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特許7129075大気安定性の高い無機硫化物固体電解質、及びその製造方法並びにその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】大気安定性の高い無機硫化物固体電解質、及びその製造方法並びにその応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/14 20060101AFI20220825BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220825BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220825BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220825BHJP
   C01B 33/06 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C01B25/14
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
C01B33/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021542254
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2019123481
(87)【国際公開番号】W WO2020220676
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】201910358953.8
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521134732
【氏名又は名称】国聯汽車動力電池研究院有限責任公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521134743
【氏名又は名称】ウェスタンオンタリオ大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】サン シュエリヤン
(72)【発明者】
【氏名】リャン ジャンウェン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ル シーガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ シャンキアン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047565(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370398(US,A1)
【文献】特表2010-540396(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084583(WO,A1)
【文献】特表2016-511929(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/14
H01M 10/052
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される無機硫化物電解質材料であって、
Li10M(P1-aSb12 (I)
(式中、MはGe、Si、Snからの一種又は多種であり、0.01≦a≦1であ。)
固溶体相構造を有する、
無機硫化物電解質材料。
【請求項2】
前記式(I)において、0.01≦a≦0.2である、請求項1に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項3】
前記aは、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.2、0.3、0.4又は1から選択されるものである、請求項1に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項4】
前記式(I)で示される無機硫化物電解質材料が、Li 10 Ge(P 0.99 Sb 0.01 12 、Li 10 Ge(P 0.975 Sb 0.025 12 、Li 10 Ge(P 0.925 Sb 0.075 12 、Li 10 Ge(P 0.9 Sb 0.1 12 、Li 10 Ge(P 0.875 Sb 0.125 12 、Li 10 Sn(P 0.95 Sb 0.05 12 又はLi 10 Si(P 0.95 Sb 0.05 12 である、請求項1に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項5】
下記式(II)で示される無機硫化物電解質材料であって、
Li(P1-aSb)SX (II)
(式中、XはF、Cl、Br、Iからの一種又は多種であり,0.01≦a≦1であ。)
固溶体相構造を有する、
無機硫化物電解質材料。
【請求項6】
