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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20220825BHJP
   A47J 31/02 20060101ALI20220825BHJP
   B65D 85/804 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A47J31/06 160
A47J31/02
B65D85/804 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018080744
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019187549
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 充範
(72)【発明者】
【氏名】速水 亮佑
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-038355(JP,A)
【文献】特開2012-143592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/02
B65D 85/804
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を有するドリップバッグであって、
掛止部材は、袋本体から引き起こし可能な掛止部を有し、さらに
(i)ドリップバッグの両側辺において袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部であ接合部に隣接する該掛止部材の側辺部に、対向する掛止部材同士が接合された強接合部、及び該強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分に、ドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線を有し、又は
(ii)ドリップバッグの一方の側辺において袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部であり、ドリップバッグの他方の側辺において通水濾過性シートの折り山と薄板状材料の折り山とが重なっており該ドリップバッグの一方の側辺では袋本体の側辺の接合部に隣接する掛止部材の側辺部が、対向する掛止部材同士が接合された強接合部、及び該強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分にドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線を有し、該ドリップバッグの他方の側辺では該側辺に隣接した部分の掛止部材がドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線を有さない
ドリップバッグ。
【請求項2】
袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部である場合に、前記折れ線が、対向する掛止部材の一方のみに形成されている請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
前記強接合部が、袋本体の側辺部の接合部よりもドリップバッグの内側に形成されている請求項1又は2記載のドリップバッグ。
【請求項4】
前記強接合部が、掛止部材の側辺部に部分的に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項5】
袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部である場合に、前記折れ線が、掛止部材の上端から下端にかけて形成されている請求項1~4のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項6】
前記強接合部が、掛止部材の側辺部のうち、掛止部材の幅方向に突出した突出部に形成されている請求項1~5のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項7】
袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部である場合に、前記折れ線が、掛止部材の突出部の基部に形成されている請求項6記載のドリップバッグ。
【請求項8】
通水濾過性シートから形成された袋本体、及び袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材を有するドリップ用フィルタであって、
掛止部材は、袋本体から引き起こし可能な掛止部を有し、さらに
