(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】無人水上航走体
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20220825BHJP
B63J 2/12 20060101ALI20220825BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20220825BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B63C11/00 A
B63J2/12 A
B63J99/00 A
H05K7/20 P
(21)【出願番号】P 2018028965
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-12-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成30年度内閣府総合科学技術・イノベーション会議により創設された「戦略的イノベーション創造プログラム(次世代海洋資源調査技術)」事業、国立研究開発法人海洋研究開発機構における「AUVの複数機運用手法等の技術開発」、産業技術力強化法、第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘
(72)【発明者】
【氏名】百留 忠洋
(72)【発明者】
【氏名】菅 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 孝史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 恒
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英輝
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰広
(72)【発明者】
【氏名】嵩 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】福川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】中園 隆司
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0276794(US,A1)
【文献】特表2008-515720(JP,A)
【文献】特開2006-231951(JP,A)
【文献】特開2002-362488(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075864(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180711(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0233052(US,A1)
【文献】国際公開第03/086850(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第107521635(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00,
B63J 2/12,99/00,
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器及び/または電子機器を含む発熱体を冷却する冷却構造を備えた無人水上航走体であって、
前記冷却構造は、前記発熱体を、電気的に絶縁した状態で包む絶縁包囲体を備えており、
前記絶縁包囲体は、前記無人水上航走体の外側に存在する水と接触するように、前記無人水上航走体の水中に没入する水没部の外側に配置されて
おり、
前記絶縁包囲体は、防水包囲体であり、
前記絶縁包囲体は、前記発熱体を収納する防水容器によって構成されており、
前記無人水上航走体の前記水没部には、外側に向かって開口した凹部が形成されており、
前記絶縁包囲体は、前記凹部内に収納されており、
前記凹部と前記絶縁包囲体の形状及び構造は、前記無人水上航走体が走行しているときに、前記凹部内に前記水を吸い込み、前記絶縁包囲体の前記水と接触する部分の周囲に水流を生じさせた後、前記凹部の外に前記水流を形成した水を排出するように構成されていることを特徴とする無人水上航走体。
【請求項2】
前記無人水上航走体に搭載されている機器と、前記絶縁包囲体内の前記発熱体とは、前記凹部内に配置されたコネクタを介して電気的に接続されている請求項
1に記載の無人水上航走体。
【請求項3】