下記式(II)において、0.025≦a≦0.2である、請求項5に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項7】
前記aは、0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.5又は1から選択されるものである、請求項に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項8】
前記式(II)で示される無機硫化物電解質材料が、Li (P 0.975 Sb 0.025 )S Cl又はLi (P 0.95 Sb 0.05 )S Clである、請求項5に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項9】
下記式(III)で示される無機硫化物電解質材料であって、
Li(P1-aSb)S (III)
(式中、0.01≦a≦1であり、
固溶体相構造を有する、
無機硫化物電解質材料。
【請求項10】
前記式(III)において、0.05≦a≦0.3である、請求項9に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項11】
前記aは0.05、0.1、0.2又は0.3から選択されるものである、ことを特徴とする請求項に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項12】
前記無機硫化物電解質材料は結晶型、非晶質型又は結晶-非晶質複合型であり、及び/又は、
前記無機硫化物電解質材料の作動温度は-100~300℃である、ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の無機硫化物電解質材料。
【請求項13】
必要な原料を配合比で混合して粉砕した後、熱処理を行い、それぞれ式(I)、式(II)、式(III)で示される硫化物電解質材料が得られる、ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の無機硫化物電解質材料の製造方法。
【請求項14】
前記粉砕の時間は、3時間を超え、及び/又は、熱処理の温度は、300℃を超え600℃未満である、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記粉砕の時間は、3時間を超え、及び/又は、熱処理の温度は、230℃を超え600℃未満である、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~12の何れか一項に記載の無機硫化物電解質材料、又は、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法により製造された無機硫化物電解質材料の、全固体リチウム二次電池の製造への応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2019年4月30日に出願された発明の名称が「大気安定性の高い無機硫化物固体電解質、及びその製造方法並びにその応用」である中国発明特許第201910358953.8号の優先権を主張し、引用によりその全内容を本願に援用する。
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関するものであり、具体的には、無機硫化物固体電解質の大気安定性を向上させる方法、その方法で得られた材料、及びその材料の全固体リチウム二次電池への応用の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、1990年代初めに商用化されて以来、高いエネルギー密度や長い耐用年数などの利点により急速に発展している。しかし、現在一般的に使用されているリチウムイオン電池は液相電池であり、可燃性の有機電解液を含んでいるため、重大な安全上の問題がある。近年、液相リチウムイオン動力電池において事故が頻繁に発生しているため、この体系の更なる使用は大幅に制限されている。リチウムイオン電池の電解質として不燃性の無機固体材料を使用すると、電池使用中の有機電解液の漏れや電池内部の熱暴走による安全上の問題を排除できるだけでなく、高温や低温などの極端な条件下での使用も可能となる。リチウム二次電池の価値がさらに高められ、その応用分野が拡大される。したがって、安全性の高いリチウム二次電池を発展させるには、高安定性及び高いリチウムイオン伝導度を有する無機固体電解質の開発が鍵となる。
【0003】