(i)ドリップ用フィルタの両側辺において袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部であ接合部に隣接する該掛止部材の側辺部に、対向する掛止部材同士が接合された強接合部、及び該強接合部よりもドリップ用フィルタの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分に、ドリップ用フィルタの上下方向に伸びた折れ線を有し、又は
(ii)ドリップ用フィルタの一方の側辺において袋本体の側辺が、通水濾過性シート同士が接合された接合部であり、ドリップ用フィルタの他方の側辺において通水濾過性シートの折り山と薄板状材料の折り山とが重なっており該ドリップ用フィルタの一方の側辺では袋本体の側辺の接合部に隣接する掛止部材の側辺部は、対向する掛止部材同士が接合された強接合部、及び該強接合部よりもドリップ用フィルタの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分にドリップ用フィルタの上下方向に伸びた折れ線を有し、該ドリップ用フィルタの他方の側辺では該側辺に隣接した部分の掛止部材がドリップ用フィルタの上下方向に伸びた折れ線を有さないドリップ用フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器の上部に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手軽に本格的なコーヒーを楽しむことを可能とするコーヒーの入れ方として、ペーパードリップ方式が広く普及している。このペーパードリップ方式では、通常、数杯分のコーヒーが一度に抽出される。
【0003】
一方、近年、一人暮らしをする者が多くなり、また、核家族化や出生率の低下等により一家族の構成人数も少なくなっている。そのため、従来の数杯分のコーヒーを抽出することが基本とされているペーパードリップ方式に代えて、一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行えるようにすることを目的とした、使い捨てのドリップバッグが市場に出回っている。
【0004】
ドリップバッグには種々の製品形態があるが、大別すると、通水濾過性シートにコーヒー粉が充填された袋本体が、該袋本体に貼着された板紙等の掛止部材により、コーヒー抽出時にカップ内に掛止される浸漬式と、コーヒー抽出時に袋本体が掛止部材によりカップ上に掛止される載置式に分けられる。浸漬式では、コーヒー抽出時にコーヒー粉がコーヒー抽出液に漬かるのに対し、載置式ではコーヒー抽出時にコーヒー粉がコーヒー抽出液に漬からない。そのため、載置式は浸漬式に対して本来のドリップコーヒーの風味を楽しむことができるという利点を有する。
【0005】
載置式のドリップバッグの具体例としては、厚紙等の板材を環状に接合することにより枠体を形成し、その内側に、コーヒー粉が充填された濾紙袋を貼着することにより製造するものがある(特許文献1)。しかしながら、このドリップバッグは、コーヒー粉の充填と製袋を自動的に繰り返す自動充填包装機を利用して製造できないので生産性が低い。
【0006】
これに対し、充填包装機を利用して載置式のドリップバッグを製造できるようにするため、コーヒー粉が充填された袋本体を支持する支持体を該袋本体の表裏において該袋本体の略全幅に設け、この場合に支持体の左右の両側端部が袋本体の両側端部の接合部で接合されないように、支持体の左右の両側端部の位置を袋本体の両側端部の接合部の直前までとするものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許2901053号公報
【文献】特開2006-204860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載のドリップバッグは、自動充填包装機を用いて製造することが意図されたものであるが、特許文献2に記載の支持体を通水濾過性シートに貼付したドリップバッグ製造用シートを充填包装機にかけて製袋すると、該シートにおいて、支持体の側辺が袋本体の両側部の接合位置の直前の位置に貼付されていることにより、製袋時にはシールバーが支持体を一緒に噛んでしまうのでシールバーが浮き上がり、シートの接合強度が安定しない。これに対し、接合強度を安定させるためには、袋本体の接合部から支持体の側辺を離さなくてはならないが、そのように製造されたドリップバッグでは、袋本体の側辺の接合部近傍に支持体で支持されていない部分が存在するので、開口したドリップバッグに注湯すると、支持体で支持されていない部分が閉じたり、変形したりして所期の開口形状を維持することが困難となる。
【0009】
