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特許7129066混合カチオンペロブスカイト固体太陽電池とその製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】混合カチオンペロブスカイト固体太陽電池とその製造
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20220825BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20220825BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20220825BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220825BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/08 T
H01G9/20 113A
H05B33/14 Z
H05B33/14 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019502674
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 IB2017054008
(87)【国際公開番号】W WO2018015831
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】16180656.7
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514095985
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル サリバ
(72)【発明者】
【氏名】松井 太佑
(72)【発明者】
【氏名】コンラート ドマンスキ
(72)【発明者】
【氏名】ソ チヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャイク モハメド ザケールディン
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング リヒャルト トレス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グレーツェル
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/020699(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318477(US,A1)
【文献】国際公開第2016/038338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/00-51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料:
MX (I)
[式中
nは、カチオンAの数であり、4~7から選択される整数であり、
Aは、無機カチオンAi及び有機カチオンAoから選択される1価のカチオンであり、ここで
前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから独立して選択され、そして
前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)から独立して選択され、
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択され、
Xは、Br、I、Cl、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されるアニオンであり、
ここで、少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択され、1つ又はそれ以上のカチオンAは無機カチオンAiから選択され、
少なくとも2つのカチオンAが、Rb及びCsである無機カチオンAiである]。
【請求項2】
有機カチオンAoから選択される前記少なくとも1つのカチオンAが、ホルムアミジニウム又はメチルアンモニウムから選択される、請求項1に記載のペロブスカイト材料。
【請求項3】
1つのカチオンAがホルムアミジニウムである有機カチオンAoであり、第2のカチオンAがメチルアンモニウムである有機カチオンAoである、請求項1又は請求項2に記載のペロブスカイト材料。
【請求項4】
Mが、Ge2+、Sn2+、若しくはPb2+、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
【請求項5】
式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造が式(II):
AiAiAiAiAiAi(AoAoMX (II)
[式中、
a、b、c、d、e、fは、無機カチオンAiの割合であり、g及びhは有機カチオンAoの割合であり、
jは、有機カチオンAoAoの割合であり、
a、b、c、d、e、fは、≧0.00かつ<1.00であり、及び0.00<(a+b+c+d+e+f)<1.00であり、
h=1.00-g、及び0.00<g≦1.00であり、
j=1.00-(a+b+c+d+e+f)及び0.00<j<1.00であり、そして
Aiは請求項1~4で定義される無機カチオンであり、Aoは請求項1~4で定義される有機カチオンであり、
Mは請求項1~4で定義される2価金属カチオンであり、Xは請求項1~4で定義されるハライド及び/又は擬ハライドアニオンであり、
但し
hが0.00である場合、AiAiAiAiAi又はAiから選択される3、4、5、又は6つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有し、
hが>0.00である場合、AiAiAiAiAi又はAiから選択される2、3、4、又は5つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する]
の有機-無機ペロブスカイト構造から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
【請求項6】
有機カチオンAo又はAoの一方がメチルアンモニウムであり、他方の有機カチオンがホルムアミジニウムである、請求項5に記載のペロブスカイト材料。
【請求項7】
hが0.00である場合、AiAiAiAiAi又はAiから選択される少なくとも3つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する、請求項5~6のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
【請求項8】
hが>0.00である場合、式(II)の前記有機-無機ペロブスカイト構造のAiAiAiAiAi又はAiから選択される少なくとも2つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する、請求項5~のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
【請求項9】
>0.00である割合a、b、c、d、e、及びfを有するAiAiAiAiAi又はAlから選択される1つの無機カチオンAiは、Rb2+又はCs2+である、請求項5~8のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
【請求項10】
請求項1~9で定義されるペロブスカイト材料を含む光電子デバイス。
【請求項11】
p-nヘテロ接合、フォトトランジスタ、又はOLED(有機発光ダイオード)からの有機太陽電池、色素増感太陽電池、又は固体太陽電池から選択される光電池デバイスから選択される、請求項10に記載の光電子デバイス。
【請求項12】
表面増加足場構造体によって覆われた導電性支持層と、前記ペロブスカイト材料を含む1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層と、対電極及び/又は金属層とを含む固体太陽電池である、請求項10~11のいずれか1項に記載の光電子デバイス。
【請求項13】
請求項1~9で定義される式(I)のペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料を調製する方法であって、
- 無水溶液中のペロブスカイト前駆体組成物を提供することと、
- 無水溶液中の無機カチオンAiの少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供することであって、前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから選択され、前記ハライド及び/又は擬ハライド塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、及び臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから選択されることと、
- 無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の前記無水溶液を、前記ペロブスカイト前駆体組成物に添加し、そして室温で混合する工程とを含み、
ここで、
