(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】高含有量のカルス代謝産物を有するカルス溶解物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 1/00 20060101AFI20220825BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20220825BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20220825BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220825BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220825BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220825BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220825BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20220825BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20220825BHJP
【FI】
C12P1/00 Z
C12N5/04
A61K36/00
A61P17/16
A61P17/00
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/11
A61K8/97
(21)【出願番号】P 2020195817
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513282342
【氏名又は名称】バイオスペクトラム アイエヌシー
【氏名又は名称原語表記】Bio Spectrum,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】パク ウニョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウンサン
(72)【発明者】
【氏名】パク ドックフーン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110123700(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1676607(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0033957(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0109764(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0931768(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0065998(KR,A)
【文献】特開2011-016760(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0004134(KR,A)
【文献】国際公開第2010/067212(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/236304(WO,A2)
【文献】特表2019-510828(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0011239(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0041259(KR,A)
【文献】特開2017-043575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/10
A61K 8/00- 8/99;A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルス代謝産物の消失なしにカルス代謝産物を含有するカルス溶解物の製造方法であって、
カルスを200~2,000barの圧力で機械的に均質化(破砕)するカルスの機械的均質化(破砕)ステップ
と、
前記均質化によって得られたカルス高圧均等破砕物を低温殺菌するステップと、
前記カルス高圧均等破砕物中の酵素を75℃で不活性化するステップと、
を含
み、
前記カルス代謝産物の消失は、カルス溶解物に含まれるフラボノイドおよびテルペノイドの含有量が、熱水抽出法で製造した場合と比較して、1.3倍以下であり、
前記カルス溶解物が、人体の皮膚に有用な成分の作用により、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚弾力増進、皮膚美白、および皮膚トーン改善からなる群より選択される少なくとも1つの効果を有する、カルス溶解物の製造方法。
【請求項2】
前記カルスの機械的均質化(破砕)ステップの前に、以下のステップのうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載のカルス溶解物の製造方法:
(a)植物組織からカルスを分離し、収集するステップ;
(b)植物切片体の脱分化過程を誘導して生成されたカルスを収集するステップ;および
(c)前記ステップ(a)またはステップ(b)で収集されたカルスを培養して増殖したカルスを収集するステップ。
【請求項3】
請求項
1に記載の
方法で製造されたカルス溶解物を天然高分子素材で被覆してカプセル化したカルス溶解物含有カプセル
であり、
前記天然高分子素材が、寒天、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、カードラン、デンプン(澱粉)、ジェランガム、グルコマンナン、イナゴガム、グアーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、カラヤゴム、トラガカンスガム、ラーチガム、デキストラン、セルロース、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、カルス溶解物含有カプセル。
【請求項4】
前記天然高分子素材と前記カルス溶解物との重量比は、1:0.001~1:10であることを特徴とする、請求項
3に記載のカルス溶解物含有カプセル。
【請求項5】
請求項
1に記載の
方法で製造されたカルス溶解物を天然高分子素材で被覆してカプセル化するステップを含
み、
前記天然高分子素材が、寒天、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、カードラン、デンプン(澱粉)、ジェランガム、グルコマンナン、イナゴガム、グアーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、カラヤゴム、トラガカンスガム、ラーチガム、デキストラン、セルロース、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記カプセル化ステップにおいて、前記天然高分子素材と前記カルス溶解物との重量比は、1:0.001~1:10である、カルス溶解物含有カプセルの製造方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の
方法で製造されたカルス溶解物又は請求項
3に記載のカルス溶解物含有カプセルを含む、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善のための皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
請求項
1に記載の
方法で製造されたカルス溶解物又は請求項
3に記載のカルス溶解物含有カプセルを含む、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善のための化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有量のカルス代謝産物を有するカルス溶解物、前記カルス溶解物の製造方法、および前記カルス溶解物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カルスとは、一般に、植物の分化していない不定形の柔細胞の塊を意味する。このようなカルスは、植物生長調節物質等で処理することにより、植物全体に分化できる全形成能(分化全能性)を有することから、植物幹細胞とも呼ばれている。最近では、植物を損傷することなく組織培養技術を使用してカルス細胞を大量に培養して、様々な植物由来の代謝産物を生産することができるので、カルス培養は、大きな産業的な価値を持っている。
【0003】
カルスは植物由来の細胞であるため、人体内で分解されないセルロース、ペクチン、リグニンなどからなる細胞壁に囲まれている。このため、カルス自体を皮膚に塗布しても、人体の皮膚にはセルロース分解酵素がないため、細胞壁を分解しにくく、カルスがマイクロサイズであるので、手でカルスを皮膚に押し付けて塗る程度の物理的な力は、細胞壁を分解するほど強くないから、カルス内の代謝産物を皮膚から吸収することはできない。すなわち、カルス内の代謝産物は、カルス自体を皮膚に塗布するだけでは、人体の皮膚に直接有用成分として使用することはできない。
