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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】新規化合物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/08 20060101AFI20220825BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 35/618 20150101ALI20220825BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220825BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C07D493/08 B CSP
A61K31/357
A61K35/618
A61P25/30
A61P25/36
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021515102
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2019111538
(87)【国際公開番号】W WO2020114096
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】201811482596.8
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519030914
【氏名又は名称】グアンシー ジュフー バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ルアン ジュン
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107868092(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107865890(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107865889(CN,A)
【文献】特表2011-525550(JP,A)
【文献】CARMELY, S. et al.,Neviotine-A, a New Triterpene from the Red Sea Sponge Siphonochalina siphonella,J. Org. Chem.,1986年,Vol. 51,pp. 784-788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/08
A61K 31/357 - 35/618
A61P 25/30 - 25/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造は、
【化1】
であることを特徴とする新規化合物。
【請求項2】
不斉炭素の立体配置は、C3,R、C6,S、C7,S、C10,S、C11,R、C12,R、C13,R、C14,R、C15,S、C18,S、C19,S、および、C22,Rであることを特徴とする請求項1に記載の新規化合物。
【請求項3】
分子式はC365810であり、分子量は650であり、融点は228~229℃であり、溶解性は、水に不溶であり、酸、塩基に難溶であり、酢酸エチル、酢酸に易溶であり、メタノール、エタノール、アセトン、および、クロロホルムに可溶であり、白色の針状結晶であることを特徴とする請求項1に記載の新規化合物。
【請求項4】
超臨界二酸化炭素抽出法又は溶媒抽出法を含むことを特徴とする請求項1に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項5】
前記新規化合物はナメクジから抽出及び分離され、
前記超臨界二酸化炭素抽出法は、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、粉砕して、粉状ナメクジを得るステップと、
R2.粉状ナメクジを超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出が完了すると抽出物を取り出すステップと、
R3.抽出物に植物油を加え、加熱し均一に攪拌した後、放冷し、静置し、濾過して、沈殿物を得、洗浄溶媒を加えて沈殿物を洗浄し、乾燥して、乾燥沈殿物を得るステップと、
R4.乾燥沈殿物に結晶化溶媒を加え、加熱して溶解させた後、放冷し、静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、再結晶を行い、乾燥して、前記新規化合物を得るステップとを含むことを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項6】
ステップR1で前記粉砕とは10~30メッシュに粉砕することを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項7】
ステップR2で前記二酸化炭素抽出の条件は、圧力20~30Pa、温度60~70℃であり、抽出時間は3~5時間であることを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項8】
ステップR3で前記植物油はチャ種子油、ユチャ種子油、大豆油又はオリーブ油であり、
