(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】新生児の電気インピーダンストモグラフィーイメージングのためのセンサベルトおよび位置決め補助具
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0536 20210101AFI20220825BHJP
【FI】
A61B5/0536 ZDM
(21)【出願番号】P 2019524386
(86)(22)【出願日】2017-11-11
(86)【国際出願番号】 CH2017000096
(87)【国際公開番号】W WO2018085951
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】501204802
【氏名又は名称】センテック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sentec AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バルドマン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブルナー,ヨーゼフ・イクス
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0198101(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0242673(US,A1)
【文献】特表2013-540523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0143064(US,A1)
【文献】国際公開第2015/002210(WO,A1)
【文献】特開2005-144164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0260167(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0296171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EITイメージングのため
のシステムであって、前記システムは、
‐患者の上に配置してインピーダンス分布を測定するための電極アレイを備え、前記アレイはベルト構造体の上に固定されており、
‐データ入力ユニットと、
‐計算ユニットとを備え、
‐前記電極アレイは、前記電極アレイに結合され少なくとも第1電極または電極対の位置を視覚的に示すための少なくとも1つの視覚補助具を含み
、
-前記視覚補助具は、前記電極アレイ上の固定位置に取り付けられ、前記ベルト構造体上の基準位置を示す視覚マーカを含み、
‐前記視覚補助具は、患者の体の特徴的な部分に対する前記視覚補助具の位
置であって、患者の外周に沿ったベルト変位の値が測定または読み
取られることを可能にする手段を提供し、
‐前記データ入力ユニットは
、前記電極アレイの位置であって、前記患者の体の特徴的な部分に対する前記ベルト構造体の角度変位の値を、前記患者の体の特徴的な部分に対する前記視覚補助具の位置を記述するデータとして受け付け、
‐前記計算ユニットは、前記患者の体に対する個々の電極の位置を計算し画像作成アルゴリズムの修正を提供するように構成さ
れ、
位置インジケータは、
-前記電極アレイの長手方向の端に沿った目盛り、
または、
-測定テープの形態で提供されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記修正を提供するために、前記視覚補助具の位置を記述するデータに基づいて、予め定められた位置からの前記電極アレイの回転ずれを考慮することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記視覚補助具の位置を記述するデータは、前記患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた前記視覚補助具
の所望
の位置からの、前記視覚補助具
の実際
の位置のずれに関する情報を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記視覚補助具の位置を記述するデータは、患者の外周における前記視覚補助具の位置に関する情報を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記データ入力ユニットはさらに、前記患者の体位を記述するデー
タの入力を受け付けることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記患者の体位を記述するデータは、重力に対す
るまたは重力ベクトルに対す
る前記患者の体位に関する情報を含むことを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者の体位を記述するデータは、横たわっている患者の体位を、少なくとも仰臥位、伏臥位、右側臥位または左側臥位であると定義することを可能にすることを特徴とする、請求項5~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、
‐空間におけるその向きの表示を含む肺葉の輪郭、および
‐前記計算ユニットが修正後に提供するEIT画像データの重畳グラフィック表現を提供するように構成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記患者の体に対する前記電極アレイおよび前記視覚補助具の位置のグラフィック表現を提供するように構成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記患者のグラフィック表現の周りのリング上の前記視覚補助具の位置を画面上に示すことができ、前記患者のグラフィック表現は、前記患者の体位に関す
る情報を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記データ入力ユニットは
、胸囲の入力およびベルトサイズの入力を受け付けることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のシステムを構成するための、EITイメージングのためのセンサ装置であって、前記センサ装置は、
‐ベルト構造体を備え、前記ベルト構造体は、データ入力ユニットと計算ユニットとを含むEITイメージングシステムに接続可能な、患者の上に配置してインピーダンス分布を測定するための電極アレイを含み、
‐前記電極アレイは、前記電極アレイに結合され少なくとも第1電極または電極対の位置を視覚的に示すための少なくとも1つの視覚補助具を含み
、
-前記視覚補助具は、前記電極アレイ上の固定位置に取り付けられ、前記ベルト構造体上の基準位置を示す視覚マーカを含み、
‐前記視覚補助具は、前記患者の体の特徴的な部分に対する前記視覚補助具の位
置であって、患者の外周に沿ったベルト変位の値が測定または読み
取られることを可能にする手段を
含み、
位置インジケータは、
-前記電極アレイの長手方向の端に沿った目盛り、
または、
-測定テープの形態で提供されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項13】
前記手段は、前記患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた前記視覚補助具の所望のまたは予め定められた位置からの、前記視覚補助具の実際の位置のずれの値を提供することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記視覚補助具は、患者の体
の特徴的な部分またはマークに対して前記視覚補助具を位置合わせすることを可能にする手段を含むことを特徴とする、請求項1~11,13のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12~13に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記手段は
