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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】輸液セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20220825BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20220825BHJP
   A61M 5/36 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61M5/14 582
A61M39/04 100
A61M5/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018079106
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019181061
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕文
(72)【発明者】
【氏名】沖山 忠
(72)【発明者】
【氏名】金井 雅史
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 陽子
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/001939(WO,A1)
【文献】特開2014-030489(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006637(WO,A1)
【文献】特表2013-525065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0004463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61M 39/04
A61M 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、
前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、
一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、
前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、
一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、
前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備え
前記第2流路内に存在していた空気が、前記回収流路を通って前記回収容器に回収されることを特徴とする輸液セット。
【請求項2】
一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、
前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、
一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、
前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、
一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、
前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備え
前記第2流路内に存在していた空気が、前記点滴筒及び前記回収流路を順に通って前記回収容器に回収されることを特徴とする輸液セット。
【請求項3】
一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、
前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、
一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、
前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、
一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されているバイパス流路と、
前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、
一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、
前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備え
前記第2流路内に存在していた空気が、前記回収流路を通って前記回収容器に回収されることを特徴とする輸液セット。
【請求項4】
一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、
前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、
一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、
前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、
一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されたバイパス流路と、
前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、
一端が前記バイパス流路の前記点滴筒と前記バイパス流路用開閉バルブとの間の部分に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、
前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備え
前記第2流路内に存在していた空気が、前記点滴筒、前記バイパス流路、及び前記回収流路を順に通って前記回収容器に回収されることを特徴とする輸液セット。
【請求項5】
前記第2コネクタは、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材の長手方向に沿って圧縮変形可能なカバーとを備え、
前記第2コネクタが前記第2容器に接続されているとき、前記カバーは圧縮変形されて前記オス部材が前記カバーを貫通し、前記第2コネクタが前記第2容器から分離されると、前記カバーは初期状態に復帰して前記オス部材の先端またはその近傍に設けられた、前記オス部材の前記流路に連通した孔を塞ぐ請求項1~4のいずれか一項に記載の輸液セット。
【請求項6】
一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、
前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備える請求項1~5のいずれか一項に記載の輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液などの液体を患者の静脈に投与する際に使用される輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、薬剤や、栄養成分、電解質などを患者の静脈に投与する輸液が広く行われている。例えば抗がん剤を投与する場合、抗がん剤を含む薬液の他に、前投薬や、ウォッシュアウトするための生理食塩水等の複数の液体を患者に順次投与する必要がある。複数の液体は、それぞれ別個に複数の輸液バッグに貯留される。複数の輸液バッグと患者の静脈に穿刺された針とを連通させるために、主ラインと少なくとも1つの側注ラインとを備えた輸液セットが用いられる。
【0003】
輸液を開始する前に、輸液セットの流路内に存在する空気をプライミング液で置き換える「プライミング」という操作が必要である。特許文献1には、主ラインにプライミング液(生理食塩水)を貯留した輸液バッグを接続し且つ側注ラインには輸液セットを接続しない状態で、輸液バッグのプライミング液を主ライン及び側注ラインを含む輸液セットの全体に導入するプライミング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5774802号明細書
【文献】国際公開第2013/154050号パンフレット
【文献】特開2014-079355号公報
【文献】特開2013-252165号公報
【文献】国際公開第2016/133139号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のプライミング方法では、主ライン及び側注ラインの全てに同じプライミング液が導入される。各ラインを、当該ラインに接続された輸液バッグに貯留された液体を用いてプライミングすることが望まれる場合がある。
【0006】
その一方で、抗がん剤等の危険性薬剤を含む薬液(危険性薬液)でプライミングを行う場合、当該危険性薬液やそれに触れた空気が外界に漏れ出ることは、作業者の薬剤被爆を招くので、回避する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、主ラインと側注ラインとを備えた輸液セットに対するプライミングを、作業者が薬剤被爆をすることなく行うことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブとを備える。
【0009】
上記第1の輸液セットをプライミングする本発明の第1のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記第1容器に向かって移動させる。
【0010】
本発明の第2の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0011】
上記第2の輸液セットをプライミングする本発明の第2のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記回収容器に向かって移動させる。
【0012】
本発明の第3の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0013】
上記第3の輸液セットをプライミングする本発明の第3のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記点滴筒内の前記気体貯留部及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させる。
【0014】
本発明の第4の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されているバイパス流路と、前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0015】
上記第4の輸液セットをプライミングする本発明の第4のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップは、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させる第2-1プライミングステップと、前記第2液が、前記第2液の流れ方向の前方側に存在する空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させる第2-2プライミングステップとを含む。
【0016】
本発明の第5の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されたバイパス流路と、前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、一端が前記バイパス流路の点滴筒と前記バイパス流路用開閉バルブとの間の部分に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0017】
上記第5の輸液セットをプライミングする本発明の第5のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させるか、または、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1流路を第1液でプライミングする第1プライミングステップを行った後、第2流路を第2液でプライミングする第2プライミングステップを行う。第1及び第2流路を、第1及び第2流路に接続された第1及び第2容器に貯留された第1及び第2液でそれぞれプライミングすることができる。
【0019】
