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特許7129006耐マイグレーション性を有する光重合増感剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】耐マイグレーション性を有する光重合増感剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/712 20060101AFI20220825BHJP
   C07C 67/31 20060101ALI20220825BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20220825BHJP
   C07C 67/10 20060101ALI20220825BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220825BHJP
   C08F 20/00 20060101ALN20220825BHJP
   C08G 59/68 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C07C69/712 Z CSP
C07C67/31
C07C67/08
C07C67/10
C08F2/50
C08F20/00 510
C08G59/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018189689
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2019073501
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017199104
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】321011907
【氏名又は名称】エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 英彦
(72)【発明者】
【氏名】沼田 繁明
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/109303(WO,A1)
【文献】特開2014-031346(JP,A)
【文献】特開2000-344704(JP,A)
【文献】特開2012-022212(JP,A)
【文献】Journal of the Chemical Society, Perkin Transaction II,1990年,No.6,p.993-1000
【文献】Journal of the American Chemical Society,2016年10月24日,Vol.139,p.10232-10238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/712
C07C 67/31
C07C 67/08
C07C 67/10
C08F 2/50
C08F 20/00
C08G 59/68
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物。
【化1】
(一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と下記一般式(3)で表されるエステル化合物とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法。
【化2】

(一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【化3】
(一般式(3)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【化4】
(一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と下記一般式(4)で表されるカルボン酸化合物とを反応させ、下記一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成し、該一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と下記一般式(6)又は一般式(7)で表されるエステル化剤を反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法。
【化5】

(一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【化6】

(一般式(4)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【化7】

(一般式(5)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【化8】
(一般式(6)において、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。)
【化9】
(一般式(7)において、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Dは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。)
【化10】

(一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項4】
下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と下記一般式(4)で表されるカルボン酸化合物とを反応させ、下記一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成し、該一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(8)で表されるエステル化剤を反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法。
【化11】

(一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【化12】

(一般式(4)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【化13】

(一般式(5)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【化14】
(一般式(8)において、R は、水素原子又は炭素数1から17のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。)
【化15】

(一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。-Rは、-CH CH(OH)CH OR であり、R は、水素原子又は炭素数1から17のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項5】
下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤。
【化16】
(一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項6】
請求項に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤とを含有する光重合開始剤組成物。
【請求項7】
請求項に記載の光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物とを含有する光重合性組成物。
【請求項8】
請求項に記載の光重合開始剤組成物と、光ラジカル重合性化合物とを含有する光重合性組成物。
【請求項9】
請求項又は請求項に記載の光重合性組成物を、300nmから500nmの波長範囲の光を含むエネルギー線を照射することにより重合させる重合方法。
【請求項10】
300nmから500nmの波長範囲の光を含むエネルギー線の照射源が、中心波長が365nm、375nm、385nm、395nm、405nmの紫外LED又は半導体レーザであることを特徴とする、請求項に記載の重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物及びその製造法並びにエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や可視光線等の活性エネルギー線により重合する光硬化性樹脂は、硬化が速く、熱硬化性樹脂に比べ有機溶剤の使用量を大幅に減らすことができることから、作業環境の改善、環境負荷を低減することができるという点で優れている。従来の光硬化性樹脂はそれ自体では重合開始機能が乏しく、硬化させるには通常、光重合開始剤を用いる必要がある。光重合開始剤として、ヒドロキシアセトフェノンやベンゾフェノン等のアルキルフェノン系重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤又はオニウム塩などが用いられる(特許文献1、2、3)。これら光重合開始剤の内でオニウム塩系開始剤を用いる場合、オニウム塩の光吸収は225nm~350nm付近にあり、350nm以上には吸収を持たないため、350nm以上の長波長のランプを光源とした場合、光硬化反応が進行しにくいなどの問題があり、光重合増感剤を添加するのが一般的である。同様に、アルキルフェノン系重合開始剤等の光重合開始剤も、350nm以上に吸収を持たないものが多い。これらの光重合開始剤に対する光重合増感剤としては、アントラセン化合物、チオキサントン化合物が知られており、色目の問題などで、特にアントラセン化合物が用いられることが多い(特許文献4)。
【0003】
アントラセン系の光重合増感剤としては、9,10-ジアルコキシアントラセン化合物が用いられている。例えば、光重合における光重合開始剤であるヨードニウム塩に対し、光重合増感剤として9,10-ジブトキシアントラセンや9,10-ジエトキシアントラセンなどの9,10-ジアルコキシアントラセン化合物が使用されている(特許文献5、6、7、8)。
【0004】
しかしながら、この9,10-ジアルコキシアントラセン化合物は光硬化前の光重合性組成物あるいは光硬化後の硬化物の保存中にブルーミングにより、光重合増感剤等が表面ににじみ出し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことが知られている。
【0005】
光重合性組成物については、例えば、フィルムとフィルムを接着する光接着剤の一成分としてこれらの光重合増感剤を使用する場合、光重合増感剤が上部に被せたフィルムに移行する(マイグレーション)ことがあり、上部フィルム上に光重合増感剤の粉吹きや着色の問題を引き起こす場合がある。
【0006】
また、プリント配線板の製造、リードフレームの製造、メタルマスク製造などの加工に用いられるドライフィルムレジストが用いられているが、405nm半導体レーザ対応のレジストが求められており、該波長に対応するために光重合増感剤として、チオキサントンや9,10-ジアルコキシアントラセン化合物が用いられている。しかし、ドライフィルムレジストは感光性樹脂組成物上にカバーフィルムを被せた状態で保管・取引されるが、このカバーフィルムなどにポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが用いられており、該フィルムに光重合増感剤がマイグレーションし増感効果が低下したり、フィルム上に粉吹きを起こしたりする問題がある(特許文献9)。
【0007】
このような光重合増感剤のマイグレーションを抑えるために、極性基であるエステル基を9,10-ジアルコキシアントラセン化合物のアルコキシ基に導入した9,10-ビス(2-アシルオキシアルコキシ)アントラセン化合物が報告されている(特許文献10)。しかしながら、該9,10-ビス(2-アシルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、製造時に酸化アルキレン化合物を用いる工程があり、工程数が増えるためコストアップにつながるだけでなく、該酸化アルキレン化合物特に酸化エチレンの入手困難さ・取扱い難さが該9,10-ビス(2-アシルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造上大きな問題となっている。
【0008】
また、9,10-ジアルコキシアントラセン化合物のアルコキシ基をアシル基に変えた化合物等が開発されているが、マイグレーション性は改善されるが、アルコキシ基の電子供与性が低下するため、吸収波長が低波長側にシフトしてしまうという問題がある(特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平06-345614号公報
【文献】特開平07-062010号公報
【文献】特開平05-249606号公報
【文献】特開平10-195117号公報
【文献】特開2002-302507号公報
【文献】特開平11-279212号公報
【文献】特開2000-344704号公報
【文献】WO2007/126066号公報
【文献】特許4605223号公報
【文献】特開2014-031346号公報
【文献】特開2014-101442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、光硬化時あるいは硬化物の保存中において、耐マイグレーション性を有し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことがないだけでなく、入手容易な原料を使用し実用的な製造法で得ることができる新しい光重合増感剤の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、アントラセン化合物の構造と物性に関してさらに鋭意検討した結果、本発明に示す、エステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物が、光重合反応において光重合増感剤として優れた効果を示すと同時に、極性基であるエステル基を持つことにより、光重合増感剤がマイグレーション及びブルーミングを起こし難くなることを見出し、且つ入手容易な原料を使用した実用的な製造法を見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に存する。
【0013】
【化1】
【0014】
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0015】
本発明の第2の要旨は、下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と下記一般式(3)で表されるエステル化合物とを反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法に存する。
【0016】
【化2】
【0017】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(3)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0020】
【化4】
【0021】
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0022】
本発明の第3の要旨は、下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物と下記一般式(4)で表されるカルボン酸化合物とを反応させ、下記一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成し、該一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と下記一般式(6)、一般式(7)又は一般式(8)で表されるエステル化剤を反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法に存する。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(4)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0027】