無機固体電解質材料における負イオンの種類により分類すると、現在で比較的多く研究されている、潜在的な応用力が大きいものは、酸化物固体電解質および硫化物固体電解質である(Kerman K, Luntz A, Viswanathan V, et al. practical challenges hindering the development of solid state Li ion batteries[J]. Journal of The Electrochemical Society, 2017, 164(7): A1731-A1744.)。酸化物固体電解質として、主にLiO-LaO-ZrO、LiO-B、LiO-LiCl等の系があるが(Thangadurai V, Narayanan S, Pinzaru D. Garnet-type solid-state fast Li ion conductors for Li batteries: critical review[J]. Chemical Society Reviews, 2014, 43(13): 4714-4727)、それらはイオン伝導度が一般的に低い。酸化物電解質と比べて、硫化物電解質における硫黄イオンの電気陰性度が低いため、陽イオンに対する拘束力が低いとともに、硫黄イオンの半径が大きく、リチウムイオンの移動に有利である。そのため、硫化物電解質のイオン伝導度は酸化物より高い。例えば、2010年に発見されたLi10GeP12材料(室温におけるイオン伝導度が12mS/cmまで高く、Kamaya N, Homma K, Yamakawa Y, et al. A lithium superionic conductor[J]. Nature materials, 2011, 10(9): 682)及び15年に発見されたLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3(室温におけるイオン伝導度が25mS/cmまで高く、Kato Y, Hori S, Saito T et al.High-power all-solid-state batteries using sulfide superionic conductors[J]. Nature Energy, 2016, 1(4): 16
030)材料では、リチウムイオン伝導度が有機電解質よりも高い。現在、無機硫化物電解質の研究は、主にLiS-P、LiS-MS-P及びLiS-P-LiX等の系に集中している(Sun C, Liu J, Gong Y, et al. Recent advances in all-solid-state rechargeable lithium batteries[J]. Nano Energy, 2017, 33: 363-386)。
【0004】
しかし、現在報告されたP含有無機硫化物電解質は、いずれも大気下で不安定である。このような硫化物電解質は、大気雰囲気中の酸素、水蒸気、二酸化炭素などと不可逆反応することにより、構造の変化及びイオン伝導度の低下が発生し、全固体リチウム電池への応用が厳しく制限されている。この問題について、多くの研究は、添加剤及び表面保護層の導入による改善に集中している。例えば、内層が硫化物電解質材料であり、外殻がホウ酸リチウムなどの保護層である複合固体電解質材料がある(楊容ら、中国特許CN106887638A)。なお、硫化物電解質の体系に、少量の低原子価金属元素又は少量の酸化物LMO(M=Si、P、Ge、B、Al、Ga、In)をドーピングすることで、材料の熱や大気安定性が向上される(許曉雄、邱志軍、黄禎、陳万超、陳曉添、中国特許CN10353184A;Bachman J C, Muy S, Grimaud A, et al. Inorganic solid-state electrolytes for lithium batteries: mechanisms and properties governing ion conduction[J]. Chemical reviews, 2015, 116(1): 140-162.)。理論的解析から、固溶体相の構造により硫化物電解質材料におけるリチウムイオン移動チャネル及び硫黄イオンの陽イオンに対する結合力等の要因を調整することで、材料のイオン伝導度を制御でき、さらにより高いイオン伝導度を有する無機硫化物電解質材料が得られる。さらに、固溶体相の構造により、その電子構造を変えて化学的性質を改善し、大気中で良好な安定性を持たせることができ、大気環境や乾燥室での大量使用が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無機硫化物電解質の大気安定性を向上させる方法、及び当該方法により得られた材料の、全固体リチウム二次電池への応用を提供することを目的とする。当該方法は、簡単且つ効果的であり、得られた材料の製造が簡単で、製造コストが低いとともに、大気安定性が良く、リチウムイオン伝導度が高く、高性能の全固体リチウム二次電池電解質としての無機硫化物電解質の実用化が期待される。
【0006】
本発明の研究は、Sbで硫化物電解質における一部又は全部のPを置換することで、固溶体相の構造を有する無機硫化物固体電解質材料を形成でき、より高い大気安定性及びイオン移動度が得られることを見出した。特に、無機硫化物固体電解質におけるSb置換量の増加につれて、得られた材料は、より良好な大気安定性を有し、全固体リチウム二次電池に応用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明は、下記式(I)で示される無機硫化物電解質材料を提供する。
Li10M(P1-aSb12・・・(I)
(式中、MはGe、Si、Snからの一種又は多種であり、0.01≦a≦1であり、なかでも0.01≦a≦0.2であることが好ましい。)
【0008】