【0004】
したがって、カルス内の代謝産物を有用成分として人体に使用するために、様々な方法が試みられてきた。それらの方法の一つは、特定の成分に対して高い溶解性を有する有機溶媒を用いて、カルスから有用成分を抽出、分離、および精製する方法である。しかしながら、上記方法は、有用成分を高効率で抽出することが容易ではなく、有用成分の所定の含有量を達成するために分画および濃縮を繰り返す過程において皮膚に適合しない大量の有機溶媒を使用するという点で問題がある。また、別の方法として、有機溶媒を使用しない超臨界抽出などの方法が使用されてきた。しかし、超臨界抽出法は、プロセスの稼働に高価な設備と高いエネルギー消費を必要とするため、この方法で産業的に有利なレベルの経済性を達成するのは難しい。
【0005】
さらに、前記従来の抽出法では、植物のすべての栄養成分を利用できず、一部の有用成分のみを高集積化する方法であるため、高集積化したもの以外の成分を失ったり無駄にしたりして、カルス内の代謝産物を十分に利用できず、コストに対してそれほど大きな利益をもたらしてはいない。
【0006】
従来カルスに関する登録または公開特許(例えば、特許文献1~3参照)もすべて、カルスの溶媒抽出方法または超臨界抽出方法を採用して、カルス内の有用成分を人体の皮膚に適用してきたので、上記のような問題はまだ解決すべき問題として残っている。
【0007】
そこで、本発明者らは、カルス内の代謝産物を人体の有用成分として使用する方法を開発するために鋭意努力した結果、カルスを特定の圧力で機械的に均質化(破砕)することにより、カルス内の代謝産物の消失なしに有用成分として人体に適用できるだけでなく、人体の皮膚への浸透と吸収を著しく高め、人体の皮膚に与える様々な効果を大幅に増大させることができることを明らかにして、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1791641号公報
【文献】韓国登録特許第10-0931768号公報
【文献】韓国公開特許第10-2020-0011239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、カルスを特定の圧力で機械的に均質化(破砕)するカルスの機械的均質化(破砕)ステップを含む、カルス代謝産物の消失なしにカルス代謝産物を含有するカルス溶解物を製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、前記方法によって製造されたカルス溶解物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、前記カルス溶解物の保存力及び安定性を向上させるための前記カルス溶解物のカプセル化方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、前記カプセル化されたカルス溶解物含有カプセルを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含むカルス代謝産物の皮膚浸透力及び皮膚吸収力が向上した組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、前記組成物を含む皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善のための皮膚外用剤組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、前記組成物を含む皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善のための化粧料組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、前記皮膚外用剤または化粧料組成物を個体に投与するステップを含む、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様では、カルスを特定の圧力で機械的に均質化(破砕)するカルスの機械的均質化(破砕)ステップを含む、カルス代謝産物の消失なしにカルス代謝産物を含有するカルス溶解物の製造方法を提供する。
【0018】
本発明において、用語「カルス」は、植物の分化していない不定形の柔細胞の塊であり、植物組織から分離されたカルス、植物切片体の脱分化過程を誘導して得られたカルス、または前記カルスを培養して増殖したカルスであってもよい。
【0019】
前記植物とは、木本植物や草本植物の両方をいう。植物の例には、リンゴの木、ナシの木、柿の木、ブドウの木、イチョウの木などの実のなる木、マツ、チョウセンゴヨウ、イプガル木(韓国・中国などに分布する落葉針葉樹高木)などの針葉樹、レンギョウ、モクレン、サクラなどの広葉樹、コスモス、マツバボタン、大豆などの一年生草木、大麦、小麦、わさび、シロイヌナズナなどの二年生草木、タンポポ、キキョウ、ヨモギなどの多年生草木などがある。
【0020】
一具体例では、植物の枝を殺菌し、それらをカルス誘導用培地に置床し、カルスを誘導
し、次いで誘導されたカルスを継代培養して大量のカルスを製造してもよい。
【0021】
前記カルス誘導用培地は、当該分野で知られている基本培地などを使用してもよく、例えば、MS培地、SH培地、N6培地、B5培地などを使用してもよい。前記カルス誘導用培地は、固体培地であって、前記基本培地に加えて、寒天やゲルライト(gellite)などを含んでいてもよい。また、前記カルス誘導用培地は、必要に応じて、糖(sugar)、無機塩類、ビタミン、アミノ酸、生長調節物質などをさらに含んでいてもよい。前記生長調節物質の例には、インドール酢酸(indole acetic acid:IAA)、ナフタレン酢酸(naphthalene acetic acid:NAA)、ゼアチン(Zeatin)、6-ベンジルアミノプリン(6-Benzylaminopurine:6-BAP)、カイネチン(kinetin)などがあるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。前記生長調節物質は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
前記カルス誘導は、当該分野で知られている温度条件、例えば、20~30℃で、および誘導期間、例えば、5~10週間行ってもよい。
【0023】
前記カルス継代培養は、当該分野でよく知られているカルス成長培養用培地で行ってもよく、好ましくは、エアリフトバイオリアクター(air-lift bioreactor)内の液体培地で行ってもよい。前記液体培地にはMS培地、SH培地などがあり、必要に応じて、糖(sugar)、無機塩類、ビタミン、アミノ酸、生長調節物質などをさらに含んでいてもよい。
【0024】
前記カルス継代培養は、当該分野で知られている温度条件、例えば、20~30℃、および継代培養周期、例えば、2~6週間行ってもよい。
【0025】
したがって、本発明のカルス代謝産物を含有するカルス溶解物を製造する方法は、カルスを高圧状態で機械的に均質化(破砕)するカルスの機械的均質化(破砕)ステップの前に、カルスを収集するステップをさらに含んでいてもよい。
【0026】
前記カルスを収集するステップは、上述したように、植物組織からカルスを分離し、収集するステップ、および/または植物切片体の脱分化過程を誘導して生成されたカルスを収集するステップを含む。
【0027】
また、前記カルスを収集するステップは、植物組織から分離されて収集されたカルス、または、植物切片体の脱分化過程を誘導して生成されて収集されたカルス、を培養して増殖したカルスを収集するステップを含んでいてもよい。
【0028】
前記カルス培養は、上述したように、当該分野でよく知られているカルス成長培養用培地、特にエアリフトバイオリアクター内の液体培地で行ってもよい。前記液体培地には、MS培地、SH培地などがあり、必要に応じて、糖(sugar)、無機塩類、ビタミン、アミノ酸、生長調節物質などをさらに含んでいてもよい。
【0029】
また、本発明の前記カルスは、カルスの分化によって得られた体細胞胚(somatic embryo)をも含むものであり、本明細書において、特に明記しない限り、前記カルスは、カルスの分化によって得られた体細胞船を含む。
【0030】
本発明のカルス代謝産物の消失なしにカルス代謝産物を含有するカルス溶解物を製造する方法は、カルスを高圧状態で機械的に均質化(破砕)するステップを含む。
【0031】
前記「機械的均質化(破砕)」は、ボールミルまたはビーズミル(ball millまたはbead mill)型、回転子/固定子(rotor/stator)型、またはブレード(blade)型のホモジナイザーを用いて、目的とする物質を機械装置によって破砕及び均質化することをいう。
【0032】
前記機械的均質化(破砕)は、高圧状態、すなわち、200~2,000barの圧力条件、より好ましくは300~1800barの圧力条件、さらにより好ましくは500~1500barの圧力条件で行われる。前記圧力範囲が200bar未満である場合、カルス内の代謝産物が細胞壁の外側に露出される効率が低いため、カルス代謝産物による効果を期待できない。前記圧力範囲が2,000barを超える場合、カルスの代謝産物、特に有用成分が過度の圧力によって性状変化または破壊されて、カルス代謝産物による効果を期待できなく、変色および変臭が発生して後述する組成物での使用に適していない。
【0033】
