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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】コネクタ構造体
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20220825BHJP
【FI】
H01R24/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018239931
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020102366
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 和明
(72)【発明者】
【氏名】小野 純一
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125242(JP,A)
【文献】特開2014-232585(JP,A)
【文献】特開2011-9111(JP,A)
【文献】特開2009-224033(JP,A)
【文献】米国特許第7249970(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
H01R43/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線と、
前記芯線に接続される芯線接続部を有すると共に前記芯線接続部に連なって相手方端子と接続する接続部を有する内導体と、
少なくとも、前記内導体のうち前記接続部の外周を包囲する絶縁性の誘電体と、
前記誘電体の外周を包囲する前筒部を有すると共に、少なくとも前記誘電体の一部に係止する誘電体係止部を有する前外導体と、
前記シールド部から露出する前記被覆電線の外周を包囲する後筒部を有し、且つ、左右の両側縁が突き合わされた形態で前記シールド部に外方から圧着するシールド圧着部を有すると共に、少なくとも前記前外導体の一部に外方から圧着する前外導体圧着部を有する後外導体と、
を備え
前記シールド圧着部の外径寸法は、前記前外導体圧着部の外径寸法よりも大きく設定されている、コネクタ構造体。
【請求項2】
前記前筒部の径方向について、前記誘電体係止部は、前記前筒部に対して縮径、又は拡径しており、
前記誘電体は、前記誘電体係止部の内壁面に、前方又は後方から当接する抜け止め部を有する、請求項1に記載のコネクタ構造体。
【請求項3】
前記前外導体及び前記後外導体の一方には、他方に向かって突出する係止凸部が設けられており、他方には、前記係止凸部と係止する係止凹部が形成されている、請求項1または請求項2に記載のコネクタ構造体。
【請求項4】
前記前外導体圧着部が前記前外導体の外周に圧着した状態で、前記前外導体圧着部には、内方に向かって突出する位置決め凸部が形成されており、
前記位置決め凸部は、前記前外導体を貫通すると共に、前記誘電体に陥没して形成された位置決め凹部内に嵌入している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項5】
前記前外導体圧着部が前記前外導体の外周に圧着した状態で、前記前外導体圧着部と、前記前外導体のうち前記前外導体圧着部に圧着された部分とのうち、一方には、他方に向かって突出する接続突部が設けられている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、シールド電線にコネクタが接続されてなるコネクタ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルの端末にコネクタが接続されてなるコネクタ構造体として、国際公開第2017/144070号に記載のものが知られている。このコネクタ構造体は、内導体と、内導体を包囲する誘電体と、誘電体の外周を覆う接触部材と、同軸ケーブルのシールド部に接続される接続部材と、を備える。接触部材の後端部には接続部材の前端部が外嵌された状態で、溶接されるようになっている。これにより、接触部材と接続部材とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/144070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成によれば、誘電体が接触部材の内部に収容された状態で、接触部材と接続部材とが溶接されるようになっている。このため、接触部材と接続部材との溶接時の熱によって、誘電体が変形する等の不具合が生じる虞がある。
