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  • 特許-発酵食品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】発酵食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220825BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20220825BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220825BHJP
   C12P 19/12 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A23L5/00 J
A23L33/125
A23L2/38 102
C12P19/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018168772
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020039289
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391003130
【氏名又は名称】甲陽ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252056(JP,A)
【文献】N-アセチルスクロサミンの製造とアミノ糖に着目した機能性研究,平成23年度日本応用糖質科学会東日本支部ミニシンポジウム「糖質のポテンシャル発掘」講演要旨集,2011年,pp.1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 33/125
C12P 19/12
A23L 2/38
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロース、N-アセチルグルコサミン及び米麹を含む組成物を発酵させてなる発酵食品であって、
N-アセチルスクロサミンを含有する発酵食品。
【請求項2】
前記発酵食品が甘酒である請求項1に記載の発酵食品。
【請求項3】
スクロース及びN-アセチルグルコサミンに米麹を加えて発酵させる発酵工程を備え、
N-アセチルスクロサミンを含有する発酵食品の製造方法。
【請求項4】
更に、前記発酵工程で得られた発酵食品を乾燥する乾燥工程を備える請求項3に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項5】
更に、前記発酵工程の後であって、前記乾燥工程の前に、前記米麹に含まれる麹菌を除去する除去工程を備える請求項4に記載の発酵食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らはこれまで、ショ糖とN-アセチルグルコサミンとの高濃度混合溶液に糖転移型β-フルクトフラノシダーゼを含有するニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)の乾燥菌糸(死菌体)添加することで、機能性オリゴ糖であるN-アセチルスクロサミンを開発してきた(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このN-アセチルスクロサミンは、ヒト消化酵素では分解されず、大腸に到達し、大腸内菌叢中のビフィズス菌類の特定の株を増殖させる機能を有することが明らかとなっており(例えば、特許文献3参照)、プレバイオティクスとして期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-252056号公報
【文献】特開2014-030399号公報
【文献】特開2016-154511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、N-アセチルスクロサミンを製造及び精製するために、大掛かりな設備が必要となり、コストがかかる。
【0006】
また、N-アセチルスクロサミンはこれまで食品素材中だけでなく、自然界からも未だに検出されていない。そのため、N-アセチルスクロサミンを食品素材として利用するために、食経験の有無が不明であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、N-アセチルスクロサミンを含有する、喫食可能な新規の発酵食品及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る発酵食品は、スクロース、N-アセチルグルコサミン及び米麹を含む組成物を発酵させてなる発酵食品であって、N-アセチルスクロサミンを含有する。
【0009】
前記発酵食品が甘酒であってもよい。
【0010】
本発明の第2態様に係る発酵食品の製造方法は、スクロース及びN-アセチルグルコサミンに米麹を加えて発酵させる発酵工程を備える方法であり、前記発酵食品は、N-アセチルスクロサミンを含有する。
【0011】
上記第2態様に係る発酵食品の製造方法は、更に、前記発酵工程で得られた発酵食品を乾燥する乾燥工程を備えてもよい。
