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特許7129111カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料とそれらのOLEDにおける使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料とそれらのOLEDにおける使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20220825BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C09K11/06 655
H05B33/14 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020556882
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2018111933
(87)【国際公開番号】W WO2019200875
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】201810339446.5
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】唐 本忠
(72)【発明者】
【氏名】趙 祖金
(72)【発明者】
【氏名】劉 慧君
(72)【発明者】
【氏名】秦 安軍
(72)【発明者】
【氏名】胡 蓉蓉
(72)【発明者】
【氏名】王 志明
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107641117(CN,A)
【文献】Jingjing Guo et al.,"Achieving High-Performance Nondoped OLEDs with Extremely Small Efficiency Roll-Off by Combining Aggregation-Induced Emission and Thermally Activated Delayed Fluorescence",Advanced Functional Materials,Vol.27, No.13,2017年,p.1606458,特に、図1、p.1606458(2 of 9)の左欄下から2行目~右欄10行を参照。DOI:http://dx.doi.org/10.1002/adfm.201606458
【文献】Jingjing Guo et al.,"Robust Luminescent Materials with Prominent Aggregation-Induced Emission and Thermally Activated Delayed Fluorescence for High-Performance Organic Light-Emitting Diodes",Chemistry of materials,American Chemical Society,2017年,Vol.29, No.8,p.3623-3631,DOI:http://dx.doi.org/10.1021/acs.chemmater.7b00450
【文献】Jian Huang et al.,"Highly Efficient Nondoped OLEDs with Negligible Efficiency Roll-Off Fabricated from Aggregation-Induced Delayed Fluorescence Luminogens",Angewandte Chemie International Edition,2017年,Vol.56, No.42,p.12971-12976,DOI:http://dx.doi.org/10.1002/anie.201706752
【文献】Huijun Liu et al.,"High-Performance Non-doped OLEDs with Nearly 100% Exciton Use and Negligible Efficiency Roll-Off",Angewandte Chemie International Edition,2018年07月20日,Vol.57, No.30,p.9290-9294,DOI:http://dx.doi.org/10.1002/anie.201802060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11
C07D413
H01L51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の構造を有するカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料であって、
【化2】

の1~4のいずれかであることを特徴とするカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント材料を調整するための方法であって、
p-フルオロベンゾイルクロリド及び芳香環誘導体RHを原料として使用して、フリーデルクラフツ反応によって有機フッ化物を得る工程と、強アルカリ触媒の作用下で、有機フッ化物を芳香環誘導体RHと反応させて、カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を得る工程と、を含み、
前記R HにおけるR は、以下の式:
【化3】

