(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】車両の加熱および/または空調方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220825BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20220825BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F25B1/00 396Z
C09K5/04 F
C09K5/04 E
F25B1/00 321L
B60H1/22 651Z
(21)【出願番号】P 2019551456
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(86)【国際出願番号】 FR2018050671
(87)【国際公開番号】W WO2018172689
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウィザム ラシェド
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226728(JP,A)
【文献】特開2015-163836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
B60H 1/00 ~ 3/06
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱交換器と、膨張器と、第2熱交換器と、圧縮機と、可逆冷却ループの動作を反転させる手段とを備えた内部を冷媒流体が循環する可逆冷却ループを使用して、自動車の車内を加熱および/または空調する方法であって、冷媒流体が下記(1)~(3)を含むことを特徴とする方法:
(1)4~6重量%のジフルオロメタン、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン、
(3)91~93.5重量%のテトラフルオロプロペ
ン。
【請求項2】
(3)のテトラフルオロプロペンが2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷媒流体が下記(1)~(3)を含む請求項1
または2に記載の方法:
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタン、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン、
(3)91~93重量%のテトラフルオロプロペン。
【請求項4】
冷媒流体が下記(1)~(3)を含む請求項1または2に記載の方法:
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタン、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン、
(3)91.5~93重量%のテトラフルオロプロペン。
【請求項5】
冷媒流体が下記(1)~(3)を含む請求項1または2に記載の方法:
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタン、
(2)3~3.5重量%のペンタフルオロエタン、
(3)91~92重量%のテトラフルオロプロペン。
【請求項6】
冷媒流体が下記からなる群の中から選択される請求項1~
5のいずれか一項に記載に記載の方法:
(1)5重量%のジフルオロメタンと、3.3重量%のペンタフルオロエタンと、91.7重量%のテトラフルオロプロペ
ン、
(2)5重量%のジフルオロメタンと、3重量%のペンタフルオロエタンと、92重量%のテトラフルオロプロペ
ン、
(3)5重量%のジフルオロメタンと、3.1重量%のペンタフルオロエタンと、91.9重量%のテトラフルオロプロペ
ン、
(4)5重量%のジフルオロメタンと、3.2重量%のペンタフルオロエタンと、91.8重量%のテトラフルオロプロペ
ン、
(5)6重量%のジフルオロメタンと、3重量%のペンタフルオロエタンと、91重量%のテトラフルオロプロペ
ン、
(6)6重量%のジフルオロメタンと、2.5重量%のペンタフルオロエタンと、91.5重量%のテトラフルオロプロペ
ン。
【請求項7】
冷媒流体のGWPが150以
下である請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
冷媒流体の可燃下限値が285g/m
3以
上である請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
冷媒流体の火炎伝播速度が2cm/秒以
下である請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1熱交換器および第2熱交換器が空気/冷媒型であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記冷却ループがエンジンおよび/または電子回路の冷却回路と熱的に結合されていることを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1熱交換器を冷媒流体と、自動車のエンジンの排気ガスまたはバッテリまたは自動車の電子回路の熱との両方が通ることを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項13】
