(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】造水装置
(51)【国際特許分類】
B01D 1/26 20060101AFI20220825BHJP
B01D 1/30 20060101ALI20220825BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220825BHJP
B63J 1/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B01D1/26 A
B01D1/30 A
C02F1/04 A
B63J1/00
(21)【出願番号】P 2018089694
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】池田 充志
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0231377(US,A1)
【文献】特開2002-282602(JP,A)
【文献】特開2016-193437(JP,A)
【文献】特開平06-254534(JP,A)
【文献】特開昭61-097001(JP,A)
【文献】実開昭62-090701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
C02F 1/02- 1/18
B63J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を加熱して蒸気を生成する複数の蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を凝縮する凝縮器とを備える造水装置であって、
前記蒸発器は、上下に延びる複数の伝熱管を備え、前記伝熱管の内部に導入した被処理液を、前記伝熱管の外部に導入した加熱用流体により加熱するように構成されており、
複数の前記蒸発器を水平方向に隣接配置して、前段の前記蒸発器で生成された被処理液の蒸気を、後段の前記蒸発器の加熱用流体として導入するように、前記各蒸発器が順次接続され、
前記凝縮器は、最後段の前記蒸発器で生成された蒸気を凝縮するように配置され、
前記蒸発器は、前記伝熱管が収容される容器本体と、前記容器本体の上方に設けられて水平に延びる筒状の筐体とを備え、
前記筐体の端部同士を端板を介して連結することにより、前記各蒸発器が接続されている造水装置。
【請求項2】
前記筐体の内部に配置された平板状のデミスタを更に備え、
前記デミスタは、前記筐体の軸線が内部を通過するように水平に配置されている
請求項1に記載の造水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造水装置に関し、より詳しくは、船舶用として好適な造水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用の造水装置においては、船舶に搭載されたボイラーの蒸気やディーゼル機関の冷却水等を熱源として海水を蒸発させることにより、淡水を製造することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、海水を加熱して蒸気を生成する加熱器が下部に配置され、加熱器で生成された蒸気を凝縮する凝縮器が上部に配置された造水装置が開示されている。加熱器は、海水が通過する加熱管束を備えており、エンジン冷却後の冷却水を加熱源として加熱管束の外部に供給することにより、海水を加熱して蒸気を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、ディーゼル主機関の小型化および高効率化により、エンジンのジャケット冷却水の廃熱量が減少傾向である一方、船上での水需要は、排ガス規制対策を強化するために増加傾向にある。このため、船舶用の造水装置に対しては、船内に設置できるように小型化を維持しつつ、造水量を向上させることが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、造水効率を容易に向上させることができる造水装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、被処理液を加熱して蒸気を生成する複数の蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を凝縮する凝縮器とを備える造水装置であって、前記蒸発器は、上下に延びる複数の伝熱管を備え、前記伝熱管の内部に導入した被処理液を、前記伝熱管の外部に導入した加熱用流体により加熱するように構成されており、複数の前記蒸発器を水平方向に隣接配置して、前段の前記蒸発器で生成された被処理液の蒸気を、後段の前記蒸発器の加熱用流体として導入するように、前記各蒸発器が順次接続され、前記凝縮器は、最後段の前記蒸発器で生成された蒸気を凝縮するように配置され、前記蒸発器は、前記伝熱管が収容される容器本体と、前記容器本体の上方に設けられて水平に延びる筒状の筐体とを備え、前記筐体の端部同士を端板を介して連結することにより、前記各蒸発器が接続されている造水装置により達成される。
【0008】