であり、
前記R HにおけるR は、以下の式:
【化4】

である、有機エレクトロルミネセント材料を調製するための方法。
【請求項3】
請求項1に記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料の有機エレクトロルミネセント分野における使用。
【請求項4】
請求項1に記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料の有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電材料の技術分野に属し、特に、カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料及び有機エレクトロルミネセント分野におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLEDs)としても知られる有機エレクトロルミネセントデバイスは、電気エネルギーを光エネルギーに変換する有機半導体材料に基づくデバイスの一種である。1987年のDeng Qingyun博士らの先駆的な研究に続いて、OLEDsはフラットパネルディスプレイとソリッドステート照明で幅広いアプリケーションの見通しを示しており、学界と産業界で大きな関心と幅広い関心を呼んでいる。OLEDsデバイスの包括的な性能は、有機発光材料に直接関係しているため、新しく優れた有機エレクトロルミネセント材料の開発は、OLEDsの分野における研究のホットスポットになっている。
【0003】
従来の蛍光材料をベースにしたOLEDsでは、一重項励起子の25%のみが発光に使用でき、三重項励起子の75%が非放射形態で放散されるため、効率が非常に低くなる。三重項励起子の75%を最大限に活用するために、研究者は第2世代の発光材料(遷移金属複合リン光材料)を開発した。このようなリン光材料をベースにしたOLEDsドープデバイスは、一重項と三重項の励起子を同時に使用できるため、デバイスの効率が大幅に向上するが、リン光材料に使用される金属は高価で安定性が低く、デバイスの効率のロールオフが厳しく、エレクトロルミネセントデバイスへの実用化に制限されている。2012年、九州大学Adachi教授の研究グループは、第3世代の有機発光材料である純粋な有機熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を開発した。ドープされたOLEDsデバイスでは、これらの材料は電気励起によって形成された一重項と三重項の励起子を最大限に活用でき、高いデバイス効率も達成できるが、効率のロールオフは厳しく、既存の純粋な有機TADF材料の種類は単一である。同時に、これらのTADF材料は、凝集誘起発光消光(ACQ)効果の影響も受け、固体発光効率が低くなり、対応するデバイスの性能がある程度低下する。
【0004】
2001年、唐本忠の研究グループは、単一分子状態では一部の発光分子は弱く発光するが、凝集後、これらの分子の発光が大幅に強化されるという新しい概念を報告した。これは「凝集誘起発光」(AIE)と呼ばれ、発光材料のACQ問題を解決するための新しいアイデアを提供する。それ以来、すべての可視光の色をカバーする高効率の固体発光を備えたAIE材料が開発されてきた。これらの材料に基づいて、研究者は、単純なデバイス構造と低効率のロールオフを備えた比較的高効率の非ドープOLEDsを製造した。ただし、これらの材料は通常蛍光材料であり、発光するため、一重項励起子のみを使用できる。デバイスの効率にはまだまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記の欠点及び欠陥を克服するために、本発明の主な目的は、カルボニル基を含むあるクラスの有機エレクトロルミネセント材料を提供することである。この材料は、AIEと遅延蛍光の両方の特性を備えており、希薄溶液中では弱く発光し、遅延蛍光はほとんど観察されないが、凝集状態で発光が増強され、有意な遅延蛍光を示す。本発明の有機エレクトロルミネセント材料は、高効率固体発光、高電気励起利用率、及び双極性の特徴を有し、高効率、低効率ロールオフ、及び非ドープ有機エレクトロルミネセントデバイスを調製することができる。
【0006】
本発明の別の目的は、上記のカルボニル含有有機エレクトロルミネセンス材料を調製するための方法を提供することである。本発明の方法は、単純なプロセス、容易に得られる原材料、及び高収率という特徴を有する。
【0007】
本発明の別の目的は、有機エレクトロルミネセンスの分野における上記のカルボニル含有有機エレクトロルミネセンス材料の用途、特に有機エレクトロルミネセンスデバイスの用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の解決策を通じて達成される。
【0009】
カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料は、式I:
【化1】

又は式II:
【化2】

の構造を持つ。
ここで、R、R 及びRはそれぞれ芳香環誘導体の異なる電子供与基である。R、R は、正孔輸送ホスト材料の電子供与基又は双極輸送ホスト材料の電子供与基である。
【0010】
上記のRは、次の1~32のいずれかである。
【化3】

ここで、Rは水素原子又はアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数である。
【0011】
上記のR は33~57の構造である。
【化4】