上記ループがパイパスとして少なくとも1つの熱交換器を有し、この熱交換器は自動車エンジン内部に入る空気流、または、自動車の排気ガス、および/または、電動モータおよび/または電子回路および電気自動車のバッテリーからの熱と熱的に連通していることを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
冷却ループが車両に搭載されて、熱機関および/または電気バッテリーのエネルギーを回収することを特徴とする請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の
方法を使用した可逆冷却ループを有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内の加熱および/または空調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では、内燃機関が、エンジンを冷却し、車内を加熱するのに使用する熱伝達流体の循環回路を備えている。この循環回路はポンプとエアヒーター(aerotherme)とを有し、このヒーターは車内を加熱するための伝熱流体が蓄積した熱を回収し、このヒーター中を空気流が循環する。
【0003】
自動車の車内を冷却するための空調システムは、蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁を有し、状態(液体/気体)を変えることのできる一般に冷媒とよばれる流体を収容している。圧縮機はベルト/プーリを用いて車両のエンジンによって直接駆動されて冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒を凝縮器に吐出する。凝縮器は強制換気され、高温高圧のガスを液化させてそれを通る空気の温度を下げる。蒸発器は車内に吹き出される空気の熱を取る熱交換器である。膨張弁は蒸発器の所の温度と圧力に応じて断面を変えることでループ中のガス流量を調節する。これらの構成によって外部からの熱い空気が蒸発器を通過する時に冷却される。
【0004】
自動車の空調に広く使用されている冷媒は1、1、1、2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)である。
【0005】
[特許文献1](国際公開第2008/107623号公報)に開示の自動車のエネルギー管理システムは冷媒流体の可逆冷却循環ループと、この可逆冷却循環ループの動作サイクルを冷却モード位置とヒートポンプモード位置との間で逆転させる逆転手段と、冷媒からエネルギーを回収するための少なくとも一つの第1熱源(premiere source)と、冷媒流体を蒸発させて冷媒を液体から二相状態に膨張させる少なくとも一つの第2熱源(seconde source)とを有し、上記逆転手段はヒートポンプに対応する位置と同じ位置で第1回収熱源からの冷媒の流れを少なくとも一つの第2蒸着源へ流すことができる。
【0006】
しかし、冷媒としてHFC-134aを[特許文献1](国際公開第2008/107623号公報)に記載のようなシステムで用いた場合には、外気温が低い時、例えば約-10℃の時に、コンプレッサーが始動を開始する前に、蒸発器中に減圧が形成され始める。この減圧によって系内へ空気が侵入し、部品、例えば圧縮機、熱交換器、膨張弁等の腐食や劣化が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、圧縮機の起動時に空気が冷却ループの蒸発器に入るのを制限、阻止し、および/または、冷却ループの性能を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、第1熱交換器と、膨張弁と、第2熱交換器と、圧縮機と、可逆冷却ループ(boucle frigorifique reversible)の動作を反転させる手段とを有する、内部を冷媒流体が循環する可逆冷却ループを用いて自動車の車内の暖房および/または空調する方法であって、冷媒流体が下記(1)~(3)を含む(好ましくは(1)~(3)から成る)ことを特徴とする方法にある:
(1)4~6重量%のジフルオロメタン(HFC-32)と
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)と、
(3)91~93.5重量%のテトラフルオロプロペン。
【0010】
特に、上記の自動車の車内の加熱および/または空調方法は、上記定義の冷媒流体、すなわち、
(1)4~6重量%のジフルオロメタン(HFC-32)と
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)と、
(3)91~93.5重量%のテトラフルオロプロペンと
を含む冷媒流体を循環させる工程を含む。
【0011】
本発明の加熱および/または空調ユニットの方法は、以下の工程:冷媒流体を蒸発させる工程、冷媒流体を圧縮する工程は、冷媒流体を凝縮する工程、冷媒流体を膨張させる工程の少なくとも一つを含むのが好ましい。
【0012】
本発明で重量%は冷媒流体の総重量に対する比率である。
特に明記しない限り、明細書全体で各化合物の割合は重量パーセントとして与えられる。
