(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】制御器
(51)【国際特許分類】
F16K 7/17 20060101AFI20220825BHJP
F16K 31/44 20060101ALN20220825BHJP
F16K 31/126 20060101ALN20220825BHJP
F16K 7/16 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
F16K7/17 A
F16K31/44 C
F16K31/126
F16K7/16 F
(21)【出願番号】P 2019509841
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012275
(87)【国際公開番号】W WO2018181234
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017072072
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325893(JP,A)
【文献】特開2017-044321(JP,A)
【文献】特開2001-241565(JP,A)
【文献】特表2017-503123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/16- 7/17
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が設けられた弁箱と、前記弁箱に設けられた環状の弁座に当接または離間することで前記流体通路を開閉する
第1ダイヤフラムと、位置を変更することで前記
第1ダイヤフラムを開または閉方向に変形させる弁棒と、前記弁棒の位置を移動させる駆動装置とを備えており、前記駆動装置の作動軸と前記弁棒との間に、前記作動軸にかかる力を増幅して前記弁棒に伝達する動力伝達装置が設けられているとともに、前記
第1ダイヤフラムは、金属製で、前記流体通路が完全に閉じた状態と、前記流体通路が完全に開いた状態と、前記流体通路が一部開いた状態とに変形可能とされており、
前記駆動装置は、一端側に開口する凹所を有するシリンダと、前記シリンダの開口を閉鎖するボンネットと、前記シリンダの前記凹所内に配置されたピストンと、前記ピストンの先端側に固定されて前記作動軸を押圧するロッドと、中央部が前記ピストンに固定されるとともに、周縁部が前記シリンダと前記ボンネットの間に固定され、両固定部間に折返し部を有する
第2ダイヤフラムとを備えており、前記ボンネットと前記
第2ダイヤフラムとの間に供給された圧縮空気が前記
第2ダイヤフラムを介して前記ピストンを押圧することで前記ロッドを移動させる空気圧シリンダ装置であり、
前記駆動装置は、前記流体通路が一部開いた状態において、前記流体通路を流れる流体の流量に基づいて、前記流量が一定となるように前記作動軸の位置を調整するものであることを特徴とする制御器。
【請求項2】
前記流体通路は、前記弁座に囲まれた開口を有し前記
第1ダイヤフラムの中央部に臨まされた中央通路と、前記弁座の径方向外側に開口を有し前記
第1ダイヤフラムの外周縁部近傍に臨まされた外側通路とを有しており、前記外側通路が前記流体の入口通路とされ、前記中央通路が前記流体の出口通路とされていることを特徴とする請求項1の制御器。
【請求項3】
前記中央通路の径が前記外側通路の径以下とされていることを特徴とする請求項2の制御器。
【請求項4】
駆動装置の制御は、電気信号に比例して空気圧力を無段階に制御する電空レギュレータで行うことを特徴とする請求項1の制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の流量を制御することができる制御器に関し、特に、高圧流体を使用する際に適した制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野においては、パーティクルの発生を防ぐため、金属ダイヤフラムの変形により流路の開閉を行うダイヤフラム弁が制御器として好適に用いられている。
【0003】
高圧流体を使用する際に適したダイヤフラム弁として、特許文献1には、流体通路が設けられた弁箱と、前記弁箱に設けられた環状の弁座に当接または離間することで前記流体通路を開閉するダイヤフラムと、位置を変更することで前記ダイヤフラムを開または閉方向に変形させる弁棒と、前記弁棒の位置を移動させる駆動装置と、駆動装置の作動軸と弁棒との間に設けられて作動軸にかかる力を増幅して弁棒に伝達する動力伝達装置とを備えているものが開示されている。
【0004】