ここで、Rは水素原子又はアルキル基であり、nは0から10までの自然数である。
【0012】
上記のRは、次のaからoまでの構造のいずれかである。
【化5】

ここで、Rは水素原子又はアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数である。
【0013】
本発明によって提供されるR及びR は両方とも、電子供与基を有する正孔輸送ホスト材料又は電子供与基及び電子吸引基の両方を有する双極輸送ホストを含み、有機エレクトロルミネセンスデバイスを調製するためのホスト材料である。これらの官能基は、優れた電荷輸送特性を備えており、エレクトロルミネセントデバイスの性能を向上させる。R及びR は、それぞれ片側接続と両側接続を表す。Rは、芳香環誘導体に一般的に使用される電子供与基である。
【0014】
上記のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を調製するための方法は、p-フルオロベンゾイルクロリド及び芳香環誘導体RH又はHR Hを原料として使用して、フリーデルクラフツ反応によって有機フッ化物を得る工程と、強アルカリ触媒の作用下で、有機フッ化物を芳香環誘導体RHと反応させて、カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を得る工程と、を含む。RH又はHR HのR、R は、それぞれ式I及び式IIの同じものに対応し、RHのRは、式I及び式IIのRに対応する。
【0015】
上記の強アルカリ触媒は、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、強塩基NaHなどである。
【0016】
本発明では、ベンゾイル基の両側に異なる電子供与基を接続することにより、得られる分子構造が歪められ、凝集状態の分子間に強いπ-π相互作用を形成することは容易ではない。さらに、電子供与(D)-電子吸引(A)及び歪められる分子構造は、最高占有軌道(HOMO)と最低非占有軌道(LUMO)の空間分布を分離するのに役立つ。これにより、分子は小さな一重項-三重項エネルギーレベル差(ΔEST)を持つ傾向があり、結果として得られる材料は、AIE及び遅延蛍光の特徴を同時に有するため、本発明の材料は、高効率の固体発光、高電気励起利用率、及び双極性の特徴を有する。このような材料に基づいて、低効率ロールオフ、及び非ドープ有機エレクトロルミネセントデバイスを調製することができ、有機エレクトロルミネセントの分野で幅広い用途が見込まれ、フラットパネルディスプレイ及びソリッドステート照明で広く使用されることが期待される。
【0017】
本発明の材料は、一重項及び三重項励起子を十分に利用して、凝集状態の励起子の消滅問題を効果的に軽減し、単純かつ効率的な合成方法、優れた熱安定性及び電気化学的安定性により、このタイプの材料の大規模な合成と精製を可能にし、大きな開発の見通しがある。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本発明は、以下の利点及び有益な効果を有する。
【0019】
(1)本発明のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料は、AIE及び遅延蛍光特性の両方を有し、高効率固体発光、高電気励起利用率、及び双極性の特徴を有し、高効率、低効率ロールオフ、及び非ドープ有機エレクトロルミネセントデバイスを調製することができる。
【0020】
(2)本発明のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料は、合成方法が簡単で、原料が入手しやすく、収率が高く、得られた材料は、安定した構造であり、保管が簡単である。
【0021】
(3)本発明のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料は、優れたエレクトロルミネセンス性能を有し、有機エレクトロルミネセンスなどの分野で広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
図2】実施例1のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。
図3】実施例2のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
図4】実施例2のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。
図5】実施例3のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
図6】実施例3のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。
図7】実施例4のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。
図8】実施例4のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、実施例及び図面と併せて以下でさらに詳細に説明されるが、本発明の実施はそれに限定されない。以下の例で使用される試薬はすべて市販されている。
【0024】
実施例1:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(DCB-BP-PXZ)の調製:
【0025】
【化6】
【0026】
合成ルートは次のとおりである。
【0027】
【化7】
【0028】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.232g、1.46mmol)とDCB(0.716g、1.75mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタン溶液に溶解し、よく混合し、AlCl(0.557g、2.04mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応させ(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、70%の収率で白色の固体DCB-BP-Fを得る。
【0029】
(2)中間体DCB-BP-F(0.36g、0.68mmol)及びフェノキサジン(化合物2)(0.15g、0.81mmol)を20mLの超脱水DMFに溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.153g、1.36mmol)を加え、120℃に加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、黄緑色の最終生成物DCB-BP-PXZを取得する。収率は84%である。
【0030】
H NMR(500MHz、CDCl)δ8.78(s、1H)、8.27(d、J=10.3Hz、1H)、8.23-8.16(m、2H)、8.16-7.93(m、3H)、7.92-7.78(m、4H)、7.69-7.38(m、10H)、7.39-7.29(m、2H)、7.04-6.69(m、6H)、6.05(m、2H)。
【0031】
実施例2:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(CBP-BP-PXZ)の調製
【0032】
【化8】
【0033】
合成ルートは次のとおりである。
【0034】
【化9】
【0035】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.476g、3.0mmol)とCBP(1.745g、3.60mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタン溶液に溶解し、よく混合し、AlCl(0.56g、4.2mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応させ(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、75%の収率で白色の固体CBP-BP-Fを得る。
【0036】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.232g、1.46mmol)とDCB(0.716g、1.75mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタン溶液に溶解し、よく混合し、AlCl(0.272g、2.04mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応させ(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、70%の収率で白色の固体DCB-BP-Fを得る。
【0037】
H NMR(500MHz、CDCl)δ8.77(s、1H)、8.25(d、J=7.8Hz、1H)、8.18(d、J=7.7Hz、2H)、8.11(d、J=7.9Hz、2H)、8.04(d、J=8.6Hz、1H)、8.00-7.91(m、4H)、7.74(d、J=7.9Hz、4H)、7.63-7.49(m、7H)、7.49-7.38(m、3H)、7.37-7.29(m、2H)、6.82-6.55(m、6H)、6.06(m、2H)。