前記絶縁包囲体は、前記無人水上航走体の船体から分離可能に前記凹部内に固定されている請求項
1に記載の無人水上航走体。
【請求項4】
前記絶縁包囲体は、少なくとも前記水と接触する部分は金属部材によって構成されており、
前記発熱体は、前記絶縁包囲体の前記水と接触する部分に対して熱伝達可能に前記絶縁包囲体内に固定されている請求項
1に記載の無人水上航走体。
【請求項5】
前記絶縁包囲体が前記凹部内に収納された状態で、前記凹部と前記絶縁包囲体の間には、前記無人水上航走体の走行方向前方側に形成され外部と連通する前方開口部を有する前方間隙と、前記無人水上航走体の走行方向後方側に形成され外部と連通する後方開口部を有する後方間隙と、前記前方間隙と前記後方間隙とをつなぐ接続間隙とが形成されており、
前記前方開口部から前記前方間隙、前記接続間隙及び前記後方間隙を通って、前記後方開口部に向かう水の流路が形成されている請求項
1に記載の無人水上航走体。
【請求項6】
前記前方開口部及び前記前方間隙を通る前記水の圧力が、前記後方開口部及び前記後方間隙を通る前記水の圧力よりも高くなるように、前記前方開口部、前記前方間隙、前記後方開口部及び前記後方間隙の幅寸法が決められている請求項
5に記載の無人水上航走体。
【請求項7】
前記絶縁包囲体は、前記発熱体の熱によって、前記前方開口部寄りの部分の方が前記後方開口部寄りの部分よりも高温になるようになっている請求項
5に記載の無人水上航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体を冷却する冷却構造を備えた無人水上航走体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を用いて行う海中調査や海底調査が盛んに行われている。調査精度の向上や、調査範囲の拡大、調査の低コスト化が必要とされているが、AUVは水上を航走する母船が随伴する必要があり、多数のAUVを運行しようとすると、その分、母船も増やさなければならない、という課題がある。母船は、音響測位やAUVのモニタリングのために乗組員が乗船する船舶であり、母船を増加させることはコストの面から難しい。
【0003】
そこで、最近では、母船に代わって、AUVに随伴するASV(Autonomous Surface Vehicle:洋上ロボットまたは洋上中継器とも呼ばれる無人水上航走体)の開発が進められている。ASVは、無人でAUVに随伴するロボットであり、衛星通信等の無線通信手段により、母船または陸上の制御センタとAUVの間を中継するものである。ASVを利用すれば、母船に比べてデイレート(日割りの作業料)を低く抑えることができ、低コストで調査を実施することができることが期待されている。
【0004】
ASVは、母船等と通信を行うための通信機器や、AUVと通信を行うための音響通信機器の他、自律航行を制御するためのマイクロコンピュータ、電源回路等の電気機器及び/または電子機器を含む発熱体を多数搭載している。ASVでは、航走中、これら発熱体を冷却しなければならない。
【0005】
従来は、船内に設置された電気機器及び/または電子機器を含む発熱体は、ASV内に搭載されたエアーコンディショナを用いて冷却していた。また、ASVとして特定されてはいないが、水上航走体が備えている発熱体を冷却する冷却装置の従来技術が特開2017-85063号公報(特許文献1)や特開2015-196407号公報(特許文献2)に開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、内部に冷却配管が通った放熱板と、冷却配管へ海水を送給する海水ポンプを備えており、放熱板に発熱体を接触させることで、発熱体を冷却している。特許文献2に記載の技術では、喫水部に発熱体であるラジエターを密着させて配置し、喫水部を介して発熱体の熱を水中に放熱することにより、発熱体を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-85063号公報
【文献】特開2015-196407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のいずれの従来技術の冷却方法も、ASV内のエネルギを使用して、発熱体を冷却することになる。すなわち、エアーコンディショナの場合は勿論のこと、特許文献1に記載の技術の場合には、海水を送給する海水ポンプを駆動させるためにエネルギが必要であり、特許文献2に記載の技術の場合には、ラジエター内に冷媒を循環させるためにエネルギが必要である。ASVは航走中は外部からエネルギを受け取ることはできないため、ASVのような無人水上航走体では、発熱体の冷却に使用するエネルギを極力抑えたい、という課題が存在する。
【0009】