【化7】
【0028】
一般式(5)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0029】
【化8】
【0030】
一般式(6)において、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。
【0031】
【化9】
【0032】
一般式(7)において、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Dは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。
【0033】
【化10】
【0034】
一般式(8)において、Rは、水素原子又は炭素数1から17のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。
【0035】
【化11】
【0036】
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0037】
本発明の第4の要旨は、下記一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤に存する。
【0038】
【化12】
【0039】
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0040】
本発明の第5の要旨は、第4の要旨に記載の光重合増感剤と、光重合開始剤とを含有する光重合開始剤組成物に存する。
【0041】
本発明の第6の要旨は、第5の要旨に記載の光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物とを含有する光重合性組成物に存する。
【0042】
本発明の第7の要旨は、第5の要旨に記載の光重合開始剤組成物と、光ラジカル重合性化合物とを含有する光重合性組成物に存する。
【0043】
本発明の第8の要旨は、第6の要旨又は第7の要旨に記載の光重合性組成物を、300nmから500nmの波長範囲の光を含むエネルギー線を照射することにより重合させる重合方法に存する。
【0044】
本発明の第9の要旨は、300nmから500nmの波長範囲の光を含むエネルギー線の照射源が、中心波長が365nm、375nm、385nm、395nm、405nmの紫外LED又は半導体レーザであることを特徴とする、第8の要旨に記載の重合方法に存する。
【発明の効果】
【0045】
本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光重合反応において、光重合増感剤としての高い効果を有するだけでなく、本発明の化合物を光重合増感剤として含有する光重合性組成物について、光重合増感剤のマイグレーションあるいはブルーミングの程度がきわめて低いという有用な化合物である。また製造法においても、入手困難で取扱い難い酸化アルキレン化合物を用いる必要がなく、製造工程も容易であり、安価に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(化合物)
本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0047】
【化13】
【0048】
一般式(1)において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0049】
一般式(1)において、Aで表される炭素数1から20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等が挙げられ、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。
【0050】
一般式(1)において、X又はYで表される炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基又は2-エチルヘキシル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0051】
一般式(1)において、Rで表される炭素数1から20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基又はn-イコシル基等が挙げられ、該アルキル基がヒドロキシ基で置換されていているものとしては、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、7-ヒドロキシヘプチル基、8-ヒドロキシオクチル基、6-ヒドロキシ-2-エチルヘキシル基、9-ヒドロキシノニル基、10-ヒドロキシデシル基、11-ヒドロキシウンデシル基、12-ヒドロキシドデシル基、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-エトキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-プロポキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-ペンチルオキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-ヘキシルオキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-オクチルオキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル基、2-ヒドロキシ-3-メタリルオキシプロピル基等が挙げられる。
【0052】
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の具体例としては、例えば、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0053】
更に、例えば9,10-ビス(メトキシカルボニルペンチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルペンチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルペンチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルペンチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルペンチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルヘキシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルヘキシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘキシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘキシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘキシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルヘプチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルヘプチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘプチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘプチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘプチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルノニレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルノニレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルノニレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルノニレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルノニレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルウンデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルウンデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルウンデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルウンデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルウンデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルドデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルドデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルドデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルドデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルドデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルトリデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルトリデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルトリデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルトリデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルトリデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルテトラデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルテトラデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルテトラデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルテトラデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルテトラデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルペンタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルペンタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルペンタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルペンタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルペンタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルヘプタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルヘプタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘプタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘプタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘプタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルオクタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルオクタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルオクタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルオクタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルオクタデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルノナデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルノナデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルノナデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルノナデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルノナデシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0054】
また、X及び/又はYがアルキル基の具体例としては、例えば、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0055】
更に、例えば、2-アミル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(メトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-アミル-9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0056】
また、X及び/又はYがハロゲン原子の具体例としては、例えば、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルオクチレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルヘキサデシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(メトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(エトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルイコシレンオキシ)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0057】
