(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】伝熱板
(51)【国際特許分類】
F28F 3/04 20060101AFI20220824BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F28F3/04 B
F28D9/02
(21)【出願番号】P 2021524201
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078489
(87)【国際公開番号】W WO2020094367
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ノーレン
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・ヘドベリ
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500588(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03043139(EP,A1)
【文献】特開平08-271172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/04
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱板(2)であって、前記伝熱板(2)の長手方向中心軸(L)に沿って連続して配置される第1の端部分(8)と、中心部分(24)と、第2の端部分(16)と、を備え、
前記第1の端部分(8)は、第1のポート孔(10)および第2のポート孔(12)と、第1の分配パターンが設けられる第1の分配領域(14)と、を備え、
前記第2の端部分(16)は、第3のポート孔(18)および第4のポート孔(20)と、第2の分配パターンが設けられる第2の分配領域(22)と、を備え、
前記中心部分(24)は、前記第1の分配パターンおよび前記第2の分配パターンと異なる伝熱パターンが設けられる伝熱領域(26)を備え、
前記第1の端部分(8)は第1の境界線(30)に沿って前記中心部分(24)に隣接し、前記第2の端部分(16)は第2の境界線(32)に沿って前記中心部分(24)に隣接し、
前記第1の分配パターンおよび前記第2の分配パターンは分配山部(50)および分配谷部(52)を備え、前記分配山部(50)のそれぞれの頂上部分(58)は第1の平面(38)において延び、前記分配谷部(52)のそれぞれの底部分(60)は第2の平面(40)において延び、前記第1の平面(38)および前記第2の平面(40)は互いと平行であり、
前記分配山部(50)は、前記第1の分配領域(14)において前記第1の境界線(30)から前記第1のポート孔(10)に向けて延び、且つ前記第2の分配領域(22)において前記第2の境界線(32)から前記第3のポート孔(18)に向けて延びるいくつかの分離された仮想山線(54)に沿って長手方向に延び、
前記中心部分(24)の最も近くに配置される前記仮想山線(54)の各々1つに沿っての前記分配山部(50)は端山部(66)を形成し、
前記分配谷部(52)は、前記第1の分配領域(14)において前記第1の境界線(30)から前記第2のポート孔(12)に向けて延び、且つ前記第2の分配領域(22)において前記第2の境界線(32)から前記第4のポート孔(20)に向けて延びるいくつかの分離された仮想谷線(56)に沿って長手方向に延び、
前記中心部分(24)の最も近くに配置される前記仮想谷線(56)の各々1つに沿っての前記分配谷部(52)は端谷部(68)を形成し、
前記仮想山線(54)および前記仮想谷線(56)は、前記第1の分配領域(14)および前記第2の分配領域(22)の各々の中に格子を形成し、
前記格子の各々の網の目を定める前記分配谷部(52)および前記分配山部(50)は、前記伝熱板(2)が前記第1の平面(38)と前記第2の平面(40)との間において延びる領域(62)を包囲し、前記分配山部(50)の前記頂上部分(58)の幅と前記分配谷部(52)の前記底部分(60)の幅とは、前記仮想山線(54)および前記仮想谷線(56)に対して垂直に測定され、
少なくとも複数の前記端山部(66)の前記頂上部分(58)は、その長手方向の延在の少なくとも一部に沿って、残りの前記分配山部(50)の前記頂上部分(58)の第1の幅(w1)を超える第2の幅(w2)を有し、
少なくとも複数の前記端谷部(68)の前記底部分(60)は、その長手方向の延在の少なくとも一部に沿って、残りの前記分配谷部(52)の前記底部分(60)の第3の幅(w3)を超える第4の幅(w4)を有することを特徴とする、伝熱板(2)。
【請求項2】
前記第1のポート孔(10)および前記第3のポート孔(18)は前記長手方向中心軸(L)の一方の側に配置され、前記第2のポート孔(12)および前記第4のポート孔(20)は前記長手方向中心軸(L)の他方の側に配置される、請求項1に記載の伝熱板(2)。
【請求項3】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)は、それぞれの前記頂上部分(58)の前記第2の幅(w2)を得るためにそれぞれの突出部(74)を備え、前記少なくとも複数の前記端谷部(68)は、それぞれの前記底部分(60)の前記第4の幅(w4)を得るためにそれぞれの突出部(76)を備える、請求項1または2に記載の伝熱板(2)。
【請求項4】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)の前記突出部(74)は前記伝熱板(2)の第1の縁を向くように突出し、前記少なくとも複数の前記端谷部(68)の前記突出部(76)は前記伝熱板(2)の反対の第2の縁を向くように突出する、請求項3に記載の伝熱板(2)。
【請求項5】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)の前記頂上部分(58)および前記少なくとも複数の前記端谷部(68)の前記底部分(60)は第1の部分(70)と第2の部分(72)とを各々備え、前記第1の部分(70)および前記第2の部分(72)は、前記仮想山線(54)および前記仮想谷線(56)に沿って連続して配置され、前記第2の部分(72)は、その長手方向の延在の少なくとも一部分に沿って、前記第1の部分(70)より幅広であり、前記第2の部分(72)は、前記第1の分配領域(14)において、前記第1の部分(70)より前記第1の境界線(30)に近く、前記第2の部分(72)は、前記第2の分配領域(22)において、前記第1の部分(70)より前記第2の境界線(32)に近い、請求項1から4のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項6】
