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特許7129086ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
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  • 特許-ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220825BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/5313
C08K3/34
C08K3/26
C08K5/098
C08K5/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018565521
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2018002607
(87)【国際公開番号】W WO2018143110
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017018075
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正木 辰典
(72)【発明者】
【氏名】上川 泰生
(72)【発明者】
【氏名】三井 淳一
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528904(JP,A)
【文献】特表2014-521765(JP,A)
【文献】特開2007-031611(JP,A)
【文献】特開2013-241624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K5、C08K3
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が280~320℃である半芳香族ポリアミド(A)、脂肪族ポリアミド(B)、ホスフィン酸金属塩(C)5~30質量%、強化材(D)5~60質量%、炭酸金属塩(E)0.1~8質量%、脂肪酸バリウム塩(F)0.01~3質量%、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)0.01~5質量%を含有し、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の含有量の合計が30~85質量%であり、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の質量比(A/B)が、90/10~40/60であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ホスフィン酸金属塩(C)が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1~16のアルキル基またはフェニル基を表す。Rは、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基を表す。Mは、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオンまたは亜鉛イオンを表す。mは、2または3である。n、a、bは、2×b=n×aの関係式を満たす整数である。)
【請求項3】
炭酸金属塩(E)を構成する金属が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪酸バリウム塩(F)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
強化材(D)が、平均粒径が10~30μmであるタルクを含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有するポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、耐熱性、機械的特性が優れており、多くの電気・電子部品、自動車のエンジン周りの部品の構成材料として使用されている。
【0003】
これらの部品の中でも、電気・電子部品を構成するポリアミドには、高度な難燃性が要求されている。ポリアミドに難燃性を付与する方法として、難燃剤を用いる方法が通常行なわれている。近年、環境意識の高まりから、ハロゲン系難燃剤が避けられ、一般的に、非ハロゲン系難燃剤が使用されている。
【0004】
また、電気・電子部品の実装は表面実装が主流となっており、リフロー工程において、部品を構成するポリアミドは、最高温度260℃程度の高温にさらされることとなる。したがって、ポリアミドとして、リフロー耐熱性を有する、融点270℃以上の耐熱ポリアミドの使用が必要とされる場面が多くなっている。融点が270℃以上の耐熱ポリアミドとしては、一般的に半芳香族ポリアミドやポリアミド46などが用いられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、非ハロゲン系難燃剤として、ホスフィン酸金属塩を用いた半芳香族ポリアミド樹脂組成物が開示され、1/32インチ(0.79mm)の成形品において難燃規格UL94V-0規格を満足し、またリフロー耐熱性と0.5mm厚みでの流動性とを有することが開示されている。
【0006】
しかしながら、電気・電子部品は年々小型化の傾向にあり、より薄肉での性能が求められている。特に難燃性と流動性に関しては、一般的には薄肉であるほど性能が低下するため、それらの改善が強く望まれている。
また、耐熱ポリアミドは、高融点ゆえに加工温度が高いため、ホスフィン酸金属塩を含有する耐熱ポリアミド樹脂組成物においては、溶融加工時において、押出機のスクリューやダイス、また成形機のスクリューや金型などの金属部品を激しく摩耗するという金属腐食性の問題があった。
【0007】
このように、電気・電子部品に適した耐熱ポリアミドを設計する上で、リフロー耐熱性、難燃性、流動性、低金属腐食性の性能をすべて満足させることが非常に重要である。
【0008】
これらの問題に対して、特許文献2では、特定の半芳香族ポリアミドと特定の脂肪族ポリアミドとを、75/25~98/2の重量比で用いた材料が開示されている。この材料は、成形加工温度が340℃であり、高温での成形加工が必要なものである。金属腐食性は、高温である程増大するため、この材料においては、金属腐食性を低減させるために、成形加工温度を下げる必要があるが、成形加工温度を下げると流動性が著しく損なわれ、成形加工が困難となる問題があった。
また、特許文献3では、特定の半芳香族ポリアミドと特定の脂肪族ポリアミドとを、50/50~75/25の重量比で用いた材料が開示されている。この材料は、特許文献2に開示された材料に比較して、流動性が向上しているが、金属腐食性が十分低減したものではなかった。
【0009】
金属腐食性の低減は、成形加工時の設定温度を低下させるだけでなく、樹脂組成物の実際の温度を低下させることが重要である。一般的に、成形体は、薄肉であるほど、高速で成形する必要がある。樹脂組成物は、薄肉部を高速で流される程、せん断発熱により温度が上昇し、設定温度より高くなる傾向があるため、薄肉成形体の成形において、金属腐食性を十分低減することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2008/126381号