本発明で「HFO-1234yf」は2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを示す。
本発明で「HFO-1234ze」は1,3,3,3-トリフルオロプロペンとそのシス異性体、トランス異性体およびこれらの混合物を意味する。
【0013】
本発明の別の実施形態では、好ましくは冷媒流体が本質的に下記から成る:
(1)4~6重量%のジフルオロメタン(HFC-32)と、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)と、
(3)91~93.5重量%のテトラフルオロプロペン。
【0014】
冷媒流体中には不純物が例えば1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下、特に、0.01%以下存在することができる。これらの不純物は冷媒流体の特性に有意な影響を及ぼさない。
【0015】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体は下記を含む(好ましくは下記から成る):
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタンと、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタンと、
(3)91~93重量%のテトラフルオロプロペン。
【0016】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体は下記を含む(好ましくは下記から成る):
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタンと、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタンと、
(3)91.5~93重量%のテトラフルオロプロペン。
【0017】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体は下記を含む(好ましくは下記から成る):
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタンと、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタンと、
(3)91~92重量のテトラフルオロプロペン。
【0018】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体は下記を含む(好ましくは下記から成る):
(1)4.5~5.5重量%のジフルオロメタンと、
(2)3~3.5重量%のペンタフルオロエタンと、
(3)91~92重量%のテトラフルオロプロペン。
【0019】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体中のテトラフルオロプロペンは1,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3-テトラフルオロプロペンから選択され、好ましくは、テトラフルオロプロペンは2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである。
【0020】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体は以下の流体からなる群の中から選択される:
(1)5重量%のジフルオロメタンと、3.3重量%のペンタフルオロエタンと、91.7重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(2)5重量%のジフルオロメタンと、3.3重量%のペンタフルオロエタンと、92重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(3)5重量%のジフルオロメタンと、3.1重量%のペンタフルオロエタンと、91.9重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(4)5重量%のジフルオロメタンと、3.2重量%のペンタフルオロエタンと、91.8重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(5)6重量%のジフルオロメタンと、3重量%のペンタフルオロエタンと、91重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(6)6重量%のジフルオロメタンと、3.1重量%のペンタフルオロエタンと、90.9重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
(7)6重量%のジフルオロメタンと、2.5重量%のペンタフルオロエタンと、91.5重量%のテトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン。
【0021】
本発明の一つの実施形態では、冷媒流体のGWPは150以下、好ましくは140以下、特に130以下である。GWPは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の専門グループの弟4版レポートが提供する情報を使用して計算することができる。混合物のGWPは各成分の質量濃度とGWPに基づいて珪酸される。純粋化合物のGWPは一般的には欧州F-ガス指令(2014年4月16日の欧州議会と協議会の規則(EU)517/2014)に記載されている。