これに対し、本発明は、自動充填包装機を用いて製造することができ、かつ注湯時の開口形状が安定する載置式のドリップバッグの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、袋本体の側辺部が通水濾過性シート同士の接合により形成されている場合に、その通水濾過性シート同士の接合部の近傍に、袋本体の通水濾過性シートを挟んで対向する掛止部材同士を接合した強接合部を形成し、かつ、その強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側に、ドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線を設けると、袋本体の開口形状の全周を掛止部材で支持することが可能となり、かつ対向する掛止部材同士が接合されているにもかかわらず、ドリップバッグに広い開口面積を確保することができるということを想到し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を有するドリップバッグであって、
掛止部材に設けられた、袋本体から引き起こし可能な掛止部、
袋本体の側辺部において通水濾過性シート同士が接合された接合部、
該接合部に隣接する掛止部材の側辺部において、袋本体の通水濾過性シートを介して対向する掛止部材同士が接合された強接合部、及び
該強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分に、ドリップバッグの上下方向に設けられた折れ線
を有するドリップバッグを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドリップバッグによれば、袋本体の対向する2面の側辺部のうち少なくとも一方が、通水濾過性シートが接合された接合部となっており、その接合部の近傍の対向する掛止部材が強接合部を形成しているので、袋本体の側辺部の接合部は該接合部近傍の掛止部材で支持される。したがって、袋本体の開口部の全周を掛止部材で支持することが可能となり、袋本体の開口形状が注湯時においても安定する。
【0013】
また、本発明によれば、掛止部材の側辺を袋本体の側辺部の接合部の直前に配置することが不要となる。したがって、本発明のドリップバッグを、自動充填包装機を利用して製造した場合に、製袋時にシールバーが掛止部材を一緒に噛んでしまうことによりシールバーが浮き上がることを解消でき、袋本体の側辺部の接合強度が安定する。
【0014】
さらに、本発明のドリップバッグの側辺部には、強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側に、ドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線が形成されているので、ドリップバッグの開口時には掛止部材が折れ線で折れることにより、ドリップバッグは容易に筒型に開口する。
【0015】
よって、本発明によれば、自動充填包装機により容易に製造することができる載置式のドリップバッグであって、ドリップバッグをカップに掛止したときの袋本体の開口形状が安定するものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例のドリップバッグ1Aの正面図である。
図2図2は、実施例のドリップバッグ1Aの開口方法の説明図である。
図3図3は、実施例のドリップバッグ1Aが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図4図4は、実施例のドリップバッグ1Aを製造するために使用することのできるドリップバッグ製造用シート40Aの平面図である。
図5A図5Aは、実施例のドリップバッグ1Aの製造方法の説明図である。
図5B図5Bは、実施例のドリップバッグ1Aの製造方法の説明図である。
図6図6は、実施例のドリップバッグ1Bの(a)正面図及び(b)背面図である。
図7図7は、実施例のドリップバッグ1Bが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図8図8は、実施例のドリップバッグ1Cの正面図である。
図9図9は、実施例のドリップバッグ1Dの正面図である。
図10図10は、実施例のドリップバッグ1Dが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図11図11は、実施例のドリップバッグ1Dを製造するために使用することのできるドリップバッグ製造用シート40Dの平面図である。
図12A図12Aは、実施例のドリップバッグ1Dの製造方法の説明図である。
図12B図12Bは、実施例のドリップバッグ1Dの製造方法の説明図である。
図13図13は、実施例のドリップバッグ1Eの正面図である。
図14図14は、実施例のドリップバッグ1Eが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図15図15は、実施例のドリップバッグ1Fの正面図である。
図16図16は、実施例のドリップバッグ1Fが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図17図17は、実施例のドリップバッグ1Gの正面図である。
図18図18は、実施例のドリップバッグ1Fが開口し、カップに掛止されている状態の斜視図である。
図19図19は、実施例のドリップ用フィルタ2Aの正面図である。
図20図20は、実施例のドリップ用フィルタ2Aがカップに掛止されている状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0018】