【0012】
上記第2態様に係る発酵食品の製造方法は、更に、前記発酵工程の後であって、前記乾燥工程の前に、前記米麹に含まれる麹菌を除去する除去工程を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様の発酵食品及びその製造方法によれば、N-アセチルスクロサミンを含有する、喫食可能な新規の発酵食品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における薄層クロマトグラフィー法の測定結果を示す図である。
図2】実施例1における高速液体クロマトグラフィー法の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪発酵食品≫
本実施形態の発酵食品は、スクロース、N-アセチルグルコサミン及び米麹を含む組成物を発酵させてなる発酵食品であって、N-アセチルスクロサミンを含有する。
【0016】
本実施形態の発酵食品は、N-アセチルスクロサミンの他に、フラクトオリゴ糖等の複数種類の発酵糖を含有し、これらの発酵糖はプレバイオティクスとして期待できるものである。また、原料として用いられるスクロース及びN-アセチルグルコサミンは一般的な食品素材であり、これらを発酵させてなる本実施形態の発酵食品は、喫食可能なものである。
【0017】
本実施形態の発酵食品は、特に限定されないが、例えば、非アルコール性飲料として提供することができ、例えば甘酒として提供することができる。
【0018】
また、本実施形態の発酵食品は、健康食品(特定保健用食品を含む)、機能性食品、健康飲料、機能性飲料として提供することができる。
【0019】
また、本実施形態の発酵食品の形態は、上記組成物を発酵させた生成物をそのまま食品として提供してもよく、得られた生成物を適宜加工して、例えば、濃縮シロップ、凍結乾燥品、スプレードライ品等の形態で提供してもよい。
【0020】
本実施形態の発酵食品は、原料としてスクロース及びN-アセチルグルコサミンを用いて、米麹により発酵させることで得られるものである。本実施形態の発酵食品に含まれるN-アセチルスクロサミンは、米麹に由来するβ-フルクトフラノシダーゼがスクロースとN-アセチルグルコサミンとの間で糖転移反応を行わせることで生成されたものである。
【0021】
本実施形態の発酵食品中のN-アセチルスクロサミンの含有量は、例えば0.1mg/mL以上10mg/mL以下とすることができ、0.5mg/mL以上7mg/mL以下とすることができ、1mg/mL以上5mg/mL以下とすることができる。
【0022】
また、本実施形態の発酵食品は、米麹による発酵で生成された発酵糖として、N-アセチルスクロサミンの他に、フルクトースの重合度の異なるフラクトオリゴ糖が含まれる。フラクトオリゴ糖として具体的には、例えば、1-ケストース、ニストース、フラクトシルニストース等が挙げられる。
【0023】
本実施形態の発酵食品中の上記フラクトオリゴ糖の合計含有量は、例えば0.01mg/mL以上5mg/mL以下とすることができ、0.05mg/mL以上3mg/mL以下とすることができ、0.1mg/mL以上1mg/L以下とすることができる。
【0024】
N-アセチルスクロサミン及び上記フラクトオリゴ糖は、腸内細菌叢中のビフィズス菌等の善玉菌に資化されることが知られている。特に、N-アセチルスクロサミンは、ヒト消化酵素では分解されないことから、摂取したものが大腸に到達し、大腸内菌叢中のビフィズス菌類の特定の株を増殖させることができる。そのため、本実施形態の発酵食品に含まれる各種発酵糖は、プレバイオティクスとして期待できるものである。
【0025】
また、本実施形態の発酵食品は、N-アセチルスクロサミン及び上記フラクトオリゴ糖等の発酵糖の他に、原料であるN-アセチルグルコサミン、スクロースや米麹中の澱粉が分解されて生成したグルコース及びフルクトースが含まれる。そのため、本実施形態の発酵食品は、適度な甘みを有する。さらに、本実施形態の発酵食品は、上記単糖類及び上記オリゴ糖類の他に、米麹に由来する成分として、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、食物繊維(デンプンを含む)、アミノ酸(システイン、アルギニン、グルタミン等)等、各種栄養成分が含まれる。よって、本実施形態の発酵食品は、N-アセチルスクロサミンをはじめとする、各種栄養成分に富む食品である。
【0026】
本実施形態の発酵食品は、上記原料から生成される成分及び上記原料に由来する成分の他に、必要に応じて、各種食品素材及び食品添加物を含んでもよい。食品素材及び食品添加剤としては、喫食可能な成分であればよく、味付け、保存等を目的として添加されるものが挙げられる。
【0027】
前記食品素材として具体的には、例えば、コーヒー、紅茶、ココア、緑茶、抹茶、果汁、牛乳、ヨーグルト、豆乳、卵、野菜、チーズ等が挙げられる。
【0028】
前記食品添加物として具体的には、例えば、調味料、日持向上剤、保存料、酵素、pH調整剤、乳化剤、香料、着色料、増粘剤及びゲル化剤、糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられ、これらに限定されない。