【0022】
上記冷媒流体は引火性が少ないか、引火性がないという利点がある。
【0023】
上記冷媒流体の可燃下限(limite inferieure d'inflammabilite)は285g/m3以上、好ましくは287g/m3以上、特に、290g/m3以上であるという利点がある。
【0024】
上記の冷媒流体は可燃下限が100g/m3以上、好ましくは105g/m3以上、特に110g/m3以上のWCFF組成物にすることができる。
【0025】
上記冷媒流体と対応するWCFおよびWCFFの燃焼熱(HOC)は19000kj/m3以下である。本発明の燃焼熱はASHRAE規格34-2013に記載の方法で決定される。
【0026】
「可燃下限(limite inferieure d'inflammabilite)」はASHRAE規格34-2013で、組成物と空気との均質混合物を通して火炎を伝播することが可能な組成物の最小濃度と定義され、その試験条件はASTM規格E681-04で特定されている。その値は例えばkg/mまたは体積%で与えられる。
【0027】
いわゆる「WCF」組成物(「可燃性に対する最悪のケース、worst case of formulation for flammability」)は、ASHRAE規格34-2013で、火炎伝播速度が最も高い組成(formulation)の組成物と定義される。この組成物は一定の許容誤差を含めて公称組成に極めて近い(本発明では公称組成は本発明の冷媒流体に対応する)。
【0028】
WCFF組成物(「可燃性に対する画分の最悪のケース、worst case of fractionation for flammability」)は、ASHRAE規格34-2013で、火炎伝播速度が最高である組成物として定義される。この組成物は同じ規格で定義された方法に従って決定される。
【0029】
本発明で、可燃性、火炎伝播速度および可燃下限はASHRAE規格34-2013に記載の試験に従って定義され、決定され、これに使用する装置はASTM規格E681を参照できる。
【0030】
火炎伝播速度の基本的な試験方法はASHRAE規格34-2013に記載され、T. Jabbourの論文:Classification de l'inflammabilite des fluides frigorigenes basee sur la vitesse fondamentale de flamme,Denis Clodic編, Paris, 2004に記載されている。
【0031】
特に、この実験装置は垂直ガラス管(チューブの数2、長さ150cm、直径40cm)を使用する。2本のチューブを使用することで同じ濃度を有する2つのテストを同時に行うことができる。各チューブにはタングステン電極を付ける。タングステン電極は各チューブの底部に配置され、6.35mm(1/4in)離し、15kV、30mAの発電機に接続される。
【0032】
種々の組成物を試験してASHRAE規格34-2013に定義された基準に従って可燃性(inflammables)か、非可燃性(non inflammables)に分類する。
【0033】
上記の冷媒流体は火炎伝播速度が2cm/秒以下、好ましくは1.7cm/秒以下、好ましくは1.6cm/秒以下、さらに有利には1.5cm/秒以下であるという利点がある。
【0034】
有利なことに、上記の冷媒流体はASHRAE規格34-2013では2Lに評価される。この規格ではクラス2Lは火炎伝播速度が10cm/秒以下であることが必要とされる。
【0035】
上記の冷媒流体はエネルギー性能に優れ、可燃性が低いか、ゼロで、GWPが低く、好ましくはGWPが150以下であるという優れたバランスを有しているという利点がある。
【0036】
可燃性が低いということは、上記の冷媒流体を本発明方法で使用した場合に安全であるという利点になる。
【0037】
上記冷媒流体は公知の任意の方法、例えば互いに異なる化合物を単に混合するだけで調製できる。
【0038】
「熱伝達化合物」「熱伝熱流体」または「冷媒流体」とは、蒸気圧縮回路中で低温低圧で蒸発することで熱を吸収し、高温高圧で凝縮することで熱を放出することができるそれぞれ化合物、流体を意味する。一般に、熱伝達流体は単一化合物であるか、2つ、3つ、またはそれ以上の熱伝達化合物を含むことができる。
【0039】
本発明の冷媒流体は安定剤を含むことができる。安定剤の中ではニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、アゾール類、例えばトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、フェノール化合物、例えばトコフェロール、ヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノール、エポキシド(必要に応じてフッ素化または過フッ素化されていてもよいアルキルまたはアルケニルまたは芳香族)、例えばn-ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ホスファイト、ホスホネート、チオールおよびラクトンを挙げることができる。