【0005】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、熱によって誘電体に不具合が生じることが抑制されたコネクタ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、コネクタ構造体であって、前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線と、前記芯線に接続される芯線接続部を有すると共に前記芯線接続部に連なって相手方端子と接続する接続部を有する内導体と、少なくとも、前記内導体のうち前記接続部の外周を包囲する絶縁性の誘電体と、前記誘電体の外周を包囲する前筒部を有すると共に、少なくとも前記誘電体の一部に係止する誘電体係止部を有する前外導体と、前記シールド部から露出する前記被覆電線の外周を包囲する後筒部を有し、且つ、前記シールド部に外方から圧着するシールド圧着部を有すると共に、少なくとも前記前外導体の一部に外方から圧着する前外導体圧着部を有する後外導体と、を備える。
【0007】
また、本明細書に開示された技術は、コネクタ構造体の製造方法であって、前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線の前記絶縁被覆の前端部を皮剥ぎして前記芯線を露出させる工程と、絶縁性の誘電体に、芯線接続部を露出させた状態で内導体を配設する工程と、前記誘電体を前外導体の内部に収容する工程と、前記絶縁被覆から露出した前記芯線に、前記内導体の前記芯線接続部を接続する工程と、前記前外導体の誘電体係止部を、前記誘電体の一部に係止させる工程と、後外導体に設けられたシールド圧着部を、前記シールド部に、外方から圧着させる工程と、前記後外導体に設けられた前外導体圧着部を、少なくとも前記誘電体係止部の一部に外方から圧着する工程と、を備える。
【0008】
上記の技術によれば、前外導体に設けられた誘電体係止部の外方に、後外導体に設けられた前外導体圧着部が圧着することにより、前外導体と後外導体とが接続されている。これにより、溶接等の加工が不要となるので、加熱することなく、後外導体と前外導体とを接続することができる。これにより、熱によって誘電体に不具合が生じることを抑制することができる。
【0009】
本明細書に開示された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0010】
前記前筒部の径方向について、前記誘電体係止部は、前記前筒部に対して縮径、又は拡径しており、前記誘電体は、前記誘電体係止部の内壁面に、前方又は後方から当接する抜け止め部を有する。
【0011】
上記の構成によれば、誘電体を、前外導体に、抜け止め状態で保持することができる。
【0012】
前記前外導体及び前記後外導体の一方には、他方に向かって突出する係止凸部が設けられており、他方には、前記係止凸部と係止する係止凹部が形成されている。
【0013】
上記の構成によれば、係止凸部と係止凹部とが係止することにより、前外導体と、後外導体との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0014】
前記前外導体圧着部が前記前外導体の外周に圧着した状態で、前記前外導体圧着部には、内方に向かって突出する位置決め凸部が形成されており、前記位置決め凸部は、前記前外導体を貫通すると共に、前記誘電体に陥没して形成された位置決め凹部内に嵌入している。
【0015】
上記の構成によれば、前外導体と、後外導体と、誘電体との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0016】
前記前外導体圧着部が前記前外導体の外周に圧着した状態で、前記前外導体圧着部と、前記前外導体のうち前記前外導体圧着部に圧着された部分とのうち、一方には、他方に向かって突出する接続突部が設けられている。
【0017】
上記の構成によれば、前外導体圧着部と、前外導体のうち前外導体圧着部に圧着された部分とのうち、一方に設けられた接続突部が、他方に当接することにより、後外導体と、前外導体とを確実に電気的に接続することができる。これにより、後外導体と前外導体との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示された技術によれば、熱によって誘電体に不具合が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
図2】雌コネクタ構造体を示す断面図
図3】シールド電線にスリーブを外嵌した工程を示す断面図
図4】シールド電線のシースを皮剥ぎした工程を示す断面図
図5】編組線をスリーブの上に折り返した工程を示す断面図
図6】雌端子を誘電体に挿入する工程を示す斜視図
図7】雌端子が誘電体に挿入された状態を示す斜視図
図8】雌端子が誘電体に挿入された状態を示す断面図
図9】芯線にワイヤーバレルを圧着する工程を示す断面図