上記挙げた具体例の中でも、製造しやすさから、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(メトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(エトキシカルボニルエチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセンが好ましく、下記構造式に挙げた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-1)、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-2)、9,10-ビス(n-プロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-10)、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-3)、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-4)、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-5)、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセン(1-6)、9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセン(1-7)、9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセン(1-8)、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン(1-9)、9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセン(1-11)が特に好ましい。
【0058】
【化14】
【0059】
(製造法)
次に本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、下記一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を原料として合成されるが、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を原料として一段階の反応で合成する方法(一段階製造法)と中間体を経て二段階の反応で合成する方法(二段階製造法)とがある。
【0060】
【化15】
【0061】
一般式(2)において、X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0062】
(一段階製造法)
まず、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の一段階製造法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を下記の反応式-1に従い、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(3)で表されるエステル化合物と反応させることにより得ることができる。
【0063】
【化16】
【0064】
反応式-1において、Aは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0065】
反応式-1において、原料として用いられる一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、対応する9,10-アントラキノン化合物を還元して得られる。
【0066】
当該反応において、原料となる9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物の具体的な例としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-メチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-t-ペンチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2,6-ジメチル-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-クロロ-9,10-ジヒドロキシアントラセン、2-ブロモ-9,10-ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0067】
また、9,10-ジヒドロキシアントラセンの場合は、工業的な方法として、1,4-ナフトキノンと1,3-ブタジエンとのディールス・アルダー反応生成物である1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン又はその異性体である1,4-ジヒドロ9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩を用いて9,10-アントラキノンを還元することにより、より簡便に9,10-ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。すなわち、1,4-ナフトキノンと1,3-ブタジエンとの反応により得られる1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノンを、水性媒体中、アルカリ金属水酸化物のようなアルカリ性化合物の存在下に9,10-アントラキノンと反応させることにより9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を得ることができる。
【0068】
当該反応で得られた9,10-ジヒドロキシアントラセンのアルカリ金属塩の水溶液を酸素不存在下に酸性化することにより、9,10-ジヒドロキシアントラセンの沈殿を得ることができる。この沈殿を精製することにより、9,10-ジヒドロキシアントラセンを得ることができる。置換基を有する9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物も同様にして得ることができる。
【0069】
反応式-1において、原料となる一般式(3)で表されるエステル化合物の具体例としては、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸n-プロピル、クロロ酢酸イソプロピル、クロロ酢酸n-ブチル(3-5)、クロロ酢酸tert-ブチル、クロロ酢酸ペンチル、クロロ酢酸ヘキシル、クロロ酢酸ヘプチル、クロロ酢酸オクチル、クロロ酢酸2-エチルヘキシル、クロロ酢酸ノニル、クロロ酢酸ドデシル、クロロ酢酸ノナデシル、クロロ酢酸イコシル、2-クロロプロピオン酸メチル、3-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸メチル、3-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、3-クロロプロピオン酸エチル、2-クロロプロピオン酸n-プロピル、3-クロロプロピオン酸n-プロピル、2-クロロプロピオン酸イソプロピル、3-クロロプロピオン酸イソプロピル、2-クロロプロピオン酸n-ブチル、3-クロロプロピオン酸n-ブチル、2-クロロプロピオン酸tert-ブチル、3-クロロプロピオン酸tert-ブチル、2-クロロプロピオン酸ペンチル、3-クロロプロピオン酸ペンチル、2-クロロプロピオン酸ヘキシル、3-クロロプロピオン酸ヘキシル、2-クロロプロピオン酸ヘプチル、3-クロロプロピオン酸ヘプチル、2-クロロプロピオン酸オクチル、3-クロロプロピオン酸オクチル、2-クロロプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-クロロプロピオン酸2―エチルヘキシル、2-クロロプロピオン酸ノニル、3-クロロプロピオン酸ノニル、2-クロロプロピオン酸ドデシル、3-クロロプロピオン酸ドデシル、2-クロロプロピオン酸ノナデシル、3-クロロプロピオン酸ノナデシル、2-クロロプロピオン酸イコシル、3-クロロプロピオン酸イコシル、2-クロロ酪酸メチル、3-クロロ酪酸メチル、4-クロロ酪酸メチル、2-クロロ酪酸エチル、3-クロロ酪酸エチル、4-クロロ酪酸エチル、2-クロロ酪酸n-プロピル、3-クロロ酪酸n-プロピル、4-クロロ酪酸n-プロピル、2-クロロ酪酸イソプロピル、3-クロロ酪酸イソプロピル、4-クロロ酪酸イソプロピル、2-クロロ酪酸n-ブチル、3-クロロ酪酸n-ブチル、4-クロロ酪酸n―ブチル、2-クロロ酪酸tert-ブチル、3-クロロ酪酸tert-ブチル、4-クロロ酪酸tert-ブチル、2-クロロ酪酸ペンチル、3-クロロ酪酸ペンチル、4-クロロ酪酸ペンチル、2-クロロ酪酸ヘキシル、3-クロロ酪酸ヘキシル、4-クロロ酪酸ヘキシル、2-クロロ酪酸ヘプチル、3-クロロ酪酸ヘプチル、4-クロロ酪酸ヘプチル、2-クロロ酪酸オクチル、3-クロロ酪酸オクチル、4-クロロ酪酸オクチル、2-クロロ酪酸2―エチルヘキシル、3-クロロ酪酸2―エチルヘキシル、4-クロロ酪酸2-エチルヘキシル、2-クロロ酪酸ノニル、3-クロロ酪酸ノニル、4-クロロ酪酸ノニル、2-クロロ酪酸ドデシル、3-クロロ酪酸ドデシル、4-クロロ酪酸ドデシル、2-クロロ酪酸ノナデシル、3-クロロ酪酸ノナデシル、4-クロロ酪酸ノナデシル、2-クロロ酪酸イコシル、3-クロロ酪酸イコシル、4-クロロ酪酸イコシル、2-クロロ吉草酸メチル、3-クロロ吉草酸メチル、4-クロロ吉草酸メチル、5-クロロ吉草酸メチル、2-クロロ吉草酸エチル、3-クロロ吉草酸エチル、4-クロロ吉草酸エチル、5-クロロ吉草酸エチル、2-クロロ吉草酸n-プロピル、3-クロロ吉草酸n-プロピル、4-クロロ吉草酸n-プロピル、5-クロロ吉草酸n-プロピル、2-クロロ吉草酸イソプロピル、3-クロロ吉草酸イソプロピル、4-クロロ吉草酸イソプロピル、5-クロロ吉草酸イソプロピル、2-クロロ吉草酸n-ブチル、3-クロロ吉草酸n―ブチル、4-クロロ吉草酸n-ブチル、5-クロロ吉草酸n-ブチル、2-クロロ吉草酸tert-ブチル、3-クロロ吉草酸tert-ブチル、4-クロロ吉草酸tert-ブチル、5-クロロ吉草酸tert-ブチル、2-クロロ吉草酸ペンチル、3-クロロ吉草酸ペンチル、4-クロロ吉草酸ペンチル、5-クロロ吉草酸ペンチル、2-クロロ吉草酸ヘキシル、3-クロロ吉草酸ヘキシル、4-クロロ吉草酸ヘキシル、5-クロロ吉草酸ヘキシル、2-クロロ吉草酸ヘプチル、3-クロロ吉草酸ヘプチル、4-クロロ吉草酸ヘプチル、5-クロロ吉草酸ヘプチル、2-クロロ吉草酸オクチル、3-クロロ吉草酸オクチル、4-クロロ吉草酸オクチル、5-クロロ吉草酸オクチル、2-クロロ吉草酸2―エチルヘキシル、3-クロロ吉草酸2―エチルヘキシル、4-クロロ吉草酸2-エチルヘキシル、5-クロロ吉草酸2―エチルヘキシル、2-クロロ吉草酸ノニル、3-クロロ吉草ノニル酸、4-クロロ吉草酸ノニル、5-クロロ吉草酸ノニル、2-クロロ吉草酸ドデシル、3-クロロ吉草酸ドデシル、4-クロロ吉草酸ドデシル、5-クロロ吉草酸ドデシル、2-クロロ吉草酸ノナデシル、3-クロロ吉草酸ノナデシル、4-クロロ吉草酸ノナデシル、5-クロロ吉草酸ノナデシル、2-クロロ吉草酸イコシル、3-クロロ吉草酸イコシル、4-クロロ吉草酸イコシル、5-クロロ吉草酸イコシル等が挙げられる。
【0070】
更に、ブロモ酢酸メチル(3-1)、ブロモ酢酸エチル(3-4)、ブロモ酢酸n-プロピル(3-9)、ブロモ酢酸イソプロピル(3-2)、ブロモ酢酸n-ブチル、ブロモ酢酸tert-ブチル(3-3)、ブロモ酢酸ペンチル、ブロモ酢酸ヘキシル、ブロモ酢酸ヘプチル、ブロモ酢酸オクチル、ブロモ酢酸2-エチルヘキシル、ブロモ酢酸ノニル、ブロモ酢酸ドデシル、ブロモ酢酸ノナデシル、ブロモ酢酸イコシル、2-ブロモプロピオン酸メチル(3-6)、3-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸メチル、3-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸エチル、3-ブロモプロピオン酸エチル、2-ブロモプロピオン酸n-プロピル、3-ブロモプロピオン酸n-プロピル、2-ブロモプロピオン酸イソプロピル、3-ブロモプロピオン酸イソプロピル、2-ブロモプロピオン酸n-ブチル、3-ブロモプロピオン酸n-ブチル、2-ブロモプロピオン酸tert-ブチル、3-ブロモプロピオン酸tert-ブチル、2-ブロモプロピオン酸ペンチル、3-ブロモプロピオン酸ペンチル、2-ブロモプロピオン酸ヘキシル、3-ブロモプロピオン酸ヘキシル、2-ブロモプロピオン酸ヘプチル、3-ブロモプロピオン酸ヘプチル、2-ブロモプロピオン酸オクチル、3-ブロモプロピオン酸オクチル、2-ブロモプロピオン酸2―エチルヘキシル、3-ブロモプロピオン酸2-エチルヘキシル、2-ブロモプロピオン酸ノニル、3-ブロモプロピオン酸ノニル、2-ブロモプロピオン酸ドデシル、3-ブロモプロピオン酸ドデシル、2-ブロモプロピオン酸ノナデシル、3-ブロモプロピオン酸ノナデシル、2-ブロモプロピオン酸イコシル、3-ブロモプロピオン酸イコシル、2-ブロモ酪酸メチル、3-ブロモ酪酸メチル、4-ブロモ酪酸メチル、2-ブロモ酪酸エチル、3-ブロモ酪酸エチル、4-ブロモ酪酸エチル(3-7)、2-ブロモ酪酸n-プロピル、3-ブロモ酪酸n-プロピル、4-ブロモ酪酸n-プロピル、2-ブロモ酪酸イソプロピル、3-ブロモ酪酸イソプロピル、4-ブロモ酪酸イソプロピル、2-ブロモ酪酸n-ブチル、3-ブロモ酪酸n-ブチル、4-ブロモ酪酸n―ブチル、2-ブロモ酪酸tert-ブチル、3-ブロモ酪酸tert-ブチル、4-ブロモ酪酸tert-ブチル、2-ブロモ酪酸ペンチル、3-ブロモ酪酸ペンチル、4-ブロモ酪酸ペンチル、2-ブロモ酪酸ヘキシル、3-ブロモ酪酸ヘキシル、4-ブロモ酪酸ヘキシル、2-ブロモ酪酸ヘプチル、3-ブロモ酪酸ヘプチル、4-ブロモ酪酸ヘプチル、2-ブロモ酪酸オクチル、3-ブロモ酪酸オクチル、4-ブロモ酪酸オクチル、2-ブロモ酪酸2―エチルヘキシル、3-ブロモ酪酸2―エチルヘキシル、4-ブロモ酪酸2-エチルヘキシル、2-ブロモ酪酸ノニル、3-ブロモ酪酸ノニル、4-ブロモ酪酸ノニル、2-ブロモ酪酸ドデシル、3-ブロモ酪酸ドデシル、4-ブロモ酪酸ドデシル、2-ブロモ酪酸ノナデシル、3-ブロモ酪酸ノナデシル、4-ブロモ酪酸ノナデシル、2-ブロモ酪酸イコシル、3-ブロモ酪酸イコシル、4-ブロモ酪酸イコシル、2-ブロモ吉草酸メチル、3-ブロモ吉草酸メチル、4-ブロモ吉草酸メチル、5-ブロモ吉草酸メチル、2-ブロモ吉草酸エチル、3-ブロモ吉草酸エチル、4-ブロモ吉草酸エチル(3-8)、5-ブロモ吉草酸エチル、2-ブロモ吉草酸n-プロピル、3-ブロモ吉草酸n-プロピル、4-ブロモ吉草酸n-プロピル、5-ブロモ吉草酸n-プロピル、2-ブロモ吉草酸イソプロピル、3-ブロモ吉草酸イソプロピル、4-ブロモ吉草酸イソプロピル、5-ブロモ吉草酸イソプロピル、2-ブロモ吉草酸n―ブチル、3-ブロモ吉草酸n―ブチル、4-ブロモ吉草酸n-ブチル、5-ブロモ吉草酸n―ブチル、2-ブロモ吉草酸tert-ブチル、3-ブロモ吉草酸tert-ブチル、4-ブロモ吉草酸tert-ブチル、5-ブロモ吉草酸tert-ブチル、2-ブロモ吉草酸ペンチル、3-ブロモ吉草酸ペンチル、4-ブロモ吉草酸ペンチル、5-ブロモ吉草酸ペンチル、2-ブロモ吉草酸ヘキシル、3-ブロモ吉草酸ヘキシル、4-ブロモ吉草酸ヘキシル、5-ブロモ吉草酸ヘキシル、2-ブロモ吉草酸ヘプチル、3-ブロモ吉草酸ヘプチル、4-ブロモ吉草酸ヘプチル、5-ブロモ吉草酸ヘプチル、2-ブロモ吉草酸オクチル、3-ブロモ吉草酸オクチル、4-ブロモ吉草酸オクチル、5-ブロモ吉草酸オクチル、2-ブロモ吉草酸2-エチルヘキシル、3-ブロモ吉草酸2―エチルヘキシル、4-ブロモ吉草酸2―エチルヘキシル、5-ブロモ吉草酸2―エチルヘキシル、2-ブロモ吉草酸ノニル、3-ブロモ吉草ノニル酸、4-ブロモ吉草酸ノニル、5-ブロモ吉草酸ノニル、2-ブロモ吉草酸ドデシル、3-ブロモ吉草酸ドデシル、4-ブロモ吉草酸ドデシル、5-ブロモ吉草酸ドデシル、2-ブロモ吉草酸ノナデシル、3-ブロモ吉草酸ノナデシル、4-ブロモ吉草酸ノナデシル、5-ブロモ吉草酸ノナデシル、2-ブロモ吉草酸イコシル、3-ブロモ吉草酸イコシル、4-ブロモ吉草酸イコシル、5-ブロモ吉草酸イコシル、ブロモ酢酸-2-ヒドロキシエチル(3-10)、2-ブロモプロピオン酸-2-ヒドロキシエチル、3-ブロモ酪酸-2-ヒドロキシエチル、4-ブロモ吉草酸-2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0071】
