(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】高アスペクト比を有するシート状シリケート薄層
(51)【国際特許分類】
C01B 33/38 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
C01B33/38
(21)【出願番号】P 2019561361
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2018052255
(87)【国際公開番号】W WO2018153621
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-09-30
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カロ フセイン
(72)【発明者】
【氏名】ブロイ ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテーター マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ダーブ マティアス
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-295414(JP,A)
【文献】特開昭64-042317(JP,A)
【文献】特表2013-517215(JP,A)
【文献】特開平08-259846(JP,A)
【文献】特表2009-541186(JP,A)
【文献】特開平01-128809(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032380(WO,A1)
【文献】STOETER, M. et al.,Langmuir,米国,2013年,Vol.29,pp.1280-1285
【文献】STOETER, M. et al.,Annual Review of Materials Research,米国,2015年,Vol.45,pp.129-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 ー 39/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離することによって、シート状シリケート薄層を製造する方法であって、少なくとも
(i)2:1のシート状シリケート(A)を、水と、アルキルアンモニウム塩を含む1~4個の炭素原子を有するモノアルコールとの溶媒混合物を用いて処理することによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを調製するステップであって、2:1のシート状シリケート(A)が、0.56p.f.u.~0.90p.f.u.のLagaly層電荷を有し、前記
Lagaly層電荷は、種々のn-アルキル鎖長を有するn-アルキルアンモニウ
ムの挿入および得られた面間間隔の測定によって実験的に決定でき、中間層が、ナトリウムカチオンを少なくとも交互に有するステップと、
(ii)アルキルアンモニウム塩の溶媒混合物から規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを分離するステップと、
(iii)規則性を有する混合層を有し、(ii)下で分離された2:1のシート状シリケートを、水中に入れることによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離して、シート状シリケート薄層を含む水性分散物を生成するステップと、
(iv)(iii)下で調製された分散物からシート状シリケート薄層を分離するステップを含む、シート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項2】
前記シート状シリケート薄層が、少なくとも10000の平均アスペクト比を有する、請求項
1に記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項3】
(i)において使用されるアルキルアンモニウム塩が、アルキル鎖中に2~8個の炭素原子を有する、請求項
1又は2に記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項4】
(i)において使用される前記溶媒混合物中のアルキルアンモニウム塩の濃度が、0.5~100.0mmol/Lである、請求項
1~3の何れかに記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項5】
水およびエタノールの溶媒混合物が、(i)において使用される、請求項
1~4の何れかに記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項6】
2:1のシート状シリケート(A)が、融解合成によって調製された2:1のシート状シリケートである、請求項
1~5の何れかに記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項7】
2:1のシート状シリケート(A)が、天然に存在する2:1のシート状シリケートであるか、または天然に存在する2:1のシート状シリケートを、アルカリ金属塩の水溶液を用いて処理することによって調製され、アルカリ金属塩のアルカリ金属カチオンが、Na
+である、請求項
1~6の何れかに記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【請求項8】
平均アスペクト比が、DIN13320(ステータス:2009)に従う静的光散乱(SLS)を使用して決定されている、請求項
1~7の何れかに記載のシート状シリケート薄層を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比を有する2:1のシート状シリケートのシート状シリケート薄層、これらのシート状シリケート薄層を製造する方法およびシート状シリケート薄層を含む水性分散物に関する。本発明はさらに、複合材料を製造するための本発明のシート状シリケート薄層の使用およびまたより詳しくは、拡散障壁として、または難燃剤として使用するための、シート状シリケート薄層を含む、またはそれを使用して得ることができる対応する複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、複合材料は、得られた複合材料の機械的特性を改善するために、これらの複合材料をシート状シリケートと混合することによって製造されることがわかっている。成功はまた、複合システムの実際の障壁特性の改善においてこのようにして達成される。
【0003】
特性の改善の程度は、使用されるシート状シリケートのアスペクト比に決定的に左右されることが明らかになった。アスペクト比という概念は、極めて一般的には、プレートレットの平均径とプレートレットの高さの商を指す。ここで、個々の薄層のアスペクト比と、2:1のシート状シリケートの剥離したまたは層剥離したサンプルの平均アスペクト比を基本的に区別することが必要である。個々の薄層のアスペクト比は、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して決定できる。しかし、アスペクト比に対応して決定される値は、剥離したまたは層剥離した2:1のシート状シリケートの全サンプルを代表するものではなく、本発明は、剥離したまたは層剥離した2:1のシート状シリケートの平均アスペクト比と呼ばれるものを使用する。剥離したまたは層剥離した2:1のシート状シリケートの平均アスペクト比は、静的光散乱(SLS)を使用して決定される。
【0004】
基本的なルールは、アスペクト比が高いほど、例えば、シート状シリケートを含む複合材料の障壁特性が良好であるということである。
【0005】
一般に言えば、シート状シリケートは、数ナノメートルから最大2、3ミリメートルの範囲の高さを有する紡錘体として知られるシリケート薄層のスタックを含む。プレートレット径は、シート状シリケートの場合には、その組成および起源に応じて、数ナノメートルから最大数センチメートルに達する。
【0006】
シート状シリケートのアスペクト比は、そのスタッキング軸に沿った紡錘体の切除を介する、化学的および/または物理的処置によって特定の範囲内で増大できることがわかっている。このプロセスは、文献では、剥離として知られている。例えば、極性溶媒中に膨潤可能なシート状シリケートを入れることによって達成することができる。
【0007】
極端なアスペクト比を有するシート状シリケートを製造するための基本的な必要条件は、それらがプレートレットまたは紡錘体の比較的に大きな横方向の広がりを示すことである。横方向の広がりは、原則として層電荷とともに上昇する。しかし、シート状シリケートの層電荷が上がるにつれ、これらのシート状シリケートが、極性溶媒中に入れられた時にもはや剥離しないという問題が生じる。文献では、水中のシート状シリケートは、≦0.55p.f.u.(式単位あたり)の層電荷までしか剥離しないということが一般的に知られている(非特許文献1を参照のこと)。