前記ペロブスカイト前駆体組成物は、有機カチオンAoの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩と、金属Mの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩とを含み、前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)から選択され、前記金属Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択され、前記塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されること、及び
無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の各ハライド及び/又は擬ハライド塩は、室温で無水溶液に溶解されること、を特徴とする、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合カチオン有機-無機ペロブスカイト、特に少なくとも4種のカチオンを有する混合カチオン有機-無機ハライドペロブスカイトを含むペロブスカイト材料と、光電子デバイス及び/又は光電気化学デバイスと、光電池デバイス、特に混合カチオン有機-無機ペロブスカイトを含む太陽電池又は固体太陽電池と、前記ペロブスカイト材料を調製する方法と、及び前記光電池デバイス又は前記太陽電池を調製する方法と
に関する。
【背景技術】
【0002】
(技術的背景及び本発明の根底にある問題)
ペロブスカイト型太陽電池は、近年、低コストで高効率の光電池(PV)の候補として登場してきた。大きな関心を集めている1つのクラスの光電池材料は、ハライドペロブスカイト、特に有機-無機ハライドペロブスカイトである。
【0003】
光電池に使用される有機-無機ハライドペロブスカイトは、AMXの一般構造を有し、これは、1価のカチオンA=(Cs、メチルアンモニウム(MA)、ホルムアミジニウム(FA))、2価金属M=(Pb2+)、及びアニオンX=(Br;I)を含む。
【0004】
純粋なFAペロブスカイトは、光不活性な斜方晶又は六方晶δ相(「黄色相」としても知られる)として結晶化し得る。この種の結晶は熱力学的に安定であるが、室温では光不活性である。純粋なFAペロブスカイトはまた、光活性ペロブスカイトα相(「黒色相」)としても結晶化し得る。黒色相結晶化へのFaペロブスカイトの結晶化の誘導は、純粋なペロブスカイトに追加のカチオンを混合することによって改善されている。
【0005】
従って、黒色相へのFAペロブスカイトの好適な結晶化を誘導するのに、少量のMAで十分であることが示された。わずかに小さいMAカチオンは、FAペロブスカイトの黒色相の「結晶化剤」(又は安定剤)と見なされる。MAは、FA結晶化の黄色相形成を抑制するために最も研究されているカチオンである。ペロブスカイト型太陽電池の21.0%という最高効率は、有機-無機ペロブスカイトを用いて得られており、ここで有機カチオンはメチルアンモニウム(MA)(CHNH )とホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )の混合物である。
【0006】
最近、セシウム(Cs)をFAと組み合わせて使用した場合、FAの好適な結晶化の誘導も得られることが証明された。
【0007】
純粋なペロブスカイト化合物、MAPbX、FAPbX、及びCsPbX(X=Br又はI)は、55℃での結晶の構造相転移、水分との接触による劣化、熱不安定性、さらには光誘起捕獲状態の生成、光電池デバイス(PV)の不適切なバンドギャップ(これは、太陽光集光効率の低下、及びXがハライドの混合物からなる場合、ハライドアニオンの分離を引き起こす)などの多くの欠点を持っている。全ての欠点は装置効率を低下させる。
【0008】
従って、ペロブスカイトを混合カチオン及びハライドと一緒に使用することがより重要になっている。最も最近の進歩は、よく知られている化合物の開発の最適化に焦点を当てている。最近の研究は、純粋なペロブスカイト化合物に組み込む元素を特定することに焦点を当てているが、ほどほどの成功である。これは、ほとんどすべての元素が複数の酸化状態を持ち、これがペロブスカイト構造の維持に対する基本的な安定性の問題を与えているためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、純粋な有機-無機ペロブスカイトに関する欠点に対処している:すなわち、製造工程中の変動(すなわち、温度条件:熱処理、溶媒への暴露、湿度など)に対する感受性、その結果としてのペロブスカイトの薄膜の品質の低下、アルファ相及びデルタ相の混晶が得られること、熱的及び構造的不安定性、1.34eVよりも高い又は1.34eVから離れたバンドギャップ、低い発光率及び低いルミネセンス。バンドギャップは400~800nmの間であり、3~1.54eVの間に含まれる。
【0010】
本発明は、低開路電圧(Voc)、熱不安定性、長期間の完全照明における高い効率損失(エージング問題)、及び低い光感度などの、有機-無機ペロブスカイトを含む光電池デバイスの欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
本発明は、容易に入手可能で低コストの材料を使用して、工業的に知られている製造工程に基づく短い製造手順を使用して、効率的な光電池デバイス、特に効率的な方法で迅速に調製できる固体太陽電池を提供することを目的とする。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、安定な光活性ペロブスカイトアルファ相を室温で維持するには通常小さすぎる(Csを除く)、Li、Na、K、Rb、Csなどの1価アルカリ金属をカチオンとして有機-無機ペロブスカイト構造に導入して、前記構造を光活性黒色相に安定化させることができることを見いだした。これらはまた、混合ハライドの種の分離を回避することによって有機-無機ハライドペロブスカイト中の混合ハライドを安定化させる。前記有機-無機ペロブスカイトは、少なくとも4つの混合有機-無機カチオンの組み合わせを有し、前例のない材料特性:優れた効率、再現性、結晶相安定性、熱安定性、及び吸湿安定性、ならびに長期的には最大電力点追従、を示す。
【0013】
本発明者らは、注目すべきことに、少なくとも4つの組み合わされたカチオンを有する高純度の有機-無機ハライドペロブスカイトを有する膜を含む、光電子デバイス及び/又は光電池デバイス、特に固体太陽電池又は光電池デバイスを提供する。このような有機-無機ペロブスカイトによって作製された薄膜は、1.24Vの開路電圧(Voc)(ほとんどすべての光電池材料でこれまでに報告された最高のVoc)、1.63eVのバンドギャップ(バンドギャップとVocとの差である電位損失は、光電池材料について測定されたものの中で、最も低いものではなくても、最も低いものの1つである)、及び高い電子発光を有するそのような有機-無機ハライドペロブスカイトを含む光電池デバイスに対して21.6%までの驚くべき安定化された効率を与える。さらに、少なくとも4つの混合カチオンを有するそのような有機-無機ハライドペロブスカイトは、500時間の完全照射及び85℃での加熱及び最大電力点追従の後に、わずか5%しか劣化しない。
【0014】
ある態様において、本発明は、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料を提供する:
MX(I)
[式中、
nは、カチオンAの数であり、≧4の整数であり、
Aは、無機カチオンAi及び/又は有機カチオンAoから選択される1価のカチオンであり、ここで
前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから独立して選択され、そして
前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)から独立して選択され、
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択され、
Xは、Br、I、Cl、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されるアニオンであり、
ここで、少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択される]。
【0015】
さらなる態様において本発明は、式(I)のペロブスカイト構造を含む本発明のペロブスカイト材料を含む光電子及び/又は光電気化学デバイスを提供する。
【0016】
別の態様において本発明は、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含む本発明のペロブスカイト材料を調製する方法であって、
- 無水溶液中のペロブスカイト前駆体組成物を提供する工程と、
- 無水溶液中の無機カチオンAiの少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供する工程であって、前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから選択され、前記ハライド及び/又は擬ハライド塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、及び臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから選択される工程と、