また、前記機械的均質化(破砕)は、高圧状態で1回当たり15~30分、好ましくは18~22分、より好ましくは19~21分、最も好ましくは20分間行われる。また、前記機械的均質化(破砕)は、2~5回、好ましくは2~4回、より好ましくは3回行われる。前記実行回数及び1回当たりの実行時間が前記範囲を下回る場合、カルス代謝産物の溶出および分散を妨げる細胞壁が十分に破壊されないため、カルス代謝産物の溶出および分散がごくわずかであり、前記実行回数及び1回当たりの実行時間が前記範囲を超える場合、前記範囲内で細胞壁が十分に破壊されたため、それ以上の細胞壁の破壊が発生せず、非効率的である。
【0034】
このように、高圧状態でのカルスの機械的均質化(破砕)は、機械的せん断力及びキャビテーション(cavitation)等により、カルス代謝産物の溶出を妨げる細胞壁の構成成分(セルロース、ペクチン、およびリグニンまたはクチンなど)の結合力を弱め、破壊することにより、カルスの代謝産物の溶出および分散を容易にするだけでなく、カルス代謝産物が、破壊された細胞壁の構成成分の残存物とともにカルス溶解物として自然に存在することになる。また、前記細胞壁の破壊は、機械的均質化(破砕)により、細胞壁の一部だけでなく、細胞壁の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の破壊が行われるので、カルス代謝産物の溶出および分散が短時間で行われて、カルス代謝産物が、破壊された細胞壁の構成成分の残存物とともにカルス溶解物として自然に存在することになる。
【0035】
前記「カルス代謝産物」は、カルスの小器官によって生産される、人体の皮膚に有用な成分を含有する物質をいう。前記人体の皮膚に有用な成分は、皮膚保湿を増進する成分、皮膚シワを予防または改善する成分、皮膚弾力を増進する成分、皮膚美白を促進する成分、皮膚トーンを改善する成分などを含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0036】
前記「カルス代謝産物の消失」は、本発明の方法によるカルス溶解物に含まれる特定の基準物質の含有量が、本発明の方法とは異なる方法、例えば、100barの圧力下で行われるカルスの機械的均質化を除いては、本発明の方法と同じ方法によるカルス溶解物、または、本発明の方法とは異なる別の方法によるカルスの熱水抽出物などに含まれる特定の基準物質の含有量に比べて、1.3倍以下、好ましくは1.25倍以下、より好ましくは1.2倍以下であることをいう。したがって、前記「カルス代謝産物の消失なしに」は、本発明の方法によるカルス溶解物に含まれる特定の基準物質の含有量が、本発明の方法とは異なる方法、例えば、100barの圧力下で行われるカルスの機械的均質化を除いては、本発明の方法と同じ方法によるカルス溶解物、または、本発明の方法とは異なる別の方法によるカルスの熱水抽出物などに含まれる特定の基準物質の含有量に比べて、1.2倍以上、好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.3倍以上である場合をいう。
前記特定の基準物質としては、フラボノイド、テルペノイドなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0037】
前記「カルス溶解物」は、上記の方法によるカルス代謝産物および細胞壁が破壊されたカルス(好ましくはカルス小器官)が分散または溶解状態で存在することをいう。本発明において、前記カルス溶解物は、上記の方法によって製造されることを特徴とし、このため、便宜上「カルス高圧均質破砕物」とも呼ばれる。
【0038】
一方、本発明のカルス代謝産物を含有するカルス溶解物を製造する方法は、前記カルスを高圧状態で機械的に均質化(破砕)するステップの後に、カルス溶解物の中で人体の皮膚に有用ではない成分、例えば、核、ミトコンドリア、液胞などの細胞小器官などを除去するステップを、必要に応じてさらに含んでいてもよい。
【0039】
前記カルス溶解物からの無効成分の除去は、除去を目的とする成分に応じて適切な方法を選択でき、例えば、ろ過、遠心分離、酵素処理、カラムクロマトグラフィーなどの方法によって実施してもよい。
【0040】
本発明の他の態様では、上記のように製造されたカルス溶解物を提供する。
【0041】
本発明のカルス溶解物は、カルスを高圧状態で機械的に均質化(破砕)して製造されることを特徴とする。特に、本発明のカルス溶解物は、カルスの細胞壁の構成成分の結合が、機械的せん断力及びキャビテーションによって破壊されて細胞壁の様々な部分が切断されることで、カルス代謝産物の消失なしに容易に溶出された物質である。
【0042】
前記「カルス代謝産物の消失」は、本発明の方法によるカルス溶解物に含まれる特定の基準物質の含有量が、本発明の方法とは異なる方法、例えば、100barの圧力下で行われるカルスの機械的均質化を除いては、本発明の方法と同じ方法によるカルス溶解物、または、本発明の方法とは異なる別の方法によるカルスの熱水抽出物などに含まれる特定の基準物質の含有量に比べて、1.3倍以下、好ましくは1.25倍以下、より好ましくは1.2倍以下であることをいう。したがって、前記「カルス代謝産物の消失なしに」は、本発明の方法によるカルス溶解物に含まれる特定の基準物質の含有量が、本発明の方法とは異なる方法、例えば、100barの圧力下で行われるカルスの機械的均質化を除いては、本発明の方法と同じ方法によるカルス溶解物、または、本発明の方法とは異なる別の方法によるカルスの熱水抽出物などに含まれる特定の基準物質の含有量に比べて、1.2倍以上、好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.3倍以上である場合をいう。前記特定の基準物質としては、フラボノイド、テルペノイドなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0043】
より具体的には、従来のカルス溶媒抽出では、特定の溶媒に可溶な有用成分のみを抽出するので、特定の溶媒に不溶な有用成分を使用できないという問題があった。また、従来のカルス超臨界抽出では、細胞壁の破壊が不十分であり、カルス代謝産物の溶出が困難であり、カルス代謝産物の溶出を容易にするために細胞壁を破壊するための高いエネルギー消費および高価な機器を必要とするという問題があった。さらに、従来のカルス超音波破砕は、植物細胞をヒトの皮膚に吸収させるのに十分小さいサイズに縮小するのに効果的ではなく、カルス溶解物を製造できたとしても、その製造は非常に長い処理時間を必要とし、商用利用可能な大量のカルスの処理には限界がある。
【0044】
これとは異なり、本発明に係る方法により製造されたカルス溶解物は、上記の従来のカルス使用技術に比べて以下の利点を有する。
【0045】
(1)本発明により製造されたカルス溶解物は、カルス細胞壁の様々な部分を低エネルギー消費で短時間破壊することによって得られ、カルス代謝産物の溶出がより容易である。
【0046】
本発明の一具体例によるカルス溶解物は、従来の方法(例えば、カルスの熱水抽出物)及び圧力条件を異ならせて得られたカルス溶解物に比べて、フラボノイド及びテルペノイドの含有量が著しく高いことを示している。
【0047】
(2)本発明により製造されたカルス溶解物では、カルス細胞壁の破壊により、カルス代謝産物が、破壊された細胞壁の構成成分とともに自然に分散または溶解した状態で存在するので、カルス代謝産物内の、人体の皮膚に対して有用な成分をすべて使用することができるという利点がある。
【0048】
本発明の一具体例によるカルス溶解物は、従来の方法(例えば、カルスの熱水抽出物)及び圧力条件を異ならせて得られたカルス溶解物に比べて、皮膚保湿力、皮膚シワ予防および改善、皮膚美白、皮膚弾力増進および改善、および皮膚トーン改善の効果が顕著に優れている。
【0049】
(3)本発明により製造されたカルス溶解物では、カルス細胞壁の破壊により、カルス代謝産物が分散または溶解された状態で存在するので、人体の皮膚への浸透力及び吸収力に優れている。
【0050】
本発明の一具体例によるカルス溶解物は、従来の方法(例えば、カルスの熱水抽出物)及び圧力条件を異ならせて得られたカルス溶解物に比べて、皮膚浸透量が2.04~8倍で顕著に優れている。
【0051】
本発明のまた他の態様では、上記のカルス溶解物を天然高分子素材で被覆してカプセル化したカルス溶解物含有カプセルを提供する。
【0052】
本発明の前記カプセルに含まれるカルス溶解物の詳細については、上記の通りである。
【0053】
本発明の前記カプセルにおいて、前記天然高分子素材は、植物、鉱物、または微生物に由来する物質であり、好ましくは、常温では固体であるが、皮膚に適用すると、体温、摩擦熱、または圧力によって溶融する熱軟化性物質である。前記天然高分子素材は、例えば寒天、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、カードラン、デンプン(澱粉)、ジェランガム、グルコマンナン、イナゴガム、グアーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、カラヤゴム、トラガカンスガム(tragacanth gum)、ラーチガム(larch gum)、デキストラン、セルロース、およびそれらの混合物のうちの1種以上を含んでいてもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の前記カプセル化は、前記カルス溶解物をエマルジョン化し、液状の天然高分子素材に分散させることを特徴とする。
【0055】