【0008】
この制限および極端なアスペクト比を有するシート状シリケートを製造するための要求を考慮して、このような高い層電荷を有するシート状シリケートでさえの剥離を、または層剥離、すなわち、個々の薄層への開裂を引き起こすことでさえも実施するように試みてきた先行技術には、いくつかの方法が存在する。
【0009】
例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3には、剥離した2:1のシート状シリケートを含む水性分散物を製造する方法が記載されている。これらの明細書では、剥離と層剥離の概念間の区別はなされておらず、結果として、これらの用語は、それらでは同義的に間違って使用されている。これらの明細書の開示内容を考慮して、それらでは剥離のみが起こると推定できる。これらの明細書における方法のすべてに共通する特徴は、使用される2:1のシート状シリケートが、水和の高いエンタルピーを有し、その結果、カチオン性層の膨潤につながるカチオンとの1つ以上のイオン交換反応に付されるということである。これらの明細書は、対応する交換反応および膨潤ステップを実施するが、材料は、水中で剥離せず、代わりに、少なくとも部分的な剥離を引き起こすためには外部剪断力のさらなる作用も同様に常に必要である。剥離は、そこに記載される方法を用いて引き起こすことができるが、外部剪断力の必須作用は、膨潤した2:1のシート状シリケートには有害であり、例えば、紡錘体の破壊を開始する場合があるという結果を伴う。したがって、これらの方法は、極端なアスペクト比を有する材料を製造するのに適していない。
【0010】
特許文献4は、対照的に、高アスペクト比を有するシート状シリケートプレートレットを製造する方法を記載することを目的としている。方法は、A)0.8から1.0の間の層電荷を有する式[Mn/Valence]inter[MI
mMII
o]oct[MIII
4]tetX10Y2の合成スメクタイトの製造およびB)シート状シリケートプレートレットを形成するための、ステップA)から得られた合成スメクタイトの剥離または層剥離を含む。その明細書の8頁に記載されるように、ステップB)は、合成スメクタイトを極性溶媒中に、好ましくは、水中に入れることによって実施される。極性溶媒中に入れる目的は、スメクタイトに浸透性膨潤を起こさせ、その結果、剥離または層剥離をもたらすためである。極めて高い層電荷にもかかわらず、剥離のために化学的または物理的処置は、推定上必要ではなく(8頁、14/15行を参照のこと)、従って、この特許明細書の教示は、理論上算出された層電荷>0.55p.f.u.を有する2:1のシート状シリケートは、極性溶媒中に入れられた時に剥離しないという一般に認められた意見に反する。唯一の例は、リチウムヘクトライトを用いる方法を説明している。
【0011】
非特許文献2による論文は、ヘクトライトの層剥離に取り組んでいる。その刊行物中の
図3から、0.6のLagaly層電荷を有するナトリウムヘクトライトは、層剥離しないことは明らかである。したがって、特許文献4に記載される方法を用いた場合、少なくとも、ナトリウムシート状シリケートの薄層への層剥離は達成され得ないと推定できる。
【0012】
したがって、先行技術には、2:1のシート状シリケートが紡錘体に開裂され得る方法のみが記載されている。剥離によって、これらの紡錘体のアスペクト比を増大することが可能である。しかし、剥離は、外部剪断力の作用を必要とするので、アスペクト比は、紡錘体の破壊によって順に悪影響を受ける。特に、極端なアスペクト比および0.55p.f.u.を超える理論上算出される層電荷を有する任意のシート状シリケート薄層は、先行技術からは知られていない。用語「シート状シリケート薄層」は、本発明の目的上、紡錘体と呼ばれる2以上のプレートレットのスタックとは対照的に、個々のプレートレットを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,608,303号
【文献】米国特許第3,325,340号
【文献】欧州特許第0282928号
【文献】国際公開第2011/089089号
【非特許文献】
【0014】
【文献】K.Jasmund、G.Lagaly、Tonminerale und Tone、Struktur、Eigenschaften、Anwendungen und Einsatz in Industrie und Umwelt、Steinkopff、Darmstadt 1993年
【文献】Langmuir 2017年(33巻)、4816~4822頁中、Breuら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、先行技術の背景に対して、極端に高いアスペクト比を有するシート状シリケート薄層を提供できる必要性が引き続き存在する。これらのシート状シリケート薄層は、より詳しくは、中でも、複合材料の障壁特性および難燃特性を改善するために複合材料中に組み込まれ得るのに適したものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題は、特許請求の範囲において同定される主題によって、また本明細書において以下の記載において開示されるその主題における好ましい実施形態によって解決される。
【0017】
したがって、本発明の第1の主題は、水中で、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離することによって得ることができるシート状シリケート薄層であって、層剥離することが、少なくとも
(i)2:1のシート状シリケート(A)を、水と、アルキルアンモニウム塩を含む1~4個の炭素原子を有するモノアルコールとの溶媒混合物を用いて処理することによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを調製するステップであって、2:1のシート状シリケート(A)が、0.56p.f.u.~0.90p.f.u.のLagaly層電荷を有し、中間層が、ナトリウムカチオンを少なくとも交互に有するステップと、
(ii)アルキルアンモニウム塩の溶媒混合物から規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを分離するステップと、
(iii)規則性を有する混合層を有し、(ii)下で分離された2:1のシート状シリケートを、水中に入れることによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離して、シート状シリケート薄層を含む水性分散物を生成するステップと、
(iv)(iii)下で調製された分散物からシート状シリケート薄層を分離するステップと
を含み、
シート状シリケート薄層が、少なくとも10000の平均アスペクト比を有することを特徴とする、シート状シリケート薄層である。
【0018】
本発明のさらなる主題は、少なくとも10000~50000の平均アスペクト比および0.56p.f.u.~0.90p.f.u.のLagaly層電荷を有する2:1のシート状シリケートのシート状シリケート薄層である。
【0019】
水中で、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離することによって得ることができる新規シート状シリケート薄層ならびに少なくとも10000~50000の平均アスペクト比および0.56p.f.u.~0.90p.f.u.の理論上の層電荷を有する2:1のシート状シリケートのシート状シリケート薄層も、本発明のシート状シリケート薄層と呼ばれる。
【0020】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートはまた、本発明に関連して、2:1のシート状シリケート(IS)とも呼ばれる。
【0021】
同様に、本発明の主題は、水中で、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離することによって本発明のシート状シリケート薄層を製造する方法であって、層剥離することが、少なくとも
(i)2:1のシート状シリケート(A)を、水と、アルキルアンモニウム塩を含む1~4個の炭素原子を有するモノアルコールとの溶媒混合物を用いて処理することによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを調製するステップであって、2:1のシート状シリケート(A)が、0.56p.f.u.~0.90p.f.u.のLagaly層電荷を有し、中間層が、ナトリウムカチオンを少なくとも交互に有するステップと、
(ii)アルキルアンモニウム塩の溶媒混合物から規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを分離するステップと、
(iii)規則性を有する混合層を有し、(ii)下で分離された2:1のシート状シリケートを、水中に入れることによって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを層剥離して、シート状シリケート薄層を含む水性分散物を生成するステップと、