【0038】
実施例3:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(mCP-BP-PXZ)の調製
【0039】
【化10】
【0040】
合成ルートは次のとおりである。
【0041】
【化11】
【0042】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(1.11g、7.0mmol)及びmCP(3.43g、8.4mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタン溶液に溶解し、よく混合し、AlCl(1.307g、9.8mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応し(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、70%の収率で白色の固体mCP-BP-Fを得る。
【0043】
(2)中間体mCP-BP-F(0.739g、1.5mmol)及びフェノキサジン(0.343g、1.875mmol)を20mLの超脱水DMF溶液に溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.337g、3.0mmol)を添加する。120℃に加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、最終生成物mCP-BP-PXZを得る。収率は83%である。
【0044】
H NMR(500MHz、CDCl)δ8.75(d、J=1.3Hz、1H)、8.23(d、J=7.7Hz、1H)、8.19-8.13(m、2H)、8.12-8.06(m、2H)、8.05-7.99(m、1H)、7.94-7.87(m、1H)、7.86-7.83(m、1H)、7.81-7.76(m、1H)、7.74-7.70(m、1H)、7.63-7.49(m、7H)、7.48-7.42(m、2H)、7.42-7.36(m、1H)、7.35-7.29(m、2H)、6.75-6.62(m、6H)、6.09-6.00(m、2H)。
【0045】
実施例4:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(mCBP-BP-PXZ)の調製
【0046】
【化12】
【0047】
合成ルートは次のとおりである。
【0048】
【化13】
【0049】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.396g、2.5mmol)及びmCBP(1.454g、3.0mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタンに溶解し、よく混合し、AlCl(0.467g、3.5mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応し(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、白色固体mCBP-BP-Fを得る。収率は73%である。
【0050】
(2)中間体mCBP-BP-F(0.8g、1.2mmol)及びフェノキサジン(0.274g、1.5mmol)を20mLの超脱水DMFに溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.269g、2.4mmol)を添加する。120℃に加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、黄緑色の最終生成物mCBP-BP-PXZを得る。収率は90%である。
【0051】
H NMR(500MHz、CDCl)δ8.76(d、J=1.4Hz、1H)、8.22(d、J=7.8Hz、1H)、8.18-8.12(m、2H)、8.11-8.05(m、2H)、8.02-7.97(m、1H)、7.91-7.85(m、2H)、7.83-7.78(m、1H)、7.78-7.69(m、3H)、7.65-7.58(m、 2H)、7.56-7.33(m、10H)、7.33-7.27(m、2H)、6.75-6.63(m、6H)、6.09-6.00(m、2H)。
【0052】
実施例5:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(TCTA-BP-PXZ)の調製
【0053】
【化14】
【0054】
合成ルートは次のとおりである。
【0055】
【化15】
【0056】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.2378g、1.50mmol)及びTCTA(2.2268g、3.01mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタンに溶解し、よく混合し、AlCl(0.28g、2.1mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応し(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、白色固体TCTA-BP-Fを得る。収率は77.3%である。
【0057】
(2)中間体TCTA-BP-F(1.121g、1.3mmol)及びフェノキサジン(0.286g、1.56mmol)を20mLの超脱水DMFに溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.292g、2.6mmol)を添加した。120℃に加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、黄緑色の最終生成物TCTA-BP-PXZを得る。収率は90%である。
【0058】
HRMS(C7347):m/z1025.3733[M+,calcd1025.3730]。
【0059】
実施例6:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(TCTA-BP-DMAC)の調製
【0060】
【化16】
【0061】
合成ルートは次のとおりである。
【0062】
【化17】
【0063】
(1)p-フルオロベンゾイルクロリド(0.2378g、1.50mmol)及びTCTA(2.2268g、3.01mmol)を50mLの超脱水ジクロロメタンに溶解し、よく混合し、AlCl(0.28g、2.1mmol)をゆっくりと加える。室温で3時間反応し(合成ルートでは、r.t.は室温反応を意味する)、氷冷塩酸溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、白色固体TCTA-BP-Fを得る。収率は77.3%である。
【0064】
(2)中間体TCTA-BP-F(0.862g、1mmol)及びフェノキサジン(0.251g、1.2mmol)を20mLの超脱水DMFに溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.224g、2.0mmol)を添加した。120℃に加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、黄緑色の最終生成物TCTA-BP-DMACを得る。収率は66.6%である。
【0065】
HRMS(C7653O):m/z1051.4280[M+、calcd1051.4250]。
【0066】
実施例7:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(DCB-BP-PXZ)のOLEDsデバイス性能
【0067】
実施例1で調製したカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料DCB-BP-PXZ(固体蛍光量子高収率=69.0%)を、ドープ及び非ドープデバイスを調製するための発光材料として使用し、そのデバイス性能をテストして、特性を評価した結果を図1~2に示す。
【0068】
デバイス構造:ITO/TAPC(25nm)/emitter(30wt%):CBP(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(ドープ構造);
ITO/TAPC(25nm)/emitter(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(非ドープ構造)。
【0069】
図1は、実施例1のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、DCB-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの最大輝度が高く、開始電圧が低く、それぞれ、91981cd/m、2.7V及び95577cd/m、2.5Vであることがわかる。
【0070】