【0029】
調味料としては、例えば、アミノ酸又はその塩、核酸又はその塩、有機酸又はその塩、無機塩類等が挙げられる。
アミノ酸又はその塩としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム等が挙げられる。
核酸又はその塩としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム等が挙げられる。
有機酸又はその塩としては、例えば、クエン酸一カリウム等が挙げられる。
無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0030】
日持向上剤としては、例えば、カラシ抽出物、ワサビ抽出物、コウジ酸等が挙げられる。
【0031】
保存料としては、例えば、しらこ蛋白抽出物、ポリリジン、ソルビン酸等が挙げられる。
【0032】
酵素としては、例えば、α、βアミラーゼ、α、βグルコシダーゼ、パパイン等が挙げられる。
【0033】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。
【0034】
乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン等が挙げられる。
【0035】
着色料としては、例えば、β-カロチン、アナトー色素、紫トウモロコシ色素等が挙げられる。
【0036】
増粘剤及びゲル化剤としては、例えば、カラギナン、アルギン酸及びアルギン酸塩、ペクチン、タマリンドシードガム、グルコマンナン、生澱粉、化工澱粉、加工澱粉、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム等が挙げられる。
【0037】
糖類としては、原料として用いられるスクロースやN-アセチルグルコサミン、発酵により生成される単糖類及びオリゴ糖類以外のものであればよく、例えば、麦芽糖、還元澱粉水飴、デキストリン、トレハロース、黒糖、はちみつ等が挙げられる。
【0038】
糖アルコール類としては、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられる。
【0039】
高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリン等が挙げられる。
【0040】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC等が挙げられる。
【0041】
ミネラル類としては、例えば、鉄、カルシウム等が挙げられる。
【0042】
≪発酵食品の製造方法≫
本実施形態の発酵食品の製造方法は、下記に説明する発酵工程を備える方法である。
【0043】
本実施形態の発酵食品の製造方法によれば、N-アセチルスクロサミンを含有する発酵食品が得られる。
【0044】
[発酵工程]
発酵工程では、スクロース及びN-アセチルグルコサミンに米麹を加えて発酵させる。
【0045】
発酵工程で用いられる米麹は、公知の方法を用いて、蒸し米と麹菌とを混合して発酵させることで得られる。又は、米麹は、市販のものを用いてもよい。
【0046】
米麹に含まれる麹菌としては、β-フルクトフラノシダーゼ活性を有するものであればよく、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)であることが好ましい。
【0047】
発酵工程では、生菌である麹菌を含む米麹を用いるため、麹菌が有するβ-フルクトフラノシダーゼによるスクロースとN-アセチルグルコサミンとの間で糖転移反応の他に、アミラーゼによるデンプンの糖化反応、プロテアーゼによるタンパク質のアミノ酸への分解反応も行われる。
【0048】
発酵温度としては、20℃以上60℃以下とすることができ、25℃以上50℃以下が好ましい。
発酵時間としては、発酵温度、原料の仕込量に応じて適宜調整することができ、例えば8時間以上16時間以下とすることができる。
発酵時のpHとしては、例えば、4以上7以下とすることができ、5以上6以下が好ましい。
【0049】
発酵工程において、スクロース及びN-アセチルグルコサミンに加えて、蒸し米を添加してもよい。これにより、蒸し米に含まれるデンプンが糖化することで、得られる発酵食品の甘みがより向上する。また、スクロースが糖転移反応により優先的に使用される。
【0050】
発酵工程により得られた発酵食品は、必要に応じて、上記食品素材及び上記食品添加物を添加及び混合して、適宜、香味を調整してもよい。
【0051】
また、得られた発酵食品は、加熱殺菌等を行い、そのまま容器に充填してもよく、後述する乾燥工程、濃縮工程及び除去工程等を行った後に、加熱殺菌等を行い、容器に充填してもよい。
【0052】
[乾燥工程]
乾燥工程では、前記発酵工程で得られた発酵食品を乾燥する。
【0053】
乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、風乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)、ドラムドライ、低温乾燥、凍結乾燥、加圧乾燥等が挙げられ、これらに限定されない。これら乾燥方法を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