【0040】
本発明で可逆冷却ループの動作を反転させる手段は冷却モード位置とヒートポンプモード位置との間で冷却ループの動作を反転させる手段である。
【0041】
この反転手段は、可逆冷却ループ中での冷媒の経路を変更する手段であるか、冷却ループ中の冷媒の循環方向を反転させる手段にすることができる。
【0042】
この反転手段は例えば四方弁、反転弁、ストップ(閉鎖)弁、膨張弁またはこれらの組み合わせにすることができる。
【0043】
例えば、冷却ループの運転モードを切替えた時に熱交換器の役割を変えることができる。例えば、一つの熱交換器が冷却モードでは凝縮器の役割をし、ヒートポンプモードでは蒸発器の役割をするようにすることができる。
【0044】
典型的には、可逆冷却ループはパイプ、チューブ、導管またはその他の容器を含み、冷媒はこれらを通って種々の熱交換器、レギュレータ、切換弁等の間を循環する。
【0045】
上記のループが冷却動作モードか、ヒートポンプモードかに従って、第1熱交換器は蒸発器の役割またはエネルギー回収の役割をすることができる。このことは第2熱交換器でも同じである。冷却モードでは第2熱交換器が空気流を冷却し、それを自動車の車内に送ることができる。ヒートポンプモードでは第2熱交換器が自動車の車内の空気流を加熱するために使用できる。
【0046】
第1熱交換器と第2熱交換器は空気/冷媒型である。
【0047】
本発明方法では、本発明の冷却ループを、熱交換器を介して、エンジンおよび/または電子回路の冷却回路に熱的に結合する(カップルさせる)ことができる。すなわち、ループは冷媒および熱流体(fluide caloporteur)(特に空気、または、エンジンまたは電気モータの冷却水および/または電子回路の冷却回路の水)の両方が通る少なくとも1つの熱交換器を備えることができる。
【0048】
本発明の変形実施例では、第1熱交換器を冷媒と車両のエンジンからの排気ガスとの両方が通る。車両のエンジンは熱流体回路に熱的に連結できる。
【0049】
本発明の変形実施例では、第1熱交換器を冷媒と、自動車、特に電気自動車のバッテリーまたは電子回路の熱との両方が通る。
【0050】
本発明方法の冷却ループは、自動車の熱機関の内部に送られる空気流、または、自動車のエンジンの排気ガス、および/または、電気モータおよび/または電気自動車の電子回路からの熱と熱的に結合する(カップルする)少なくとも1つの熱交換器を備えることができる。
【0051】
本発明方法は外気温度が3℃以下、好ましくは-2℃以下、好ましくは-7℃以下、特に-12℃以下、さらに好ましくは-17℃以下、例えば-22℃以下、有利には-27℃以下、好ましくは-29℃以上の場合に特に適している。
【0052】
本発明方法は蒸発器の温度が0℃以下、好ましくは-5℃以下、好ましくは-10℃以下、特に-15℃以下、より好ましくは-20℃以下、例えば-25℃以下、有利には-30℃以下、好ましく-32℃以上である場合に特に適している。
【0053】
本発明方法は内燃機関を有する自動車、電動モータを有する自動車、熱機関と電動モータとを交互に動作させるハイブリッド自動車に適している。本発明方法は気象条件(寒暖)に応じて車室およびバッテリーへのエネルギーの入力を管理でき、特に、冷却回路を介してバッテリーに高温度とまたは低温度を送ることができる。
【0054】
上記定義の冷媒が循環する可逆冷却ループは自動車に搭載されて乗客の暖房およびコールドスタート時のエンジンの加熱に使用する熱機関および/またはバッテリーおよび/または電子回路のエネルギーを回収するのに特に適している。この可逆冷却ループがポンプを含む場合にはランキンモード(すなわち、圧縮機がタービンとして動作するモード)で運転することでエンジンが生成する熱エネルギーを利用し、冷媒によって熱エネルギーを伝達、移送することができる。
【0055】
本発明はさらに、下記冷媒流体:
(1)4~6重量%のジフルオロメタン(HFC-32)と、
(2)2.5~3.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)と、
(3)91~93.5重量%のテトラフルオロプロペンと
を含む(好ましくは上記(1)~(3)からなる)が内部を循環する冷却ループ(boucle frigorifique)であって、この冷却ループが第1熱交換器と、膨張器と、第2熱交換器と、圧縮機と、可逆冷却ループの動作を反転させる手段とを含む冷却ループの、自動車の車内の加熱および/または冷却での使用にも関するものである。
【0056】
本発明のさらに他の対象は、上記冷却ループ、特に、第1熱交換器、膨張器、第2熱交換器、圧縮機、動作逆転手段を含む冷却ループを有するデバイスにある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1]に概念的に示す本発明の第1実施形態では、冷却ループ(16)が第1熱交換器(13)と、膨張器(14)と、第2熱交換器(15)と、圧縮機(11)と、四路切換弁(12)とを備えている。第1熱交換器および第2熱交換器は空気/冷媒流体型である。第1熱交換器(13)には冷却ループ(16)の冷媒流体とファンによって送られる空気流とが通る。この同じ空気流の一部または全てをエンジンの冷却回路および/または電子回路(図示せず)の熱交換器を通過させることができる。同様に、第2熱交換器(15)にはファンによって供給される空気流が通過する。この空気流の一部または全てもエンジンの冷却回路および/または電子回路(図示せず)の別の熱交換器を通過させることができる。空気流の方向はループ(16)の動作モードと熱機関または電気モータのニーズとに依存する。すなわち、熱機関または電気モータが運転され、ループ(16)がヒートポンプモードにある場合には、空気を熱機関または電気モータの冷却回路の熱交換器によって加熱し、熱交換器(13)を通すことによってループ(16)の冷媒流体の蒸発を促進し、それによってこのループの性能を向上させルことができる。