特許文献1の制御器は、開または閉のいずれかの状態とする開閉弁であり、流体の流量を制御することはできない。流体の流量を制御するダイヤフラム弁としては、特許文献2に、アクチュエータに圧電素子を使用することで、流体の流量の制御を可能としたものが開示されているが、圧電素子を使用したアクチュエータでは、バルブ閉止に必要な推力を得ることができず、高圧流体に用いるのは不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3338972号公報
【文献】特開平7-310842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2は、いずれも高圧流体の流量の制御に使用するには、不適当であり、従来、高圧流体の流量を制御する制御器はなかった。また、従来の流体の流量を制御する制御器は、大きなものであり、その小型化が望まれている。
【0007】
この発明の目的は、高圧流体の流量を精度よく制御することができる小型の制御器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による制御器は、流体通路が設けられた弁箱と、前記弁箱に設けられた環状の弁座に当接または離間することで前記流体通路を開閉するダイヤフラムと、位置を変更することで前記ダイヤフラムを開または閉方向に変形させる弁棒と、前記弁棒の位置を移動させる駆動装置とを備えており、前記駆動装置の作動軸と前記弁棒との間に、前記作動軸にかかる力を増幅して前記弁棒に伝達する動力伝達装置が設けられているとともに、前記ダイヤフラムは、金属製で、前記流体通路が完全に閉じた状態と、前記流体通路が完全に開いた状態と、前記流体通路が一部開いた状態とに変形可能とされており、前記駆動装置は、前記流体通路が一部開いた状態において、前記流体通路を流れる流体の流量に基づいて、前記流量が一定となるように前記作動軸の位置を調整するものであることを特徴とするものである。
【0009】
駆動装置は、例えば、空気圧シリンダ装置とされ、その制御は、電気信号に比例して空気圧力を無段階に制御する電空レギュレータで行うことが好ましい。
【0010】
動力伝達装置は、例えば、ケーシングと、作動軸に一体に設けられた円錐状の第1ローラ受け部材と、弁棒に一体に設けられた第2ローラ受け部材と、両ローラ受け部材の間に配置された一対のローラ支持体と、第1ローラ受け部材に設けられたテーパ面に当接する一対の転動ローラと、第2ローラ受け部材のローラ受け面に当接する一対の押えローラとを備え、各ローラ支持体が、押えローラの軸線に対して第1ローラ受け部材の軸線がわに寄った軸を中心として揺動しうるようにケーシングに支持されているもの(増幅型の動力伝達装置の1例)とされる。増幅型とすることで、推力を小さくすることができ、制御器を小型化することができる。
【0011】
この制御器は、種々の用途に使用できるが、特に、流体として高圧流体を使用し、微小なストロークの制御が必要な場合に使用するのに適している。
【0012】
増幅型の動力伝達装置を使用した従来の制御器は、開閉を行うもので、流体の流量に基づいてダイヤフラムの開度を調整することはできなかった。高圧の流体の流量を制御する場合、弁棒の微小な移動量を制御する必要があり、圧電素子を使用する従来の制御器は、それができなかったが、増幅型の動力伝達装置を使用することによって、高圧に抗して弁棒を移動させることが可能なだけでなく、小さなストロークでも分解能を大きくできるので、弁棒の微小な移動量の制御が可能となる。そして、この動力伝達装置と流体通路を流れる流体の流量に基づいて作動軸の位置を調整する駆動装置とを組み合わせることで、高圧流体の精度のよい流量の制御が可能となる。これにより、従来実現できていなかった精度のよい制御器(高圧流体用流量調整弁)が得られる。
【0013】
前記駆動装置は、一端側に開口する凹所を有するシリンダと、前記シリンダの開口を閉鎖するボンネットと、前記シリンダの前記凹所内に配置されたピストンと、前記ピストンの先端側に固定されて前記作動軸を押圧するロッドと、中央部が前記ピストンに固定されるとともに、周縁部が前記シリンダと前記ボンネットの間に固定され、両固定部間に折返し部を有するダイヤフラムとを備えており、前記ボンネットと前記ダイヤフラムとの間に供給された圧縮空気が前記ダイヤフラムを介して前記ピストンを押圧することで前記ロッドを移動させる空気圧シリンダ装置であることが好ましい。
【0014】
増幅型の動力伝達装置と折返し部を有するダイヤフラムを使用した駆動装置とを組み合わせることで、流体通路を開閉するダイヤフラムの開度を0.6mm以下の範囲で適正化が可能となる。
【0015】