そして更に、ヨード酢酸メチル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸n―プロピル、ヨード酢酸イソプロピル、ヨード酢酸n-ブチル、ヨード酢酸tert-ブチル、ヨード酢酸ペンチル、ヨード酢酸ヘキシル、ヨード酢酸ヘプチル、ヨード酢酸オクチル、ヨード酢酸2―エチルヘキシル、ヨード酢酸ノニル、ヨード酢酸ドデシル、ヨード酢酸ノナデシル、ヨード酢酸イコシル、2-ヨードプロピオン酸メチル、3-ヨードプロピオン酸メチル、2-ヨードプロピオン酸メチル、3-ヨードプロピオン酸メチル、2-ヨードプロピオン酸エチル、3-ヨードプロピオン酸エチル、2-ヨードプロピオン酸n-プロピル、3-ヨードプロピオン酸n-プロピル、2-ヨードプロピオン酸イソプロピル、3-ヨードプロピオン酸イソプロピル、2-ヨードプロピオン酸n-ブチル、3-ヨードプロピオン酸n-ブチル、2-ヨードプロピオン酸tert-ブチル、3-ヨードプロピオン酸tert-ブチル、2-ヨードプロピオン酸ペンチル、3-ヨードプロピオン酸ペンチル、2-ヨードプロピオン酸ヘキシル、3-ヨードプロピオン酸ヘキシル、2-ヨードプロピオン酸ヘプチル、3-ヨードプロピオン酸ヘプチル、2-ヨードプロピオン酸オクチル、3-ヨードプロピオン酸オクチル、2-ヨードプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-ヨードプロピオン酸2-エチルヘキシル、2-ヨードプロピオン酸ノニル、3-ヨードプロピオン酸ノニル、2-ヨードプロピオン酸ドデシル、3-ヨードプロピオン酸ドデシル、2-ヨードプロピオン酸ノナデシル、3-ヨードプロピオン酸ノナデシル、2-ヨードプロピオン酸イコシル、3-ヨードプロピオン酸イコシル、2-ヨード酪酸メチル、3-ヨード酪酸メチル、4-ヨード酪酸メチル、2-ヨード酪酸エチル、3-ヨード酪酸エチル、4-ヨード酪酸エチル、2-ヨード酪酸n-プロピル、3-ヨード酪酸n-プロピル、4-ヨード酪酸n-プロピル、2-ヨード酪酸イソプロピル、3-ヨード酪酸イソプロピル、4-ヨード酪酸イソプロピル、2-ヨード酪酸n-ブチル、3-ヨード酪酸n-ブチル、4-ヨード酪酸n-ブチル、2-ヨード酪酸tert-ブチル、3-ヨード酪酸tert-ブチル、4-ヨード酪酸tert-ブチル、2-ヨード酪酸ペンチル、3-ヨード酪酸ペンチル、4-ヨード酪酸ペンチル、2-ヨード酪酸ヘキシル、3-ヨード酪酸ヘキシル、4-ヨード酪酸ヘキシル、2-ヨード酪酸ヘプチル、3-ヨード酪酸ヘプチル、4-ヨード酪酸ヘプチル、2-ヨード酪酸オクチル、3-ヨード酪酸オクチル、4-ヨード酪酸オクチル、2-ヨード酪酸2-エチルヘキシル、3-ヨード酪酸2-エチルヘキシル、4-ヨード酪酸2-エチルヘキシル、2-ヨード酪酸ノニル、3-ヨード酪酸ノニル、4-ヨード酪酸ノニル、2-ヨード酪酸ドデシル、3-ヨード酪酸ドデシル、4-ヨード酪酸ドデシル、2-ヨード酪酸ノナデシル、3-ヨード酪酸ノナデシル、4-ヨード酪酸ノナデシル、2-ヨード酪酸イコシル、3-ヨード酪酸イコシル、4-ヨード酪酸イコシル、2-ヨード吉草酸メチル、3-ヨード吉草酸メチル、4-ヨード吉草酸メチル、5-ヨード吉草酸メチル、2-ヨード吉草酸エチル、3-ヨード吉草酸エチル、4-ヨード吉草酸エチル、5-ヨード吉草酸エチル、2-ヨード吉草酸n-プロピル、3-ヨード吉草酸n-プロピル、4-ヨード吉草酸n-プロピル、5-ヨード吉草酸n-プロピル、2-ヨード吉草酸イソプロピル、3-ヨード吉草酸イソプロピル、4-ヨード吉草酸イソプロピル、5-ヨード吉草酸イソプロピル、2-ヨード吉草酸n-ブチル、3-ヨード吉草酸n-ブチル、4-ヨード吉草酸n-ブチル、5-ヨード吉草酸n-ブチル、2-ヨード吉草酸tert-ブチル、3-ヨード吉草酸tert-ブチル、4-ヨード吉草酸tert-ブチル、5-ヨード吉草酸tert-ブチル、2-ヨード吉草酸ペンチル、3-ヨード吉草酸ペンチル、4-ヨード吉草酸ペンチル、5-ヨード吉草酸ペンチル、2-ヨード吉草酸ヘキシル、3-ヨード吉草酸ヘキシル、4-ヨード吉草酸ヘキシル、5-ヨード吉草酸ヘキシル、2-ヨード吉草酸ヘプチル、3-ヨード吉草酸ヘプチル、4-ヨード吉草酸ヘプチル、5-ヨード吉草酸ヘプチル、2-ヨード吉草酸オクチル、3-ヨード吉草酸オクチル、4-ヨード吉草酸オクチル、5-ヨード吉草酸オクチル、2-ヨード吉草酸2-エチルヘキシル、3-ヨード吉草酸2-エチルヘキシル、4-ヨード吉草酸2-エチルヘキシル、5-ヨード吉草酸2―エチルヘキシル、2-ヨード吉草酸ノニル、3-ヨード吉草ノニル酸、4-ヨード吉草酸ノニル、5-ヨード吉草酸ノニル、2-ヨード吉草酸ドデシル、3-ヨード吉草酸ドデシル、4-ヨード吉草酸ドデシル、5-ヨード吉草酸ドデシル、2-ヨード吉草酸ノナデシル、3-ヨード吉草酸ノナデシル、4-ヨード吉草酸ノナデシル、5-ヨード吉草酸ノナデシル、2-ヨード吉草酸イコシル、3-ヨード吉草酸イコシル、4-ヨード吉草酸イコシル、5-ヨード吉草酸イコシル、等が挙げられる。
【0072】
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物とブロモ化合物が反応性の点で好ましく、特に、下記構造式の化合物等が好ましい。
【0073】
【化17】
【0074】
反応式-1において一般式(3)で表されるエステル化合物の使用量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0075】
反応式-1において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0076】
塩基性化合物の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0077】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するエステル化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒が用いられる。
【0078】
無機塩基の水溶液中に9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、エステルと反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0079】
相間移動触媒の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.05モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0080】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは10℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0081】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から10時間である。
【0082】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0083】
(二段階製造法)
次に、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の二段階製造法について説明する。本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を下記の反応式-2に従い、まず、塩基性化合物存在下、あるいは非存在下で対応する一般式(4)で表されるカルボン酸と反応させて中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を合成した後、反応式-3に従い、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(6)で表されるアルコール化合物、反応式-4に従い、一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物、反応式-5に従い、一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物と反応させることにより得ることにより、一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0084】
【化18】
【0085】
反応式-2においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0086】
【化19】
【0087】
反応式-3においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。
【0088】
【化20】
【0089】
反応式-4においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。また、Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Dは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。
【0090】
【化21】
【0091】
反応式-5においてAは炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基はアルキル基によって分岐していてもよい。X、Yは同一であっても異なってもよく、水素原子、炭素数1から8のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Rは炭素数1から20のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。Rは、水素原子又は炭素数1から17のアルキル基を表し、該アルキル基は、アルキル基によって分岐していてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子によって置き換わっていてもよい(但し、過酸化物を形成する場合は除く)。
【0092】
まずは中間体である一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物の製造法について説明する。
【0093】
反応式-2において、原料として用いられる一般式(2)で表される9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物は、反応式-1で挙げたものと同様のものを用いることができ、同様の方法で得ることができる。
【0094】
次に、反応式-2において、もう一方の原料となる一般式(4)で表されるカルボン酸の具体例としては、クロロ酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、2-クロロ酪酸、3-クロロ酪酸、4-クロロ酪酸、2-クロロ吉草酸、3-クロロ吉草酸、4-クロロ吉草酸、5-クロロ吉草酸、ブロモ酢酸、2-ブロモプロピオン酸、3-ブロモプロピオン酸、2-ブロモ酪酸、3-ブロモ酪酸、4-ブロモ酪酸、2-ブロモ吉草酸、3-ブロモ吉草酸、4-ブロモ吉草酸、5-ブロモ吉草酸、ヨード酢酸、2-ヨードプロピオン酸、3-ヨードプロピオン酸、2-ヨード酪酸、3-ヨード酪酸、4-ヨード酪酸、2-ヨード吉草酸、3-ヨード吉草酸、4-ヨード吉草酸、5-ヨード吉草酸、等が挙げられる。
【0095】
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物とブロモ化合物が入手容易性、反応性の点で好ましく、特に、クロロ酢酸、ブロモ酢酸が好ましい。
【0096】
反応式-2において一般式(4)で表されるカルボン酸の使用量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0097】
反応式-2において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0098】
塩基性化合物の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、8.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0099】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する原料と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒、水等が用いられる。
【0100】
無機塩基の水溶液中に9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物を溶解させ、エステルと反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0101】
相間移動触媒の添加量としては、9,10-ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.03モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0102】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、100℃以下、好ましくは10℃以上、50℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0103】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から10時間である。
【0104】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を抽出・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物はカルボン酸塩の状態なので、鉱酸あるいは有機酸によって中和することで結晶を析出させ、濾過によって固液分離を行い、必要に応じて再結晶することで、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0105】
次に反応式-3で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(6)で表されるアルコール化合物を触媒存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
【0106】
反応式-3において、原料となる一般式(6)で表されるアルコール化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0107】
上記挙げた具体例の中でも、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが入手が容易な点で好ましく、特に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコールが好ましい。
【0108】
反応式-3において一般式(6)で表されるアルコール化合物の使用量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは5モル倍以上、100モル倍未満、より好ましくは、10モル倍以上、50モル倍未満である。5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、100モル倍以上だと反応速度が遅くなり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0109】
反応式-3において使用される触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)、固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製、ナフィオンはデュポン社登録商標)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。
【0110】
