(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】歪み補正を伴うEPI MR画像
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 382
A61B5/055 380
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2021549203
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020053227
(87)【国際公開番号】W WO2020173688
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルヴァーノ ジュゼッペ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0266195(US,A1)
【文献】特表2014-503249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0249555(US,A1)
【文献】国際公開第2010/112039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR装置の検査ボリューム内に位置される対象物のMR撮像方法であって、
マルチポイントディクソン法を用いて前記対象物から基準MR信号データを収集するステップと、
前記基準MR信号データからB0マップを導出するステップと、
前記対象物から撮像MR信号データセットの系列を収集するステップであって、
エコープレーナ撮像シーケンスのインスタンスが各撮像MR信号データセットの収集のために使用される、ステップと、
前記撮像MR信号データセットからMR画像の動的な系列を再構成するステップであって、前記撮像MR信号データセットの1つは、他の撮像MR信号データセットの前記収集に使用される位相エンコーディング傾斜ブリップの方向と逆方向のエコープレーナ撮像の位相エンコーディング傾斜ブリップの方向で収集され、前記撮像MR信号データセット
の1つは、各MR画像における幾何学的歪みの前記B0マップを使用する補正に含まれる事前知識を提供する
ために前記逆位相エンコーディング傾斜
ブリップで収集される、ステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記撮像MR信号データセットは異なるb値について拡散強調され、収集され、拡散強調MR画像は前記再構成されるMR画像から導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変形モデルが、逆位相エンコーディング傾斜ブリップで収集される前記撮像MR信号データセットから導出され、前記変形モデルは、各MR画像における前記幾何学的歪みを補正するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MR画像の再構成において事前情報として使用される
水マップが前記基準MR信号データから導出される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記幾何学的歪みの補正は、正則化方式を用いて逆問題を解くことによって実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記正則化方式はそれぞれの補正されるMR画像を、前記B0マップから導出されるボクセルシフトマップと一致するソリューションにバイアスする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正則化方式は各補正されるMR画像を、前記変形モデルと一致するソリューションにバイアスする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記正則化方式は各補正されるMR画像を、
水マップと一致するソリューションにバイアスする、請求項5乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記正則化方式はそれぞれの補正されるMR画像を、前記B0マップから導出されるピクセルシフトマップと一致するソリューションにバイアスする、請求項5乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記正則化方式はさらに、各補正されるMR画像を空間的に滑らかなソリューションにバイアスをかける、請求項5乃至19の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