前記流体通路は、前記弁座に囲まれた開口を有し前記ダイヤフラムの中央部に臨まされた中央通路と、前記弁座の径方向外側に開口を有し前記ダイヤフラムの外周縁部近傍に臨まされた外側通路とを有しており、前記外側通路が前記流体の入口通路とされ、前記中央通路が前記流体の出口通路とされていることが好ましい。
【0016】
すなわち、従来、中央通路が入口通路に、外側通路が出口通路に使用されていたのに対し、外側通路が入口通路に、中央通路が出口通路に使用され、このようにすることで、高圧流体であっても、流体通路が急激に開になることが防止される。
【0017】
前記中央通路の径が前記外側通路の径以下とされていることが好ましい。
【0018】
従来、中央通路および外側通路は、流量を多くするために、大きな径とされており、中央通路の径と外側通路の径とは、ほぼ同じ大きさとされていた。これに対し、出口通路である中央通路の径を小さくすることで、Cv値が例えば0.035という値とすることができ、こうして、従来実現できていなかったCv値が0.0005~0.035でかつダイヤフラムストロークが0.002~0.2mmである制御器を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の制御器によると、増幅型の動力伝達装置を使用することで、高圧に抗して弁棒を移動させるだけでなく、弁棒の微小な移動量の制御が可能となり、これと流体通路を流れる流体の流量に基づいて作動軸の位置を調整する駆動装置とを組み合わせることで、高圧流体の精度のよい流量の制御が可能となる。また、小型化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、この発明による制御器の1実施形態を示す縦断面図で、流体通路が開の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1から弁棒を移動させて流体通路が閉となった状態を示す図である。
【
図5】
図5は、駆動装置の詳細を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1:制御器
2:弁本体
3:駆動装置
4:動力伝達装置
11:弁箱
12:第1流体通路
12b:中央通路
13:第2流体通路
13b:外側通路
14:ダイヤフラム
15:弁棒
21:シリンダ
21a:凹所
22:ボンネット
23:ピストン
25:ダイヤフラム
25a:折返し部
26:ロッド
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、上下および左右は図の上下および左右をいうものとする。この上下・左右は、便宜的なもので、制御器の設置に際しては、上下が逆になったり、上下が水平になったりすることがある。
【0023】
図1および
図2は、この発明の制御器を示しており、制御器1は、弁本体2と、駆動装置3と、弁本体2と駆動装置3との間に設けられた動力伝達装置4とを備えている。
【0024】
弁本体2は、第1および第2流体通路12、13が形成された弁箱11と、流体通路12、13間の連通を開閉するダイヤフラム14と、ダイヤフラム14を開または閉方向に変形させる弁棒15と、ナット17によって弁箱11に取り付けられたボンネット16とを有している。
【0025】
弁箱11は、SUS316L製で、上方に向かって開口した凹所11aを有している。第1流体通路12は、左方に開口する大径通路12aと、大径通路12aの右端部に連なり、かつ大径通路12aよりも小径で凹所11aの底面中央部に開口している中央通路12bとからなる。第2流体通路13は、右方に開口する大径通路13aと、大径通路13aの左端部に連なり、かつ大径通路13aよりも小径で凹所11aの底面右部に開口している外側通路13bとからなる。
【0026】
流体は、第2流体通路13の大径通路13aから流入し、第1流体通路12の大径通路12aから流出させられる。
【0027】
弁箱11には、第1流体通路12の中央通路12bの開口を囲むように、環状の弁座18が設けられている。弁座18が上方に突出していることで、弁箱11における弁座18の外周には、第2流体通路13の外側通路13bに連通している環状通路11bが形成されている。
【0028】
ダイヤフラム14は、金属製で、球殻状とされており、上に凸の円弧状が自然状態となっている。ダイヤフラム14は、その周縁部が弁箱11の凹所11a底面の突出状の外周縁部に支持されて、上から押さえアダプタ19に押圧されることで、弁箱11に固定されている。ダイヤフラム14の中央部は、弁棒15の下端部に固定されたディスク20によって下方に押圧されており、ディスク20の上下位置を調整することにより、所定の開度とされた開位置に保持される。制御器1は、この実施形態では、常時開型とされており、駆動装置3を作動させた際に、ダイヤフラム14の中央部が弁座18に強く押し付けられる閉状態が得られるようになされている。