、胸囲に沿った線形次元または長手方向の体軸を中心とし測定される角度次元における、予め定められた位置からのベルトの回転ずれの値を提供することを特徴とする、請求項1~11,13~14のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12~14のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記電極は
、前記ベルト構造体の上にある、また
は前記ベルト構造体に一体化された、間隔を開けて設けられた一連の電極となるように配置さ
れることを特徴とする、請求項1~11,13~15のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12~15のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記データ入力ユニットは前記ベル
ト構造体に装着できることを特徴とする、請求項1~11,13~16のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12~16のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記データ入力ユニットはマニュアルデータ入力ユニットであることを特徴とする、請求項1~11,13~17のいずれか1項に記載のシステムまたは請求項12~17のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項19】
EITイメージング方法であって、
‐患者の上に電極アレイを配置し装着するステップと、
‐インピーダンス分布を測定するステップと、
‐データ入力ユニットに患者固有のデータを与えるステップと、
‐前記測定したインピーダンス分布および前記患者固有のデータの入力を考慮する画像作成アルゴリズムを用いてEIT画像を計算するステップとを含み、
前記電極アレイは、前記患者の上に複数の方法で配置することができ、前記電極アレイに結合された少なくとも1つの視覚補助具を含み、それにより、
‐前記電極アレイまたは測定テープの長手方向の端に沿って目盛りの形態で提供される位置インジケータを使用して、患者の体の特徴的な部分に対する前記視覚補助具の位置に関する情報を含む患者固有のデータを読み取って入力するステップと
、
-前記電極アレイの位置であって、前記患者の体の特徴的な部分に対する前記電極アレイの角度変位の値を、前記患者の体の特徴的な部分に対する前記視覚補助具の位置を記述するデータとして受け付けるステップと、
‐前記患者の体に対する個々の電極の位置を計算し前記画像作成アルゴリズムの修正を提供するステップとが可能であることを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記修正を提供するために、前記視覚補助具の位置を記述するデータに基づいて、予め定められた位置からの前記電極アレイの回転ずれを考慮することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記視覚補助具の位置に関する情報は、前記患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた前記視覚補助具
の所望
の位置からの、前記視覚補助具
の実際
の位置のずれの値を含むことを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者の体の特徴的な部分に
対する前記視覚補助具の位置のずれは、患者の外周において決定することを特徴とする、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者固有のデータは、前記患者の体
位に関する情報をさらに含むことを特徴とする、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者の体位は重力ベクトルを基準として決定することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
この発明は、請求項1のプリアンブルに記載の電気インピーダンストモグラフィー(electrical impedance tomography)イメージング(EITイメージング)のためのシステム、請求項12のプリアンブルに記載の電気インピーダンストモグラフィーイメージング(EITイメージング)のためのセンサ装置、および請求項19のプリアンブルに記載のインピーダンス分布を測定するためのEITイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
毎年1,500万人の早産児が誕生し、その多くが、肺が未熟で呼吸を調整できないために呼吸不全を患っている。呼吸補助器、特に機械的換気は、そのような早産児の生存率を改善できるものの、損傷を受けやすい肺に重度の損傷を与え、成人まで続く重篤な慢性肺疾患に至ることになる。肺の換気が不均一であると、肺の過膨張領域および肺虚脱領域が生じ、呼吸不全による死亡率および罹患率のリスクの決定的な原因になる。肺の換気の不均一性は、既存のものである場合や、治療介入、たとえば肺サーファクタントの不均等な投与の合併症である場合がある。肺の内部における不均一な換気分布は、現在利用できる臨床モニタリングツールおよびイメージング法では検出できない。このため、新生児の肺機能の連続した非侵襲の臨床モニタリングのためのイメージング技術が緊急に必要とされている。
【0003】
電気インピーダンストモグラフィー(EIT)は、人間および動物における局所肺換気および局所肺灌流(血流)を検査し測定するために使用される非侵襲イメージング技術である。従来の方法とは異なり、EITは、患者が管またはセンサを通して呼吸することを要求せず、電離X線を照射せず、長期間、たとえば24時間またはそれよりも長い時間にわたって使用することができる。EITは連続して使用できるので、リアルタイムで時間をかけて治療効果をモニタリングするのに適している。EITは、1983年に初めて呼吸機能をモニタリングするために使用され、それ以来、肺容量、血流、および心臓活動の局所的な変化を連続して非侵襲で測定できる唯一の臨床方法である。この技術のさらなる詳細は、Costa E.L., Lima R.G., and Amato M.B. "Electrical impedance tomography" Curr Opin Crit Care, Feb. 2009, 15(1), p. 18-24から知ることができる。
【0004】
米国特許第5,626,146号に開示されているように、EITでは、典型的には8~32個の複数の電極を検査対象の体の表面に配置する。制御ユニットにより、電気信号、たとえば電流が、皮膚上の1組または数組の電極に印加されて電界を生じさせ、これが他の電極によって確実に測定されるようにする。電流を印加するために使用される電極は「電流注入電極」と呼ばれるが、そのうちの1つは基準接地の役割を果たし得る。典型的には、3~10mAのRMSが、10kH~300kHの範囲の周波数で注入される。残りの電極を用いて、結果として生じた電圧を、測定し(「EITデータベクトル」または「スキャンフレーム」を形成し)、その後体内の電気インピーダンスの分布を推定するために使用する。この一組の電圧を画像に変換するために特定のアルゴリズムが開発された。これらの変換には2つの主要な課題がある。第1の課題は、数学的問題が不良設定された非線形的な問題であることであり、第2の課題は、体表面の電極の配置が不正確であるまたは明らかに間違っていることである。
【0005】
インピーダンス推定の不良設定性を克服するために、ほとんどのEITイメージングアルゴリズムは、追加の仮定、制限、または制約を利用する。当該技術において周知の典型的な方法は、媒体の内部構造および正則化に関する先験的知識を使用して特定の解決法を選択することである。先験的知識の例は、解剖学的構造、器官の機能、伝導度、血流、心収縮タイミングのような組織の身体的特性等を含む。
【0006】