また、前記筐体の内部に配置された平板状のデミスタを更に備えることが好ましく、前記デミスタは、前記筐体の軸線が内部を通過するように水平に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の造水装置によれば、造水効率を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造水装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造水装置の縦断面図であり、
図2は、
図1に示す造水装置を矢示A方向に見た側面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の造水装置1は、第1の蒸発器10および第2の蒸発器20からなる複数の蒸発器と、凝縮器30とを備えている。
【0012】
第1の蒸発器10は、上下に延びる円筒状の容器本体11と、容器本体11の上方に設けられて水平に延びる円筒状の筐体16とを備えている。
【0013】
容器本体11は、下部開口および上部開口が、それぞれ底板12および閉塞板13によって覆われることにより、内部に蒸発室11aが形成されている。底板12および閉塞板13には、それぞれ複数の挿通孔が形成されており、これらの挿通孔を貫通するように上下に延びる複数の伝熱管15が、蒸発室11a内に配置されている。
【0014】
底板12の下面側には、導入部14が連結されている。導入部14は、トレー状に形成されており、内部に導入室14aを有している。導入室14aは、伝熱管15の下端部と連通しており、導入口14bから導入された海水等の被処理液が、伝熱管15の内部を上昇する。
【0015】
容器本体11の側壁には、供給口11bおよび排出口11cが形成されている。供給口11bから蒸発室11aの内部に供給された温水等の加熱用流体は、伝熱管15の外部を通過して排出口11cから排出される。蒸発室11aには、加熱用流体の流路を蛇行させる複数の邪魔板11dが設けられている。各邪魔板11dは、伝熱管15に外嵌された筒状のスペーサ(図示せず)によって、所定の高さ位置に保持されている。本実施形態においては、供給口11bを容器本体11の上部に形成し、排出口11cを容器本体11の下部に形成しているが、供給口11bおよび排出口11cの配置を上下逆にして、排出口11cを容器本体11の上部に形成し、供給口11bを容器本体11の下部に形成してもよい。
【0016】
筐体16は、容器本体11の上端に閉塞板13を介して連結されており、水平に延びる筒状の両端が端板16a,16bにより覆われて密閉され、内部に気水分離室16cが形成されている。気水分離室16cには、伝熱管15の直上に設けられた気水分離板16dと、気水分離板16dの上方に配置されたデミスタ16eとが設けられている。デミスタ16eは、網板を積層した平板状の部材であり、気水分離室16c内に水平に配置されて、支持部材(図示せず)により固定されている。デミスタ16eは、筐体16の軸線Lが内部を通過するように、筐体16の上下方向中央に配置されている。
【0017】
気水分離室16cの上部には、生成された蒸気が排出される蒸気排出口16fが形成されている。また、気水分離室16cの下部には、蒸気から分離された液体が排出される排水口16gが形成されている。
【0018】
第2の蒸発器20は、第1の蒸発器10と同様に構成されており、上下に延びる円筒状の容器本体21と、容器本体21の上方に設けられて水平に延びる円筒状の筐体26とを備えている。
【0019】
容器本体21は、下部開口および上部開口が、それぞれ底板22および閉塞板23によって覆われることにより、内部に蒸発室21aが形成されている。底板22および閉塞板23には、それぞれ複数の挿通孔が形成されており、これらの挿通孔を貫通するように上下に延びる複数の伝熱管25が、蒸発室21a内に配置されている。
【0020】
底板22の下面側には、導入部24が連結されている。導入部24は、トレー状に形成されており、内部に導入室24aを有している。導入室24aは、伝熱管25の下端部と連通しており、第1の蒸発器10の排水口16gから排出された液体が導入口24bから導入されて、伝熱管25の内部を上昇する。
【0021】
容器本体21の側壁には、供給口21bおよび排出口21cが形成されている。供給口21bは、接続管17を介して第1の蒸発器10の蒸気排出口16fに接続されており、第1の蒸発器10から蒸発室21aの内部に供給された蒸気は、伝熱管25の外部を通過して排出口21cから排出される。蒸発室21aには、加熱用流体の流路を蛇行させる複数の邪魔板21dが設けられている。各邪魔板21dは、伝熱管25に外嵌された筒状のスペーサ(図示せず)によって、所定の高さ位置に保持されている。
【0022】
筐体26は、容器本体21の上端に閉塞板23を介して連結されており、水平に延びる筒状の一端側が、端板16bを介して第1の蒸発器10の筐体16に、軸線Lを合わせて接続されている。筐体26の他端側は端板26aに覆われて密閉されている。筐体26の内部は隔壁26bによって区画されており、隔壁26bの一端側に気水分離室26cが形成されている。気水分離室26cには、伝熱管25の直上に設けられた気水分離板26dと、気水分離板26dの上方に配置されたデミスタ26eとが設けられている。デミスタ26eは、網板を積層した平板状の部材であり、気水分離室26c内に水平に配置されて、支持部材(図示せず)により固定されている。デミスタ26eは、筐体26の軸線Lが内部を通過するように、筐体26の上下方向中央に配置されている。気水分離室26cの下部には、蒸気から分離された液体が排出される排水口26gが形成されている。