前記エマルジョン化は、前記カルス溶解物を、可溶化剤形、または、油中水型(W/O)、水中油型(O/W)、水中油中水型(W/O/W)または油中水中油型(O/W/O)などのエマルジョン剤形に製造することであってもよい。
【0056】
前記エマルジョン化には、界面活性剤または乳化剤が使用されてもよく、この界面活性剤または乳化剤は、イオン性または非イオン性であってもよい。例としては、ポロキサマ
ーまたはプルロニック、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエトキシル化ヒマシ油、および水素化ヒマシ油が挙げられる。ここで、前記界面活性剤または乳化剤は、前記カルス溶解物100重量部に対して、5~30重量部、好ましくは5~20重量部の量で使用してもよい。
【0057】
前記天然高分子素材は、熱軟化性物質であるので、50℃以上、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~90℃、さらにより好ましくは70~90℃、最も好ましくは80~90℃で加熱して液状化してもよい。
【0058】
本発明のカプセルは、前記天然高分子素材と前記カルス溶解物との重量比が1:0.001~1:10、具体的には1:0.005~1:10、より具体的には1:0.05~1:10であってもよい。重量比が前記範囲内にある場合、前記カプセルは、有効成分であるカルス溶解物の保存力及び安定性を向上させ、貯蔵環境においては、有効成分であるカルス溶解物の保存力を高めながらも、皮膚への適用に際しては、皮膚への塗布に有利な特性を示すことができる。
【0059】
本発明の前記カプセルは、平均粒径が0.1~30mm、具体的には0.5~10mm、より具体的には1~10mmであってもよい。平均粒径が前記範囲内にある場合、カプセルに含まれるカルス溶解物の保存力及び安定性をさらに高めることができる。
【0060】
本発明の前記カプセルは、皮膚への適用に際して、よく溶けて塗布できるように、融点が30~50℃、好ましくは35~45℃、より好ましくはカプセルの安定性を考慮して36℃以上であり、カプセルの互換性(compatibility)及び拡散性(spreadability)を考慮すると、融点が45℃以下であることが好ましい。
【0061】
本発明に係る前記カルス溶解物含有カプセルは、有効成分であるカルス溶解物の保存力及び安定性をさらに高め、貯蔵環境においては、有効成分であるカルス溶解物の保存力を高めながらも、皮膚への適用に際しては、皮膚への塗布に有利な特性を有する。
【0062】
本発明のまた他の態様では、上記のカルス溶解物を製造するステップの後、前記製造されたカルス溶解物を天然高分子素材で被覆してカプセル化するステップを含む、カルス溶解物含有カプセルの製造方法を提供する。
【0063】
前記カルス溶解物の詳細については、上記の通りであるので、以下では説明を省略する。
【0064】
前記カルス溶解物を製造するステップは、上述したように、カルスを200~2,000barの圧力で機械的に均質化(破砕)するカルスの機械的均質化(破砕)ステップ;またはカルスの機械的均質化(破砕)ステップ、及び前記カルスの機械的均質破砕物から人体の皮膚に有効でない成分を除去するステップ;または、カルスを収集するステップ、前記収集されたカルスの機械的均質化(破砕)ステップ、及び前記カルスの機械的均質破砕物から人体の皮膚に有効でない成分を除去するステップ;をいう。このようなカルス溶解物を製造するステップの詳細については、上記の通りであるので、上記の内容を参照する。
【0065】
前記製造されたカルス溶解物を天然高分子素材で被覆してカプセル化するステップは、前記カルス溶解物をエマルジョン化し、液状の天然高分子素材に分散させてカプセル化するステップである。
【0066】
前記エマルジョン化は、前記カルス溶解物を、可溶化剤形、または、油中水型(W/O)、水中油型(O/W)、水中油中水型(W/O/W)または油中水中油型(O/W/O)などのエマルジョン剤形に製造することであってもよい。
【0067】
前記エマルジョン化には、界面活性剤または乳化剤が使用されてもよく、この界面活性剤または乳化剤は、イオン性または非イオン性であってもよい。例としては、ポロキサマーまたはプルロニック、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエトキシル化ヒマシ油、および水素化ヒマシ油が挙げられる。ここで、前記界面活性剤または乳化剤は、前記カルス溶解物100重量部に対して、5~30重量部、好ましくは5~20重量部の量で使用してもよい。
【0068】
前記天然高分子素材は、植物、鉱物、または微生物に由来する物質であり、好ましくは、常温では固体であるが、皮膚に適用すると、体温、摩擦熱、または圧力によって溶融する熱軟化性物質である。前記天然高分子素材は、例えば寒天、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、カードラン、デンプン(澱粉)、ジェランガム、グルコマンナン、イナゴガム、グアーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、カラヤゴム、トラガカンスガム(tragacanth gum)、ラーチガム(larch gum)、デキストラン、セルロース、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0069】
前記液状の天然高分子素材は、上記の特徴の天然高分子素材を、50℃以上、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~90℃、さらにより好ましくは70~90℃、最も好ましくは80~90℃で加熱して液状化してもよい。
【0070】
前記天然高分子素材と前記カルス溶解物との重量比は、1:0.001~1:10、具体的には1:0.005~1:10、より具体的には1:0.05~1:10であってもよい。重量比が前記範囲内にある場合、前記カプセルは、有効成分であるカルス溶解物の保存力及び安定性を向上させ、貯蔵環境においては、有効成分であるカルス溶解物の保存力を高めながらも、皮膚への適用に際しては、皮膚への塗布に有利な特性を示すことができる。
【0071】
前記カプセル化するステップは、カプセルの安定性を向上させるために、前記カルス溶解物のエマルジョンを液状の天然高分子素材に分散させた後、外部温度を20℃以下、具体的に-10~15℃、より具体的には0~10℃に調節することをさらに含んでいてもよい。このとき、温度調節方式は、例えば、反応器の外部に、シリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、液体窒素、液体酸素、液体空気などの凍結冷媒を含む装置を備え、温度を調節することであってもよいが、これに限定されるものではない。このような場合、カプセルを形成する天然高分子素材とカプセル内のカルス溶解物との重量比を調節しやすく、且つ、形状性に優れたカルス溶解物含有カプセルを製造することができる。
【0072】
前記製造されたカプセルは、平均粒径が0.1~30mm、具体的には0.5~10mm、より具体的には1~10mmであってもよい。平均粒径が前記範囲内にある場合、カプセルに含まれるカルス溶解物の保存力及び安定性をさらに高めることができる。
【0073】
本発明のまた他の態様では、上述したカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含む、カルス代謝産物の皮膚浸透力および皮膚吸収力が向上した組成物を提供する。
【0074】
本発明の組成物に含まれるカルス溶解物およびカルス溶解物含有カプセルの詳細につい
ては、上記の通りである。
【0075】
本発明の前記カルス代謝産物の皮膚浸透力および皮膚吸収力が向上した組成物は、有効成分としてのカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを、組成物の全重量に対して0.01~100重量%、好ましくは1~90重量%、より好ましくは5~80重量%含んでいてもよい。
【0076】
一つの具体的な実施では、有効成分であるカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルに含まれているカルス溶解物は、上述したように、カルス代謝産物が消失せずに容易に溶出または分散した物質であるため、人工皮膚(dermal equivalent)への浸透力実験において、従来のカルス熱水抽出物などに比べて、人工皮膚への浸透量が2.04~8倍で著しく向上した。
【0077】
したがって、本発明の組成物は、溶出または分散状態のカルス代謝産物を含むカルス溶解物の、大量迅速な皮膚浸透を可能にし、且つ、皮膚吸収力を増加させることができ、その結果、カルス溶解物に溶出および分散したカルス代謝産物の皮膚に対する作用により、皮膚保湿、皮膚美白、皮膚シワ、皮膚弾力、および皮膚トーンを効果的に改善できるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の一つの具体的な態様では、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【0079】
本発明のカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの詳細については、上記の通りである。
【0080】