前記伝熱板の前側から見た場合の前記少なくとも複数の前記端山部(66)は、前記伝熱板の後側から見た場合の前記少なくとも複数の前記端山部と、
同じ形と大きさとを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項7】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)に含まれない少なくとも複数の前記分配山部(50)の前記頂上部分(58)と、前記少なくとも複数の前記端谷部(68)に含まれない少なくとも複数の前記分配谷部(52)の前記底部分(60)とは、本質的に同じ幅を有し、それらの長手方向の延在に沿って本質的に一定の幅を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項8】
前記分配山部(50)の前記頂上部分(58)の長さと、前記分配谷部(52)の前記底部分(60)の長さとは、前記仮想山線(54)および前記仮想谷線(56)と平行に測定され、端山部(66)ではない少なくとも複数の前記分配山部(50)の前記頂上部分(58)と、端谷部(68)ではない少なくとも複数の前記分配谷部(52)の前記底部分(60)とは、本質的に同じ長さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項9】
複数の前記分配山部(50)は、少なくとも複数の前記仮想山線(54)の各々1つに沿って配置され、複数の前記分配谷部(52)は、少なくとも複数の前記仮想谷線(56)の各々1つに沿って配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項10】
前記第1の境界線(30)および前記第2の境界線(32)は真っ直ぐではない、請求項1から9のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項11】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)は、前記少なくとも複数の前記端谷部(68)のそれぞれ1つに完全に隣接して各々配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項12】
前記少なくとも複数の前記端山部(66)のうち隣接する2つの前記端山部(66)について、隣接する2つの前記端山部(66)のうちの一方の前記頂上部分(58)は、前記第1の平面(38)における仮想円(78)の外側のみで延び、前記仮想円は、隣接する2つの前記端山部(66)のうちの他方の前記頂上部分(58)における点(P)と一致する中心(C)であって、前記点(P)が隣接する2つの前記端山部(66)のうちの前記一方に最も近い、中心(C)と、前記中心(C)から、隣接する2つの前記端山部(66)のうちの前記一方に対応する前記仮想山線(54)に対して垂直に、隣接する2つの前記端山部(66)のうちの前記一方の前記頂上部分(58)の縁(80)まで引かれる仮想線の長さに等しい半径(r)と、を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項13】
前記第2のポート孔(12)の最も近くに配置される前記第1の分配領域(14)の中のいくつかの前記仮想山線(54)は、前記第2のポート孔(12)から見たときに膨出するように湾曲させられ、前記第4のポート孔(20)の最も近くに配置される前記第2の分配領域(22)の中のいくつかの前記仮想山線(54)は、前記第4のポート孔(20)から見たときに膨出するように湾曲させられ、前記第1のポート孔(10)の最も近くに配置される前記第1の分配領域(14)の中のいくつかの前記仮想谷線(56)は、前記第1のポート孔(10)から見たときに膨出するように湾曲させられ、前記第3のポート孔(18)の最も近くに配置される前記第2の分配領域(22)の中のいくつかの前記仮想谷線(56)は、前記第3のポート孔(18)から見たときに膨出するように湾曲させられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項14】
前記第1の分配領域(14)および前記第2の分配領域(22)および前記伝熱領域(26)の中で、前記伝熱板(2)および前記第1の平面(38)によって包囲される第1の容積(V1)が、前記伝熱板(2)および前記第2の平面(40)によって包囲される第2の容積(V2)と異なる、請求項1から13のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【請求項15】
前記分配山部(50)および前記分配谷部(52)によって包囲される前記領域(62)の中で、前記第1の平面(38)および前記第2の平面(40)の間の中間で延びる中心平面(42)からずれている第3の平面(64)において少なくとも一部延びる、請求項1から14のいずれか一項に記載の伝熱板(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱板およびその設計に関する。
【背景技術】
【0002】
プレート式熱交換器(PHE: Plate Heat Exchanger)は、多くの伝熱板が間に積み重ねまたは一纏めで並べられて配置される2枚の端板から典型的には成る。PHEの伝熱板は、同じ種類または異なる種類のものとでき、異なる方法で積み重ねられ得る。一部のPHEでは、伝熱板は、1枚の伝熱板の前側および後側が他の伝熱板の後側および前側をそれぞれ向き、伝熱板が1枚おきに残りの伝熱板に対して上下逆さまにされた状態で積み重ねられる。典型的には、これは、互いに対して「回転」させられた伝熱板と称される。他のPHEでは、伝熱板は、1枚の伝熱板の前側および後側が他の伝熱板の前側および後側をそれぞれ向き、伝熱板が1枚おきに残りの伝熱板に対して逆さまにされた状態で積み重ねられる。典型的には、これは、互いに対して「反転」された伝熱板と称される。
【0003】
ある種類のよく知られているPHE、いわゆるガスケット付きPHEでは、ガスケットが伝熱板同士の間に配置される。端板、延いては伝熱板は、ある種の締め付け手段によって互いに向けて押圧され、それによってガスケットは伝熱板同士の間を封止する。並流通路が、隣接する伝熱板の各々の対の間に1つの通路で、伝熱板同士の間に形成される。入口を通じてPHEへと送られる/出口を通じてPHEから送られる、最初に異なる温度の2つの流体は、一方の流体から他方の流体へ熱を伝えるために1つおきの通路で交互に流れることができ、それら流体は、PHEの入口/出口と連通している伝熱板における入口ポート孔/出口ポート孔を通じて通路に入る/通路から出る。