また、エアーコンディショナや海水ポンプ等の積極的に動作する機器(アクティブ機器)は、故障は避けられないものであり、MTBF(Mean Time Between Failure(s):平均故障間隔)の改善が困難である、という問題もある。
【0010】
さらに、上記のいずれの従来の冷却技術の場合、発熱体も冷却装置も船内に設置される。そのため、船内に作業員が立ち入らないとメンテナンスを行えない。したがって、船内に作業員が立ち入る前提でASVを設計しなければならないという問題も存在する。
【0011】
本発明の目的は、発熱量の多い発熱体でも、十分に冷却可能でありながら、発熱体の冷却のために、船内のエネルギを使用せず、また、冷却装置の平均故障間隔(MTBF)を改善することができる無人水上航走体を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、船内に立ち入ることなく機器のメンテナンスが可能な無人水上航走体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記ASVを含む無人水上航走体に関するものであり、無人水上航走体は電気機器及び/または電子機器を含む発熱体を冷却する冷却構造を備えたものである。冷却構造は、発熱体を、電気的に絶縁した状態で包む絶縁包囲体を備えており、絶縁包囲体は、無人水上航走体の外側に存在する水と接触するように、無人水上航走体の水中に没入する水没部の外側に配置されている。絶縁包囲体は発熱体を包むものであればよく、発熱体に密着するものであってもよく、発熱体を収納する容器であってもよい。なお、発熱体そのものが絶縁包囲体内に無くても、ヒートパイプのような熱伝達手段を介して発熱体と絶縁包囲体が熱的に接続されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、電気機器及び/または電子機器を含む発熱体は、絶縁包囲体に包まれており、絶縁包囲体が水と接触(絶縁包囲体が水に浸かっている状態も含む)しても、電気機器及び/または電子機器内でショートが発生することなく動作する。そして、絶縁包囲体は、無人水上航走体の水没部の外側に配置されているため、発熱体が発する熱は、絶縁包囲体を介して、水に放熱される。したがって、本発明の無人水上航走体は、船内のエネルギである電力を使用することなく、発熱体を冷却することができる。なお、絶縁包囲体が熱を伝導する必要があるため、絶縁包囲体は少なくとも水と接触する部分は、熱伝導性がよいものであることが好ましい。
【0015】
また、冷却構造には、海水ポンプ等の積極的に動作する機器(アクティブ機器)が存在しないため、冷却構造のMTBFを改善することができる。さらに、発熱体や冷却構造のメンテナンスが必要な場合には、船内に立ち入る必要がないため、船内に作業員が立ち入ることを可能にする設計をする必要もなく、船外からメンテナンス作業を行うことができる。
【0016】
絶縁包囲体は、防水包囲体であってもよい。防水包囲体によって包まれていれば、電気機器及び/または電子機器を含む発熱体に水が浸入することがなく、上記の目的を達することができる。また、絶縁包囲体は、発熱体を収納する防水容器によって構成されていてもよい。防水容器の場合には、防水容器内には、空気等の気体が封入されていてもよく、また、絶縁油やフッ素系不活性液体(例:フロリナート(Fluorinert)〔登録商標〕)等の絶縁性液体が充填されていてもよく、また、防水ゼリーのような固形物が充填されていてもよい。なお、フロリナートは、電気絶縁性だけでなく、熱伝導性も良いため、発熱体の熱を良好に防水容器に伝達可能であるため、防水容器内に封入しておくのに適している。
【0017】
絶縁包囲体は、無人水上航走体の水没部の外側に配置されていれば、配置位置は問わない。また絶縁包囲体は、無人水上航走体の水没部に、外側に向かって開口した凹部を形成し、この凹部内に収納するようにしてもよい。このようにすれば、絶縁包囲体の流体抵抗を低減することができる。特に、無人水上航走体の水没部と絶縁包囲体を面一にするようにすれば、絶縁包囲体の流体抵抗をさらに低減することができる。
【0018】
無人水上航走体内に搭載されている機器と、絶縁包囲体内の発熱体とは、どのように電気的に接続しておいてもよい。水没部に凹部があり、凹部内に絶縁包囲体を収納する場合には、凹部内に配置されたコネクタを介して機器と発熱体は電気的に接続されていることが好ましい。また、無人水上航走体の船体から分離可能に凹部内に絶縁包囲体が固定されていれば、メンテナンス性が向上する。
【0019】
発熱体から絶縁包囲体への熱伝達は、任意の構成によって可能である。絶縁包囲体の少なくとも水と接触する部分が金属部材によって構成されている場合、発熱体は、絶縁包囲体の水と接触する部分に対して熱伝達可能に絶縁包囲体内に固定されていれば、効率よく、発熱体の熱を放熱することができる。