【0023】
凝縮器30は、筐体26の内部に設けられており、筐体26内における隔壁26bの他端側に形成された凝縮室31と、凝縮室31内に配置された凝縮管32とを備えている。気水分離室26cと凝縮室31とは、隔壁26bの上部を介して連通している。凝縮室31の上部には、抽気口26fが形成されており、凝縮室31の下部には、凝縮室31で生成された凝縮水(淡水)を回収する回収口26hが形成されている。凝縮管32の両端には、端板26aを介して筐体26の外部と連通する導入部32aおよび排出部32bが設けられている。
【0024】
上記の構成を備える造水装置1は、被処理液としての海水が、ポンプ41の作動によりエジェクタ40を介して凝縮器30の凝縮管32に供給されて、凝縮室31内の蒸気を凝縮した後、一部が第1の蒸発器10の導入室14aに導入されて、伝熱管14の内部を通過する。凝縮室30には、1または複数の伝熱管からなる予熱器を設けてもよく、蒸気の凝縮に利用した海水の一部を予熱器に導入して予熱した後、導入室14aに導入するように構成してもよい。予熱器は、凝縮室30以外に気水分離室16c,26cに配置されてもよく、これらの複数個所に配置してもよい。
【0025】
第1の蒸発器10の蒸発室11aには、例えば、船舶に搭載されたディーゼル主機関のジャケット冷却水のように現場で使用可能な温水が、加熱用流体として供給口11bから供給され、邪魔板11dによって形成された流路を経て排出口11cから排出される。これにより、伝熱管14を通過する海水が加熱されて伝熱管14内で蒸発し、気水分離室16cに導入される。
【0026】
気水分離室16cに導入された蒸気は、混入する液滴が気水分離板16dおよびデミスタ16eによって分離された後、排水口16gから排出されて第2の蒸発器20の導入室24aに導入され、伝熱管25の内部を通過する。本実施形態においては、筐体16の軸線Lが内部を通過するように、デミスタ16eが上下方向中央に水平に配置されているので、デミスタ16eの表面積を最大化することができ、液滴の除去を確実にして造水効率を高めることができる。但し、デミスタ16eの配置は特に限定されるものではなく、例えば、筐体16の軸線Lよりも上方または下方にデミスタ16eを配置することも可能である。また、第1の蒸発器10と第2の蒸発器20との蒸発温度差を調整する目的で、排水口16gと導入口24bとの間にオリフィスを設けてもよい。
【0027】
一方、気水分離室16c内の蒸気は、排出口16fから排出されて、第2の蒸発器20の供給口21bに加熱用流体として供給された後、邪魔板21dにより形成された流路を経て淡水となり、排出口21cから排出される。これにより、伝熱管25を通過する海水が加熱されて伝熱管25内で蒸発し、気水分離室26cに導入される。
【0028】
気水分離室26cに導入された蒸気は、混入する液滴が気水分離板26dおよびデミスタ26eによって分離された後に、凝縮器30の凝縮室31に導入され、凝縮管32を通過する海水によって一部が凝縮される。こうして、2段目の蒸発器である第2の蒸発器20で生成された蒸気が、凝縮器30で凝縮されて淡水となる。凝縮室31で生成された淡水は、第2の蒸発器20の排出口21cから供給された淡水と合流されて、ポンプ27の作動によって回収口26hから回収される。
【0029】
凝縮室31で凝縮されない蒸気および海水由来の不凝縮性ガスは、蒸気排出口26fから排出されて、排水口26gから排出された海水と共にエジェクタ40の吸引口に吸引され、凝縮器30の凝縮管32に供給される。
【0030】
本実施形態の造水装置1によれば、第1の蒸発器10および第2の蒸発器20が、上下に延びる複数の伝熱管15,25を備えると共に、水平方向に隣接配置されて2重効用式の蒸発装置を構成しているので、小容量のコンパクトな構成により、高い造水効率を得ることができる。したがって、船舶用等として好適に使用することができる。
【0031】
また、第1の蒸発器10および第2の蒸発器20は、伝熱管15,25が収容される容器本体11,21の上方に、水平に延びる筒状の筐体16,26を備えており、筐体16,26の端部同士が端板16bを介して連結されているので、第1の蒸発器10および第2の蒸発器20の接続を容易に行うことができる。
【0032】
第2の蒸発器20および凝縮器30の構成は、従来の単効用式の船舶用造水装置と同様であるため、例えば、第2の蒸発器20の筐体26の一端側に形成されているメンテナンスポートを利用して、第1の蒸発器10を接続することができる。これにより、既存の単効用造水装置を2重効用式に容易に改変することができるので、増設等への対応も可能である。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態の造水装置1は、2重効用式としているが、第1の蒸発器10と同様の構成を備える1または複数の蒸発器を、端板16aを介して水平方向に順次接続していくことで、3重以上の多重効用造水装置を容易に構成することができる。したがって、必要とする造水量に応じた設計および製造を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 造水装置
10 第1の蒸発器
11 容器本体
15 伝熱管
16 筐体
16a,16b 端板
16e デミスタ
20 第2の蒸発器
21 容器本体
25 伝熱管
26 筐体
26e デミスタ
30 凝縮器