【文献】特表2014-517102号公報
【文献】特表2014-521765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物における上記課題を解決するものであって、リフロー耐熱性と難燃性を維持しつつも、高流動性と低金属腐食性を同時に満たすことができるポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとを特定の割合で含有し、特定の難燃剤、特定の添加剤を特定量含有する樹脂組成物が、リフロー耐熱性、難燃性、高流動性、低金属腐食性を満足することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0013】
(1)融点が280~320℃である半芳香族ポリアミド(A)、脂肪族ポリアミド(B)、ホスフィン酸金属塩(C)5~30質量%、強化材(D)5~60質量%、炭酸金属塩(E)0.1~8質量%、脂肪酸バリウム塩(F)0.01~3質量%、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)0.01~5質量%を含有し、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の含有量の合計が30~85質量%であり、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の質量比(A/B)が、90/10~40/60であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)ホスフィン酸金属塩(C)が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物であることを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1~16のアルキル基またはフェニル基を表す。Rは、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基を表す。Mは、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオンまたは亜鉛イオンを表す。mは、2または3である。n、a、bは、2×b=n×aの関係式を満たす整数である。)
(3)炭酸金属塩(E)を構成する金属が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)脂肪酸バリウム塩(F)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物
(5)強化材(D)が、平均粒径が10~30μmであるタルクを含有することを特徴とする(1)~()のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
)上記(1)~()のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れたリフロー耐熱性、難燃性に加え、流動性および低金属腐食性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れるために、薄肉成形体を成形する際の、せん断発熱による樹脂組成物の温度の上昇を抑制することができ、その結果、薄肉成形体の成形においても、金属腐食性を十分低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】金属腐食性を評価するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)、脂肪族ポリアミド(B)、ホスフィン酸金属塩(C)、強化材(D)、炭酸金属塩(E)、脂肪酸バリウム塩(F)を含有する。
【0017】
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成する半芳香族ポリアミド(A)は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを構成成分として含有し、ジカルボン酸成分に芳香族ジカルボン酸を含有し、ジアミン成分に脂肪族ジアミンを含有するものである。
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸(T)を含有することが好ましく、テレフタル酸の含有量は、耐熱性の観点から、ジカルボン酸成分中、95モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。
半芳香族ポリアミド(A)のジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外のジカルボン酸を含有する場合、テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外のジカルボン酸は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0018】
半芳香族ポリアミド(A)におけるジアミン成分は、耐熱性と加工性の観点から、炭素数8~12の脂肪族ジアミンであることが好ましい。炭素数8~12の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンが挙げられ、中でも、汎用性が高いことから、1,10-デカンジアミンが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、併用してもよいが、機械的特性の向上の観点から、単独で用いることが好ましい。
半芳香族ポリアミド(A)のジアミン成分は、炭素数8~12の脂肪族ジアミン成分以外の他のジアミンを含有する場合、他のジアミンとしては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン等の脂肪族ジアミン成分、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。炭素数8~12の脂肪族ジアミン成分以外の他のジアミンは、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0019】
半芳香族ポリアミド(A)は、必要に応じて、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸等のω-アミノカルボン酸を含有してもよい。
【0020】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)の具体例として、例えば、ポリアミド8T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12Tが挙げられる。
【0021】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、モノカルボン酸成分を構成成分とすることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸を構成成分として有する半芳香族ポリアミド(A)と、脂肪族ポリアミド(B)とを含有する樹脂組成物から得られる成形体は、熱を受けやすい成形体表層部において、耐熱性の高い半芳香族ポリアミド(A)が主成分となりやすくなるため、リフロー工程においてブリスターが発生しにくくなる。