(ドリップバッグの全体構造)
図1は、本発明の一実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の正面図であり、図3は、袋本体10が開口したドリップバッグ1Aをカップ100に掛止させた状態の斜視図である。
【0019】
ドリップバッグ1Aは、袋本体10と、袋本体10の対向する2面の外表面、即ち、袋本体10の表裏に設けられた掛止部材20とで形成されている。このドリップバッグ1Aでは、該ドリップバッグ1Aを載置式とし、その開口形状を注湯時においても安定させるために、掛止部材20が袋本体10の正味の開口部の全幅にわたって取り付けられ、対向する掛止部材同士が強接合部Tsで接合されており、さらに強接合部Tsの近傍でかつドリップバッグ1Aの幅方向の中心側に、ドリップバッグ1Aの上下方向に伸びた折れ線L2を有する。また、袋本体10の表裏の掛止部材20には、それぞれ一対の引き起こし可能な掛止部22が設けられており、掛止部22の下端部には、掛止部22をカップの開口壁に掛止させる凹部23が設けられている。
【0020】
(袋本体)
袋本体10は、通水濾過性シートから形成され、その内部には抽出材料50としてコーヒー粉50が充填されている。
【0021】
袋本体10を形成する通水濾過性シートとしては、所定量のコーヒー粉を充填し、注湯した場合にコーヒーの浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。
【0022】
袋本体10は、正面視が矩形で対向する2面を有している。袋本体10の一方の側辺部11cは通水性濾過シートの折り山で輪になっており、もう一方の側辺部11d、上辺部11a、及び下辺部11bは表裏の通水濾過性シート同士が接合された接合部となっている。このうち側辺部11d、上辺部11a、及び下辺部11bの接合部は、いずれも不用意に開口して内容物が飛び出ることがない程度の接合強度を有するが、上辺部11aの接合部の接合強度は、下辺部11及び側辺部11dの接合部Tnの接合強度よりも低く、袋本体の表裏に設けられた掛止部材20の掛止部22を互いに反対方向に引っ張ると、上辺部11aだけが容易に開口する弱接合部となっている。なお、本発明では、後述するように袋本体10の上辺部を接合部とせず、通水性濾過シートの折り山としてもよく、その折り山にミシン目などの易開裂線を形成してもよい。また、袋本体の上辺部11aを開口させるために、上辺部11aを弱接合部とすることなく、通常の接合強度の接合部とし、上辺部11aに沿ってミシン目などの易開裂線を形成してもよい。
【0023】
袋本体10の正味の平面寸法は、ドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで使用できる大きさにすればよい。
【0024】
(掛止部材)
掛止部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料の打ち抜きにより形成することができる。薄板状材料も、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料から形成したものが好ましい。
【0025】
図1の正面図に示されているように、ドリップバッグ1Aでは掛止部材20が概略矩形の薄板状材料が2つ折りされた状態で袋本体10の対向する外表面に設けられている。上記正面図において掛止部材20のW2は、袋本体の幅W1よりも小さく、薄板状材料の折り山になっている掛止部材20の側辺部21cと、通水濾過性シートの折り山になっている袋本体10の側辺部11cとは重なっており、折り山と反対側の掛止部材20の側辺と袋本体10の側辺との間には距離d1の間隙がある。後述するように充填包装機を利用してドリップバッグ1Aを製造する場合に、袋本体10の側辺部11dを接合する超音波シール装置のシールバーが掛止部材20を噛んで浮き上がることがない程度に距離d1は十分に大きくとることが好ましく、具体的には、2.0mm以上とすることが好ましい。
【0026】
また、掛止部材20の上辺と袋本体10の上辺との距離d2も、充填包装機を利用してドリップバッグ1Aを製造する場合に、袋本体10の上辺部11aを接合する超音波シール装置のシールバーが掛止部材20を噛んで浮き上がることがない程度に十分に大きくとることが好ましい。
【0027】
掛止部材20には、袋本体から引き起こし可能な掛止部22が、ドリップバッグ1Aの正味の開口幅の中心線Aを挟んで対称的に形成されている。中心線Aを挟んだ一対の掛止部22は、中心線A側の辺が折れ線L1で、他の外形線が切れ線となっている。なお、本発明において折れ線は、ミシン目、ハーフカット、筋押し等により形成することができる。
【0028】