例えば、具体的には、aが0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.2、0.3、0.4又は1から選択されるものであってもよい。具体的には、式(I)で示される無機硫化物電解質材料は、Li10Ge(P0.99Sb0.0112、Li10Ge(P0.975Sb0.02512、Li10Ge(P0.925Sb0.07512、Li10Ge(P0.9Sb0.112、Li10Ge(P0.875Sb0.12512、Li10Sn(P0.95Sb0.0512又はLi10Si(P0.95Sb0.0512であってもよい。
【0009】
さらに、本発明は、下記式(II)で示される無機硫化物電解質材料を提供する。
Li(P1-aSb)SX・・・(II)
(式中、XはF、Cl、Br、Iからの一種又は多種であり,0.01≦a≦1であり、なかでも0.025≦a≦0.2であることが好ましい。)
【0010】
例えば、具体的には、aが0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.5又は1から選択されるものであってもよい。具体的には、式(II)で示される無機硫化物電解質材料は、Li(P0.975Sb0.025)SCl又はLi(P0.95Sb0.05)SClであってもよい。
【0011】
さらに、本発明は、下記式(III)で示される無機硫化物電解質材料を提供する。
Li(P1-aSb)S・・・(III)
(式中、0.01≦a≦1であり、なかでも0.05≦a≦0.3であることが好ましく、なかでもaが、0.05、0.1、0.2又は0.3から選択されるものであることがより好ましい。)
【0012】
本発明の前記無機硫化物電解質材料は、いずれも当分野の通常の技術により調製される。
例えば、必要な原料を配合比で混合して粉砕した後、熱処理を行うことにより、上式(I)、(II)、(III)で示される硫化物電解質材料が得られる。ただし、粉砕時間は、3時間を超えることが好ましい;及び/又は、熱処理温度は、300℃を超え600℃未満であることが好ましい;及び/又は、熱処理温度は、230℃を超え600℃未満であることが好ましい。本発明は、固溶体相型硫化物固体電解質材料に関する。
【0013】
更なる研究によれば、前述の硫化物固体電解質材料のいずれかを用いることで、固溶体相におけるSb量の増加につれて、得られた無機硫化物固体電解質材料がより良好な大気安定性を有することが見出された。さらに、固溶体におけるPとSbの割合を調整することで、当該材料のリチウムイオン伝導度をさらに調整することができる。さらに、その他の従来の固体電解質及び有機液体電解質の導電率を超えることができる。
【0014】
さらに、上記の硫化物固体電解質材料のいずれかは、結晶型、非晶質型、または結晶-非晶質複合型であってもよい。
【0015】
さらに、上述の硫化物固体電解質材料のいずれかの使用温度は、-100~300℃であってもよい。
【0016】
さらに、本発明は、上述の硫化物固体電解質材料のいずれかの、全固体リチウム二次電池の製造への応用を提供する。
【0017】
具体的には、本発明は、正極、電解質材料及び負極を含む全固体リチウム二次電池であって、当該電解質材料が前述の硫化物電解質材料又は前述の製造方法により製造された硫化物電解質材料である、全固体リチウム二次電池を提供する。
【0018】
本発明は、Sbで硫化物電解質における一部又は全部のPを置換することで、固溶体相の構造を有する無機硫化物固体電解質材料を形成し、より高い大気安定性及びイオン移動度が得られる。従来技術と比べて、本発明は、元素置換により硫化物の大気安定性を向上させる新規な方法であって、簡単且つ効果的であり、得られた硫化物電解質が塗布層又は添加剤で保護されない場合であっても、大気条件下で安定的に保存することができる。このような硫化物電解質材料は製造が簡単であり、製造コストが低いと同時に、得られた無機硫化物固体電解質材料は、制御可能なイオン伝導度を有し、全固体リチウム電池における無機電解質及び電極材料添加剤として用いられる場合に優れた性能を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の利点がある。
【0020】
1)無機硫化物固体電解質材料におけるPとSbの割合を調整することで、固溶体相構造が異なる多種の硫化物固体電解質が得られる。得られた無機硫化物固体電解質材料は、Sb置換量の増加につれて、より良好な大気安定性を有し、乾燥状態での硫化物固体電解質材料の使用を一層実現し、固体電池の製造工程を簡素化し、製造コストを削減することができる。
【0021】
2)固溶体相構造の硫化物固体電解質では、SbでPの一部を置換することにより、当該材料の化学的性質を調整でき、電極材料との高い化学的安定性及び化学的適合性が得られる。電解質と、リチウム金属及び通常のリチウムイオン正負極材料との反応活性を低減できる。
【0022】
3)無機硫化物固体電解質材料におけるPとSbの割合を調整することで、材料の結晶構造と電子構造を調整し易くなり、材料の導電率を向上できる。このような固溶体相構造の無機硫化物固体電解質材料では、ある割合の電解質材料の導電率は、従来の硫化物固体電解質の導電率まで達するか、それを超える。
【0023】