【0029】
ダイヤフラム14は、例えば、ニッケル合金薄板からなるものとされ、円形に切り抜き、中央部を上方へ膨出させた球殻状に形成される。ダイヤフラム14は、ステンレス鋼薄板からなるものや、ステンレス鋼薄板とニッケル・コバルト合金薄板との積層体よりなるものとされることがある。
【0030】
弁箱11は、凍結防止などのために、ヒータによって加熱可能とされており、駆動装置3に加熱の影響が及ばないように、弁棒15の長さが設定されている。
【0031】
駆動装置3は、空気圧シリンダ装置で、
図5に示すように、上方に開口する凹所21aを有するシリンダ21と、シリンダ21の凹所21aに対向する下方に開口する凹所22aを有し、シリンダ21に突き合わされてボルト(図示略)によって固定されたボンネット22と、シリンダ21およびボンネット22の両凹所21a、22a内に上下移動可能に配置されたピストン23と、中央貫通孔の縁部(内周縁部)がリテーナ24を介してピストン23の上面に固定されるとともに、外周縁部がボンネット22とピストン23との間に固定されているダイヤフラム25とを備えている。
【0032】
ピストン23は、鋼帯で形成されており、貫通孔を中央部に有する頂壁23aと、円筒状の周壁23bとからなる。ピストン23の頂壁23a下面(先端側)には、ピストン23と一体で移動するロッド26が固定されている。ロッド26は、底壁26aおよび周壁26bからなる円筒状とされており、シリンダ21の底壁21bに設けられた貫通孔21cに挿通されて、その底壁26aの下部がシリンダ21の下面より下方に突出させられている。
【0033】
シリンダ21の底壁21bとピストン23との間には、ピストン23を上向きに付勢する圧縮コイルバネ27が配置されている。
【0034】
ロッド26を案内する円柱状のガイド28が、ピストン23の頂壁23aの中央の貫通孔およびダイヤフラム25の中央の貫通孔に挿通されて、ロッド26の周壁26b内に位置するように配置されており、ねじ29によってボンネット22に固定されている。ガイド28の外周面とロッド26の周壁26bの内周面との間には、隙間が形成されて、この隙間にすべり軸受30が配置されている。
【0035】
ダイヤフラム25の両固定部間(内周縁部と外周縁部との間)には、折返し部25aが設けられている。折返し部25aは、ピストン23の移動に伴って、シリンダ21の内周とピストン23の外周との間を移動し、これにより、シール性が確保された上で、ピストン23のスムーズな移動が可能とされている。
【0036】
ボンネット22には圧縮空気導入通路31が設けられており、駆動源となる圧縮空気が圧縮空気導入通路31を介してボンネット22とダイヤフラム25との間に供給され、圧縮空気がダイヤフラム25を介してピストン23を押圧することで、ピストン23の先端側に固定されたロッド26が一体で移動させられる。
【0037】
動力伝達装置4は、ケーシング41内に収められた増幅機構42を有しており、増幅機構42は、駆動装置3によって上下移動させられる作動軸43と、作動軸43の下端部に一体に設けられた円錐状の第1ローラ受け部材44と、弁棒15の上面に支持されて弁棒15と一体で上下移動する第2ローラ受け部材45と、両ローラ受け部材44、45の間に配置された一対のローラ支持体46と、各ローラ支持体46に転動可能に支持されて第1ローラ受け部材44に設けられたテーパ面44aに当接する一対の転動ローラ47と、各ローラ支持体46に転動可能に支持されて第2ローラ受け部材45の水平状のローラ受け面45aに当接する一対の押えローラ48とを備えている。
【0038】
各ローラ支持体46は、押えローラ48の軸線に対して第1ローラ受け部材44の軸線がわに寄った軸線を有するようにケーシング41に支持された偏心軸49を中心として揺動しうるようになされている。
【0039】
この動力伝達装置4において、作動軸43にかかる力をF、第1ローラ受け部材44のテーパ面44aの半角をαとすると、転動ローラ47にはテーパ面44aに対して直角方向に力が働き、前後いずれか一方の転動ローラ47に働くこの力Gは、G=F÷2Sin αとなる。
【0040】
転動ローラ47に働く力Gは、ローラ支持体46および押えローラ48を介して第2ローラ受け部材45に伝達される。
【0041】
偏心軸49の軸線と転動ローラ47の軸線との距離をC、転動ローラ軸47の軸線と偏心軸49の軸線を結ぶ線と第1ローラ受け部材44のテーパ面44aとのなす角をγ、押えローラ48の軸線と偏心軸49の軸線との水平距離をδ、左右いずれか一方の押えローラ48が第2ローラ受け部材45を押す下向きの力をNとすると、N×δ=G×Cos γ×Cが成り立つ。したがって、左右両方の押えローラ48が第2ローラ受け部材45を押す下向きの力、すなわち弁棒15を押す下向きの力は、2N=F×Cos γ×C÷Sin α÷δとなり、α、γ、δおよびCを適当な値とすることにより、任意の増幅率(Cos γ×C÷Sin α÷δ)により作動軸43にかかる力を弁棒2に増幅して伝達することができる。