- 無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の前記無水溶液を、無水溶液中の前記ペロブスカイト前駆体組成物に添加し、そして室温で混合する工程と、を含み、
ここで、
前記ペロブスカイト前駆体組成物は、有機カチオンAoの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩と、金属Mの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩とを含み、前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)から選択され、前記金属Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択され、前記塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されること、及び
無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の各ハライド及び/又は擬ハライド塩は、室温で無水溶液に溶解されること、を特徴とする、上記方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様及び好適な実施態様は、本明細書の以下において及び添付の特許請求の範囲において定義される。本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に示される好適な実施態様の説明から当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、A:3つの有機-無機カチオン(Cs(MAFA(1-a)Pb(I0.83Br0.17)(CsMAFA)、B、C、及びD:4つの有機-無機カチオン(RbCs(MAFA(1-a-b)Pb(I0.83Br0.17)(RbCsMAFA)を有する有機-無機ペロブスカイトの薄膜のSEM写真を示し、ここでカチオンRbは、Csと比較して2%(B)、5%(C)、及び10%で存在する。
図2図2は、エージングプロセスに付されなかったが、調製された1日後に光起電力パラメータを測定した、三重混合有機-無機カチオンペロブスカイトCsMAFAPbBr0.170.83(CsMAFA)又は四重混合有機-無機カチオンペロブスカイトRbCsMAFAPbBr0.170.83(RbCsMAFA)を有するPVデバイスの異なるバッチの光電子変換効率(PCE)及び光起電力パラメータのグラフ記録を示す。
図3A図3Aは、三重混合有機-無機カチオンペロブスカイト(丸)(Voc=1110mV、Jsc=23.6mA/cm、FF=0.76、PCE=20.1%)、又は四重混合有機-無機カチオンペロブスカイト(四角)(Voc=1144mV、Jsc=23.4mA/cm、FF=0.82、PCE=21.9%)を有するPVデバイスの電流-密度/電圧JV曲線を示す。
図3B図3Bは、21.6%のPCE、81%のFF、及び1180mVのVocを有する四重混合有機-無機カチオンペロブスカイトRbCsMAFA PVデバイスの光電変換効率(IPCE)を示す。積分された短絡電流密度は、ソーラーシミュレータからのJVスキャンに密接に従う。
図4図4は、10mVs-1の走査速度(A)で取られた最高開路電圧デバイスの電流-密度/電圧(JV)曲線を示す。(B)のグラフは、1240mVで120秒間にわたる開路電圧を示す(それぞれ、JVスキャンとVocスキャンで三角で示されている)。
図5図5は、21.8%の効率を有し、10mVs-1の走査速度で取られた最高性能の太陽電池の電流-密度/電圧(JV)曲線を示す(Voc=1180mV;Jsc=22.8mAcm-、及び例外的なフィルファクター81%)(B)。(A)のグラフは、走査速度に依存しない60秒間の最大電力点(MPP)追従を示し、これが977mVの電圧と22.1mA.cm-の電流密度で21.6%の最大電力出力をもたらすことを示す(JVとMPPスキャンのそれぞれで三角で示されている)。
図6A図6Aは、本発明の光電子及び/又は光電気化学デバイスのエレクトロルミネセンス曲線を示す。デバイスに電圧が印加され、得られた電流は上向きの三角の曲線で表される。これに応答して、デバイスは発光を開始し、前記発光はフォトダイオードによって記録される(下向きの三角)。次に、得られたエレクトロルミネセンスは、デバイスとフォトダイオードの電流の比(丸)として計算される。
図6B図6Bは、電圧の関数としてのEQEエレクトロルミネセンス(EL)を示す(左の図表)。右の図表は、波長に対する対応するELスペクトルを示す。
図7図7は、四重混合有機-無機カチオンペロブスカイト太陽電池の熱安定性試験を示す。このデバイスを、窒素雰囲気中で連続照明及び最大電力点追従下で、85℃で500時間エージングする(丸の曲線)。エージング前(17.3%)及びエージング後(15.45)の室温(RT)効率は、三角形の上に示される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(好適な実施態様の詳細な説明)
本発明は、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料を提供する:
MX(I)
[式中、
nは、カチオンAの数であり、≧4の整数であり、
Aは、無機カチオンAi又は有機カチオンAoから選択される1価のカチオンであり、ここで
前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから独立して選択され、そして
前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)から独立して選択され、
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択され、
Xは、Br、I、Cl、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されるアニオンであり、
ここで、少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択される]。
【0020】
好ましくは、有機カチオンAoから選択される前記少なくとも1つのカチオンAはFAである。
【0021】
1つの実施態様において、nである式(I)のペロブスカイト構造中のカチオンAの数は、4~7から選択される整数である。nは4、5、6、又は7でもよい。従って、少なくとも2つのカチオンAは互いに異なる。好ましくは、すべてのカチオンは、n≧4カチオンである時、互いに異なる。従って、A、A、A、…、Aカチオン(nは、4~7から選択される整数である)は互いに異なる。
【0022】
Aは、無機カチオンAi及び/又は有機カチオンAoから選択される1価のカチオンである。少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択され、及び/又は少なくとも1つのカチオンAは無機カチオンAiから選択される。好ましくは、少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択され、そして1つ又はそれ以上のカチオンAは無機カチオンAiから選択される。好ましくは、2つのカチオンAは有機カチオンAoから選択され、そして(n-2)個のカチオンAは無機カチオンAiから選択される。
【0023】
nが4である場合、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造A(1)、・・・、A(4)MXは、式(Ia)又は(Ib)から選択され得る:
AiAiAiAoMX(Ia)
AiAiAoAoMX(Ib)。
【0024】
nが5である場合、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造A(1)、・・・、A(5)MXは、式(Ic)又は(Id)から選択され得る:
AiAiAiAiAoMX(Ic)
AiAiAiAoAoMX(Id)。
【0025】
nが6である場合、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造A(1)、・・・、A(6)MXは、式(Ie)又は(If)から選択され得る:
AiAiAiAiAiAoMX(Ie)
AiAiAiAiAoAoMX(If)。
【0026】
nが7である場合、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造A(1)、・・・、A(7)MXは、式(Ig)又は(Ih)から選択され得る:
AiAiAiAiAiAiAoMX(Ig)
AiAiAiAiAiAoAoMX(Ih),
【0027】
本明細書で定義されるように、Aiは無機カチオンであり、Aoは有機カチオンである。
Mは本明細書で定義される金属カチオンであり、Xは本明細書で定義されるハライドアニオンである。
【0028】
従って、ペロブスカイト材料は、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、及び(Ih)のいずれか1つに従う有機-無機ペロブスカイト構造を含み得る。
【0029】
前記無機カチオンAiは、Li、Na、K、Rb、Cs、又はTlから独立して選択される。特に、前記無機カチオンAiは、Na、K、Rb、Cs、又はTl、好ましくはNa、K、Rb、Cs、又はRb、Cs、Tlから独立して選択される。nが4である場合、AiはNa、K、Rb、Cs、好ましくはRb、Csから選択され得る。
【0030】