乾燥することで、粉末状等の固形状の発酵食品が得られる。これら固形状の発酵食品をさらに錠剤等の形状に成形してもよい。
【0055】
[濃縮工程]
濃縮工程では、前記発酵工程で得られた発酵食品を濃縮する。
【0056】
濃縮工程は、前記発酵工程の後であって、前記乾燥工程の前に行うことが好ましい。また、後述する除去工程の前であってもよく、後であってもよい。
【0057】
濃縮方法としては、例えば、常圧加熱濃縮、減圧加熱濃縮、冷凍濃縮、膜濃縮逆浸透法等の公知の濃縮方法が採用できる。これら濃縮方法を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、発酵食品に含まれる未糖化の米等の固形成分を分離するために、濾過等により固液分離してもよい。これにより、液状の濃縮シロップが得られる。
【0059】
[除去工程]
除去工程では、前記米麹に含まれる麹菌を除去する。
【0060】
除去工程は、前記発酵工程の後であって、前記乾燥工程の前に行うことが好ましい。また、除去工程は、前記濃縮工程の前であってもよく、後であってもよい。
【0061】
除去方法としては、例えば、フィルターによる濾過、カラムによる分離等の公知の除去方法が採用できる。これら除去方法を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]発酵食品の製造
200mL容三角フラスコ内で、スクロース(以下、「Suc」と略記する場合がある)5g及びN-アセチルグルコサミン(以下、「GlcNAc」と略記する場合がある)10gを50mLの水に溶解し、Suc-NAG溶液を調製した。次いで、Suc-NAG溶液について100℃、5分間熱殺菌処理を行い、冷却した後、市販の乾燥米麹1.0gを加えて、pH調整をせずに、40℃で、50rpmで振盪攪拌しながら発酵させた。次いで、発酵開始から0、8、24及び48時間後に発酵液をサンプリングし、各試料を10,000×g、4℃で5分間遠心し、上清を得た。得られた上清を、0.45μmのメンブレンを用いて濾過し、濾液を100mL容三角フラスコに移した。次いで、濾液について100℃、5分間熱殺菌処理を行い、冷却した後、水で10倍希釈して、薄層クロマトグラフィー(Thin-Layer Chromatography;TLC)法及び高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)法により分析した。TLCの結果を図1に、HPLCの結果を図2に示す。なお、図1及び2において、「Glc」はグルコース、「Fru」はフルクトース、「GlcNAc」はN-アセチルグルコサミン、「Suc」はスクロース、「SucNAc」はN-アセチルスクロサミン、「1-Kes」は1-ケストースである。また、図1において、「Standard」は各糖の標準物質を意味する。
【0064】
(TLCの測定条件)
TLCプレート:Silica gel、メルク社製
展開相:ジクロロメタン:メタノール:水=12:5:1
展開回数:4回
【0065】
(HPLCの測定条件)
高速液体クロマトグラフ:LC-20A、島津製作所社製
検出器:示差屈折計(Shodex(登録商標) RI-101)、Shodex社製
カラム:Sugar-D、φ4.6mm×250mm、ナカライテスク社製
カラム温度:室温
移動相:CHCN(アセトニトリル):HO(水)=77:23
流量:0.8mL/min
注入量:10μL
【0066】
図1及び図2から、発酵時間の経過とともに、原料であるスクロース(Suc)の含有量は減少し、発酵開始から48時間後には、ほぼ消失した。一方、過剰に加えたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の含有量の減少は緩やかであった。また、フルクトース(Fru)、グルコース(Glc)、N-アセチルスクロサミン(SucNAc)及び1-ケストース(1-Kes)の含有量が経時的に増加した。
また、HPLC法により測定された、発酵開始から48時間後の発酵液中の各糖の含有量は、以下の表1に示すとおりである。
【0067】
【表1】
【0068】
これらのことから、米麹に由来するβ-フルクトフラノシダーゼにより、糖転移が起きていることが明らかとなった。
また、発酵糖であるN-アセチルスクロサミン(SucNAc)及び1-ケストース(1-Kes)は、腸内環境の改善効果を有し、プレバイオティクスとして期待されているオリゴ糖である。よって、得られた発酵食品は、少なくとも2種の機能性オリゴ糖を含むことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本実施形態の発酵食品及びその製造方法によれば、N-アセチルスクロサミンを含有する新規の発酵食品が得られる。この発酵食品に含まれるN-アセチルスクロサミン、フラクトオリゴ糖等の発酵糖は、プレバイオティクスとして期待できる。また、本実施形態の発酵食品は、一般的な食品素材を原料としており、喫食可能なものである。
図1
図2