掛止部材20は、貼着領域S(図中、粗い間隔の斜線で塗りつぶした部分)で袋本体10と貼着している。即ち、掛止部22の上方では、掛止部材20の上辺部21aに沿って貼着領域Sが配置されており、一対の掛止部22の間には貼着領域Sが中心線Aに沿って配置されている。このため、掛止部22は折れ線L1を回動の軸として袋本体10から引き起こされる。なお、掛止部材20と袋本体10との貼着領域は、掛止部22が中心線A側の折れ線L1を回動の軸として引き起こされるようにする限り、貼着領域の形成態様は特に限定されない。例えば、掛止部材20の上辺部21aに沿った部分では、該上辺部21aのほぼ全幅にわたり断続的に貼着領域を形成してもよい。
【0029】
一対の掛止部22の間の、掛止部材20の上端部と下端部には、中心線Aに沿って折れ線L3が形成されている。
【0030】
掛止部22の下端部には、ドリップバッグ1Aをカップに掛止させるときに、カップの開口壁に引っ掛かるように凹部23が形成されている。
【0031】
このドリップバッグ1Aは、掛止部20の左右の側辺部のうち、袋本体の側辺部11dの接合部に隣接した側辺部21dに、袋本体10の通水濾過性シートを介して対向している掛止部材同士が接合された強接合部Ts(図中、細かい間隔の斜線で塗りつぶした部分)を有し、かつ強接合部Tsよりもドリップバッグ1Aの幅方向の中心側(即ち、中心線A側)で、該強接合部Tsに隣接した部分に、ドリップバッグ1Aの上下方向に伸びた折れ線L2を有することを特徴としている。本実施例では、この折れ線として、掛止部材20の上辺部21aから下辺部21bの至る1本の折れ線L2が形成されている。この折れ線L2は強接合部Tsに接していてもよく、部分的に重なっていてもよく、離れていても良い。離れている場合に、折れ線L2と強接合部Tsとの距離d3は好ましくは5mm以内である。この距離d3が大きすぎると、ドリップバッグの開口幅を無用に狭めることになる。
【0032】
ドリップバッグ1Aの側辺部1dに、このように強接合部Tsを設けることにより、袋本体10の開口形状の全周が掛止部材20で支持されるので、後述するようにドリップバッグを開口し、注湯した状態においても、ドリップバッグ1Aは注湯前の開口形状を維持することができる。また、強接合部Tsに隣接して折れ線L2が形成されているので、表裏の掛止部材20が折れ線L2で容易に開く。そのため、ドリップバッグ1Aは袋本体10が筒型に広く開いた開口形状を容易にとることができる。
【0033】
なお、強接合部Tsは、袋本体10を介して対向している掛止部材同士を超音波接合することにより、あるいは加熱ヘッドで局部的に加熱・加圧することにより形成することができる。
【0034】
(ドリップバッグの使用方法)
ドリップバッグ1Aの使用方法としては、まず、袋本体10から掛止部22を引き起こし、図2に示したように、袋本体10の表裏の掛止部材20のそれぞれにおいて一対の掛止部22同士を重ね合わせ、袋本体10の表裏で重ね合わせた掛止部22を図中矢印で示したように互いに反対方向に引っ張る。これにより、折れ線L3近傍の袋本体10の上辺部11aに引っ張り力が集中し、上辺部11aの弱接合部が折れ線L3近傍から開き、さらに引っ張ると、掛止部材20が折れ線L2、L3、L4で屈曲し、袋本体10が矩形に開口する。袋本体10が開口した後、図3に示したように、ドリップバッグ1Aの掛止部22の下端部の凹部23をカップ100の上端壁に掛止させる。そして、袋本体10の開口部12から注湯し、カップ100内にコーヒー抽出液を得る。
【0035】
このドリップバッグ1Aは、袋本体10の開口部12の全周が掛止部材20で支持されている。また、掛止部材20は強接合部Tsにより筒状に成形され、かつ側辺部21cが折り山になっていることに加えて、折れ線L2、L3、L4があることにより、掛止部材20は角柱状に開き、凹部23をカップ100の開口壁に掛止することにより、角柱状に開いた掛止部材20の開口形状が安定する。したがって、ドリップバッグ1Aに注湯した後においても、ドリップバッグ1Aは注湯前の開口形状を維持することができる。
【0036】
(ドリップバッグの製造方法)
ドリップバッグ1Aの製造方法としては、まず、図4に示すように、側辺部21cで2つ折りにする前の掛止部材20を、長尺の通水濾過性シート41に所定間隔で並べて貼着したドリップバッグ製造用シート40Aを用意する。この場合、通水濾過性シート41と掛止部材20との貼着領域Sは、図1で貼着領域Sとして示した領域とする。図4では、図中一番上の掛止部材20にこの貼着領域Sを示す。なお、図4において、二点鎖線で囲まれた矩形領域は、1個のドリップバッグの製造に使用される領域である。
【0037】
次に、図5Aに示すように、ドリップバッグ1Aの掛止部材の側辺部21cの折れ山の位置でドリップバッグ製造用シート40Aを二つ折りにし、ドリップバッグ製造用シート40Aの長手方向の両側辺を重ね合わせ、その長手方向の側辺部同士を溶着する(縦シール)ことにより袋本体の側辺部11dとなる接合部Tnを形成し、該接合部Tnよりもドリップバッグの内側となる部分に強接合部Tsを形成する。また、接合部Tnの形成時に、通水濾過性シート41の不要部分42をトリミングすることが好ましい。
【0038】