モノカルボン酸成分の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して0.3~4.0モル%であることが好ましく、0.3~3.0モル%であることがさらに好ましく、0.3~2.5モル%であることがより好ましく、0.8~2.5モル%であることが特に好ましい。上記範囲内でモノカルボン酸成分を含有することにより、重合時の分子量分布を小さくできたり、成形加工時の離型性の向上がみられたり、成形加工時においてガスの発生量を抑制することができたりする。一方、モノカルボン酸成分の含有量が上記範囲を超えると、機械的特性や難燃性が低下することがある。なお、本発明において、モノカルボン酸の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)中のモノカルボン酸の残基、すなわち、モノカルボン酸から末端の水酸基が脱離したものが占める割合をいう。
【0022】
半芳香族ポリアミド(A)は、モノカルボン酸成分として、分子量が140以上のモノカルボン酸を含有することが好ましく、分子量が170以上のモノカルボン酸を含有することがさらに好ましい。モノカルボン酸の分子量が140以上であると、離型性が向上し、成形加工時の温度においてガスの発生量を抑制することができ、また成形流動性も向上することができる。
【0023】
モノカルボン酸成分としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、中でも、ポリアミド由来成分の発生ガス量を減少させ、金型汚れを低減させ、離型性を向上することができることから、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0024】
分子量が140以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、ステアリン酸が好ましい。
分子量が140以上の脂環族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸、4-へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4-ラウリルシクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。
分子量が140以上の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチル安息香酸、4-へキシル安息香酸、4-ラウリル安息香酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
モノカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、分子量が140以上のモノカルボン酸と分子量が140未満のモノカルボン酸を併用してもよい。なお、本発明において、モノカルボン酸の分子量は、原料のモノカルボン酸の分子量を指す。
【0026】
半芳香族ポリアミド(A)は、融点が280~320℃であることが必要であり、290~320℃であることが好ましく、300~320℃であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の融点が280℃未満であると、樹脂組成物は、リフロー耐熱性が低下する。一方、樹脂組成物は、融点が320℃を超える半芳香族ポリアミド(A)を含有すると、溶融温度が高くなるため、金属腐食性が増大することがある。
【0027】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、メルトフローレート(MFR)が1~200g/10分であることが好ましく、10~150g/10分であることがより好ましく、20~120g/10分であることがさらに好ましい。MFRは、成形流動性の指標とすることができ、MFRの値が高いほど流動性が高いことを示す。半芳香族ポリアミド(A)のMFRが200g/10分を超えると、得られる樹脂組成物は、機械的特性が低下する場合があり、半芳香族ポリアミド(A)のMFRが1g/10分未満であると、流動性が著しく低く、320℃程度の成形温度で溶融加工できない場合がある。
【0028】
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶性が高い方が、得られる成形体は、結晶化度が高くなり、より耐熱性、リフロー耐熱性、機械強度、低吸水性が向上するため、半芳香族ポリアミド(A)は、結晶化度が特定の範囲に制御されていることが好ましい。本発明においては、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した結晶融解熱量(ΔH)を結晶化度の指標とし、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のΔHは、50J/g以上であることが好ましく、55J/g以上であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ΔHが50J/gを下回ると、結晶性を十分に高めることができず、得られる成形体は、リフロー工程においてブリスターが発生する場合がある。
【0029】
半芳香族ポリアミド(A)は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、ジカルボン酸成分と、ジアミン成分と、モノカルボン酸成分とから反応生成物を得る工程(i)と、得られた反応生成物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0030】
工程(i)としては、例えば、ジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とを混合し、予めジアミンの融点以上、かつジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度のジカルボン酸粉末とモノカルボン酸とに、ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとモノカルボン酸の反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、反応生成物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0031】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応生成物を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0032】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0033】