前記植物油を加える時、使用量の比率は重量比で「抽出物:植物油=2~6:1~3」であり、
加熱温度は60~80℃であり、
静置時間は7~10日であり、
前記洗浄溶媒はノルマルヘキサン又は石油エーテルであり、3~5回洗浄し、毎回、200~500mL使用することを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項9】
ステップR4で前記結晶化溶媒はメタノール、アセトン、酢酸エチル又はクロロホルムであり、加える量は乾燥沈殿物の重量の3~10倍であり、静置時間は7~10日であることを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項10】
前記新規化合物はナメクジから抽出及び分離され、
前記溶媒抽出法は、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、粉砕して、粉状ナメクジを得るステップと、
S2.粉状ナメクジに溶媒を加え、加熱して還流させて抽出し、濾過し、減圧下で濾液から溶媒を完全に回収して、固練りを得るステップと、
S3.固練りをシリカゲルカラムにロードし、溶離溶媒を加えて溶離し、溶離液を収集し、減圧下で溶離溶媒を回収して、ペースト状物質を得るステップと、
S4.ペースト状物質に溶解溶媒を加え、加熱して完全に溶解すると、放冷し、冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液から溶解溶媒を回収し、静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶を得、再結晶を行い、乾燥して、前記新規化合物を得るステップとを含むことを特徴とする請求項に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項11】
ステップS1で前記粉砕とは10~30メッシュに粉砕することであることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項12】
ステップS2で前記溶媒はエタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、ノルマルヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル、および、酢酸エチルのうちの1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項13】
ステップS2で加熱して還流させて抽出することは、加熱して還流させて抽出するのを1~3回行い、毎回、5~15倍の量の溶媒を加え、1~3時間還流させて抽出することであることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項14】
ステップS3でシリカゲルカラムにロードすることは具体的に、固練りにその重量の4~6倍のシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、固練りの重量の2~4倍のシリカゲルが予め充填されたカラムにロードすることであることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項15】
ステップS3で前記溶離溶媒はメタノール、アセトン又は酢酸エチルであり、溶離溶媒の使用量は、溶離溶媒の体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1.5~3:1~2であることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項16】
ステップS4で前記溶解溶媒はメタノール又はエタノールであり、加える量はペースト状物質の体積の4~8倍であり、冷蔵温度は2~10℃であり、時間は24時間であり、減圧下で前記濾液から溶媒を回収することは、原体積の50%~60%になるまで行われ、静置時間は7~10日であることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項17】
ステップS3で前記溶離溶媒を加えて溶離する前に、予溶離ステップがあり、前記予溶離溶媒は石油エーテル又はノルマルヘキサンであり、予溶離溶媒の使用量は、予溶離溶媒の体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1~3:0.5~1.5であることを特徴とする請求項10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項18】
前記ナメクジは、アシヒダナメクジ(Vaginulus alte(Ferussac))、マダラコウラナメクジ(Limax maximus L.)、コウラナメクジ(L.flavus L.)、ノナメクジ(Agriolimax agrestis L.)、および、ナメクジ(Phiolomycus bilineatus)のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項5又は10に記載の新規化合物の製造方法。
【請求項19】
離脱症状又は離脱様症状を予防又は治療するための医薬品、健康食品、および、食品を製造するための請求項1に記載の新規化合物の使用。
【請求項20】