(iv)(iii)下で調製された分散物からシート状シリケート薄層を分離するステップと
を含む、方法である。
【0022】
本発明のさらなる主題は、本発明のシート状シリケート薄層を含む水性分散物である。複合材料を製造するための本発明のシート状シリケート薄層の使用は、本発明のさらなる主題である。また、本発明のシート状シリケート薄層を含む対応する複合材料および拡散障壁として、または難燃剤として使用するためのこれらの複合材料も、本発明によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】2:1のシート状シリケートの対応する構造を示す図。
【
図6】2:1のシート状シリケートは、水に入れた結果を示す写真。
【
図7】通常の薄層の顕微鏡写真(AおよびC)およびその高さプロフィール(BおよびD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
包括的説明
まず第1に、本発明に関連して使用されるいくつかの用語を説明する。
ある特定の特徴的な変数を決定するために本発明に関連して使用されるべき測定方法は、実施例の節から明らかである。別の場所に明確に示されない限り、これらは、特定の特徴的な変数を決定するために使用されるべき測定方法である。
【0025】
シート状シリケートの概念は、当業者ならば精通している。シート状シリケートは、フィロシリケートまたは層状シリケートとしても知られ、その層状の構成によって区別されるプレートレットのような鉱物である。これらの鉱物は、四面体層Tおよび八面体層Oから構成される多様なポリアニオン性薄層を含む。ポリアニオン性薄層の構成に応じて、1:1のシート状シリケートと、2:1のシート状シリケート間の極めて一般的な区別が行われる。1:1のシート状シリケートのポリアニオン性薄層は、1つの四面体層および1つの八面体層から構成されるのに対し、2:1のシート状シリケートのポリアニオン性層は、2つの四面体層および1つの八面体層から形成され、2つの四面体層は、八面体層と、その中央で近接している。2:1のシート状シリケートの対応する構造は、
図1に表わされている。
【0026】
2:1のシート状シリケートの薄層の概念は、従って、本発明に関連して、四面体層、八面体層および四面体層の順序からなる正確に1つのポリアニオン性層を指し、これらの層は、本明細書において以下に記載されるように構築され、互いにつなげられている。シート状シリケートの構造では、2つの薄層が、中間層と呼ばれるものを介して互いに接合され、これでは、電荷補償のために種々のカチオンが挿入されている。
【0027】
複数の薄層のスタックが、
図1の左側に表されている。シート状シリケートは、一般に、積み重ねられ、互いに固定された位相関係を伴わない。3次元での対称性の並進がないことを考慮して、このようなスタックを、結晶と呼ぶことはできず、代わりに、用語「紡錘体」が確立されるようになった。この用語は、本発明において対応して使用される。
【0028】
シート状シリケートの四面体層は、基本酸素原子を介して三重に角がつながっているSiO4
4-およびAlO4
5-単位からなる。各基本O2-は、Si4+-Si4+またはSi4+-Al3+カチオン対を接続する。八面体層のカチオンは、通常、Mg2+および/またはAl3+であるが、Ni2+、Cr3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Zn2+、Ti4+、V3+、Li+、Co2+およびMn2+によるこれらのカチオンの置換もあり得る。八面体層には、これらのカチオンに配位された4つの共通酸素原子および2つのさらなるヒドロキシル基および/またはフッ化物原子がある。四面体層は、共通アニオン面を介して八面体層に接続される。
【0029】
2:1のシート状シリケートの結晶化度は、普通、通例は通常の回折技術による、原子分解能を用いる構造解明を可能にするようなものである。単結晶X線回折または粉体回折を使用することは、本明細書では通常である。
【0030】
2:1のシート状シリケートの式単位あたりのアニオン構造は、O10X2(式中、Xは、OH-またはF-である)から構成され、そのためこのアニオン構造は、式単位あたり合計22の負電荷を決定する。しかし、これらの負電荷は、八面体の、および2つの四面体のカチオンによって部分的にしか補償されない。式単位当たりの(p.f.u.と略される)電荷の相違は、層電荷と呼ばれる。2:1のシート状シリケートの電荷中性は、2つのポリアニオン性薄層の間に挿入されている中間層カチオンと呼ばれるものによって確実にされる。
【0031】
例えば、X線回折によって決定され得るような、2:1のシート状シリケート中のカチオンの公知の分布を考えると、アニオン構造の電荷に基づいて、層電荷を算出することが可能である。本明細書において、式単位あたりの八面体部位上および四面体部位上のカチオンの正電荷の合計は、アニオン構造の22の負電荷から差し引かれる。例えば、組成Na0.65[Mg2.4Li0.55□]Si4O10F2の2:1のシート状シリケートについて、八面体に由来する、および2つの四面体に由来するカチオンの、正電荷は、21.35である。22の負電荷と21.35の正電荷の間の差は、0.65の理論的層電荷をもたらす。
【0032】
2:1のシート状シリケートのアニオン構造およびその電荷は、予め決定されているという事実を考慮して、層電荷は、八面体および四面体中のカチオンの性質によって決定される。したがって、2:1のシート状シリケートの層電荷の増大のために、2:1のシート状シリケートの合成において低電荷のカチオンが使用されることが好ましい。
【0033】
特に、2:1のシート状シリケートの2つの薄層の間の中間層間隔を決定する、これらの中間層カチオンの分布密度および性質は、薄層間相互作用に対して実質的な影響を有する。当業者ならば、2:1のシート状シリケートの中間層カチオンは、交換反応においてその他のカチオンによって置換され得るということは承知している。中間層中のカチオンのこの交換可能性によって、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートの製造が可能となる。
【0034】
2:1のシート状シリケートの原子組成および関連層電荷は、2:1のシート状シリケートおよび/またはその薄層の巨視的特性に関与している。この関連で特に関連するものは、紡錘体または薄層の平均直径および高さの商として定義される平均アスペクト比と呼ばれる。本発明に関連して、紡錘体および薄層間は区別されるので、紡錘体の、および薄層のアスペクト比間を区別することも必要である。本発明が、平均アスペクト比を指す場合には、これが意味することは、本発明のシート状シリケート薄層との関連での平均アスペクト比である。
【0035】
剥離したまたは層剥離した2:1のシート状シリケートの平均アスペクト比は、DIN13320(ステータス:2009)に従って静的光散乱(SLS)を使用して決定される。
【0036】
種々の操作によってアスペクト比を増大または低減することが可能である。原則として、アスペクト比は、いくつかの一次紡錘体を癒合して、偽紡錘体を形成することによって、または紡錘体または薄層を破壊することによって低減される。逆に、アスペクト比は、紡錘体の剥離によって、または層剥離によって改善される。文献では、不正確なことに、剥離のおよび層剥離の概念がそれぞれ、同義語として使用されることがある。正しい使用では、用語「剥離」は、紡錘体のより薄い紡錘体への開裂を表す。他方、用語「層剥離」は、紡錘体の個々の薄層への開裂を説明する。本発明の目的上、2つの用語、剥離および層剥離間は区別され、上記で説明された定義は妥当である。
【0037】
規則性を有する混合層の概念は、技術文献から公知であり(Stoterら、Chem.Mater.2014年、第26巻、5412~5419頁を参照のこと)、2:1のフィロシリケートの中間層空間の統計的に交互のカチオン占有の発生を説明している。言い換えれば、これは、統計平均で、どの第2の中間層も、同一種類の中間層カチオンを有し、好ましくは、それぞれの中間層は、1種類のみのカチオンを有することを意味する。例として、簡単に言うと、これは、第1の中間層がナトリウムカチオンのみを含有することを意味する。次の中間層では、次いで、順に、例えば、n-ブチルアンモニウムカチオンなどの異なる種類のカチオンが存在する。次いで、次の中間層は、第1の中間層と再度同一であり、第4の中間層は、第2のものと同一である。上記の考察は、例示目的で簡略された考察である。2:1のシート状シリケートが高度に複雑な構成の材料であるので、欠陥が生じる場合があり、そのため混合層はまた、対応する構造が統計平均で存在する場合に規則性を有するといわれる。混合層の相の存在は、超構造反映の出現によって粉体ディフラクトグラムにおいて眼に見える。これは、完全に交換された相の合計面間間隔に対応するd値を有する。説明のために、これが模式的に再現されている