半芳香族ポリアミド(A)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマーに対して、2モル%以下で用いることが好ましい。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成する脂肪族ポリアミド(B)は、主鎖中に芳香族成分を含まないポリアミドであり、例えば、ポリε-カプラミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカナミド(ポリアミド11)、ポリドデカナミド(ポリアミド12)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、あるいは、これらの混合物などがあげられる。中でもポリアミド6、ポリアミド66が、流動性、経済性の観点から好ましい。
【0035】
脂肪族ポリアミド(B)の相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易な樹脂組成物を得るには、脂肪族ポリアミド(B)は、相対粘度が1.9~4.0であることが好ましく、2.0~3.5であることがより好ましい。脂肪族ポリアミド(B)の相対粘度が1.9未満であると、成形体によっては靱性が不足し、機械的特性の低下を招くおそれがある。また、脂肪族ポリアミド(B)の相対粘度が4.0を超えると、樹脂組成物は、成形加工が困難となり、得られる成形体は、外観が劣ることがある。
【0036】
本発明のポリアミド樹脂組成物における、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の含有量の合計は、30~85質量%であることが必要であり、35~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましい。樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の含有量の合計が30質量%未満であると、流動性が低下する場合があり、85質量%を超えると、難燃性が低下する場合がある。
半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(B)の質量比(A/B)は、90/10~40/60であることが必要であり、85/15~45/55であることが好ましく、80/20~48/52であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の割合が90質量%を超えると、すなわち脂肪族ポリアミド(B)の割合が10質量%未満であると、樹脂組成物は、流動性が低下し、混練時や成形時にせん断発熱により温度が上昇し、金属腐食性が増大する場合がある。一方、半芳香族ポリアミド(A)の割合が40質量%未満、すなわち脂肪族ポリアミド(B)の割合が60質量%を超えると、樹脂組成物のリフロー耐熱性が低下する場合がある。
【0037】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩(C)を含有する。
樹脂組成物におけるホスフィン酸金属塩(C)の含有量は、5~30質量%であることが必要であり、8~25質量%であることが好ましく、8~20質量%であることがさらに好ましい。ホスフィン酸金属塩(C)の含有量が、5質量%未満であると、樹脂組成物に、必要とする難燃性を付与することが困難となる。一方、ホスフィン酸金属塩(C)の含有量が、30質量%を超えると、樹脂組成物は、難燃性に優れる反面、金属腐食性が大きくなるとともに、溶融混練が困難となることがあり、また得られる成形体は機械的特性が不十分となることがある。
【0038】
本発明のホスフィン酸金属塩(C)としては、下記一般式(I)で表されるホスフィン酸金属塩、および一般式(II)で表されるジホスフィン酸金属塩が挙げられる。
【0039】
【化1】
【化2】
【0040】
式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1~16のアルキル基またはフェニル基であることが必要で、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、フェニル基であることがより好ましく、エチル基であることがさらに好ましい。RとRおよびRとRは互いに環を形成してもよい。
は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基であることが必要である。直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、n-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基が挙げられる。炭素数6~10のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。アルキルアリーレン基としては、例えば、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、tert-ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、tert-ブチルナフチレン基が挙げられる。アリールアルキレン基としては、例えば、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基が挙げられる。
Mは、金属イオンを表す。金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンが挙げられ、アルミニウムイオン、亜鉛イオンが好ましく、アルミニウムイオンがより好ましい。
m、nは、金属イオンの価数を表す。mは、2または3である。aは、金属イオンの個数を表し、bは、ジホスフィン酸イオンの個数を表し、n、a、bは、「2×b=n×a」の関係式を満たす整数である。
【0041】
ホスフィン酸金属塩やジホスフィン酸金属塩は、それぞれ、対応するホスフィン酸やジホスフィン酸と、金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、通常、モノマーとして存在するが、反応条件に依存して、縮合度が1~3のポリマー性ホスフィン酸塩の形として存在する場合もある。
【0042】
上記一般式(I)で表されるホスフィン酸塩の具体例としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。中でも、難燃性、電気特性のバランスに優れることから、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムがより好ましい。
【0043】
また、ジホスフィン酸塩の製造に用いるジホスフィン酸としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)が挙げられる。
【0044】
上記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩の具体例としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)亜鉛が挙げられる。中でも、難燃性、電気特性のバランスに優れることから、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛が好ましい。
【0045】