さらなる実施態様において、少なくとも1つのカチオンAは、Rb又はCsから選択される無機カチオンAiである。
【0031】
別の実施態様において、少なくとも2つのカチオンAは、Rb及びCsである無機カチオンAiである。
【0032】
前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CHNH )、エチルアンモニウム(CHCHNH、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH)、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)、好ましくはメチルアンモニウム(MA)(CHNH )、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CHC(NH )、ジメチルアンモニウム((CHNH )、又はトリメチルアンモニウム((CHNH)、最も好ましくはメチルアンモニウム(MA)(CHNH )、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )から独立して選択される。前記有機カチオンAoは、少なくとも2つの上述の有機カチオンの組み合わせ、好ましくはホルムアミジニウム(FA)又はメチルアンモニウム(MA)である有機カチオンAoの組み合わせの下で提供されてもよい。
【0033】
さらなる実施態様において、有機カチオンAoから選択される少なくとも1つのカチオンAは、ホルムアミジニウム(FA)又はメチルアンモニウム(MA)から選択される。
【0034】
別の実施態様において、一方のカチオンAはホルムアミジニウム(FA)である有機カチオンAoであり、他方のカチオンAはメチルアンモニウム(MA)である有機カチオンAoである。
【0035】
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、又はこれらの組み合わせから選択される2価金属カチオンである。好ましくはMは、Ge2+、Sn2+、Pb2+、又はこれらの組み合わせから、最も好ましくはSn2+、Pb2+、又は少なくとも2種の前記2価金属カチオンの組み合わせから選択される。2価金属カチオンMの好適な組合せは、Sn(1.00-y)Pbであり、yは混合金属カチオンM中のPb2+の割合で、0.00<y<1.00である。
【0036】
さらなる実施態様において、XはX'X''X'''であり、ここでX'、X''、及びX'''は、独立してBr、I、Cl、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF から選択され、ここで、X'、X''、及びX'''は互いに異なるか又は互いに同一であり、又はX'、X''、及びX'''のうちの1つは、同一である他の2つとは異なる。従ってXは、Br 、I 、Cl 、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、及び(I(3-m)Cl、(I(3-m)Br、(Br(3-m)Cl、(Cl(3-m)、(Br(3-m)、(I(3-m)SCN、(I(3-m)(BF)、及び(I(3-m)(PF)からなるハライド及び/又は擬ハライドアニオンの組合せから選択されてよく、ここで、0.00<m<3.00である。ハライド及び/又は擬ハライドアニオンの前記組み合わせはまた、ハライド及び/又は擬ハライド元素間の割合として表わしてもよい。従って、Xは、Br、I、Cl、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、及び(I(1.00-z)Cl、(I(1.00-u)Br、(Br(1.00-v)Cl、(Cl(1.00-w)、or (Br(1.00-x)、(I(1.00-p)SCN、(I(1.00-q)(BF、及び(I(1.00-r)(PFr)-からなるハライド及び/又は擬ハライドアニオンの組み合わせから選択することができ、ここで、z、u、v、w、x、p、q、及びrは、前記組み合わせ中の各ハライド及び/又は擬ハライドアニオンの割合であり、0.00<z、u、v、w、x、p、q、r<1.00である。
【0037】
別の実施態様において、本発明のペロブスカイト材料は、式(II):
AiAiAiAiAiAi(AoAoMX (II)
[式中
a、b、c、d、e、fは、無機カチオンAiの割合であり、g及びhは有機カチオンAoの割合であり、
jは、有機カチオンAoAoの割合であり、
a、b、c、d、e、fは、≧0.00かつ<1.00であり、0.00<(a+b+c+d+e+f)<1.00であり、
h=1.00-g、及び0.00<g≦1.00であり、
j=1.00-(a+b+c+d+e+f)、及び0.00<j<1.00であり、そして
Aiは本明細書で定義される無機カチオンであり、Aoは本明細書で定義される有機カチオンであり、
Mは本明細書で定義される2価金属カチオンであり、Xは本明細書で定義されるハライド及び/又は擬ハライドアニオンであり、
但し
hが0.00である場合、AiAiAiAiAi又はAiから選択される3、4、5、又は6個の無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有し、
hが>0.00である場合、AiAiAiAiAi又はAiから選択される2、3、4、又は5個の無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する]
の有機-無機ペロブスカイト構造から選択される式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含む。
【0038】
ある実施態様において、有機カチオンAo又はAoの一方はメチルアンモニウムであり、他方の有機カチオンはホルムアミジニウムである。従って、gは>0.00でありかつ≦1.00である。gが1.00である場合、hは0.00であり、Aoは存在しない。好ましくは、gが1.00である場合、有機カチオンAoはホルムアミジニウム(FA)である。
【0039】
さらなる実施態様において、hが0.00である場合、式(II)の有機-無機ペロブスカイトのAiAiAiAiAi又はAlから選択される少なくとも3つの無機カチオンAiは、割合a、b、c、d、e、及びfが>0.00である。従って、a、b、c、d、e、及びfから選択される少なくとも3つの割合は>0.00であり、AiAiAiAiAi又はAlから選択される少なくとも3つの無機カチオンがペロブスカイト材料中に存在する。特に、AiAiAiAiAi又はAiから選択される3、4、5、又は6つの無機カチオンAiは、割合a、b、c、d、e、又はfが>0.00である。
【0040】
さらなる実施態様において、h>0.00である場合、式(II)の有機-無機ペロブスカイトのAiAiAiAiAi又はAlから選択される少なくとも2つの無機カチオンAiは、割合a、b、c、d、e、及びfが>0.00である。従って、a、b、c、d、e、及びfから選択される少なくとも2つの割合は>0.00であり、AiAiAiAiAi又はAlから選択される少なくとも2つの無機カチオンがペロブスカイト材料中に存在する。特に、AiAiAiAiAi又はAiから選択される2、3、4、又は5つの無機カチオンAiは、割合a、b、c、d、e、又はfが>0.00である。
【0041】
ある実施態様において、割合a、b、c、d、e、及びfが>0.00であるAiAiAiAiAi又はAlから選択される1つの無機カチオンAiは、Rb2+又はCs2+である。特に、割合a、b、c、d、e、及びfが>0.00であるAiAiAiAiAi又はAlから選択される1つの無機カチオンAiは、Rb2+であり、割合a、b、c、d、e、及びfが>0.00であるAiAiAiAiAi又はAlから選択される1つのさらなる無機カチオンAiは、Cs2+である。
【0042】
本発明はまた、式(I)のペロブスカイト構造を含む本発明のペロブスカイト材料を調製する方法を提供し、この方法は、
- 無水溶液中のペロブスカイト前駆体組成物を提供する工程と、
- 無水溶液中の本明細書で定義される無機カチオンAiの少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供する工程であって、前記ハライド及び/又は擬ハライド塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、及び臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択される工程と、
- 無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の前記無水溶液を、前記ペロブスカイト前駆体組成物に添加し、そして室温で混合する工程とを含み、
ここで、
前記ペロブスカイト前駆体組成物は、有機カチオンAoの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩と、金属Mの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩とを含み、前記有機カチオンAo及び前記金属Mは本明細書に定義されるものであり、及び前記塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、臭化物、SCN、CN、NC、OCN、NCO、NCS、SeCN、TeCN、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されること、及び