モルヒネ依存動物の離脱症状を抑制する医薬品、健康食品、および、食品を製造するための請求項1に記載の新規化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬の分野に関し、具体的には、新規化合物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
麻薬とは医療以外の目的で繰り返し使用すると依存性(嗜癖性)を生じさせる医薬品である。麻薬常用者がますます増えており、年齢も低年齢化する傾向があり、中国だけで麻薬常用者の人数が1400万余りであり、全世界の麻薬常習者は2~4億人に上っている。麻薬は世界に与える被害がますます深刻になり、その種類も、アヘン、大麻からヘロイン、ケタミン、メタンフェタミンに多様化してきている。麻薬の濫用は身体的又は精神的健康に害を与えるだけでなく、経済発展や社会進歩を妨げる大きな要因の一つでもある。
【0003】
麻薬依存治療とは麻薬常用者に麻薬を使用又は注射する行為を停止させ嗜癖を断ち切ることである。麻薬常習者に対する麻薬依存治療は一般に、解毒、回復、社会復帰のための指導の3つの段階を含む。従来の麻薬依存治療として、自然離脱、薬物離脱及び非薬物離脱の3種がある。自然離脱は強制的な麻薬依存治療であり、人情味に欠ける。薬物離脱は、薬物解毒治療とも呼ばれ、麻薬常習者に離脱薬物を投与し、代替や用量の漸次的な低減などの方法により、麻薬常習者の離脱症状や苦しみを軽減することにより、段階的に解毒を実現していく麻薬依存治療であり、麻薬依存治療で最も重要な方法である。麻薬依存治療によく使用する薬物は、オピオイド薬、非オピオイド薬、漢方薬の3種類に分かれる。いずれの麻薬依存治療にしても、生理的に又は心理的に治療対象を麻薬から離脱させることが難しく、嗜癖の再発や麻薬の再使用が付き物である。これに関しては効果的な解決方法がまだ見つからない。したがって、麻薬依存治療、麻薬禁止が世界的な難題になり、安全で依存性のない麻薬依存治療薬物を見つけるために人々が努力を惜しまない。
【0004】
漢方薬による麻薬依存治療は古くから行われており、メサドン、ナルトレキソン(オピオイド薬)などを用いる従来の一般的な代替治療よりもコンプライアンスに優れ、嗜癖を誘発せず、長期化する症状に的確な効果があり、成功率(麻薬依存治療後に再使用しない麻薬常習者の比率)が高いといった特徴がある。現状では、麻薬依存治療に使用する漢方薬の多くは古くから伝わる麻薬依存治療の処方を元に作り替えた配合製剤であり、有効成分が多く複雑であり、麻薬依存治療の機序が解明しておらず、薬理学及び毒性学に関する研究が少ないため、漢方薬による麻薬依存治療配合製剤の合理化、標準化、世界的な普及を制限している。したがって、単一の漢方薬に絞って有効成分及び麻薬依存治療の機序を研究することは、漢方薬による麻薬依存治療の開発や適用に役立つと考えられる。
【0005】
ナメクジ(Limax)は有肺類の軟体動物であり、腹足綱ナメクジ科に属し、体表が粘液に包まれる。漢方医の観点では、ナメクジは「塩味で寒性のもので、肺、肝臓、大腸に作用し、風熱の邪気を取り払い落ち着きを取り戻し、体内の熱を清め解毒することが効能であり、中風後の顔面神経麻痺や半身不随、血管や筋肉の痙攣、てんかん、喘息、喉頭麻痺、咽頭腫脹、悪性の腫物、喀痰、痔に伴う腫れや痛みが適応症である。漢方医ではナメクジが古くから腫瘍、喘息、気管支炎などの治療に用いられ、現代的な研究によりタンパク質、多糖類など様々な成分が含まれることに加え、薬理学的な研究により抗腫瘍、喘息緩和をはじめその様々な効能が判明する。近年、ナメクジ抽出物の効能研究は抗腫瘍及び呼吸器疾患の分野に集中し、中でも抗腫瘍に関する研究は中国のみならず海外の研究者からも注目を集めている。本発明者が民間では特に効果があると考えられる漢方薬処方や、秘伝の処方を研究したところ、ナメクジ抽出物に麻薬依存治療の効果があることを発見し、関連の研究を行うために、ナメクジ抽出物から関連の有効成分を抽出及び分離している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、麻薬依存治療用漢方薬の一層の研究及び開発のために、新規化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用する技術的解決手段は以下のとおりである。
新規化合物であって、
構造は、
【化1】
である。
【0008】
さらに、前記新規化合物における不斉炭素の立体配置は、C3,R、C6,S、C7,S、C10,S、C11,R、C12,R、C13,R、C14,R、C15,S、C18,S、C19,S、および、C22,Rである。
【0009】
さらに、前記新規化合物の分子式はC365810であり、分子量は650であり、融点は228~229℃であり、溶解性は、水に不溶であり、酸、塩基に難溶であり、酢酸エチル、酢酸に易溶であり、メタノール、エタノール、アセトン、および、クロロホルムに可溶であり、白色の針状結晶である
【0010】
さらに、前記新規化合物はナメクジから抽出及び分離されるものである。前記ナメクジは、アシヒダナメクジ(Vaginulus alte(Ferussac))、マダラコウラナメクジ(Limax maximus L.)、コウラナメクジ(L. flavus L.)、ノナメクジ(Agriolimax agrestis L.)、および、ナメクジ(Phiolomycus bilineatus)のうちの1種以上を含む。
【0011】
前記新規化合物の製造方法であって、超臨界二酸化炭素抽出法又は溶媒抽出法を含む。
【0012】
さらに、前記新規化合物はナメクジから抽出及び分離される。