検査ボリューム内に均一で安定した磁場B0を生成するための少なくとも1つの主磁石コイル2と、前記検査ボリューム内の異なる空間方向に、切り換えられる磁場傾斜を生成するための複数の傾斜コイルと、前記検査ボリューム内にRFパルスを生成するための少なくとも1つのRFコイルと、前記検査ボリューム内に位置される対象物からMR信号を受信するための一つ又はそれより多くの受信コイルと、前記RFパルス及び切り換えられる磁場傾斜の時系列を制御するための制御ユニットと、再構成ユニットとを含むMR装置であって、前記MR装置は、
マルチポイントディクソン法を用いて前記対象物から基準MR信号データを収集するステップと、
前記基準MR信号データからB0マップを導出するステップと、
前記対象物から撮像MR信号データセットの系列の動的な系列を収集するステップであって、エコープレーナ撮像シーケンスのインスタンスが各撮像MR信号データセットの前記収集のために使用される、ステップと、
各撮像MR信号データセットからMR画像を再構成するステップであって、前記撮像MR信号データセットの1つは、他の撮像MR信号データセットの前記収集において使用される前記位相エンコーディング傾斜ブリップの方向と逆方向の前記エコープレーナ撮像の位相エンコーディング傾斜ブリップの方向で収集され、前記MR信号データセット
の1つは、幾何学的歪みの前記B0マップを使用する補正に含まれる事前知識を提供する
ために前記逆位相エンコーディング傾斜
ブリップで収集される、ステップと
を実行するように構成される、MR装置。
【請求項12】
MR装置上で実行されるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、
マルチポイントディクソン法を用いて基準MR信号データを収集するステップと、
前記基準MR信号データからB0マップを導出するステップと、
撮像MR信号データセットの系列の動的な系列を収集するステップであって、エコープレーナ撮像シーケンスのインスタンスが各撮像MR信号データセットの収集のために使用される、ステップと、
各撮像MR信号データセットからMR画像を再構成するステップであって、前記撮像MR信号データセットの1つは、他の撮像MR信号データセットの前記収集において使用される前記位相エンコーディング傾斜ブリップの方向と逆方向の前記エコープレーナ撮像の位相エンコーディング傾斜ブリップの方向で収集され、前記MR信号データセット
の1つは、各MR画像における幾何学的歪みのB0マップを使用する補正に含まれる事前知識を提供する
ために前記逆位相エンコーディング傾斜
ブリップで収集される、ステップと
のための命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)撮像の分野に関する。本発明は、MR装置の検査ボリューム内に位置される対象物のMR撮像方法に関する。本発明はまた、MR装置、及びMR装置上で実行されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元又は3次元画像を形成するために磁場と原子核スピンとの間の相互作用を利用する画像形成MR方法は軟組織の画像化のために、多くの点で他の画像化方法よりも優れており、電離放射線を必要とせず、通常侵襲性ではないので、今日、特に医療診断の分野で広く使用されている。
【0003】
MR方法によれば、検査すべき被検者の身体は、強力で均一な磁場B0に配置され、この磁場の方向は同時に、測定値の基礎となる座標系の軸(通常はz軸)を規定する。磁場B0は、定義される周波数(いわゆるラーモア周波数又はMR周波数)の電磁交番磁場(RF場)の印加によって励起され得る磁場強度(スピン共鳴)に応じて、個々の核スピンに対して様々なエネルギレベルを生成する。巨視的な観点から、個々の核スピンの分布は磁場B0 がz軸に垂直に延在する間に、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)を印加することによって平衡状態から外れるように偏向され得る全磁化を生成し、その結果、磁化は、z軸の動きで歳差運動を行う。歳差運動は、その開口角がフリップ角と呼ばれる円錐の表面を記述する。フリップ角の大きさは、印加される電磁パルスの強度と持続時間に依存する。いわゆる90度パルスの場合、スピンはz軸から横断面(フリップ角90度)に偏向される。
【0004】
RFパルスの終了後、磁化は元の平衡状態に戻り、ここで、z方向の磁化は第1の時一定T1(スピンラティス又は縦緩和時間)で再度蓄積され、z方向に垂直な方向の磁化は第2の時一定T2(スピンスピン又は横緩和時間)で緩和する。磁化の変動は磁化の変動がz軸に垂直な方向に測定されるように、MR装置の検査ボリューム内に配置及び配向される受信RFコイルによって検出することができる。横方向磁化の減衰は例えば、90度パルスのアプリケーション後に、同じ位相を有する秩序状態から全ての位相角が均一に分布する状態(ディフェージング)への原子核スピンの遷移(局所的な磁場の不均一性によって誘導される)を伴う。デフェージングはリフォーカシングパルス(例えば、180度パルス)によって補償することができる。これにより、受信コイルにエコー信号(スピンエコー)が生成される。