触媒の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.01モル%以上、50モル%未満、より好ましくは、0.1モル%以上、20モル%未満である。0.01モル%未満であると、反応が完結せず、また、50モル%以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0111】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するアルコール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。特に使用するアルコール化合物を反応剤兼溶媒として用いることが廃棄物削減の面から好ましい。
【0112】
当該反応の反応温度は、通常20℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。20℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0113】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
【0114】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0115】
次に反応式-4で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物を塩基存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
【0116】
反応式-4において、原料となる一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物の具体例としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化n-プロピル、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化イソブチル、塩化sec-ブチル、塩化tert-ブチル、塩化ペンチル、塩化ヘキシル、塩化ヘプチル、塩化オクチル、塩化2-エチルヘキシル、塩化ノニル、塩化デシル、塩化ドデシル、塩化2-ヒドロキシエチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化n-プロピル、臭化イソプロピル、臭化ブチル、臭化イソブチル、臭化sec-ブチル、臭化tert-ブチル、臭化ペンチル、臭化ヘキシル、臭化ヘプチル、臭化オクチル、臭化2-エチルヘキシル、臭化ノニル、臭化デシル、臭化ドデシル、臭化2-ヒドロキシエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n-プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化イソブチル、ヨウ化sec-ブチル、ヨウ化tert-ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化ヘプチル、ヨウ化オクチル、ヨウ化2-エチルヘキシル、ヨウ化ノニル、ヨウ化デシル、ヨウ化ドデシル、ヨウ化2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0117】
上記挙げた具体例の中でも、塩化物、臭化物が入手容易性、反応性の点で好ましく、特に、臭化物が好ましい。
【0118】
反応式-4において一般式(7)で表されるハロゲン化アルキル化合物の使用量としては、、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは2モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、3モル倍以上、5モル倍未満である。2モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり、収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0119】
反応式-4において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0120】
塩基性化合物の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.5モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、1モル倍以上、5モル倍未満である。0.5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0121】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するアルコール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。
【0122】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは20℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0123】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
【0124】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0125】
次に反応式-5で示される、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物と一般式(8)で表されるグリシジルエーテル化合物を塩基存在下あるいは非存在下で反応させて一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を製造する方法について説明する。
【0126】
反応式-5において、原料となる一般式(7)で表されるグリシジルエーテル化合物の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシドール等が挙げられる。
【0127】
反応式-2において一般式(7)で表されるグリシジルエーテル化合物の使用量としては、、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは2モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、3モル倍以上、5モル倍未満である。2モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり、収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0128】
反応式-5において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0129】
塩基性化合物の添加量としては、一般式(5)で表される9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物に対して、好ましくは0.5モル倍以上、10モル倍未満、より好ましくは、1モル倍以上、5モル倍未満である。0.5モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0130】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用するアルコール化合物と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒が用いられる。
【0131】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、200℃以下、好ましくは20℃以上、100℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0132】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常1時間から20時間程度である。より好ましくは2時間から15時間である。
【0133】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を中和・洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0134】
(光重合増感剤)
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、特定の波長の光により励起され、その励起エネルギーを光重合開始剤に受け渡す光重合増感剤として作用する。その効果により、光重合開始剤の活性が十分でない長波長の光によっても、光重合を効率よく開始することが可能となる。当該光重合増感剤と光重合開始剤は光重合化合物と混合して光重合性組成物とすることができる。当該光重合性組成物は、例えば中心波長が405nmの紫外LED光というような長波長の光の照射によっても、容易に光硬化させることができる。
【0135】
(光重合開始剤)
本発明で用いる光重合開始剤としては、オニウム塩、ベンジルメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビイミダゾール系開始剤等を用いることができる。
【0136】
オニウム塩としては通常ヨードニウム塩またはスルホニウム塩が用いられる。ヨードニウム塩としては、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)、ローディア社製ロードシル2074(ロードシルはローディア社の登録商標)、サンアプロ社製のIK-1等を用いることができる。一方、スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’-テトラフェニル-S,S’-(4、4’-チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダイセル社製CPI-100P、CPI101P、CPI-200K、ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア270、ダウ・ケミカル社製UVI6992等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
【0137】
オニウム塩として、ヨードニウム塩だけではなく、スルホニウム塩に対しても、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光重合増感効果を持つことも特徴の一つである。
【0138】
また、本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、ベンジルメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤等の長波長に吸収を持たないラジカル重合開始剤に対しても優れた光重合増感効果を有している。
【0139】
ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられ、α-ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商品名「イルガキュア2959」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-オン(商品名「イルガキュア127」ビー・エー・エス・エフ社製)が挙げられる。
【0140】
特に、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤である2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)、α-ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)が好ましい。
【0141】
また、アセトフェノン系ラジカル重合開始剤であるアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンジル系ラジカル重合開始剤であるベンジル、4,4’-ジメトキシベンジル、アントラキノン系ラジカル重合開始剤である2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-フェノキシアントラキノン、2-(フェニルチオ)アントラキノン、2-(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
【0142】
ビイミダゾール系重合開始剤としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0143】
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤の光重合開始剤に対する使用量は、特に限定されないが、光重合開始剤に対して通常5重量%以上、100重量%以下の範囲、好ましくは10重量%以上、50重量%以下の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
【0144】
(光重合開始剤組成物)
本発明の一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤は、直接、光重合性化合物に添加することもできるが、あらかじめ光重合開始剤と配合することにより光重合開始剤組成物を調製した後、光重合性化合物に添加することもできる。すなわち、本発明の光重合開始剤組成物は、少なくとも、一般式(1)で表されるエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する組成物である。
【0145】
(光重合性組成物)
さらに該光重合開始剤組成物と光重合性化合物を配合することにより、光重合性組成物を調製することもできる。本発明の光重合性組成物は、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物とを含有する組成物である。本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を含有する光重合増感剤と光重合開始剤は、別々に光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物に添加され、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物中で、結果として光重合開始剤組成物を形成してもよい。更に、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物の両方を含むハイブリッド組成物としてもよい。
【0146】
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらのラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて(メタ)アクリル酸エステルという)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジメタノールジアクリレート、イソボニルメタクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0147】
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV-9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)(東亜合成社製、商品名:OXT-101)、2-エチルヘキシルオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-212)、キシリレンビスオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-121)、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-221)等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの光カチオン重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0148】