【0004】
典型的には、伝熱板は2つの端部分と中間の伝熱部分とを備える。端部分は、入口ポート孔と、出口ポート孔と、山部および谷部の分配パターンで押圧される分配領域とを備える。同様に、伝熱部分は、山部と谷部との伝熱パターンで押圧された伝熱領域を備える。伝熱板の分配パターンおよび伝熱パターンの山部および谷部は、接触領域において、プレート式熱交換器における隣接する伝熱板の分配パターンおよび伝熱パターンの山部および谷部と接触するように配置される。伝熱板の分配領域の主な役割は、流体が伝熱領域に到達する前に、通路に入る流体を伝熱板の幅にわたって拡げること、および、伝熱領域を通過した後に流体を集めて通路の外へ案内することである。反対に、伝熱領域の主な役割は伝熱である。
【0005】
分配領域と伝熱領域とが異なる主な役割を有するため、分配パターンは通常は伝熱パターンと異なる。分配パターンは、隣接する伝熱板同士の間に比較的少ないが大きな接触領域を提供する、いわゆるチョコレートパターンなどのより「開放」した分配パターンの設計と典型的には関連付けられる比較的小さい流れ抵抗および小さい圧力損失を提供するようにされ得る。伝熱パターンは、隣接する伝熱板同士の間に比較的多いがより小さい接触領域を提供する、いわゆるヘリンボーンパターンなどのより「密」の伝熱パターンの設計と典型的には関連付けられる比較的大きい流れ抵抗および大きい圧力損失を提供するようにされ得る。したがって、分配領域の中での隣接する接触領域同士の間の距離は、伝熱領域の中での隣接する接触領域同士の間の距離より典型的には大きくなる可能性がある。
【0006】
並べられた伝熱板の一纏めは、典型的には、隣接する接触領域同士の間の距離が比較的大きい場合により弱くなる。さらに、分配領域と伝熱領域との間の移行部において、つまり、板のパターンが変化する場所で、接触領域は典型的には比較的散乱させられ、これは移行部において伝熱板の一纏めの強度に悪影響を与え得る。板の一纏めがより強くない場合、より変形を受けやすくなり、これはプレート式熱交換器の不具合をもたらす可能性がある。
【0007】
本明細書において参照により組み込まれている本出願者のスウェーデン特許SE528879は、伝熱板同士が互いに対して「回転」させられている板の一纏めの分配領域と伝熱領域との間の移行部において向上した強度を提供することを目指している。これは、分配領域と伝熱領域との間に狭い帯域を提供することで得られ、この狭い帯域にはヘリンボーンパターンが設けられ、より具体的には、密に配置された「急峻」な山部および谷部が設けられ、密に配置された接触領域を提供する。SE528879が非常に良好に作用する解決策を開示しているが、これは、互いに対して「回転」させられた伝熱板に限定され、互いに対して「反転」させられた伝熱板には作用しない。これは、伝熱板同士が互いに対して「回転」させられるときは、パターンの交差、延いては点の形での接触領域が得られるが、互いに対して「反転」させられるときには得られないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】SE528879
【文献】EP2957851
【文献】EP2728292
【文献】EP1899671
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の先に検討した問題を少なくとも一部解決する伝熱板を提供することである。本発明の基本的な概念は、伝熱板同士が互いに対して「回転」させられていると共に「反転」させられている伝熱板の一纏めに適している点において、先に検討した先行技術の解決策より柔軟である移行部を強化した解決策を提供することである。上記の目的を達成するための、本明細書では単に「板」とも称される伝熱板が、添付の特許請求の範囲において定められており、以下において詳述されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による伝熱板は、伝熱板の長手方向中心軸に沿って連続して配置される第1の端部分と、中心部分と、第2の端部分とを備える。第1の端部分は、第1および第2のポート孔と、第1の分配パターンが設けられる第1の分配領域とを備える。第2の端部分は、第3および第4のポート孔と、第2の分配パターンが設けられる第2の分配領域とを備える。中心部分は、第1の分配パターンおよび第2の分配パターンと異なる伝熱パターンが設けられる伝熱領域を備える。第1の端部分は第1の境界線に沿って中心部分に隣接し、第2の端部分は第2の境界線に沿って中心部分に隣接する。第1の分配パターンおよび第2の分配パターンは分配山部および分配谷部を各々備える。分配山部のそれぞれの頂上部分は第1の平面において延び、分配谷部のそれぞれの底部分は第2の平面において延びる。第1および第2の平面は分離され、互いと平行である。分配山部は、第1の分配領域において第1の境界線から第1のポート孔に向けて延び、第2の分配領域において第2の境界線から第3のポート孔に向けて延びるいくつかの分離された仮想山線に沿って長手方向に延びる。中心部分の最も近くに配置される仮想山線の各々1つに沿っての分配山部は端山部を形成する。分配谷部は、第1の分配領域において第1の境界線から第2のポート孔に向けて延び、第2の分配領域において第2の境界線から第4のポート孔に向けて延びるいくつかの分離された仮想谷線に沿って長手方向に延びる。中心部分の最も近くに配置される仮想谷線の各々1つに沿っての分配谷部は端谷部を形成する。仮想山線および仮想谷線は、第1および第2の分配領域の各々の中に格子を形成する。格子の各々の網の目を定める分配谷部および分配山部は、領域を包囲する。この領域の内部では、伝熱板が、第1の平面から0を超える距離および第2の平面から0を超える距離で延び、つまり、第1の平面および第2の平面から分離されて延びる。分配山部の幅と、分配谷部の幅と、分配山部の頂上部分の幅と、分配谷部の底部分の幅とは、仮想山線および仮想谷線に対して垂直に測定される。伝熱板は、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の端山部の頂上部分が、その長手方向の延在の少なくとも一部に沿って、残りの分配山部の頂上部分の第1の幅を超える第2の幅を有することを特徴とする。さらに、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の端谷部の底部分は、その長手方向の延在の少なくとも一部に沿って、残りの分配谷部の底部分の第3の幅を超える第4の幅を有する。第1の幅と第3の幅とは等しくても等しくなくてもよく、第2の幅と第4の幅とは等しくても等しくなくてもよい。