図2を参照のこと。両層が交互であることの品質は、00lシリーズから平均がとられた超構造の中間層間隔およびその変動の係数によって決定される。後者が0.75%未満である場合には、規則を有する交互層が存在するといわれてもよく、次いで、00lシリーズはと合理的と同定され、ブラッグの法則に従う(S.W.Bailey、Amer. Mineral.1982年、第67巻、394~398頁を参照のこと)。
【0038】
当業者ならば、2:1のシート状シリケートの膨張挙動は、中間層カチオンの性質およびその水和のエンタルピーに、ならびにまた、層電荷、温度、圧力および電解質バックグラウンドに応じて変わることを承知している。シリケート薄層間の競合する引力(例えば、薄層と中間層カチオンの間のクーロン引力、ファンデルワールス力)および反発力(例えば、薄層の互いとのクーロン反発力)のために、異なる膨張挙動がある場合もあり、これは、原則として2つの領域に細分され得る。
【0039】
第1の領域では、規定数の水層が、中間層空間中に収容され、これは、漸増水和によって結晶性膨張とも呼ばれる。2:1のシート状シリケートは、普通、1つの水層を有する、および2つの水層を有する構造を形成可能である。2:1のシート状シリケートが、高エンタルピーの水和を有する中間層カチオン、例えば、Li+またはMg2+を含む場合には、例えば、3つの水層を有する構造が形成されることも可能である。膨張が、個別の水層の形成を越えて進行する場合には、これは浸透性膨張と呼ばれる。完全な浸透性膨張を起こす2:1のシート状シリケートは、薄層に層剥離し得る。
【0040】
2:1のシート状シリケートのシート状シリケート薄層
本発明のシート状シリケート薄層は、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートの層剥離によって得ることができる。対応するシート状シリケート薄層は、少なくとも10000の、好ましくは、少なくとも12000の、より好ましくは、少なくとも15000の、より好ましくはさらに、20000の平均アスペクト比を有する。平均アスペクト比は、好ましくは、少なくとも10000~50000の範囲に、より好ましくは、少なくとも12000~50000の範囲に、より好ましくは、少なくとも15000~50000の範囲に、さらにより好ましくは、少なくとも20000~50000の範囲にある。
【0041】
さらに、シート状シリケート薄層が、少なくとも0.56p.f.u~多くとも0.9p.f.u.のLagaly層電荷を有するということは、本発明にとって必須である。シート状シリケート薄層は、好ましくは、少なくとも0.56p.f.uの、少なくとも0.58p.f.u.の、少なくとも0.60p.f.u.の、少なくとも0.62p.f.u.の、少なくとも0.64p.f.u.の、少なくとも0.65p.f.u.の、多くとも0.90の、多くとも0.85p.f.u.の、多くとも0.80p.f.u.の、多くとも0.75p.f.u.の、多くとも0.70p.f.u.の、多くとも0.68p.f.u.の、多くとも多くとも0.65p.f.u.のLagaly層電荷を有する。シート状シリケート薄層のLagaly層電荷が、少なくとも0.56p.f.u.~多くとも0.80p.f.u.の範囲に、より好ましくは、少なくとも0.56p.f.u~多くとも0.75p.f.u.の範囲に、より好ましくは、少なくとも0.56p.f.u.~多くとも0.70p.f.u.の範囲に、より好ましくは、0.56p.f.u.~多くとも0.65p.f.u.の範囲にあることが特に好ましい。
【0042】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを製造するために、2:1のシート状シリケート(A)を、水と、1~4個の炭素原子を有し、アルキルアンモニウム塩を含むモノアルコールとの溶媒混合物を用いて処理する。
【0043】
2:1のシート状シリケート(A)は、少なくとも0.56p.f.uから多くとも0.9p.f.uのLagaly層電荷を有する。好ましくは、2:1のシート状シリケート(A)は、少なくとも0.56p.f.uの、少なくとも0.58p.f.u.の、少なくとも0.60p.f.u.の、少なくとも0.62p.f.u.の、少なくとも0.64p.f.u.の、少なくとも0.65p.f.u.の、多くとも0.90の、多くとも0.85p.f.u.の、多くとも0.80p.f.u.の、多くとも0.75p.f.u.の、多くとも0.70p.f.u.の、多くとも0.68p.f.u.の、多くとも多くとも0.65p.f.u.のLagaly層電荷を有する。シート状シリケート薄層のLagaly層電荷が、少なくとも0.56p.f.u.~多くとも0.80p.f.u.の範囲に、より好ましくは、少なくとも0.56p.f.u~多くとも0.75p.f.u.の範囲に、より好ましくは、少なくとも0.56p.f.u.~多くとも0.70p.f.u.の範囲に、より好ましくは、0.56p.f.u.~多くとも0.65p.f.u.の範囲にあることが特に好ましい。
【0044】
さらに、2:1のシート状シリケート(A)の構造は、中間層が、少なくとも交互にナトリウムカチオンを有するようなものである。
【0045】
出発材料として使用される2:1のシート状シリケート(A)は、好ましくは、融解合成によって製造された2:1のシート状シリケートである。
【0046】
融解合成によって製造された2:1のシート状シリケートは、通例は、高純度で製造され得るという利点を有する。しかし、不利点は、合成のための時間的な長さおよび装置の複雑性であり、また関連する高コストもある。融解合成を用いると、塩、酸化物またはガラスなどの所望の金属の化合物を、例えば、化学量論比で、開放または閉鎖るつぼシステムで加熱して、均一な融解物を形成し、その後、再度冷却する。
【0047】
融解合成は、好ましくは、閉鎖るつぼシステムにおいて実施する。閉鎖るつぼシステムにおける合成の場合には、使用される出発化合物は、アルカリ金属塩/アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素および酸化アルミニウム、好ましくは、二成分アルカリ金属フッ化物/アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ土類金属酸化物および酸化ケイ素、より好ましくは、LiF、NaF、MgF2、MgOおよび石英であり得る。
【0048】
るつぼの充填は、より揮発性の物質が最初に秤量されるようなものであることが好ましい。通常、化学的に不活性の、または反応が遅い金属、好ましくは、モリブデンまたは白金でできている高融点るつぼが使用される。
【0049】
充填後、依然として開放しているるつぼを、閉鎖する前に、減圧下、200℃から1100℃の間、好ましくは、400から900℃の間の温度で焼成して、残存する水および揮発性不純物を除去する。実験用語では、手順は、好ましくは、るつぼの上端を赤く輝くまで加熱し、一方で下側るつぼ領域が低温を有するようなものである。
【0050】
予備的合成を、任意選択で、るつぼ中で、後者に、耐圧性に優れた閉鎖が提供された後、1700~1900℃で、より好ましくは、1750~1850℃で、5~20分実施して、反応混合物を均質化する。焼成およびまた予備的合成は、通常、高周波誘導炉において実施する。この場合には、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)、減圧または両手段の組合せによって、るつぼを酸化から保護する。主な合成は、材料に適応している温度プログラムを用いて実施する。この合成ステップは、好ましくは、回転軸の水平整列化を有するグラファイト回転式チューブ炉において実施する。第1の加熱ステップでは、温度を1~50℃/分の、好ましくは、10~20℃/分の加熱速度で、室温から1600~1900℃へ、好ましくは、1700~1800℃へ増大する。第2のステップでは、加熱は、1600~1900℃で、好ましくは、1700~1800℃で起こる。第2のステップの加熱相は、好ましくは、10~240分、より好ましくは、30~120分持続する。第3のステップでは、温度を、10~100℃/分の、好ましくは、30~80℃/分の冷却速度で、1100~1500℃の、好ましくは、1200~1400℃のレベルに低下させる。第4のステップでは、温度を、0.5~30℃/分の、好ましくは、1~20℃/分の冷却速度を用いて、1200~900℃の、好ましくは、1100~1000℃のレベルに低下させる。第4のステップ後、室温(23℃)への加熱速度の低減は、好ましくは、炉のスイッチを切ることによって、例えば、0.1~100℃/分の速度を用いて、制御を行わずに起こる。
【0051】
例えば、ArまたはN2などの不活性ガス下で操作することは通常である。融解合成によって製造された2:1のシート状シリケート(A)は、るつぼを破壊して開けた後に結晶性固体として得られる。
【0052】
合成後、2:1のシート状シリケート(A)を、好ましくは、サンプルの均質性を増大するために再度加熱する。この場合には、800~1150℃の範囲の温度を使用することが通常である。より好ましくは、加熱は、融解合成によって製造された2:1のシート状シリケート(A)の融点よりも100℃低い温度で起こる。
【0053】