4)固溶体相構造の硫化物固体電解質の提案及び取得は、理論研究の面において、電解質の化学的安定性及び固体電解質におけるリチウムイオンの移動についての更なる理解に寄与し、高導電率の硫化物電解質の開発及び研究をさらに指導することができる;実際の応用では、タイプが異なる多種の、高導電率及び高大気安定性の電解質材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1においてa=0.01の場合に得られたX線回折パターンである。
図2】実施例1において当該体系から得られた一部のX線回折パターンである。
図3】実施例1においてa=0.01の場合に得られたそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及びイオン伝導度を示す図である。
図4】実施例1で得られた材料のイオン伝導度とa値との関係図である。
図5】実施例2においてa=0.025の場合に得られたX線回折パターンである。
図6】実施例2において当該体系から得られた一部のX線回折パターンである。
図7】実施例2においてa=0.025の場合に得られたそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及びイオン伝導度を示す図である。
図8】実施例2で得られた材料のイオン伝導度とa値との関係図である。
図9】実施例3においてa=0.05の場合に得られたX線回折パターンである。
図10】実施例3においてa=0.05の場合に得られたそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及びイオン伝導度を示す図である。
図11】実施例4においてa=0.05の場合に得られたX線回折パターンである。
図12】実施例4においてa=0.05の場合に得られたそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及びイオン伝導度を示す図である。
図13】実施例5においてa=0.1の場合に得られたそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及びイオン伝導度を示す図である。
図14】応用例1におけるLi(P0.975Sb0.025)SCl材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。
図15】応用例1におけるLi(P0.9Sb0.1)SCl材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。
図16】応用例1におけるLi(P0.975Sb0.025)SCl材料の大気暴露前後の電気化学インピーダンススペクトロスコピー及び計算によって得られたイオン伝導度の比較図である。
図17】応用例1におけるLi(P0.9Sb0.1)SCl材料の大気暴露前後の電気化学インピーダンススペクトロスコピー及び計算によって得られたイオン伝導度の比較図である。
図18】応用例1におけるLi(P0.975Sb0.025)SCl及びLi(P0.9Sb0.1)SCl材料の、温度に対するイオン伝導度の変化を示す図、及び0.3Vの一定外部電圧における電流-時間の関係図である。
図19】応用例2におけるLi10Ge(P0.875Sb0.12512材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。
図20】応用例2におけるLi10Ge(P0.975Sb0.02512、Li10Ge(P0.925Sb0.07512、Li10Ge(P0.9Sb0.112及びLi10Ge(P0.875Sb0.12512固体電解質材料の大気暴露前後のイオン伝導度の変化の比較図である。
図21】応用例3で得られた固溶体相型Li10Ge(P0.99Sb0.0112固体電解質材料の、全固体Li-LiCoO二次電池に応用される場合の充放電曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。実施例において具体的な技術や条件が明示されていないものについて、当分野の文献に記載の技術や条件に従い、又は、製品の説明書に従って行う。メーカーが明示されていない試薬や器械は、いずれも正規ルートで購入できる通常の製品である。
【0026】
実施例1 Li10Ge(P1-aSb12固体電解質材料(0.01≦a≦1)の製造
LiS(0.69g) 15ミリモル、GeS(0.411g) 3ミリモル、P (3-3a)ミリモル、Sb3aミリモルの粉体を、乳鉢内で粉砕して混合した(ただし、0.01≦a≦1)。a=0.01の場合、各原料の成分について、LiSが0.69g、GeSが0.411g、Pが0.66g、Sbが0.012gである。a=0.1の場合、各原料の成分について、LiSが0.69g、GeSが0.411g、Pが0.599g、Sbが0.121gである。このように順次に類推する。粉砕混合後、50mlのジルコニアボールミルジャーに入れてボールミルを行い、ボールミルの回転速度を400回転/分とし、ボールミルの時間を12時間とした。ボールミル後のサンプルを粉末打錠機により100MPaの圧力で円盤に打錠した後、真空石英管内に封入し、焼成した。焼成温度を温度プログラムにより制御し、4時間かけて室温から550℃まで昇温し、そして、この温度で4時間保持し、その後、4時間かけて50℃まで降温し、Li10Ge(P1-aSb12固体電解質材料(0.01≦a≦1)が得られた。
