは、組み立て式コネクティングロッドを介してクランクシャフトに取り付けられるが、コネクティングロッドは、スモールエンドと、コネクティングロッド本体と、ビックエンドから形成される。スモールエンドは、コネクティングロッドをピストンに接続する役割を果たす。ビックエンドは、コネクティングロッドをクランクシャフトに接続する役割を果たす。コネクティングロッドはスモールエンドとビックエンドの間で延びる。
【0016】
図1および
図2は、それに対してピストンピン12を介してスモールエンド13が取り付けられる、ハンドリングデバイスによって整備されるピストン11と共に、本発明に係る(ピストンピンを介してスモールエンドが取り付けられる)ピストンを整備するためのハンドリングデバイス10を示す異なる側面図である。既に説明したように、このピストン11は、例えば船舶用ディーゼル内燃機関などの大型内燃機関のピストンである。
【0017】
ハンドリングデバイス10は基礎フレーム14を具備する。基礎フレーム14は、脚15と、サイドメンバー16と、クロスメンバー17と、支持ストラット18とを具備する。サイドメンバー16およびクロスメンバー17は水平方向に広がる平面内で延びあるいはこの平面を画定し、そして脚15は、この平面に対して、下向きの第1の方向に離れて立ち、そして支持ストラット18は、この平面に対して、上に向かって第2の方向に離れて立つ。脚15の高さは、サイドメンバー16およびクロスメンバー17によって規定される平面の距離を決定し、これによって最終的にはハンドリングデバイス10の作業高さを決定する。基礎フレーム14、すなわち脚15、クロスメンバー16、サイドメンバー17および支持ストラット18は、互いに簡単に差し込むことができるプラグ形材として優先的に形成される。
【0018】
さらに、ハンドリングデバイス10は、ピストンピン12を介してピストン11に取り付けられたスモールエンド13を備えた、整備されるピストン11のための受けデバイス19を備え、この受けデバイス19は、基礎フレーム14に対して、それによって、最終的に、受けデバイス19によって受け取られたピストン11を異なる整備ステップのための決められた位置または傾動位置へと移送するために、回動可能または傾動可能である。ここで、受けデバイス19はベースプレート20を備える。受けデバイス19のベースプレート20は、回動アーム21を介して、基礎フレーム14の支持ストラット18に回動可能または傾動可能に取り付けられ、
図1では、基礎フレーム14に対する受けデバイス19の回動軸または傾動軸は、図式化された方法でXによってマークされている。ベースプレート20および回動アーム21に加えて、受けデバイス19は、ベースプレート20に作用するスピンドル22と、スピンドル22に作用するクランプブリッジ23とを具備する。ピストン11(これは受けデバイス19のベースプレート10上に配置され、かつ、それにはピストンピン12を介してスモールエンド13が取り付けられている)は、特にスピンドル22を締め付けることによって、受けデバイス19の領域において、ベースプレート20とクランプブリッジ23との間にクランプすることができる。
【0019】
さらに、ハンドリングデバイス10は、基礎フレーム14に対して受けデバイス19を回動または傾動させる役割を果たすアクチュエータ24を具備する。ここで、アクチュエータ24は、図示される好ましい例示的な実施形態では、ハンドホイール25およびセルフロックギア26を具備する。ハンドホイール25を作動させることにより、受けデバイス19を、基礎フレーム14に対して手動で傾動または回動させることができ、先に説明したように、セルフロックギア26は、ハンドホイール25と回動アーム21との間に接続される。特に、ハンドリングデバイスで作業する人員がハンドホイール25を放すと、受けデバイス19の相対的な回動位置または傾動位置は、セルフロックギア26によって基礎フレーム14に対してセルフロック式に固定される。したがって、基礎フレーム14に対する、受けデバイス19または受けデバイス19に受け取られたピストン11の意図しない移動が防止される。
【0020】
基礎フレーム14、受けデバイス19およびアクチュエータ24に加えて、ハンドリングデバイス10はさらに、ロックデバイス27を備える。図示される例示的な実施形態ではロックピンとして具現化されるかあるいはロックピンを具備するロックデバイス27によって、受けデバイス19は、基礎フレーム14上で異なる回動位置または傾動位置においてロック可能である。
【0021】
受けデバイス19または受けデバイス19にクランプされたピストン11は、特にロックピンまたはロックデバイス27が係合解除またはロック解除されている場合にのみ、アクチュエータ24の助けを借りて、基礎フレーム14に対して回動可能または傾動可能である。対照的に、ロックデバイス27がロックされた状態では、受けデバイス19は、基礎フレーム14に対して傾動または回動することができない。
【0022】
図1および
図2は、受けデバイス19の第1の回動位置または傾動位置でハンドリングデバイス10を示しており、そのベースプレート20は、下方にあるいは基礎フレーム14の脚15に面するように向けられている。受けデバイス19のこの相対位置では、ピストンピン12を介してスモールエンド13が取り付けられる、内燃機関から取り外されたピストン11をベースプレート上に降下させ、クランプブリッジ23およびスピンドル22を介して、ベースプレート20とクランプブリッジ23との間にクランプすることができる。
【0023】
アクチュエータ24を作動させることにより、ロックデバイス27の解放に続いて、受けデバイス19は、受けデバイス19に受け取られクランプされたピストン11と共に、基礎フレーム14に対して、すなわち例えば
図3に示される回動位置または傾動位置へと移動することができる(
図3では、
図1および