図10】後外導体を編組線及び誘電体係止部に圧着する工程を示す断面図
図11】実施形態2に係る雌コネクタ構造体において、雌端子を誘電体に挿入する工程を示す斜視図
図12】雌端子が誘電体に挿入された状態を示す斜視図
図13】実施形態2に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
図14】実施形態3に係る雌コネクタ構造体において、前外導体に誘電体を挿入する工程を示す斜視図
図15】実施形態3に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
図16】実施形態3に係る雌コネクタ構造体を示す断面図
図17】実施形態4に係る雌コネクタ構造体において、位置決め凸部と位置決め凹部の嵌合状態を示す断面図
図18】実施形態5に係る雌コネクタ構造体において、前外導体に誘電体を挿入する工程を示す斜視図
図19】前外導体に誘電体が配設された状態を示す斜視図
図20】実施形態5に係る雌コネクタ構造体を示す断面図
図21】実施形態6に係る雌コネクタ構造体において、前外導体に誘電体が配設された状態を示す斜視図
図22】実施形態6に係る雌コネクタ構造体を示す断面図
図23】実施形態7に係る雌コネクタ構造体において、前外導体に誘電体が配設された状態を示す斜視図
図24】実施形態7に係る雌コネクタ構造体を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の実施形態1を図1から図10を参照しつつ説明する。本実施形態に係る雌コネクタ構造体10は、シールド電線11の端末に雌コネクタ12が接続されてなる。雌コネクタ12は、雌端子18(内導体の一例)と、誘電体19と、後外導体33と、前外導体34と、を備える。以下の説明では、シールド電線11の延びる方向(矢線Aで示す方向)を前方とする。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
シールド電線11
図2に示すように、シールド電線11は、複数(本実施形態では2本)の被覆電線13の外周を、金属細線からなる編組線14(シールド部の一例)で包囲すると共に、編組線14の外周を絶縁材料からなるシース15で包囲してなる。各被覆電線13は、芯線16と、芯線16の外周を包囲する絶縁被覆17と、を備える。芯線16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を選択することができる。芯線16は、1本の金属素線からなるものであってもよく、また、複数本の金属素線が撚り合わされた撚り線からなるものであってもよい。絶縁被覆17、及びシース15は、絶縁性の合成樹脂からなる。
【0022】
シールド電線11の端末においては、皮剥ぎ等の端末処理が施され、芯線16、絶縁被覆17、及び編組線14のそれぞれの端末が露出している。
【0023】
雌コネクタ12
雌コネクタ12は、雌端子18(内導体の一例)と、雌端子18の外周を包囲する絶縁性の誘電体19と、誘電体19の外周を包囲する外導体20と、を備える。外導体20は、後外導体33と、後外導体33の前端部に電気的に接続された前外導体34とを、有する。
【0024】
雌端子18
図6に示すように、雌端子18は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雌端子18を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を選択することができる。雌端子18は、各被覆電線13の端末に接続されている。雌端子18は、芯線16の外周に巻き付くように圧着するワイヤーバレル22(芯線接続部の一例)と、ワイヤーバレル22の前方に連なって、図示しない相手側端子が挿入される接続筒部23(接続部の一例)と、を有する。
【0025】
接続筒部23には、接続筒部23の前端部から後方に向かって延びる複数のスリットが形成されることにより、前後方向に延びる複数の弾性接触片24が設けられている。複数の弾性接触片24は、前方に向かうに従って縮径しており、接続筒部23の径方向について弾性変形可能に形成されている。相手側端子が接続筒部23内に挿入されることにより、相手側端子と弾性接触片24とが弾性的に接触し、これにより、相手側端子と雌端子18とが電気的に接続されるようになっている。
【0026】
編組線14
編組線14は、複数の金属細線を筒状に編んでなる。編組線14のうちシース15の端末から露出した部分は、シース15の端末側に折り返されて、後述するスリーブ27の外側に重ねられている。
【0027】
スリーブ27
シース15の端末の外側には、環状をなすスリーブ27が外嵌されている、スリーブ27の外側には、上記したように編組線14が重ねられている。本実施形態に係るスリーブ27は、細長く延びた金属板材を、シース15の外周に巻き付くように圧着させることにより、略環状に形成してなる。