【0011】
ここで、他に述べられていない場合、伝熱板の山部および谷部は、伝熱板の前側から見られるときに山部および谷部である。必然的に、板の前側から見られるときに山部であるものは、板の反対の後側から見られるときに谷部であり、板の前側から見られるときに谷部であるものは、板の後側から見られるときに山部であり、逆の場合も同じである。
【0012】
文書を通じて、例えば、何かから「何か以外」に向けて延びる線などに言及するとき、その線は真っ直ぐである必要はなく、「何か以外」に向けて斜めに延びてもよい。
【0013】
伝熱板は、第1の端部分、第2の端部分、および中心部分を包囲する外縁部分をさらに備えてもよい。外縁部分は、第1の平面と第2の平面との間で、第1の平面および第2の平面において延びる波形を備えてもよい。外縁部分全体、または外縁部分の一部分だけもしくは複数の部分が、波形を備えてもよい。波形は、縁部分に沿って均一または不均一に分配されてもよく、すべて同じに見えてもよいし見えなくてもよい。波形は、縁部分に波のような設計を与え得る山部および谷部を定める。
【0014】
波形は、伝熱板がプレート式熱交換器において配置されるとき、伝熱板の前側において第1の隣接伝熱板に当接し、伝熱板の反対の後側において第2の隣接伝熱板に当接するように配置され得る。伝熱板と、第1および第2の隣接伝熱板とは、すべて同じ種類のものであってもよい。代替で、伝熱板と、第1および第2の隣接伝熱板とは、それらが請求項1に従って構成される限り、異なる種類のものであってもよい。
【0015】
第1および第2の分配パターンはいわゆるチョコレートパターンである。伝熱板の中心部分の最も近くに配置される第1および第2の分配パターンの山部および谷部のうちの少なくとも一部、つまり、端山部および端谷部は、特にはそれらの頂上部分および底部分が、それらの長さの少なくとも一部に沿ってより幅広となる点において、残りの山部および谷部の構成と逸脱する構成を有する。それによって、端山部および端谷部は、残りの山部および谷部より大きい接触領域を提供することができる。さらに、端山部および端谷部は、拡幅なしである場合より、隣接する接触領域同士の間に短い距離を提供することができる。大きくすぐ近くの接触領域同士は、本発明の伝熱板を備える板の一纏めの強度に肯定的に寄与することができる。また、拡幅を呈する端山部および端谷部であるため、強度が最も必要とされる場所の近く、つまり、第1および第2の端部分と中心部分との間の移行部の近くで、強度が増加させられる。後で例示されているように、本発明は、互いに対して「回転」させられた板を備える板の一纏めと、互いに対して「反転」させられた板を備える板の一纏めとの両方において、成功裏に適用させることができる。必然的に、成功裏の適用は、板の一纏めにおける残りの伝熱板の設計に依存する。
【0016】
第1および第3のポート孔は長手方向中心軸の一方の側に配置され、第2および第4のポート孔は長手方向中心軸の他方の側に配置され得る。それによって、伝熱板は、いわゆる並流式のプレート式熱交換器での使用に適し得る。このような並流の熱交換器は1つだけの板の種類を備え得る。代わりに、第1および第4のポート孔が長手方向中心軸の一方の同じ側に配置され、第2および第3のポート孔が長手方向中心軸の同じ他方の側に配置される場合、板は、いわゆる斜流式のプレート式熱交換器における使用に適することができる。このような斜流の熱交換器は2つ以上の板の種類を典型的には備え得る。
【0017】
前記少なくとも複数の端山部は、それぞれの頂上部分の第2の幅を得るために、踵部などそれぞれの突出部を備え得る。さらに、前記少なくとも複数の端谷部は、それぞれの底部分の第4の幅を得るために、踵部などそれぞれの突出部を備え得る。突出部の提供は、端山部および端谷部の所望の拡幅、特に、それらの頂上部分および底部分の所望の拡幅を得る容易な方法を構成する。
【0018】
代替で、前記少なくとも複数の端山部および前記少なくとも複数の端谷部は、拡幅を得るために2つのそれぞれの反対の突出部を備え得る。
【0019】
前記少なくとも複数の端山部の突出部は、伝熱板の長手側の縁などの第1の縁を向くように突出してもよい。さらに、前記少なくとも複数の端谷部の突出部は、伝熱板の反対の長手側の縁などの反対の第2の縁を向くように突出してもよい。
【0020】
代替で、前記少なくとも複数の端山部の突出部と前記少なくとも複数の端谷部の突出部とは、伝熱板の同じ縁を向くように突出してもよい。
【0021】
伝熱板は、前記少なくとも複数の端山部の頂上部分および前記少なくとも複数の端谷部の底部分が第1の部分と第2の部分とを各々備え、第1および第2の部分は、仮想山線および仮想谷線に沿って連続して配置されるようにされてもよい。第2の部分は、その長手方向の延在の少なくとも一部分に沿って、第1の部分より幅広であり得る。第2の部分は、第1の分配領域において、第1の部分より第1の境界線に近くてもよい。同様に、第2の部分は、第2の分配領域において、第1の部分より第2の境界線に近くてもよい。それによって、伝熱板は、第1および第2の境界線のできるだけ近くで、つまり、強度が最も必要とされる場所で、増加した強度を提供することができる。
【0022】
第1の部分と第2の部分とは一体に形成されてもよい。
【0023】
前記少なくとも複数の端山部は前記少なくとも複数の端谷部の裏返しであってもよい。別の言い方をすれば、板の前側から見られるときの前記少なくとも複数の端山部は、板の後側から見られるときの前記少なくとも複数の端山部(これらは、板の前側から見られるときに前記少なくとも複数の端谷部である)と、本質的に同じ形態または形と大きさとを有し得るが、必ずしも同じ配向を有していなくてもよい。それによって、接触領域の大きさが最大化され得る。
【0024】
前記少なくとも複数の端山部に含まれない、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の分配山部の頂上部分と、前記少なくとも複数の端谷部に含まれない、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の分配谷部の底部分とは、本質的に同じ幅を有し、それらの長手方向の延在に沿って本質的に一定の幅を有し得る。これは、板の「回転」に加えて板の「反転」の場合に最大の大きさの接触領域の形成を容易にすることができる。
【0025】