第2プライミングステップにおいて、第2液は、第2流路に存在していた空気を所定の容器に向かって移動させる。第2液が危険性薬液であった場合、第2液や第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなくプライミングを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態1にかかる輸液セットを示す。
図2図2は、本発明の実施形態2にかかる輸液セットを示す。
図3図3は、本発明の実施形態3にかかる輸液セットを示す。
図4図4は、本発明の実施形態4にかかる輸液セットを示す。
図5図5は、本発明の実施形態5にかかる輸液セットを示す。
図6図6は、本発明の実施形態6にかかる輸液セットを示す。
図7図7は、本発明の輸液セットに使用しうる自閉式コネクタの一例を示した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブとを備える。
【0022】
上記第1の輸液セットをプライミングする本発明の第1のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記第1容器に向かって移動させる。
【0023】
前記第1のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0024】
前記第1のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記可変バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブを開いて前記第2プライミングステップを開始してもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0025】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間到達したとき、前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0026】
前記第1の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第1のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を前記第1容器に向かって移動させてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0027】
前記第1のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を前記第1容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0028】
前記第1のプライミング方法において、前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ及び前記第3開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第3開閉バルブ及び前記第1開閉バルブを開いて前記第3プライミングステップを開始してもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0029】
前記第1の輸液セットは、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されているバイパス流路と、前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。かかる態様によれば、点滴筒を用いて、第2液と第2流路に存在していた空気とを確実に分離することができる。
【0030】
前記第1のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブ及び前記バイパス流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0031】
前記第1のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブ及び前記バイパス流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第2プライミングステップを開始してもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0032】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第1液の滴下が終了したとき、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0033】
前記第1の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第1のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0034】
前記第1のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0035】
前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ、前記第3開閉バルブ及び前記バイパス流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第2液の滴下が終了したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第3開閉バルブ及び前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第3プライミングステップを開始してもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0036】
本発明の第2の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0037】
上記第2の輸液セットをプライミングする本発明の第2のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記回収容器に向かって移動させる。
【0038】
前記第2のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブ及び回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0039】
前記第2のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブ及び回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第2プライミングステップを開始してもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0040】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したとき、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0041】
前記第2の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第2のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0042】
前記第2のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0043】
前記第2のプライミング方法において、前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ、前記第3開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第3開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第3プライミングステップを開始してもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0044】
本発明の第3の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0045】
上記第3の輸液セットをプライミングする本発明の第3のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記点滴筒内の前記気体貯留部及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させる。
【0046】
前記第3のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0047】
前記第3のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第2プライミングステップを開始してもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0048】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第1液の滴下が終了したとき、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0049】
前記第3の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第3のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を前記点滴筒内の前記気体貯留部及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0050】
前記第3のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を前記点滴筒内の前記気体貯留部及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0051】
前記第3のプライミング方法において、前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ、前記第3開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第2液の滴下が終了したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第3開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第3プライミングステップを開始してもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0052】
本発明の第4の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されているバイパス流路と、前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、一端が前記第1流路の前記区間に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0053】
上記第4の輸液セットをプライミングする本発明の第4のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップは、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させる第2-1プライミングステップと、前記第2液が、前記第2液の流れ方向の前方側に存在する空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させる第2-2プライミングステップとを含む。
【0054】
前記第4のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0055】
前記第4のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第2-1プライミングステップを開始して前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させてもよい。前記第2-1プライミングステップを開始した後、前記第2液が前記第1流路の前記区間に到達したとき、前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第2-2プライミングステップを開始して前記第2液を前記点滴筒に流入させてもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0056】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第1液の滴下が終了したとき、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0057】