次に、こうして形成されたドリップバッグ製造用シート40Aの筒状体に対し、図5Bに示すように、筒状体の短手方向の溶着(横シール)と袋本体10内への抽出材料50の充填を交互に繰り返すことによりドリップバッグ1Aの袋本体10の上辺部11aと下辺部11bが上下に繋がったドリップバッグを製造し、これを個々のドリップバッグ1Aに切り離して個々のドリップバッグ1Aを得る。あるいは、袋本体10の上辺部11aと下辺部11bの溶着時に溶断も同時に行い、個々に切り離されたドリップバッグ1Aを連続的に製造する。
【0039】
(変形態様)
本発明のドリップバッグは、種々の態様をとることができる。
例えば、図1に示したドリップバッグ1Aでは、強接合部Tsに隣接した折れ線L2が、袋本体10の表裏の掛止部材20の双方に形成されているが、図6に示すドリップバッグ1Bのように、袋本体10の表裏の掛止部材20のうち、一方のみに折れ線L2を形成し、他方には折れ線L2を形成しなくてもよい。図7に示すように、このドリップバッグ1Bによれば、開口形状においてドリップバッグの側辺部1dが折れ線L2を形成した掛止部材側に屈曲するので、カップの開口径が小さい場合でも、ドリップバッグを収まりよくカップにセットすることができる。
【0040】
図1Aに示したドリップバッグ1Aにおいて、袋本体10の側辺部11dの接合部Tnの形成位置と、掛止部材20の側辺部21dの強接合部Tsの形成位置とが、ドリップバッグの幅方向で重なるようにしてもよく、この場合に、図8に示したドリップバッグ1Cのように、強接合部Tsを掛止部材20の上端から下端に至り帯状に形成してもよい。強接合部Tsの形成領域が大きくなると溶着に要する時間や圧力を増加させることが必要となることから、強接合部Tsの形成位置や形成領域の大きさは超音波接合装置に応じて適宜定めることができる。
【0041】
図9に示したドリップバッグ1Dは、図1に示したドリップバッグ1Aと同様の掛止部22を有するが、横型の、例えば、ロータリータイプの自動充填包装機で製造できるように、袋本体10の左右双方の側辺部11c、11dが接合部Tnで接合されている。また、掛止部材20の上端部と下端部で側辺部21c、21dが突出し、その突出した領域に強接合部Tsが形成され、折れ線L2は突出した領域の基部でドリップバッグの上下方向に形成されている。
【0042】
このドリップバッグ1Dでは袋本体10の上辺部11aを、袋本体10を形成する通水濾過性シートの折り山とし、その折り山に易開裂線13としてマイクロミシン目が形成されている。なお、横型の自動充填包装機でドリップバッグを製造する場合、ドリップバッグの袋本体の上辺部又は下辺部の外形をトリミングによりデザインすることができるため、例えば、袋本体10の下辺11bを下方に突出した山型にデザインしてもよい。
【0043】
ドリップバッグ1Dの使用方法としては、図1に示したドリップバッグ1Aと同様に袋本体10の表裏の掛止部22を互いに反対方向に引っ張る。これにより、折れ線L3の近傍の上辺部11aに引っ張り力が集中し、この部分のマイクロミシン目13が開裂し、さらに引っ張ると、掛止部材20が折れ線L2、L3、L4で屈曲し、袋本体10の上辺部11aのうち左右の強接合部Tsで挟まれた領域が開口し、袋本体10が矩形に開口する。こうして開口したドリップバッグ1Dを、図10に示したようにカップ100に掛止させる。このドリップバッグ1Dも、袋本体10の開口部の全周が掛止部材20で支持されており、かつ折れ線L2、L3、L4によりドリップバッグ1Dの開口形状は矩形となる。この開口形状は注湯後においても安定している。
【0044】
ドリップバッグ1Dの製造方法としては、まず、図11に示すように、通水濾過性シート41の、袋本体の上辺となる位置にマイクロミシン目13を形成しておく。次に、袋本体の表裏に設ける一対の掛止部材20を、それらの上辺21a同士をつきあわせるように配置したものを、通水濾過性シート41の長手方向にドリップバッグ1Dの幅のピッチで並べて貼着し、ドリップバッグ製造用シート40Dを得る。この場合の通水濾過性シート41と掛止部材20の貼着領域は、図9で貼着領域Sとして示した領域とする。図11には、紙面左側の掛止部材にこの貼着領域Sを示す。
【0045】
次に、図12Aに示すように、マイクロミシン目13でドリップバッグ製造用シート40Dを二つ折りにし、袋本体の側辺部11c、11dの接合部Tnとそれに隣接する強接合部Tsの形成と、抽出材料50の充填とを交互に繰り返す。この場合、抽出材料50は、ドリップバッグ1Dの袋本体10の下辺部11bとなる部分から充填する。そして図12Bに示すように、袋本体10の下辺部11bの接合部Tnを形成し、連続的に製造されるドリップバッグ1Dを個々のドリップバッグに切断する。
【0046】
本発明のドリップバッグは、載置式とすることが好ましいが、掛止部22の形状や配置については特に限定がない。例えば、図13に示したドリップバッグ1Eは、該ドリップバッグ1Eの一方の側辺部1dが通水濾過性シート及び掛止部材20の折り山になっており、他方の側辺部では、袋本体10の側辺部11cが通水濾過性シート同士の接合により接合部Tnが形成されている。袋本体10の表裏の掛止部材20は、それぞれ左右の両側部にく字形に屈曲した折れ線L5とその折れ線L5の屈曲点から掛止部材20の側辺に達する折れ線L6を有し、掛止部材20の中央部に、袋本体10から引き起こし可能な一対の掛止部24を有している。そしてこのドリップバッグ1Eは、袋本体10の側辺部11cの接合部Tnの近傍に強接合部Tsを有し、その強接合部Tsよりもドリップバッグの幅方向中心側にドリップバッグ1Eの上下方向に伸びた折れ線L2を有している。