【0027】
図1は、a=0.01の場合の、当該体系の材料(即ちLi10Ge(P0.99Sb0.0112固体電解質材料)及びLi10GeP12標準カード(JPCDF:04-020-5216)のX線回折パターンである。図2は、当該体系において異なるa値により得られたX線回折パターンであり、上から始め、aがそれぞれ0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.2、0.3、0.4及び1である。図3は、a=0.01の場合の、当該体系の材料(即ちLi10Ge(P0.99Sb0.0112固体電解質材料)のそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及び温度に対するイオン伝導度の変化曲線を示す図である。図3から、当該材料の25℃におけるイオン伝導度が11.4mS/cmであり、活性化エネルギーが11.0kJ/molであることが明らかになった。図4は、当該体系で得られた固溶体相硫化物電解質材料のイオン伝導度とa値との関係を示す曲線図である。図4から、a値が0.075(即ちLi10Ge(P0.925Sb0.07512固体電解質材料)である場合、当該体系の材料は、17.5mS/cmといった、最も高い室温におけるイオン伝導度を有し、文献に報告されたLi10GeP12材料の室温におけるイオン伝導度(12mS/cm)よりも高いことが明らかになった。
【0028】
実施例2 Li(P1-aSb)SCl固体電解質材料(0.01≦a≦1)の製造
LiS(0.92g) 20ミリモル、LiCl(0.336g) 8ミリモル、P (4-4a)ミリモル、及びSb4aミリモルの粉体を、乳鉢内で粉砕して混合した(ただし、0.01≦a≦1)。a=0.025の場合、各原料の成分について、LiSが0.92g、LiClが0.336g、Pが0.866g、Sbが0.03gである。a=0.1の場合、各原料の成分については、LiSが0.92g、LiClが0.336g、Pが0.799g、Sbが0.121gである。このように順次に類推する。粉砕混合後、50mlのジルコニアボールミルジャーに入れてボールミルを行い、ボールミルの回転速度を400回転/分とし、ボールミルの時間を12時間とした。ボールミル後のサンプルを粉末打錠機により100MPaの圧力で円盤に打錠した後、真空石英管内に封入し、焼成した。焼成温度を温度プログラムにより制御し、4時間かけて室温から550℃まで昇温し、そして、この温度で5時間保持し、その後、50℃まで自然冷却し、Li(P1-aSb)SCl固体電解質材料(0.01≦a≦1)が得られた。
【0029】
図5は、a=0.025の場合の、当該体系の材料(即ちLi(P0.975Sb0.025)SCl固体電解質材料)及びLiPSCl標準カード(JPCDF:04-018-1429)のX線回折パターンである。図6は、当該体系において異なるa値により得られたX線回折パターンであり、上からaがそれぞれ0.025、0.05、0.075、0.1、0.15、0.2、0.5及び1である。図7は、a=0.025の場合の、当該体系の材料(即ちLi(P0.975Sb0.025)SCl固体電解質材料)のそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及び温度に対するイオン伝導度の変化曲線を示す図である。図7から、当該材料の25℃におけるイオン伝導度が2.5mS/cmであり、活性化エネルギーが18.4kJ/molであることが明らかになった。図8は、当該体系で得られた固溶体相硫化物電解質材料のイオン伝導度とa値との関係を示す曲線図である。図8から、a値が0.05(即ちLi(P0.95Sb0.05)SCl固体電解質材料)である場合、当該体系の材料は、2.9mS/cmといった、最も高い室温におけるイオン伝導度を有し、同じ条件で得られた非固溶体相のLiPSCl材料の室温におけるイオン伝導度(1.3mS/cm)より高いことが明らかになった。
【0030】
実施例3 Li10Sn(P0.95Sb0.0512固体電解質材料の製造
LiS(0.69g) 15ミリモル、SnS(0.549g) 3ミリモル、P(0.633g) 2.85ミリモル、Sb(0.061g) 0.15ミリモルの粉体を、乳鉢内で粉砕して混合した。粉砕混合後、50mlのジルコニアボールミルジャーに入れてボールミルを行い、ボールミルの回転速度を400回転/分とし、ボールミルの時間を12時間とした。ボールミル後のサンプルを粉末打錠機により100MPaの圧力で円盤に打錠した後、真空石英管内に封入し、焼成した。焼成温度を温度プログラムにより制御し、4時間かけて室温から550℃まで昇温し、そして、その温度で4時間保持し、その後、4時間かけて50℃まで降温し、Li10Sn(P0.95Sb0.0512固体電解質材料が得られた。
【0031】
図9は、Li10Sn(P0.95Sb0.0512固体電解質材料のX線回折パターンである。図10は、当該固体電解質材料のそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及び温度に対するイオン伝導度の変化曲線を示す図である。図10から、当該材料の25℃におけるイオン伝導度が5.6mS/cmであり、活性化エネルギーが11.6kJ/molであることが明らかになった。図10から、当該Li10Sn(P0.95Sb0.0512固体電解質材料は、高い室温におけるイオン伝導度を有し、文献に報告されたLi10SnP12材料の室温におけるイオン伝導度(6.3mS/cm)に近いであることが明らかになった。