ホスフィン酸金属塩(C)の具体的な商品としては、例えば、クラリアント社製「Exolit OP1230」、「Exolit OP1240」、「Exolit OP1312」、「Exolit OP1314」「Exolit OP1400」が挙げられる。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、強化材(D)を含有する。
強化材(D)としては、繊維状強化材が挙げられる。
繊維状強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維が挙げられる。中でも、機械的特性の向上効果が高く、ポリアミドとの溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性を有し、入手しやすいことから、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましい。ガラス繊維の具体的な商品名としては、例えば、日東紡社製「CS3G225S」、日本電気硝子社製「T-781H」が挙げられ、炭素繊維の具体的な商品名としては、例えば、東邦テナックス社製「HTA-C6-NR」が挙げられる。繊維状強化材は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0047】
繊維状強化材の繊維長、繊維径は、特に限定されないが、繊維長は0.1~7mmであることが好ましく、0.5~6mmであることがより好ましい。繊維状強化材の繊維長を0.1~7mmとすることにより、成形性に悪影響を及ぼすことなく、樹脂組成物を補強することができる。また、繊維径は3~20μmであることが好ましく、5~13μmであることがさらに好ましい。繊維径を3~20μmとすることにより、溶融混練時に折損させることなく、樹脂組成物を効率よく補強することができる。断面形状としては、例えば、円形、長方形、楕円、それ以外の異形断面等が挙げられるが、中でも円形が好ましい。
【0048】
強化材(D)として、繊維状強化材に加えて、さらに、タルク、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、金属箔などの板状強化材を含有することが好ましく、平均粒径が10~30μmのタルクを含有することがさらに好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド(B)を含有すると、流動性が高くなるが、耐リフロー性が低下し、ブリスターが発生することがある。しかし、上記平均粒径のタルクを含有することで、リフロー時のブリスター発生を抑制することができる。
タルクは、シランカップリング剤などの有機化合物で表面処理されていてもよい。表面処理されることにより、半芳香族ポリアミド(A)や脂肪族ポリアミド(B)との密着性が改善され、強度向上やブリスター抑制に効果がある。
本発明において、タルクの平均粒径とは、レーザー回折法により得られるメジアン径(D50)を指す。
タルクを含有する場合、含有量は、樹脂組成物全体に対して3~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。タルクの含有量が3質量%未満であると、リフロー時のブリスター抑制効果が小さい。
【0049】
強化材(D)として、上記の他に、針状強化材、球状強化材を使用してもよい。特に繊維状強化材と、針状強化材や板状強化材、球状強化材を併用することで、成形体の反りを小さくしたり、難燃試験時の耐ドリップ性を向上させることができる。針状強化材としては、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカなどが挙げられる。球状強化材としては、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、溶融シリカ、ガラス類(ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドガラスファイバー)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、ケイ藻土等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)などが挙げられる。
【0050】
樹脂組成物における強化材(D)の含有量は、十分な機械的強度を実現するために、5~60質量%であることが必要であり、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。強化材(D)の含有量が5質量%未満であると、樹脂組成物は、機械的特性の向上効果が小さい場合があり、また難燃性が低下する場合がある。一方、強化材(D)の含有量が60質量%を超えると、樹脂組成物は、機械的特性の向上効果が飽和し、それ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、流動性が極端に低下するために、成形体を得ることが困難になる場合がある。
【0051】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、炭酸金属塩(E)を含有する。
樹脂組成物における炭酸金属塩(E)の含有量は0.1~8質量%であることが必要であり、0.2~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。炭酸金属塩(E)の含有量が、0.1質量%未満であると、樹脂組成物は、十分な金属腐食性抑制効果が得られず、一方、炭酸金属塩(E)は、含有量が8質量%を超えると、難燃性への悪影響が大きく、樹脂組成物は、十分な難燃性が得られなくなる。
【0052】
炭酸金属塩(E)を構成する金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、バリウムなどが挙げられる。熱安定性や安全性の観点から、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムが好ましい。カルシウム、マグネシウムがさらに好ましく、カルシウムが特に好ましい。
【0053】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、脂肪酸バリウム塩(F)を含有する。
樹脂組成物における脂肪酸バリウム塩(F)の含有量は0.01~3質量%であることが必要であり、0.05~2質量%であることが好ましく、0.1~1.5質量%であることがより好ましい。脂肪酸バリウム塩(F)の含有量が、0.01質量%未満であると、樹脂組成物は、十分な金属腐食性抑制効果が得られず、一方、脂肪酸バリウム塩(F)は、含有量が3質量%を超えると、金属腐食性抑制効果が飽和し、また機械強度も低下する場合がある。
【0054】
脂肪酸バリウム塩(F)を構成する脂肪酸としては、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)、エルカ酸、リシノール酸などが挙げられる。入手性や熱安定性の観点から、ラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)を含有することが好ましい。ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)は、パーオキシラジカルを捕捉する効果を有するヒンダートフェノール構造と、金属イオンをキレートするヒドラジン構造の両方を有している。具体的には、下記式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化3】