【0005】
体内の空間分解能を実現するために、3つの主軸に沿って延在する線形磁場傾斜を均一な磁場B0に重ね合わせ、スピン共鳴振動数の線形空間依存性を導く。次いで、受信コイル内でピックアップされる信号は、体内の異なる位置に関連付けることができる異なる周波数の成分を含む。受信コイルを介して得られる信号データは空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは、通常、異なる位相エンコーディングで取得される複数のラインを含む。各ラインは、多数のサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間データセットは、フーリエ変換によってMR画像変換される。
【0006】
エコープレーナイメージング(EPI)は初期のMR撮像シーケンスの1つであり、1つの完全なMR撮像データセットが約20乃至100msの取得時間を有する傾斜エコーシーケンスの単一ショット(すべてのk空間ラインが1つのRF励起後に、すなわち、1つの繰り返し時間内に取得される)から形成される。読出し又は周波数エンコーディング磁場傾斜を周期的に高速に反転させることにより、一連のエコーが発生する。位相エンコーディングは、エコー取得間で位相エンコーディング方向に短い傾斜パルス(「ブリップ」)を切り替えることによって達成される。スキャン時間は、必要とされる空間分解能、適用される傾斜場の強度、及び機械が傾斜を傾斜させるために必要とされる時間に依存する。
【0007】
時間分解能の高いEPIは、機能的MRI(fMRI)や造影剤増強スキャンなどの動的研究によく用いられる技術である。しかしながら、EPIに関連する幾何学的歪みは、常に画質を劣化させる。EPI歪みは、B0不均一性のような非共鳴ファクタに起因する。
【0008】
MR画像は拡散に敏感である。公知の拡散強調画像(DWI)技術は一般に、拡散傾斜の方向に沿った(水分子の)プロトンの拡散が、取得されるMR信号の振幅を低減する拡散傾斜を含む画像シーケンスを使用することによって実行される。拡散テンソル画像(DTI)は、拡散の大きさと方向性の両方の決定を可能にする、DWIのより洗練される形式である。拡散撮像は例えば、癌性組織を検出するために臨床的に使用される。癌性病変は低い見かけの拡散係数(ADC)によって特徴付けられる制限される拡散のために、拡散画像において明るい信号を示す。
【0009】
DWIは、典型的には脂肪抑制と組み合わせてEPI技術を用いて行われる。その中で、スペクトル脂肪抑制は例えば、既知のSPIR(反転回復を伴うスペクトル事前飽和)又はSPAIR(スペクトル減衰反転回復)技術によって実行される。
【0010】
EPIにおける歪み低減のために、従来のB0場マッピング技法を使用することが知られている。しかしながら、このような技術には限界がある。B0 マップに基づく歪み修正の課題は、位相エンコーディング傾斜ブリップが一方向にのみ適用される場合には悪化する。この場合、信号の圧縮及び/又は信号の重複につながる歪みに対する解決策を見つけることは不可能である。
【0011】
いわゆる逆傾斜法が知られており(P.S.Morganら, Journal of Magnetic Resonance Imaging, vol.19,2004, pages 499乃至507が参照される)、EPI画像は画像の歪みを補正するために、対向する位相エンコーディング傾斜ブリップ方向(以下、ブリップアップ画像及びブリップダウン画像と呼ぶ)で取得される。次に、B0場マップは、撮像される2つのEPI間の位相差をエコー時差で割ったものとして計算される。複素フィールドマップは位相アンラップされる必要があり、歪みマップは、EPI画像に対する剛体位置合わせを使用して推定される。また、この方法では、歪み補正の問題が不適切なポーズ(及び非線形)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、改善されるMR撮像技術が必要とされていることが容易に理解される。したがって、本発明の目的は、改善される歪み補正を伴うEPI画像を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、MR装置の検査ボリューム内に位置される対象物のMR撮像方法が開示される。この方法は、マルチポイントディクソン法を用いて前記対象物から基準MR信号データを収集するステップと、前記基準MR信号データからB0マップを導出するステップと、前記対象物から撮像MR信号データセットの系列の動的な系列を収集するステップであって、エコープレーナ撮像シーケンスのインスタンスが各撮像MR信号データセットの収集のために使用される、ステップと、 各撮像MR信号データセットからMR画像を再構成するステップであって、各MR画像の幾何学的歪みが、B0マップを使用して補正されるステップとを含む。