無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の各ハライド及び/又は擬ハライド塩は、室温で無水溶液に溶解されること、を特徴とする。
【0043】
無水溶液中に無機カチオンAiの少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供する工程と比較して、無水溶液中の無機カチオンAiの2を超えるハライド及び/又は擬ハライド塩を提供することができる。これは、4≦n≦7を有する式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を形成するのに必要とされるものと同じ数の、無水溶液中の無機カチオンAiのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供することができ、無機カチオンAiの全てのハライド及び/又は擬ハライド塩は室温で無水溶液に溶解される。
【0044】
無水溶液は、DMSO、DMF、又はGBLから選択される溶媒である。
【0045】
光電子及び/又は光電気化学デバイス用の本発明のペロブスカイト材料の薄膜を調製するために、前記薄膜は、メソ多孔性金属酸化物基板上の上記で定義した調製方法によって得られるペロブスカイト材料は、インサイチュ(in situ)でスピンコーティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング、又は噴霧コーティングによって、好ましくはスピンコーティングにより調製される。前記スピンコーティング工程は、1つ又は2つの工程で提供されてもよい。溶液中にペロブスカイト材料を塗布した後、薄膜はアニーリングされる。
【0046】
本発明はまた、上記又は本明細書で定義される本発明のペロブスカイト材料を含む光電子及び/又は光電気化学デバイスを提供する。本発明のペロブスカイト材料は、式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含み、これは式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、及び(Ih)のいずれか1つの有機-無機ペロブスカイト構造から選択され得るか、又は式(II)の有機-無機ペロブスカイト構造から選択され得る。
【0047】
ある実施態様において、本発明の光電子及び/又は光電気化学デバイスは、p-nヘテロ接合、フォトトランジスタ、又はOLED(有機発光ダイオード)からの有機太陽電池、固体太陽電池から選択される光電池デバイスから選択される。
【0048】
太陽電池である本固体光電池デバイスは、好ましくは導電性支持体及び/又は集電体;足場構造体;任意の保護層;1つ又はそれ以上のペロブスカイト層、任意の正孔伝導体層、任意の保護層、ならびに対電極及び/又は金属層を含む。
【0049】
さらなる実施態様において、本発明の光電子及び/又は光電気化学デバイスは、表面増加足場構造体(scaffold structure)によって覆われた導電性支持層と、本明細書で記載されたような本発明の前記ペロブスカイト材料を含む1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層と、対電極及び/又は金属層とを含む固体太陽電池である。前記1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層は、好ましくは表面増加足場構造体上に提供される。
【0050】
固体太陽電池は、保護層及び/又は正孔輸送層をさらに含み得る。
【0051】
ある実施態様において、導電性支持層は、本発明の太陽電池の支持層を提供する。太陽電池は前記支持層上に構築される。別の実施態様において、太陽電池の支持体は、対電極の側面に設けられる。この場合、導電性支持層は必ずしもデバイスの支持を提供するわけではなく、単に集電体、例えば金属箔であるか又はこれを含んでもよい。
【0052】
導電性支持層は、好ましくは太陽電池から得られる電流を集める集電体として機能するか及び/又はこれを含む。
【0053】
例えば、導電性支持層は、インジウムドープ酸化錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、ZnO-Ga、ZnO-Al、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、SrGeO及び酸化亜鉛から選択される材料が、好ましくはプラスチック又はガラスのような透明基板上に被覆されて含まれ得る。
【0054】
集電体はまた、例えばチタン又は亜鉛箔などの導電性金属箔によって提供されてもよい。不透明な導電性材料は、特にデバイスによって捕獲されるべき光に露光されていないデバイスの側において集電体として使用され得る。
【0055】
ある実施態様において、表面積を増加させる足場構造体が、前記導電性支持構造上に、又は前記足場構造体上に提供され得る保護層上に提供される。足場材料は、半導体材料、導電性材料、非導電性材料、及びこれらの2つ又はそれ以上の組み合わせからなる群から選択されるものから本質的になるか又はこれらから作製される、多種多様な異なる材料から選択される任意の1つ又は組み合わせから作製され得る。
【0056】
1つの実施態様において、前記足場構造体は金属酸化物を含む。足場構造体の材料は、例えばSi、TiO、SnO、Fe、ZnO、WO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、SrTiO、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、及びこれらの組合せなどの半導体材料から選択される。好適な半導体材料は、Si、TiO、SnO、ZnO、WO、Nb、及びSrTiOである。
【0057】
足場構造体は、非導電性材料、すなわち、プラスチック、サブマイクロメートルのプラスチックナノ粒子(ポリスチレン(PS))球を含むことができる。
【0058】
「正孔輸送材料(hole transport material)」、「正孔輸送材料(hole transporting material)」、「有機正孔輸送材料」、及び「無機正孔輸送材料」などは、前記材料又は組成物にわたって電荷が電子又は正孔の移動(電子運動)によって輸送される任意の材料又は組成物を意味する。従って「正孔輸送材料」は導電性材料である。このような正孔輸送材料などは電解質とは異なる。後者において、電荷は分子の拡散によって輸送される。
【0059】
正孔輸送材料は、好ましくは有機及び無機の正孔輸送材料から選択することができる。
【0060】
ある実施態様において、正孔輸送材料は、トリフェニルアミン、カルバゾール、N,N,(ジフェニル)-N',N'-ジ-(アルキルフェニル)-4,4’-ビフェニルジアミン、(pTPD)、ジフェニルヒドラゾン、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)、電子供与基及び/又は受容基で置換されたポリTPD、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-アルト-N-(4-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン(TFB)、2,2',7,7'-テトラキス-N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン-9,9’-スピロビフルオレン)(スピロ-OMeTAD)、N,N,N',N'-テトラフェニルベンジジン(TPD)、PTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])から選択される。
【0061】
さらなるイオン化合物が有機正孔輸送材料中に存在してもよく、前記イオン化合物は、TBAPF、NaCFSO、LiCFSO、LiClO、及びLi[(CFSONから選択される。有機正孔輸送材料中に存在し得る他の化合物は、例えばアミン、4-tert-ブチルピリジン、4-ノニル-ピリジン、イミダゾール、N-メチルベンズイミダゾールである。
【0062】
正孔輸送材料は、無機正孔輸送材料でもあり得る。多種多様の無機正孔輸送材料が市販されている。無機正孔輸送材料の非限定的な例は、Cu2O、CuNCS、CuI、MoO3、及びWoO3である。
【0063】
固体太陽電池は、任意の層として保護層を含むことができる。この保護層は、Mg酸化物、Hf酸化物、Ga酸化物、In酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Ta酸化物、Y酸化物、及びZr酸化物から選択される材料を含む金属酸化物層であり得る。この層は1.5nm以下、好ましくは1nm以下の厚さを有することができる。前記金属酸化物層は特に「緩衝層」であり、これは、例えば光生成電子とペロブスカイト材料との再結合を低減又は防止する。前記任意層はCrを含んでよく、正孔輸送材料層と対電極との間に設けられてもよい。
【0064】
本発明の太陽電池は、対電極を備えることが好ましい。対電極は、一般にデバイスの内側に向かって電子を提供するか及び/又は正孔を埋めるのに適した触媒活性材料を含む。すなわち対電極は、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、C、導電性ポリマー、及び上記の2つ又はそれ以上の組み合わせから選択される1つ又はそれ以上の材料を含み得る。導電性ポリマーは、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシ-チオフェン、ポリアセチレン、及びこれらの2つ又はそれ以上の組み合わせを含むポリマーから選択され得る。