図2に比べて、ピストン11は基礎フレーム14に対して90°移動させられている)。矢印Rは、ピストン11または受けデバイス19が回動または傾動中にピストンと共に移動できる範囲を視覚化している。
【0024】
図5では、受けデバイス19はさらに、ピストン11と共に、アクチュエータ24の助けを借りて、基礎フレーム14に対して、
図1および
図2の回動位置または傾動位置に比べて、受けデバイス19が、この受けデバイス19にクランプされたピストン11と共に逆さまにたつように、さらに90°だけ傾動あるいは回動させられる。
図1、
図2、
図3および
図5の全ての相対位置または傾動位置または回動位置においては、受けデバイス19は、ロックデバイス27を介してロックすることができる。
【0025】
さらに、本発明に係るハンドリングデバイス10は、受けデバイス19のベースプレート20と相互作用するアダプター28を具備する。特に、受けデバイス19が
図5の相対位置または傾動位置または回動位置をとる場合、アダプター28はベースプレート20上に配置することができ、このアダプター28は、突起29を介して、ベースプレート20上でそれ自体を支持する。スモールエンド13は、ネジ30を介して、このアダプター28に取り付けることができる。
【0026】
特に、
図5の回動位置または傾動位置にあるとき、ピストンピン12はピストン11から分離させられ、スモールエンド13は、アダプター28を介して受けデバイス19のベースプレート20上でそれ自体を支持することができ、この結果、スモールエンド13をピストン11から落下しないように固定することができる。
【0027】
アダプター28には、それを通ってファスニングフック32が延びることができる開口31が形成され、このファスニングフック32は、リングボルト33を介して、スモールエンド13にねじ込まれる。特に、ハンドリングデバイス10の受けデバイス19が、
図5に示す相対位置または傾動位置または回動位置にあるとき、ピストンピン12が分解され、そしてスモールエンド13がアダプター28を介してベースプレート上でそれ自体を支持し、スモールエンド13全体を、ベースプレート20に形成されたリセス34を介してファスニングフック32を引っ張ることによって、ピストン11から取り外すことができる。このリセス34は、
図4および
図5から最もよく分かる。
図6は、
図5による受けデバイス19の相対位置においてピストン11と共にハンドリングデバイス10を示しているが、
図6では、スモールエンド13はピストン11から持ち上げられている。
【0028】
スモールエンド13がピストン11から持ち上げられた後(
図6参照)、ベースプレート20のリセス34は、ツール35のためのアクセス開口として機能し、その助けによって、組み立て式ピストン11の場合には、ピストン上部11aと下部11bとの間のネジ接続を切り離すことができる(
図8参照)。
【0029】
ピストン上部11aおよび下部11bのネジ接続を外した後、受けデバイス19を
図1および
図2の第1の傾動位置または回動位置へと戻すことに続いて、そしてクランプブリッジ23の解放に続いて、ピストン上部11aを、
図8のように、ピストン下部11bから持ち上げることができる。
【0030】
本発明によるハンドリングデバイス10の助けを借りてピストンを整備するために、ピストンピン12を介してピストン11に取り付けられたスモールエンド13と共に整備されるピストン11は、最初に、内燃機関の対応するシリンダーから取り外される。
【0031】
これに続いて、ピストン11は、ピストンピン12を介してピストン11に取り付けられたスモールエンド13と共に、ハンドリングデバイス10の受けデバイス19上に、すなわち
図1および
図2の受けデバイス19の回動位置または傾動位置に配置され、クランプされる。この過程において、ピストン11は、受けデバイス19のベースプレート20上に配置され、そして受けデバイス19のベースプレート20とクランプブリッジ23との間にクランプブリッジ23およびスピンドル22を介してクランプされる。
【0032】
ピストン11を、ピストンピン12を介してピストン11に取り付けられたスモールエンド13と共に、整備作業のための決められた相対位置へと移送するために、受けデバイス19は、ロックデバイス27がロック解除された状態で、アクチュエータ24の助けを借りて、実施されるべき整備あるいは実施されるべき整備ステップのために決められた回動位置または傾動位置へと移送される。
【0033】
それぞれの回動位置または傾動位置において、ロックデバイス27は、それによって受けデバイス19を基礎フレーム14上でそれぞれの回動位置または傾動位置においてロックするために、それぞれの整備ステップを実施するためにロックされる。
【0034】
図1および
図2に示される位置から
図5および
図6に示される位置への受けデバイス19の傾動または回動に続いて、そしてスモールエンド13および受けデバイス19のベースプレート20へのアダプター28を取り付けに続いて、ピストンピン12を取り外すことができる。これに続いて、
図8のように、続いてピストン上部11aおよびピストン下部11bを分離するために、スモールエンド13を取り外すことができる。
【0035】
本明細書に提示された発明は、ピストンに対して整備作業を実施する際に、例えば船舶用ディーゼル内燃機関などの大型内燃機関のピストンの完全に新規かつ安全なハンドリングを可能にする。
【符号の説明】
【0036】
10 ハンドリングデバイス
11 ピストン
11a ピストン上部
11b ピストン下部
12 ピストンピン
13 スモールエンド
14 基礎フレーム
15 脚
16 サイドメンバー
17 クロスメンバー
18 支持ブレース
19 受けデバイス
20 ベースプレート
21 回動アーム
22 スピンドル
23 クランプブリッジ
24 アクチュエータ
25 ハンドホイール
26 ギア
27 ロックデバイス
28 アダプター
29 突起
30 ネジ
31 リセス
32 ファスニングフック
33 リングボルト
34 リセス
35 ツール