【0057】
ホスフィン酸金属塩(C)とヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)を組み合わせることにより、ポリアミドの難燃性を飛躍的に向上させることができる。そのため、ホスフィン酸金属塩(C)の配合量を低減することができ、ホスフィン酸金属塩を含有するポリアミド樹脂組成物の課題である金属腐食性を抑制することができる。
【0058】
ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)の具体的な商品としては、例えば、アデカ社製「CDA-10」、ビーエーエスエフ社製「IRGANOX MD 1024」などが挙げられる。
【0059】
樹脂組成物におけるヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)の含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%であることがさらに好ましい。ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)の含有量が0.01質量%未満であると、難燃効率の向上効果が得られず、一方、含有量が5質量%を超えると、難燃効率が飽和し、それ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、得られる成形体は、機械的強度が不十分となる場合がある。
【0060】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃助剤をさらに含有してもよい。難燃助剤としては、例えば、窒素系難燃剤、窒素-リン系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。
【0061】
窒素系難燃剤としては、メラミン系化合物、シアヌル酸またはイソシアヌル酸とメラミン化合物との塩等が挙げられる。メラミン系化合物の具体例として、メラミンをはじめ、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物、メラミンの縮合物等であり、具体的には、メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、メトン、メロン等のトリアジン骨格を有する化合物、およびこれらの硫酸塩、メラミン樹脂等を挙げることができる。シアヌル酸またはイソシアヌル酸とメラミン化合物との塩とは、シアヌル酸類またはイソシアヌル酸類とメラミン系化合物との等モル反応物である。
【0062】
窒素-リン系難燃剤としては、例えば、メラミンまたはその縮合生成物とリン化合物とから形成される付加物(メラミン付加物)、ホスファゼン化合物を挙げることができる。
前記メラミン付加物を構成するリン化合物としては、リン酸、オルトリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。メラミン付加物の具体例として、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メレムポリホスフェート、メラムポリホスフェートが挙げられ、中でも、メラミンポリホスフェートが好ましい。リンの数は、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
ホスファゼン化合物の具体的な商品としては、例えば、伏見製薬所社製「ラビトルFP-100」、「ラビトルFP-110」、大塚化学社製「SPS-100」、「SPB-100」などが挙げられる。
【0063】
無機系難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩、亜リン酸アルミニウム等の亜リン酸塩、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸塩、アルミン酸カルシウムなどが挙げられる。これら無機系難燃剤は、難燃性の向上、金属腐食性の低減、どちらの目的で配合しても構わない。
【0064】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤を含有することにより、さらに安定性、成形性に優れたものとすることができる。
【0065】
リン系酸化防止剤は、無機化合物、有機化合物のいずれでもよい。リン系酸化防止剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン等の無機リン酸塩、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP-36」)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP-24G」)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP-8」)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP-4C」)、1,1′-ビフェニル-4,4′-ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)]、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4′-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト(「ホスタノックスP-EPQ」)、テトラ(トリデシル-4,4′-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。リン系酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0066】
リン系酸化防止剤は、ホスフィン酸金属塩(C)と均一に混ざりやすく、分解を防ぐため、難燃性を向上させることができる。また、リン系酸化防止剤は、半芳香族ポリアミド(A)や脂肪族ポリアミド(B)の分解や分子量低下を防ぎ、溶融加工時の操業性、成形性、機械的特性を向上させることができる。
【0067】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じてその他の安定剤、着色剤、帯電防止剤、炭化抑制剤等の添加剤をさらに含有してもよい。着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の顔料、ニグロシン等の染料が挙げられる。安定剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、光安定剤、銅化合物からなる熱安定剤、アルコール類からなる熱安定剤等が挙げられる。炭化抑制剤は、耐トラッキング性を向上させる添加剤であり、金属水酸化物、ホウ酸金属塩等の無機物や、上記の熱安定剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、半芳香族ポリアミド(A)、脂肪族ポリアミド(B)、ホスフィン酸金属塩(C)、強化材(D)、炭酸金属塩(E)、脂肪酸バリウム塩(F)および必要に応じて添加されるその他添加剤などを配合して、溶融混練する方法が好ましい。溶融混練法としては、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いる方法が挙げられる。溶融混練温度は、半芳香族ポリアミド(A)および脂肪族ポリアミド(B)が溶融し、かつそれらが分解しない領域から選ばれる。溶融混練温度は、高すぎると、半芳香族ポリアミド(A)や脂肪族ポリアミド(B)が分解するだけでなく、ホスフィン酸金属塩(C)も分解するおそれがあることから、半芳香族ポリアミド(A)の融点をTmとすると、(Tm-20℃)~(Tm+50℃)であることが好ましい。