前記新規化合物の製造方法で前記超臨界二酸化炭素抽出法は、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、粉砕して、粉状ナメクジを得るステップと、
R2.粉状ナメクジを超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出が完了すると抽出物を取り出すステップと、
R3.抽出物に植物油を加え、加熱し均一に攪拌した後、放冷し、静置し、濾過して、沈殿物を得、洗浄溶媒を加えて沈殿物を洗浄し、乾燥して、乾燥沈殿物を得るステップと、
R4.乾燥沈殿物に結晶化溶媒を加え、加熱して溶解させた後、放冷し、静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、再結晶を行い、乾燥して、前記新規化合物を得るステップとを含む。
前記ナメクジは、アシヒダナメクジ(Vaginulus alte(Ferussac))、マダラコウラナメクジ(Limax maximus L.)、コウラナメクジ(L.flavus L.)、ノナメクジ(Agriolimax agrestis L.)、および、ナメクジ(Phiolomycus bilineatus)のうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0013】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップR1で前記粉砕とは10~30メッシュに粉砕することである。
【0014】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップR2で前記二酸化炭素抽出の条件は、圧力20~30Pa、温度60~70℃であり、抽出時間は3~5時間である。
【0015】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップR3で前記植物油はチャ種子油、ユチャ種子油、大豆油又はオリーブ油であり、
前記植物油を加える時、使用量の比率は重量比で「抽出物:植物油=2~6:1~3」であり、
加熱温度は60~80℃であり、
静置時間は7~10日であり、
前記洗浄溶媒はノルマルヘキサン又は石油エーテルあり、3~5回洗浄し、毎回、200~500mL使用する。
【0016】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップR4で前記結晶化溶媒はメタノール、アセトン、酢酸エチル又はクロロホルムであり、加える量は乾燥沈殿物の重量の3~10倍であり、静置時間は7~10日である。
【0017】
さらに、前記新規化合物はナメクジから抽出及び分離される。
前記新規化合物の製造方法で前記溶媒抽出法は、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、粉砕して、粉状ナメクジを得るステップと、
S2.粉状ナメクジに溶媒を加え、加熱して還流させて抽出し、濾過し、減圧下で濾液から溶媒を完全に回収して、固練りを得るステップと、
S3.固練りをシリカゲルカラムにロードし、溶離溶媒を加えて溶離し、溶離液を収集し、減圧下で溶離溶媒を回収して、ペースト状物質を得るステップと、
S4.ペースト状物質に溶解溶媒を加え、加熱して完全に溶解すると、放冷し、冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液から溶解溶媒を回収し、静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶を得、再結晶を行い、乾燥して、前記新規化合物を得るステップとを含む。
前記ナメクジは、アシヒダナメクジ(Vaginulus alte(Ferussac))、マダラコウラナメクジ(Limax maximus L.)、コウラナメクジ(L.flavus L.)、ノナメクジ(Agriolimax agrestis L.)、および、ナメクジ(Phiolomycus bilineatus)のうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0018】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップS1で前記粉砕とは10~30メッシュに粉砕することである。
【0019】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップS2で前記溶媒はエタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、ノルマルヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル、および、酢酸エチルのうちの1種又は2種以上の組み合わせであり、
加熱して還流させて抽出することは、加熱して還流させて抽出するのを1~3回行い、毎回、5~15倍の量の溶媒を加え、1~3時間還流させて抽出することである。
【0020】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップS3でシリカゲルカラムにロードすることは具体的に、固練りにその重量の4~6倍のシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、固練りの重量の2~4倍のシリカゲルが予め充填されたカラムにロードすることであり、