【0020】
無人水上航走体の水没部の凹部と絶縁包囲体の形状及び構造は、無人水上航走体が走行しているときに、凹部内に水を吸い込み、絶縁包囲体の水と接触する部分の周囲に水流を生じさせた後、凹部の外に水流を形成した水を排出するようにしておいてもよい。このように構成すれば、絶縁包囲体の流体抵抗を低減した上で、絶縁包囲体と水の接触面積を増大させ、効率的に熱を放熱することができる。
【0021】
具体的には、絶縁包囲体が凹部内に収納された状態で、凹部と絶縁包囲体の間に、無人水上航走体の走行方向前方側に形成され外部と連通する前方開口部を有する前方間隙と、無人水上航走体の走行方向後方側に形成され外部と連通する後方開口部を有する後方間隙と、前方間隙と後方間隙とをつなぐ接続間隙とを形成し、前方開口部から前方間隙、接続間隙及び後方間隙を通って、後方開口部に向かう水の流路を形成するようにしてもよい。
【0022】
このような間隙を形成する場合、前方開口部から吸い込む水の量を増大させる工夫をしておくとなおよい。例えば、流路が狭くなると、流体の速度が増加し、圧力が減少する、というベルヌーイの定理を応用して、前方開口部及び前方間隙を通る水の圧力が、後方開口部及び後方間隙を通る水の圧力よりも高くなるように、前方開口部、前方間隙、後方開口部及び後方間隙の幅寸法を決めてもよい。また、発熱体の熱によって、前方開口部周辺の水の温度が上昇することで、水の対流が起きるように、絶縁包囲体の前方開口部寄りの部分の方が後方開口部寄りの部分よりも高温になるように発熱体の取り付け位置を定めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の無人水上航走体の一例を示す側面図である。
【
図2】無人水上航走体が搭載している電気機器及び/または電子機器を含む発熱体のブロック図である。
【
図4】第2の実施の形態の無人水上航走体を示す側面図である。
【
図5】(A)乃至(C)は、冷却構造の模式図である。
【
図6】第3の実施の形態の無人水上航走体が備える冷却構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の無人水上航走体の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
<第1の実施の形態>
[全体構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態の無人水上航走体1の一例を示す側面図であり、冷却構造部分が側面から見えるように、冷却構造部分のみを断面で示した図である。
図2は、無人水上航走体1が搭載している電気機器及び/または電子機器を含む発熱体6のブロック図である。
【0026】
本実施の形態では、無人水上航走体1は、AUV(自律型無人潜水機)に随伴するASV(洋上ロボット)である。無人水上航走体1は、
図1の紙面中央に示す海面SSに浮かんでおり、紙面左に向かって水上を走行するものである。すなわち、本実施の形態では、矢印で示す方向に流水が生じる。無人水上航走体1の水中に没入する部分を水没部3と定義する。
【0027】
無人水上航走体1の外装は、繊維強化プラスチック(FRP)製である。水没部3には、外側(本実施の形態では、海底方向である紙面下方向)に向かって開口した凹部5が形成されている。
【0028】
凹部5は、水没部3の一部であり、貫通孔ではなく、有底である。凹部5内には、絶縁包囲体を構成する、電気機器及び/または電子機器を含む発熱体6を収納する防水容器7が収納されている。防水容器7は金属板を加工して構成されたパーツを組み立ててなる金属製である。防水容器7の詳細は後に説明する。防止容器7は、凹部5内に収納され、底壁部7Aが外側に存在する水と接触することで、冷却構造CSを構成している。
【0029】
無人水上航走体1は、各種機器からのデータを分析し、また、各種機器を制御する中央処理装置CPUを構成する画像認識用中央処理装置CPU1と制御用中央処理装置CPU2を備えている。中央処理装置CPU1及びCPU2には、無人水上航走体1の位置を測位するためのGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)9、船舶を自動識別する装置であるAIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)11、無人水上航走体1の挙動を検出するIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)13、母船または陸上の制御センタと通信を行うための通信装置15、撮像を行うためのカメラ17及び赤外線カメラ19、周囲の監視を行うためのレーダ21、無人水上航走体1の機器を制御するアクチュエータ23等が接続されている。本実施の形態では、中央処理装置CPU1及びCPU2が主な発熱源であり、防水容器7内に収納されている。
