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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】電子部材の取外し方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
H05K3/34 510
H05K3/34 507D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021562245
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047349
(87)【国際公開番号】W WO2021111538
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513141913
【氏名又は名称】株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】福田 光樹
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-330956(JP,A)
【文献】特表2007-510548(JP,A)
【文献】特開昭64-048669(JP,A)
【文献】特開2001-298268(JP,A)
【文献】特開2009-200170(JP,A)
【文献】特開2009-164310(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0129570(KR,A)
【文献】実開昭57-093175(JP,U)
【文献】実開昭57-065771(JP,U)
【文献】国際公開第2019/108006(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記発熱体は、前記回路基板の端子より大きい
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記発熱体に外装されるフェライトコア
を更に備えることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
請求項1、2、4いずれか記載の装置を用い、
前記加熱手段により前記発熱体を加熱するとともに、前記回路基板の端子を加熱し、
前記伝導手段により前記発熱体が発する熱を前記吸着ノズル先端に伝導させ、はんだを溶融し、
前記吸着手段により前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着して、回路基板にはんだ接合により実装された電子部材を前記回路基板より取外す
ことを特徴とする電子部材の取外し方法。
【請求項6】
回路基板に複数の電子部材が電子部品間隔1mm以下で実装されており、はんだ接合により回路基板の500×500μm以下のサイズの端子に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置であって、
直径200μm以下の中空を有し、金属より形成される吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、
電磁誘導加熱により、前記吸着ノズル先端を加熱するとともに、前記回路基板の端子を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項7】
回路基板に複数の電子部材が電子部品間隔1mm以下で実装されており、はんだ接合により回路基板の500×500μm以下のサイズの端子に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置であって、
直径200μm以下の中空を有し、フェライトにより形成される吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、
前記吸着ノズル先端に装着される発熱体を含み、電磁誘導加熱により、前記発熱体を加熱するとともに、前記回路基板の端子を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の装置を用い、
前記加熱手段により前記吸着ノズル先端を加熱するとともに、前記回路基板の端子を加熱し、はんだを溶融し、
前記吸着手段により前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着して、回路基板にはんだ接合により実装された電子部材を前記回路基板より取外す
ことを特徴とする電子部材の取外し方法。
【請求項9】
回路基板に複数の電子部材が電子部品間隔1mm以下で実装されており、熱溶融可能な手段により回路基板の500×500μm以下のサイズの端子に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置であって、
直径200μm以下の中空を有する吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、