前記第4の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第4のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップは、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させる第3-1プライミングステップと、前記第3液が、前記第3液の流れ方向の前方側に存在する空気を前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させる第3-2プライミングステップとを含んでいてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0058】
前記第4のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を、前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させるか、または、前記点滴筒内の気体貯留部及び前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0059】
前記第4のプライミング方法において、前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ、前記第3開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第2液の滴下が終了したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ且つ前記第3開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを開いて前記第3-1プライミングステップを開始して前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させてもよい。前記第3-1プライミングステップを開始した後、前記第3液が前記第1流路の前記区間に到達したとき、前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第3-2プライミングステップを開始して前記第3液を前記点滴筒に流入させてもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0060】
本発明の第5の輸液セットは、一端に、第1液を貯留する第1容器に接続される第1コネクタを備え、他端に下流側コネクタを備えた第1流路と、前記第1流路上に前記第1コネクタ側から前記下流側コネクタ側へ順次設けられた、第1開閉バルブ、点滴筒、及び、可変バルブと、一端に、第2液を貯留する第2容器に接続される第2コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブと前記点滴筒との間の区間に接続された第2流路と、前記第2流路上に設けられた第2開閉バルブと、一端が前記点滴筒内の気体貯留部に連通され、他端が前記第1流路の前記第1開閉バルブよりも前記第1コネクタ側の部分または前記第1コネクタに連通されたバイパス流路と、前記バイパス流路上に設けられたバイパス流路用開閉バルブと、一端が前記バイパス流路の点滴筒と前記バイパス流路用開閉バルブとの間の部分に接続され、他端に、回収容器に接続される回収容器用コネクタを備えた回収流路と、前記回収流路上に設けられた回収流路用開閉バルブとを備える。
【0061】
上記第5の輸液セットをプライミングする本発明の第5のプライミング方法は、前記第1液を前記第1容器から前記第1流路に流入させて、前記第1流路を前記第1液でプライミングする第1プライミングステップと、前記第2液を前記第2容器から前記第2流路に流入させて、前記第2流路を前記第2液でプライミングする第2プライミングステップとを含む。前記第2プライミングステップにおいて、前記第2液が、前記第2流路に存在していた空気を、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させるか、または、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させる。
【0062】
前記第5のプライミング方法の前記第1プライミングステップにおいて、前記第2開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流してもよい。これは、簡単な方法で、第1コネクタから下流側コネクタまでの第1流路の全体を第1液でプライミングするのに有利である。
【0063】
前記第5のプライミング方法において、前記第1プライミングステップの後、前記第2開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ、前記第2開閉バルブを開き、且つ、前記回収流路用開閉バルブまたは前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第2プライミングステップを開始してもよい。これにより、第1液の点滴から第2流路のプライミングへ容易に移行することができる。
【0064】
好ましくは、前記第1液を前記第1容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第1液と前記第1液に続いて前記第1容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第1液の滴下が終了したとき、前記第1開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じる。かかる態様は、第1容器内の第1液の全量を患者に投与し、続いて第2液を患者に順次投与する場合に、第1液と第2液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0065】
前記第5の輸液セットは、一端に、第3液を貯留する第3容器に接続される第3コネクタを備え、他端が前記第1流路の前記区間に接続された第3流路と、前記第3流路上に設けられた第3開閉バルブとを更に備えていてもよい。前記第5のプライミング方法は、前記第3液を前記第3容器から前記第3流路に流入させて、前記第3流路を前記第3液でプライミングする第3プライミングステップを更に含んでいてもよい。前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第3流路に存在していた空気を、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させるか、または、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。これにより、第3流路を、第3流路に接続された第3容器に貯留された第3液でプライミングすることができる。第3液が危険性薬液であった場合、第3液や第3液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性が低い。このため、作業者が薬剤被爆をすることなく第3流路を第3液でプライミングを行うことが可能である。
【0066】
前記第5のプライミング方法の前記第3プライミングステップにおいて、前記第3液が、前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気を、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路及び前記回収流路を通って前記回収容器に向かって移動させるか、または、前記点滴筒内の前記気体貯留部、前記バイパス流路を通って前記第1容器に向かって移動させてもよい。かかる態様は、第2液が危険性薬液であった場合に、第2液に触れた空気が外界に漏れ出る可能性を低減させる。
【0067】
前記第5のプライミング方法において、前記第2プライミングステップの後、前記第1開閉バルブ、前記第3開閉バルブ、前記バイパス流路用開閉バルブ及び前記回収流路用開閉バルブを閉じ且つ前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを開いて前記第2液を前記第2容器から前記下流側コネクタに向かって流している状態において前記第2液と前記第2液に続いて前記第2容器から流出した空気との界面が前記第1流路の前記区間に到達したときまたは前記点滴筒内での前記第2液の滴下が終了したとき、前記第2開閉バルブ及び前記可変バルブを閉じ、前記第3開閉バルブを開き、且つ、前記回収流路用開閉バルブまたは前記バイパス流路用開閉バルブを開いて前記第3プライミングステップを開始してもよい。かかる態様は、第2容器内の第2液の全量を患者に投与し、続いて第3液を患者に順次投与する場合に、第2液と第3液との間に空気が混入する可能性を低減するのに有利である。
【0068】
本発明の上記第1~第5の輸液セットにおいて、前記第2コネクタは、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材の長手方向に沿って圧縮変形可能なカバーとを備えていてもよい。前記第2コネクタが前記第2容器に接続されているとき、前記カバーは圧縮変形されて前記オス部材が前記カバーを貫通してもよい。前記第2コネクタが前記第2容器から分離されると、前記カバーは初期状態に復帰して前記オス部材の先端またはその近傍に設けられた、前記オス部材の前記流路に連通した孔を塞いでもよい。かかる態様によれば、前記第2コネクタが前記第2容器から意図せずに分離したとしても、第2液が外界に漏れ出る可能性を低減することができる。これは、第2液が危険性薬液であった場合に、プライミング時に作業者が薬剤被爆するのを防止するのに有利である。
【0069】
本発明の上記第1~第5の輸液セットにおいて、前記第3コネクタが、前記第2コネクタと同様に、流路が形成された棒状のオス部材と、前記オス部材の長手方向に沿って圧縮変形可能なカバーとを備えていてもよい。これは、第3液が危険性薬液であった場合に、プライミング時に作業者が薬剤被爆するのを防止するのに有利である。
【0070】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0071】
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1にかかる輸液セット1の概略構成を示す。輸液セット1は、第1容器20a~第4容器20dにそれぞれ貯留された第1液~第4液を順次患者に投与するために用いられる。
【0072】
例えば、第1容器20aに貯留された第1液は前投薬を含む薬液であり、第2,第3容器20b,20cに貯留された第2,第3液は抗がん剤を含む危険性薬液であり、第4容器20dに貯留された第4液はウォッシュアウトのための生理食塩水であってもよい。第1容器20a~第4容器20dは、柔軟な2枚のシートをその外周縁部で貼り合わせた、密封された輸液バッグである。第1容器20a~第4容器20dは、貯留された液体を取り出すためのポート21a~21dをそれぞれ備える。ポート21a~21dの開口はゴム栓(図1では見えない)で封止されている。第1~第4容器20a~20dには、上記の液体に加えて、少量の空気が貯留されている。図1では、第1~第4容器20a~20dのポート21a~21dの近傍部分のみが示されている。
【0073】
輸液セット1は、主ラインとして第1流路10aを備える。第1流路10aは、透明且つ中空の柔軟なチューブで構成される。第1流路10aは、その上流側端に第1コネクタ11aを、その下流側端に下流側コネクタ19を、それぞれ備える。第1コネクタ11aと下流側コネクタ19とは第1流路10aを介して連通されている。第1コネクタ11aは、鋭利な先端を備える穿刺針(瓶針と呼ばれることもある)であり、第1容器20aのポート21aに設けられたゴム栓に穿刺される。下流側コネクタ19は、柔軟なチューブ30の上流側端に設けられたコネクタ32に接続される。チューブ30の下流側端には、患者の静脈に穿刺される針31が設けられている。
【0074】
第1流路10a上に、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、第1コネクタ11a側から下流側コネクタ19側へこの順に設けられている。第1開閉バルブ12aは、第1流路10aを開閉することで第1流路10a中の液体の流れの許否を切り替える。第1開閉バルブ12aとしては、制限はないが、例えば医療分野で周知のクランプを用いることができる。点滴筒14は、第1流路10aを流れる液体を可視化する。可変バルブ17は、第1流路10aを直径方向に圧縮してその流路断面積を調整することにより、第1流路10aを流れる液体の流量を調節する。可変バルブ17としては、制限はないが、例えば医療分野で周知のクレンメを用いることができる。