分配山部の長さと、分配谷部の長さと、分配山部の頂上部分の長さと、分配谷部の底部分の長さとは、仮想山線および仮想谷線と平行に測定される。端山部ではない大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の分配山部の頂上部分と、端谷部ではない大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の分配谷部の底部分とは、本質的に同じ長さを有し得る。これは、板の「回転」に加えて板の「反転」の場合に最大の大きさの接触領域の形成を容易にすることができる。
【0026】
複数の分配山部は、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の仮想山線の各々1つに沿って配置され得る。さらに、複数の分配谷部は、大部分または全部ですらあり得る少なくとも複数の仮想谷線の各々1つに沿って配置され得る。これは、少なくとも複数の仮想山線および仮想谷線に沿っての複数の分離した接触領域の形成を容易にすることができる。
【0027】
第1および第2の境界線は真っ直ぐでなくてもよく、つまり、長手方向中心軸に対して非垂直に延びてもよい。それによって、第1および第2の境界線が代わりに真っ直ぐであり、伝熱板の曲げ線として供することができる場合と比較して、伝熱板の曲げ強度を増加させることができる。
【0028】
第1および第2の境界線は、伝熱領域に向けて膨出するように湾曲、アーチ状、または凸状にされ得る。このような湾曲した第1および第2の境界線は、対応する真っ直ぐの第1および第2の境界線より長くなり、これは、分配領域のより大きな「出口」とより大きな「入口」とをもたらす。さらにこれは、伝熱板の幅にわたっての流体の分配と、伝熱領域を通過した流体の収集とに寄与する。それによって、分配領域は、維持される分配および収集の効率でより小さくさせることができる。
【0029】
前記少なくとも複数の端山部の各々は、前記少なくとも複数の端谷部のそれぞれ1つに完全に隣接して配置され、つまり、端谷部のそれぞれ1つからゼロの距離で配置され得る。完全に隣接する端山部および端谷部の各々の対の端山部および端谷部の突出部は、互いから離れる方を向くことができる。完全に隣接する端山部と端谷部とは完全とでき、つまり、重なっていない。端谷部へと直接的に移行する端山部を有することで、曲げ結合部として機能し得る、端山部と端谷部との間の平面の板部分を省くことができ、それによって板の強度が向上される。
【0030】
端山部の各々1つの頂上部分は、第1の平面における仮想円の外側のみで延びてもよく、その円は、端山部の隣接するものの頂上部分における最も近い点と一致する中心と、中心から、対応する仮想山線に対して垂直に、端山部の前記各々1つの頂上部分の縁まで引かれる仮想線の長さに等しい半径とを有する。それによって、隣接する分配山部の間の距離が隣接する端山部の間でより小さくなるように小さくされないことが確保でき、これは、そうでない場合に、伝熱板を備える熱交換器において流体の流れの抵抗をもたらすことになる。
【0031】
第2のポート孔の最も近くに配置される第1の分配領域の中のいくつかの仮想山線は、第2のポート孔から見たときに膨出するように湾曲させられ得る。同様に、第4のポート孔の最も近くに配置される第2の分配領域の中のいくつかの仮想山線は、第4のポート孔から見たときに膨出するように湾曲させられ得る。さらに、第1のポート孔の最も近くに配置される第1の分配領域の中のいくつかの仮想谷線は、第1のポート孔から見たときに膨出するように湾曲させられ得る。同様に、第3のポート孔の最も近くに配置される第2の分配領域の中のいくつかの仮想谷線は、第3のポート孔から見たときに膨出するように湾曲させられ得る。これは、伝熱板の幅にわたっての流体の分配と、伝熱領域を通過した流体の収集とに寄与することができる。
【0032】
第2の分配パターンと、第2の境界線と、第3および第4のポート孔とはそれぞれ、長手方向中心軸に対して垂直に延びる伝熱板の横断中心軸に沿って、第1の分配パターンと、第1の境界線と、第1および第2のポート孔との鏡映しであってもよい。これは、このように設計された伝熱板と別の伝熱板との間の接触領域の最適な形成を、それら伝熱板が互いに対して「回転」させられるか「反転」させられるかに拘わらず、可能にすることができる。
【0033】
伝熱板は、第1および第2の分配領域および伝熱領域の中で、伝熱板および第1の平面によって包囲される第1の容積が、伝熱板および第2の平面によって包囲される第2の容積と異なるようにされてもよい。これは、このように設計された伝熱板と別の伝熱板とを用いて、3つの異なる通路容積の形成を可能にすることができる。より具体的には、伝熱板のうちの1つは他の伝熱板に対して「反転」されてもよく、その場合、前側が互いを向いている2つの伝熱板の配置は第1の通路容積をもたらし、後側が互いを向いている2つの伝熱板の配置は第2の通路容積をもたらす。代替で、伝熱板のうちの1つが他の伝熱板に対して「回転」させられてもよく、これは、伝熱板のうちの1つの前側が他の伝熱板の後側を向く状態をもたらし、第3の通路容積をもたらす。したがって、このように構築された伝熱板を備える板の一纏めにおける伝熱板の「反転」は、1つおきの通路が残りの通路より大きい容積を有する非対称的な通路をもたらすことができ、これは一部の用途において望ましい可能性がある。さらに、このように構築された伝熱板を備える板の一纏めにおける伝熱板の「回転」は、同じ容積を有する対称的な通路をもたらすことができ、これは他の用途において望ましい可能性がある。
【0034】
伝熱板は、分配山部および分配谷部によって包囲される前記領域の中で、第1および第2の平面の間の中間で延びる中心平面からずれている第3の平面において少なくとも一部延び得る。これは、伝熱板のための異なる第1および第2の容積を得る1つの方法であり得る。
【0035】
伝熱パターンは、中心平面に対して交互に配置された伝熱山部および伝熱谷部を備え得る。分配山部のそれぞれの頂上部分は第1の平面において延びることができ、分配谷部のそれぞれの底部分は第2の平面において延びることができる。分配山部は分配谷部より尖っていてもよい。別の言い方をすれば、伝熱山部および伝熱谷部の長手方向の延在に対して垂直に取られる伝熱パターンの断面から見たとき、伝熱谷部の底部分の延在は、伝熱山部の頂上部分の延在を上回ってもよい。これは、伝熱板のための異なる第1および第2の容積を得る1つの方法であり得る。
【0036】
本発明の伝熱板の前述した特徴のすべてではなくてもほとんどの利点が、伝熱板が板の一纏めにおける他の適切に構築された伝熱板と組み合わされるときに現れることは、強調されるべきである。
【0037】