【0014】
本発明は、B0情報を用いて、電子画像形成において生じる幾何学的歪みを補正することを提案する。本発明によれば、B0マップは、マルチポイントディクソン法を用いて基準スキャンで確立される。既知のマルチポイントディクソン技術によれば、脂肪と水プロトンとの間のスペクトル差は、水を含む組織から発するMR信号と脂肪組織から発するMR信号とを分離する目的で利用される。マルチポイントDixonでは、k空間の複数の取得が異なるエコー時間で繰り返される。最も単純なディクソン技法である2点ディクソンは2つの完全なk空間データセットを取得し、第2の取得における脂肪磁化は、それぞれのエコー時間における第1の取得に対して位相がずれている。複雑なMR信号データセットの単純な加算又は減算によって、別個の別個の水画像及び脂肪画像が得られる。通常、B0マップ、水マップ、及び脂肪マップは、マルチポイントディクソン技術によって得ることができる。特に、マルチポイントディクソンを用いたB0マッピングは非常に高速であり、B0マップに加えて視野内の水分脂肪分布(水マップ及び脂肪マップ形式)に関する有益な情報を提供する。B0マップはB0の空間分布を決定するために、本発明に従って利用される。基準MR信号データは、撮像MR信号データの画像解像度よりも低い画像解像度で取得されてもよい。画像解像度が低下するため、基準MR信号データは、撮像MR信号データよりもはるかに高速で取得することができる。
【0015】
B0マップは、基準MR信号データから一度確立され、次いで、エコープレーナ撮像シーケンスの対応する例によって取得される撮像MR信号データセットから再構成される一連のMR画像の各々の歪み修正のために使用される。
【0016】
すなわち、ディクソンプリスキャンによって生成されるB0マップを用いて歪みモデルを推定することができる。そして、歪みモデルは、取得したEPI画像の歪み補正を可能にする。このアプローチは従来の逆傾斜アプローチにおける場合のように、ブリップアップ/ダウン画像ペアから歪みモデルを推定するために必要な高価な計算の必要性を回避する。
【0017】
好ましい実施形態では、脂肪抑制が適用される。脂肪抑制は得られるMR画像に対する脂肪プロトンからの信号寄与の影響を可能な限り最大限に除去するために、使用される撮像シーケンスの特定のパラメータを利用するプロセスである。例えば、脂肪プロトンの磁化の飽和を生成する周波数選択性RF励起パルスを印加することができる。既知のSPIR又はSPAIR技術を、本発明の方法におけるMR信号取得に使用することができる。本発明の利点は画像品質をさらに改善するために、脂肪抑制EPI撮像におけるMR画像の再構成に、ディクソンプレスキャンによって配信される水マップの事前知識を含めることができることである。
【0018】
本発明は、大きいB0不均質性に起因する歪みに悩まされるEPI取得にとりわけ有効である。本発明の方法によって、特にDWI又は動的/機能的MRIに使用されるEPIと組み合わせて、より良好でより再現性のある画質が得られる。動的/機能的MRIでは、再構成されるMR画像が例えば造影剤強調スキャンのための動的シリーズを形成する。DWI/DTI画像において、撮像MR信号データセットは、異なるb値について取得され、ここで、拡散強調MR画像、再構成される一連のMRイメージから導出される。
【0019】
任意選択的に、信号圧縮及び/又は信号重複につながる歪みの場合、撮像MR信号データセットの1つは、他の撮像MR信号データセットの取得に使用される位相エンコーディング傾斜ブリップの方向とは逆の位相エンコーディング傾斜ブリップの方向で取得される。この追加の撮像MR信号データセットは、ダイナミックスキャンにおける追加の時間フレームとして、又は拡散画像の場合にはゼロb値での追加の取得として取得されてもよい。時間フレーム又はb値ごとに逆のブリップ方向を取得する必要はない。したがって、全体のスキャン時間は、わずかに増加するだけである。対向するブリップ方向(「blipdown data set」)を有する追加の撮像MR信号データセットは、対応する逆に変形されるドメインにおけるMR信号分布に関する事前知識を提供する。これをMR画像の変形補正に含めることにより、さらに画質を向上させることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、対向する位相エンコーディング傾斜ブリップで取得される撮像MR信号データセットから変形モデルが導出され、それから、各MR画像における幾何学的歪みを補正するために変形モデルが使用される。変形モデルは、歪んでいないMR画像に適用すると、発生する歪みを模倣する数学的変換とみなすことができる。ここでの歪補正は、変形モデルの主手段反転におけるものである。たとえば、デフォーメーションモデルは、Dixonのプリスキャンから派生したB0マップから開始して、追加のブリップダウンデータセットから取得できる。