前記溶離溶媒はメタノール、アセトン又は酢酸エチルであり、溶離溶媒の使用量は、溶離溶媒の体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1.5~3:1~2である。
【0021】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップS4で前記溶解溶媒はメタノール又はエタノールであり、加える量はペースト状物質の体積の4~8倍であり、冷蔵温度は2~10℃であり、時間は24時間であり、減圧下で前記濾液から溶媒を回収することは、原体積の50%~60%になるまで行われ、静置時間は7~10日である。
【0022】
さらに、前記新規化合物の製造方法で、ステップS3で前記溶離溶媒を加えて溶離する前に、予溶離ステップがあり、前記予溶離溶媒は石油エーテル又はノルマルヘキサンであり、予溶離溶媒の使用量は、予溶離溶媒の体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1~3:0.5~1.5である。
【0023】
離脱症状又は離脱様症状を予防又は治療する医薬品、健康食品、および、食品を製造するための前記新規化合物の使用である。
【0024】
モルヒネ依存動物の離脱症状を抑制する医薬品、健康食品、および、食品を製造するための前記新規化合物の使用である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る新規化合物は漢方薬ナメクジ(学名:AgrioIima agrestis)の抽出物に由来し、簡単な手順で漢方薬ナメクジの抽出物から分離されるものであり、同定後、3,12,13-トリアセチルリマクソルAと命名し、化学名は(3R,5aS,7aS,8R,9R,10R,10aR,10bS)-ドデカヒドロ-8-((S)-2-ヒドロキシ-4-((1S,2S,5R)-1,4,4-トリメチル-3,8-ジオキサ-ビシクロ[3.2.1]オクタン-2-イル)ブタン-2-イル)-4,4,7a,10b-テトラメチル-1H-インデノ[5,4-b]オキセピン-3,9,10-トリオール トリアセテートであり、英名は3,12,13-three acetyl limaxol Aである。薬理学実験を行ったところ、当該化合物は胃内投与から1時間後にモルヒネ依存動物の離脱跳躍症状に明らかな抑制効果が認められ、3時間後にも抑制効果が続きそうであることから、当該化合物は生理的な又は精神的な依存に対する解毒又は麻薬依存治療に明らかな効果があることが示され、解毒、麻薬依存治療又は類似の薬物依存治療を行うための医薬品、健康食品、食品の製造に際し、潜在的な利用価値が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明の新規化合物のX線結晶構造である。
図2図2は本発明の新規化合物のC-NMRスペクトルデータ、H-NMRスペクトルデータである。
図3図3は本発明の新規化合物のC-NMRスペクトルデータ、H-NMRスペクトルデータである。
図4図4は本発明の新規化合物のC-NMRスペクトルデータ、H-NMRスペクトルデータである。
図5図5は本発明の新規化合物のC-NMRスペクトルデータ、H-NMRスペクトルデータである。
図6図6は本発明の新規化合物の質量スペクトル(MS)データである。
図7図7は本発明の新規化合物の赤外吸収(IR)スペクトルデータである。
図8図8はメサドン、ナメクジ抽出物及び異なる用量の3,12,13-トリアセチルリマクソルAのモルヒネ離脱跳躍症状に対する抑制率である。 図中: 1はメサドン 20mg/kg(1時間)、 2は粗抽出物 10g/kg(1時間)、 3は3,12,13-トリアセチルリマクソルA 0.5g/kg(1時間)、 4は3,12,13-トリアセチルリマクソルA 0.25g/kg(1時間)、 5は3,12,13-トリアセチルリマクソルA 0.125g/kg(1時間)、 6は3,12,13-トリアセチルリマクソルA 0.5g/kg(3時間)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一.新規化合物
実施例1:
本発明は、新規化合物を提供し、その構造は具体的に、
【化2】
である。
【0028】
前記化合物に関する詳細な情報は次のとおりである。
(1)当該化合物は「3,12,13-トリアセチルリマクソルA」と命名され、英名は3,12,13-three acetyl limaxol Aである。
(2)当該化合物における不斉炭素の立体配置は、C3,R、C6,S、C7,S、C10,S、C11,R、C12,R、C13,R、C14,R、C15,S、C18,S、C19,S、および、C22,Rであり、その結晶構造は図1に示すとおりである。
(3)物理的・化学的性質及び各種スペクトルデータは次のとおりである。
(i)分子式:C365810、分子量650。
(ii)性状:白色の針状結晶。
(iii)融点:228~229℃。
(iv)溶解性:水に不溶、酸、塩基に難溶、酢酸エチル、酢酸に易溶、メタノール、エタノール、アセトン、および、クロロホルムに可溶。
(v)水素/炭素核磁気共鳴(H/C-NMR)データ:表1及び図2図5
【表1】
(vi)質量スペクトル(MS)データ:図6
(vii)赤外吸収(IR)スペクトルデータ:図7
【0029】
二.前記新規化合物の製造方法
実施例2:
前記前記新規化合物の製造方法(超臨界二酸化炭素抽出法)であって、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、30メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
R2.粉状ナメクジを50kg秤量し、超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出条件は圧力20Pa、温度60℃、流量400~500PVとし、抽出時間は3時間とし、抽出が完了すると抽出物を取り出して、軟膏状の抽出物2.9kgを得、一旦保管するステップと、
R3.前記抽出物に、重量比で「抽出物:チャ種子油=2:1」の比率でチャ種子油を加え(抽出物2.9kg、チャ種子油1.45kg)、これらを一緒に混合タンクへ入れ、60℃で加熱し均一に攪拌した後、放冷し、7日間静置して沈殿物が析出すると、濾過して、沈殿物198gを得、沈殿物に石油エーテルを加え加熱して3回洗浄し、毎回に200mL使用し、乾燥して、沈殿物123gを得るステップと、
R4.沈殿物にメタノール800mLを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、7日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、次に適量の酢酸エチルを加えて準結晶を溶解させ、濾過し、濾液を7日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶95.4gを得るステップとを含む。
【0030】
実施例3:
前記新規化合物の製造方法(超臨界二酸化炭素抽出法)であって、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、20メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
R2.粉状ナメクジを60kg秤量し、超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出条件は圧力25Pa、温度65℃、流量400~500PVとし、抽出時間は4時間とし、抽出が完了すると抽出物を取り出して、軟膏状の抽出物3.5kgを得、一旦保管するステップと、
R3.前記抽出物に、重量比で「抽出物:大豆油=4:2」の比率で大豆油を加え(抽出物3.5kg、大豆油1.75kg)、これらを一緒に混合タンクへ入れ、65℃で加熱し均一に攪拌した後、放冷し、8日間静置した後、濾過して、沈殿物235gを得、沈殿物にノルマルヘキサンを加えて3回洗浄し、毎回に300mL使用し、乾燥して、沈殿物151gを得るステップと、
R4.沈殿物に酢酸エチル500mLを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、8日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、次に適量の酢酸エチルを加えて準結晶を溶解させ、濾過し、濾液を8日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶116.0gを得るステップとを含む。
【0031】
実施例4:
前記新規化合物の製造方法(超臨界二酸化炭素抽出法)であって、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、20メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
R2.粉状ナメクジを100kg秤量し、超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出条件は圧力28Pa、温度68℃、流量400~500PVとし、抽出時間は4.5時間とし、抽出が完了すると抽出物を取り出して、軟膏状の抽出物5.9kgを得、一旦保管するステップと、
R3.前記抽出物に、重量比で「抽出物:オリーブ油=5:2.5」の比率でオリーブ油を加え(抽出物5.9kg、オリーブ油2.95kg)、これらを一緒に混合タンクへ入れ、70℃で加熱し均一に攪拌した後、放冷し、9日間静置した後、濾過して、沈殿物393gを得、沈殿物に120#ガソリン(120#gasoline(中国における「120号ガソリン」))を加えて4回洗浄し、毎回に400mL使用し、乾燥して、沈殿物255gを得るステップと、
R4.沈殿物にアセトン2200mLを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、9日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、次に適量の酢酸エチルを加えて準結晶を溶解させ、濾過し、濾液を9日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶196.1gを得るステップとを含む。
【0032】
実施例5:
前記新規化合物の製造方法(超臨界二酸化炭素抽出法)であって、
R1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、10メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
R2.粉状ナメクジを150kg秤量し、超臨界二酸化炭素抽出装置に入れて抽出し、抽出条件は圧力30Pa、温度70℃、流量400~500PVとし、抽出時間は5時間とし、抽出が完了すると抽出物を取り出して、軟膏状の抽出物8.7kgを得、一旦保管するステップと、