呼吸のモニタリングの場合、先験的知識を、たとえば、気道開口部における流量もしくは容積の測定値から、または胸部のX線画像から、またはより優先的にはCTスキャンから導き出すことができ、これにより、患者の胸部の輪郭および主要な構造が得られる。正則化方法は、競合する解決法の間でアルゴリズム的な決定を下すことにより、胸部内の真のインピーダンス分布の妥当な推定である画像を作成することを可能にする。解剖学的および生理学的知識ならびに物理法則が、当該技術において周知の正規化方法の基礎を形成する。たとえば、胸腔内のインピーダンス分布の突然の変化は通常非生理的なものとして破棄される。重力は血液プールおよび血流の分布に影響を与え、したがってインピーダンスの分布に影響を与える。患者の体位、疾患およびインピーダンス分布の胸腔内の場所に応じて、重力は測定信号に多大な影響を与える。仰臥位で機械的換気が実施されている集中治療患者の場合、肺の背側領域で局所的な肺虚脱が起きることは周知である。このような虚脱は急性肺障害に至る、または急性肺障害を悪化させることがある。体位を変える、たとえば患者を横向きにするまたはうつ伏せ(伏臥位)にする等の体位変換により、虚脱からの回復が可能であり、よって有益な治療効果を上げることができる。
【0007】
3ゾーンモデルを用いて重力の影響を立証することができる(Hedenstierna G. et al. Pulmonary densities during anaesthesia. An experimental study on Jung morphology and gas exchange. Eur Respir J. 1989 Jun;2(6):528.)。このモデルの3つのゾーンは以下の通りである。
ゾーン1:開通して十分に通気している肺胞。
ゾーン2:その開通および閉鎖が呼吸サイクル中に発生する不安定な肺胞。
ゾーン3:虚脱した肺胞。
これらのゾーンは、たとえば、患者が仰向けに(仰臥位)またはうつ伏せに(伏臥位)横たわっている結果として発生する。健康な被検者において、これらのゾーンは通常、立位体位で消滅する。肺の内部におけるレベルは、重力ベクトルに対して変動する場合がある。しかしながら、このレベルは通常、重力ベクトルに直交する水平面では変化しない。肺単位の周期的な開閉に起因する換気により誘発される肺障害は、主としてゾーン2において生じると考えられる。低酸素血症は、通気していないゾーン3を通る血液の短絡化によって発生する。患者のこれら2つのゾーンを排除することが治療の目的である。
【0008】
機械的換気が行われている患者の場合、酸素供給は、患者の体位を変えることによって改善することができる。このような改善の背後にある仕組みは、先にゾーン3として説明した虚脱肺空間が、新たな体位を取ると開放され、よって血液の酸素供給が改善されることである。機械的換気が行われている患者を定められた側臥位になるよう回転させて肺機能を改善することは、国際出願WO2005/094369に開示されているように当該技術では周知である。
【0009】
新生児患者では、サーファクタントが不足すると、呼吸負荷が大幅に増加し、経鼻式持続的気道陽圧法(nasal Continuous Positive Airway Pressure nCPAP)、挿管および機械的換気、または高頻度新道換気(High Frequency Oscillation Ventilation HFOV)のように外部から呼吸補助を適用することが必要になる。サーファクタントを外部から投与することは、呼吸負荷が大きい患者の苦痛を和らげるための治療の選択肢であることが多い。しかしながら、サーファクタント治療は、肺の破裂を防止するため、および経済的にも、両肺に均等に投与する必要がある。サーファクタントは極めて高価格であるからである。サーファクタントを均等に肺に投与するためには局所的な肺のモニタリングが必要であろう。不幸にも、局所的な肺のモニタリングは現在のところ利用できない。局所的ではないがある程度限定された肺のモニタリングは、挿管および機械的換気においては、装着された呼吸器の一部として共通に利用できるセンサによって可能であり、これにより、総合的な肺機能パラメータが得られる。しかしながら、機械的通気には挿管が必要である。挿管は回避すべき侵襲処置である。nCPAPおよびHFOVにおいては適切なモニタリングを利用できない。そのため、局所的な肺のデータを提供しすべての呼吸補助方法において機能するモニタリング方法が極めて望ましい。
【0010】
上記知識に基づくと、肺の虚脱等の機能不全およびこの虚脱からの復帰を検出するために、EITを使用して肺の動作をモニタリングすることは、きわめて自明のことであろう。しかしながら、実際には、虚脱領域をEIT画像で見ることは、不可能ではないとしても困難である。
【0011】
電極の不正確な配置、または、呼吸中および体動中の電極位置の変化を克服するために、数多くの方法が文献に記述されてきた(Blott et al., Phys. Med. Biol 43 (1998) 1731-1739, Jehl et al., Physiol. Meas. 37 (2016) 893-903, Zhang et al., The Open Biomedical Engineering Journal, 2013, 7, 109-115)。これらの方法はすべて、電極位置の移動または変化を補償するために数学的修正を使用する。これらの方法は、電極位置の小さな変化は補償するが電極位置が明らかに間違っている場合は失敗すると考えられた。特許明細書US5,184,624は、電極が装着されている体の形状を、電極を用いて決定する方法を開示している。この方法は、電極を用いて電流を注入し、結果として生じた電圧を、測定した電位を用いて測定することにより、電流導入ポイントと、対応する電位測定ポイントとの間の推定距離を計算し、これらの距離に一致する推定電極位置を求める。推定した電極位置により、体の外形を決定する。しかしながら、体の形状は、特に新生児の場合、体内の器官、たとえば肺および心臓に対する電極の相対的な位置に関する確実な情報を持っていない。
【0012】
EITが有用な結果をもたらすためには、体内の器官に対する体表面上の電極の位置が先験的にわかっている必要がある。
【0013】
よって、肺機能をモニタリングし患者の治療を監督することができるようにする改善されたEIT設備および解析方法が必要とされている。特に、長期にわたるEIT観察により、診断および診断後の治療が改善されると期待される。たとえば、連続してEITモニタリングを行うので、局所的な肺の換気および局所的な肺の虚脱を評価することができ、肺損傷の可能性を推定し、救命のための治療の選択肢、たとえば、肺リクルートメント手技を開始する。とりわけ集中治療患者は、改善された電気インピーダンストモグラフィー技術およびEITによる連続モニタリングの恩恵を多大に享受することができる。さらに具体的には、新生児患者は大きな恩恵を享受することができる。なぜなら、従来のイメージング方法は、電離放射線のために望ましくないからである。サーファクタント投与治療を、nCPAPおよびHFOVにおいて、すなわち、患者に挿管することもなく、モニタリングすることができる。
【0014】
過去の研究の目的は、信頼できるEIT差分画像を測定し計算することができる装置および方法を提供することであった。たとえばEP2624750A1に開示されているように、発明の核心は、電極アレイに装着された特殊なセンサ素子を用いて患者の体位を自動的に測定することであった。しかしながら、位置測定装置を電極アレイに装着することは、患者の体位を測定できることを意味しない。位置測定装置、たとえば重力センサの、患者の体に対する相対的な位置が、正確に特定されなければ、位置測定装置のデータから患者の体位を容易に推測することはできない。EP2806792A1が開示する方法は、臨床医が予測可能な方法で電極アレイを胸部上に配置したことを確認する。これは、電極アレイをセンサベルトアセンブリに一体化することで実現され、このセンサベルトアセンブリは、臨床医がセンサベルトアセンブリを患者の胸部の規定位置に装着することを強いるように設計されている。次に、重力センサを予め定められた位置に接続することにより、患者の体位をリアルタイムで自動的に測定できるようにする。
【0015】