【0032】
実施例4 Li10Si(P0.95Sb0.0512固体電解質材料の製造
LiS(0.69g) 15ミリモル、SiS(0.276g) 3ミリモル、P(0.633g) 2.85ミリモル、Sb(0.061g) 0.15ミリモルの粉体を、乳鉢内で粉砕して混合した。粉砕混合後、50mlのジルコニアボールミルジャーに入れてボールミルを行い、ボールミルの回転速度を400回転/分とし、ボールミルの時間を12時間とした。ボールミル後のサンプルを粉末打錠機により100MPaの圧力で円盤に打錠した後、真空石英管内に封入し、焼成した。焼成温度を温度プログラムにより制御し、4時間かけて室温から550℃まで昇温し、そして、この温度で4時間保持し、その後、4時間かけて50℃まで降温し、Li10Si(P0.95Sb0.0512固体電解質材料が得られた。
【0033】
図11は、Li10Si(P0.95Sb0.0512固体電解質材料のX線回折パターンである。図12は、当該固体電解質材料のそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及び温度に対するイオン伝導度の変化曲線を示す図である。図12から、当該材料の25℃におけるイオン伝導度が2.5mS/cmであり、活性化エネルギーが11.6kJ/molであることが明らかになった。図12から、当該Li10Si(P0.95Sb0.0512固体電解質材料は、高い室温におけるイオン伝導度を有し、文献に報告されたLi10SiP12材料の室温におけるイオン伝導度(2mS/cm)よりも高いことが明らかになった。
【0034】
実施例5 Li(P1-aSb)S固体電解質材料(0.01≦a≦1)の製造
LiS(0.414g) 9ミリモル、P (3-3a)ミリモル、Sb3aミリモルの粉体を、乳鉢内で粉砕して混合した(ただし、0.01≦a≦1)。a=0.05の場合、各原料の成分について、LiSが0.414g、Pが0.633g、Sbが0.061gである。a=0.1の場合、各原料の成分について、LiSが0.414g、Pが0.599g、Sbが0.121gである。このように順次に類推する。粉砕混合後、50mlのジルコニアボールミルジャーに入れてボールミルを行い、ボールミルの回転速度を400回転/分とし、ボールミルの時間を12時間とした。ボールミル後のサンプルを粉末打錠機により100MPaの圧力で円盤に打錠した後、真空石英管内に封入し、焼成した。焼成温度を温度プログラムにより制御し、3時間かけて室温から260℃まで昇温し、そして、この温度で4時間保持し、その後、4時間かけて50℃まで降温し、Li(P1-aSb)S固体電解質材料(0.01≦a≦1)が得られた。
【0035】
図13は、a=0.1の場合の、当該体系の材料(即ちLi(P0.9Sb0.1)S固体電解質材料)のそれぞれ異なる温度での電気化学インピーダンス及び温度に対するイオン伝導度の変化曲線を示す図である。図13から、当該材料の25℃におけるイオン伝導度が0.06mS/cmであり、活性化エネルギーが16.0kJ/molであることが明らかになった。
【0036】
応用例1 Li(P1-aSb)SCl固体電解質材料の大気安定性試験及び応用
実施例2で得られたLi(P1-aSb)SCl固体電解質材料を用いて、乾燥大気安定性試験(a=0.025、0.1)を行った。グローブボックス内で、それぞれ、実施例2で得られたLi(P0.975Sb0.025)SClとLi(P0.9Sb0.1)SCl固体電解質材料100mgを取り、1mlの開口ガラス瓶に入れた後、当該ガラス瓶を、乾燥大気気流が100ml/minで流れている反応ボックスに置き、室温で24時間静置し、静置終了後、サンプルを取り出し、それぞれ、XRD、イオン伝導度及び電子伝導度の測定を実施した。
【0037】
図14は、Li(P0.975Sb0.025)SCl材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。図15は、Li(P0.9Sb0.1)SCl材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。図16は、Li(P0.975Sb0.025)SCl材料の大気暴露前後の電気化学インピーダンススペクトロスコピー及び計算によって得られたイオン伝導度の比較図である。図17は、Li(P0.9Sb0.1)SCl材料の大気暴露前後の電気化学インピーダンススペクトロスコピー及び計算によって得られたイオン伝導度の比較図である。図18は、この二つの材料の、温度に対するイオン伝導度の変化を示す図、及び0.3Vの一定外部電圧における電流-時間の関係図である。以上の各図から、Li(P0.975Sb0.025)SCl材料は、大気暴露後、XRDの変化が大きくなかったが、イオン伝導度が大幅に低下し、24時間の大気雰囲気の作用により、当該材料のイオン伝導度は、2.5×10-3S/cmから1.0×10-5S/cmまでに低下したことが明らかになった。大気雰囲気の作用により、当該材料のイオン伝導度は、大気が作用する前のわずか0.004倍であった。固溶体相構造におけるSb含量が10%(a=0.1)まで増加すると、得られたLi(P0.9Sb0.1)SCl固体電解質材料の大気安定性が高くなった。同様に、当該材料では、24時間の大気雰囲気の作用により、XRD図の変化が大きくなかったが、イオン伝導度が1.9×10-3S/cmから2.3×10-4S/cmまで低減した。大気雰囲気の作用により、当該材料のイオン伝導度は、大気が作用する前の0.12倍となった。なお、この二つの材料の電子伝導度の変化は大きくなかった。