【0059】
冷却回路の熱交換器は熱機関または電気モータのニーズ(エンジンに入る空気の加熱またはエンジンが生じるエネルギーの回収)に応じて切換弁を用いて作動(活性化)させることができる。
【0060】
冷却モードでは、冷媒流体は圧縮機(11)によって切換弁(12)と、凝縮器(すなわち熱を外部に放出)として作動する熱交換器(13)とを通り、さらに膨張器(14)と、蒸発器として作動する熱交換器(15)とを通る。熱交換器(15)は自動車の車内の空気流を冷却する。
【0061】
本発明の冷却方法は典型的な空調モード(mode de climatisation)にすることができる。
【0062】
ヒートポンプモードでは、切換弁(12)によって冷媒流体の流れ方向を反転する。熱交換器(15)が凝縮器として機能し、熱交換器(13)が蒸発器として機能する。従って、熱交換器(15)は自動車の車内への空気流を加熱するのに使用される。
【0063】
[
図2]に概念的に示す本発明の第2実施形態では、冷却ループ(26)が第1熱交換器(23)と、膨張器(24)と、第2熱交換器(25)と、圧縮機(21)と、四方弁(22)と、バイパス分路(ブランチ)(D3)とを備え、バイパス分路(ブランチ)(d3)の一方は熱交換器(23)の出口に取り付けられ、他方は第2熱交換器(25)の出口に取り付けられ、冷却モードでの流体の流れと見なされる。このブランチは空気流または排気ガスが通る熱交換器(d1)と、膨張弁(d2)とを有している。熱1熱交換器および第2熱交換器(23,25)は空気/冷媒型である。第1熱交換器(23)には冷却ループ(26)の冷媒流体とファンによって供給される空気流とが通る。この空気流の一部または全てをエンジンまたは電子回路(図示せず)の冷却回路の熱交換器を通過させることができる。同様に、第2熱交換器(25)にもファンによって供給される空気流を通すことができる。この空気流の一部または全てをエンジンまたは電子回路(図示せず)の冷却回路の別の熱交換器を通すことができる。空気流の方向はループ(26)の動作モードとエンジンおよび/または電気モータのニーズとによって決まる。例えば、熱機関および/または電気モータが動作中で、ループ(26)がヒートポンプモードである場合には、エンジンおよび/または電気モータの冷却回路の熱交換器によって空気を加熱した後に、交換器(23)を通してループ(26)中の冷媒流体の蒸発を促進させ、ループの性能を改善することができる。
【0064】
冷却回路の熱交換器は熱機関または電気モータのニーズ(エンジンに入る空気の加熱またはエンジンが生成するエネルギーの回収)に応じて切換弁を用いて作動(活性化)させることができる。
【0065】
熱交換器(d1)も、冷却モードまたはヒートポンプモードにおけるエネルギー要求に応じて作動(活性化)させることができる。分岐(d3)に停止弁(
図2には図示せず)を設けてこのブランチを有効または無効にすることができる。
【0066】
熱交換器(d1)にもファンによって供給される空気流を通すことができる。この同じ空気流をエンジンおよび/または電気回路の冷却回路上に配置された他の熱交換器と、排気ガス回路、エンジンへの空気供給路上または電気自動車またはハイブリッド車のバッテリーの別の熱交換器に通すことができる。
【0067】
冷却モードでは、冷媒流体は圧縮機(21)によって切換弁(22)と、凝縮器(熱を外部に放出)として機能する交換器(23)とを通過するように移動され、さらに下記(1)および/または(2)を通過する:
(1)膨張器(24)と、自動車の車内への空気流を冷却する蒸発器として機能する交換器(25)、
(2)膨張器(d2)と、例えば電気モータおよび/または電子回路および/またはバッテリを冷却するための空気流冷却での蒸発器として機能する交換器(d1)
【0068】
ヒートポンプモードでは冷媒の流れ方向が切換弁(22)によって反転させる。熱交換器(25)と熱交換器(d1)は凝縮器として機能し、交換器(23)は蒸発器として機能する。熱交換器(25)と(d1)は自動車の車内およびバッテリーへの空気流を加熱するのに使用される。
【0069】
[
図3]に概念的に示す本発明の第3実施形態では、冷却ループ(36)が第1熱交換器(33)と、膨張器(34)と、第2熱交換器(35)と、圧縮機(31)と、四方切換弁(32)とを備え、第1熱交換器および第2熱交換器(33,35)は空気/冷媒型である。熱交換器(33,35)の動作は[
図1]に示した第1実施形態と同じである。少なくとも1つの流体/液体熱交換器(38および/または37)を、ループ(36)の冷却回路上と、熱機関または電気モータおよび/またはバッテリ冷却回路上、または、グリセリン水の二次回路上に設けることができる。
【0070】
[