【0028】
誘電体19
図2に示すように、雌端子18のうち接続筒部23の周囲は、誘電体19によって包囲されるようになっている。誘電体19は絶縁性の合成樹脂を射出成型してなる。誘電体19の後端部からは、ワイヤーバレル22が後方に突出している。図6及び図7に示すように、誘電体19は、全体として前後方向に延びると共に、断面形状が、左右方向に細長い長円形状をなしている。
【0029】
誘電体19は、前後方向に開口すると共に、内部に雌端子18の接続筒部23がそれぞれ収容される複数(本実施形態では2つ)のキャビティ32が、左右方向に並んで形成されている。キャビティ32の前側の開口からは、相手側端子が挿入されるようになっている。キャビティ32の後側の開口からは、上記したように、ワイヤーバレル22が後方に導出されている。
【0030】
誘電体19のうち、前後方向について後端部から略三分の一の部分には、誘電体19の径方向について外方に突出したフランジ28(抜け止め部の一例)が形成されている。
【0031】
前外導体34
図2に示すように、前外導体34は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。前外導体34を構成する金属は銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を必要に応じて選択できる。前外導体34は、誘電体19の外周を包囲する前筒部38と、前筒部38の後方に連なると共に前筒部38よりも縮径された誘電体係止部39を有する。前筒部38の内径寸法は、フランジ28の外径寸法と同じか、やや大きく設定されている。前筒部38の前端部は、誘電体19の前端部よりも前方に延びて形成されている。誘電体係止部39の内壁面は、誘電体19のフランジ28、及びフランジ28よりも後方の部分と係止している。これにより、前筒部38の前側の開口から挿入された誘電体19は、前外導体34に対して、後方へ抜け止めされた状態で保持されるようになっている。
【0032】
後外導体33
図2及び図9に示すように、後外導体33は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。後外導体33を構成する金属は銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を必要に応じて選択できる。後外導体33は、スリーブ27の上に折り返された編組線14に外方から圧着するシールド圧着部35と、シールド圧着部35の前方に連なって、編組線14から露出した被覆電線13の外周を包囲する後筒部36と、後筒部36の前方に連なって、誘電体19の後端部寄りの位置に係止した誘電体係止部39に外方から圧着する前外導体圧着部37と、を有する。
【0033】
後外導体33は、左右の両側縁が付き合わされた形態で、編組線14の外周に圧着すると共に、誘電体係止部39の後端部寄りの位置に外方から圧着している。前外導体圧着部37は、誘電体19のうちフランジ28よりも後方の部分に圧着している。前外導体圧着部37が誘電体係止部39の外方から圧着することにより、前外導体圧着部37及び誘電体係止部39が、誘電体19に対して固定されると共に、前外導体34と後外導体33とが電気的に接続されるようになっている。
【0034】
後外導体33が編組線14の外周に圧着すると共に誘電体19の後端部寄りの位置に圧着した状態で、シールド圧着部35の外径寸法は、前外導体圧着部37の外径寸法よりも大きく設定されている。シールド圧着部35と前外導体圧着部37との間に位置する後筒部36は、前方に向かうに従って縮径した形状に形成されている。
【0035】
雌コネクタ構造体10の製造工程
続いて、本実施形態に係る雌コネクタ構造体10の製造工程の一例について説明する。なお、雌コネクタ構造体10の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0036】
図3に示すように、シールド電線11の端末部分から所定の長さ寸法だけ後退した位置に、シース15の外周にスリーブ27を外嵌させる。図4に示すように、シース15のうち、スリーブ27の前端部よりも前方の部分を皮剥ぎすることにより、編組線14をシース15から露出させる。編組線14を所定の長さに切断し、編組線14から被覆電線13を露出させる。スリーブ27は、シース15を皮剥ぎする位置の目印となっている。図5に示すように、編組線14を後方に折り返して、スリーブ27の上に重ねる。被覆電線13の端末において、所定の長さで絶縁被覆17を皮剥ぎすることにより、芯線16を絶縁被覆17から露出させる。
【0037】
