(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ヘアカット方法
(51)【国際特許分類】
G09B 19/24 20060101AFI20220825BHJP
A45D 44/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
G09B19/24 A
A45D44/00 A
(21)【出願番号】P 2020009714
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520030235
【氏名又は名称】吉田 洋明
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋明
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-83011(JP,A)
【文献】特開2004-209284(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0029482(KR,A)
【文献】特開2019-55037(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0843763(KR,B1)
【文献】特許第5191614(JP,B2)
【文献】特開2003-302895(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1279288(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A45D 44/14
G09B 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を複数のエリアに分割し、前記エリア毎のカット作業を、紙媒体に印刷、あるいは、パーソナルコンピュータやスマートフォンのメモリに記憶させて画面表示させたカット作業情報に基づいて行うヘアカット方法であって、
イヤーツーイヤーが側面視で床面に垂直になるカット対象者の通常の姿勢において、床面と平行な横ラインによって頭部が上下のブロックに分割され、頭頂部において放射状に交差する平面視直線状の縦ラインによって前記各ブロックが更に分割されることにより、前記各エリアが形成されており、
前記カット作業情報は、前記エリア毎に設定された、毛束をパネル状に取り出す際の頭皮からの毛髪パネルの引張方向を表す引張方向情報を含み、
前記引張方向情報は、床面と平行な平面内での前記引張方向を表す情報と、正中線を含む床面に垂直な平面内での前記引張方向を表す情報とを含
み、
前記引張方向は、22.5度ずつ分割された角度で表されるヘアカット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘアカット方法として、特許文献1には、ヘアカット用補助具をカット対象者の頭部に装着して当該頭部を複数のブロックに分割し、各ブロックから頭皮に対して垂直に取り出した毛束を頭皮と平行にカットする方法が開示されている。このヘアカット方法は、ヘアスタイルの完成後の毛髪長さをブロック毎に数値化することで、目標とするヘアスタイルの再現や、他人へのカット方法の教授を容易にすることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、カット後のヘアスタイルは、カットするときの毛束を引く方向によって大きく変化するため、単にブロック毎の毛髪長さを数値化するだけではヘアスタイルの再現性に乏しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、所望のヘアスタイルを容易に実現可能なヘアカット方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、頭部を複数のエリアに分割し、前記エリア毎のカット作業を、紙媒体に印刷、あるいは、パーソナルコンピュータやスマートフォンのメモリに記憶させて画面表示させたカット作業情報に基づいて行うヘアカット方法であって、イヤーツーイヤーが側面視で床面に垂直になるカット対象者の通常の姿勢において、床面と平行な横ラインによって頭部が上下のブロックに分割され、頭頂部において放射状に交差する平面視直線状の縦ラインによって前記各ブロックが更に分割されることにより、前記各エリアが形成されており、前記カット作業情報は、前記エリア毎に設定された、毛束をパネル状に取り出す際の頭皮からの毛髪パネルの引張方向を表す引張方向情報を含み、前記引張方向情報は、床面と平行な平面内での前記引張方向を表す情報と、正中線を含む床面に垂直な平面内での前記引張方向を表す情報とを含み、前記引張方向は、22.5度ずつ分割された角度で表されるヘアカット方法により達成される。
【0008】
前記引張方向は、22.5度ずつ分割された角度で表されることが好ましい。
【0009】
前記カット作業情報は、前記エリア毎に設定された、毛髪パネルの引張方向に対してハサミを入れる方向を表すカット方向情報を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望のヘアスタイルを容易に実現可能なヘアカット方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ヘアカットが行われる頭部を模式的に示す(a)側面図および(b)平面図である。
【
図2】水平面内引張方向の一例を説明するための平面図である。
【
図3】垂直面内引張方向の一例を説明するための側面図である。
【
図4】カット方向の一例を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、ヘアカットが行われる頭部を模式的に示す図であり、
図1(a)が側面図、
図1(b)が平面図である。本発明のヘアカット方法は、頭部を複数のエリアに分割し、エリア毎のカット作業を予め定められたカット作業情報に基づいて行うものである。本実施形態においては、2本の横ラインh1,h2によって頭部が上下に3つのブロック(Aブロック、Bブロック、Cブロック)に分割され、各ブロックが、頭頂部(トップポイント)TPにおいて放射状に交差する8本の縦ラインv1~v8によって更に分割されることにより、全体で36個のエリアが設定されている。
【0013】
縦ラインv1~v8は、