【0065】
対電極は、対電極材料をペロブスカイト層上で熱蒸発させることによって適用することができる。
【0066】
対電極は、好ましくは集電体に接続され、次に集電体はデバイスの反対側の導電性支持体として外部回路に接続される。装置の反対側と同様に、導電性ガラス又はプラスチックなどの導電性支持体は対電極に電気的に接続することができる。この場合、デバイスは、例えば太陽電池を包む2つの対向する支持層又は保護層を有する。
【0067】
ある実施態様において、前記対電極及び/又は金属層は、前記ペロブスカイト層と直接接触しているか、及び/又は追加の層又は媒体によって前記ペロブスカイト層から分離されていることはない。しかしこれは金属酸化物保護層の可能性を排除するものではなく、金属酸化物保護層は、本明細書の他の箇所で特定されるように、前記対電極と前記ペロブスカイト層との間に設けられ得る。
【0068】
本発明はまた、以下を含む固体太陽電池を調製するための方法を提供し、この方法は、
表面積を増大させる足場構造体又はメソ多孔性構造体で覆われた導電性支持層を提供する工程と、
本明細書で定義される本発明のペロブスカイト材料を含む1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層を提供する工程と、
対電極を設ける工程とを、含む。
【0069】
前記1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層は、本発明のペロブスカイト材料の薄膜を形成し、前記薄膜は、本発明のペロブスカイト材料を導電性支持層のメソ多孔性構造体上にスピンコーティングした後に得られ、これは、任意の保護層及び前記1つ又はそれ以上のペロブスカイト材料層の前記アニーリングにより被覆され得る。
【0070】
本発明の固体を調製する方法は、1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層の上に正孔輸送層を提供する工程をさらに含み得る。
【0071】
本発明の方法は、前記足場構造体又はメソ多孔性構造体上に1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層を塗布する工程を含む。ペロブスカイト層は、任意の適切な方法で塗布することができる。ある実施態様において、1つ又はそれ以上のペロブスカイト層は、液滴コーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、及び噴霧コーティングのうちのいずれか1つ又はこれらの組み合わせ、好ましくはスピンコーティングによって塗布される。
【0072】
本発明を実施例によって説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【実施例
【0073】
固体太陽電池の調製
基板作製とLiドープTiO
2%のHellemenx水溶液中で30分間超音波処理することにより、日本板ガラス10Ω/平方を洗浄した。脱イオン水及びエタノールですすいだ後、基板をさらに15分間UVオゾン処理して洗浄した。次に、無水エタノール中のチタンジイソプロポキシドビス-(アセチルアセトネート)の前駆体溶液から、450℃で噴霧熱分解して30nmのTiO緻密層をFTO上に堆積させた。噴霧後、基板を450℃で45分間置き、放置して室温まで冷却した。次に、エタノールで希釈した30nmの粒子ペースト(Dysol 30 NR-D)を用いて2000rpms-1(209.44rad/s)の速度で4000rpm(418.88rad/s)で20秒間スピンコーティングして150~200nmの厚さの層を得ることによって、メソ多孔性TiO層を堆積させた。スピンコート後、基板を100℃で10分間乾燥し、次に乾燥空気流下で450℃で30分間再度焼結した。
【0074】
メソ多孔性TiOのLiドーピング(Nat Commun, 2016, 7, 10379)は、アセトニトリル中の0.1MのLi-TFSI溶液を3000rpm(314.16rad/s)で10秒間スピンコーティングし、続いて450℃で30分間の別の焼結工程によって得られる。150℃に冷却した後、基板を直ちに窒素雰囲気のグローブボックス(5~6ミリバールで変動する圧力を有するMBraun)に移して、ペロブスカイト膜を堆積させた。
【0075】
正孔輸送層及び上部電極
ペロブスカイトのアニーリング後、基板を数分間冷却し、スピロ-OMeTAD(Merck)溶液又はPTAA溶液を4000rpm(418.88rad/s)で20秒間スピンコートした。スピロ-OMeTADに、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム塩(Li-TFSI、Sigma-Aldrich)、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)-コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(FK209、Dynamo)、及び4-tert-ブチルピリジン(TBP、Sigma-Aldrich)をドープした。スピロ-OMeTADに対する添加剤のモル比は、Li-TFSI、FK209、及びTBPについてそれぞれ0.5、0.03、及び3.3であった。最後に、70~80nmの金上部電極を高真空下で熱蒸発させた。
【0076】
本発明のペロブスカイト前駆体溶液及びペロブスカイト材料の膜の調製
RbCsFAMAPbBrI合成:ペロブスカイト前駆体溶液
有機カチオンはDyesolから購入した;TCIからの鉛化合物;CsI及びRbIはabcr GmbHから、「混合」ペロブスカイト前駆体溶液は、無水DMF:DMSO 4:1(v:v)中にFAI(1M)、PbI(1.1M)、MABr(0.2M)、及びPbBr(0.2M)を含む前駆体溶液から得た。次に、DMSO中1.5Mの原液として予め溶解したCsI及びRbIを混合ペロブスカイト前駆体に添加して、所望の四重極カチオン組成を得た。
【0077】
RbCsFAMAPbBrIの膜の調製
ペロブスカイト溶液を上記基板上で2工程プログラムで1000及び6000rpm(104.72及び628.32rad/s)でそれぞれ10及び20秒間スピンコートした。第2工程の間、プログラムの終了5秒前に100μlのクロロベンゼンをスピンしている基板上に注いだ。次に、基板を窒素充填グローブボックス中で1時間アニーリングした(通常100℃)。
【0078】
光電池デバイス
ペロブスカイト薄膜の結晶化
100℃でのアニーリング工程前に、有機カチオンペロブスカイト(MAFA)Pb(10.83Br0.17(MAFA)又は四重混合有機-無機カチオンペロブスカイトRbCs(MAFA(1-a-b)Pb(10.83Br0.17(RbCsMAFA)の薄膜の結晶化プロセスの開始条件を調べた(アニーリング工程は、ペロブスカイト膜を完全に結晶化するために必要である)。アニーリングされていないMAFA及びRbCsMAFA膜のUV-vis及び光ルミネセンス(PL)データを記録することによって、MAFAが最大値が670~790nmの範囲のいくつかのPLピークを示し、一方RbCsMAFA膜が、ペロブスカイトに起因する770nmで明瞭な狭いピークを有することが示された。アニーリングされていない膜に対する表面の蛍光顕微鏡像はさらに、アニーリングされていないMAFAの膜が異なる発光種からなることを示しており、アニーリング前の膜が不均一な開始条件で結晶化し、これは、狭い範囲で発光し、従ってより均質な条件で結晶化を開始するアニーリングされていないRbCsMAFAの膜とは異なることを示している。これは、無機カチオンの添加が結晶化を「正常化」し、こうして、結晶化が、複数の非ペロブスカイト種ではなく光活性ペロブスカイト相から始まることを明らかにしている。
【0079】
アニーリング後のUV-vis及び光ルミネセンス測定の記録データは、約1.63eVのRbCsMAFAバンドギャップ(これはMAFAと比較してわずかにシフトしている)を明らかにし、そして過剰の鉛や黄色相の不純物を示さない。これはカチオンRbが結晶格子を修飾することを明らかにしている。従って、RbCsMAFAの膜形成特性は、実際、高純度材料を得るのに特に有望である。
【0080】
三重又は四重混合有機-無機ペロブスカイト薄膜のSEM写真
四重混合有機-無機カチオンハライドペロブスカイトを含む光電池デバイスを本発明の方法に従って作製した。比較のために、三重混合有機-無機カチオンハライドペロブスカイト(Cs(MAFA(1-a)Pb(I0.83Br0.17)(CsMAFA)を含む光電池デバイスも試験し、それらの光起電力パラメータを測定した。
【0081】
四重カチオンペロブスカイト薄膜を有する光電池デバイスは、SEM(走査型電子顕微鏡)により、三重カチオンペロブスカイト薄膜を有する光電池デバイスよりも大きな結晶サイズ成長を示す(図1A、B、C、及びD参照)。Cs含有三重カチオンペロブスカイト(CsMAFA)へのRbである無機カチオンAiの添加は、おそらくペロブスカイトの結晶化のための種として機能すると思われる。さらに、四重カチオンペロブスカイト(RbCsMAFA)の混合有機-無機カチオン中の無機カチオンRbの比率を増加させることによって、結晶サイズがより大きくなり、三重混合有機-無機カチオンペロブスカイトからの結晶粒子よりも大きい結晶「粒子」が得られる。前記三重混合有機-無機ペロブスカイト中のK又はNaの添加は、結晶化過程に同じ効果を及ぼさない。結晶サイズの成長は影響を受けないようである。