図2は、実施例1のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。図から、DCB-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの両方が良好な効率と低下した効率を持っていることがわかる。最大電流効率と外部量子効率は、それぞれ74.1cd/A、22.7%及び72.9cd/A、22.6%である。輝度が100cd/mの場合、外部量子効率は22.4%及び22.1%に維持される。輝度が1000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ22.0%及び21.5%である。輝度が10000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ18.8%及び18.7%である。
【0071】
実施例8:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(CBP-BP-PXZ)のOLEDsデバイス性能
【0072】
(2)中間体TCTA-BP-F(0.862g、1mmol)及び9,10-ジヒドロ-9,9-ジメチルアクリジン(0.251g、1.2mmol)を20mLの超脱水DMFに溶解し、3回換気した。窒素の保護下で、t-BuOK(0.224g、2.0mmol)を添加した。120°Cに加熱し、この温度で12時間反応させ、ジクロロメタンと水で抽出し、濃縮し、カラムを通して粉末を作り、黄緑色の最終生成物TCTA-BP-DMACを得る。収率は66.6%である。
【0073】
デバイス構造:ITO/TAPC(25nm)/emitter(30wt%):CBP(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(ドープ構造);
ITO/TAPC(25nm)/emitter(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(非ドープ構造)。
【0074】
図3は、実施例2のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、CBP-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの最大輝度が高く、開始電圧が低く、それぞれ76488cd/m、2.7V及び98089cd/m、2.5Vであることがわかる。
【0075】
図4は、実施例2のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。図から、CBP-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの両方が良好な効率と低下した効率を持っていることがわかる。最大電流効率と外部量子効率は、それぞれ81.2cd/A、25.1%及び69.0cd/A、21.4%である。輝度が100cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ24.8%及び21.1%である。輝度が1000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ23.6%及び21.0%である。輝度が10000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ20.0%及び17.5%である。
【0076】
実施例9:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(mCP-BP-PXZ)のOLEDsデバイス性能
【0077】
実施例3で調製されたカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料mCP-BP-PXZ(固体蛍光量子高収率=66.0%)を、ドープ及び非ドープデバイスを調製するための発光材料として使用し、そのデバイス性能をテストして、特性を評価した結果を図5~6に示す。
【0078】
デバイス構造:ITO/TAPC(25nm)/emitter(30wt%):CBP(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(ドープ構造);
ITO/TAPC(25nm)/emitter(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(非ドープ構造)。
【0079】
図5は、実施例3のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、mCP-BP-PXZのドープ及び非ドープデバイスの最大輝度が高く、開始電圧が低く、それぞれ80873cd/m、2.7V及び100126cd/m、2.5Vであることがわかる。
【0080】
図6は、実施例3のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。図から、mCP-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの両方が良好な効率と低下した効率を持っていることがわかる。最大電流効率と外部量子効率は、それぞれ74.3cd/A、22.7%及び72.3cd/A、22.1%である。輝度が100cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ24.8%及び21.2%である。輝度が1000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ23.6%及び21.0%である。輝度が10000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ18.1%及び18.4%である。
【0081】
実施例10:カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料(mCBP-BP-PXZ)のOLEDsデバイス性能
【0082】
実施例4で調製されたカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料mCBP-BP-PXZ(固体蛍光量子高収率=71.2%)を、ドープ及び非ドープデバイスを調製するための発光材料として使用し、そのデバイス性能をテストして、特性を評価した結果を図7~8に示す。
【0083】
デバイス構造:ITO/TAPC(25nm)/emitter(30wt%):CBP(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(ドープ構造);
ITO/TAPC(25nm)/emitter(35nm)/TmPyPB(55nm)/LiF(1nm)/Al(非ドープ構造)。
【0084】
図7は、実施例4のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスのJ-V-Lグラフである。図から、mCBP-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの最大輝度が高く、開始電圧が低く、それぞれ79644cd/m、2.7V及び96815cd/m、2.5Vであることがわかる。
【0085】
図8は、実施例4のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を使用することによって調製されたドープ及び非ドープOLEDsデバイスの効率が輝度に従って変化することを示すグラフである。図から、mCP-BP-PXZベースのドープ及び非ドープデバイスの両方が良好な効率と低下した効率を持っていることがわかる。最大電流効率と外部量子効率は、それぞれ76.3cd/A、23.5%及び76.5cd/A、21.8%である。輝度が100cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ22.6%及び22.5%である。輝度が1000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ22.4%及び22.2%である。輝度が10000cd/mの場合、外部量子効率はそれぞれ18.5%及び18.3%である。
【0086】
上記のデータは、本発明では、ベンゾイル基の両側に異なる電子供与基を接続することにより、AIE及び遅延蛍光特性の両方を有する分子を得ることを表している。このような材料を発光層として使用して調製されたドープOLEDは、高い効率を有し、効率ロールオフの程度は小さい。そのような材料に基づいて調製された単純な構造の非ドープOLEDsデバイスは、開始電圧が低く、効率が高く、効率ロールオフの程度がさらに低くなる。要するに、このタイプの材料は、有機エレクトロルミネセンスの分野で非常に幅広い用途の見通しを持っている。
【0087】
本発明の有機エレクトロルミネセンス材料の構造は、好ましくは、
【化18】
である。
【0088】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は、上記の実施形態に制限されない。本発明の精神及び原理から逸脱することなく行われる他の変更、修正、置換、組み合わせなどすべてが同等の交換方法は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0089】
(付記)
(付記1)
式I:
【化19】