【0069】
本発明のポリアミド樹脂組成物を様々な形状に加工する方法としては、溶融混合物をストランド状に押出しペレット形状にする方法や、溶融混合物をホットカット、アンダーウォーターカットしてペレット形状にする方法や、シート状に押出しカッティングする方法、ブロック状に押出し粉砕してパウダー形状にする方法が挙げられる。
【0070】
本発明のポリアミド樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられ、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
射出成形機としては、特に限定されず、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時のヒータ設定温度は、半芳香族ポリアミド(A)の融点(Tm)以上にすることが好ましいが、金属腐食性を抑えるために320℃以下で成形することが好ましい。
なお、ポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、十分に乾燥されたポリアミド樹脂組成物ペレットを用いることが好ましい。ポリアミド樹脂組成物ペレットは、含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミド樹脂組成物ペレットの水分率は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、0.3質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがより好ましい。
【0071】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、リフロー耐熱性と難燃性に優れ、また高い流動性であり、金属腐食性を抑制して薄肉製品を成形することができ、自動車部品、電気電子部品、雑貨、土木建築用品等広範な用途の成形体として使用できる。
自動車部品としては、例えば、サーモスタットカバー、インバータのIGBTモジュール部材、インシュレーター部材、エキゾーストフィニッシャー、パワーデバイス筐体、ECU筐体、ECUコネクタ、モーターやコイルの絶縁材、ケーブルの被覆材が挙げられる。電気電子部品としては、例えば、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、携帯用パソコン等の電気機器の筐体部品、抵抗器、IC、LEDのハウジングが挙げられる。中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、特に難燃性に優れていることから、電気電子部品に好適に用いることができる。
【実施例
【0072】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
1.測定方法
ポリアミドおよびポリアミド樹脂組成物の物性は以下の方法により測定した。
【0074】
(1)融点および融解熱量
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC-7型)用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱ピークのトップを融点(Tm)とし、ピーク面積を融解熱量とした。
【0075】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従い、(融点+15℃)、1.2kgfの荷重で測定した。
MFRは、成形流動性の指標とすることができ、MFRの値が高いほど流動性が高いことを示す。
【0076】
(3)機械的特性(引張強度)
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で射出成形し、試験片(ダンベル片)を作製した。
得られた試験片を用いて、ISO178に準拠して引張強度を測定した。
引張強度の数値が大きいほど機械的特性が優れていることを示し、本発明においては100MPa以上が望ましい。
【0077】
(4)流動性(バーフロー流動長)
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製 ROBOSHOT S2000i)を用いて、シリンダー温度を320℃、金型温度を140℃に設定し、型締力100トン、射出圧力150MPa、射出速度300mm/秒、射出時間5秒の条件で、シリンダー先端に片側1点ゲートの専用金型を取り付けて成形を行い、バーフロー流動長を測定した。専用金型は、厚さ0.5mm、幅20mmのL字状の成形体が採取できる形状であり、L字の上部中心にゲートを有する。
本発明においては、バーフロー流動長が100mm以上であることが好ましい。
【0078】
(5)リフロー耐熱性
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(日本製鋼所社製 J35AD)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で射出成形し、20mm×20mm×0.5mmの試験片を作製した。得られた試験成形片を、85℃×85%RHにて168時間吸湿処理を行った後、赤外線加熱式のリフロー炉中にて、150℃で1分間加熱し、100℃/分の速度で260℃まで昇温し、10秒間保持した。
加熱処理後に試験片表面に発生したブリスター(水ぶくれ)の面積が、試験片表面全体の面積の0%である場合を「◎」、0%より大きく25%以下である場合を「〇」、25%より大きく50%以下である場合を「△」、50%より大きい場合を「×」と評価した。
加熱処理後の試験片は、表面にブリスター(水ぶくれ)や溶融がないことが好ましい。
【0079】
(6)難燃性
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(日本製鋼所社製 J35AD)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で射出成形し、5インチ(127mm)×1/2インチ(12.7mm)×1/127インチ(0.5mm)の試験片を作製した。得られた試験片を用いて、表1に示すUL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の基準に従って難燃性を評価した。評価結果がV-2に満たない場合は、「not V-2」とした。
総残炎時間が短い方が、難燃性が優れていることを示す。
【0080】
【表1】
【0081】
(7)金属腐食性