開放るつぼシステムにおいて融解合成を実施することも可能である。開放るつぼシステムにおける合成の場合には、一般組成wSiO2・xMayMb-zMc(式中、5<w<7、0<x<4、0<y<2、0<z<1.5ならびにMa、MbおよびMcは、金属酸化物であり、Maは、Mcとは異なるMbとは異なる。Ma、MbおよびMcは、互いに独立に、金属酸化物、好ましくは、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、MgO、より好ましくは、Li2O、Na2O、MgOであり得る。Maは、Mcとは異なるMbとは異なる)のガラス段階を使用することが好ましい。
【0054】
所望の化学量論におけるガラス段階は、所望の塩、好ましくは、炭酸塩、より好ましくは、Na2CO3から、またケイ素供給源、例えば、酸化ケイ素、好ましくは、シリカなどから製造される。粉体成分は、加熱および急速冷却によってガラス様状態に変換される。変換は、好ましくは、900~1500℃で、より好ましくは、1000~1300℃で実施する。ガラス段階の製造における加熱相は、10~360分、好ましくは、30~120分、より好ましくは、40~90分持続する。この操作は、通常、高周波誘導加熱によって、不活性雰囲気および/または減圧下、ガラスカーボンるつぼ中で実施される。室温への温度の低減は、オーブンのスイッチが切られることによって達成される。得られたガラス段階を微粉砕し、これは、例えば、パウダーミルを使用して行うことができる。
【0055】
ガラス段階を、さらなる反応パートナーと、10:1~1:10の重量比で混合する。5:1~1:5が好ましい。これらのパートナーの例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物および/またはケイ素化合物がある。軽アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属フッ化物、およびまたその炭酸塩または酸化物、およびまた酸化ケイ素を使用することが好ましい。NaF、MgF2および/またはMgCO3Mg(OH)2およびシリカのか焼混合物を使用することが特に好ましい。
【0056】
その後、混合物を、使用される化合物の共晶混合物の融点、好ましくは、900~1500℃、より好ましくは、1100~1400℃を超えて、加熱する。加熱相は、好ましくは、1~240分、より好ましくは、5~30分持続する。加熱は、50~500℃/分の加熱速度を用いて、好ましくは、炉の最大可能加熱速度を用いて実施するべきである。加熱相後の室温への冷却は、1~500℃/分の速度で、好ましくは、制御を行わずに、炉のスイッチを切ることによって行う。生成物は、結晶性、吸湿性固体として得られる。
【0057】
合成は、好ましくは、不活性雰囲気下でガラスカーボンるつぼにおいて実施する。加熱は、通常、高周波誘導によって達成する。
【0058】
融解合成によって製造された2:1のシート状シリケート(A)に加えて、市販の出発材料を使用することも可能である。これらは、例えば、CO-OP Chemical Companyから商標Somasifのもとで、またはByk Chemie GmbHから商標ラポナイトの下で入手可能である。
【0059】
しかし、2:1のシート状シリケート(A)が、天然に存在するシート状シリケートである、すなわち、天然の2:1のシート状シリケート(A)が、その天然に存在する形態中の層形成および中間層の占有に関して条件を満たすことも可能である。しかし、このような天然の2:1のシート状シリケートには、めったに遭遇しない。
【0060】
したがって、少なくとも0.56の層電荷を有する天然に存在する2:1のシート状シリケートを、天然に存在するシート状シリケートの中間層のカチオンをナトリウムカチオンによって交換するために、ナトリウム塩の水溶液を用いて処理して、本発明の意味での2:1のシート状シリケート(A)を製造することが好ましい。
【0061】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを製造するために、2:1のシート状シリケート(A)を、水と、アルキルアンモニウム塩を含む1~4個の炭素原子を有するモノアルコールとの溶媒混合物を用いて処理する。
【0062】
本発明に関連して用語「処理すること」とは、2:1のシート状シリケート(A)を、アルキルアンモニウム塩を含む溶媒混合物中に入れて、懸濁液を得ることを意味する。この懸濁液は、好ましくは、10~50℃、より好ましくは、20~35℃の温度で保存し、室温(23℃)でがさらに好ましい。保存は、好ましくは、オーバーヘッドシェーカー中で1~72時間の期間、好ましくは、8~48時間の期間行い、16~30時間の期間がさらに好ましく、懸濁液は、オーバーヘッドシェーカーを用いて連続的に動かされる。
【0063】
2:1のシート状シリケート(A)を処理するための溶媒混合物は、水と、1~4個の炭素原子を有するモノアルコールとの混合物である。交換反応の間の部分剥離を防ぐために、2:1のシート状シリケート(A)を処理するためにこのような混合物を使用することが必要である。
【0064】
溶媒混合物の好ましい混合比は、1:3(水:モノアルコール)~3:1(水:モノアルコール)の範囲、より好ましくは、1:2(水:モノアルコール)~2:1(水:モノアルコール)の範囲にある。
【0065】
挿入によって熱力学的に安定な混合層を可能にするために、使用される溶媒混合物が、部分交換の間の平衡の確立を可能にすることが必要である。平衡の確立のために、関与するイオンの種類のすべてが、溶媒混合物中で可溶性でなくてはならない。このようにして、欠陥層の治癒が可能にされ、例えば、混合層を有する相をもたらす核形成が、紡錘体中の複数の層において始まり、ひいては、規則性を有する混合層の進行中の成長後に、2つの隣接する中間層空間が同一イオンで満たされる場合にこのような層が形成される。さらに、結晶内反応が動力学的に阻害されないように、溶媒における中間層空間を広げるべきである。
【0066】
モノアルコールは、1~4個の炭素原子を有する。用語「モノアルコール」とは、本発明の意味では、1つの-OH基を有する化合物を指す。モノアルコールの炭素鎖は、分岐している場合も、分岐していない場合もある。モノアルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、t-ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。モノアルコールが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0067】
水とモノアルコールの溶媒混合物中に存在するアルキルアンモニウム塩は、好ましくは、アルキル鎖中に、2~8個の炭素原子を有するアルキルアンモニウム塩である。炭素鎖は、分岐している場合も、分岐していない場合もある。アルキルアンモニウム塩の対イオンは、好ましくは、塩化物および臭化物などのハロゲン、ギ酸、メチルスルフェート、硫酸、硝酸、水酸化物、酢酸、リン酸およびそれらの混合物、より好ましくは、塩化物、臭化物、ギ酸およびメチルスルフェートからなる群から選択される。
【0068】
アルキルアンモニウム塩は、好ましくは、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、t-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、s-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、2-エチル-1-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、2-アミノヘプタン、n-オクチルアミンおよびt-オクチルアミンの塩からなる群から、より好ましくは、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブチルアミンおよびt-ブチルアミンの塩からなる群から選択される。
【0069】
溶媒混合物中のアルキルアンモニウム塩の濃度は、好ましくは、0.5~100.0mmol/L、さらに良好には、1.0~50.0mmol/L、さらに良好には、2.5~6.0、いっそうさらに良好には、3.0~4.0mmol/Lである。溶媒混合物は、好ましくは、1種類のみのアルキルアンモニウム塩を含有する。
【0070】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートを調製するために、シート状シリケート(A)の、アルキルアンモニウム塩を含む溶媒混合物を用いて処理した後、2:1のシート状シリケートをステップ(ii)においてアルキルアンモニウム塩を含む溶媒混合物から分離する。考慮される分離技術は、原則として当業者が精通するすべての固体/液体分離法、特に、溶媒の濾過、デカントまたは他に蒸発のものを含む。
【0071】