【0075】
輸液セット1は、側注ラインとして、第2流路10b、第3流路10c、第4流路10dを更に備える。第2~第4流路10b~10dは、第1流路10aと同様に、透明且つ中空の柔軟なチューブで構成される。第2,第3,第4流路10b,10c,10dは、その上流側端に第2,第3,第4コネクタ11b,11c,11dを備える。第2~第4コネクタ11b~11dは、オス部材と、爪が設けられたロックレバーとを備えたレバーロック型のコネクタである(例えば特許文献2参照)。第2~第4コネクタ11b~11dは、アダプタ22b~22dを介して、第2~第4容器20b~20dのポート21b~21dに接続される。アダプタ22b~22dは、ポート21b~21dのゴム栓に穿刺可能な鋭利な先端を備えた穿刺針と、ポート21b~21dに係合する係合爪と、セプタムと呼ばれる弾性隔壁部材を有する混注ポートとを備える(例えば特許文献3参照)。第2~第4コネクタ11b~11dのオス部材が混注ポートの弾性隔壁部材に挿入され、且つ、第2~第4コネクタ11b~11dの爪がポート21b~21dの混注ポートに係合される。第2~第4流路10b~10dを、第2~第4コネクタ11b~11d及びアダプタ22b~22dを介して、ポート21b~21dに接続することは、抗がん剤などの危険な薬剤が外界に漏れ出して、作業者が薬剤被曝する可能性を低減するのに有利である。
【0076】
第2~第4流路10b~10dは、第1流路10aの、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(この区間を「分岐区間」という)に連通される。図1では、第1流路10aに設けられたT字状(またはY字状)の第1分岐部18aから1本の分岐流路10xが分岐し、当該分岐流路10xにT字状(またはY字状)の第2,第3分岐部18b,18cが順次設けられ、第2分岐部18bから第2流路10bが分岐し、第3分岐部18cから第3流路10c及び第4流路10dが分岐している。本発明では、第2~第4流路(側注ライン)10b~10dは、第2~第4コネクタ11b~11dから第1流路(主ライン)10aまでの部分を意味する。従って、図1の構成では、第2~第4流路10b~10dのそれぞれは、他の流路と共通する流路部分と、他の流路とは区別された独自の流路部分とを有している。
【0077】
第2,第3,第4流路10b,10c,10d上に、第2,第3,第4開閉バルブ12b,12c,12dがそれぞれ設けられている。図1のように、第2~第4流路10b~10dが、その一部に他の流路と共通する流路部分を有する場合には、第2~第4開閉バルブ12b~12dは、第2~第4流路10b~10dのうち他の流路とは区別された独自の流路部分に設けられる。第2~第4開閉バルブ12b~12dは、第1開閉バルブ12aと同様に、第2~第4流路10b~10dを開閉することで第2~第4流路10b~10d中の液体の流れの許否を切り替える。第2~第4開閉バルブ12b~12dとしては、制限はないが、例えば医療分野で周知のクランプを用いることができる。
【0078】
以上のように構成された本実施形態1の輸液セット1に対するプライミング方法を説明する。以下のプライミング方法の全ての操作は作業者が手動にて行う。但し、その一部を自動で行ってもよい。一般的な輸液と同様に、第1液~第4液は重力を利用して輸液セット1内を流れる。
【0079】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0080】
第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット1を準備する。輸液セット1の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット1の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0081】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10aに流入する。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0082】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0083】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。
【0084】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。気液界面が第1分岐部18aに到達したとき、可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。第1分岐部18aから第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、第1分岐部18aより下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0085】
次いで、第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第3,第4開閉バルブ12c,12dは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。
【0086】
空気と第2液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、第1開閉バルブ12aを閉じ、可変バルブ17を開く。第2液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、第1流路10aの第1分岐部18aより上側(第1容器20a側)の部分及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0087】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。気液界面が第1分岐部18aに到達したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。第1分岐部18aから第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、第1分岐部18aより下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0088】
次いで、第1開閉バルブ12a及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第2,第4開閉バルブ12b,12dは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。
【0089】
空気と第3液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、第1開閉バルブ12aを閉じ、可変バルブ17を開く。第3液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、第1流路10aの第1分岐部18aより上側(第1容器20a側)の部分及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0090】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット1は、第1容器20a~第4容器20d及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0091】
以上のように、本実施形態1の輸液セット1では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0092】
本実施形態1の輸液セット1のような、1本の主ラインから少なくとも1本の側注ラインが分岐した輸液セットに対してプライミングを行う場合、従来は、側注ラインに対しては、プライミング液を主ラインから側注ラインに逆流させるバックプライミング(プライミングバックともいう)と呼ばれる手法が採られることが多い。バックプライミングは、側注ラインに容器を接続する前に行う必要がある。側注ラインに容器を接続した後に、輸液セットの流路の一部に空気が残存していることが発見されると、側注ラインから容器を取り外し再度バックプライミングを行う必要があり、作業が煩雑である。また、バックプライミングを行うと、主ライン及び側注ラインを含む輸液セットの全体に同じプライミング液が充填される。従って、側注ラインに接続された容器の液体を患者に点滴する場合、当該液体の点滴の前に、必ずプライミング液が点滴されてしまう。
【0093】
本実施形態1の輸液セット1に対するプライミング方法では、主ライン(第1流路10a)及び側注ライン(第2~第4流路10b~10d)の全てに容器(第1~第4容器20a~20d)を接続した後に、プライミングを行う。しかも、主ライン及び各側注ラインに対するプライミングは、それぞれのラインに接続された容器の液体を点滴する直前に行う。各ラインごとにプライミングを行うので、ライン内に空気が残存していることを見落とす等の操作ミスは生じにくい。
【0094】
本実施形態1では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングは、各側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いて行う。従って、第1~第4液を順次点滴する場合に、従来のように各液体の点滴前に共通するプライミング液が必ず点滴されてしまうという問題は生じない。
【0095】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に接続された容器(第2,第3容器20b,20c)に貯留された液体(第2,第3液)が抗がん剤等の危険性薬液である場合、当該危険性薬液に触れた空気は、当該危険性薬液の蒸気を含む可能性がある。本実施形態1では、側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット1及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット1及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。このように、本実施形態1は、側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0096】
輸液セット1に対する上記のプライミング方法では、第1~第4液と空気との界面(気液界面)が第1分岐部18aに到達したとき、可変バルブ17の開閉を切り替えた。但し、本発明では、気液界面が第1分岐部18aに到達した時と、可変バルブ17を切り替える時とが正確に一致している必要はない。一般に、気液界面が、第1流路10aの第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、可変バルブ17の開閉を切り替えれば十分である。
【0097】
(実施形態2)
本発明の実施形態2にかかる輸液セット2及びそのプライミング方法を、実施形態1との相違点を中心に説明する。図2に輸液セット2の概略構成を示す。輸液セット2は、点滴筒14の気体貯留部と、第1流路10aの第1開閉バルブ12aよりも上流側(第1コネクタ11a側)の部分または第1コネクタ11aとを連通させるバイパス流路10gと、バイパス流路10g上に設けられた開閉バルブ(バイパス流路用開閉バルブ)12gとを備える。
【0098】
バイパス流路10gは、制限されないが、第1~第4流路10a~10dと同様に、中空の柔軟なチューブで構成されうる。バイパス流路10gの下端は、点滴筒14内の液面より上側の空気が存在する部分(これを気体貯留部という)に連通される。一般に点滴筒14は、液体が貯留される透明な円筒形状を有するチャンバーと、チャンバーの上端の開口を塞ぐキャップとで構成される。図2の輸液セット2では、バイパス流路10gの下端はキャップに接続されている。バイパス流路10gが点滴筒14内の気体貯留部に連通される限り、バイパス流路10gの下端がチャンバーに接続されていてもよい。バイパス流路10gは、第1開閉バルブ12aが閉じられている場合に、点滴筒14内の気体貯留部と、第1流路10aの第1開閉バルブ12aよりも上流側(第1容器20a側)の部分とを連通させる。図2の輸液セット2では、バイパス流路10gの上端は、第1コネクタ11aの基端に接続されているが、第1流路10aの第1開閉バルブ12aと第1コネクタ11aとの間の部分に接続されていてもよい。
【0099】
開閉バルブ12gは、制限はないが、第1~第4開閉バルブ12a~12dと同様に、医療分野で周知のクランプを用いることができる。
【0100】
以上のように構成された本実施形態2の輸液セット2に対するプライミング方法を説明する。