新生児患者に対し、EP2806792A1に開示されている方法を利用することはできない。なぜなら、この方法は皮膚表面を過剰に使用するからである。電極アレイを保持する新生児用のセンサベルトは、成人用のセンサベルトよりも、遙かに小さく薄いものでなければならない。以下の目的を達成しなければならない。
‐電極アセンブリはできる限り小型でなければならない。
‐電極アセンブリは極めて皮膚に優しいものでなければならない。
‐電極アセンブリは乳児に何の圧力も加えてはならない。
‐データは常に信頼できるデータである必要がある。
【0016】
センサアレイの理想的な形態は、どのような体位でも患者の胸部上に置くことができる一連の電極である。その結果、患者の体に対する電極の正確な位置はわからない。
【0017】
体に対する電極の位置は、EITから得られた結果を正確に測定し表示するには最も重要である。また、重力に対する患者の相対的な体位がEITから得られた結果を正確に解釈するのに最も重要であることもわかっている。1つの問題は、正確な測定と解釈のためのこれら周知の必要条件が、上記目的と相容れないことである。言い換えると、利用できる技術は、新生児に使用するのに適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、患者の体および重力ベクトルに対する電極アレイの位置を特定することができるまたはこの特定を可能にし結果として信頼できるそのEIT差分画像を計算することができるまたはこの計算を可能にする、装置および方法を提供することである。もう1つの目的は、新生児の肺機能を正確にリアルタイムでモニタリングできるようにする装置および方法を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の目的は、患者の体に対する、好ましくはさらに重力ベクトルに対する、電極アレイの位置を、好ましくは患者の体および電極アレイの空間的な向きを求めるための加速度センサを用いることなく、特定することができるまたはこの特定を可能にする、装置および方法を提供することである。
【0020】
加えて、EIT方法を簡略化し、それと同時に測定方法の精度を改善することを目的とする。とりわけ、EIT測定およびイメージングのために電極ベルトを患者、特に新生児の上に配置することを簡単にすることが望ましい。加えて、電極ベルトの不正確な配置または電極ベルトのずれを原因とするEIT画像の誤りを減じることを意図している。
【0021】
たとえば、具体的な目的は、患者の上(たとえば新生児の上)に、特に好ましくは患者の胸部の周りに、EITベルトを任意に配置できるようにするEITシステムを提供することである。よって、ベルトの特定の電極が患者の体の上の予め定められた位置を占めることを要するのではなく、ベルトのしたがってその電極の実際の位置を考慮するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
本明細書においてEITイメージングのためのシステムについて説明する。このシステムは、
‐患者の上に配置してインピーダンス分布を測定するための電極アレイと、
‐データ入力ユニットと、
‐計算ユニットとを備え、
‐電極アレイは、当該電極アレイに結合され少なくとも第1電極または電極対の位置を視覚的に示すための少なくとも1つの視覚補助具を含み、
‐データ入力ユニットは、視覚補助具の位置を記述するデータの入力を受け付け、
‐計算ユニットは、患者の体に対する個々の電極の位置を計算し、再構成マトリックスの作成中に推定した電極位置が数学的に復元されるように画像作成アルゴリズムの修正を提供するように、構成されている。
【0023】
このように、上記目的は、信頼できるEIT画像を作成するために空間情報を提供し使用することによって達成される。空間情報は、患者の体に対する電極の位置ならびに体位および体の向きを記述するデータを含む。標準正則化方法は、EIT解析中にこの空間情報を組み込むことによって拡張される。上記空間情報は視覚的に収集してもよい。これに加えてまたはこれの代わりに、被験者の体位および空間における向きを求めるためのセンサを電極アレイに結合してもよく、および/または、患者に対する個々の電極の位置を含む電極ベルトの位置を求めるためのセンサを電極アレイに結合してもよい。
【0024】
好都合には、このシステムにおいて、患者の上でベルトの位置を完全に正確に設定する必要はないが、妥協案として、ベルトの実際の位置または電極のうちの少なくとも1つもしくは一対の電極の実際の位置を、患者がベルトを着用しているときに目に見える体の固有の特徴に対する視覚補助具の位置を測定するまたは読み取ることによって求める。上記視覚補助具の位置を記述するデータは、データ入力ユニットに入力され、計算ユニットにより、ベルトの変位(すなわち基準となる体の特徴(すなわち体の部分)からの視覚補助具の変位)を修正するかまたはむしろ補償するために、電気インピーダンス測定からEIT画像を再構成するときに、使用される。このシステムを適用することにより、EIT画像の品質を改善できる。患者の体の上の電極の実際の配置を記述するデータを測定しシステムに入力することにより(必要であればこれを繰り返す)、ゆるく置いた電極ベルト(したがって変位可能なベルト)を容易にかつ単純に適用することができる。固定的に与えられた電極(たとえば皮膚に接着された電極、すなわち皮膚に対する接着によってその位置が固定された電極)を使用する必要はない。
【0025】
ベルトの変位の修正、またはむしろ補償は、変位の測定値または読取値による、アレイの電極と仮想解剖モデルの電極との間の割当(特に、ベルトアレイの電極とモデルの電極との間のデフォルト割当)を適応させることによって実現される。仮想解剖モデルは、たとえば、画像作成アルゴリズムに埋め込まれる。デフォルト割当設定は、たとえば、視覚補助具が患者の体の特徴的な部分(すなわち基準)に対して位置合わせされている状況に対応する。
【0026】
好ましい実施形態において、EITイメージングのための、特に肺機能および/または心機能を判定するためのシステムが開示される。このシステムは、
‐患者の上に配置してインピーダンス分布を測定するための電極アレイを備え、このアレイはベルト構造体の上に固定され、
‐データ入力ユニットと、
‐計算ユニットとを備え、
‐電極アレイは、この電極アレイに結合され少なくとも第1電極または電極対の位置を視覚的に示すための少なくとも1つの視覚補助具を含み(そのために好ましくは視覚補助具はベルト構造体上の固定位置に装着される)、
‐視覚補助具は、ベルト構造体が患者によって着用されているときの患者の体の特徴的な部分(すなわちたとえば胸骨のような身体の基準)に対する視覚補助具の位置を測定するまたは読み取ることを可能にする手段(たとえば、任意で目盛りを含む位置インジケータのようなラインマーキング等の視覚標識)を提供し、
‐データ入力ユニットは、視覚補助具の位置(すなわち患者の体の特徴的な部分に対する視覚補助具の位置)を記述するデータの入力を受け付け、
‐計算ユニットは、患者の体に対する個々の電極の位置を計算し画像作成アルゴリズムの修正を提供するように構成されている。
【0027】
好ましくは、視覚補助具(および結果として電極アレイ)は、患者の体の特徴的な部分に対する視覚補助具(および結果として電極アレイ)の位置を読み取るまたは測定することを可能にする手段(たとえば目盛り)を含む。
【0028】
好都合には、上記視覚補助具の位置を記述するデータは、患者に対する視覚補助具の位置に関する情報を含む。好ましくは、上記視覚補助具の位置を記述するデータは、患者の体の特徴的な部分に対する視覚補助具の位置に関する情報を含む。このように、体の予め定められた特徴を基準として使用することができる。通常、上記視覚補助具の位置を記述するデータは、特に患者の体内の器官に対する、患者の外周における視覚補助具の位置に関する情報を含む。視覚補助具の、したがって電極アレイの1つ以上の個々の電極の正確な位置は、極座標によって、たとえば、胸骨または背側-腹側ベクトルまたは乳頭の間の中間といった、基準解剖学的特徴に対する、角度の値を提供することにより、定めることができる。よって、好都合には、視覚補助具の(実際の)位置を記述するデータは、患者の体の特徴的な部分からの視覚補助具のずれ(たとえば距離または角度等)(よって本明細書では変位とも呼ぶ)に関する情報を含む。特に、視覚補助具の(実際の)位置を記述するデータは、患者の体の特徴的な部分に対して視覚補助具を位置合わせしたときの所望のまたは予め定められた位置からの、視覚補助具のずれに関する情報を含む。上記ずれは、たとえば、患者の体の外周に沿った距離として、または、視覚補助具の周方向の位置と特徴的な部分の周方向の位置との間の、たとえば中央の体軸においてまたはその近くで測定された角度として、表現できる。