図6に示すように、誘電体19のキャビティ32内に、雌端子18を後方から挿入する。図7及び図8に示すように、誘電体19の後端部からは、雌端子18のワイヤーバレル22が後方に突出している。
【0038】
前外導体34を筒状に形成する。誘電体19を、前外導体34の前筒部38の前方から、誘電体19を挿入する。図8に示すように、誘電体19のうち、フランジ28よりも後方の部分を、前外導体34の誘電体係止部39に前方から係止させる。これにより、誘電体19が、前外導体34に、後方への抜け止め状態で保持される。
【0039】
図9に示すように、絶縁被覆17の前端部から露出した芯線16の外周にワイヤーバレル22を圧着させることにより、被覆電線13の端末に雌端子18を接続する。
【0040】
図10に示すように、後外導体33のシールド圧着部35を、スリーブ27の上に折り返された編組線14に、外方から圧着する。また、後外導体33の前外導体圧着部37を、前外導体34の誘電体係止部39に、外方から圧着する。
【0041】
シールド圧着部35を編組線14に圧着する工程と、前外導体圧着部37を誘電体係止部39に圧着する工程は、同一の工程内で実行してもよい。また、シールド圧着部35を編組線14に圧着する工程と、前外導体圧着部37を誘電体係止部39に圧着する工程は、別々に実行してもよい。例えば、先にシールド圧着部35を編組線14に圧着した後に前外導体圧着部37を誘電体係止部39に圧着してもよいし、先に前外導体圧着部37を誘電体係止部39に圧着した後にシールド圧着部35を編組線14に圧着してもよい。以上により、雌コネクタ構造体10が完成する(図1及び図2参照)。
【0042】
本実施形態の作用効果
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、雌コネクタ構造体10は、前後方向に延びる芯線16の外周を絶縁被覆17で包囲してなる被覆電線13の外周が編組線14で包囲されたシールド電線11と、芯線16に接続されるワイヤーバレル22を有すると共にワイヤーバレル22に連なって相手方端子と接続する接続筒部23を有する雌端子18と、少なくとも、雌端子18のうち接続筒部23の外周を包囲する絶縁性の誘電体19と、誘電体19の外周を包囲する前筒部38を有すると共に、少なくとも誘電体19の一部に係止する誘電体係止部39を有する前外導体34と、編組線14から露出する被覆電線13の外周を包囲する後筒部36を有し、且つ、編組線14に外方から圧着するシールド圧着部35を有すると共に、誘電体係止部39に外方から圧着する前外導体圧着部37を有する後外導体33と、を備える。
【0043】
上記の構成によれば、前外導体34に設けられた誘電体係止部39の外方に、後外導体33に設けられた前外導体圧着部37が圧着することにより、前外導体34と後外導体33とが接続されている。これにより、溶接等の加工が不要となるので、加熱することなく、後外導体33と前外導体34とを接続することができる。これにより、熱によって誘電体19に不具合が生じることを抑制することができる。
【0044】
また、本明細書に開示された、雌コネクタ構造体10の製造方法は、前後方向に延びる芯線16の外周を絶縁被覆17で包囲してなる被覆電線13の外周が編組線14で包囲されたシールド電線11の絶縁被覆17の前端部を皮剥ぎして芯線16を露出させる工程と、絶縁性の誘電体19に、ワイヤーバレル22を露出させた状態で雌端子18を配設する工程と、誘電体19を前外導体34の内部に収容する工程と、絶縁被覆17から露出した芯線16に、雌端子のワイヤーバレル22を接続する工程と、前外導体34の誘電体係止部39を、誘電体19の一部に係止させる工程と、編組線14に、外方から後外導体33に設けられたシールド圧着部35を圧着させる工程と、後外導体33に設けられた前外導体圧着部37を、少なくとも誘電体係止部39の一部に外方から圧着する工程と、を備える。
【0045】
上記の構成によれば、後外導体33と、前外導体34とは、少なくとも誘電体19の一部に、後外導体33の前外導体圧着部37が圧着すると共に、少なくとも前外導体圧着部37の一部に誘電体係止部39が係止することにより、接続されている。これにより、後外導体33と前外導体34とを、溶接によらずに、接続することができる。この結果、後外導体33と前外導体34とを、加熱することなく、接続することができるので、熱によって誘電体19に不具合が生じることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、前筒部38の径方向について、誘電体係止部39は、前筒部38に対して縮径されており、誘電体19は、誘電体係止部39の内壁面に、前方から当接するフランジ28を有する。これにより、誘電体19を、前外導体34に、抜け止め状態で保持することができる。
【0047】