前記吸着ノズル下部に設けられる発熱体を含み、電磁誘導加熱により、前記発熱体を加熱するとともに、前記回路基板の端子を加熱する加熱手段と、
前記発熱体が発する熱を前記吸着ノズル先端に伝導させる伝導手段と
を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁誘導加熱により基板に実装された電子部品を取り外す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、半導体等電子部品を回路基板に実装する際に、はんだ接合される。はんだ接合は、接合対象間にはんだが配置された後、はんだが加熱され溶融することによって、行われている。
【0003】
基板には複数の電子部品が実装されている。異常があったり、故障した場合、正常な電子部品への影響を避けながら、当該電子部品のみを取外す。
【0004】
たとえば、当該電子部品に熱風を供給し、はんだを溶融し、当該電子部品を基板より取外す(たとえば特許文献1)。
【0005】
ところで、近年、電子部品の小型化が進んでいる。例えば、モニターの高画素化に伴い、100μm以下のマイクロLEDが用いられる。隣接する小型電子部品への影響を避けながら、取外し対象の小型電子部品のみに充分な熱風を与えることは困難である。
【0006】
また、熱風供給による取外し技術は、ポリアミドイミドやポリイミドなどの耐熱性樹脂からなる基板への適用は可能であるが、熱可塑性樹脂や紙や布など非耐熱性材料からなる基板への適用が困難である。なお、非耐熱性の熱可塑性樹脂の例として、ABS樹脂、アクリル、ポリカーボ、ポリエステル、ポリブチレン、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などがある。
【0007】
一方、スポット的に加熱する技術として、電磁誘導加熱がある。電磁誘導加熱により基板に実装された電子部品を取り外すこともできる(たとえば特許文献2)。
【0008】
図7は、電磁誘導加熱の基本原理に係る概念図である。電磁誘導加熱装置は、誘導コイルと電源と制御装置とから構成される。
【0009】
誘導コイルに交流電流を流すと、強度の変化する磁力線が発生する。その近くに電気を通す物質(具体的には接合対象であり、通常は金属より形成される)を置くとこの変化する磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。金属には通常電気抵抗があるため、金属に電流が流れると、ジュール熱が発生して、金属が自己発熱する。この現象を誘導加熱という。
【0010】
電磁誘導による発熱量Qは次の式で表される。Q=(V2/R)×t[V=印加電圧:R=抵抗:t=時間]
【0011】
電磁誘導加熱では、金属のみ発熱するため、周辺の樹脂部分が熱損傷を受けるおそれは少ない。また、電子部品への熱影響もほぼなく、電子部品が熱損傷を受けるおそれは少ない。
【0012】
電磁誘導加熱では、金属のみ発熱するため、少ないエネルギーでかつ短時間で接合できる。一回の接合に要する時間は数~十数秒である。
【0013】
電磁誘導加熱では、一様磁場内であれば、所定のジュール熱が得られるため、接合精度が高い。また、一様磁場内であれば、複数の接合が一度にできる。
【0014】
電磁誘導加熱では、制御装置により電源出力量および出力時間の制御が容易である。その結果、加熱温度および加熱時間の制御も容易である。所望の温度プロファイルを設定できる。
【0015】
回路基板側の金属端子が発熱し、熱がはんだに伝達され、はんだが溶融する。取外し時も接合時と同様にはんだを溶融させる。
【0016】
電磁誘導加熱では、電源出力を調整することにより磁力制御も容易である。これにより、隣接する電子部品への影響を避けながら、取外し対象の電子部品に対応する回路基板側の金属端子のみを加熱できる。
【0017】
以上により、電磁誘導加熱により回路基板に実装された電子部品を取り外す方法では、電子部品の小型化に対応できる。また、非耐熱性材料からなる基板への適用も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2004-186491号公報
【文献】特開2001-044616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の通り、電磁誘導加熱により基板に実装された電子部品を取り外す方法によれば、電子部品の小型化に対応できる。
【0020】
しかしながら、電子部品の小型化を更に進めると、発熱対象である金属端子の面積も狭小となる。とくに、所定のエリアに多数の電子部品が配列される場合や、電子部品が多数の端子を有する場合(たとえば、ボールグリットアレイ(BGA)やチップサイズパッケージ(CSP))には、金属端子面積はさらに狭小となる。その結果、抵抗Rが大きくなり、充分な発熱量を確保できなくなる(上記理論式の分母が大きくなる)。
【0021】
上記理論式に基づけば、印加電圧Vを増加させるか、印加時間tを増加させることにより、発熱量Qを確保できる。
【0022】