【0029】
好都合には、上記修正を提供するために、視覚補助具の位置を記述するデータに基づいて、予め定められた位置からの電極アレイの回転ずれ(すなわち、たとえば回転ずれの値)を考慮する。電極アレイの位置、したがって電極の位置は、計算ユニットに埋め込まれた仮想解剖モデルにおいて予め定めることができる。回転ずれは、胸囲上で、たとえば、胸囲に沿った線形次元で、または、長手方向の体軸を中心として測定される角度次元で、測定される。
【0030】
好都合には、計算ユニットは、視覚補助具の位置を記述するデータに基づいて、患者の体に対する個々の電極の位置を計算するように構成される。
【0031】
好都合には、データ入力ユニットは、患者の体位を記述するデータの入力を受け付けるように設計される。横たわっている体位の患者が好ましい。横たわっている体位で一般的なものは、仰臥位、伏臥位、および側臥位である。横たわっている患者の正確な体位は、極座標によって、たとえば、基準位置に対する角度の値を与えることにより、定めることができる。
【0032】
好都合には、患者の体位を記述するデータは、重力に対する(または重力ベクトルに対する)患者の体位に関する情報を含む。このように、患者の体位を記述するために重力ベクトルを基準として用いることができる。患者の体位に関する情報は、好ましくは患者の向きに関する情報を含む。
【0033】
たとえば、上記患者の体位を記述するデータは、横たわっている患者の体位を、少なくとも仰臥位、伏臥位、右側臥位または左側臥位であると定義する。横たわっている患者の体位に関する情報は、たとえば、仰臥位、伏臥位、右側臥位、左側臥位、または仰臥位と伏臥位との間のその他の中間の体位である、患者の向きを含む。
【0034】
好ましくは、データ入力ユニットは、ベルトの変位の値を、患者の体の特徴的な部分に対する視覚補助具の位置を記述する手段として受け付け、さらに好ましくは、胸囲の入力およびベルトサイズの入力を受け付ける。
【0035】
好ましくは、このシステムは、特に、患者の体位および電極アレイの位置を視覚化するためおよびEIT画像を表示するために、1つ以上の画面を含む。
【0036】
好ましい実施形態において、このシステムは、空間におけるその向きの表示を含む肺葉の輪郭(たとえば仮想解剖モデルに含まれ仮想解剖モデルによって提供される)と、補償後に計算ユニットによって提供されたEIT画像データとの、重畳グラフィック表現を提供するように構成される。
【0037】
好ましい実施形態において、システムはさらに、患者の体に対する電極アレイおよび視覚補助具の位置のグラフィック表現を提供するように構成される。
【0038】
好ましい実施形態において、このシステムは、患者のグラフィック表現の周りのリング上の視覚補助具の位置を画面上に示すことができ、患者のグラフィック表現は、患者の体位に関する、好ましくは重力ベクトルに対する患者の体位に関する表示または情報を含む。加えて、上記視覚補助具、したがって電極アレイの位置、任意で画面上の仮想患者の体位または向きを、患者およびその電極アレイの実際に視覚的に観察した位置を画面上に表示するために、計算ユニットおよび/またはタッチスクリーンを介してマニュアル修正してもよい。
【0039】
好ましくは、ベルトの位置、特に少なくとも1つの電極または一対の電極の位置に基づいて、その他の電極の位置を、たとえば、ベルト上の電極の数および間隔といった電極の設計パラメータをたとえば考慮するアルゴリズムにより、求めることができる。
【0040】
さらに、EITイメージングのためのセンサ装置について説明する。センサ装置は、データ入力ユニットと計算ユニットとを含むEITイメージングシステムに接続可能な、患者の上に配置してインピーダンス分布を測定するための電極アレイ(好ましくは上記電極アレイを含むベルト構造体)を備える。電極アレイは、当該電極アレイに結合され少なくとも第1電極または電極対の位置を視覚的に示すための少なくとも1つの視覚補助具を含み、好ましくは、視覚補助具は、患者の体の特徴またはマークに対する視覚補助具(したがって個々の電極、少なくとも1つの電極または電極対)の位置を求める、すなわち読み取るまたは測定することを可能にする手段(たとえばラインまたは目盛り)を含む。したがって、看護師または医療従事者は、ずれ(すなわち変位)を測定するまたは読み取ることができる。
【0041】
電極アレイは、患者の上に複数の方法で配置することができる。患者が動くと、電極アレイが滑って電極が別の位置に移動する場合がある。ベルト上に固定された電極アレイが胸部の周りでずれて動いた場合、ベルトは全体として患者の胸部の周囲の同じ領域を覆っているものの、個々の電極の位置は変化する。これらの場合いずれにおいても、電極アレイに結合された視覚補助具は、個々の電極の位置を求めるまたは読み取るのに役立つ。好都合には、上記視覚補助具という手段により、視覚補助具が位置合わせされた予め定められた位置または所望の位置からの、および体のマークまたは特徴の位置からの、視覚補助具の実際の位置のずれ(特にずれの値)を測定するまたは読み取ることができる。
【0042】
たとえば、上記視覚補助具という手段は、好ましくは電極アレイの長手方向の端に沿う(すなわち電極アレイの長手方向の範囲の端に沿う)目盛りを含む。目盛りの要素は、体のマークまたは特徴を指し示すのに使用される、ライン、矢印および/またはその他の幾何学的形状であってもよい。
【0043】
さらに好ましくは、視覚補助具は、当該視覚補助具を(したがって電極アレイを)たとえば乳頭等の体の特徴的な部分または明確なマークに対して位置合わせできるようにする手段を含む。これらの手段は、患者の体の上の明確なマークまたは患者の体の特徴に対する視覚補助具の位置(したがって電極アレイの位置)を読み取るまたは求めることを可能にする手段と同じ手段であってもよい。
【0044】
たとえば、上記視覚補助具を位置合わせできるようにするおよび/または視覚補助具の位置を読み取るまたは求めることを可能にする手段は、好ましくは電極アレイの長手方向の端に沿った(すなわち電極アレイの長手方向の範囲の端に沿った)目盛りを含む。
【0045】
通常、電極は、間隔が開けられた一連の電極として配置される。好ましくは、電極アセンブリは、少なくとも8個である複数の電極、好ましくは少なくとも16個である複数の電極を含む。
【0046】
好都合には、電極アレイの電極は、ベルト状構造体の上に配置され、またはベルト状構造体に一体化され、電極は、ベルト状構造体の長手方向の範囲に沿って分散している。好ましくは、電極アレイの電極は、ベルト状構造体に固定され、任意で取り外し可能に装着される。
【0047】
任意で、データ入力ユニットはベルト状構造体に装着されてもよい。
データ入力ユニットはマニュアルデータ入力ユニットであってもよい。
【0048】
さらに、EITイメージング方法を説明する。この方法は、
‐患者の上に電極アレイを配置し装着するステップと、
‐インピーダンス分布を測定するステップと、
‐データ入力ユニットに患者固有のデータを与えるステップと、
‐測定したインピーダンス分布および患者固有のデータの入力を考慮する画像作成アルゴリズムを用いてEIT画像を計算するステップとを含み、
電極アレイは、患者の上に複数の方法で配置することができ、電極アレイに結合された少なくとも1つの視覚補助具を含み、それにより、
‐患者の体の特徴的な部分に対する視覚補助具の位置に関する情報を含む患者固有のデータを読み取って入力するステップと、
‐患者の体に対する個々の電極の位置を計算し画像作成アルゴリズムの修正を提供するステップとが可能である。
【0049】
好ましくは、上記修正を提供するために、視覚補助具の位置を記述するデータに基づいて、予め定められた位置からの電極アレイの回転ずれ(たとえば回転ずれの値)を考慮する。たとえば、回転ずれの値は、視覚補助具と患者の体の特徴的な部分との間のずれの測定値である。