【0047】
また、ドリップバッグ1Eの上部には、該ドリップバッグ1Eの上端部を開封するためのノッチ25と、それに連続したミシン目26が設けられている。
【0048】
このドリップバッグ1Eの使用方法としては、ドリップバッグ1Eの上端部をノッチ25から引き裂いて開封し、ドリップバッグ1Eをその両側部から押し潰すように押圧する。これにより、折れ線L5、L6は図14に示したように屈曲し、掛止部24が袋本体10の表面から突出し、また、強接合部Tsに隣接した折れ線L2も屈曲するので、ドリップバッグ1Eが矩形に開口する。そこで、同図に示したように、掛止部24をカップ100の上端壁に掛止し、開口部から注湯する。
【0049】
このドリップバッグ1Eも、袋本体10の開口部の全周が掛止部材20で支持されており、ドリップバッグの開口形状は注湯後においても維持される。
【0050】
図15に示したドリップバッグ1Fは、図13に示したドリップバッグ1Eにおいて、袋本体10の表裏の掛止部材20のうち一方のみに折れ線L2を設け、また、強接合部Tsで接合した表裏の掛止部材20の側辺部の、折れ線L6の延長上に切り欠き27を設けたものである。このように袋本体10の表裏の掛止部材20のうち一方のみに折れ線L2を設けると、図16に示したように、掛止部材20の側辺部に折れ線L2を設けた側に屈曲し、さらに切り欠き27が設けられていることにより、ドリップバッグ1Fの両側部が押し込まれた状態が安定するので好ましい。
【0051】
図17に示したドリップバッグ1Gは、図13に示したドリップバッグ1Eにおいて、袋本体10の下辺部11bを通水濾過性シートの折り山とし、ドリップバッグ1Gの左右双方の側辺部に袋本体10の側辺部11c、11dの接合部Tnと、通水濾過性シートの強接合部Tsを設けたものであり、図18はこのドリップバッグ1Gを開口し、カップ100に掛止した状態を示している。
【0052】
このように、本発明は種々の態様をとることができる。また、上述した態様の異なる部分は、適宜組み合わせることができる。
【0053】
また、上述した態様ではコーヒー粉を抽出材料としたが、本発明のドリップバッグの袋本体10に充填する抽出材料はコーヒー粉に限らない。紅茶、緑茶等の茶葉、漢方薬等を充填してもよい。
【0054】
さらに、本発明のドリップバッグの各態様において、抽出材料を袋本体に充填せず、ドリップバッグの上端部が開口状態となるように構成し、ドリップ用フィルタとして使用できるようにしてもよい。即ち、ドリップ用フィルタを、通水濾過性シートから形成された袋本体、及び袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材から構成し、袋本体の側辺部に通水濾過性シート同士が接合された接合部を設け、該接合部に隣接する掛止部材の側辺部に、対向する掛止部材同士が通水濾過性シートを介して接合された強接合部を設け、該強接合部よりもドリップバッグの幅方向の中心側で該強接合部に隣接した部分に、ドリップバッグの上下方向に伸びた折れ線を設ける。例えば、図1に示したドリップバッグ1Aをドリップ用フィルタに構成する場合には、図19に示したドリップ用フィルタ2Aのように、図1に示したドリップバッグ1Aにおいて、抽出材料の充填と、袋本体10の上端部の接合部の形成を省略する。図20は、このドリップ用フィルタ2Aをカップ100に掛止した状態の斜視図である。
【0055】
ドリップ用フィルタ2Aによれば、ユーザーが袋本体10に好みの抽出材料50を充填し、そこに注湯することにより抽出液を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G ドリップバッグ
1d ドリップバッグの側辺部
2A ドリップ用フィルタ
10 袋本体
11a 袋本体の上辺部
11b 袋本体の下辺部
11c 袋本体の側辺部
11d 袋本体の側辺部
12 袋本体の開口部
13 易開裂線、マイクロミシン目
20 掛止部材
21a 掛止部材の上辺部
21b 掛止部材の可変部
21c、21d 掛止部材の側辺部
22 掛止部
23 凹部
24 掛止部
25 ノッチ
26 ミシン目
27 切り欠き
40A、40D ドリップバッグ製造用シート
41 通水濾過性シート
42 通水濾過性シートの不要部分
50 抽出材料
100 カップ
A 中心線
d1 距離
d2 距離
d3 距離
L1、L2、L3、L4、L5、L6 折れ線
S 通水濾過性シートと掛止部材との貼着領域
Tn 通水濾過性シート同士の通常の接合強度の接合部
Ts 強接合部
W1 袋本体の幅
W2 掛止部材の幅
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20