本発明の皮膚外用剤組成物は、有効成分として、カルス代謝産物の皮膚浸透力および皮膚吸収力が向上した組成物を単独で含んでいてもよく、必要に応じて、前記カルス代謝産物の皮膚浸透力および皮膚吸収力が向上した組成物とともに賦形剤を含んでいてもよい。
【0081】
前記賦形剤は、外用剤として使用可能な賦形剤である限り、特に限定されない。例えば、前記賦形剤は、精製水、エタノールなどを含む親水性溶媒;ホホバオイルなどを含む植物性オイル;スクワランなどを含む動物性オイル;流動パラフィンなどを含む滑剤;セチルアリールアルコールなどを含む脂肪酸アルコール;プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、酢酸トコフェリル、ポリグリセリル-3メチルグルコースジステアレートなどを含むスキンコンディショニング剤;トリエタノールアミン、ステアリン酸グリセリルなどを含む界面活性剤;カルボキシビニルポリマーなどを含む増粘剤;乳化剤;防腐剤;香料など;であってもよい。
【0082】
本発明の皮膚外用剤組成物は、カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを0.1~80重量%、具体的には1~50重量%、より具体的には10~50重量%で含んでいてもよい。前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの含有量が0.1重量%未満の場合、前記カルス溶解物による効果が微々たるものであり、80重量%を超える場合、含有量に対する効果の上昇が微々たるものである。
【0083】
前記外用剤組成物は、カルス溶解物に含まれるカルス代謝産物の作用により、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善に非常に効果的であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0084】
本発明の他の具体的態様では、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含む医薬部外品組成物を提供する。
【0085】
本発明のカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの詳細については、上記の通りである。
【0086】
本発明の用語「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾患を診断、治療、改善、軽減、処置、または予防するために使用される物品のうち医薬品より作用が軽微な物品を意味する。例えば、薬事法に基づく医薬部外品は、医薬品の用途に使用される物品を除くものを意味し、ヒト・動物の疾患の治療または予防に使用される製品、人体に対する作用が軽微であるか、又は直接作用しない製品などが含まれる。
【0087】
具体的には、前記医薬部外品は、皮膚外用剤および個人衛生用品を含み得る。より具体的には、前記医薬部外品は、消毒クリーナー、シャワーフォーム、ガグリン(韓国ブランドのマウスウォッシュ)、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、または軟膏剤であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明に係る前記組成物を医薬部外品添加物として使用する場合、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルをそのまま添加してもよく、他の医薬部外品または医薬部外品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いてもよい。有効成分の混合量は、使用目的に応じて適宜決定されてもよい。
【0089】
本発明の医薬部外品組成物は、カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを0.1~80重量%、具体的には1~50重量%、より具体的には10~50重量%で含んでいてもよい。前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの含有量が0.1重量%未満の場合、前記カルス溶解物による効果が微々たるものであり、80重量%を超える場合、含有量に対する効果の上昇が微々たるものである。
【0090】
前記医薬部外品組成物は、カルス溶解物に含まれるカルス代謝産物の作用により、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善に非常に効果的であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0091】
本発明のまた他の具体的な態様では、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含む化粧料組成物を提供する。
【0092】
本発明の化粧料組成物は、カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルに加えて、化粧料組成物に汎用される成分をさらに含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤(可溶化剤)、ビタミン、顔料および香料などの通常の補助剤、並びに担体を含んでいてもよい。
【0093】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤型にも製造可能であり、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クレンジングオイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されてもよいが、これらに限定されるものではない。より詳しくは、栄養クリーム、収斂化粧水、柔軟化粧水、ローション、エッセンス、栄養ゲルまたはマッサージクリームなどの剤形に製造されてもよい。
【0094】
前記化粧料組成物の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン(澱粉)、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが使用されてもよい。
【0095】
前記化粧料組成物の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが使用されてもよく、特に、本発明の剤形がスプレーである場合には、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどの推進剤をさらに含んでいてもよい。
【0096】
前記化粧料組成物の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0097】
前記化粧料組成物の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールなどの液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガントなどが使用されてもよい。
【0098】
前記化粧料組成物の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、スルホンコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが使用されてもよい。
【0099】
本発明の化粧料組成物は、カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを0.1~80重量%、具体的には1~50重量%、より具体的には10~50重量%で含んでいてもよい。前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの含有量が0.1重量%未満の場合、前記カルス溶解物による効果が微々たるものであり、80重量%を超える場合、含有量に対する効果の上昇が微々たるものである。
【0100】
前記化粧料組成物は、カルス溶解物に含まれるカルス代謝産物の作用により、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善に非常に効果的であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0101】
本発明のまた他の態様では、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを有効成分として含む組成物を個体に投与するステップを含む、皮膚保湿増進、皮膚シワ予防または改善、皮膚美白、皮膚弾力増進、または皮膚トーン改善を行う方法を提供する。
【0102】
本発明における用語「予防」とは、前記疾患または症状を保有していると診断されたことはないが、このような疾患または症状にかかりやすい傾向がある個体における前記疾患または症状の発生を抑制することを意味する。
【0103】
本発明における用語「改善」または「治療」とは、個体における(a)疾患または症状の抑制、または(b)疾患または症状の軽減を意味する。
【0104】
本発明における用語「個体」とは、本発明のカルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを有効成分として含む組成物の投与により前記目的を達成できる人間を含む哺乳動物、例えば、猿、牛、馬、豚、羊、犬、猫、ラット、マウス、チンパンジーなどを意味する
。
【0105】