一方で、実際に試作モデルにて検証してみると、金属端子面積が1mm×1mm程度以下になると、はんだの種類によっては、発熱不良等の不具合が散見され、金属端子面積が500μm×500μm程度以下では不具合が顕著になった。電磁誘導加熱では、印加電圧や印加時間を精度よく調整できるにもかかわらず、印加電圧や印加時間を調整しても不具合解消に限界があった。
【0023】
ところで、はんだの種類にはいくつかあり、一般的には、高温はんだ(たとえば、SnAgCu系はんだ、融点220℃程度)から低温はんだ(たとえば、SnBiはんだ、融点140℃程度)までが用いられている。仮に、低温はんだによるはんだ接合を対象としたとしても、上記不具合は発生する。
【0024】
なお、マイクロLEDに対応する回路側端子のサイズは、25μm×25μm~50μm×50μm程度であり、不具合あるマイクロLEDのみを取り外す方法は確立されていない。本願発明者は、将来的にこの程度のサイズの電子部品の取外しへの適用を視野に入れており、上記不具合が顕在化する可能性が高い。
【0025】
本発明は上記課題を解決するものであり、金属端子面積が狭小な場合でも対応可能な電子部材の取外し技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決する本発明は、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置である。当該装置は、中空を有する吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、前記吸着ノズル下部に設けられる発熱体を含み、前記発熱体を電磁誘導加熱により加熱する加熱手段と、前記発熱体が発する熱を前記吸着ノズル先端に伝導させる伝導手段とを備える。
【0027】
加熱手段により発生した熱は伝導手段を介して電子部品およびはんだに伝わり、はんだが溶融する。その間、吸着手段によりノズルと電子部品の吸着状態が維持される。金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、発熱体が発熱する。これにより、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を回路基板より取外すことができる。
【0028】
上発明において好ましくは、前記発熱体は、前記回路基板の端子より大きい。
【0029】
これにより、金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、発熱体が確実に発熱する。
【0030】
上発明において好ましくは、前記回路基板の端子サイズは、500×500μm以下である。より好ましくは250μm×250μm以下、更に好ましくは100μm×100μm以下である。
【0031】
端子サイズが1mm×1mm以下となる場合、電磁誘導加熱における発熱量不足等の不具合が散見され、500×500μm以下となると不具合が顕著となる。狭小なるほど発熱量不足となる。本発明によれば、金属端子面積が狭小な場合でも取外し可能である。
【0032】
上発明において好ましくは、前記発熱体に外装されるフェライトコアを更に備える。
【0033】
これにより、発熱体の発熱量が増加するとともに、金属端子の発熱量も増加する。相乗効果により、確実にはんだは溶融する。
【0034】
上記課題を解決する本発明は、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す方法である。上記装置を用い、前記加熱手段により前記発熱体を加熱し、前記伝導手段により前記発熱体が発する熱を前記吸着ノズル先端に伝導させ、はんだを溶融し、前記吸着手段により前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着して、回路基板にはんだ接合により実装された電子部材を前記回路基板より取外す。
【0035】
金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、発熱体が発熱する。これにより、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を回路基板より取外すことができる。
【0036】
上記課題を解決する本発明は、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置である。当該装置は、中空を有し、金属より形成される吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、前記吸着ノズル先端を電磁誘導加熱により加熱する加熱手段と、を備える。
【0037】
金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、金属製ノズルが発熱する。これにより、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を回路基板より取外すことができる。
【0038】