【0050】
好都合には、患者の体に対する個々の電極の位置を、上記視覚補助具によってまたは視覚補助具の助けを借りて収集した位置データを考慮することにより、計算する。
【0051】
好都合には、上記EIT方法を、横たわっている体位の患者に対して実施することができる。患者の体位は、仰臥位、伏臥位、またはその中間の体位を含む。
【0052】
好都合には、視覚補助具の位置を、患者を基準として、好ましくは患者の体の特徴的な少なくとも1つのマーク(特徴的な部分)を基準として求める。
【0053】
好都合には、視覚補助具の位置に関する情報は、患者の体の特徴的な部分からの視覚補助具のずれを含む。このずれは、たとえば、視覚補助具と特徴的な部分との間の距離または角度として記述することができる。より具体的には、視覚補助具の位置に関する情報は、患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた視覚補助具の所望の位置または予め定められた位置からの、視覚補助具の(実際の)位置のずれ(たとえば距離または角度)を含む。
【0054】
好都合には、患者の体の特徴的な部分からの視覚補助具のずれ(たとえば角度または距離として測定される)は、患者の外周において決定される。特に、患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた視覚補助具の(所望のまたは予め定められた)位置からの、視覚補助具の実際の位置のずれ(たとえば角度または距離の形態)は、患者の外周において決定される。
【0055】
好都合には、画像作成アルゴリズムの修正を提供するために、EITイメージング方法は、患者の体の上の予め定められた、したがって所望の位置からの、視覚補助具の実際の位置のずれ(すなわちベルトの変位)を補償するステップを含む。所望の位置は、たとえば、患者の体の特徴的な部分に対して位置合わせされた位置である。予め定められた位置は、画像作成アルゴリズムの基礎をなすまたは画像作成アルゴリズムに埋め込まれた仮想解剖モデルに基づいて定められてもよい。好都合には、この方法において、ずれ(ベルトの変位)は、患者の体の上のアレイのベルト電極の実際の位置に応じて決まるアレイのベルト電極を、仮想解剖モデルのそれぞれ対応する仮想電極に割り当てることによって補償される。
【0056】
好ましい例において、患者の体位(向きを含む)は、重力ベクトルを基準として記述されまたは求められ、電極アレイの位置は、患者の少なくとも1つの特徴的な部分を基準として記述されるまたは求められる。
【0057】
実際、電極アレイ、したがって視覚補助具は、患者の外周に、特に患者の外周に配置される。
【0058】
好ましくは、上記患者固有のデータは、患者の体位、好ましくは横たわっている患者の体位に関する情報を含む。
【0059】
最も好ましくは、患者の体位を重力ベクトルを基準として求める。重力ベクトルを基準とする体位には意味がある。なぜなら、肺の機能は重力の影響を受ける場合があるからである。
【0060】
以下本発明を以下の図面において概略的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1a】患者の胸骨に視覚マーカー(クマ)が位置するセンサベルトアセンブリが入力された表示ユニット上の実装例を示す図である。
【
図1b】患者の胸部の右側に視覚マーカー(クマ)の部位が位置するセンサベルトアセンブリが入力された表示ユニット上の実装例を示す図である。
【
図2a】患者の胸骨に視覚マーカー(星)が位置するセンサベルトアセンブリが入力された表示ユニットの実装例を示す図である。
【
図2b】患者の胸部の右側に視覚マーカー(星)の部位が位置するセンサベルトアセンブリが入力された表示ユニットの実装例を示す図である。
【
図3a】中間サイズの体に対し乳頭を基準として体の上でベルトが調整され、電極および6個のマーカーがベルト上に一体化されているセンサベルトアセンブリを示す図である。
【
図3b】電極および6個のマーカーがベルト上に一体化されているセンサベルトアセンブリを示す図であり、最小サイズの体(上)、中間サイズの体(中央)、最大サイズの体(下)に対し、乳頭を基準として体の上でベルトが調整される。
【
図5a】電極ベルトが設けられた対称で均質的な体または対象物を示す図である。
【
図5b】電極ベルトが設けられた非対称で不均質な体を示す図である。
【
図6】患者の体位および/またはベルトの位置を画面に表した図であり、‐a列は、患者の体位を画面に表したものであり、上は仰臥位を示し、中央および下は右側臥位を示し、‐b列は、患者に対するセンサベルトアセンブリの位置を画面に表したものであり、上および中央は、患者の胸骨上にあるマーカーを示し、下は患者の左側にあるマーカーを示し、‐c列は、患者および患者の体位に対するセンサベルトアセンブリの位置を画面に表したもの(すなわち列aおよび列bの2つの画面表現を組み合わせたもの)であり、上は仰臥位の患者の胸骨上にあるマーカーを示し、中央は右側臥位の患者の胸骨上にあるマーカーを示し、下は右側臥位の患者の左側にあるマーカーを示す。
【
図7】計算方法(GREIT)の再構成マトリックスの一例を概略的に示す図である。
【
図9】視覚補助具を用いて電極ベルトを着用した新生児の概略図である。
【
図10】EIT画像の図であり、(a)は画像作成アルゴリズムが修正されたもの、(b)は画像作成アルゴリズムが修正されていないものである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
EITデータは、被験者の胸部の周りに配置された複数の電極から得られる。本発明に従うと、これらの電極は、好ましくは、被験者の身体の一部に対して幾何学的に定められた位置で複数の電極を保持するベルト状構造体上に装着されている。実際、観察面は、身体の一部の周りに、複数の電極のアレイで構成されたベルト状構造体を配置することによって選択される。患者の体の上の複数の電極の正確な位置がわかっていることが、正確な電気インピーダンストモグラフィー画像およびその結果としての診断を決定するために最も重要である。
【0063】
図1aおよび
図1bにおいて、患者の(とりわけ新生児の)仰臥位が、ベッド13に対してそれぞれの位置にある足の裏11のグラフィック要素によって図示されている(すなわち、つま先がテーブルとは逆の上方向を向いているので、この患者は仰臥位である)。足裏11のグラフィック要素を囲んでいる点線のリング15のグラフィック要素は、間隔を開けて並べられた複数の電極を含む電極アレイを表す。これは、実際、複数の電極を備えるベルト構造体が患者の胸部の周りに置かれていることを意味する。この患者は、ベッドの上で仰臥位で横たわっている。患者に対する個々の電極の位置を特定するまたは記述するために、視覚補助具または視覚マーカー17を電極アレイ上の固定位置に付けることにより、少なくとも1つの特定の電極または電極対をマーキングする。
【0064】
視覚マーカー17の位置および/または患者の体位は、ある面における簡略化された極座標系によって記述することができる。この座標系は、好ましくは1つの座標、すなわち角度座標のみを有する。上記座標の第1の値(すなわち角度値θ1)を用いて視覚マーカー17の位置を記述し、上記座標の第2の値(すなわち角度値θ2)を用いて患者の体位を記述することができる。リング15の中心(すなわち患者の長手方向の体軸上のポイント)を、たとえば、この座標系の極と定義し、さらに、(長手方向の体軸に対して垂直方向のこの図の面おいて)このポイントを始点とし、重力ベクトルに対して平行に、電極アレイ15上の最高位置19に向かう、すなわち鉛直方向において上向きの、半直線またはベクトルを、極ベクトルと定義する。この座標系における位置データは、極ベクトルと特徴ベクトルとの間の角度θの値(したがって極ベクトルの位置に対する特徴ベクトルの角度)を含む。1つの特徴ベクトルは、たとえば、電極アレイ15の視覚マーカー17に向かうベクトルであり、別の特徴ベクトルは、たとえば、胸骨に向かうベクトル(すなわち体の冠状面に対して垂直なベクトル)であり、本明細書ではさらに胸骨のベクトルと呼ぶ。極ベクトルに対する胸骨のベクトルの方向を記述する角度は、重力に対する患者の体位に関する情報を提供する。胸骨のベクトルに対する視覚補助具の方向のベクトルの方向を記述する角度は、患者に対する視覚補助具の位置に関する情報を提供するとともに、患者に対するまたは患者の体の特徴に対する電極アレイ(または少なくとも1つの個別電極)の位置に関する情報を提供する。