【0082】
光起電力パラメータ測定
太陽電池を、450Wキセノン光源(Oriel)を用いて測定した。AM1.5Gとシミュレートされた照明との間のスペクトルの不一致は、Schott K113 Tempax フィルター(Praezisions Glas & Optik GmbH)を使用することによって減少した。IRカットオフフィルター(KG3, Schott)を備えたSiフォトダイオードを用いて光強度を較正し、それを各測定中に記録した。電池の電流-電圧特性は、デジタルソースメーター(Keithley 2400)で電流応答を測定しながら外部電圧バイアスを印加することによって得た。通常の電圧走査速度は10mVs-1(低速)であり、測定を開始する前に、光浸漬又は順方向電圧バイアスを長時間印加することなどのデバイス前処理は適用しなかった。開始電圧は、電池が順バイアスで1mAを供給する電位として決定された。平衡化時間は使用しなかった。電池をブラックメタルマスク(0.16cm)でマスキングして活性領域を固定し、散乱光の影響を軽減した。記録装置のために、光源を様々な強度のシミュレートした標準AM1.5太陽光にさらした。光電流密度は1000W/mにスケーリングされた。
【0083】
上述の各タイプの光電池デバイスについて光起電力パラメータを測定し(図2参照)、表1にまとめる。
【0084】
三重混合有機-無機カチオンペロブスカイトを有するPVデバイスと比較して、四重混合有機-無機カチオンペロブスカイトを有するPVデバイスの平均開路電圧(Voc)は、1120から1158mVへ、及びフィルファクタは0.75から0.78へ著しく増加した。図5Bに、四重混合有機-無機カチオンペロブスカイトRbCsMAFAを有するPVデバイスが、最高の安定化電力出力の1つである21.6%のPCEに達し、非常に高い81%のフィルファクターと1180mVの開路電圧に達したことを示す。測定されたJSC(22.65mA・cm-2)は、図3Bにおける測定された入射光子対電流効率(IPCE)に密接に従っている。
【0085】
我々の材料が新規な特性を有するかどうかを完全に評価するために、我々は、室温で不活性窒素雰囲気下に保持されたマスクなし(ダークリークを防ぐため)のRbCsMAFA PVデバイスを調べた。これにより、劣化作用を受けずに正確なVoc値が得られる。図4Aでは、最も高性能なデバイスの1つについて、Vocを経時的に追跡している挿入図で確認される1240mVの驚くべきVocを測定している。「電位損失」(Vocとバンドギャップの差)はわずか約0.39Vで、再結合損失が非常に低いことを意味している。
【0086】
エレクトロルミネセンス
上記のLED設定を用いてVoc及びエレクトロルミネセンス測定を行った。動作中の劣化を防ぐために、デバイスを室温で一定の窒素流下でマスクなしで放置した。デバイスに0μAの電流を流し、電圧を記録することによってVoc追跡を行った。エレクトロルミネセンス収率は、一定の電流又は変動する電位をデバイスに印加することによって、及び試料上に直接置いた較正された大面積(1cm-2)Siフォトダイオード(Hamamatsu S1227-1010BQ)を用いて、放出された光子束を記録することによって測定した。駆動電圧又は電流はBio-Logic SP300ポテンショスタットを使用して印加され、これはまた第2のチャネルで検出器の短絡電流を測定するためにも使用されたた(図6A及び6B参照)。
【0087】
従ってELは、2つの活性領域を有する四重混合有機-無機カチオンペロブスカイト太陽電池で測定される。左側の領域は、周囲光の下でもはっきりと見える発光を表示するLEDとして動作する。同時に、右側の領域は、ペロブスカイト材料の多様性を強調する太陽電池又は光検出器として動作することができる。
【0088】
図6Bにおいて我々は、計算されたEQEEL(エレクトロルミネセンスの外部量子効率)を電圧の関数として(約1.63eVのバンドギャップを示すエレクトロルミネセンススペクトルと共に)約900mVから検出することができる発光と共に示す。次の式:
【数1】
に一致するEQEELは、注入電流が約22mAcm-2の光電流に等しくなるように選択される。1.4%のEQEELを測定した結果、JV曲線から測定される値を補完する1240mVの予測Vocが得られた。EQEELは駆動電流が大きくなると4%に近づき、太陽電池が最も効率的なペロブスカイトLEDの1つにもなり、近赤外/赤のスペクトル領域で発光する(図6B、右の図表を参照)。これは、効率的なLEDが一般に、太陽電池における効率的な集光には適していない薄い活性層を含むアーキテクチャを必要とするため、特に注目に値する。我々のEQEELは、どの市販の太陽電池よりも大きい(例えばSi EQEEL≒0.5%)(特殊な反射型リアミラー設計を含むAlta社製デバイスの工業的に最適化された薄膜GaAs太陽電池を除く)。これは、非放射型再結合のすべての原因が強く抑制され、材料がほぼバルクで表面に欠陥がないことを示している。
【0089】
安定性測定
1サン当量(Sun-equivalent)白色LEDランプの下で、Biologic MPG2 ポテンショスタットを用いて安定性測定を行った。自社開発のサンプルホルダーの環境から残留酸素及び水を除去するために、デバイスをマスキングし(0.16cm)、実験開始前に数時間窒素でフラッシュした。次に、連続照明(及び窒素)下で最大電力点(MPP)追従ルーチンを用いてデバイスを測定した。MPPは10秒ごとに標準の摂動法と観測法で更新された。デバイスの温度は、膜と直接接触するペルチエ素子を用いて制御した。ペルチェ素子と膜との間に配置された表面温度計を用いて温度を測定した。個々のJVパラメータの変化を追跡するために60分毎にJV曲線を記録した。
【0090】
このデバイスは、窒素雰囲気下で連続照明及び最大電力点追従下で85℃で500時間エージングされる(図7を参照)。このエージングルーチンは、ほとんどの業界標準を超えている。85°C工程の間、デバイスは初期性能の95%を維持している。
【0091】
このペロブスカイト材料は、22%に近い効率と優れたELを備えているため、産業界にとって非常に魅力的である可能性がある。それはすでに他のほとんどのPV材料を凌駕しており、すべての最高性能のパラメータが1つのデバイスで実現された場合、25%に近づく可能性がある。
【0092】
しかし、本当の影響を与えるためには、次の必須の突破口は長期安定性の分野になければならない。興味深いことに、我々が最近発見したように、ペロブスカイト膜の吸湿性、相の不安定性、及び光感度に加えて、長期安定性に対するさらなる主な懸念は、ペロブスカイトへの金属電極の拡散に対して透過性(高温で)になって不可逆的な劣化を引き起こす一般的に用いられるスピロ-OMeTAD正孔輸送材料(HTM)である。これが、高温でのほとんどの安定性試験がこれまで成功していない根本的な理由である。金とスピロ-OMeTADの間のCr緩衝層が金属の移動を部分的に軽減できることを我々は見出した。この結果は、金接点なしでμm厚さのITO封入層を使用するMcGeheeと共同研究者(K. A. Bush et al., Adv Mater, 2016)に一致する。しかしながら、追加の又は非常に厚い保護層を導入することは、面倒で高価であり、しばしばデバイス全体の動作にとって有害である再結合損失を伴う。
【0093】
この研究では、ペロブスカイトへの金の拡散を防ぐ簡単な方法を紹介する。スピロ-OMeTADをポリマーPTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])正孔輸送材料(HTM)で置き換える(Heo et al., Nat Photonics 7, 487, 2013)。驚くべきことに、薄い(約50nm)のPTAAは、高密度でさえも、ペロブスカイトを金の移動から保護するために十分に緻密で安定である。そのため、PTAAデバイスを高温安定性試験を可能にする「安定性アーキテクチャ」と呼ぶ。この結果は、ポリマーHTMが最終的に高温で安定なPVデバイスを実現するために必要な突破口である可能性を示していることが注目される。
【0094】
この研究で、我々は窒素雰囲気中で連続照射下及び最大電力点追従下で、85℃で500時間デバイスを同時にエージングする上記エージングプロトコルを提案する。このストレス試験は工業規格を超えている。結果を図7(丸の曲線)に、エージング前後の室温(RT)効率(三角の上)と一緒に示す。85°Cの工程の間、デバイスは初期性能の95%を維持している。我々の知る限りでは、これは、ここで報告されたRb組成物が「より緩い」工業的エージングプロトコルを通過する現実的な可能性を有するという具体的証拠を提供する、これまでのPSC安定性に関する工業的に最も重要な報告の1つである。
【0095】
我々はまた、一般にペロブスカイトの複雑さを増すことは、例えば混合金属化合物を安定化させるための多重カチオンアプローチを超えて拡張することができると仮定する。これまでのところ、Sn/Pb組成物は酸化に対して不安定である。しかしながら、複数のカチオンと金属を使用することはこの化合物を安定させることができる可能性がある。これは、単一接合の最適値の約1.4eVで、又はペロブスカイトがシリコンPVに取って代わることができる1.1eVでバンドギャップを提供し、従ってペロブスカイト-オン-ペロブスカイトタンデム又は多接合ペロブスカイト太陽電池のビジョンにさえ寄与するであろう。
【0096】