【0030】
[冷却構造]
図3は、冷却構造CSの詳細を示す断面図である。上述のように、防水容器7は、凹部5内に収納され、防水容器7の底壁部7Aが外側に存在する水と接触することで、冷却構造CSを構成している。
【0031】
防水容器7は、板状の底壁部7Aと、底壁部7Aに対して固定される一面開口状の筺体からなる容器本体7Bから構成されている。容器本体7Bは、その開口部にフランジ部7Cを一体に備えている。容器本体7Bのフランジ部7Cには、環状の防水パッキン25が収納される環状の溝部7Dが形成されている。ボルトとナットとからなる固定具27によって底壁部7Aと容器本体7Bが結合されることで、防水パッキン25が圧縮された状態になることにより、防水容器7内が水密に保たれている。
【0032】
本実施の形態では、防水容器7内には、中央処理装置CPUを構成する画像認識用中央演算装置CPU1と制御用中央演算装置CPU2が収納されている。画像認識用中央演算装置CPU1は、底壁部7Aに固定された電気絶縁性が良好なスペーサ29上に配置されたプリント基板31上に実装されている。画像認識用中央演算装置CPU1が実装されたプリント基板31から延びる電線32(一部図示省略)は、防水容器7の容器本体7Bに設けられた防水コネクタ半部33に接続されている。無人水上航走体1に搭載されている機器(上記GNSS9、AIS11等)に接続された電線34は、凹部5内に配置された防水コネクタ半部35と電気的に接続されている。防水コネクタ半部35が、防水コネクタ半部33と接続されることで、無人水上航走体1に搭載されている機器と画像認識用中央演算装置CPU1が電気的に接続された状態となる。画像認識用中央演算装置CPU1は、防水容器7と直接的には接触していないが、一端が画像認識用中央演算装置CPU1の表面と接触し、他端が防水容器7の底壁部7Aと接触している導熱板37を介して、防水容器7の底壁部7Aと熱的に接続されている。制御用中央演算装置CPU2は、画像認識用中央演算装置CPU1と同様にして、スペーサ29´を介してプリント基板31´が底壁部7Aに対して固定され、プリント基板31´上に制御用中央演算装置CPU2が実装される。制御用中央演算装置CPU2に対しては、導熱板37´が熱伝達可能に接触している。導熱板37´は、底壁部7Aに熱伝達可能に固定されている。
【0033】
防水容器7は、容器本体7Bが凹部5内に収納され、固定用ねじ39で無人水上航走体1の船底に対して固定されている。中央処理装置CPUを構成する画像認識用中央処理装置CPU1と制御用中央処理装置CPU2が動作して発熱すると、発生した熱は、
図3に示した矢印のように、導熱板37及び37´を介して防水容器7の底壁部7Aに伝わり、底壁部7Aの外側に存在する水に放熱される。
【0034】
なお、本実施の形態では、陸や母船上に揚げた状態の無人水上航走体1の外側から固定用ねじ39を外せば、防水容器7を無人水上航走体1の船体から分離することができる。したがって、防水容器7や、防水容器7内の中央処理装置CPUのメンテナンス等を行うために、無人水上航走体1内に立ち入る必要はない。
【0035】
<第2の実施の形態>
図4は、第2の実施の形態の無人水上航走体を示す側面図である。
図1と同様、冷却構造部分が側面から見えるように、冷却構造部分のみを断面で示してある。
図5(A)乃至(C)は、冷却構造の模式図である。第1の実施の形態と共通する部分については、
図1及び
図3に付した符号に100を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
第2の実施の形態では、無人水上航走体101が走行しているときに、凹部105内に水を吸い込み、防水容器107の周囲に水流を生じさせた後、凹部105の外に水を排出するように冷却構造CSが構成されている。具体的には、凹部105内に防水容器107が収納された状態で、凹部105と防水容器107の間には、無人水上航走体101の走行方向前方側に形成され外部と連通する前方開口部141を有する前方間隙143と、無人水上航走体101の走行方向後方側に形成されて外部と連通する後方開口部145を有する後方間隙147と、前方間隙143と後方間隙147とをつなぐ接続間隙149とが形成されている。この構成により、前方開口部141から前方間隙143、接続間隙149及び後方間隙147を通って、後方開口部145に向かう水の流路が形成され、