【0038】
応用例2 Li10Ge(P1-aSb12固体電解質材料の大気安定性試験及び応用
実施例1で得られたLi10Ge(P1-aSb12固体電解質材料を用いて、乾燥大気安定性試験(a=0.025、0.075、0.1、0.125)を行った。グローブボックス内で、それぞれ、実施例1で得られたLi10Ge(P0.975Sb0.02512、Li10Ge(P0.925Sb0.07512、Li10Ge(P0.9Sb0.112、及びLi10Ge(P0.875Sb0.12512固体電解質材料200mgを取り、1mlの開口ガラス瓶に入れた後、当該ガラス瓶を、乾燥大気気流が100ml/minで流れている反応ボックスに置き、室温で24時間静置し、静置終了後、サンプルを取り出し、それぞれ、XRD、イオン伝導度及び電子伝導度の測定を実施した。図19は、Li10Ge(P0.875Sb0.12512材料の大気暴露前後のXRDの比較図である。図20は、この4つの材料の大気暴露前後のイオン伝導度の変化の比較図である。以上の各図から、Li10Ge(P0.875Sb0.12512材料は、大気下で24時間暴露した後、XRDの変化が大きくなかったことが明らかになった。同様に、以上で得られた4つの材料の大気暴露前後のイオン伝導度の変化も大きくなかった。以上の4つの材料は、大気下で24時間暴露した場合であっても、イオン伝導度が依然として10mS/cm以上に達した。これにより、当該材料の大気安定性が良く、直接に乾燥大気の雰囲気下で使用できることを示し、大きな応用価値がある。
【0039】
応用例3 Li10Ge(P0.99Sb0.0112電解質材料の、全固体Li-LiCoO二次電池への応用
実施例1で得られたLi10Ge(P0.99Sb0.0112電解質材料を、全固体Li-LiCoO二次電池に応用した。用いられたLiCoO正極材料について、まず、原子層堆積(ALD)技術により表面に塗布層が約10nmとなるようにLiNbOを塗布した。塗布終了後、グローブボックス内で、LiCoO正極材料:Li10Ge(P0.99Sb0.0112電解質材料:アセチレンカーボン=60:30:10(質量比)の配合比で混合し、乳鉢にて20分粉砕した。粉砕後の材料を正極粉体とし、薄いインジウムシートを負極とし、同様に実施例1で得られたLi10Ge(P0.99Sb0.0112電解質材料を電解質とした。Li10Ge(P0.99Sb0.0112電解質材料100mgを取り、断面積が0.785cmの電池用モールドの内腔部に入れ、200MPaの圧力で打錠して電解質層が得られた。次に、電解質層の片側に正極粉体10mgを添加し、広げて均一にした後、350MPaの圧力で二回目の打錠を行い、正極層と電解質層とをラミネートした。その後、別の側に負極層としてインジウムシートを設置した。全過程終了後、内腔部を、電池用モールドに入れ、ネジを締めつけて封口した。封口後、全固体Li-LiCoO二次電池が得られた。電池に対して32μAの電流密度で充放電試験を行い、カットオフ電圧は2.0-3.6Vであった。図21は、当該電池の最初の2サイクルの充放電曲線図である。図21から、当該電池の充放電過程の可逆性が良く、電池容量が0.8mAh以上を維持していることが明らかになった。最初のサイクルの容量が0.870mAhの場合、コバルト酸リチウムの質量(6mg)で計算すると、比容量が145.0mAh/gであった。最初のサイクルの容量が0.707mAhの場合、コバルト酸リチウムの質量(6mg)で計算すると、比容量が117.8mAh/gであった。第2サイクルの充電比容量及び放電比容量は、それぞれ、121.1mAh/g及び116.2mAh/gであった。電池サイクルの可逆性が良かったことが明らかになった。
【0040】
以上の実験結果から、本発明に提供される無機硫化物電解質材料は、大気安定性が良く、当該材料の製造方法が簡単で製造コストが低いとともに、大気安定性が良く、リチウムイオン伝導度が高く、高性能の全固体リチウム二次電池電解質としての無機硫化物電解質の実用化が期待されることが明らかになった。
【0041】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの修正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行ったこれらの修正や改善は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に属する。
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