光重合性化合物として光ラジカル重合化合物のみを用いても良いし、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物両者を混合して用いても良い。
【0149】
本発明の光重合増感剤は、光ラジカル重合及び光カチオン重合の両方において増感剤として作用することができるため、適当な光重合開始剤を選ぶことにより、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物の両方を含有する光重合性組成物も効果的に重合させることができる。
【0150】
光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の混合比について特に限定はなく、該組成物を光重合、硬化して得られる塗膜や成型物の物性に応じ適宜選択される。通常は光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の重量比が1対99~99対1、好ましくは20対80~80対20の範囲でその組成比を決定する。
【0151】
光カチオン重合性化合物、光ラジカル重合性化合物はそれぞれ1種類ずつ用いても良いし、それぞれ2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの光重合性化合物を2種以上用いる場合においても、上記の光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の混合比はそれぞれの光重合性化合物の合計量の比として考える。
【0152】
本発明の光重合性組成物に用いる光重合開始剤は上述の光ラジカル開始剤もしくは光カチオン開始剤を用いることができる。通常、光重合性化合物として光ラジカル重合性化合物を用いる場合は光ラジカル重合開始剤を用いる。さらに、光重合性化合物として光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物を併用するような場合は光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、もしくは光カチオン重合開始剤単独で用いても良いし両者を混合して用いてもかまわない。
【0153】
特に、光カチオン重合開始剤の中には光照射によりカチオン開始活性種とラジカル開始活性種を発生するものもあり、このような開始剤を用いる場合はそれのみで光カチオン重合性化合物及び光ラジカル重合性化合物の両方の光重合を開始することも可能である。
【0154】
更に、本発明の光重合性組成物には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂などのバインダーポリマーが含まれていてもよい。また、アルカリ可溶性樹脂が含まれていてもよい。
【0155】
本発明の光重合性組成物において、光重合開始剤組成物の使用量は、光重合性組成物に対して0.005重量%以上、10重量%以下の範囲、好ましくは0.025重量%以上、5重量%以下である。0.005重量%未満だと光重合性組成物を光重合させるのに時間がかかってしまい、一方、10重量%を超えて添加すると光重合させて得られる光硬化物の硬度が低下し、硬化物の物性を悪化させるため好ましくない。
【0156】
なお、本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0157】
(光硬化物)
本発明の光重合性組成物に光を照射して重合することにより、光硬化物を得ることができる。光重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5~300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
【0158】
このようにして調製した光重合性組成物からなる塗膜に、300nmから500nmの波長範囲を含む紫外線を1~1000mW/cm程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光等の自然光を使用することもできる。特に、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、375nm紫外線LED、365nm紫外線LEDのような波長が365nm~405nmというような長波長域の波長範囲を含む光でも増感作用を有することが特徴であり、好ましい。
【0159】
(光DSC測定)
本発明において、光重合性組成物の光照射下における光重合速度を定量的に評価する手法として、光DSC測定法を用いることができる。この手法によれば、試料に光を直接的に照射しながら、硬化に伴う発熱量を連続的にかつ簡便に測定することができる。光DSC測定装置にセットされた試料に光照射をすると光の硬化反応が始まり発熱が観測される。光硬化前は水平であったDSC曲線のベースラインが発熱側にシフトし、反応が終了すると元のベースラインの位置に戻る。このDSC曲線のピークの大きさから、発熱量を求めることができる。すなわち光重合性組成物に光を照射し、1mgあたりの発熱量を測定、比較することによって、重合の進行状況を評価することができる。
【0160】
(組成物の耐マイグレーション性の判定)
本発明の光重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2600)を用いた。比較例の化合物である9,10-ジブトキシアントラセンと量的な比較するために、得られた吸光度を9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び9,10-ジブトキシアントラセンの260nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比をもちいて換算した。
【実施例
【0161】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、特記しない限り、すべての部は重量部である。生成物の確認は下記の機器による測定に基づいて行った。
【0162】
本発明の化合物の同定は下記の機器を用いて行った。
赤外線(IR)分光光度計:Thermo社製、型式is50 FT-IR
核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式ECS-400
融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB-595(JIS K0064に準拠)
【0163】
(合成実施例1)9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.8g(1.2ミリモル)、ブロモ酢酸メチルを9.5g(62.1ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過により、収量4.7g(粗収率55 mol%)の黄色の結晶を得た。
【0164】
(1)融点:151-152℃
(2)IR(cm-1):1745,1391,1363,1164,1093,774,705.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=3.914(s,6H),4.792(s,4H),7.261-7.545(m,4H),8.319-8.366(m,4H).
【0165】
(合成実施例2)9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.8g(1.2ミリモル)、ブロモ酢酸エチルを10.4g(62.5ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過により、収量5.0g(粗収率55mol%)の薄黄色の結晶を得た。
【0166】
(1)融点:93-94℃
(2)IR(cm-1):1754,1742,1382,1367,1241,1212,1168,1087,1034,1004,936,809,768,720,691,669,585.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.370(t,J=14Hz,6H),4.376(k,J=21.6Hz,4H),4.777(s,4H),7.261-7.540(m,4H).
【0167】
(合成実施例3)9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.8g(1.2ミリモル)、ブロモ酢酸イソプロピルを11.3g(62.5ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過により、収量5.9g(粗収率60mol%)の薄黄色の結晶を得た。
【0168】
(1)融点:109-110℃
(2)IR(cm-1):1744,1360,1210,1163,1086,1018,1004,776,768,671.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.347(d,J=6.4Hz,12H),4.743(s,4H),5.246-5.277(m,2H),7.504-7.529(m,4H),8.356-8.398(m,4H).
【0169】
(合成実施例4)9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.8g(1.2ミリモル)、ブロモ酢酸-tert-ブチルを12.2g(62.5ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、得られた濾液を一晩放置し結晶を析出させた。析出した結晶をさらに吸引濾過することにより、収量6.5g(粗収率61mol%)の薄黄色の結晶を得た。
【0170】
(1)融点:131-132℃
(2)IR(cm-1):1742,1391,1358,1232,1151,1089,1021,1004,846,776,749,670.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.575(s,18H),4.659(s,4H),7.260-7.530(m,4H),8.359-8.400(m,4H).
【0171】
(合成実施例5)9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を3.1g(4.8ミリモル)、クロロ酢酸ブチルを9.4g(62.5ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、得られた濾液を2度水で洗浄した。水洗操作後、アントラキノンが析出したため、吸引濾過によりアントラキノンを取り除いた。濾液を一晩放置し結晶を析出させ、吸引濾過により、収量5.5g(粗収率52mol%)の黄色の結晶を得た。
【0172】
(1)融点:71-72℃
(2)IR(cm-1):1749,1411,1385,1364,1246,1226,1167,1085,1035,1018,957,768,721,669,587.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.967(d,J=15.2Hz,6H),1.387-1.481(m,4H),1.678-1.750(m,4H),4.317(t,J=13.2Hz,4H),4.779(s,4H),7.508-7.826(m,4H),8.319-8.377(m,4H).
【0173】
(合成実施例6)9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.8g(1.2ミリモル)、2-ブロモプロピオン酸メチルを10.4g(62.5ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩の17wt%水溶液29.1g(アントラキノンとして24ミリモル)を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、得られた濾液を分液操作により、2度水で洗浄した。エバポレーターで溶液を濃縮し、冷凍庫で冷却し結晶を析出させた。析出した結晶をさらに吸引濾過することにより、収量4.6g(粗収率50mol%)の黄色の結晶を得た。
【0174】
(1)融点:130-131℃
(2)IR(cm-1):1737,1366,1207,1134,1078,1061,1020,970,748,681.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.644(d,J=6.4Hz,6H),3.770(s,6H),4.904(k,J=20.4Hz,2H),7.464-7.489(m,4H),8.292-8.332(m,4H).
【0175】
(合成実施例7)9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.77g(1.19ミリモル)、4-ブロモ酪酸エチルを12.1g(61.8ミリモル)、9,10-アントラセンジオールを5.0g(23.8ミリモル)、炭酸カリウムを9.9g(71.4ミリモル)、溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドを40g加えた。反応系の温度を20~30℃に保ちながら1時間撹拌した。その後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、得られた濾液をトルエンに溶かし、2度水で洗浄した。エバポレーターで溶液を濃縮した。一晩放置したところ、溶液全体が固化したため、メタノールを加え、50℃に加熱し、溶解させた。溶解しなかったアントラキノンを吸引濾過により取り除き、濾液を冷凍庫で冷却し結晶を析出させた。析出した結晶をさらに吸引濾過することにより、収量5.4g(粗収率51mol%)の黄色の結晶を得た。
【0176】
(1)融点:95-96℃
(2)IR(cm-1):1721,1351,1312,1239,1183,1164,1081,1024,1015,913,767,742,669.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.307(t,J=14.0Hz,6H),2.340-2.408(m,4H),2.776(t,J=14.8Hz,4H),4.171-4.235(m,8H),7.456-7.494(m,4H),8.230-8.256(m,4H).
【0177】
(合成実施例8)9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を0.77g(1.19ミリモル)、5-ブロモ吉草酸エチルを12.9g(61.8ミリモル)、9,10-アントラセンジオールを5.0g(23.8ミリモル)、炭酸カリウムを9.9g(71.4ミリモル)、溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドを40g加えた。反応系の温度を20~30℃に保ちながら1時間撹拌した。その後、吸引濾過によりアントラキノンを取り除き、得られた濾液をトルエンに溶かし、分液操作により、2度水で洗浄した。エバポレーターで溶液を濃縮した。一晩放置し、メタノールを加え、溶解しなかったアントラキノンを吸引濾過により取り除いた。濾液を冷凍庫で冷却し結晶を析出させた。析出した結晶をさらに吸引濾過することにより、収量6.2g(粗収率55mol%)の橙色の結晶を得た。
【0178】
(1)融点:57-58℃
(2)IR(cm-1):1722,1403,1337,1284,1269,1229,1178,1167,1068,1021,934,763,675.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.286(t,J=14.4Hz,6H),2.018-2.103(m,8H),2.496(t,J=13.6Hz,4H),4.151-4.205(m,8H),7.463-7.487(m,4H),8.243-8.268(m,4H).