【0101】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0102】
第1~第4開閉バルブ12a~12d、開閉バルブ12g、及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット2を準備する。輸液セット2の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット2の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0103】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10a内を流れる。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0104】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0105】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。
【0106】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。点滴筒14内での第1液の滴下が終了したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0107】
次いで、開閉バルブ12g及び第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第1,第3,第4開閉バルブ12a,12c,12dは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10gに順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。第2液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第2液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第2液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0108】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0109】
次いで、開閉バルブ12g及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第1,第2,第4開閉バルブ12a,12b,12dは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10gを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。第3液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第3液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第3液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0110】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット2は、第1容器20a~第4容器20d及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0111】
実施形態1と同様に、本実施形態2の輸液セット2では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0112】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット2及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット2及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0113】
輸液セット2に対する上記のプライミング方法では、点滴筒14内で第1~第4液の滴下が終了したとき、第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17を閉じた。但し、本発明では、点滴筒14内で第1~第4液の滴下が終了した時と、バルブ12a~12d,17を閉じる時とが正確に一致している必要はない。点滴筒14内での滴下が終了するよりも前に、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。特に、第1~第4液とこれに続く空気との界面(気液界面)が、第1流路10aの第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。
【0114】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が本実施形態2にも適宜適用される。
【0115】
(実施形態3)
本発明の実施形態3にかかる輸液セット3及びそのプライミング方法を、実施形態1,2との相違点を中心に説明する。図3に輸液セット3の概略構成を示す。輸液セット3は、回収容器20zと回収流路10zとを備える。
【0116】
回収容器20zは、密封された容器であり、回収容器20z内の内容物(気体)の量に応じて形状が変化することが好ましい。回収容器20zは、制限されないが、例えば、第1容器20a~第4容器20dと同様に、柔軟な2枚のシートをその外周縁部で貼り合わせたバッグであってもよい。回収容器20zは、ポート21zを備える。ポート21zの開口はゴム栓(図3では見えない)で封止されている。
【0117】
回収流路10zは、回収容器20zと第1流路10a(主ライン)とを連通させる回収ラインを構成する。回収流路10zは、第1~第4流路10a~10dと同様に、中空の柔軟なチューブで構成される。回収流路10zの一端は第1分岐部18aに連通され、回収流路10zの他端にはコネクタ(回収容器用コネクタ)11zが設けられている。コネクタ11zは、アダプタ(回収容器用アダプタ)22zを介して回収容器20zのポート21zに接続される。コネクタ11zは、第2~第4コネクタ11b~11dと同じレバーロック型のコネクタである(例えば特許文献2参照)。アダプタ22zは、第2~第4アダプタ22b~22dと同じである(例えば特許文献3参照)。
【0118】
回収流路10z上に、開閉バルブ(回収流路用開閉バルブ)12zが設けられている。開閉バルブ12zは、第1~第4開閉バルブ12a~12dと同様に、回収流路10zを開閉することで回収流路10z中の気体の流れの許否を切り替える。開閉バルブ12zとしては、制限はないが、例えば医療分野で周知のクランプを用いることができる。
【0119】
以上のように構成された本実施形態3の輸液セット3に対するプライミング方法を説明する。
【0120】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0121】
第1~第4開閉バルブ12a~12d、開閉バルブ12z、及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット3を準備する。また、ポート21zにアダプタ22zが装着された、空の回収容器20zを準備する。輸液セット3の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット3の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続し、コネクタ11zをアダプタ22zに接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0122】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10aに流入する。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0123】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0124】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。
【0125】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。気液界面が第1分岐部18aに到達したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。第1分岐部18aから第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、第1分岐部18aより下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0126】
次いで、開閉バルブ12z及び第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第1,第3,第4開閉バルブ12a,12c,12dは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。
【0127】
空気と第2液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。第2液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0128】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。気液界面が第1分岐部18aに到達したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。第1分岐部18aから第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、第1分岐部18aより下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0129】
次いで、開閉バルブ12z及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第1,第2,第4開閉バルブ12a,12b,12dは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。
【0130】
空気と第3液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。第3液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0131】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット3は、第1容器20a~第4容器20d、回収容器20z及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0132】
実施形態1と同様に、本実施形態3の輸液セット2では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0133】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット3及び回収容器20zに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット3及び回収容器20zに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0134】
プライミングによって側注ラインから排出された空気は、実施形態1,2では第1容器20aに回収されたのに対して、本実施形態3では専用の回収容器20zに回収にされる。回収容器20zは、第1容器20a~第4容器20dと同じ構成を有していなくてもよく、例えば空気の回収に適した構成に任意に変更しうる。回収容器20zとして、側注ラインの流路容積に応じた容量を有するものを選択することができる。回収容器20zと第1分岐部18aとを連通させる回収ラインの構成も、図3に限定されない。アダプタ22z及びコネクタ11zを省略し、回収流路10zを構成するチューブが回収容器20zに直接接続されていてもよい。この場合、回収容器20zに接続されたチューブの末端が回収容器用コネクタに相当する。
【0135】
輸液セット3に対する上記のプライミング方法では、第1~第4液と第1~第4容器20a~20d内に存在していた空気との界面(気液界面)が第1分岐部18aに到達したとき、第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17を閉じた。但し、本発明では、気液界面が第1分岐部18aに到達した時と、バルブ12a~12d,17を閉じる時とが正確に一致している必要はない。一般に、気液界面が、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、バルブ12a~12d,17を閉じれば十分である。