上記課題を解決する本発明は、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置である。当該装置は、中空を有し、フェライトにより形成される吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、前記吸着ノズル先端に装着される発熱体を含み、前記発熱体を電磁誘導加熱により加熱する加熱手段と、を備える。
【0039】
金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、発熱体が発熱する。これにより、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を回路基板より取外すことができる。
【0040】
上記課題を解決する本発明は、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す方法である。上記装置を用い、前記加熱手段により前記吸着ノズル先端を加熱し、はんだを溶融し、前記吸着手段により前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着して、回路基板にはんだ接合により実装された電子部材を前記回路基板より取外す。
【0041】
金属端子面積が狭小であり発熱量不足な場合でも、ノズル先端が発熱する。これにより、はんだ接合により回路基板に実装された電子部材を回路基板より取外すことができる。
【0042】
上記課題を解決する本発明は、熱溶融可能な手段により回路基板に実装された電子部材を前記回路基板より取外す装置である。当該装置は、中空を有する吸着ノズルを含み、前記吸着ノズル先端にて前記電子部材を吸着する吸着手段と、前記吸着ノズル下部に設けられる発熱体を含み、前記発熱体を電磁誘導加熱により加熱する加熱手段と、前記発熱体が発する熱を前記吸着ノズル先端に伝導させる伝導手段とを備える。
【0043】
本願は、はんだ接合以外にも、熱溶融可能な手段による接合を解除するのに適用できる。例えば、AFC(異方導電膜)接合や導電接着剤での接合を解除して、電子部材を回路基板より取外すことができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、金属端子面積が狭小な場合でも、電子部材を回路基板より取外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第1実施形態に係る装置概要(斜視図)
図2】第1実施形態に係る装置概要(断面図)
図3】第1実施形態に係る動作説明図
図4】第2実施形態に係る動作説明図
図5】第3実施形態に係る装置概要(断面図)
図6】第4実施形態に係る装置概要(断面図)
図7】電磁誘導の基本原理
【発明を実施するための形態】
【0046】
<第1実施形態 構成>
図1は第1実施形態に係る装置概要の斜視図であり、図2は断面図である。
【0047】
装置は、ノズル50と、吸引装置60と、加熱装置70と、制御装置80とから構成されている(図3参照)。
【0048】
ノズル50の主要部(または全部)は、高耐熱性かつ高熱伝導性の材質により構成される。たとえば、セラミックス、ルビー、サファイア、ダイアモンドなどが挙げられる。なお、2019年現在、セラミックスにおいて、最小孔直径10μmのセラミックス加工精度があり、本願発明は十分実現可能である。
【0049】
ノズル50は中空51を有する。中空51一端にて電子部品を吸着し、中空51他端は吸引装置60に連続している。これにより、ノズル50は中空51を介して吸着可能となる。なお、微小電子部品に対応するように、ノズル50の先端は錘状に先細っていることが好ましい。
【0050】
ノズル50下部には発熱体71がノズル50に巻きつくように設けられている。発熱体71は一般に金属材料からなる。金属材料として金、銀、銅、アルミニュウム、ニッケル、クロムなどがある。発熱体71のノズル50下部への配置方法としては、蒸着やメッキによるもの、筒状の発熱体71にノズル50を嵌合させるものが例示できる。
【0051】
ノズル50の外周にはコイル72が配置される。逆に言うと、コイル内部空間にノズル50が配置される。発熱体71とコイル72と電源(図7参照)は加熱装置(加熱手段)70を構成する。電源よりコイル72に電流を供給すると、磁界が発生し、磁界範囲にある発熱体71が発熱する。
【0052】
<第1実施形態 動作>
図3は第1実施形態に係る動作説明図である。ただし、図1図2においては、ノズル幹部に発熱体71が設けられているのに対し、図3においては、ノズル錘部に発熱体71が設けられてい点で、若干変更されている。はんだにより近くなるようにノズル錘部に発熱体71が設けられていることが好ましいが、ノズル錘部に発熱体71を設ける加工が難しい場合はノズル幹部に発熱体71を設けてもよい。動作原理は共通である。
【0053】
回路基板10に電子部品(例えばLED)20が複数実装される。具体的には、回路基板10には配線回路11(図示省略)と回路側端子12が形成されている。電子部品20は電子部品側端子22を有する。回路側端子12と電子部品側端子22とは、はんだ30を介して接合されている。