【0179】
(合成実施例9)2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの200mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、2-エチルアントラキノンを5.0g(21,2ミリモル)、二酸化チオ尿素を9.1g(86.4ミリモル)、水酸化ナトリウムを8.4g(211.6ミリモル)、イオン交換水を50g加え、徐々に120℃まで昇温しながら撹拌を行った。溶液が赤黒色になったところで撹拌を止め、室温で冷却し、2-エチル-9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩水溶液を調製した。次に、攪拌機、温度計付きの別の200mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトンを15g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイドの50%水溶液を2.7g(4.23ミリモル)、ブロモ酢酸イソプロピルを10.0g(55.0ミリモル)加えた。反応系の温度を20~25℃に保ちながら、上記で調製した2-エチル-9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩水溶液を1時間以上かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。その後、水層を除き、有機層をエバポレーターで濃縮し、収量4.5g(粗収率48mol%)のオレンジ色のオイルを得た。
【0180】
(1)融点:室温で液体
(2)IR(cm-1):1728,1673,1454,1385,1373,1324,1286,1206,1085,962,931,901,825,772,750,712.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.237-1.371(m,15H),2.816-2.899(m,2H),4.731(s,4H),5.014-5.123(m,1H),5.225-5.301(m,1H),7.391(d,J=9.2Hz,1H),7.461-7.512(m,2H),7.766-7.790(m,1H),8.119(d,J=7.6Hz,1H),8.284-8.368(m,2H).
【0181】
(中間体合成例)9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセンの合成(中間体である一般式(5)の合成)
攪拌機、温度計付きの300mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、溶媒のメチルイソブチルケトン(MIBK)を95g、触媒のテトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)の50%水溶液を4.4g(6.8ミリモル)、ブロモ酢酸を49.5g(356ミリモル)加えた。反応系の温度を20~30℃に保ちながら9,10-アントラセンジオールのジナトリウム塩(AHQ-Na)と水酸化ナトリウムとの水溶液165.7g(137ミリモル)と水酸化ナトリウム11.4g(285ミリモル)及びイオン交換水20gを混合した水溶液を3時間かけて、滴下した。滴下終了後、さらに1.5時間撹拌した。その後、吸引濾過により、未反応の原料等を濾別し、トルエン100mlを加えて抽出を行った。有機層を分離し、水層に35%塩酸28.9g(285ミリモル)を加えて酸析を行った。析出結晶を濾過し、水洗後乾燥することにより、収量33.3g(収率75mol%)の黄色の結晶を得た。
【0182】
(1)融点:250℃以上
(2)IR(cm-1):1727,1435,1377,1254,1240,1091,934,769,592,657.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.631(br,2H),4.754(br,4H),7.802-7.825(m,4H),8.317-8.340(m,4H)
【0183】
(合成実施例10)9,10-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)アントラセン の合成(アルコールとの反応))
攪拌機、温度計付きの1000mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、(合成例1)で得られた9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセン78.7g(241ミリモル)、エタノール236.0g(5119ミリモル)、濃硫酸3.9g(39ミリモル)を加えた。反応系の温度を75~80℃に保ち、副生する水をエタノールと共に抜きながら10時間撹拌した。冷却して析出した結晶を吸引濾過し、メタノールで洗浄後乾燥することにより、収量71.7g(収率78mol%)の黄色の結晶を得た。
【0184】
(1)融点:93-94℃
(2)IR(cm-1):1754,1742,1382,1367,1241,1212,1168,1087,1034,1004,936,809,768,720,691,669,585.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.370(t,J=14Hz,6H),4.376(k,J=21.6Hz,4H),4.777(s,4H),7.261-7.540(m,4H).
【0185】
(合成実施例11)9,10-ビス(プロポキシカルボニルメトキシ)アントラセンの合成(アルコールとの反応))
攪拌機、温度計付きの50mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、(合成例1)で得られた9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセン0.4g(1.2ミリモル)、1-プロパノール1.5g(25ミリモル)、メタンスルホン酸0.01g(0.1ミリモル)を加えた。反応系の温度を50~60℃に保ちながら1.5時間撹拌した。その後、不溶分を濾別し、濾液にメタノール及びイオン交換水を加えて結晶を析出させた。析出結晶を吸引濾過し、メタノールで洗浄後乾燥することにより、収量0.12g(粗収率25mol)の黄色の結晶を得た。
【0186】
(1)融点:75-76℃
(2)IR(cm-1):2950,1747,1400,1380,1359,1206,1162,776.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.992(t,J=7.3Hz,6H),1.744(tq,J=6.9Hz,7.3Hz,4H),4.272(t,J=6.9Hz,4H),4.785(s,4H),7.496-7.534(m,4H),8.349-8.411(m,4H).
【0187】
(合成実施例12)9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメトキシ)アントラセン の合成(アルコールとの反応))
攪拌機、温度計付きの300mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、(合成例1)で得られた9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセン34.2g(105ミリモル)、1-ブタノール172.7g(2330ミリモル)、濃硫酸1.7g(17ミリモル)を加えた。反応系の温度を120~130℃に保ち、副生する水を抜きながら14時間撹拌した。冷却して析出した結晶を吸引濾過し、メタノールで洗浄後乾燥することにより、収量26.5g(収率58mol%)の黄色の結晶を得た。
【0188】
(1)融点:71-72℃
(2)IR(cm-1):1749,1411,1385,1364,1246,1226,1167,1085,1035,1018,957,768,721,669,587.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.967(d,J=15.2Hz,6H),1.387-1.481(m,4H),1.678-1.750(m,4H),4.317(t,J=13.2Hz,4H),4.779(s,4H),7.508-7.826(m,4H),8.319-8.377(m,4H).
【0189】
(合成実施例13)9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセンの合成(ハロゲン化アルキルとの反応)
攪拌機、温度計付きの50mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、(合成例1)で得られた9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセン0.65g(2.0ミリモル)、エチレングリコール3.0g(48ミリモル)、メタンスルホン酸0.2g(2.1ミリモル)を加えた。反応系の温度を50~60℃に保ちながら4時間撹拌した。冷却後メタノール及びイオン交換水を加えて結晶を析出させた。析出結晶を吸引濾過し、メタノールで洗浄後乾燥することにより、収量0.47g(収率57mol%)の黄色の結晶を得た。
【0190】
(1)融点:145-146℃
(2)IR(cm-1):3505,2950,1733,1674,1578,1077.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=3.804(br.,4H),4.340(t,J=5.0Hz,4H),4.905(s,4H),7.552-7.584(m,4H),8.447-8.478(m,4H).
【0191】
(合成実施例14)9,10-ビス(ブトキシカルボニルメトキシ)アントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100mlの四つ口フラスコに、9,10-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)アントラセンを2.0g(6.2ミリモル)、溶媒のN,N’-ジメチルホルムアミドを43.4g、炭酸カリウムを0.87g(6.4ミリモル)を加え、窒素置換した。窒素雰囲気下で臭化ブチルを3.87g(28.2ミリモル)加え、ウォータバスで60℃に加温撹拌した。反応終了後、室温まで冷却させ、吸引濾過により炭酸カリウムを含む残渣を取り除いた。得られたろ液を水に空けトルエン45.6gで抽出し、トルエン層を水で洗浄した。洗浄したトルエン層をエバポレータで減圧濃縮し、収量2.28g(粗収率83.6mol%)橙色の結晶を得た。
【0192】
(1)融点:71-72℃
(2)IR(cm-1):1749,1411,1385,1364,1246,1226,1167,1085,1035,1018,957,768,721,669,587.
(3)H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.967(d,J=15.2Hz,6H),1.387-1.481(m,4H),1.678-1.750(m,4H),4.317(t,J=13.2Hz,4H),4.779(s,4H),7.508-7.826(m,4H),8.319-8.377(m,4H).