<実施形態2>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態2を図11から図13を参照しつつ説明する。本実施形態に係る雌コネクタ構造体50においては、誘電体51は、前後方向に延びる、略円筒形状をなしている。誘電体51には、前後に開口する、1つのキャビティ32が形成されている。キャビティ32内には、1つの雌端子18が収容されている。
【0048】
後外導体52は、略円筒形状をなすシールド圧着部53と、このシールド圧着部53と同軸上に形成されると共に略円筒形状をなす前外導体圧着部54と、を備える。
【0049】
前外導体55は、略円筒形状をなす前筒部56と、この前筒部56と同軸状に形成される誘電体係止部57と、を有する。誘電体係止部57は、前筒部56よりも縮径されている。
【0050】
本実施形態に係る誘電体51は、シース15内に1つの被覆電線13が配されたシールド電線11を備えた雌コネクタ構造体50に対して、有効に適用することができる。
【0051】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0052】
<実施形態3>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態3に係る雌コネクタ構造体60について図14から図16を参照しつつ説明する。図14に示すように、本実施形態に係る誘電体61には、フランジ28の後方に、誘電体61の径方向についてフランジ28よりも拡径された抜け止め部62が形成されている。抜け止め部62の上面及び下面には、左右方向に細長く形成された溝状をなす位置決め凹部63が形成されている。
【0053】
図15及び図16に示すように、本実施形態に係る前外導体64の後端部寄りの位置には誘電体61の抜け止め部62に外方から係止する誘電体係止部65が形成されている。誘電体係止部65は、前筒部38よりも拡径されている。誘電体係止部65の内形状は、誘電体61の抜け止め部62の外形状と実質的に同じに形成されている。
【0054】
誘電体61は、前外導体64に後方から挿入されるようになっている。誘電体61の抜け止め部62が、前外導体64の誘電体係止部65の内壁面に、後方から係止するようになっている。これにより、誘電体61は、前外導体64に対して、後方へ抜け止めされた状態で保持されるようになっている。
【0055】
前外導体64に形成された誘電体係止部65には、誘電体61が前外導体64の内部に配設された状態で、位置決め凹部63に対応する位置に、貫通孔66が形成されている。貫通孔66は、左右方向に細長く延びた形状をなしており、位置決め凹部63の開口部と実質的に同じ形状に形成されている。実質的に同じ形状とは、同じ形状である場合を含むと共に、同じでなくても実質的に同じと認定できる場合も含む。
【0056】
図15及び図16に示すように、本実施形態に係る後外導体67には、前外導体圧着部68に、位置決め凸部69が形成されている。位置決め凸部69は、後外導体67の前端縁を内方に折り曲げて形成されている。位置決め凸部69は、前外導体圧着部68が誘電体係止部65の外方から圧着した状態で、貫通孔66、及び位置決め凹部63に対応する位置に、誘電体61の径方向について内方に突出して形成されている。位置決め凸部69の前外導体圧着部68からの突出寸法は、誘電体係止部65の厚さ寸法と、位置決め凹部63の深さ寸法との和と同じか、やや小さく設定されている。
【0057】
図16に示すように、前外導体圧着部68が誘電体係止部65の外方から圧着した状態で、位置決め凸部69は、前外導体64の誘電体係止部65を貫通すると共に、誘電体61の位置決め凹部63内に嵌入するようになっている。これにより、位置決め凸部69は、貫通孔66の内面、及び位置決め凹部63の内面と、前後方向、及び左右方向に係止するようになっている。
【0058】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0059】
本実施形態においては、誘電体係止部65は、前筒部38よりも拡径しており、誘電体61は、誘電体係止部65の内壁面に、後方から当接する抜け止め部62を有する。これにより、誘電体61を、前外導体64に、後方への抜け止め状態で保持することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、前外導体圧着部68が前外導体64の外周に圧着した状態で、前外導体圧着部68には、内方に向かって突出する位置決め凸部69が形成されており、位置決め凸部69は、前外導体64を貫通すると共に、誘電体61に形成された位置決め凹部63内に嵌入している。これにより、前外導体64と、後外導体67と、誘電体61との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0061】