【0136】
図3では、回収流路10zは、第1分岐部18aに接続されていたが、本発明はこれに限定されない。回収流路10zは、第1流路10aの、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に接続されていればよい。
【0137】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1,2と同じである。実施形態1,2の説明が本実施形態3にも適宜適用される。
【0138】
(実施形態4)
本発明の実施形態4にかかる輸液セット4及びそのプライミング方法を、実施形態1~3との相違点を中心に説明する。図4に輸液セット4の概略構成を示す。実施形態3の輸液セット3(図3参照)と同様に、輸液セット4は、回収容器20zと回収流路10zとを備える。但し、実施形態3と異なり、回収流路10zは、点滴筒14の気体貯留部に連通されている。気体貯留部とは、点滴筒14内の液面より上側の空気が存在する部分を意味する。一般に点滴筒14は、液体が貯留される透明な円筒形状を有するチャンバーと、チャンバーの上端の開口を塞ぐキャップとで構成される。図4の例では、回収流路10zの下端はキャップに接続されている。回収流路10zが点滴筒14内の気体貯留部に連通される限り、回収流路10zの下端がチャンバーに接続されていてもよい。輸液セット4は、上記を除いて、実施形態3の輸液セット3と同じである。
【0139】
以上のように構成された本実施形態4の輸液セット4に対するプライミング方法を説明する。
【0140】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0141】
第1~第4開閉バルブ12a~12d、開閉バルブ12z、及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット4を準備する。また、ポート21zにアダプタ22zが装着された、空の回収容器20zを準備する。輸液セット4の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット4の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続し、コネクタ11zをアダプタ22zに接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0142】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10a内を流れる。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0143】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0144】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。
【0145】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。点滴筒14内での第1液の滴下が終了したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0146】
次いで、開閉バルブ12z及び第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第1,第3,第4開閉バルブ12a,12c,12dは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。第2液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第2液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第2液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0147】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0148】
次いで、開閉バルブ12z及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第1,第2,第4開閉バルブ12a,12b,12dは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。第3液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第3液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第3液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0149】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット4は、第1容器20a~第4容器20d、回収容器20z及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0150】
実施形態1と同様に、本実施形態4の輸液セット4では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0151】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット4及び回収容器20zに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット4及び回収容器20zに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0152】
プライミングによって側注ラインから排出された空気は、実施形態3と同様に、専用の回収容器20zに回収にされる。実施形態3で説明したように、本実施形態4においても、回収容器20zや回収ラインの構成は、図4に限定されず、任意に変更しうる。
【0153】
輸液セット4に対する上記のプライミング方法では、点滴筒14内で第1~第4液の滴下が終了したとき、第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17を閉じた。但し、本発明では、点滴筒14内で第1~第4液の滴下が終了した時と、バルブ12a~12d,17を閉じる時とが正確に一致している必要はない。点滴筒14内での滴下が終了するよりも前に、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。特に、第1~第4液とこれに続く空気との界面(気液界面)が、第1流路10aの第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。
【0154】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1~3と同じである。実施形態1~3の説明が本実施形態4にも適宜適用される。
【0155】
(実施形態5)
本発明の実施形態5にかかる輸液セット5及びそのプライミング方法を、実施形態1~4との相違点を中心に説明する。図5に輸液セット5の概略構成を示す。
【0156】
輸液セット5は、実施形態2の輸液セット2と同様に、点滴筒14の気体貯留部と、第1流路10aの第1開閉バルブ12aよりも上流側(第1コネクタ11a側)の部分または第1コネクタ11aとを連通させるバイパス流路10gを備える。バイパス流路10g上に、開閉バルブ(バイパス流路用開閉バルブ)12gが設けられている。
【0157】
更に、輸液セット5は、実施形態3の輸液セット3と同様に、回収容器20zと回収流路10zとを備える。回収容器20zは、ポート21zを備える。回収流路10zの一端は第1分岐部18aに連通され、他端にはコネクタ(回収容器用コネクタ)11zが設けられている。コネクタ11zは、アダプタ(回収容器用アダプタ)22zを介して回収容器20zのポート21zに接続される。回収流路10z上に、開閉バルブ(回収流路用開閉バルブ)12zが設けられている。
【0158】
以上のように構成された本実施形態5の輸液セット5に対するプライミング方法を説明する。
【0159】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0160】
第1~第4開閉バルブ12a~12d、開閉バルブ12g、開閉バルブ12z、及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット5を準備する。また、ポート21zにアダプタ22zが装着された、空の回収容器20zを準備する。輸液セット5の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット5の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続し、コネクタ11zをアダプタ22zに接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0161】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10aに流入する。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0162】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0163】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。
【0164】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。点滴筒14内での第1液の滴下が終了したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0165】
次いで、開閉バルブ12z及び第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第1,第3,第4開閉バルブ12a,12c,12d及び開閉バルブ12gは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。
【0166】
空気と第2液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、開閉バルブ12zを閉じ、開閉バルブ12gを開く。第2液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降する。可変バルブ17は閉じられているので、第2液は、第1分岐部18aから点滴筒14までの第1流路10aの部分に存在していた空気を、点滴筒14の気体貯留部、バイパス流路10gを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。空気に続いて、第2液が、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第2液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第2液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、回収流路10z、回収容器20z、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0167】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0168】
次いで、開閉バルブ12z及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第1,第2,第4開閉バルブ12a,12b,12d及び開閉バルブ12gは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。
【0169】
空気と第3液との界面(気液界面または液面)が第1分岐部18aに到達したとき、開閉バルブ12zを閉じ、開閉バルブ12gを開く。第3液は、第1分岐部18aを通って第1流路10aを下降する。可変バルブ17は閉じられているので、第3液は、第1分岐部18aから点滴筒14までの第1流路10aの部分に存在していた空気を、点滴筒14の気体貯留部、バイパス流路10gを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。空気に続いて、第3液が、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第3液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第3液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、回収流路10z、回収容器20z、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、及び第1容器20aに閉じ込められる。