ステップ(ii)において分離された2:1のシート状シリケートを、好ましくは、水と、1~4個の炭素原子を有するモノアルコールの溶媒混合物を用いて洗浄する。溶媒混合物の組成は、好ましくは、(i)下で使用される溶媒混合物のものと同一である。洗浄プロセスは、好ましくは、1~5回、さらに良好には、2~4回反復する。この洗浄プロセス後、好ましくは、さらに1~4、さらに良好には、2~3の溶媒混合物のモノアルコール単独を用いる洗浄プロセスがある。
【0072】
ステップ(iii)では、2:1のシート状シリケート(IS)は、ステップ(ii)において事前に分離された2:1のシート状シリケート(IS)を、水中に入れることによって層剥離される。水に入れることは、中間層中のカチオンの浸透性膨張を引き起こし、そのため、層剥離がある。
【0073】
層剥離のプロセスは、通例は、制限された時間枠内で起こる。これは、層剥離が、好ましくは、60分内に、さらに良好には、30分内に、いっそうさらに良好には、15分内に起こることを意味するであろう。層剥離が、「自然層剥離」と呼ばれるものとして進行することが特に好ましい。「自然層剥離」の概念は、文献において広く普及しており、2:1のシート状シリケート(IS)が数秒から数分以内にそのシート状シリケート薄層に層剥離することを意味する。したがって、2:1のシート状シリケート(IS)が5分以内に、より好ましくは、3分以内に、より好ましくは、さらに1分以内に、極めて好ましくは、1分未満で層剥離することが特に好ましい。
【0074】
本発明に関連して2:1のシート状シリケートの層剥離は、好ましくは、2:1のシート状シリケート(IS)が水中に入れられた後に、外部剪断力の作用を伴わなくとも起こる。
【0075】
層剥離のために、2:1のシート状シリケートを水中に入れる。使用される水は、好ましくは、完全脱塩水(fully demineralized water)(FD水)であり、より好ましくは、使用される水中のカチオン濃度は、100mmol/l未満、好ましくは、5mmol/l未満である。好ましくは、有機不純物の割合は、20容積%未満、好ましくは、5容積%未満である。
【0076】
2:1のシート状シリケート(IS)の水への層剥離の結果として、本発明のシート状シリケート薄層を含む水性分散物が形成される。ステップ(iv)では、シート状シリケート薄層を、この水性分散物から分離する。考慮される分離技術は、当業者が精通するすべての固体/液体分離法、より詳しくは、溶媒の濾過、デカントまたは他に蒸発を原則として含む。
【0077】
本発明のさらなる主題は、本発明のシート状シリケート薄層を含む水性分散物である。
【0078】
本発明の水性分散物は、2:1のシート状シリケート(IS)の層剥離の中間体として得ることができる。対応する水性分散物は、2:1のシート状シリケート(IS)を水中に入れることによってステップ(iii)において得られる。しかし、さらに、本発明の水性分散物はまた、ステップ(iv)後に得られたシート状シリケート薄層を再分散させることによって得ることが可能である本発明のシート状シリケート薄層の水性分散物を含む。
【0079】
本発明のさらなる主題は、水中での規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートの層剥離によって、本発明のシート状シリケート薄層を製造する方法である。相応して使用されるべき方法ステップは、既に上記で包括的に記載されている。本発明の方法について、上記でなされた記述は、同様に当てはまる。
【0080】
使用および複合材料
さらに、複合材料を製造するための本発明のシート状シリケート薄層の使用は、本発明の主題である。
【0081】
用語「複合材料」は、当業者が精通しており、種々の材料の組合せによって得られ、その化学的および物理的特性が、個々の構成成分のものを超える材料の総称である(Rompp Chemie Lexikon、第6巻T-Z、第9増補および改訂版、Georg Thieme Verlag 1995年、4886頁を参照のこと)。複合材料の成分は、主に、金属、木材、ガラス、ポリマーおよびセラミック材料であり、これらは、ファイバー、テープ、層および粒子複合材料に加工され得る。
【0082】
本発明に関連して、本発明の複合材料は、少なくとも1種のポリマーおよびまた本発明のシート状シリケート薄層を含む。
【0083】
拡散プロセスは普遍的であり、多くの場合、商業的関連性の問題を引き起こすので、拡散障壁としての複合材料の使用は、多数の利点を具体的に提供する。
【0084】
例えば、ポリカーボネートの裏面は、酸素および水に対して透過性であり、結果として、金属製アルミニウム反射層が、連続的な酸化を受け、結果として、曇るので、CDおよびDVDの寿命は、数十年に限定される。
【0085】
包装産業ではさらなる問題が生じるが、これは、標準包装の透過性は比較的高く、そのため、障壁技術に切り替える必要があるからである。シート状シリケート薄層の極端なアスペクト比が、例えば、酸素、水素およびガス状水などのガスの拡散経路を大幅に延長し、従って、障壁特性が改善され得るので、本発明のシート状シリケート薄層の、食品産業用の包装材料および包装フィルムへの加工の結果として、したがって、食物の保持特性を増大することが可能である。
【0086】
しかし、酸素の、例えば、包装への浸透などの外部影響の作用を防ぐために、本発明のシート状シリケート薄層を、食品包装中に組み込むことだけが、適切であるのではない。本発明のシート状シリケート薄層はまた、例えば、炭酸飲料からCO2が抜けることを防ぐために、プラスチックボトルを製造するための材料中に組み込むのに適している。
【0087】
本発明のシート状シリケート薄層を含む複合材料を製造するために、それらを、重縮合、重付加、ラジカル重合、イオン重合および共重合によって製造されるすべての一般的なポリマー中に組み込むことができる。これらの種類のポリマーの例として、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエステル、ポリオレフィン、ゴム、ポリシロキサン、エチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリラクチド、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアクリロニトリル(PAN)およびポリエポキシドがある。
【0088】
複合材料を製造する目的で、本発明のシート状シリケート薄層をポリマー中に組み込むことは、当業者に公知の一般的な技術によって行ってもよい。これらとして、例えば、溶液中での混合、その場重合または融解物中での混合が挙げられる。
【0089】
本発明はまた、本発明のシート状シリケート薄層を含む対応する複合材料も包含する。本発明に従うと同定されるこれらの複合材料は、好ましくは、拡散障壁として、または難燃剤として使用される。
【実施例】
【0090】
化学物質および材料
2:1のシート状シリケート(A1)の融解合成のために、NaF(99.995%、Alfa Aesar)、LiF(>99.9%、ChemPur)、MgF2(>99.9%、ChemPur、溶融塊1~3mm)、MgO(99.95%、Alfa Aesar、溶融塊1~3mm)、MgO(99.95、Alfa Aesar、粉末)およびSiO2(Merck、微細顆粒石英、p.a.、か焼)を使用した。化学物質は、乾燥アルゴン下でグローブボックス中に保存した。モリブデンるつぼ(25mm外径、21mm内径、143mm内部高さ)は、純粋モリブデンロッドから穿孔によって製造した。るつぼをアセトンで洗浄し、超音波浴中、FD水を用いて清浄化した。最後の清浄のために、使用の前に、高真空(<1.0×10-7bar)下、1600℃で5分間加熱した。
【0091】
層電荷の実験的決定のためのn-アルキルアンモニウム溶液の調製は、HCl(32%、NORMAPUR、VWR)またはHCl(2M、Titripur、Sigma Aldrich)を用いるn-アルキルアミンの滴定によって行った。使用したアミンは、n-ブチルアミン(99.5%、Sigma Aldrich)、n-ペンチルアミン(>98%、TCI Chemicals)、n-ヘキシルアミン(99.9% Aldrich)、n-ヘプチルアミン(99.9%、Sigma Aldrich)、n-オクチルアミン(95%、Sigma Aldrich)、n-ノニルアミン(>99%、Alfa Aesar)、n-デシルアミン(95%、Sigma Aldrich)、n-ウンデシルアミン(>98%、Sigma Aldrich)およびn-ドデシルアミン(>98%、Sigma Aldrich)であった。
【0092】
使用した溶媒は、エタノール((無水、VWR)、FD水、Millipore水(18.2μS/cm)および二回蒸留水であった。特に断りのない限り、FD水を使用した。
【0093】
部分交換に使用するためのn-ブチルアミンの中和は、ギ酸(p.a.、Sigma Aldrich)を用いる標準溶液の調製によって行った。
【0094】
固体を、HCl(30重量%、Merck、SUPRAPUR)、H3PO4(85重量%、Merck、EMSURE)、HNO3(65重量%、Merck、SUPRAPUR)およびHBF4(48重量%、Sigma Aldrich)を使用して消化した。