高Voc及びエレクトロルミネセンスを考慮すると、このアプローチは、光電池及び光子放出用途(レーザー及び発光デバイス(LED))のための新世代の高発光性ペロブスカイトを可能にするであろう。
本開示には以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料:
MX (I)
[式中
nは、カチオンAの数であり、≧4の整数であり、
Aは、無機カチオンAi及び/又は有機カチオンAoから選択される1価のカチオンであり、ここで
前記無機カチオンAiは、Li 、Na 、K 、Rb 、Cs 、又はTl から独立して選択され、そして
前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CH NH )、エチルアンモニウム(CH CH NH 、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CH C(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH )、ジメチルアンモニウム((CH NH )、又はトリメチルアンモニウム((CH NH )から独立して選択され、
Mは、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Co 2+ 、Fe 2+ 、Mn 2+ 、Cr 2+ 、Pd 2+ 、Cd 2+ 、Ge 2+ 、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Eu 2+ 、Yb 2+ 、又はこれらの組み合わせから選択され、
Xは、Br 、I 、Cl 、SCN 、CN 、NC 、OCN 、NCO 、NCS 、SeCN 、TeCN 、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されるアニオンであり、
ここで、少なくとも1つのカチオンAは有機カチオンAoから選択される]。
[実施形態2]
nが4~7から選択される整数である、実施形態1に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態3]
有機カチオンAoから選択される前記少なくとも1つのカチオンAが、ホルムアミジニウム又はメチルアンモニウムから選択される、実施形態1又は実施形態2に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態4]
1つのカチオンAがホルムアミジニウムである有機カチオンAoであり、第2のカチオンAがメチルアンモニウムである有機カチオンAoである、実施形態1~3のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態5]
少なくとも2つのカチオンAが、Rb 及びCs である無機カチオンAiである、実施形態1~4のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態6]
Mが、Ge 2+ 、Sn 2+ 、若しくはPb 2+ 、又はこれらの組み合わせから選択される、実施形態1~5のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態7]
式(I)の有機-無機ペロブスカイト構造が式(II):
Ai Ai Ai Ai Ai Ai (Ao Ao MX (II)
[式中、
a、b、c、d、e、fは、無機カチオンAiの割合であり、g及びhは有機カチオンAoの割合であり、
jは、有機カチオンAo Ao の割合であり、
a、b、c、d、e、fは、≧0.00かつ<1.00であり、及び0.00<(a+b+c+d+e+f)<1.00であり、
h=1.00-g、及び0.00<g≦1.00であり、
j=1.00-(a+b+c+d+e+f)及び0.00<j<1.00であり、そして
Aiは実施形態1~6で定義される無機カチオンであり、Aoは実施形態1~6で定義される有機カチオンであり、
Mは実施形態1~6で定義される2価金属カチオンであり、Xは実施形態1~6で定義されるハライド及び/又は擬ハライドアニオンであり、
但し
hが0.00である場合、Ai Ai Ai Ai Ai 又はAi から選択される3、4、5、又は6つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有し、
hが>0.00である場合、Ai Ai Ai Ai Ai 又はAi から選択される2、3、4、又は5つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する]
の有機-無機ペロブスカイト構造から選択される、実施形態1~6のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態8]
有機カチオンAo 又はAo の一方がメチルアンモニウムであり、他方の有機カチオンがホルムアミジニウムである、実施形態7に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態9]
hが0.00である場合、Ai Ai Ai Ai Ai 又はAi から選択される少なくとも3つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する、実施形態7~8のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態10]
hが>0.00である場合、式(II)の前記有機-無機ペロブスカイトのAi Ai Ai Ai Ai 又はAi から選択される少なくとも2つの無機カチオンAiは、>0.00である割合a、b、c、d、e、又はfを有する、実施形態7~8のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態11]
>0.00である割合a、b、c、d、e、及びfを有するAi Ai Ai Ai Ai 又はAl から選択される1つの無機カチオンAiは、Rb 2+ 又はCs 2+ である、実施形態7~10のいずれか1項に記載のペロブスカイト材料。
[実施形態12]
実施形態1~11で定義されるペロブスカイト材料を含む光電子及び/又は光電気化学デバイス。
[実施形態13]
p-nヘテロ接合、フォトトランジスタ、又はOLED(有機発光ダイオード)からの有機太陽電池、色素増感太陽電池、又は固体太陽電池から選択される光電池デバイスから選択される、実施形態12に記載の光電子及び/又は光電気化学デバイス。
[実施形態14]
表面増加足場構造体によって覆われた導電性支持層と、前記ペロブスカイト材料を含む1つ又はそれ以上の有機-無機ペロブスカイト層と、対電極及び/又は金属層とを含む固体太陽電池である、実施形態12~13のいずれか1項に記載の光電子及び/又は光電気化学デバイス。
[実施形態15]
実施形態1~11で定義される式(I)のペロブスカイト構造を含むペロブスカイト材料を調製する方法であって、
無水溶液中のペロブスカイト前駆体組成物を提供することと、
無水溶液中の無機カチオンAiの少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩を提供することであって、前記無機カチオンAiは、Li 、Na 、K 、Rb 、Cs 、又はTl から選択され、前記ハライド及び/又は擬ハライド塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、及び臭化物、SCN 、CN 、NC 、OCN 、NCO 、NCS 、SeCN 、TeCN 、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから選択されることと、
無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の前記無水溶液を、前記ペロブスカイト前駆体組成物に添加し、そして室温で混合する工程とを含み、
ここで、
前記ペロブスカイト前駆体組成物は、有機カチオンAoの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩と、金属Mの少なくとも1つのハライド及び/又は擬ハライド塩とを含み、前記有機カチオンAoは、アンモニウム(NH )、メチルアンモニウム(MA)(CH NH )、エチルアンモニウム(CH CH NH 、ホルムアミジニウム(FA)(CH(NH )、メチルホルムアミジニウム(CH C(NH )、グアニジウム(C((NH) )、テトラメチルアンモニウム((CH )、ジメチルアンモニウム((CH NH )、又はトリメチルアンモニウム((CH NH )から選択され、前記金属Mは、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Co 2+ 、Fe 2+ 、Mn 2+ 、Cr 2+ 、Pd 2+ 、Cd 2+ 、Ge 2+ 、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Eu 2+ 、Yb 2+ 、又はこれらの組み合わせから選択され、前記塩の前記ハライド及び/又は擬ハライドアニオンは、ヨウ化物、塩化物、臭化物、SCN 、CN 、NC 、OCN 、NCO 、NCS 、SeCN 、TeCN 、PF 、BF 、又はこれらの組み合わせから独立して選択されること、及び
無機カチオンAiの前記少なくとも2つのハライド及び/又は擬ハライド塩の各ハライド及び/又は擬ハライド塩は、室温で無水溶液に溶解されること、を特徴とする、上記方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7