【0054】
複数の電子部品のうち一の電子部品に異常があったり故障した場合、隣り合う正常な電子部品への影響を避けながら、当該電子部品のみを取外す動作について説明する。
【0055】
本装置では、制御装置80により、吸引装置60と加熱装置70とが連動する。
【0056】
吸引装置60が作動すると、ノズル中空51内に陰圧が発生する。この状態でノズル50を電子部品20に近づけると、ノズル50先端が電子部品20表面に接着する。ここで吸引装置60とノズル中空51とノズル50先端は吸着手段を構成する。
【0057】
一方、コイル72に交流電流を流すと、強度の変化する磁力線が発生する。その近くに電気を通す物質(本願では金属製発熱体71)を置くとこの変化する磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。金属には通常電気抵抗があるため、金属に電流が流れると、ジュール熱が発生して、金属(発熱体71)が自己発熱する。この現象を電磁誘導加熱という。
【0058】
加熱装置70により発生した熱は、発熱体71から熱伝導性に優れるノズル50を介して、電子部品20およびはんだ30に伝導される。ノズル50自体が伝導手段を構成する。
【0059】
これにより、はんだ30が溶融し、回路側端子12と電子部品側端子21との接合は解除される。一方、電子部品20とノズル50との吸着状態は維持されており、ノズル50を回路基板10から遠ざけると、電子部材20を回路基板10より取外すことができる。さらに、吸引装置60が作動停止すると、電子部品20とノズル50との吸着状態は解除され、電子部品20を回収できる。
【0060】
<備考>
ところで、本願課題は、端子12面積が狭小であり、端子12による充分な発熱量を確保できないことである。しかしながら、電磁誘導加熱により端子12が全く自己発熱しないわけではない。端子12における発熱もはんだ30に伝導される。したがって、端子12も金属からなることが好ましい。
【0061】
一方で、端子12自身の発熱を全く期待しない場合は、導電性ポリマー、導電性カーボン等でも良い。また、端子12のサイズに比べて配線は更に細く、電磁誘導加熱に寄与しないため、考慮しない。
【0062】
なお、配線および端子12は導電性材料により形成されている。一般的には、金、銀、銅、アルミニュウム、ニッケル、クロム等を含む金属系材料である。配線および端子12は、一般的な従来手法(印刷、エッチング、金属蒸着、メッキ、銀塩等)によって、形成される。
【0063】
<第1実施形態 サイズの検討>
本願課題は、端子12面積が狭小の場合、端子12による充分な発熱量を確保できないことである。したがって、各サイズの相互関係は非常に重要である。以下、第1実施形態における各サイズについて概説する。
【0064】
実際に試作モデルにて検証してみると、金属端子面積が1mm×1mm程度以下になると、はんだの種類によっては、発熱不良等の不具合が散見され、金属端子面積が500μm×500μm程度以下では不具合が顕著になった。また、本願発明者は、将来的に金属端子面積25μm×25μm~50μm×50μm程度の電子部品(たとえばマイクロLED)の取り外しを検討している。
【0065】
したがって、金属端子面積は1mm×1mm以下、好ましくは500μm×500μm以下、より好ましくは250μm×250μm以下、更に好ましくは100μm×100μm以下である。
【0066】
一例として、金属端子面積250μm×250μm、4つの端子を有する1mm×1mm程度の電子部品について、各サイズの相互関係について説明する。
【0067】
回路基板10には複数の電子部品20が実装されている。電子部品間隔は、電子部品サイズ相当である。上記例では1mm間隔とする。
【0068】
ここで、ノズル直径が3mm(≒電子部品サイズ+両隣間隔)以上になると、隣合う電子部品への影響が発生するおそれがある。したがってノズル直径が3mm(≒電子部品サイズ+両隣間隔)未満であることが好ましい。一方で、ノズル50先端と電子部品20との接触を介して熱伝導が発生するため、ノズル直径が1mm程度(電子部品サイズ相当)またはそれ以上であることが好ましい。吸引孔(中空51)の直径は100~200μm程度が好ましい。
【0069】
ノズル直径を1mmとすると、発熱体71の周方向長さは3mm程度となる。発熱体71の軸方向長さ2.5mm(金属端子サイズの10倍程度)とすると、発熱体面積は金属端子面積の120倍となり、充分な面積を確保できる。すなわち、発熱体71は金属端子12より充分大きい。
【0070】
別例として、金属端子面積50μm×50μm、4つの端子を有する200μm×200μm程度の電子部品について、各サイズの相互関係について説明する。
【0071】
回路基板10には複数の電子部品20が実装されている。電子部品間隔は、電子部品サイズ相当である。上記例では200μm間隔とする。
【0072】