【0170】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット5は、第1容器20a~第4容器20d、回収容器20z及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0171】
実施形態1と同様に、本実施形態5の輸液セット5では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0172】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット5、回収容器20z及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット5、回収容器20z及び第1容器20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0173】
回収容器20zと第1分岐部18aとを連通させる回収ラインの構成は、図5に限定されず、実施形態3で説明したのと同様に任意に変更しうる。
【0174】
輸液セット5に対する上記のプライミング方法では、点滴筒14内での第1~第4液の滴下が終了したとき、第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17を閉じた。但し、本発明では、点滴筒14内での第1~第4液の滴下が終了した時と、バルブ12a~12d,17を閉じる時とが正確に一致している必要はない。点滴筒14内での滴下が終了するよりも前、特に第1~第4液と第1~第4容器20a~20d内に存在していた空気との界面(気液界面)が、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。
【0175】
図5では、回収流路10zは、第1分岐部18aに接続されていたが、本発明はこれに限定されない。回収流路10zは、第1流路10aの、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に連通されていればよい。
【0176】
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1~4と同じである。実施形態1~4の説明が本実施形態5にも適宜適用される。
【0177】
(実施形態6)
本発明の実施形態6にかかる輸液セット6及びそのプライミング方法を、実施形態1~5との相違点を中心に説明する。図6に輸液セット6の概略構成を示す。
【0178】
輸液セット6は、実施形態2,5の輸液セット2,5と同様に、点滴筒14の気体貯留部と、第1流路10aの第1開閉バルブ12aよりも上流側(第1コネクタ11a側)の部分または第1コネクタ11aとを連通させるバイパス流路10gを備える。バイパス流路10g上に、開閉バルブ(バイパス流路用開閉バルブ)12gが設けられている。
【0179】
更に、輸液セット6は、実施形態3~5の輸液セット3~5と同様に、回収容器20zと回収流路10zとを備える。但し、本実施形態6では、回収流路10zは、バイパス流路10gの点滴筒14と開閉バルブ12gとの間の部分から分岐している。回収流路10zの末端にはコネクタ(回収容器用コネクタ)11zが設けられている。回収容器20zは、ポート21zを備える。コネクタ11zは、アダプタ(回収容器用アダプタ)22zを介して回収容器20zのポート21zに接続される。回収流路10z上に、開閉バルブ(回収流路用開閉バルブ)12zが設けられている。
【0180】
以上のように構成された本実施形態6の輸液セット6に対するプライミング方法を説明する。
【0181】
第1液~第4液がそれぞれ貯留された第1容器20a~第4容器20dを、ポート21a~21dを下側にして、例えばイルリガートル台(図示せず)に吊り下げる。ポート21b~21dにはアダプタ22b~22dが装着されている。
【0182】
第1~第4開閉バルブ12a~12d、開閉バルブ12g、開閉バルブ12z、及び可変バルブ17が閉状態にある輸液セット6を準備する。また、ポート21zにアダプタ22zが装着された、空の回収容器20zを準備する。輸液セット6の第1コネクタ11aを第1容器20aのポート21aに接続し、輸液セット6の第2~第4コネクタ11b~11dをアダプタ22b~22dにそれぞれ接続し、コネクタ11zをアダプタ22zに接続する。第1コネクタ11a、第1開閉バルブ12a、点滴筒14、及び、可変バルブ17が、上から下にこの順に配置されるように、第1流路10aは、重力によりほぼ鉛直方向に沿って吊り下げられる。第2~第4容器20b~20dは、第1開閉バルブ12aより高い位置に配置される。下流側コネクタ19は、コネクタ32に接続される。
【0183】
最初に、第1容器20a内の第1液(例えば前投薬)を用いて第1流路10aのプライミングを行う。即ち、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を開く。第1容器20a内の第1液が、第1コネクタ11aから、第1流路10aに流入する。第1液が、下流側コネクタ19よりも更に下流に設けられた針31の先端にまで到達したとき、一旦、第1開閉バルブ12a及び/又は可変バルブ17を閉じる。第1容器20aから第1流路10a及びチューブ30を通って針31にまで達する流路が第1液で満たされる。
【0184】
次いで、針31を患者の静脈に穿刺する。
【0185】
次いで、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を再度開く。第1液の点滴が開始される。第1液の流量は点滴筒14で確認できる。第1液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。
【0186】
第1容器20a内の第1液がなくなると、第1液に続いて、第1容器20a内の空気がポート21aから第1流路10aに流出する。第1液と空気との界面(気液界面または液面)が、第1流路10a内を下降する。点滴筒14内での第1液の滴下が終了したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。第1液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第1容器20aまでの部分は第1容器20aから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第1液で満たされている。
【0187】
次いで、開閉バルブ12z及び第2開閉バルブ12bを開く。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。可変バルブ17及び第1,第3,第4開閉バルブ12a,12c,12d及び開閉バルブ12gは閉じられているので、第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10g、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。第2液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第2液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第2液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2液の流量は点滴筒14で確認できる。第2液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0188】
第2容器20b内の第2液がなくなると、第2液に続いて、第2容器20b内の空気がポート21bから第2流路10bに流出する。第2液と空気との界面(気液界面または液面)が、第2流路10b内を移動する。点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。第2液の点滴は一時的に中断される。点滴筒14内の気体貯留部から第2容器20bまでの部分は第2容器20bから流出した空気で満たされ、点滴筒14内の液面より下流側(下流側コネクタ19側)の部分は第2液で満たされている。
【0189】
次いで、開閉バルブ12z及び第3開閉バルブ12cを開く。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。可変バルブ17及び第1,第2,第4開閉バルブ12a,12b,12d及び開閉バルブ12gは閉じられているので、第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10g、回収流路10zを順に通って、回収容器20zに向かって移動させる。第3液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第3液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12zを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第3液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3液の流量は点滴筒14で確認できる。第3液の流量が所定値になるように、可変バルブ17の開度を調整する。点滴筒14内の液面が、所定の高さ(位置)にあることを確認する。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、回収流路10z及び回収容器20zに閉じ込められる。
【0190】
以下、同様の手順で、第4容器20d内の第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行い、続いて第4液の点滴を行う。第4容器20d内の第4液がなくなった後、第4開閉バルブ12d及び可変バルブ17を閉じる。以上により、第1液~第4液の点滴が終了する。針31を患者から引き抜く。輸液セット6は、第1容器20a~第4容器20d、回収容器20z及びチューブ30を接続したままの状態で廃棄される。
【0191】
上記のプライミング方法では、プライミング前に側注ラインに存在していた空気、及び、容器から液体に続いて側注ラインに流出した空気を回収容器20zに回収した。本実施形態では、これらの空気を第1容器20aに回収することもできる。これを以下に説明する。
【0192】
点滴筒14内での第1液の滴下が終了したとき、第1開閉バルブ12a及び可変バルブ17を閉じる。次いで、開閉バルブ12g及び第2開閉バルブ12bを開く(上記のプライミング方法では、開閉バルブ12gではなく、開閉バルブ12zを開いた)。第2容器20b内の第2液は、第2流路10bに流入する。第2液は、第2流路10b内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10gを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。第2液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第2液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第2液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第1液の点滴が再開され、続いて第2液の点滴が開始される。第2開閉バルブ12bを開く前に第2流路10b内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g、及び第1容器20aに閉じ込められる。その後、点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。
【0193】
その後、点滴筒14内での第2液の滴下が終了したとき、第2開閉バルブ12b及び可変バルブ17を閉じる。次いで、開閉バルブ12g及び第3開閉バルブ12cを開く(上記のプライミング方法では、開閉バルブ12gではなく、開閉バルブ12zを開いた)。第3容器20c内の第3液は、第3流路10cに流入する。第3液は、第3流路10c内に存在していた空気を、第1分岐部18a、第1流路10a、点滴筒14、バイパス流路10gを順に通って、第1容器20aに向かって移動させる。第3液は、第1分岐部18a、第1流路10aを順に通って、点滴筒14に流入する。点滴筒14内での第3液の滴下の開始を確認すると、開閉バルブ12gを閉じ、可変バルブ17を開く。その後、第3液は、第1流路10aを下降し、下流側コネクタ19に向かって流れる。これにより、第1流路10a内に残存していた第2液の点滴が再開され、続いて第3液の点滴が開始される。第3開閉バルブ12cを開く前に第3流路10c内に存在していた空気は、点滴筒14内の気体貯留部、バイパス流路10g及び第1容器20aに閉じ込められる。その後、点滴筒14内での第3液の滴下が終了したとき、第3開閉バルブ12c及び可変バルブ17を閉じる。