【0021】
好ましい実施形態では、幾何学的歪みの補正が正則化方式で逆問題を解くことによって実行される。この正則化方式は、B0マップから導出されるボクセルシフトマップと合致するソリューションに向けて、それぞれの補正されるMR画像をバイアスすることができる。さらに、正則化方式は、変形モデルと合同である解に向かって各々の補正MR画像を偏らせることができる。さらに、正則化方式は脂肪抑制を改善するために、各補正されるMR画像を、水マップと一致するソリューションに向かって偏らせることができる。最後に、正則化方式は、空間的に滑らかな解に向けて各補正されるMR画像にバイアスをかけるために使用することができる。形成信号圧縮における歪みの場合には、局所的に平滑なソリューションが好ましい。
【0022】
これまで説明した本発明の方法は、検査ボリューム内に均一で安定した磁場B0を生成するための少なくとも1つの主磁石コイルと、検査ボリューム内の異なる空間方向に切り換えられる磁場傾斜を生成するための複数の傾斜コイルと、検査ボリューム内にRFパルスを生成するための少なくとも1つのRFコイルと、検査ボリューム内に位置される対象からMR信号を受信するための一つ又はそれより多くの受信コイルと、RFパルス及び切り換えられる磁場傾斜の時系列を制御するための制御ユニットと、再構成ユニットとを含むMR装置によって実施することができる。本発明の方法は、MR装置の再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラムによって実施される。
【0023】
本発明の方法は、現在臨床使用されているほとんどのMR装置において有利に実施することができる。この目的のために、本発明の上述の方法ステップを実行するようにMR装置が制御されるコンピュータプログラムを利用することのみが必要である。コンピュータプログラムはMR装置の制御ユニットにインストールするためにダウンロードされるように、データキャリア上に存在してもよいし、データネットワーク内に存在してもよい。添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を開示する。しかしながら、図面は説明のみを目的として設計されるものであり、本発明の限定の定義として設計されるものではないことを理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の方法を実施するためのMR装置を示す。
【
図2】本発明の方法をフローチャートとして概略的に示す。
【
図3】本発明の方法の適用を示す脳画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、MR装置1が示されている。この装置は実質的に均一で時間的に一定の主磁場B
0が検査ボリュームを通るz軸に沿って生成されるように、超電導の又は抵抗主磁石コイル2を備える。この装置はさらに、1組のシミングコイル2'を含み、この1組のシミングコイル2'の個々のシミングコイルを流れる電流は、検査容積内のB0偏差を最小限に抑えるために制御可能である。
【0026】
磁気共鳴生成及び操作システムは一連のRFパルス及び切り替えられた磁場傾斜を適用して、核磁気スピンを反転又は励起し、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴を再集束し、磁気共鳴を操作し、磁気共鳴を空間的に及び他の方法でエンコーディングし、スピンを飽和させ、及び同様のものを行ってMR撮像を行う。
【0027】
より具体的には、傾斜パルス増幅器3が検査ボリュームのx、y及びz軸に沿って、全身傾斜コイル4、5及び6の選択されるものに電流パルスを印加する。デジタルRF周波数送信器7は送信/受信スイッチ8を介して、身体RFコイル9にRFパルス又はパルスパケットを送信し、RFパルスを検査ボリュームに送信する。典型的なMR画像シーケンスは短い持続時間のRFパルスセグメントのパケットから構成されており、これらのセグメントは、互いに一緒になって、任意の印加される磁場傾斜が核磁気共鳴の選択される操作を達成する。RFパルスは飽和させ、共鳴を励起させ、磁化を反転させ、共鳴を再集束させ、又は共鳴を操作し、検査ボリューム内に位置される身体10の一部を選択するために使用される。また、MR信号は、身体RFコイル9によってピックアップされる。
【0028】
並列撮像によって身体10の限定される領域のMR画像を生成するために、1組のローカルアレイRFコイル11、12、13が、撮像のために選択される領域に隣接して位置される。アレイコイル11、12、13は、体コイルRF送信によって誘導されるMR信号を受信する受信コイルとして使用することができる。
【0029】