図4に示す矢印のように、流水によって、前方開口部141から水が吸い込まれるようになる。なお接続間隙149は、容器本体107Bの幅方向に対向する一対の側壁部の外側にも形成されている。
【0037】
図5(A)乃至(C)は、冷却構造CSの変形例を示している。
図5(A)乃至(C)では、無人水上航走体101のみ断面にしてあり、防水容器107は断面にしていない。
【0038】
図5(A)の例では、前方間隙143と後方間隙147の幅寸法は同じになるように設定してある。
【0039】
図5(B)の例では、前方間隙143の方が後方間隙147よりも間隙の幅寸法が大きくなるように凹部105内の防水容器107の位置が定められている。流路が狭くなると、流体の速度が増加し、圧力が減少する、というベルヌーイの定理を応用したものである。
図5(B)に示した例では、前方間隙143の幅寸法は、後方間隙147の幅寸法の3倍の大きさになっているため、無人水上航走体1が走行すると、前方開口部141から水を吸い上げる圧力Pは、後方開口部145から水を吸い上げる圧力を吸い上げる圧力Pの3倍になっており、前方開口部141から吸い込む水の量を増大させることが可能である。
【0040】
図5(C)の例では、防水容器107内の中央処理装置CPUを構成する画像認識用中央演算装置CPU1と制御用中央演算装置CPU2の配置位置を調整し、熱によって前方開口部141寄りの部分の方が後方開口部145寄りの部分よりも高温になるようにしている(防水容器7の前方部分に描かれた丸は高温であることを示している)。熱によって、前方開口部周辺の水の温度が上昇することで、水の対流が起き、前方開口部141から吸い込む水の量を増大させることが可能である。
【0041】
<第3の実施の形態>
図6は、第3の実施の形態の無人水上航走体が備える冷却構造を示す断面図である。第1の実施の形態と共通する部分については、
図3に付した符号に200を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
第3の実施の形態では、防水容器207内には、フッ素系不活性液体であるフロリナート(登録商標)が充填されている。フロリナートは、熱輸送効率が高く、また、絶縁性を有しているため、防水容器207内に充填することにより、中央処理装置CPUを構成する画像認識用中央処理装置CPU1と制御用中央処理装置CPU2からの熱はフロリナートを介して防水容器207の壁部に伝達される。すなわち、この構成の場合には、
図3で用いた導熱板37、37´が不要となる。
【0043】
<その他>
上記実施の形態では、絶縁包囲体を金属製の防水容器7により構成したが、絶縁包囲体は電気絶縁性を有して発熱体を包囲するものであれば、どのようなものでもよく、例えば、硬化したシリコーン樹脂によって絶縁包囲体を構成してもよいのは勿論である。
【0044】
上記実施の形態では、絶縁包囲体を金属製の防水容器7により構成したが、絶縁包囲体を絶縁樹脂製の防水容器によって構成してもよいのは勿論である。
【0045】
また上記実施の形態では、電気機器及び/または電子機器を含む発熱体として、中央演算装置を対象としたが、駆動用モータを駆動する駆動用半導体素子や、駆動用モータ自体のようにある程度発熱する電気機器または電子機器は、すべて電気機器及び/または電子機器を含む発熱体に包含されるものである。
【0046】
また上記実施の形態では、水没部の一部を構成する凹部内に防水容器を収納したが、水没部に凹部を形成することなく、防止容器を水没部の外面に固定してもよいのは勿論である。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、発熱量の多い発熱体でも、十分に冷却可能でありながら、発熱体の冷却のために、船内のエネルギを使用せず、また、冷却装置の平均故障間隔(MTBF)を改善することができる無人水上航走体を提供することができる。さらに、船内に立ち入ることなく機器のメンテナンスが可能な無人水上航走体を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 無人水上航走体
3 水没部
5 凹部
6 発熱体
7 防水容器
7A 底壁部
7B 容器本体
7C フランジ部
7D 溝部
9 GNSS(全球測位衛星システム)
11 AIS(自動船舶識別装置)
13 IMU(慣性計測装置)
15 通信装置
17 カメラ
19 赤外線カメラ
21 レーダ
23 アクチュエータ
25 防水パッキン
27 固定具
29,29´ スペーサ
31,31´ プリント基板
32 電線
33 防水コネクタ半部
34 電線
35 防水コネクタ半部
37,37´ 導熱板
39 固定用ねじ
CPU1 画像認識用中央処理装置
CPU2 制御用中央処理装置