図3]は流体/液体型の2つの熱交換器(37と38)を有する実施形態を示している。しかし、この第3実施形態では冷却ループは熱交換器(37)または熱交換器(38)のいずれかを設けることができる([
図3]には示されていないモード)。
【0071】
流体/液体型の交換器(37または38)は、それぞれ熱交換器(35または33)に直列に([
図3]に概念的に示す)または平行に接続することができる。熱交換器(35または33)と直列に取り付ける場合、熱交換器(37または38)は冷媒の循環方向で熱交換器(35または33)の前または後に配置することができる。
【0072】
中間ガス流体(空気)を使用しない液体/液体型の熱交換器を設置することで空気/流体の熱交換比を向上させることができる。
【0073】
冷却モードでは、冷媒流体は圧縮機(31)によって四方弁(32)と、必要に応じて設けられる凝縮器(エンジンおよび/またはエネルギー回収システムに入る空気の二次回路を通って熱を放出)として機能する熱交換器(38)とを通って送られ、次に凝縮器として機能する交換器(33)(熱を外部に放出)と、膨張器(34)と、蒸発器(さらに、自動車の車内への空気流の冷却)の役割をする交換器(35)と、必要に応じて設けられる蒸発器の役割をする交換器(37)(これは別の液体/空気型の熱交換器を介して車内の空気を冷却し、および/または、バッテリーを直接冷却する)。
【0074】
ヒートポンプモードでは冷媒の流れ方向を切換弁(32)によって反転させる。熱交換器(37)はそれが存在する場合、凝縮器として作用し、熱交換器(33)は蒸発器として機能する。熱交換器(35)も凝縮器として作用し、熱交換器(38)が存在する場合も同じ。従って、熱交換器(35)を自動車の車内の空気流を加熱するために使用できる。熱交換器(37)は別の液体/空気型の熱交換を介して自動車の車内の空気流を加熱する液体を加熱でき、および/または、バッテリーを直接加熱できる。
【0075】
[
図4]に概念的に示した本発明の第4実施形態では、冷却ループ(46)か直列の第1熱交換器(43と48)と、膨張器(44)と、直列の第2熱交換器(45と47)と、圧縮機(41)と、四路切換弁(42)と含み、さらに、バイパスブランチ(d1)を有する。このブランチ(d1)の一方は交換器(43)の出口に接続され、他方は第2交換器(47)の出口に接続され、これは冷却モードでの流体の循環路とみなされる。このブランチ(d1)は空気流または排気ガスが通る流量熱交換器(d1)と、膨張弁(d2)とを有している。このブランチ(d1)の動作は[
図2]に示した第2実施形態と同様である。
【0076】
熱交換器(43,45)は空気/冷媒流体型で、熱交換器(48と47)は液体/冷媒流体型である。これらの熱交換器の動作は[
図3]に示した第3実施形態と同じである。
【0077】
第4実施形態のループの機能は、典型的には上記の第2実施形態と第3実施形態の動作を組み合わせたものに対応する。従って、これら2つの実施形態の特徴の全てが第4実施形態にも適用される。
【0078】
[
図4]には液体/冷媒流体型の2つの熱交換器の熱(47と48)を有する実施形態を示したが、冷却ループは熱交換器(47)か熱交換器(48)のいずれかを有することができる(その機能は
図4には示されていない)。
【0079】
冷媒流体/液体型の熱交換器(47または48)は熱交換器(それぞれ45または43)に直列に接続する([
図4]に概念的に示す)か、平行に接続することができる。熱交換器(45または43)を直列に取り付ける場合、交換器(47または48)は冷媒の循環方向において熱交換器(45または43)の前または後に配置することができる。
【0080】
[
図5][
図6][
図7]に概念的に示した本発明の第5実施形態の各々では、冷却ループ(56)が直列の第1熱交換器(53と58)と、膨張器(59)と、膨張弁(54)と、直列な第2熱交換器(55と57)と、圧縮機(51)とを含む。
【0081】
この冷却ループ(56)はさらにバイパスブランチ(d3)をさらに含み、このブランチ(d3)の一方は交換器(53)の出口に取り付けられ、他方は第2熱交換器(57)の出口に取り付けられて、冷却モードの流体の流れと考えることができる。このブランチは空気流または排気ガスが流れる熱交換器(d1)と膨張弁(d2)とを有する。このブランチの動作は[
図2]に示した第2実施形態と同様である。
【0082】
上記冷却ループはさらに、弁(d41)を含むバイパスブランチ(d4)と、切換弁(d51)を含む別のバイパスブランチ(d5)とを含む。
【0083】
熱交換器(53,55)は空気/冷媒流体型であり、熱交換器(53)は外気/冷媒流体型の熱交換器であるのが好ましい。
【0084】
熱交換器(57)は、液体/冷媒の種類です。この熱交換器の動作は、
図3に示す第3実施形態の交換器(37)と同一です。
【0085】
熱交換器(58)は液体/冷媒流体型または空気/冷媒流体型である。
【0086】
第3実施形態について述べたように、[
図5][
図6][
図7]は2つの熱交換器(57,58)を有する実施形態である。しかし、第5実施形態の冷却ループは熱交換器(57)か、熱交換器(58)かのいずれかを含むことができる。熱交換器(57)はループ中に存在しないのが好ましい。
【0087】
交換器(57または58)は熱交換器(55または53)にそれぞれ直列に接続する([
図5][
図6][