<実施形態4>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態4について、図17を参照しつつ説明する。本実施形態においては、誘電体70は1つのキャビティ32を有する。キャビティ32内には雌端子18が収容されている。誘電体70は前後方向に延びる円筒形状をなしている。誘電体70の外面には、誘電体70の周方向について間隔を空けて、複数(本実施形態では4つ)の位置決め凹部71が、設けられている。4つの位置決め凹部71は、誘電体70の上部、下部、左側部、及び右側部に設けられている。
【0062】
誘電体70の外周には、前外導体72の誘電体係止部73が外嵌している。誘電体係止部73には、誘電体係止部73が誘電体70に外嵌した状態で、誘電体70の位置決め凹部71に対応する位置に、複数(本実施形態では4つ)の貫通孔74が形成されている。
【0063】
誘電体係止部73の外方には、後外導体75の前外導体圧着部76が圧着している。前外導体圧着部76が誘電体係止部73に圧着した状態で、貫通孔74、及び位置決め凹部71に対応する位置には、内方に突出する位置決め凸部77が形成されている。位置決め凸部77は、後外導体75の前端縁を内方に折り曲げて形成されている。位置決め凸部77は、前外導体圧着部76が誘電体係止部73の外方から圧着した状態で、貫通孔74、及び位置決め凹部71に対応する位置に、誘電体70の径方向について内方に突出して形成されている。
【0064】
前外導体圧着部76が前外導体72の外周に圧着した状態で、誘電体係止部73のうち前外導体圧着部76に圧着された部分には、前外導体圧着部76に向かって突出する複数(本実施形態では4つ)の接続突部78が設けられている。4つの接続突部78は、誘電体係止部73の周方向について間隔を空けて、且つ、貫通孔74とは異なる位置に設けられている。前外導体圧着部76が前外導体72の誘電体係止部73に圧着した状態で、接続突部78は前外導体圧着部76の内面に内方から当接している。これにより、後外導体75と前外導体72とが、確実に電気的に接続される。これにより、後外導体75と前外導体72との電気的な接続信頼性を向上させることができる
【0065】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0066】
<実施形態5>
次に、本明細書に開示された技術を適用した雌コネクタ構造体88に係る実施形態5について、図18から図20を参照しつつ説明する。図18に示すように、本実施形態に係る誘電体80は、フランジ81の後端部が、後方に向かうに従って縮径するように傾斜している。フランジ81の後端部の形状は、前外導体82において、前筒部38と誘電体係止部83とを連結する部分の形状と整合するように形成されている。
【0067】
図20に示すように、本実施形態に係る誘電体係止部83の後端部には、上方、及び下方に突出する係止凸部84が、誘電体係止部83の後端部を切り起こして形成されている。係止凸部84の、誘電体係止部83からの突出高さ寸法は、前外導体圧着部85の厚さ寸法よりも大きく設定されている。
【0068】
前外導体圧着部85には、前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部84に対応する位置に、前外導体圧着部85を貫通する係止凹部86が形成されている。係止凹部86の内形状は、係止凸部84の外形状と同じか、やや大きく設定されている。前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部84が係止凹部86内に嵌入するようになっている。
【0069】
上記の構成によれば、係止凸部84と係止凹部86とが、前後方向、及び左右方向について互いに係止することにより、前外導体82と、後外導体87との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0070】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
<実施形態6>
次に、本明細書に開示された技術に係る実施形態6について、図21から図22を参照しつつ説明する。図22に示すように、本実施形態に係る誘電体係止部83の後端部寄りの位置には、上方、及び下方に突出する係止凸部90が、誘電体係止部83を、上方、及び下方に叩き出すことにより形成されている。係止凸部90の、誘電体係止部83からの突出寸法は、前外導体圧着部85の厚さ寸法と実質的に同じに設定されている。
【0072】
図21に示すように、係止凸部90は、左右方向に細長く延びると共に、誘電体係止部83の径方向について外方に突出して形成されている。
【0073】