本発明のなおも他の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な記載と図面とから明らかになる。
【0038】
ここで、本発明は、添付の概略的な図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】板の一纏めの外側から見たときの板の一纏めにおける隣接する伝熱板の当接する外縁の図である。
【
図3】
図1における伝熱板の伝熱領域を貫いての概略的な断面図である。
【
図4a】
図1における伝熱板の第1の分配領域の拡大図である。
【
図4b】
図1における伝熱板の第2の分配領域の拡大図である。
【
図5a】
図1における伝熱板の第1または第2の分配領域を貫いての概略的な断面図である。
【
図5b】
図1における伝熱板の第1または第2の分配領域を貫いての他の概略的な断面図である。
【
図6】
図1に示された伝熱板の第1の分配領域の一部分の拡大図である。
【
図7】第1および第2の分配領域の端山部の延在の限度を示す
図6の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、導入部により記載されているようなガスケット付きプレート式熱交換器の伝熱板2aを示している。完全には示されていないガスケット付きPHEは、伝熱板2aのような伝熱板2の一纏め、つまり、同じく同様であって図示されていないガスケットによって分離された同様の伝熱板の一纏めを備える。
図2を参照すると、板の一纏めでは、板2aの前側4(
図1に示されている)は隣接する板2bを向いており、板2aの後側6(
図1では見えないが
図2で指示されている)は別の隣接する板2cを向いている。
【0041】
図1を参照すると、伝熱板2aは、ステンレス鋼の本質的に長方形のシートである。伝熱板2aは第1の端部分8を備え、第1の端部分8はさらに、第1のポート孔10と、第2のポート孔12と、第1の分配領域14とを備える。板2aは第2の端部分16をさらに備え、第2の端部分16はさらに、第3のポート孔18と、第4のポート孔20と、第2の分配領域22とを備える。板2aは、伝熱領域26をさらに備える中心部分24と、第1の端部分8、第2の端部分16、および中心部分24の周りで延びる外縁部分28とをさらに備える。第1の端部分8は第1の境界線30に沿って中心部分24に隣接しており、一方、第2の端部分16は第2の境界線32に沿って中心部分24に隣接している。第1の境界線30と第2の境界線32とは互いに向けて膨出するようにアーチ状とされている。
図1から明確であるように、第1の端部分8、中心部分24、および第2の端部分16は板2aの長手方向中心軸Lに沿って連続して配置されており、長手方向中心軸Lは板2aの横断中心軸Tに対して垂直に延びている。同じく
図1から明確であるように、第1のポート孔10および第3のポート孔18は、長手方向中心軸Lの一方の同じ側に配置されており、一方、第2のポート孔12および第4のポート孔20は長手方向中心軸Lの他方の側に配置されている。また、伝熱板2aは、前側4から見られるような前ガスケット溝34と、後側6から見られるような後ガスケット溝(図示されていない)とを備える。前ガスケット溝および後ガスケット溝は、互いと部分的に並べられ、それぞれのガスケットを受け入れるように配置されている。
【0042】
伝熱板2aは、所望の構造が提供されるように、より具体的には、伝熱板の異なる部分の中に異なる波形パターンが提供されるように、従来の手法において押圧器具で押圧される。導入部により詳述されているように、波形パターンは、それぞれの板部分の特定の機能について最適化される。したがって、第1の分配領域14には第1の分配パターンが設けられており、第2の分配領域22には第2の分配パターンが設けられており、伝熱領域26には伝熱パターンが設けられている。さらに、外縁部分28は、外縁部分をより強固にする波形36を備え、したがって、伝熱板2aを変形に対してより耐性を持たせている。さらに、波形36は、PHEの板の一纏めにおいて、隣接する伝熱板の波形に当接するように配置される支持構造を形成する。板の一纏めの伝熱板2aと2つの隣接する伝熱板2bおよび2cとの間の周囲の接触を示している
図2を再び参照すると、波形36は、第1の平面38と第2の平面40との間と、第1の平面38および第2の平面40とにおいて延びており、第1の平面38と第2の平面40とは
図1の図の平面と平行である。中心平面42は、第1の平面38と第2の平面40との間の中間で延びており、前ガスケット溝34および後ガスケット溝のそれぞれの底は、この中心平面42において、つまり、いわゆる半平面において延びている。
【0043】
伝熱パターンは、いわゆるヘリンボーン式であり、長手方向中心軸Lに沿って交互に配置されたV字形の伝熱山部44および伝熱谷部46を備える。伝熱山部44および伝熱谷部46の長手方向の延在に対して垂直に切り取られた、伝熱領域26の中の板2aの断面を概略的に示している
図3を参照すると、伝熱山部44および伝熱谷部46は、第1の平面38と第2の平面40との間と、第1の平面38および第2の平面40とにおいて延びている。
図3において示されているように、伝熱山部44と伝熱谷部46とは中心平面42に対して対称的ではない。代わりに、伝熱谷部46は、伝熱山部44より幅広である、または、伝熱山部44ほど尖っていない。結果的に、伝熱領域26の中で、板2aと第1の平面38とによって包囲される第1の容積V1は、板2aと第2の平面40とによって包囲される第2の容積V2より大きくなる。
【0044】
板2aの一部の拡大を示している
図4aおよび
図4bを参照すると、同様である第1の分配パターンおよび第2の分配パターンは、細長い分配山部50と細長い分配谷部52とを各々備える。分配山部50はセットへと分けられる。各々のセットの分配山部50は、いくつかの分離した仮想山線54のうちの1つに沿って長手方向に延びて配置され、それら仮想山線54のうちのいくつかだけが
図4aおよび
図4bにおいて破線によって示されている。同様に、分配谷部52はセットへと分けられる。各々のセットの分配谷部52は、いくつかの分離した仮想谷線56のうちの1つに沿って長手方向に延びて配置され、それら仮想谷線56のうちのいくつかだけが
図4aおよび
図4bにおいて破線によって示されている。
図4aに示されているように、第1の分配領域14では、仮想山線54は第1の境界線30から第1のポート孔10に向けて延びている一方で、仮想谷線56は第1の境界線30から第2のポート孔12に向けて延びている。同様に、
図4bに示されているように、第2の分配領域22では、仮想山線54は第2の境界線32から第3のポート孔18に向けて延びている一方で、仮想谷線56は第2の境界線32から第4のポート孔20に向けて延びている。