【0065】
図1および
図2において、2次元の極角度座標は、0度と180度の間のスケールで定められている。よって、患者の足の側にいる観察者から見て、負の値は左側の位置に割り当てられ、正の値は右側の位置に割り当てられる。よって、患者の上のマーカーの中央位置には0°が割り当てられ、患者の下のマーカーの中央位置には180°が割り当られる。これに代えて、患者に対するマーカーの位置は、たとえば、0度と360度の間の値で記述することもできる(たとえば、極軸からマーカーに向かって時計回りに測定)。
【0066】
図1aおよび
図2aにおいて、患者の胸骨のベクトルは0°という値に位置しており、したがって患者は仰臥位である。さらに、電極アレイ15の視覚補助具(クマ/星)17は、極ベクトルに対しても、胸骨のベクトルに対しても、0°という値に位置しており、視覚ベクトルと胸骨のベクトルとはここでは同じ位置にある。
【0067】
図1bおよび
図2bにおいて、患者の胸骨のベクトルは0°という値に位置しており、したがって患者は仰臥位である。さらに、電極アレイ15の視覚補助具(クマ/星)17は、胸骨のベクトルに対して約-60°の角度に位置している。視覚補助具(星)は、胸骨のベクトルを基準として考えたときに、患者の胸部の前の右側に位置している。同時に患者は仰臥位である。
【0068】
患者の体位は、重力または重力ベクトルを基準として(たとえば、その基準が重力ベクトルである第1の極座標系によって)記述している。しかしながら、補助具の位置は、患者を基準として、具体的には患者の特定の特徴を基準として(たとえばその基準が患者である、具体的にはたとえば胸骨のベクトルのような患者の特定の特徴である、第2の極座標系によって)記述している。
【0069】
本明細書に示す極座標系により、患者を基準とする視覚補助具の位置および重力を基準とする患者の体位を、角度の値で定めることができる。
【0070】
人間の胸部は非対称で不均質であるので、電極アセンブリの個々の電極各々の正確な位置は、測定した電気インピーダンス分布の解析およびそれを表すEIT画像の生成において、大きな意味を持つ。
【0071】
図3aは、ベルト上に一体化された電極と6個のマーカーとを有するセンサベルトアセンブリを示す。マーカーにより、このベルトを体の上で乳頭に対して調整することができる。好都合には、ベルトのマーカーを、新生児の乳頭のような特定の身体特徴に合わせる。ベルトの長手方向の端に沿って、たとえば目盛りの一部として複数のラインがあるので、ベルトを患者の胸部の上に正確にセットすることができる。加えて、このベルトは、サイズが異なる体に対して調整することができる。
図3bは、年齢が異なるまたは体のサイズが異なる新生児の胸部を示す。
【0072】
図4には視覚補助具の各種例が示されている。目盛りの要素は、規定された方法でベルトを位置合わせするためおよび/またはベルトと体の位置ずれを測定する(すなわち、視覚補助具の、特定の身体マークまたは特徴と位置合わせされた状態からのずれを測定する)ために特定の身体マークまたは特徴を指し示すのに便利な、ラインであってもよくまたは幾何学的形状であってもよい。
【0073】
インピーダンス分布を測定するための電極アレイを含むEITイメージング用の発明のセンサ装置は、たとえば、少なくとも1つの視覚補助具を、電極アレイに固有に連結し、特定の身体マークに、たとえば胸部の乳頭に明確に割り当てることができることを特徴とする。身体マークに対する視覚補助具の割当を、計算ユニットに入力し、計算ユニットは、内部計算を、患者に対する電極アレイの搭載方法および患者の体位に適合するように調整する。身体マークに対する視覚補助具の位置の入力は、画像センサ、たとえばカメラを用いて自動的に行っても手動で行ってもよい。患者の体位は、たとえば新生児の場合は横たわっている(たとえば仰臥位もしくは伏臥位)といったように予め定められていてもよく、または、視覚による観察またはセンサを用いた測定に基づいて自動または手動で入力してもよい。
【0074】
図5には、均質で対称なボディ5と実際に近い人体の胸部との比較が示されている。
図5aにおいて、センサベルトアセンブリ1は、このセンサベルトアセンブリに一体化された電極を有し、電極#1は位置2に定められ、電極#2は位置3に定められ、電極#3は位置4に定められ(他も同様)、このセンサベルトアセンブリはボディ5(円筒)の全周にわたって装着されている。この場合の電極位置は問題ではない。なぜなら、ボディ5は対称で均質であるからである。ベルトの個々の電極の、ボディ上(すなわち円筒形のボディの周囲の上)における位置に関係なく、EIT画像は同一であろう。
【0075】
図5bにおいて、センサベルトアセンブリに一体化された電極を有する、同じセンサベルトアセンブリ1が、体6に装着されている。しかしながら、体6は、センサベルトアセンブリ1が装着された患者の胸部を表しており、各電極(#1、#2および#3)は、心臓7および肺8といった体内の器官の場所に対してそれぞれ異なる固有の位置にある。患者の体6は非対称で不均質であるので、電極位置は、患者のEIT画像の再構成および解析において極めて重要である。
【0076】
図6は、患者の体位および/または患者に対するベルト位置を表す可能な画面の例を示す。
‐a列は、患者の体位を画面に表したものであり、第1のグラフィック要素(上のグラフィック要素)は患者の仰臥位を示し、第2のグラフィック要素(中央のグラフィック要素)および第3のグラフィック要素(下のグラフィック要素)は患者の右側臥位を示す。
‐b列は、患者に対するセンサベルトアセンブリの位置を画面に表したものであり、第1のグラフィック要素(上のグラフィック要素)および第2のグラフィック要素(中央のグラフィック要素)は、視覚マーカー(星)が患者の胸骨の上になるようにベルトを患者に装着した例を示し、第3のグラフィック要素(下のグラフィック要素)は、視覚マーカー(星)が患者の左脇の上になるようにベルトを患者に装着した例を示す。
‐c列は、患者および患者の体位に対するセンサベルトアセンブリの位置を画面に表したものであり(すなわちa列およびb列の2つの画面表現を組み合わせたもの)、第1のグラフィック要素(上のグラフィック要素)は、仰臥位の患者の胸骨の上に視覚マーカーがある例を示し、第2のグラフィック要素(中央のグラフィック要素)は、右側臥位の患者の胸骨の上に視覚マーカーがある例を示し、第3のグラフィック要素(下のグラフィック要素)は、右側臥位の患者の左脇の上に視覚マーカーがある例を示す。
【0077】
EITイメージングにおいて意味を持つのは、一方では患者の体位すなわち重力ベクトルに対する患者の体位と向きであり、他方では患者に対する電極の位置すなわち体内の器官に対する電極の位置である。
【0078】
図7は、計算方法(GREIT)の再構成マトリックスの一例の概略図である。入力は、電極アレイの番号および正確な位置を含む、人間の胸部の3次元有限要素モデル(3D FEM)である。最終的な再構成マトリックスは反復手法によって得られる。第1のステップにおいて、最初の再構成マトリックスを、1つまたは数個の非導電オブジェクトを含むように修正する。結果として得られるその画像を計算し、予測される画像と比較する。この比較を性能メトリクスに基づいて評価し、再構成マトリックスを、非導電オブジェクトの位置およびサイズをより良く表すように構成する。この処置は、結果が収束するまで数分を要し、オフラインで実際の使用前に行う必要がある。
【0079】
図8に示されるように、リアルタイムの画像作成は、電圧フレームとも呼ばれる電圧測定から得られたデータセットを、予め計算された再構成マトリックスと組み合わせることによって行う。この手順が機能するためには、実際の測定中の電極位置が、再構成マトリックスの計算中に想定した電極位置と同一である必要がある。異なっている場合は、再構成マトリックスを、実際の電極位置に適合するように修正すればよい。データ入力ユニットは、計算ユニットに実際の電極位置を知らせることによって再構成マトリックスの修正を可能にする手段を提供する。