前外導体圧着部85には、前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部90に対応する位置に、前外導体圧着部85を貫通する係止凹部91が形成されている。係止凹部91の内形状は、係止凸部90の外形状と同じか、やや大きく設定されている。前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部90が係止凹部91内に嵌入するようになっている。
【0074】
上記の構成によれば、係止凸部90と係止凹部91とが、前後方向、及び左右方向について互いに係止することにより、前外導体82と、後外導体87との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0075】
上記以外の構成については、実施形態5と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
<実施形態7>
次に、本明細書に開示された技術に係る実施形態7について、図23から図24を参照しつつ説明する。図24に示すように、本実施形態に係る誘電体係止部83の後端部寄りの位置には、上方、及び下方に突出する係止凸部92が、誘電体係止部83の後端部を、前方に折り返すことにより形成されている。係止凸部92の、誘電体係止部83からの突出高さ寸法は、前外導体圧着部85の厚さ寸法と実質的に同じに設定されている。
【0077】
図23に示すように、係止凸部92は、左右方向に細長く延びると共に、誘電体係止部83の径方向について外方に突出して形成されている。
【0078】
前外導体圧着部85には、前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部92に対応する位置に、前外導体圧着部を85貫通する係止凹部93が形成されている。係止凹部93の内形状は、係止凸部92の外形状と同じか、やや大きく設定されている。前外導体圧着部85が誘電体係止部83に圧着した状態で、係止凸部92が係止凹部93内に嵌入するようになっている。
【0079】
上記の構成によれば、係止凸部92と係止凹部93とが、前後方向、及び左右方向について互いに係止することにより、前外導体82と、後外導体87との相対的な位置決め精度を向上させることができる。
【0080】
上記以外の構成については、実施形態5と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0081】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0082】
(1)シールド電線は、3本以上の被覆電線を有する構成としてもよい。
【0083】
(2)シールド層は編組線14に限られず、金属箔、又は、樹脂テープに金属箔が貼着されたもの等、任意の材料を適宜に選択することができる。
【0084】
(3)シース15は省略してもよい。
【0085】
(4)シース15を皮剥ぎして露出させた編組線14は、シース15の端末に折り返さなくてもよい。
【0086】
(5)編組線14の外周にシールド圧着部35が外嵌された状態で、後外導体33と別体に形成された圧着部材が、シールド圧着部の外方からシールド圧着部に圧着することにより、編組線14とシールド圧着部35とが電気的に接続される構成としてもよい。
【0087】
(6)コネクタ構造体は、雄端子を備えた雄コネクタ構造体としてもよい。
【0088】
(7)前外導体圧着部の内面に、誘電体係止部に向かって突出する接続突部が設けられる構成としてもよい。
【0089】
(8)実施形態5から実施形態7において、前外導体圧着部に内方に突出する係止凸部が設けられ、誘電体係止部に、係止凸部が嵌入する係止凹部が設けられる構成としてもよい。また、係止凹部と係止凸部の個数は、それぞれ、1つでもよく、また、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0090】
10,50,60:雌コネクタ構造体(コネクタ構造体の一例)
11:シールド電線
13:被覆電線
14:編組線(シールド部の一例)
16:芯線
17:絶縁被覆
18:雌端子(内導体の一例)
19,51,61,70,80:誘電体
22:ワイヤーバレル(芯線接続部の一例)
23:接続筒部(接続部の一例)
28,81:フランジ(抜け止め部の一例)
33,52,67,75,87:後外導体
34,55,64,72,82:前外導体
35,53:シールド圧着部
37,54,68,76,85前外導体圧着部
38,56:前筒部
39,57,65,73,83:誘電体係止部
78:接続突部
84,90,92:係止凸部
86,91,93:係止凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図24