図4aおよび
図4bに示されているように、分配山部および分配谷部の最も多くのセットを伴う仮想山線54および仮想谷線56は、第1の境界線30および第2の境界線32のそれぞれ1つに向けて膨出するように湾曲されている一方で、残りの仮想山線54および仮想谷線56、つまり、分配山部および分配谷部の最も少ないセットを伴う仮想山線54および仮想谷線56は、本質的に真っ直ぐである。仮想山線54と仮想谷線56とは、第1の分配領域14および第2の分配領域22の各々の中で仮想的な格子を形成するように互いと交差している。これらの格子は網の目を含み、第1の境界線30および第2の境界線32にすぐ隣接する網の目は開けられており、残りの網の目は閉じられている。
【0045】
図5aは、仮想谷線56の2つの隣接するものの間で切り取られた第1の分配領域14および第2の分配領域22の断面を概略的に示しており、
図5bは、仮想山線54の2つの隣接するものの間で切り取られた第1の分配領域14および第2の分配領域22の断面を概略的に示している。
図5aおよび
図5bから明らかであるように、分配山部50のそれぞれの頂上部分58は第1の平面38において延び、分配谷部52のそれぞれの底部分60は第2の平面40において延びる。さらに、格子の各々の網の目を定める分配山部50および分配谷部52は、
図4aおよび
図4bにも示されているように、三角形または四角形の領域62を、閉じた網の目の場合で完全に、開いた網の目の場合で部分的に包囲している。この領域62は、第2の平面40と中心平面42との間に配置された第3の平面64において延びている。第3の平面64が中心平面42からずらされているため、板2aおよび第1の平面38によって包囲された第1の容積V1は、第1の分配領域14および第2の分配領域22の中で、板2aおよび第2の平面40によって包囲された第2の容積V2より大きくなる。
【0046】
仮想山線54のうちの1つの同じものに沿っての分配山部50の2つの隣接するもの同士の間と、仮想谷線56のうちの1つの同じものに沿っての分配谷部52の2つの隣接するもの同士の間とにおいて、板2aは、ここでは、中心平面42において延びている(しかし、これは他の実施形態では異なる可能性がある)。
【0047】
第1の分配領域14において第1の境界線30の最も近くに配置され、第2の分配領域22において第2の境界線32の最も近くに配置される仮想山線54の各々に沿った分配山部50は、それぞれの端山部66を形成している。対応する方法で、第1の分配領域14において第1の境界線30の最も近くに配置され、第2の分配領域22において第2の境界線32の最も近くに配置される仮想谷線56の各々に沿った分配谷部52は、それぞれの端谷部68を形成している。板2aの前側4から見たときの端山部66と、板2aの反対の後側から見たときの端谷部68とは、それらが端山部を形成する場所において、同じ形を有する。これは、端山部66が端谷部68の裏返しであることを意味する。端山部66の各々は端谷部68のそれぞれ1つのすぐ傍らに配置されている。
【0048】
分配山部50の幅と、分配谷部52の幅と、特には、分配山部50の頂上部分58の幅と、分配谷部52の底部分60の幅とは、仮想山線54および仮想谷線56に対してそれぞれ垂直に測定される。端山部66ではない分配山部50の頂上部分58と、端谷部68ではない分配谷部52の底部分60とは、同じ幅w1=w3を有し(
図5aおよび
図5b)、幅は本質的にそれらの完全な長手方向の延在に沿って一定である。分配山部50の頂上部分58の長さおよび分配谷部52の底部分60の長さはそれらの長手方向の延在であり、これは、それぞれの仮想山線54および仮想谷線56と平行に測定される。
図4aおよび
図4bから明らかであるように、端山部66および端谷部68ではない分配山部50および分配谷部52(ポート孔10、12、18、および20に最も隣接しているものではない)のほとんどの頂上部分58および底部分60は、本質的に同じ長さを有する。
【0049】
端山部66および端谷部68は、残りの分配山部50および分配谷部52の形から逸脱する形を有する。
図6は、
図1におけるゴースト線で描かれた囲みの中の第1の分配領域14の拡大を含む。
図6から明らかであるように、端山部66の頂上部分58および端谷部68の底部分60は、仮想山線54および仮想谷線56の対応するものに沿って連続して配置された第1の部分70および第2の部分72を各々備える。第1の分配領域14の中で、第2の部分72は第1の境界線30に最も隣接する部分であり、第2の分配領域22の中で、第2の部分72は第2の境界線32に最も隣接する部分である(境界線30および32は
図1に示されている)。第1の部分の幅はw1=w3である。第2の部分72は、端山部66について符号74で指示され、端谷部68について符号76で指示された外側の踵部または突出部を各々備え、これは、対応する端山部66または端谷部68、およびそれらの頂上部分58および底部分60の局所的な拡幅をもたらす。したがって、それらの長手方向の延在の一部に沿って、第2の部分は、w1=w3より大きい幅w2=w4を有する。
【0050】
図から明らかであるように、端山部66の突出部74は伝熱板2の第1の縁73(
図1)を向くように突出しており、端谷部68の突出部76は伝熱板2の反対の第2の縁75(
図1)を向くように突出している。
【0051】
図1によって指示されているように、一方における第1のポート孔10、第2のポート孔12、第1の境界線30、および、第1の分配パターンを含む第1の分配領域14と、他方における第3のポート孔18、第4のポート孔20、第2の境界線32、および、第2の分配パターンを含む第2の分配領域22とは、横断中心軸Tを参照して、対称的である、または、互いの鏡写しである。
【0052】
先に述べられているように、板の一纏めでは、板2aは板2bおよび2cの間に配置される。板2bおよび2cは、板2aに対して「反転」または「回転」のいずれかが行われて配置され得る。
【0053】
板2bおよび2cが板2aに対して「反転」させられて配置される場合、板2aの前側4および後側6は、板2bの前側4および板2cの後側6をそれぞれ向く。これは、板2aの山部が板2bの山部に当接し、板2aの谷部が板2cの谷部に当接することを意味する。より具体的には、板2aの伝熱山部44および伝熱谷部は、点状の接触領域において、板2bの伝熱山部44および板2cの伝熱谷部46にそれぞれ当接する。さらに、板2aの分配山部50の頂上部分58および分配谷部52の底部分60は、細長い接触領域において、板2bの分配山部50の頂上部分58および板2cの分配谷部52の底部分60にそれぞれ当接する。端山部66および端谷部の踵部74および76のため、第1および第2の境界線30および32に最も近い接触領域は、伝熱領域26と分配領域14および22との間の移行部に近い板の一纏めに追加的な強度を提供するために局所的に拡幅されることになる。板2aおよび2bは容積2×V1の通路を形成し、一方で、板2aおよび2bは容積2×V2の通路を形成し、つまり、V1>V2であるため、2つの非対称的な通路を形成する。