【0095】
カチオン交換能を調べるために、[Cu(trien)]SO4を使用した。0.01M標準溶液は、CuSO4(分析用、Grusing、か焼24時間、250℃)およびトリエチレンテトラミン(>97%、Sigma Aldrich)から調製した。
【0096】
方法の説明
粉末回折法
透過幾何学
MYTHEN1K検出器およびCu-Kα1照射(λ=1.54056Å)を用いるSTOE Stadi P回折計での透過幾何学において、構造解明のために融解合成によって調製された以下に記載される2:1のシート状シリケート(A)の粉体ディフラクトグラムを記録した。ガラスキャピラリー(0.7mm、Hilgenberg、ガラス番号10)を使用することによってテクスチャ効果を最小にした。測定に先立って、サンプルを、K2CO3(43%相対湿度)およびK2SO4(98%相対湿度)の飽和溶液上のデシケーター中で4週間保存した。乾燥測定のためのサンプルを150℃で24時間乾燥させた。
【0097】
ブラッグ・ブレンターノ(Bragg-Brentano)幾何学
すべてのさらなる粉体ディフラクトグラムを、Panalytical XPERTPRO回折計でブラッグ・ブレンターノ幾何学において測定した。テクスチャサンプルを、エタノール性懸濁液からのガラススライド(Gerhard Menzel GmbH)への液滴塗布によって調製した。測定は、室温(23℃)で行った。
【0098】
湿度チャンバー
湿度チャンバー中での測定は、水分発生器(RH-200、VTI corp.)を含有するAnton Paar湿度チャンバー中でXPERTPRO回折計において実施した。測定は、10%~95%の相対湿度範囲において行った。各ステップで、反映の位置で変化が観察されなくなるまで(少なくとも90分間)サンプルを平衡化し、吸着実験の前に、測定のための構造がもっぱら水層がないものになるまで80℃で焼成した。測定は、30℃で行った。
【0099】
層電荷の実験的決定
層上の電荷は、種々のn-アルキル鎖長を有するn-アルキルアンモニウム溶液の挿入および得られた面間間隔の測定によってLagalyの方法(A.R.Mermut、G. Lagaly、Clays Clay Miner. 2001、49、393-397を参照のこと)によって実験的に決定できる。この目的のために、およそ90mgのサンプルを、オーバーヘッドシェーカー中の3mLのエタノール/水(1:1)に少なくとも2時間懸濁した。2.5mLのn-アルキルアンモニウム溶液(鎖長n=4~6について2M、n=7~10について0.5M、n=11および12について0.1M)を添加し、サンプルを60℃の乾燥キャビネット中で保存した(少なくとも3時間)。遠心分離し、デカントした後、添加を5回反復した。結論として、洗浄をエタノール/水(1:1)を用いて10回およびエタノールを用いて2回行った。粉末回折のためのテクスチャサンプルを、60℃で乾燥させ(24時間)、ブラッグ・ブレンターノ幾何学において10分以内に測定した。
【0100】
CECの決定
CECは、Cu(トリエン)法によって決定した(L.Ammann、F.Bergaya、G.Lagaly、Clay Miner. 2005年、第40巻、441~453頁を参照のこと)。この目的上、およそ45mgの、融解合成によって調製した2:1のシート状シリケート(A1)を、150℃で24時間焼成し、乾燥アルゴン下、グローブボックス中で24時間保存し、その中で秤量した。10mLの水を添加し、サンプルをオーバーヘッドシェーカー中で24時間膨潤させ、次いで、5mLの0.01M[Cu(トリエン)]SO4溶液を添加した。交換を24時間実施した。サンプルを遠心分離し(10000rpm、20分、20℃)、上清溶液のCu濃度をUV/VIS分光計(Cary300)で測定した。これは、577nmで吸収最大[Cu(トリエン)]2+を使用して行った。使用した較正標準は、1:1、1:3、1:9および1:19希釈した[Cu(トリエン)]SO4保存溶液であった。
【0101】
粒径決定
粒径決定のために、サンプルをまず、完全脱塩水中の1重量%の懸濁液中で24時間膨潤させた。
【0102】
静的光散乱(SLS)
粒径を、DIN13320(ステータス:2009)に従って静的光散乱の方法を使用して決定した。この目的のために、Retsch LA-950(Horiba)機器を使用して、製造業者の測定ルーチン「水中のシート状シリケート」を使用した。ここで、固相の屈折率は、1.5であった。測定プログラムによって最適透過速度が決定され、従って、懸濁液の濃度が最適化された。数加重粒径分布が確認された。
【0103】
SAXS(X線小角散乱)測定
本発明のシート状シリケート薄層を、Double Ganesha AIR小角散乱システム(SAXSLAB)で測定した。X線供給源は、マイクロフォーカスビームを提供する回転電極(Cu、MicroMax 007HF、Rigaku Corp.)とした。PILATUS 300K空間分解検出器(Dectris AG)を使用した。測定は、ガラスキャピラリー直径1mm(ガラス番号50、Hilgenberg)中で室温(23℃)で行った。半径方向に平均化されたデータを、一次ビームおよび測定時間に対して標準化し、その後、溶媒を除去した。データ解析を、M. Stoter、B.Biersack、S.Rosenfeldt、M.J.Leitl、H.Kalo、R.Schobert、H.Yersin、G.A.Ozin、S.Forster、J.Breu、Angew.Chem.Int. Ed.2015年、第54巻、4963~4967頁に従って実施した。
【0104】
SAXS測定によって、極端に小さい散乱角まで測定することが可能になり、それによって大きな面間間隔の可視化が可能となる。d値、特にd(001)は、浸透圧によって膨潤した薄層間の平均距離に対応する。
【0105】
原子間力顕微鏡(AFM)
原子間力記録は、OTESPA-R3(Bruker)ケイ素カンチレバーを備えたディメンション(dimention)3100NanoScope IV-AFMでタッピングモードで測定した。駆動振幅は、249.5Hzとした。サンプルは、ケイ素ウエハーへのMillipore水中の分散物(およそ0.05g/L)の液滴塗布によって、および室温(23℃)で周囲湿度下で乾燥させることによって調製した。測定前に、サンプルを80℃で1時間乾燥させた。
【0106】
以下の実施例は、本発明を明らかにするのに役立つが、何らかの制限を課すと解釈されてはならない。
【0107】
2:1のシート状シリケート(A1)の合成
名目上の組成が、Na0.65[Mg2.4Li0.55□0.05]Si4O10F2である2:1のシート状シリケート(A1)の合成のために、乾燥アルゴン下グローブボックス中で、3.381gのNaF(41.988g/mol、80.53mmol、0.65当量)、1.768g LiF(25.939g/mol、68.14mmol、0.55当量)、3.088gのMgF2(62.301g/mol、49.56mmol、0.4当量)、9.987gのMgO(40.304g/mol、247.78mmol、2当量)および29.777gのSiO2(60.084g/mol、247.79mmol、4当量)を秤量して取り出し、モリブデンるつぼ中に入れた。
【0108】
合成は、全部で5つのステップからなっていた:(A)合成装置の焼成、(B)るつぼの溶融閉鎖、(C)不浸透性についてのるつぼの試験、(D)融解合成および(E)熱処理。
【0109】
(A)るつぼの酸化を避けるために、操作は、高真空下で、したがって、酸化モリブデンの安定性範囲未満の酸素揮散力で行った(<10-7bar)。るつぼを、およそ1cmの幅の4つの近接して位置するターンから構成される銅コイルを使用して誘導焼成に付して、水を除去した。この操作では、高真空におけるフッ化物の揮発を防ぐためにおよそ250℃の中程度の温度を使用した。
【0110】
(B)るつぼの蓋を高真空下で下げた。ちょうど3000℃未満に短時間加熱することを可能にする狭い銅コイルを使用して、るつぼを融解閉鎖した。この手順の間に、水が流れる銅管を使用して、るつぼの底端から冷却を行った。これは、るつぼの底領域におけるフッ化物融解を防ぐように意図されたが、これは、これらのフッ化物がそうでなければ、高真空下で部分的蒸発を起こすであろうからである。この理由のために、フッ化物をまず秤量して取り出し、るつぼ中に入れた。
【0111】
(C)不浸透性について、るつぼを試験するために、得られた反応容器を、22ターンの幅広銅コイルを有するコランダムロッド上で加熱し、加熱は短時間でおよそ1750℃でとした。
【0112】
(D)るつぼを、およそ45rpmでロータリーチューブ炉(HT-1900グラファイト、Linn High Term)中、アルゴン下で30分の過程にわたって400℃に加熱した。1750℃の最大温度は、さらなる90分の過程にわたって到達された。この温度の保持時間は、70分であった。これに、8分の過程にわたって1300℃への、さらなる25分で1050℃への冷却を続け、その後、炉を停止した。
【0113】