【0194】
同様に、点滴筒14内での第3液の滴下が終了した後、開閉バルブ12g及び第4開閉バルブ12dを開いて、第4液を用いて第4流路10dのプライミングを行ってもよい。
【0195】
このように、本実施形態6では、側注ラインのプライミングを、開閉バルブ12g及び開閉バルブ12zのいずれを開いて行うかを任意に選択することができる。この選択に応じて、プライミング前に側注ラインに存在していた空気、及び、容器から液体に続いて側注ラインに流出した空気は、回収流路10z及び第1容器20aのいずれかに向かって押し出される。側注ラインごとに、これらの空気を回収流路10z及び第1容器20aのいずれに回収するかを選択することができる。
【0196】
実施形態1と同様に、本実施形態6の輸液セット6では、側注ライン(第2~第4流路10b~10d)のプライミングを、第1液の点滴を開始した後、側注ラインごとに、側注ラインに対応する液体(第2液~第4液)の点滴を行う直前に行う。更に、各側注ラインに対するプライミング液として、当該側注ラインに接続された容器に貯留された液体を用いる。
【0197】
側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミング前に当該側注ラインに存在していた空気は、当該側注ライン(第2,第3流路10b,10c)のプライミングによって、輸液セット6及び容器20z又は20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。また、容器(第2,第3容器20b,20c)から液体(第2,第3液)に続いて側注ライン(第2,第3流路10b,10c)に流出した空気も、その直後に行う別の側注ライン(第3,第4流路10c,10d)のプライミングによって、輸液セット6及び容器20z又は20aに閉じ込められ、外界に漏れ出ることはない。側注ラインを危険性薬液でプライミングを行う場合でも、危険性薬液やその蒸気が外界に漏れ出ない。これは、プライミングを行う作業者が薬剤被爆する可能性を低減するのに有利である。
【0198】
回収容器20zと第1分岐部18aとを連通させる回収ラインの構成は、図6に限定されず、実施形態3で説明したのと同様に任意に変更しうる。
【0199】
輸液セット6に対する上記のプライミング方法では、点滴筒14内での第1~第4液の滴下が終了したとき、第1~第4開閉バルブ12a~12d及び可変バルブ17を閉じた。但し、本発明では、点滴筒14内での第1~第4液の滴下が終了した時と、バルブ12a~12d,17を閉じる時とが正確に一致している必要はない。点滴筒14内での滴下が終了するよりも前、特に第1~第4液と第1~第4容器20a~20d内に存在していた空気との界面(気液界面)が、第1開閉バルブ12aと点滴筒14との間の区間(分岐区間)に到達したときに、バルブ12a~12d,17を閉じてもよい。
【0200】
本実施形態6は、上記を除いて実施形態1~5と同じである。実施形態1~5の説明が本実施形態6にも適宜適用される。
【0201】
上記の実施形態1~6は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1~6に限定されず、適宜変更することができる。
【0202】
上記の実施形態1~6では、第1容器20aから第1液が全て流出した後、第2流路10bのプライミングを行ったが、本発明はこれに限定されない。第1コネクタ11aから下流側コネクタ19までの第1流路(主ライン)10aの全体(好ましくはチューブ30を含む)を第1液でプライミングをした後であれば、第1容器20a内に第1液がまだ残存していたとしても、第2流路10bのプライミングを行うことが可能である。これは、特に、第2流路10bに存在していた空気を、専用の回収容器20zに回収する実施形態3~6で容易に行うことができる。この場合、必要に応じて、第2容器20bを第1容器20aより高い位置に持ち上げる、第2容器20bをわずかに押しつぶす、等により第2液の第2流路10b内での移動を補助してもよい。
【0203】
上記の実施形態1~6では、第2~第4流路(側注ライン)10b~10dが、共通する第1分岐部18aにて第1流路(主ライン)10aに連通されていた。この構成は、第2~第4流路10b~10dをプライミングをする際の空気の排出の容易化や、異なる液の混じり合いの低減に有利である。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、第2~第4流路10b~10dが、互いに共通する流路部分を備えず、それぞれが第1流路10aに異なる分岐部にて連通されていてもよい。
【0204】
輸液セットが備える側注ラインの数は、上記の実施形態1~6のように3つ(即ち、第2~第4流路10b~10d)である必要はなく、少なくとも1つあればよい。輸液セットが、主ライン(第1流路10a)から分岐した少なくとも1つの側注ラインを備えていれば、本発明の上記の効果を奏しうる。好ましくは、側注ラインの数は2以上である。
【0205】
本発明の輸液セットは、側注ラインを必要に応じて増設できるように構成されていてもよい。例えば、実施形態1の輸液セット1において、第4流路10dに分岐部18b,18cと同様の分岐部を設け、当該分岐部から分岐した分岐流路の末端にメスコネクタを設ける。当該分岐部に三方活栓を設けるか、または、当該分岐流路上には開閉バルブ12b,12cと同様の開閉バルブを設ける。増設用の側注ライン(増設用側注ライン)は、第2~第4流路10b~10dと同様に構成しうる。増設用側注ラインの上流端には、液体を貯留した増設用容器に接続可能なコネクタが設けられる。増設用側注ラインの下流側端には、上記メスコネクタに着脱可能なオスコネクタが設けられる。メスコネクタに、増設用側注ラインを接続することにより、当該増設用側注ラインを介して増設用容器内の液体を点滴することができる。増設用側注ラインのプライミングは、第2~第4流路10b~10dのプライミングと同様に行うことができる。増設用側注ラインを接続するための上記メスコネクタは、自閉式の弁体(セプタムと呼ばれることがある)を備えたメスコネクタ(例えば特許文献4参照)が好ましい。また、増設用側注ラインの下流側端に設けられる上記オスコネクタは、オス部材を覆う圧縮変形可能なカバーを備えた自閉式のオスコネクタ(例えば、後述する図7のコネクタ11,特許文献5参照)が好ましい。実施形態2~6の輸液セット2~6も同様に側注ラインを増設することができるように構成されていてもよい。
【0206】
実施形態1~6の輸液セット1~6において、分岐部18cに三方活栓が設けられていてもよい。例えば、第4容器20dを使用しない場合、分岐部18cの三方活栓を操作して第4流路10dを分岐流路10xから遮断する。これにより、第4コネクタ11dに第4容器20dを接続しない状態で、第1~第3容器20a~20cの液体を順次プライミングして点滴することができる。分岐部18bにも、同様に三方活栓がを設けられていてもよい。
【0207】
輸液セットには、更に任意の部材が設けられていてもよい。例えば、液体を濾過するフィルタや、薬液等を液体に混入させるための混注ポートなどが、主ライン及び/又は側注ラインに設けられていてもよい。
【0208】
輸液セット内での液体の移動を、重力を利用するのではなく、ポンプ(例えば、輸液において一般に使用される輸液ポンプ)を用いて行ってもよい。ポンプは可変バルブ17の機能を有する場合があり、この場合には可変バルブ17を省略してポンプに置き換えることができる。
【0209】
液体または空気を貯留する容器に接続されるコネクタの構成は、穿刺針(第1コネクタ11a)や、レバーロック型コネクタ(第2~第4コネクタ11b~11d、回収容器用コネクタ11z)に限定されず、任意である。全てのコネクタが、同一の構成を有していてもよく、あるいは、その一部が他と異なる構成を有していてもよい。主ラインに設けられるコネクタと側注ラインに設けられるコネクタとが同じであってもよい。例えば、第1コネクタ11aが、第2~第4コネクタ11b~11dと同じレバーロック型コネクタであり、アダプタ22b~22dと同様に構成されたアダプタを介して、第1容器20aのポート21aに接続してもよい。
【0210】
レバーロック型コネクタが図7に示すような自閉式のコネクタ11であってもよい。このコネクタ11は、棒状のオス部材50の先端近傍に設けられた孔52を覆うカバー70を備える。オス部材50には、液体が流れる流路51が、オス部材50の長手方向に沿って形成されている。孔52は流路51と連通している。円筒形状のフード55が、オス部材50を取り囲むように、オス部材50と同軸に配置されている。カバー70は、ゴム弾性(または可撓性)を有する軟質の材料(いわゆるエラストマー)からなる。カバー70の材料は、制限はないが、例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。カバー70は、全体として、先端側が閉じた、中空の筒形状を有する。カバー70の先端には、上方から見た形状が「-」(マイナス)字形状である直線状のスリット(切り込み)72が形成されている。コネクタ11をアダプタの混注ポートに接続すると、カバー70は、オス部材50の長手方向に沿って圧縮変形され、オス部材50がスリット72を貫通し、混注ポートに挿入される。コネクタ11が混注ポートから分離されると、カバー70は直ちに初期形状に復帰し、オス部材50の孔52はカバー70内に収納される。コネクタ11を混注ポートに接続したとき、混注ポートはフード55内に挿入され、ロックレバー60の先端に設けられた爪62が混注ポートに係合する。操作レバー65がロックレバー60から延びている。操作レバー65に半径方向内向きの力が加えられると、爪62がオス部材50から離れる向きに変位する。コネクタ11を混注ポートに接続した状態で、操作レバー65に意図せずに半径方向内向きの力が加えられると、爪62と混注ポートとの係合が解除され、コネクタ11と混注ポートとが分離してしまうという場合が起こりうる。このような場合に、カバー70は直ちに伸張して孔52を塞ぐ。このため、孔52から液体が漏れ出る可能性が少ない。抗がん剤を含む危険性薬液を貯留した容器(上記の実施形態1~6では第2,第3容器20b,20c)に接続されるコネクタ(上記の実施形態1~6では第2,第3コネクタ11b,11c)が、図7に示す自閉式のコネクタ11であると、混注ポートとコネクタとが意図せずに分離したとしても、危険性薬液が外界に漏れ出る可能性を低減することができる。これは、プライミング時に作業者が薬剤被爆するのを防止するのに有利である。実施形態3~6においてコネクタ11z(図3図6参照)が図7に示す自閉式のコネクタ11であってもよい。この場合、コネクタ11zとアダプタ22zの混注ポートとが意図せずに分離したときに、回収流路10z内の気体が外界に漏れ出る可能性を低減することができる。これも、プライミング時に作業者が薬剤被爆するのを防止するのに有利である。
【0211】
液体を貯留する容器の構成は任意である。柔軟なシートを貼り合わせた輸液バッグや、形状が実質的に変形しない硬質材料からなるボトルであってもよい。容器のポートも、ゴム栓で封止されたものに限定されない。ポートと輸液セットのコネクタとの間に介在されるアダプタの構成も、上記の実施形態に限定されず、任意である。アダプタを用いずに、ポートにコネクタを直接接続してもよい。
【0212】
本発明の輸液装置を用いて投与される液体の種類は任意である。抗がん剤のような危険な薬剤を含む危険性薬液であってもよいし、栄養剤や電解質などを含む、被曝の危険性を有しない液体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明の輸液セットのプライミング方法は、医療の分野において、複数種類の液体を患者に投与する場合に好ましく利用することができる。特に、抗がん剤等の、作業者が薬剤被曝する可能性がある危険な薬液を投与する場合に好適である。
【符号の説明】
【0214】
1~6 輸液セット
10a~10d 流路
10g バイパス流路
10z 回収流路
11,11a~11e コネクタ
11z 回収容器用コネクタ
12a~12d 開閉バルブ
12g バイパス流路用開閉バルブ
12z 回収流路用開閉バルブ
14 点滴筒
17 可変バルブ
19 下流側コネクタ
20a~20d 容器
20z 回収容器
50 オス部材
51 オス部材の流路
52 オス部材の横孔
60 ロックレバー
70 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7