図1(b)に示すように平面視において直線状であり、縦ラインv1は、正中線(頭部を左右に二等分する線)に一致し、縦ラインv5は、イヤーツーイヤー(左右の耳の上部を結ぶ線)に一致する。縦ラインv3,v7は、縦ラインv1,v5の交差角の二等分線である。縦ラインv2は、縦ラインv1,v3の交差角の二等分線であり、縦ラインv4は、縦ラインv3,v5の交差角の二等分線であり、縦ラインv6は、縦ラインv5,v7の交差角の二等分線であり、縦ラインv8は、縦ラインv7,v1の交差角の二等分線である。
【0014】
縦ラインv1~v8と生え際とが交差する箇所には、1番から9番までの番号がそれぞれ付されている。縦ラインv1の前部および後部はそれぞれ1番および9番であり、縦ラインv2の前部および後部はそれぞれ2番および8番であり、縦ラインv3の前部および後部はそれぞれ3番および7番であり、縦ラインv4の前部および後部はそれぞれ4番および6番である。また、縦ラインv5の両側が生え際と交差する箇所は、いずれも5番である。
【0015】
このように、縦ラインv1~v8は、平面視において隣接する縦ライン同士のなす角度θが22.5度に設定されており、互いに直交する正中線およびイヤーツーイヤの交差角を適宜等分していくことで、美容師などの作業者がそれぞれの方向を容易に把握することができる。したがって、1番から9番の番号が付された箇所も、作業者が専用の道具などを使用することなく容易に把握することができる。
【0016】
図1(a)に示すように、横ラインh1,h2は、カット対象者の通常の姿勢において床面と平行になる水平なラインであり、横ラインh1が3番を通過し、横ラインh2が5番を通過する。頭頂部TPと横ラインh1との間に規定されるAブロックは、縦ラインv1~v8によって左側が8個のエリアに分割され、左右合計で16個のエリアが形成される。横ラインh1と横ラインh2との間に規定されるBブロックは、生え際の3番の箇所よりも下方に存在するため、左側が6個のエリアに分割され、左右合計で12個のエリアが形成される。横ラインh2と9番の箇所との間に規定されるCブロックは、生え際の5番の箇所よりも下方に存在するため、左側が4個のエリアに分割され、左右合計で8個のエリアが形成される。
【0017】
こうして設定された各エリアに対し、毛束をパネル状に取り出す際の毛髪パネルの引張方向をそれぞれ定めることで、引張方向情報が生成される。本実施形態の引張方向情報は、
図2に示す水平面内の引張方向情報と、
図3に示す垂直面内の引張方向情報とを含むものである。
【0018】
図2に示すように、水平面内の引張方向情報は、カット対象者の通常の姿勢において床面と平行になる水平な平面内で、毛髪パネルをカットするときに付け根Rからどの方向に引くかを表す情報であり、頭部左右のそれぞれにおいて、P1からP9までの水平面内引張方向が設定されている。各水平面内引張方向P1~P9は、正中線Mに沿って前方をP1、後方をP9とし、これらの間で隣接する方向同士のなす角度θ1が、22.5度となるように定められている。この角度θ1は、
図1(b)に示す隣接する縦ラインv1~v8のなす角度θと同じであることから、水平面内引張方向P1~P9についても、作業者が頭部の正中線およびイヤーツーイヤから、それぞれの方向を容易に把握することができる。
【0019】
図3に示すように、垂直面内の引張方向情報は、カット対象者の通常の姿勢において正中線を含む床面に垂直な平面内で、毛髪パネルをカットするときに付け根Rからどの方向に引き上げるかを表す情報であり、L1からL9までの垂直面内引張方向が設定されている。各垂直面内引張方向L1~L9は、鉛直方向に沿って下方をL1、上方をL9とし、これらの間で隣接する方向同士のなす角度θ2が、22.5度となるように定められている。この角度θ2も、隣接する縦ラインv1~v8のなす角度θと同じであることから、作業者がそれぞれの方向を容易に把握することができる。
【0020】
ヘアカットをする際に毛髪パネルを引っ張る方向は、上記の水平面内引張方向P1~P9および垂直面内引張方向L1~L9から一義的に定まるので、これらの情報を含む引張方向情報に基づいて、作業者が毛髪パネルをカットすることができる。
【0021】
本実施形態のカット作業情報は、上記の引張方向情報の他に、カット方向情報が含まれている。
図4に示すように、カット方向情報は、カットする際の毛髪パネルHPの引張方向(実線の矢印)に対して、右利きの作業者がハサミを入れる方向を表す情報であり、これらの方向がなす角度θ3が90度の場合をS1、112.5度の場合をS2、135度の場合をS3、67.5度の場合をS4、45度の場合をS5としている。
【0022】
図5は、カット作業情報の一例を示す図である。
図5に示すように、各エリアは、
図1(a)に示すAブロック、BブロックおよびCブロックの左右のいずれかで分類され、更に、
図1(b)に示す1番から9番の箇所で規定されている。例えば、エリアA1は、Aブロックの頭部右側における「1-2」領域、すなわち、頭頂部TPを1番および2番と結んだ領域である。上述したように、各エリアは、特段の道具を使用することなく、作業者がカット対象者の頭部の形状から容易に把握することができる。
【0023】
各エリアに対しては、水平面内引張方向(P1~P9のいずれか)、垂直面内引張方向(L1~L9のいずれか)、および、カット方向情報(S1~S5のいずれか)が与えられている。例えば、エリアA1は、水平面内引張方向P1、垂直面内引張方向L7およびカット方向情報S1が与えられており、作業者は、これらの情報に従って、各エリアの毛髪パネルをカットすることができる。本実施形態においては、全ての毛髪パネルを同じ長さにカットしているが(セイムレイヤー)、エリアごとの毛髪パネルの長さをカット作業情報に含めることもできる。
【0024】
カット作業情報は、種々のヘアスタイルごとに、ヘアスタイルの名称や写真等に関連付けて作成することが可能であり、どのようなヘアスタイルであっても数値化することができる。作成したカット作業情報は、例えば、紙媒体などに印刷したり、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどのメモリに記憶させて画面表示させることが可能である。本発明のヘアカット方法は、このようにカット作業情報が予め記載または記録された記録媒体を使用してヘアカットを行うことにより、所望のヘアスタイルを容易に実現することができるので、美容室等での業務上の使用だけでなく、例えば、熟練度の低い作業者への指導や、美容学校の実習などにも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
P1~P9 水平面内引張方向
L1~L9 垂直面内引張方向
S1~S5 カット方向