図1のように、二軸混練押出機(EX)(池貝社製PCM30)に、ダイス(D)を取り付け、通常押出機の鋼材として使用する金属プレート(MP)(材質SUS630、20×10mm、厚さ5mm、質量7.8g)を、溶融樹脂の流路(R)の上下に取り付け、1mmの隙間を設け、溶融樹脂が幅10mm、長さ20mmにわたって接するようにした。その間隙に、押出機バレル温度330℃、吐出7kg/hの条件で、計25kgのポリアミド樹脂組成物を押出した。押出後、金属プレート(MP)を取り外し、500℃の炉の中に10時間放置し、付着した樹脂を取り除いた後に質量を測定し、押出前後の質量変化により金属腐食性を測定した。質量変化が大きいほど、金属腐食性が大きいことを示す。本発明においては、質量変化率が0.3%以下であることが好ましい。
【0082】
2.原料
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
【0083】
(1)半芳香族ポリアミド(A)
・半芳香族ポリアミド(A-1)
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)4.70kgと、モノカルボン酸成分としてステアリン酸(STA)0.32kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)4.98kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。
続いて、得られた反応生成物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られたポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(A-1)ペレットを得た。
【0084】
・半芳香族ポリアミド(A-2)~(A-8)
樹脂組成を表2に示すように変更した以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)と同様にして、半芳香族ポリアミド(A-2)~(A-8)を得た。
【0085】
上記半芳香族ポリアミド(A-1)~(A-8)の樹脂組成と特性値を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
(2)脂肪族ポリアミド(B)
・ポリアミド66(旭化成ケミカルズ社製 レオナ1200)、相対粘度2.45
(3)ホスフィン酸金属塩(C)
・ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 Exolit OP1230)
(4)強化材(D)
・D-1:ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製 03JAFT692)、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm
・D-2:タルク(日本タルク社製 ミクロエースK-1)、平均粒子径8μm
・D-3:タルク(日本タルク社製 MSZ-C)、平均粒径11μm、表面処理品
・D-4:タルク(日本タルク社製 MS-P)、平均粒径15μm
・D-5:タルク(日本タルク社製 MS-KY)、平均粒径25μm
(5)炭酸金属塩(E)
・E-1:炭酸カルシウム
・E-2:炭酸マグネシウム
(6)脂肪酸バリウム塩(F)
・F-1:ステアリン酸バリウム(日東化成工業社製 Ba-St P)
・F-2:ラウリン酸バリウム(日東化成工業社製 BS-3)
(7)ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)
・N,N′-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(アデカ社製 CDA-10)
【0088】
参考例1
半芳香族ポリアミド(A-1)33.25質量部、脂肪族ポリアミド(B)14.25質量部、ホスフィン酸金属塩(C)20質量部、炭酸金属塩(E-1)1.5質量部および脂肪酸バリウム塩(F-1)1.0質量部をプリブレンドし、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製 CE-W-1型)を用いて計量し、スクリュー径26mm、L/D50の同方向二軸押出機TEM26SS型(東芝機械社製 TEM26SS型)の主供給口に供給して、溶融混練を行った。途中、サイドフィーダーより強化材(D-1)30質量部を供給し、さらに混練を行った。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、(融点-5~+15℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hとした。
【0089】
実施例7~10、21~23、31~37、比較例1~11、参考例1~24
ポリアミド樹脂組成物の組成を表3に示すように変更した以外は、参考例1と同様の操作をおこなってポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(G)を配合する場合は、原料(A)、(B)、(C)、(E)、(F)といっしょにプリブレンドした以外は、参考例1と同様の操作をおこなった。
【0090】
得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを用い、各種評価試験を行った。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
実施例7~10、21~23、31~37の樹脂組成物は、本発明の要件を満足するため、流動性、リフロー耐熱性、難燃性、低金属腐食性ともに良好な結果であった。
比較例1の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミドの含有割合が少なすぎて、流動性が低く、混練時や成形時にせん断発熱により温度が上昇したため、金属腐食性が大きいものであった。比較例2の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミドの含有割合が多すぎて、リフロー耐熱性に劣るものであった。
比較例3の樹脂組成物は、難燃剤の含有量が少なすぎるため、難燃性に劣り、比較例4の樹脂組成物は、難燃剤の含有量が多すぎるため、金属腐食性が大きいものであった。
比較例5の樹脂組成物は、強化材を含有しないため、引張強度が低く、また難燃性に劣るものであった。
比較例6の樹脂組成物は、炭酸金属塩を含有せず、比較例8の樹脂組成物は、脂肪酸バリウム塩を含有しないため、いずれも金属腐食性が大きく、また比較例7の樹脂組成物は、炭酸金属塩の含有量が多すぎるため、難燃性に劣り、比較例9の樹脂組成物は、脂肪酸バリウム塩の含有量が多すぎるため、引張強度が低いものであった。
比較例10の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドの融点が高すぎるため、溶融温度が高くなり、金属腐食性が大きいものであった。
比較例11の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドの融点が低すぎるため、リフロー耐熱性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0095】
EX:二軸混練押出機
D:ダイス
MP:金属プレート
R:溶融樹脂の流路
図1