【0193】
(光DSC測定)
本実施例において光DSC測定は下記のようにして行った。すなわち、DSC測定装置は日立ハイテク社製XDSC-7200を用い、それに光DSC測定用ユニットを装着し光を照射しながらDSC測定ができるよう設えた。光照射用の光源は林時計工業社製LA-410UVを用い、バンドパスフィルターで405nm光を取り出してサンプルに照射できるようにした。光の照度は50mW/cmとした。光源の光はグラスファイバーを用いてサンプル上部まで導けるようにし、光照射開始と同時にDSC測定ができるよう光源のシャッターをトリガー制御できるようにした。光DSCの測定はサンプルを1mg程度測定用アルミパンの中に精秤し、DSC測定部に収めたのち光DSCユニットを装着した。その後測定部内を窒素雰囲気に保ち10分間静置して、測定を開始した。測定は通常光を照射しながら6分間継続した。一回目の測定後、サンプルはそのままで再度同条件で測定を行い、一回目の測定結果から二回目の測定結果を差し引いた値を該サンプルの測定結果とした。結果は特に断らない限り光照射後1分間におけるサンプル1mgあたりの総発熱量で比較した。測定条件によっては1分間で光反応が完結しない場合もあるが光照射初期の反応挙動を比較するために1分間の総発熱量で比較した。光照射に伴ってサンプル(光重合性組成物)の重合が生じた場合、重合に伴う反応熱が生ずるが光DSCではその反応熱を測定することができる。そのため、光DSCによって光照射による重合進行の状況が測定できることになる。本実施例では光照射後1分間の総発熱量を測定しているが、同一の重合性化合物を用いている限りにおいてはその値を比較した場合値が大きいほど重合が効率的に進行していると考えることができる。
【0194】
このようにして、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光カチオン重合増感剤とする光カチオン重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
【0195】
(光硬化速度評価実施例1)
光カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部、光カチオン重合増感剤として、合成実施例1で得られた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は256mJ/mgであった。
【0196】
(光硬化速度評価実施例2)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例2と同様に得られた9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は273mJ/mgであった。
【0197】
(光硬化速度評価実施例3)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例3と同様に得られた9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は262mJ/mgであった。
【0198】
(光硬化速度評価実施例4)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例4と同様に得られた9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は284mJ/mgであった。
【0199】
(光硬化速度評価実施例5)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例5と同様に得られた9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は248mJ/mgであった。
【0200】
(光硬化速度評価実施例6)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例6と同様に得られた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は226mJ/mgであった。
【0201】
(光硬化速度評価実施例7)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例7と同様に得られた9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は308mJ/mgであった。
【0202】
(光硬化速度評価実施例8)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例8と同様に得られた9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は285mJ/mgであった。
【0203】
(光硬化速度評価実施例9)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例9と同様に得られた2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は260mJ/mgであった。
【0204】
(光硬化速度評価実施例17)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例11と同様に得られた9,10-ビス(プロポキシカルボニルメトキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は259mJ/mgであった。
【0205】
(光硬化速度評価実施例18)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例13と同様に得られた9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は237mJ/mgであった。
【0206】
(光硬化速度評価比較例1)
光カチオン重合性化合物として3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)100重量部に対して、光重合開始剤である(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム-ヘキサフルオロフォスフェート(ビー・エー・エス・エフ社製、商品名イルガキュア250、「イルガキュア」はビー・エー・エス・エフ社の登録商標)2重量部を室温で混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は3mJ/mgであった。
【0207】
(光硬化速度評価比較例2)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は230mJ/mgであった。
【0208】
(光硬化速度評価比較例3)
光硬化速度評価実施例1の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンを使用すること以外は光硬化速度実施評価例1と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は234mJ/mgであった。
【0209】
光硬化速度評価実施例1~9、17、18と光硬化速度評価比較例1~3の結果を表1にまとめた。
【0210】
【表1】
【0211】
次に、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光ラジカル重合増感剤とするラジカル重合性組成物の光重合性能評価試験について以下に記載する。
【0212】
(光硬化速度評価実施例10)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に対して、光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2重量部、光ラジカル重合増感剤として、合成実施例1で得られた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は419mJ/mgであった。
【0213】
(光硬化速度評価実施例11)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを合成実施例2と同様に得られた9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は465mJ/mgであった。
【0214】
(光硬化速度評価実施例12)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例3と同様に得られた9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は409mJ/mgであった。
【0215】
(光硬化速度評価実施例13)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例4と同様に得られた9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は443mJ/mgであった。
【0216】
(光硬化速度評価実施例14)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例5と同様に得られた9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は336mJ/mgであった。
【0217】
(光硬化速度評価実施例15)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例6と同様に得られた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は552mJ/mgであった。
【0218】
(光硬化速度評価実施例16)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例9と同様に得られた2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は441mJ/mgであった。
【0219】
(光硬化速度評価実施例19)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例11と同様に得られた9,10-ビス(プロポキシカルボニルメトキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は379mJ/mgであった。
【0220】
(光硬化速度評価実施例20)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを実施例13と同様に得られた9,10-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニルメトキシ)アントラセンに変えた以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は420mJ/mgであった。
【0221】
(光硬化速度評価比較例4)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に対して、光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2重量部を室温で混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。この光重合性組成物について光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は166mJ/mgであった。
【0222】
(光硬化速度評価比較例5)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は212mJ/mgであった。
【0223】
(光硬化速度評価比較例6)
光硬化速度評価実施例10の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを公知の光重合増感剤である9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンを使用すること以外は光硬化速度評価実施例10と同様に光DSC測定を行ったところ、光照射開始から5分間の総発熱量は298mJ/mgであった。
【0224】
光硬化速度評価実施例10~16、19、20と光硬化速度評価比較例4~6の結果を表2にまとめた。
【0225】
【表2】
【0226】
光硬化速度評価実施例1~9、17、18及び光硬化速度評価比較例1の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合において本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として添加することにより、総発熱量が増加しており、著しく重合反応を促進していることがわかる。また、光硬化速度評価実施例10~16、19、20及び光硬化速度評価比較例4の結果を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合においても本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物を添加することにより、同様に総発熱量が増加しており、著しく重合反応を促進していることがわかる。すなわち、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合のいずれにおいても光重合増感効果を持つことが分かる。
【0227】
更に、光硬化速度評価実施例1~9、17、18及び光硬化速度評価比較例2、3の結果を比較することにより明らかなように、光カチオン重合において本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことがわかる。また、光硬化速度評価実施例10~16、19、20及び光硬化速度評価比較例5,6の結果を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合においても本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、同様に公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことがわかる。すなわち、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合のいずれにおいても公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンと同等もしくはそれ以上の光重合増感効果を持つことが分かる。
【0228】
(光カチオン重合における耐マイグレーション性の評価実施例)
(耐マイグレーション性評価実施例1)
エポキシ光カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製セロキサイド2021P)100部に対し、光重合増感剤として合成実施例1と同様の方法で合成した9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1部を混合し、調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、七日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.015、七日保管後0.003であった。
【0229】
(耐マイグレーション性評価実施例2)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例2と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.007、七日保管後0.007であった。
【0230】
(耐マイグレーション性評価実施例3)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例3と同様の方法で合成した9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.007、七日保管後0.007であった。
【0231】
(耐マイグレーション性評価実施例4)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例4と同様の方法で合成した9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.010、七日保管後0.014であった。
【0232】
(耐マイグレーション性評価実施例5)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例5と同様の方法で合成した9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.011、七日保管後0.007であった。
【0233】
(耐マイグレーション性評価実施例6)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例6と同様の方法で合成した9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.007、七日保管後0.003であった。
【0234】
(耐マイグレーション性評価実施例7)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例7と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.015、七日保管後0.013であった。
【0235】
(耐マイグレーション性評価実施例8)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例8と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.012、七日保管後0.010であった。
【0236】
(耐マイグレーション性評価実施例9)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例9と同様の方法で合成した2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸光度を9,10-ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.015、七日保管後0.015であった。
【0237】
(耐マイグレーション性評価比較例1)
光重合増感剤として、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例1と同様に調製した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.737、七日保管後0.843であった。
【0238】
耐マイグレーション性評価実施例1~9と耐マイグレーション性評価比較例1の結果を表3にまとめた。
【0239】
【表3】
【0240】
(光ラジカル重合における組成物の耐マイグレーション性の評価実施例)
(耐マイグレーション性評価実施例10)
光ラジカル重合性化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート100部、光ラジカル重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン1部を混合し、調製した組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したものと七日間保管したものを調製し、それぞれ保管後、被せたポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い、乾燥した後、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.015、七日保管後0.016であった。
【0241】
(耐マイグレーション性評価実施例11)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例2と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(エトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.014、七日保管後0.015であった。
【0242】
(耐マイグレーション性評価実施例12)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例3と同様の方法で合成した9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.024、七日保管後0.022であった。
【0243】
(耐マイグレーション性評価実施例13)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例4と同様の方法で合成した9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(tert-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.037、七日保管後0.033であった。
【0244】
(耐マイグレーション性評価実施例14)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例5と同様の方法で合成した9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(n-ブトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.022、七日保管後0.015であった。
【0245】
(耐マイグレーション性評価実施例15)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例6と同様の方法で合成した9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(メトキシカルボニルメチルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.007、七日保管後0.004であった。
【0246】
(耐マイグレーション性評価実施例16)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例7と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(エトキシカルボニルプロピレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.032、七日保管後0.030であった。
【0247】
(耐マイグレーション性評価実施例17)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例8と同様の方法で合成した9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、9,10-ビス(エトキシカルボニルブチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.022、七日保管後0.021であった。
【0248】
(耐マイグレーション性評価実施例18)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに合成実施例9と同様の方法で合成した2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様に調製して試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定したが、2-エチル-9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンに起因する吸収は、一日保管後0.031、七日保管後0.032であった。
【0249】
(マイグレーション比較例2)
9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセンの代わりに公知の光ラジカル増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンを使用すること以外は耐マイグレーション性評価実施例10と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、得られた9,10-ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後1.661、七日後1.741であった。
【0250】
耐マイグレーション性評価実施例10~18と耐マイグレーション性評価比較例2の結果を表4にまとめた。
【0251】
【表4】
【0252】
耐マイグレーション性評価実施例1から9と耐マイグレーション性評価比較例1を比較することにより明らかなように、光カチオン重合性組成物中において、公知の光カチオン重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンは該光カチオン重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン化合物は、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。
【0253】
一方、耐マイグレーション性評価実施例10から18と耐マイグレーション性評価比較例2を比較することにより明らかなように、光ラジカル重合性組成物中においても、公知の光ラジカル重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセンは、光ラジカル重合性組成物の上に被せたフィルムにかなりの程度移行しているのに対して、本願の9,10-ビス(メトキシカルボニルメチレンオキシ)アントラセン化合物は、いずれの場合もその移行程度は極めて低く、耐マイグレーション性に優れているといえる。
【0254】
以上の結果より、本発明のエステル基を有する9,10-ビス(アルコキシカルボニルアルキレンオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合及び光ラジカル重合において、公知の光重合増感剤である9,10-ジブトキシアントラセン化合物と比較して、同等の光重合増感能を有するだけでなく、極性のエステル基を持つ構造のため、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であり、光重合増感剤として極めて有用な化合物であることがわかる。