【0080】
実際の例を提供するために、
図9は、視覚補助具17’を有する電極ベルト15’を着用している乳児の体(胸部の一部のみの図)を示す。電極は見えていない。なぜなら、電極は、ベルトの、皮膚に接触する側に位置するからである。一例として、胸骨からの視覚補助具のずれを測定するために、測定テープを用いる。上記ベルト15’は、ベルト15’上の基準位置を示す視覚補助具17’(中心線とともにクマが描かれている)を有する。理想的には、視覚補助具17’は、ここではたとえば胸骨、または体の中心線とも呼ぶ、予め定められた身体マーク20を中心として位置していなければならない。なぜなら、EIT画像作成アルゴリズムは、患者の上の各電極ベルト位置を予め定めており、したがって通常は、EIT測定を実施するときにこの患者の上の電極ベルト位置を必要とするからである。しかしながら、臨床処置において、とりわけ新生児に関しては、これを常に簡単に実現できるとは限らない。よって、この例のように、体の中心線における視覚補助具の理想的な所望位置と、視覚補助具の実際の位置との間には、ずれ(矢印で示される)があることが多い。
図9における体の中心線20に対し、視覚補助具は実際、体の左側にずれている、または、言い換えると、ベルトは体の左側に回転しており、具体的には、
図9に示す目盛りから推測できるように、約4cmずれている。このような電極ベルトのずれが記述されなければ、EIT測定の解釈は難しいかまたは不可能でさえある。
【0081】
図10において、EITイメージング結果のチャートが示されており、特に、2つの肺葉の輪郭の中に、(強度分布によって)呼吸サイクル中のインピーダンス変化の分布の画像が示されている。これは、相対的な一回換気量の分布と解釈することもできる。
図10(a)に示す結果は、ベルトの変位を補償せずに収集されたものであり、
図10(b)に示す結果は、本発明に従いベルトの変位を補償して収集されたものである。
【0082】
各図は、モデル化された肺の輪郭が示された胸部の断面図を示す。肺の輪郭の内部に示されているのは、EIT測定から得られた、強度分布(階調が異なる画素)の形態のデータである。この強度分布は、相対一回換気量または「相対換気ひずみ(tidal strain)」の分布を示す(またはその尺度である)。この一回換気量の分布は、呼吸サイクル中の局所インピーダンス値の変化を反映する。一回の呼吸中に、肺組織は膨張し吸い込んだ換気量を収容する。
【0083】
この「相対換気ひずみ」は、インピーダンス変化の原因が組織の膨張またはひずみであるという想定に基づいた仮定的な用語である。これらの変化は、一回の呼吸で生じるので、周囲の肺組織の機械的したがって電気的特性に対する一回換気量の影響の結果であると考えられ、したがって、相対換気ひずみという用語になる。
【0084】
図10(a)には、変位を補償せずに得られたEIT測定結果が示されている。この結果において、右の肺葉(この図において仰臥位の患者の右側はRで示される)で測定された最大強度は右の肺葉の中心の下に位置し、したがって、通常の予測よりも低く、左の肺葉で測定された最大強度は左の肺葉の中心よりもわずかに上に位置し、したがって通常の予測よりも高い。加えて、低い強度が右の肺葉の前方の肺葉領域に示され、同時に、低い強度が右の肺葉の後方の肺葉領域に示されている。ベルトのずれを考慮せずに解釈した場合、これらの結果は相当に異常である。特に、たとえば、後方の肺葉領域において低い強度が見られることは相当に異常である。
【0085】
図10(b)には、変位を補償して得られたEIT測定結果が示されている。実際、測定は、
図10(a)と同一の体位の同一の患者に対して実施され、この患者は、視覚補助具を有する同一のベルトを着用し、患者の胸骨に対するベルト電極の位置および視覚補助具の位置も同一である。しかしながら、この結果において、最大一回換気量の位置を示す最大強度は、このチャートにおいて各肺葉の中心あたりに示されている。同時に、低強度領域は主として各肺葉の前方肺葉領域に見られる。これらは妥当と思われる結果である。
【0086】
このように、
図10(a)および
図10(b)に示される結果を比較すると、結果の補償が、解釈可能性に対してしたがってEIT画像の解釈に対して多大な影響を有することは、明らかである。結果としてここで紹介した補償方法は非常に有用かつ重要である。
【0087】
これまで説明してきたように、本発明は、予め定められたベルト位置からのベルトのずれを補償することができ、単純であるが有効な、EITイメージングのための方法およびシステムを提供する。
【0088】
発明の用途の説明
本発明は、スタンドアロンモニターにおいて、ならびに機械的呼吸器および麻酔器において、EIT装置の画質を高めるために使用することができる。このような改善は、たとえば、向上した画像を作成することによって、または、画像の上に重力ベクトルを直接表示する、もしくは、重力ベクトルに対して画像を自動的に回転させることにより、向きをユーザに示すことによって、行うことができる。このような改善されたEIT画像の特定の用途は、リクルートメント手技、理学療法等の特定の治療または体位変更を開始し治療の介入の有効性を評価することにある。
【0089】
本明細書に記載のEITセンサ、EITシステムおよびEIT方法は、典型的には機械的呼吸器が装着された集中治療患者に適用される。本明細書に記載のEITセンサ、EITシステムおよびEIT方法は、その肺機能を連続的に観察する必要がある新生児に特に有用である。実際、機械的呼吸器が装着された集中治療患者のうちの15%が、急性肺損傷を発症し、そのうちの30%超が死亡に至る。新生児の年齢グループの場合、新生児は特に弱いので、これらの数値は各々さらに高いと考えられる。これらの患者のほぼ半数は適切な治療によって救うことができると考えられる。そのような治療は、肺リクルートメントによりゾーン2およびゾーン3を有効に最小化することを含む。しかしながら、肺リクルートメント手技は危険を伴う。そのため、臨床医は、肺損傷が既に明らかであるときに限って肺リクルートメントを使用することが多い。残念ながら大抵の場合それでは遅すぎる。本明細書に開示される発明により、医療提供者は、疾患の初期において肺リクルートメントの必要性および成功率を決定し、命を救い、治療コストを低減する手段を有することになるであろう。
【0090】
別の用途において、本明細書に記載のEITセンサ、EITシステムおよびEIT方法を用いて、肺機能に関し、患者の体位、特に新生児の体位を最適化することができる。その結果、たとえば機械的呼吸の必要性を低減することができる。
【0091】
さらに他の用途において、本明細書に記載のEITセンサ、EITシステムおよびEIT方法を用いて、新生児患者におけるサーファクタントの投与を最適化しモニタリングすることができる。
【0092】
制約を受けずにセンサベルトアセンブリを適用しそれでもなお臨床上有用な画像および動画を作成する自由は、体内器官に対するセンサアレイの位置および重力に対する患者の体位双方の修正能力にかかっている。任意の位置に電極アレイアセンブリを配置しそれでもなお信頼できるEIT差分画像を作成する自由を記載したものは今までになかった。
【0093】
特定の実施形態およびその例を参照しながら本発明を説明してきたが、数多くの変更、修正、および変形を、開示されている発明の概念から逸脱することなく行うことが可能であることは明らかである。よって、以下の請求項の精神および広い範囲に含まれるすべてのこのような変更、修正、および変形を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0094】
用語一覧
1 センサベルトアセンブリ
2 電極
3 電極
4 電極
5 対称で均質な対象
6 患者の胸部
7 心臓
8 肺
11 その体位を示している患者(足裏のグラフィック要素)
13 ベッド(カップ状の湾曲線のグラフィック要素)
15,15’ 電極アレイまたはベルト(点線のリングのグラフィック要素)
17,17’ 個々の電極位置を示す視覚マーカー(クマのグラフィック要素)
19 極角度座標
20 胸骨(点線で示す)