本発明における用語「投与」とは、ある適切な方法により個体に所定の物質を導入することを意味する。本発明の組成物は、目的組織に到達し得る限り、ある一般的な経路を介して経口または非経口で投与、好ましくは非経口で投与されてもよい。また、本発明の組成物は、活性物質が標的対象、例えば、標的細胞に移動可能な任意の装置によって投与されてもよい。
【0106】
本発明の組成物の好適な投与量は、個体の状態及び体重、疾患の度合い、薬物の形態、時間によって異なるが、当業者によって適切に選択されてもよい。前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの一日投与量は、成人基準で1.0~3.0mlであり、必要に応じて一日1~5回塗布して投与してもよい。
【0107】
前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを有効成分として含む組成物は、組成物全重量に対して0.1~80重量%、具体的には1~50重量%、より具体的には10~50重量%で含まれていてもよい。前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルの含有量が0.1重量%未満の場合、前記カルス溶解物による効果が微々たるものであり、80重量%を超える場合、含有量に対する効果の上昇が微々たるものである。
【発明の効果】
【0108】
本発明に係るカルス溶解物の製造方法は、従来のカルス抽出物などと比較して、人体に有害な溶媒を使用しなくても、カルス代謝産物の消失なしに多く含むように製造する方法であり、前記方法で製造されたカルス溶解物は、カルス代謝産物がカルスから溶出されてカルス溶解物中に分散されており、したがって、前記カルス代謝産物の皮膚への直接の迅速な浸透および吸収を可能にする。さらに、前記カルス溶解物含有カプセルもまた、前記カルス代謝物の皮膚への直接の迅速な浸透および吸収を可能にし、有効成分であるカルス溶解物の保存力及び安定性を向上させ、貯蔵環境においては、有効成分であるカルス溶解物の保存力を高めながらも、皮膚への適用に際しては、皮膚への塗布に有利な特性を提供することができる。なお、前記カルス溶解物またはカルス溶解物含有カプセルを含む組成物は、カルス代謝物がカルスから溶出されてカルス溶解物中に分散されており、したがって、カルス代謝産物の作用により、皮膚保湿能、皮膚シワ予防能、皮膚シワ改善能、皮膚美白能、皮膚弾力向上能および皮膚トーン改善能に優れており、皮膚外用剤、皮膚医薬部外品、および化粧料として有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は、種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0110】
<製造例1>
リンゴの木の当年生枝(学名:Malus pumila,品種名:ふじ、採取部位:枝の形成層を含む部分、生育期間:1~6ヶ月)を35v/v%の過酸化水素に10分、続いて70v/v%のエタノールに1分間浸漬させた後、2v/v%の次亜塩素酸ナトリウム(Sodium hypochlorite)溶液で30分間振とうし、殺菌した。
【0111】
次いで、殺菌したリンゴの木の枝を滅菌水で5回以上洗浄した後、約1cmの小さな切片に切断した。前記切片体をスクロース(Sucrose)30g/L、ゲルライト(Gelite)4.0g/L、生長調節物質であるNAA 1ppm、MSパウダー4.4g/Lおよび残部の精製水を含む基本培地に置床した後、25℃の培養室にて8週間培養
してカルス(callus)形成を誘導した。
【0112】
誘導されたカルスを5週間間隔で継代培養して増殖及び浄化した。上記のように誘導されたカルスをエアリフトバイオリアクター内に接種し、25℃の培養室にて6週間暗状態で懸濁培養した後、収穫した。このとき、培養培地としては、前記基本培地からゲルライト(Gelite)を除き、同量のMS培地(medium)に置き換えて製造した培地を用い、25℃の培養室にて6週間暗状態で懸濁培養した。
【0113】
<製造例2>
前記製造例1でリンゴの木の当年生枝の代わりにクコの当年生枝(学名:Lycium
chinense,採取部位:枝の形成層を含む部分、生育期間:1~6ヶ月)を使用することを除いては、製造例1と同様に行った。
【0114】
<製造例3>
前記製造例1でリンゴの木の当年生枝の代わりにブドウの木の当年生枝(学名:Vitis vinifera L.,品種名:キャンベル、採取部位:枝の形成層を含む部分、生育期間:1~6ヶ月)を使用することを除いては、製造例1と同様に行った。
【0115】
<実施例1>
製造例1で製造したリンゴカルスを500ml採取し、高圧ホモジナイザー(モデル名:Scientz-150、メーカー:Ningbo Scientz Biotechnology Co.,Ltd)を用いて、200barで1回当たり20分ずつ、合計3回処理してカルスを破砕した。このように製造されたリンゴカルス高圧均質破砕物を75℃で30分間処理し、低温殺菌および酵素の不活性化の後処理を行った後、使用した。
【0116】
<実施例2>
高圧ホモジナイザーの圧力を500barに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、リンゴカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0117】
<実施例3>
高圧ホモジナイザーの圧力を1,000barに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、リンゴカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0118】
<実施例4>
高圧ホモジナイザーの圧力を2,000barに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、リンゴカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0119】
<実施例5>
製造例2で製造したクコの実カルス培養物を500ml採取し、高圧ホモジナイザー(モデル名:Scientz-150、メーカー:Ningbo Scientz Biotechnology Co.、Ltd)を用いて、200barで1回当たり20分ずつ、合計3回処理してカルスを破砕した。このように製造された植物カルス高圧均質破砕物は、75℃で30分間処理し、低温殺菌および酵素の不活性化の後処理を行った後、使用した。
【0120】
<実施例6>
高圧ホモジナイザーの圧力を500barに変更したことを除いては、実施例5と同様の方法で、クコの実カルス高圧均質破砕物を製造した。
【0121】
<実施例7>
高圧ホモジナイザーの圧力を1,000barに変更したことを除いては、実施例5と同様の方法で、クコの実カルス高圧均質破砕物を製造した。
【0122】
<実施例8>
高圧ホモジナイザーの圧力を2,000barに変更したことを除いては、実施例5と同様の方法で、クコの実カルス高圧均質破砕物を製造した。
【0123】
<実施例9>
製造例3で製造したブドウカルス培養物を500ml採取し、高圧ホモジナイザー(モデル名:Scientz-150、メーカー:Ningbo Scientz Biotechnology Co.,Ltd)を用いて、200barで1回当たり20分ずつ、合計3回処理してカルスを破砕した。このように製造されたクコの実カルス高圧均質破砕物を75℃で30分間処理し、低温殺菌および酵素の不活性化の後処理を行った後、使用した。
【0124】
<実施例10>
高圧ホモジナイザーの圧力を500barに変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で、ブドウカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0125】
<実施例11>
高圧ホモジナイザーの圧力を1,000barに変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で、ブドウカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0126】
<実施例12>
高圧ホモジナイザーの圧力を2,000barに変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で、ブドウカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0127】
<比較例1>
製造例1で製造したリンゴカルス培養物を500ml採取し、培養液を除去し、1Lの滅菌水に浸漬して80℃で60分間熱水抽出を行った。その後、得られた抽出液をろ紙(Advantes、No.2)でろ過し、植物カルス熱水抽出物を製造した。
【0128】
<比較例2>
製造例2で製造したクコの実カルス培養物を500ml採取し、培養液を除去し、1Lの滅菌水に浸漬して80℃で60分間熱水抽出を行った。その後、得られた抽出液をろ紙(Advantes、No.2)でろ過し、クコの実カルス熱水抽出物を製造した。
【0129】
<比較例3>
製造例3で製造したブドウカルス培養物を500ml採取し、培養液を除去し、1Lの滅菌水に浸漬して80℃で60分間熱水抽出を行った。その後、得られた抽出液をろ紙(Advantes、No.2)でろ過し、ブドウカルス熱水抽出物を製造した。
【0130】
<比較例4>