(E)モリブデンるつぼ中の、得られた材料を微粉砕し(250rpm、20分、Retsch PM-100)、250℃、減圧下(<0.1mbar)で一晩乾燥させ、グローブボックス中アルゴン下に置いた。(A)および(B)の下に記載されたように、るつぼを焼成し、溶融閉鎖した。気密反応容器を石英アンプル中に入れ、これを減圧下(<0.1mbar)で溶融閉鎖した。次のステップは、1045℃での材料の熱処理である。
【0114】
粉末X線回折は、2:1のシート状シリケート(A1)が、名目上の組成Na0.65[Mg2.4Li0.55□0.05]Si4O10F2を有することを実証した。名目上の組成を、2つの水層を有する結晶性膨潤した相の測定された粉体ディフラクトグラムを使用して決定した。H.Kalo(H.Kalo、W.Milius、J.Breu、RSC Adv.2012年、第2巻、8452~8459頁およびH.Kalo、Dissertation、University of Bayreuth、2012年を参照のこと)に従って、単斜セルを使用した(C2/m、12番)。精密化のための出発パラメータは、H.Kalo、W.Milius、J.Breu、RSC Adv.2012年、第2巻、8452~8459頁から採用し、00lシリーズおよびまた060バンドが見られるように適応させた。得られた格子定数は、表2に示されている。
【0115】
【0116】
2:1のシート状シリケート(A1)の層電荷を、Lagalyの方法によって実験的に調べた。この目的のために、種々の鎖長(CnH2n+1NH3
+)の、既知電荷等価面積のn-アルキルアンモニウムイオンを、(A1)の中間層中に挿入した。特定のアルキルラジカル鎖長で、単層(d001=13.1~13.3Å)が形成されるか、二層(d001=17.5~17.8Å)が形成されるかに応じて、またこれがもはや可能ではなかった鎖長に応じて、既知電荷等価面積に基づいて層電荷の範囲を位置決定することが可能であった。
【0117】
単層(n=4)からより高いd値(n=5)への移行は、層電荷の上限を≦0.65p.f.u.および>0.56p.f.uに制限した。n=7で、二層/単層混合層からの超構造反映が初めて目に見えるようになったが、シリーズは合理的ではない(cv=1.58%)。n=8について、規則性を有する混合層(cv=0.67%)が存在していた。高密度に充填されたn-オクチルアンモニウム二層(n=8)は、0.80p.f.uの層電荷に対応し、単層は、0.40p.f.uに対応する。このモデルによれば、規則性を有する混合層は、0.60p.f.u.の層電荷に対応した。さらに、n=11(0.62p.f.u.)について、二層が存在した(17.7Å)。n=12(0.58p.f.u)について、反映のシフトが観察された。したがって、(A1)の実験的に決定された層電荷は、0.65p.f.u.および0.62p.f.uの範囲にあった。
【0118】
2:1のシート状シリケート(A1)のSLS測定は、2:1のシート状シリケート(A1)が、中央値としておよそ10~20μm径の横方向の大きさの広がりを有していたことを示す。およそ10~150μmの領域において、高い横方向の広がりの紡錘体のプレートレット晶癖が、SEM顕微鏡写真に基づいて
図3において明らかである。
【0119】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケート(IS1)の合成
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケート(IS1)の合成のために、2:1のシート状シリケート(A1)の中間層カチオンの部分交換を、水と、n-ブチルアンモニウムホルメートを含有するエタノールとの溶媒混合物(v:v、1:1)を用いる処理によって実施した。溶媒を用いた場合実質的に決定されるが未知の平衡分布を達成するために、50:50占有(=確率)の2種の異なる中間層、異なる割合のCECを添加した。
【0120】
一般的なプロトコールは以下のとおりとした:10~35mgの2:1のシート状シリケート(A1)を秤量して取り出し、遠心管中に入れ(隔壁を用いて密閉し)、2mLのエタノール/水(v:v、1:1)中で12時間膨潤させた。次いで、n-ブチルアンモニウムホルメート(0.05M)を添加した。エタノールおよび水のさらなる添加の前に、n-ブチルアンモニウムホルメートのその添加後の濃度が3.5mmol/Lであることが確実にされた。得られた懸濁液を、23℃、オーバーヘッドシェーカー中で24時間撹拌した。これに、エタノール/水(v:v、1:1)の混合物を用いて3回およびエタノールを用いて1回洗浄することを続けた。
【0121】
粉体ディフラクトグラムの測定のためにテクスチャサンプルを調製するために、エタノールを有する懸濁液中の生成物をガラススライドに液滴塗布した。23℃(室温)での蒸発によって溶媒を除去した。次いで、生成物を有するガラススライドを60℃で12時間焼成し、43%相対湿度で24時間平衡化した。
【0122】
エタノール/水(v:v、1:1)溶媒混合物中での(A1)の膨張は、2つの水層を有する(A1)の結晶性構造に対応し、極めて低い、0.06°の001反映の半値全幅を有する。対応する溶媒混合物では、異なる割合のCECのn-ブチルアンモニウムを添加した(15~200%)。この場合には、吸着質の濃度を、3.5mmol/Lで一定に維持した。得られた生成物を、X線によって特性決定した;
図4を参照のこと。43%相対湿度での膨張後に記録をとった。プロットは、25.4Å(12.3Å、1つの水層Naおよび13.1Å、0の水層C4)での混合層化2:1のシート状シリケート(AL1)のd
001反映のものである。また、この相の004および008反映も示されている。同様に、ナトリウム形態の、および純粋なn-ブチルアンモニウム形態の002および004反映も示された。15%のCECを添加すると、ナトリウム反映におけるわずかなシフトが観察され、これは、混合層を示す。混合層の超構造反映は、最初ブロードであり、低い強度を有しており、これは、範囲1の偏差および/または交互層の統計学的分布によって示される。この反映の強度は、添加されるn-ブチルアンモニウムの量につれて増大した。同時に、規則性を有する混合層の方向で、さらなる反映においてシフトがあった。60%のCECを添加すると、合理的なシリーズがまず観察された。シリーズは、90%のCECの添加まで合理的なままであり、これは、混合層の相の広い安定性範囲を強調する。105%のCECの添加について、反映は、純粋なn-ブチルアンモニウム形態の方向にシフトし、43%相対湿度で、14.0Åのd値を有していた。CECの125%添加で、2相があった。150%のCECの添加時に、d値の強力なシフトが観察され、これを、完全に交換された相に割り当てた。
【0123】
図5から明らかなように、変動係数(cv=0.14%)の最小は、74%の交換能力の添加について見られた。
【0124】
水中の、規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケートの層剥離を調べるために、種々の固形物を用いて分散物を調製した。この場合には、高い固形物で(15重量%)、ゲルが形成され、0.5重量%への希釈時でさえ、分散物を形成し、これは数週間安定であった。この場合には「ストリーク」が形成された。同様の挙動は、2:1のシート状シリケート(A1)について、およびn-ブチルアンモニウムカチオンで完全に交換された2:1のシート状シリケートについては観察されなかった;
図6。これらの2:1のシート状シリケートは、水に入れられた後、数秒以内に、固体として容器の底に落ちた。
【0125】
規則性を有する混合層を有する2:1のシート状シリケート(AL1)について記載された膨張挙動についての定量的情報が、小角X線散乱(SAXS)によって提供された。これは、個々のシリケート薄層間の等距離を有する均一な膨張の存在を示した。10重量%サンプルについて、浸透性膨張の結果として面間間隔を168Åに広げることが観察された。この範囲のq-2での強度の低下は、層状の対象に特有であった。q=0.70Å-1(dmin=9Å)の散乱ベクターでの形状因子周期的変動の最小は、個々の薄層への層剥離を示した。層のa、b面の特徴として、1.38Åの散乱ベクターで広角範囲で02/11バンドが見える。ここでのサンプルの散乱が、溶媒の散乱に対して程度が同様であるので、この範囲の測定点の鋭い変動は、避けられなかった。
【0126】
個々の薄層への層剥離は、AFM測定によってさらに確認された。水和された対イオンのHelmholtz層を有さないシリケート薄層の厚みが、9.6Å(およそ1nm)であるので、AFM顕微鏡写真において、2nmよりも小さいすべてのシート状シリケート薄層を、個々の薄層に割り当てることができた。薄層の下または上のイオンの水和を考慮して、>1nmの層厚が予測された。
図7は、通常の薄層の顕微鏡写真(AおよびC)およびその高さプロフィール(BおよびD)を示す。図のパートAは、露出された個々のシリケート薄層を示す。パートBは、いくつかのプレートレットの蓄積を示し、これは、乾燥時に互いに上に統計的にあるようになった。1.3~1.4nmの別個のステップがあり、結果として、これらは層剥離した個々の薄層である。