【0042】
例えば、α=40°、γ=25°、C=12.5、δ=1.5とすると、増幅率は約12倍となり、12倍程度の大きな力でダイヤフラム14を押さえることができ、例えば、圧力が20MPa程度の場合、300kgfの力が必要となるが、これの1/12の力で流量を制御することができる。したがって、高圧の流体であっても、流体によってダイヤフラム14が持ち上げられて、設定値を超えて流体が流入して流出することが防止される。
【0043】
上記において、
図1および
図2のうち、
図1は、開状態を示しており、シリンダ21の下面からのロッド26の下方突出量が相対的に小さく、これに伴い、作動軸43が上方位置にあることで、ローラ支持体46の上端部同士が接近しており、第2ローラ受け部材45が上方に位置している。
図2は、閉状態を示しており、シリンダ21の下面からのロッド26の下方突出量が相対的に大きく、これに伴い、作動軸43が下方位置にあることで、ローラ支持体46の上端部同士が離隔しており、第2ローラ受け部材45が下方に位置している。
図1および
図2の比較から、作動軸43の大きなストロークに対して、弁棒15およびディスク20のストロークの動きを微小なものとできることが分かる。
【0044】
図3および
図4は、
図1および
図2の要部を拡大したもので、
図3が
図1に対応する開の状態、
図4が
図2に対応する閉の状態を示している。
図1および
図2では、駆動装置3のロッド26の上下移動および動力伝達装置4の変化がよく分かるものの、開閉状態が分かりにくいものとなっているが、
図3および
図4のように拡大して図示することで、弁棒15およびディスク20が相対的に上方位置にあって、ダイヤフラム14が第1流体通路12の中央通路12bの開口を開にするように変形している
図3の状態と、弁棒15およびディスク20が相対的に下方位置にあって、ダイヤフラム14が第1流体通路12の中央通路12bの開口を閉にするように変形している
図4の状態とに変化することが分かる。
【0045】
開の状態においては、流体は、第2流体通路13の大径通路13a、第2流体通路13の外側通路13bおよび弁座18の外周の環状通路11bを経て、ダイヤフラム14と弁箱11の凹所11a底面との間に流入し、第1流体通路12の中央通路12bおよび第1流体通路12の大径通路12aを経て外部へ流出する。流体の流量は、図示省略した電空レギュレータを介してフィードバックされ、流量が増加した場合には、弁棒15およびディスク20が流量を減少させる下方に移動し、流量が減少した場合には、弁棒15およびディスク20が流量を増加させる上方に移動するように制御することで、適正な流量が維持される。
【0046】
ここで、従来の制御器では、第1流体通路12が入口通路に、第2流体通路13が出口通路になされているのに対し、上記制御器1では、第2流体通路13が入口通路に、第1流体通路12が出口通路として使用されている。これにより、従来の制御器では、第1流体通路12の中央通路12bの開口が臨まされているダイヤフラム14の中央部(小面積の部分)に高圧が掛かり、開の状態となった場合に、第2流体通路13の外側通路13bの開口が環状通路11bを介して臨まされているダイヤフラム14の外周部(大面積の部分)へ一気に高圧の流体が流入して流体通路が急激に開となり、所定の流量に調整できなくなるのに対し、上記制御器1では、ダイヤフラム14の外周部(大面積の部分)で常時圧力を受けて流量を調整しているために、高圧流体であっても、流体通路が急激に開になり、一気に流体が流入して所定の流量に調整できなくなることが防止される。
【0047】
流体が高圧の場合、弁棒15およびディスク20の僅かな上下移動量で、流量が大きく変化するが、上記制御器1では、動力伝達装置4に設けられている増幅機構42によって、増幅率によって設定される大きな力で高圧に抗して弁棒15を移動させてダイヤフラム14を下方に押圧することに加えて、弁棒15およびディスク20の上下移動量が駆動装置のロッド26の上下移動量の1/増幅率に小さくなるため、精度の高い制御が可能となる。
【0048】
こうして、増幅型の動力伝達装置4と空気シリンダ装置である駆動装置3とを使用することで、高圧流体の精度のよい流量の制御が可能となり、また、小型化も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明によると、高圧流体を使用する際に適した流体の流量を制御する制御器が得られるので、高圧流体を用いる製造分野における精度向上に寄与できる。