得られたMR信号は、身体RFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によってピックアップされ、好ましくは前置増幅器(図示せず)を含む受信器14によって復調される。受信器14は、送受信スイッチ8を介してRFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0030】
ホストコンピュータ15は、傾斜パルス増幅器3及び送信器7と同様にシミングコイル2'を制御して、エコープレーナ画像(EPI)のような複数のMR画像シーケンスの何れかを生成する。選択されるシーケンスに対して、受信器14は、各RF励起パルスに続いて、単一又は複数のMRデータラインを迅速に連続して受信する。データ収集システム16は受信信号のアナログデジタル変換を実行し、各MRデータラインを更なる処理に適したデジタルフォーマットに変換する。現代のMR装置では、データ収集システム16が生の画像データの収集に特化した別個のコンピュータである。
【0031】
最終的に、デジタル生画像データは、フーリエ変換又は検知のような他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。MR画像は、患者を通る平面スライス、平行な平面スライスのアレイ、3次元ボリュームなどを表すことができる。次いで、画像は画像メモリに記憶され、ここで、画像表現のスライス、投影、又は他の部分を、例えば、結果として得られるMR画像の人間が読めるディスプレイを提供するビデオモニタ18を介して、視覚化のための適切なフォーマットに変換するためにアクセスすることができる。
【0032】
本発明の方法の実際的な実施形態を、
図2及び
図3を参照して、さらに
図1を参照して以下に説明する。
【0033】
主磁石コイル2のアイソセンタ内に本体10を位置決めした後、ステップ21において、基準MR信号データを取得するためのプリスキャンが開始される。この目的のために、マルチポイントディクソン技術が使用される。基準MR信号データは低分解能で、すなわち、k空間の限られた中央部分から取得される。従って、プレスキャン全体は、数秒以内に実行することができる。プレスキャンの後、スペクトル脂肪抑制及び拡散重み付けを伴うEPI撮像スキャンがより高い画像解像度、すなわち、それぞれの診断撮像タスクに十分な画像解像度で実行される。ステップ22において、単一の撮像MR信号データセットが、ゼロb値のためのブリップダウン位相エンコーディングを用いて取得される。ステップ23において、ブリップアップ位相エンコーディングを用いて、再びゼロのb値に対して、さらに多くの異なるb値に対して、多くの撮像MR信号データセットが取得される。
【0034】
ステップ4において、Dixonプレスキャンの基準MR信号データが再構成され、B0マップ及び水マップが導出される。ステップ25では、ボクセルシフトマップS0がB0マップから計算され、ブリップアップ及びブリップダウン取得に対応する歪みモデルがマップから導出される(及びそれぞれDup及びDdown)。ステップ25において、ブリップダウン撮像MR信号データから歪んだ基準画像Idownが再構成される。ステップ26において、歪んだブリップアップMR画像Iupjが各b値jに対して再構成される。歪み補正は歪みのないMR画像Ijを生成するために、ステップ27において適用される。最後に、ステップ28において、画像化される組織領域における水プロトンの空間的に分解される見かけの拡散係数を示すADCマップが導出される。
【0035】
幾何学的歪みの補正は、
の正則化方式で逆問題を解くことにより、系列の各MR画像に対してステップ27で実行される。 ここで、C(D
up I―I
up)はあらゆる種類のデータ整合項であり、∇yは位相エンコーディング方向に沿って微分演算を実行し、α、β、γは正則化パラメーターである。正則化方式は、ブリップアップ及びブリップダウン取得の両方から生じる変形モデルと一致し、水マップとも一致する歪み補正される画像
に対するソリューションを見つける。
【0036】
上述した方式の考えられる変形例では、歪みモデルD
up及びD
downがステップ25のステップにおいて、ブリップアップ及びブリップダウン取得からのみ、即ち、B
0マップの情報を結合することなく、導出される。水信号分布(水マップ)に関する事前知識はステップ27において、予測可能な不成功の脂肪抑制の場合には、水信号と脂肪信号との組み合わせに関する事前知識によって置き換えることができ、又は省略することができる。ローカル平滑強制項
は異なる定式化を有することができ、又は省略することができる。シフトマップS
0の負の傾斜にペナルティを課す任意の定式化は、有効な代替であろう。
【0037】
図3は、本発明の方法の適用を示すDWI脳画像の例を示す。描出される2つのパネルはそれぞれ、上の行に歪んだMR画像を示し、下の行には、対応する歪み補正されるMR画像を示す。真の解剖学的境界は、各画像においてオーバーレイとして示される。
図3から分かるように、本発明に従って取得され補正されるEPI画像は、幾何学的歪みが実質的に低減されている。