【0054】
板2bおよび2cが板2aに対して「回転」させられて配置される場合、板2aの前側4および後側6は、板2bの後側6および板2cの前側4をそれぞれ向く。これは、板2aの山部が板2bの谷部に当接し、板2aの谷部が板2cの山部に当接することを意味する。より具体的には、板2aの伝熱山部44および伝熱谷部は、点状の接触領域において、板2bの伝熱谷部46および板2cの伝熱山部44にそれぞれ当接する。さらに、板2aの分配山部50の頂上部分58および分配谷部52の底部分60は、細長い接触領域において、板2bの分配谷部52の底部分60および板2cの分配山部50の頂上部分58にそれぞれ当接する。端山部66および端谷部の踵部74および76のため、第1および第2の境界線30および32に最も近い接触領域は、伝熱領域26と分配領域14および22との間の移行部に近い板の一纏めに追加的な強度を提供するために局所的に拡幅されることになる。板2aおよび2bは容積V1+V2の通路を形成し、一方で、板2aおよび2bは容積V1+V2の通路を形成し、つまり、2つの対称的な通路を形成する。
【0055】
本発明の前述の実施形態は、例として見られるだけであるべきである。当業者は、検討された実施形態が本発明の概念から逸脱することなく多くの方法で変化させることができることを理解している。
【0056】
例えば、伝熱領域は、前述したもの以外で、対称的および非対称的の両方で、および、ヘリンボーン式および他の方式の両方で、他の伝熱パターンを備えてもよい。
【0057】
同様に、第1および第2の分配領域は、前述したもの以外の分配パターンを備えてもよい。例として、第3の平面は、図面において示されたようにではなく、第1の平面により近くに配置されてもよい、または、第1の平面からより遠くに配置されてもよい。別の例として、第1および第2の分配パターンは非対称的である必要はなく、つまり、第3の平面は中心平面と一致してもよい。
【0058】
前述した板の一纏めは1つの種類の板だけを含む。板の一纏めは、代わりに、異なって構成された伝熱パターンを有する板など、2つ以上の異なる種類の板を含む。
【0059】
端山部および端谷部には必ずしもすべてに踵部が設けられる必要はない。端山部の一部または全部の踵部は、端谷部の一部または全部の踵部と、形態および/または大きさにおいて異なってもよい。さらに、分配山部および分配谷部の代替の設計が可能である。例えば、すべての分配山部および分配谷部は、真っ直ぐとすることができる、および/または、異なる長さおよび幅など、変化した設計を有することができる。
【0060】
踵部は、図面において示されたように設計される必要はないが、例えば、より大きくてもより小さくてもよい。
図7は、踵部の可能な最大の延在を示している。好ましくは、第1の端山部66aの頂上部分58は、第1の平面38において特定の仮想円78(円の一部分78'だけが示されている)の内側で延びるべきではない。この仮想円78は、隣接する第2の端山部66bの頂上部分58における点Pと一致する中心Cを有し、その点Pは第1の端山部66aに最も近い。さらに、仮想円78は、仮想円78の中心Cから、第2の端山部66bが沿って配置される仮想山線54に対して垂直に、第1の端山部66aの頂上部分58の縁80まで引かれた仮想線の長さと等しい半径rを有する。
【0061】
第1および第2の境界線は湾曲される必要はなく、他の形態を有してもよい。例えば、第1および第2の境界線は、真っ直ぐ、またはジグザグ形とされ得る。
【0062】
伝熱板は、伝熱領域と分配領域との間に、EP2957851、EP2728292、またはEP1899671において記載されたものなど移行帯域を追加的に備えてもよい。このような板は、「反転可能」でも「回転可能」でもない可能性がある。
【0063】
本発明は、ガスケット付きプレート式熱交換器に限定されることはなく、溶接、半溶接、ロウ付け、および融着接合のプレート式熱交換器で使用されてもよい。
【0064】
伝熱板は長方形である必要はなく、直角の角の代わりに丸くされた角を伴う本質的には長方形、円形、または楕円形など、他の形を有してもよい。伝熱板は、ステンレス鋼から作られる必要はなく、チタンまたはアルミニウムなど、他の材料のものであってもよい。
【0065】
分配山部と分配谷部とによって包囲される三角形または四角形の領域は、平坦である必要はなく、第3の平面において完全に延びる必要はない。
【0066】
前、後、第1、第2、第3といった属性は、本明細書では、細部同士の間を区別するためだけに使用されており、細部同士の間の任意の種類の配向または相互の順番を表すためではないことは、強調されるべきである。
【0067】
さらに、本発明に関連しない細部の記載が省略されていることと、図が概略的であり、一定の縮尺で描写されていないこととは、強調しておかなければならない。図の一部は他の図より単純化されていることも言っておかなければならない。そのため、一部の構成要素は、ある図では示されていない可能性があり、他の図では除外されている可能性がある。
【符号の説明】
【0068】
2、2a、2b、2c 伝熱板
4 前側
6 後側
8 第1の端部分
10 第1のポート孔
12 第2のポート孔
14 第1の分配領域
16 第2の端部分
18 第3のポート孔
20 第4のポート孔
22 第2の分配領域
24 中心部分
26 伝熱領域
28 外縁部分
30 第1の境界線
32 第2の境界線
34 前ガスケット溝
36 波形
38 第1の平面
40 第2の平面
42 中心平面
44 伝熱山部
46 伝熱谷部
50 分配山部
52 分配谷部
54 仮想山線
56 仮想谷線
58 頂上部分
60 底部分
62 領域
64 第3の平面
66 端山部
66a 第1の端山部
66b 第2の端山部
68 端谷部
70 第1の部分
72 第2の部分
73 第1の縁
74、76 踵部、突出部
75 第2の縁
78 仮想円
78' 円78の一部分
80 縁
C 中心
P 頂上部分58における点
L 長手方向中心軸
r 仮想円78の半径
T 横断中心軸
w1 頂上部分58の幅
w3 底部分60の幅
w1、w3 第1の部分の幅
w2、w4 第2の部分の幅