高圧ホモジナイザーの圧力を100barに変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で、ブドウカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0131】
<比較例5>
高圧ホモジナイザーの圧力を2,100barに変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で、ブドウカルス高圧均質破砕物を製造した。
【0132】
<実施例13>
前記実施例12で製造したブドウカルス高圧均質破砕物30重量%、精製水65重量%および乳化剤5重量%を混合した後、60~70℃でエマルジョン化して水中油型(O/W)エマルジョンを製造した。
【0133】
前記エマルジョン20mlを、天然高分子素材である寒天2重量%を80℃~90℃で精製水98重量%中に加温溶解した溶液80ml中に投入した後、温度を維持しながら2時間分散させ、カプセル化した。製造されたカプセルは、平均粒径が約5mmであった。
【0134】
<実施例14>
反応器に下表1に示す組成成分を投入した後、70℃に加熱して乳化させた。乳化が完了した後、前記反応器の温度を45℃に冷却し、前記実施例13で製造したブドウカルス含有カプセルを添加して分散させた後、30℃に冷却して、栄養クリーム剤形の化粧料を製造した。
【0135】
<比較例6>
反応器に下表1に示す組成成分を投入した後、70℃に加熱して乳化させた。乳化が完了した後、前記反応器の温度を45℃に冷却し、前記比較例3で製造したブドウのカルス抽出物を添加して分散させた後、30℃に冷却して、栄養クリーム剤形の化粧料を製造した。
【0136】
<比較例7>
反応器に下表1に示す組成成分を投入した後、70℃に加熱して乳化させた。乳化が完了した後、前記反応器の温度を45℃に冷却し、分散させ、次いで30℃に冷却して、栄養クリーム剤形の化粧料を製造した。
【0137】
【0138】
<実験例1:皮膚浸透効果性の評価>
人工皮膚(DE、Dermal Equivalent)を用いて、実施例1~12及び比較例1~5の試料の皮膚浸透効果を測定した。
【0139】
前記人工皮膚は、ヒト正常繊維芽細胞(Human normal fibroblast)を、コラーゲン及びDMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Media)を含有する培地で5%の濃度のCO2培養器(インキュベーター)で37℃で24時間培養した後、表面上の表皮角質形成細胞を、上皮成長因子(EGF:Epidermal Growth Factor)とウシ脳下垂体抽出物(BPE:Bovine Pituitary Extract)を含有するケラチノサイト血清フリー培地(K-SFM:Keratinocyte Serum Free Medium)で7日間培養することで、多層の表皮と真皮構造を形成して製造したものである。
【0140】
実施例1~12及び比較例1~5で準備された各試料を、同じ培養条件で製造された前記人工皮膚の最上層に塗布し、4時間培養した後、浸透された試料の量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)で分析した。試験結果は、下表2に示した。前記HPLC分析の際に浸透量の基準として使用された物質は、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、ルチン(Rutin)、レスベラトロール(Resveratrol)などであった。
【0141】
【0142】
上表2から分かるように、本発明の実施例1~12のように、それぞれのリンゴカルス、クコの実カルス、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物を含む場合、同じ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例1~3に比べて、人工皮膚への浸透量が2.04(10.4/5.1)~8倍(38.4/4.8)で著しく向上した。
【0143】
また、均質化(破砕)時の圧力が200bar未満である比較例4の試料は、本発明の実施例の試料よりも低い浸透量を示し、細胞壁を含む大量の残留物が破壊されないままであった。均質化(破砕)時の圧力が2000barを超える比較例5の試料は、十分に優れた浸透量を示したが、試料の変色及び変臭の性状変化が発生し、外用剤用組成物としての適用に適していない。
【0144】
<実験例2:皮膚保湿効果性の評価>
年齢が20代から50代の合計30名の男女対象者を募集し、皮膚保湿能の評価を行った。
【0145】
各対象者は、実施例1~13及び比較例1~5で製造された各試料を10gずつ2.5cm×2.5cmの面積の腹部の皮膚表面に塗布し、24時間経過後、経皮水分損失量(TEWL:transepidermal water loss)をTEWA蒸発計(Tewameter TM210、ドイツ)で測定した。前記TEWA蒸発計は、所定の測定時間に取得された測定結果の平均値を自動的に算出して提供する。
【0146】
前記経皮水分損失量(TEWL)は、空気の移動や直射日光のない恒温恒湿の条件(室内温度22℃、相対湿度40%)が保たれた恒温恒湿室において測定された。さらに、各実施例および比較例の試料に対する、合計30名の対象者の測定値を平均し、その結果を下表3に示した。
【0147】
【0148】
上表3から分かるように、本発明の実施例1~12のように、それぞれのリンゴカルス
、クコの実カルス、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物を含む場合、同じ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例1~3、および破砕圧力が本発明の範囲を超える比較例4及び5に比べて、皮膚保湿能が著しく優れていることが確認された。
【0149】
特に、ブドウカルス破砕物を寒天で被覆したカプセル剤形である実施例13の場合、試料の塗布時に外皮が共に塗布されるので、複合的な作用により経皮水分損失量(TEWL)においてさらに改善された。
【0150】
<実験例3:皮膚シワ予防能の評価>
コラーゲンを分解する酵素であるコラゲナーゼの活性度を測定するために、抗体を用いた。
【0151】
ヒト正常線維芽細胞(Human normal fibroblast,(株)太平洋)を、DMEM培地入り6ウェルマイクロプレートに接種し(2×105細胞/ウェル)、5%の濃度のCO2培養器で37℃で24時間培養した。24時間後、各ウェルから培地を除去し、濃度別に試料を処理した後、24時間さらに培養した。24時間後、細胞培地を収集し、サンプルを製造した。
【0152】
コラゲナーゼ活性を誘導する物質として知られている腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor,TNF-α,Sigma、米国)を10ng/mLの含有量で、前記繊維芽細胞が培養された6ウェルマイクロプレートで処理した後、タイプIコラゲナーゼアッセイキット(Amersham Biosciences,RPN2629)を用いて、ELISAリーダー(Bio-Tek EL×808TMSeries
Ultra Microplate Reader、イギリス)を用いて450nmで吸光度を測定した。対照群として蒸留水を使用し、吸光度測定値を下記式1に代入してコラゲナーゼ活性阻害率を算出し、その結果を下表4に示した。
【0153】
<式1>
コラゲナーゼ阻害率(%)=100-{[(A1-B1)-(C1-D1)]/(A1-B1)}×100
A1:対照群の吸光度
B1:対照群のブランク吸光度
C1:実験群の吸光度
D1:実験群のブランク吸光度
【0154】
【0155】
上表4から分かるように、本発明の実施例1~12のように、それぞれのリンゴカルス、クコの実カルス、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物を含む場合、同じ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例1~3、および破砕圧力が本発明の範囲を超える比較例4及び5に比べて、皮膚シワ予防能が著しく優れていることが確認された。
【0156】
特に、ブドウカルス破砕物を寒天で被覆したカプセル剤形である実施例13の場合、試料の塗布時に外皮が共に塗布されるので、複合的な作用によりコラゲナーゼ阻害能がさらに向上した。
【0157】
<実験例4:チロシナーゼ阻害能の評価>
本実験は、マウスメラノーマ(murine melanoma)(B-16 F1)細胞(韓国細胞株銀行)を、10%牛胎児血清(fetal bovine serum:FBS)含有のDMEM培地入り6ウェルプレートに1×105細胞/ウェルウェルの割合で接種し、5%CO2及び37℃下で細胞がウェルの底に約80%以上付着するまで培養した。次いで、培地を除去し、試料を適当な濃度に希釈された培地に入れ替え、5%CO2及び37℃下で三日間培養した。培地を除去した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)で洗浄し、これをトリプシンで処理して細胞を回収した。回収された細胞は、血球計算盤(hematocytometer,Tiefe Depth Profondeur 0.100mm、Paul Marienfeld GmbH&Co.KG、ドイツ)を用いて細胞数を測定し、5,000~10,000rpmにて10分間遠心分離した後、上澄み液を除去してペレットを得た。この細胞ペレットを、溶解緩衝液(lysis buffer)を用いて粉