又は式II:
【化20】

の構造を有するカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料であって、
式IのRとRは異なり、式IIのR とRは異なり、R、R 及びRはそれぞれ芳香環誘導体の異なる電子供与基であり、R、R は、正孔輸送ホスト材料の電子供与基又は双極輸送ホスト材料の電子供与基であることを特徴とするカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【0090】
(付記2)
前記Rは、
【化21】

の1~32のいずれかであり、
は水素原子又はアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であることを特徴とする付記1に記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【0091】
(付記3)
前記R
【化22】

の33から57のいずれかの構造であり、
は水素原子又はアルキル基であり、nは0から10までの自然数であることを特徴とする付記1に記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【0092】
(付記4)
前記Rは、
【化23】

のaからoまでの構造のいずれかであり、
は水素原子又はアルキル鎖であり、nは0から10までの自然数であることを特徴とする付記1に記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【0093】
(付記5)
p-フルオロベンゾイルクロリド及び芳香環誘導体RH又はHR Hを原料として使用して、フリーデルクラフツ反応によって有機フッ化物を得る工程と、強アルカリ触媒の作用下で、有機フッ化物を芳香環誘導体RHと反応させて、カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を得る工程と、を備え、
H又はHR HのR、R は、それぞれ式I及び式IIのものに対応し、RHのRは、式I及び式IIのRに対応することを特徴とする付記1に記載されるカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を調製するための方法。
【0094】
(付記6)
付記1から4のいずれか一つに記載のカルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料の有機エレクトロルミネセント分野における用途。
【0095】
(付記7)
カルボニル基を含む有機エレクトロルミネセント材料を有機エレクトロルミネセンスデバイスに使用することを特徴とする付記6に記載の用途。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8