図7]に概念的に示す)か、平行に接続することができる。熱交換器(55または53)と直列に取り付ける場合、交換器(57または58)は冷媒の循環方向において熱交換器(55または53)の前または後に配置することができる。
【0088】
[
図6]は本発明の弟5実施形態の冷却モードを示している。この冷却モードでは冷媒は圧縮機(51)によって下記の(a)または(b)を通って流される:
(a)熱交換器(58)(存在する場合)(これは非未動作、すなわち、この熱交換器を運転せずに冷媒流体を通過するたけ)と、膨張器(59)(これは非未動作(全開)であるか、冷媒流体が膨張器をバイパス路([
図5][
図6][
図7]には図示せず)を通る)、
(b)熱交換器(58)をバイパスし、冷媒流体がバイパス(d4)を通過できるにする熱交換器(58)の上流側の切換弁(図示せず)(切換弁(d41)は開)。
【0089】
切換弁(d51)は閉じられ、冷媒流体は下記(a)および/または(b)を通る:
(a)凝縮器として機能する熱交換器(53)(熱を外部に放出する)と、膨張器(54)と、自動車の車内の空気流を冷却する蒸発器として機能する交換器(55)と、必要に応じて設けられる、別の液体/空気型の熱交換を介して車室内の空気を冷却する、蒸発器として機能する交換器(57)(存在する場合)、および/または
(b)膨張器(D2)と、例えば電気モータおよび/または電子回路および/またはバッテリーを冷却するための空気流を冷却する蒸発器として機能する熱交換器(d1)。
【0090】
[
図7]は本発明の弟5実施形態の加熱モードを示している。この加熱モードでは、冷媒流体が圧縮機(51)によって移動される。切換弁(d41)は閉じられ、冷媒流体は凝縮器として機能する熱交換器(58)と、膨張器(59)と、蒸発器として作用する交換器(53)とを通る。切換弁(54)と(d2)は閉じられ、冷媒流体は開いた切換弁(d51)を介してバイパス(d5)を通る。
【0091】
熱交換器(58)は凝縮器として機能し、自動車の車内の空気流を加熱する(空気/冷媒型交換器の場合)か、別の液体/空気型の熱交換によって自動車の車内の空気流を再加熱することができる液体を再加熱する(液体/冷媒型の熱交換器の場合)。必要な場合には、この同じ熱交換機でバッテリーを加熱することもできる。
【0092】
[
図1]~[
図4]は、可逆ループの動作を反転させる手段が例えば4方向弁のような冷媒の循環方向を反転させる手段である実施形態の説明図である。
【0093】
[
図5][
図6][
図7]は、可逆ループの動作を反転させる手段が停止(閉鎖)弁、特に冷媒の経路を変更し、特定の熱交換器の機能を反転させることができる弁である実施形態の説明図である。
【0094】
上記の全ての実施形態において、上記システムは停止(閉鎖)弁)または追加の分岐を有することができる(これらは[
図1]~[
図7]には存在しないものでもよい)。
【0095】
上記の全ての実施形態は互いに組み合わせることができる。
【0096】
本発明で「xとyとの間」「x~y」とは両端のxとyを含むことを意味する。例えば「1~2%の間」には値1%と値2%とを含まれる。
以下の本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0097】
実験部分
以下の表で「Tx」は「x」の位置での温度を表し、「Px」は「x」の位置での流体の圧力を表す。「%Y/R134a」は参照流体R134aに対する流体の特性「Y」のパーセンテージを意味する。
COP:成績係数で、ヒートポンプの場合、システムに与えたまたは消費されたパワーに対するシステムによって供給された変位体積単位当たりの有功熱量(CAP)と定義される。
圧縮機の等エントロピー効率:これは流体に実際に送られたエネルギーと等エントロピーエネルギーとの比である。
η=a+bτ+cτ2+dτ3+eτ4
(ここで、
η:等エントロピー収率
τ:圧縮レート
a、b、c、e:定数)
【0098】
定数a、b、c、eの値は「Handbook of air conditioning and refrigeration, Shan k. Wang」に従って典型的な性能曲線に従って決定した。
【0099】
【0100】
可逆ヒートポンプ設備は平均蒸発温度が0℃から-30℃の間で、平均凝縮温度が30℃で、過熱が17℃で運転され、内部熱交換器を有する。
【0101】
【0102】
実施例1B:
平均蒸発温度-5℃での結果
【表3】
【0103】
実施例1C:
平均蒸発温度-10℃での結果
【表4】
【0104】
実施例1D:
平均蒸発温度-20℃での結果
【表5】
【0105】
実施例1E:
平均蒸発温度-30℃での結果
【表6】
【0106】
実施例1A~1Eから明らかなように、本発明の混合物はHFC-134aの蒸発圧力よりも高い蒸発圧力を示す。それによってシステム内への空気の侵入を制限することができ、特にシステムを低温で運転する場合、例えば蒸発器が0℃、-5℃、-10℃、-20℃、-30℃の温度の場合にシステム内への空気の侵入を制限することができる。
【0107】
圧縮機が同じ場合、本発明混合物はHFC-134aよりも性能が良いという利点がある。事実、上記の実施例は圧縮機効率(rendement au compresseur)がHFC-134aと同等かそれよりも優れ、キャパシティー(capacite)に優れ、COPも同等か優れている。