砕し、12,000rpmにて10分間遠心分離して上澄み液を収集した。
【0158】
これをマイクロプレートリーダー(microplate reader,Bio-Tek EL×8081U、米国)を用いて492nmで吸光度を測定し、所定数の細胞当たりのチロシナーゼ活性を求めた。前記吸光度測定値を下記式2に代入してチロシナーゼ活性阻害率を算出し、その結果を下表5に示した。
【0159】
実験群のブランク(blank)は、チロシナーゼ溶液を除く反応物、すなわち、チロシン、カルス破砕物および抽出物、ならびにリン酸ナトリウム緩衝液からなる反応物であり、対照群のブランクは、実験群のブランクにおいて、カルス破砕物および抽出物の代わりにメタノールを添加したものであった。
【0160】
<式2>
チロシナーゼ阻害率(%)=100-{[(A2-B2)-(C2-D2)]/(A2-B2)}×100
A2:対照群の吸光度
B2:対照群のブランク吸光度
C2:実験群の吸光度
D2:実験群のブランク吸光度
【0161】
【0162】
上表5から分かるように、本発明の実施例1~12のように、それぞれのリンゴカルス、クコの実カルス、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物は、同じ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例1~
3、及び均質化(破砕)時の圧力が200bar未満である比較例4に比べて、チロシナーゼ阻害能が著しく優れていることが確認された。また、均質化(破砕)時の圧力が2000barを超える比較例5の場合、試料のチロシナーゼ阻害能は十分であるが、試料の変色及び変臭の性状変化が発生したので、外用剤及び化粧料組成物としての適用に適していない。
【0163】
さらに、ブドウカルス破砕物を寒天で被覆したカプセル剤形である実施例13の場合にもまた、チロシナーゼ阻害能に優れていた。
【0164】
<実験例5:皮膚美白能の評価>
実施例14及び比較例6~7の方法で製造した栄養クリームを、シミ、そばかす、または色素沈着症を有する健康な成人男女100名を対象に使用し、クロマメーター(Chroma Meter、モデル名:CR-300、MINOLTA CO.,LTD.)を用いて、皮膚色の明るさ変化(△L)を測定した。
【0165】
シミ、そばかす、または色素沈着症を有する健康な成人男女100名をランダムに20名ずつ3グループ(A、B、C)に分けた後、グループAには実施例14を、グループBには比較例6を、グループCには比較例7を、それぞれ1日2回ずつ12週間塗布した後、皮膚の明るさ変化を測定した。その結果を下記表6に示した。
【0166】
【0167】
上表6から分かるように、本発明の実施例14のように、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物を含めて製造した栄養クリームの場合、ビヒクル(Vehicle)のみを処理した対照群(比較例7)に比べて、皮膚美白能が著しく優れており、特に、ブドウ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例6に比べても、皮膚美白能が有意に優れていることが確認された。
【0168】
<実験例6:抗酸化能の評価>
フリーラジカルであるDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)に対する消去能を測定することで抗酸化能を評価した。色を呈するラジカルであるDPPHを用いて、試料のラジカル消去能を直接確認することができる。
【0169】
実施例1~13及び比較例1~5による各試料50μlを、1mlの100μMDPPH溶液と混合した後、20℃(常温)で30分間反応及び恒温維持(incubation)した。次に、残りのDPPHの量を517nmでの吸光度測定によって把握した。
【0170】
反応の完了後、下記式3により試料のフリーラジカル消去能(free radical scavenging activity,%)を算出し、その結果を下表7に示した。このとき、陽性対照群としてはアスコルビン酸(ascorbic acid)400μg/mlを使用し、ブランクとしては精製水を使用した。
【0171】
<式3>
ラジカル消去能(%)={1-(試料添加群の吸光度/試料無添加群の吸光度)×100}
【0172】
【0173】
上表7から分かるように、本発明の実施例1~12のように、それぞれのリンゴカルス、クコの実カルス、ブドウカルスを200~2000barで高圧ホモジナイザーを用いて破砕した植物カルス均質破砕物を含む場合、およびカプセル剤形である実施例13の場合は、同じ植物カルスの熱水抽出物を使用した比較例1~3、および破砕圧力が本発明の範囲を超える比較例4および5に比べて、抗酸化能が著しく優れていることが確認された。
【0174】
特に、本発明の実施例1~13のすべての試料は、陽性対照群であるアスコルビン酸と比較しても、ラジカル消去能が著しく優れていた。
【0175】
<実験例7:フラボノイド含有量の評価>
実施例1~13及び比較例1~5の試料をそれぞれ10mlで準備した後、0.2μmシリンジフィルター(syringe filter)でろ過して検体を用意した。総ポリフェノール含有量は、フォーリンチオカルト法(Folin-Denis法、Gutfinger R.1981)により測定した。各試料の1mgを蒸留水1mLに溶解し、蒸留水で10倍希釈した希釈液2mLに0.2mLのフォーリンチオカルトフェノール試薬(Folin-Ciocalteu’s phenol reagent)を加えて混合した後、室温で3分間放置した。次いで、2mLの2M Na2CO3を入れて1時間反応させた後、上澄み液をマイクロプレートリーダー(microplate reader)を用いて725nmで測定し、没食子酸(gallic acid)を用いて作成
した標準曲線から含有量を求めた。その結果を下表8に示した。
【0176】
<実験例8:テルペノイド含有量の評価>
実施例1~13及び比較例1~5の試料をそれぞれ10mlで準備した後、0.2μmシリンジフィルター(syringe filter)でろ過して検体を用意した。各試料を-20℃で48時間凍結乾燥させた後、凍結乾燥物を石油エーテル(60~80℃)で抽出した。抽出物をろ過濃縮後、濃縮物の分取量(画分)を、ベンゼン-酢酸エチル(99:1)溶媒を使用してシリカゲルC上の薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析した。試料は、ガラスカラム(2m×5mmOD)を使用してガスクロマトグラフィー(島津GC-7A、京都、日本)により分析した。アルテミシニン(artemisinin)を使用し標準曲線を用いて定量化を行い、総テルペノイド含有量は、メタノール-水(80:20)溶離液(0.8mL/分)を使用してHPLCにより測定した。その結果を下表8に示した。
【0177】
【0178】
上表8から分かるように、本発明の実施例1~13のすべては、比較例1~5に比べてフラボノイド及びテルペノイドなどの皮膚有効成分の含有量が著しく優れていた。
【0179】
<実験例9:剤形の安定性評価>
実施例12と13および比較例3の試料の光に対する安定性を下記のような方法で評価した。各試料を1つ当たり30mlずつ分取し、4個を準備した後、遮光および透光容器に入れ、照度1000±200lux、温度25±2℃(常温)を保つ恒温器に保管して、2週間間隔で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。高速液体クロマトグラフィーによるレスベラトロール(resveratrol)分析のために、各試料0.1gをとり、100%純度のメタノール10mLに溶解させた後、超音波破砕機で10秒ずつ3回粉砕し、12時間抽出し、次いで、遠心分離し、有機溶媒用の0.2μmナイロンフ
ィルターでろ過して検体液を製造した。
【0180】
検液及び標準液の各10μLを使用して、以下の操作条件での液体クロマトグラフ法により試験を行い、レスベラトロール(C14H12NO3)のピーク面積AT(Test
area:検体試料のピーク面積)およびAS(Standard area:標準試料のピーク面積)を測定した。
【0181】
<式4>
レスベラトロール(C14H12NO3)の量(mg)=レスベラトロール標準品の量(mg)×AT/AS
【0182】
[操作条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長305nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したカラムまたは同等のコラム
カラム温度:室温
移動相:0.1%TFA water:アセトニトリル=70:30
流量:1.0mL/分
【0183】
【0184】
上表9から分かるように、実施例12で製造されたブドウカルス破砕物におけるレスベラトロールは、比較例3のブドウカルス熱水抽出物におけるレスベラトロールよりも高い残存量を維持することが観察された。また、実施例13のように、植物カルス破砕物を寒天で被覆したカプセル剤形に適用したとき、レッズベラトロールの安定性が著しく改善されることが確認された。
【0185】
本発明の単純な変形ないし変更は、この分野の通常の知識を有する者により容易に実施でき、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。