ここで、ノズル直径が600μm(≒電子部品サイズ+両隣間隔)以上になると、隣合う電子部品への影響が発生するおそれがある。したがってノズル直径が600μm(≒電子部品サイズ+両隣間隔)未満であることが好ましい。一方で、ノズル50先端と電子部品20との接触を介して熱伝導が発生するため、ノズル直径が200μm程度(電子部品サイズ相当)またはそれ以上であることが好ましい。吸引孔(中空51)の直径は20~40μm程度が好ましい。なお、2019年現在、セラミックスにおいて、最小孔直径10μmのセラミックス加工精度があり、本願発明は十分実現可能である。
【0073】
ノズル直径を300μmとすると、発熱体71の周方向長さは0.9mm程度となる。発熱体71の軸方向長さ1.2mm(金属端子サイズの24倍程度)とすると、発熱体面積は金属端子面積の432倍となり、充分な面積を確保できる。すなわち、発熱体71は金属端子12より充分大きい。
【0074】
<第1実施形態 効果>
吸着ノズル50にも設けられた発熱体71による加熱により、回路側の金属端子12面積が狭小な場合でも、電子部材20を回路基板10より取外すことができる。その際、隣り合う電子部材に影響を与えない。
【0075】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る動作説明図である。あわせて、概略構成についても説明する。第2実施形態は第1実施形態の変形例である。
【0076】
すなわち、ノズル50および発熱体71周りにフェライトコア73が外装されている。ここで、発熱体71と、コイル72と、フェライトコア73と、電源(図7参照)は加熱装置(加熱手段)70を構成する。
【0077】
電源よりコイル72に電流を供給すると、磁界が発生し、フェライトコア73に沿って磁界は集束する。その結果、発熱体71による発熱量が増加する。また、金属端子12による発熱量も増加する。この相乗効果により、確実にはんだ30は溶融する。
【0078】
吸引装置60と加熱装置70との連動により、電子部材20を回路基板10より取外す動作については、第1実施形態と同様である。
【0079】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る装置概要の断面図である。第1および第2実施形態では、微小孔の中空51を確保するため、ノズル主要部に加工精度の高いセラミックス等を用いた。これに対し、第3実施形態では、ノズル55の主要部(または全部)が金属により構成される。
【0080】
セラミックスと同レベルの金属加工精度が得られる場合や、第1および第2実施形態ほどの微小孔を求められない場合は、第3実施形態の適用が可能である。
【0081】
ここで、金属製ノズル55と、コイル72と電源(図7参照)は加熱装置(加熱手段)70を構成する。電源よりコイル72に電流を供給すると、磁界が発生し、磁界範囲にある金属製ノズル55が発熱する。ノズル55により発生した熱は、ノズル55先端を介して、電子部品20およびはんだ30に伝導される。これにより、はんだ30は溶融する。
【0082】
吸引装置60と加熱装置70との連動により、電子部材20を回路基板10より取外す動作については、第1実施形態と同様である。
【0083】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態に係る装置概要の断面図である。第2実施形態に係る技術思想と第3実施形態に係る技術思想を組み合わせたものである。
【0084】
すなわち、ノズル56の主要部はフェライトコアにより構成される。ノズル56の先端には、金属製の発熱アタッチメント74が嵌合されている。
【0085】
発熱アタッチメント74は挿入部と接触部を有する。発熱アタッチメント74挿入部は中空51に挿入される。発熱アタッチメント74接触部はノズル先端位置において電子部品と接触可能である。
【0086】
ここで、フェライトコア製ノズル56と、コイル72と、発熱アタッチメント74と、電源(図7参照)は加熱装置(加熱手段)70を構成する。電源よりコイル72に電流を供給すると、磁界が発生し、フェライトコア56に沿って磁界は集束する。磁界範囲にある発熱アタッチメント74が発熱する。発熱アタッチメント74により発生した熱は、電子部品20およびはんだ30に伝導される。これにより、はんだ30は溶融する。
【0087】
吸引装置60と加熱装置70との連動により、電子部材20を回路基板10より取外す動作については、第1実施形態と同様である。
【0088】
<その他>
本願は、はんだ接合以外にも、熱溶融可能な手段による接合を解除するのに適用できる。例えば、AFC(異方導電膜)接合や導電接着剤での接合を解除して、電子部材を回路基板より取外すことができる。
【符号の説明】
【0089】
10 回路基板
11 配線回路
12 回路側端子
20 電子部品
22 電子部品側端子
30 はんだ
50 ノズル(セラミックス製)
51 中空
55 ノズル(金属製)
56 ノズル(フェライトコア製)
60 吸引装置
70 加熱装置
71 発熱体
72 コイル
73 フェライトコア
74 発熱アタッチメント
80 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7