R3.前記抽出物に、重量比で「抽出物:ユチャ種子油=6:3」の比率でユチャ種子油を加え(抽出物8.7kg、ユチャ種子油4.36kg)、これらを一緒に混合タンクへ入れ、80℃で加熱し均一に攪拌した後、放冷し、10日間静置した後、濾過して、沈殿物581gを得、沈殿物にノルマルヘキサンを加えて5回洗浄し、毎回に500mL使用し、乾燥して、沈殿物372gを得るステップと、
R4.沈殿物にクロロホルム5000mLを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、10日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過して、準結晶を得、次に適量の酢酸エチルを加えて準結晶を溶解させ、濾過し、濾液を10日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶287.3gを得るステップとを含む。
【0033】
実施例6:
前記新規化合物の製造方法(溶媒抽出法)であって、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、20メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
S2.粉状ナメクジを100kg秤量し、多目的抽出タンクに入れ、ノルマルヘキサンを加え還流させて抽出するのを2回行い、1回目に10倍の量のノルマルヘキサンを加え、1.5時間還流させて抽出し、2回目に8倍の量のノルマルヘキサンを加え、1時間還流させて抽出し、濾過し、濾液を合わせ、減圧下でノルマルヘキサンを完全に回収して、油状の固練り8.10kgを得るステップと、
S3.前記固練りに40.5kgのシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、24.3kgのシリカゲルが予め充填されたカラムにロードし、まず「石油エーテルの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=2:1」として石油エーテル129.6Lで予溶離し、次に「酢酸エチルの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=2.25:1.5」として酢酸エチル97.2Lで溶離した後、酢酸エチル溶離液を収集し、減圧下で酢酸エチルを回収して、固練り状の物質4.3kgを得るステップと、
S4.前記固練り状の物質にメタノール27.0Lを加え、加熱して完全に溶解すると、6℃で24時間冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液からメタノールを回収して約14.9Lになると、9日間静置し、白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶359gを得、準結晶に酢酸エチル1.0Lを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、9日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶210.4gを得るステップとを含む。
【0034】
実施例7:
前記新規化合物の製造方法(溶媒抽出法)であって、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、30メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
S2.粉状ナメクジを50kg秤量し、多目的抽出タンクに入れ、15倍の量の混合溶媒(メタノール:ジエチルエーテル:酢酸エチル=1:1:1)を加え、3時間還流させて抽出し、濾過し、減圧下で濾液から混合溶媒を完全に回収して、油状の固練り3.98kgを得るステップと、
S3.前記固練りに23.8kgのシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、15.9kgのシリカゲルが予め充填されたカラムにロードし、まず「120#ガソリンの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1:0.5」として120#ガソリン79.4Lで予溶離し、次に「メタノールの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1.5:1」としてメタノール59.5Lで溶離した後、メタノール溶離液を収集し、減圧下でメタノールを回収して、ペースト状物質2.07kgを得るステップと、
S4.前記ペースト状物質にエタノール13.0Lを加え、加熱して完全に溶解すると、10℃で24時間冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液からエタノールを回収して約6.5Lになると、7日間静置し、白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶178.1gを得、準結晶に酢酸エチル500mLを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、7日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶103.8gを得るステップとを含む。
【0035】
実施例8:
前記新規化合物の製造方法(溶媒抽出法)であって、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、10メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
S2.粉状ナメクジを150kg秤量し、多目的抽出タンクに入れ、混合溶媒(エタノール:アセトン=1:1)を加え還流させて抽出するのを3回行い、1回目に12倍の量の混合溶媒を加え、2.5時間還流させて抽出し、2回目に8倍の量の混合溶媒を加え、1.5時間還流させて抽出し、3回目に5倍の量の混合溶媒を加え、1時間還流させて抽出し、濾過し、濾液を合わせ、減圧下で混合溶媒を完全に回収して、油状の固練り11.98kgを得るステップと、
S3.前記固練りに48.4kgのシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、24.3kgのシリカゲルが予め充填されたカラムにロードし、まず「ノルマルヘキサンの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=3:1.5」としてノルマルヘキサン146.3Lで予溶離し、次に「アセトンの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=3:2」としてアセトン110.8Lで溶離した後、アセトン溶離液を収集し、減圧下でアセトンを回収して、固練り状の物質6.3kgを得るステップと、
S4.前記ペースト状物質にメタノール40.0Lを加え、加熱して完全に溶解すると、2℃で24時間冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液からメタノールを回収して約24Lになると、10日間静置し、白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶534gを得、準結晶に酢酸エチル1.5Lを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、10日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶311.2gを得るステップとを含む。
【0036】
実施例9:
前記新規化合物の製造方法(溶媒抽出法)であって、
S1.ナメクジをスクリーニングし、不純物を除去し、20メッシュに粉砕して、一旦保管するステップと、
S2.粉状ナメクジを70kg秤量し、多目的抽出タンクに入れ、混合溶媒(クロロホルム:石油エーテル:120#ガソリン:ノルマルヘキサン=1:2:1:6)を加え還流させて抽出するのを2回行い、1回目に13倍の量の混合溶媒を加え、2時間還流させて抽出し、2回目に6倍の量の混合溶媒を加え、1時間還流させて抽出し、濾過し、濾液を合わせ、減圧下で混合溶媒を完全に回収して、油状の固練り5.52kgを得るステップと、
S3.前記固練りに24.8kgのシリカゲルを加え、均一に攪拌した後、13.8kgのシリカゲルが予め充填されたカラムにロードし、まず「石油エーテルの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=2.4:1.2」として石油エーテル77.2Lで予溶離し、次に「酢酸エチルの体積:カラム内のシリカゲルの総重量=1.8:1.2」として酢酸エチル57.9Lで溶離した後、酢酸エチル溶離液を収集し、減圧下で酢酸エチルを回収し、固練り状の物質2.90kgを得るステップと、
S4.前記固練り状の物質にエタノール18.3Lを加え、加熱して完全に溶解すると、8℃で24時間冷蔵し、白色の結晶が析出すると、濾過し、減圧下で濾液からエタノールを回収して約9.6Lになると、8日間静置し、白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、準結晶252.0gを得、準結晶に酢酸エチル0.7Lを加え、加熱して溶解させた後、放冷し、8日間静置して白色の針状結晶が析出すると、濾過し、乾燥して、新規化合物3,12,13-トリアセチルリマクソルAの結晶148.2gを得るステップとを含む。
【0037】
三.薬理学実験
実施例10:
モルヒネの身体的依存に対するナメクジ抽出物の影響実験
1.実験目的
モルヒネの身体的依存の表現に対するナメクジ抽出物の影響を研究する。
【0038】
2.実験材料及び方法
2.1 実験材料
2.1.1 薬剤
ナメクジ抽出物は広西久福生物科技有限公司が提供し、ナメクジ粗抽出物は本発明の実施例3のステップR2で超臨界二酸化炭素抽出が完了して得た軟膏状の抽出物であり、3,12,13-トリアセチルリマクソルAは本発明の実施例3で調製したサンプルであり、モルヒネ注射剤は東北制薬沈陽第一制薬有限公司から購入し、メサドンは天津市中央薬業有限公司から購入した。
2.1.2 実験動物
昆明マウスを用い、18~22gの雄性で、上海思捷実験動物有限公司から購入した。
2.2 実験方法
2.2.1 モルヒネの身体的依存の表現に対する影響
動物をランダムに群分けし、本実験では生理食塩水群、モデル群、陽性対照群(メサドン)、被験薬の異なる用量群を設ける。各群では少なくとも8匹のマウスであり、生理食塩水群では毎日生理食塩水を投与し、モルヒネモデル群、陽性対照群及び被験薬群では動物に10、20、40、80、100mg/kgと漸増的にモルヒネを投与し、毎日に6時間の間隔で2回皮下投与し、3日目より用量が100mg/kgと変わらず、このように連続的に7日間投与し、8日目にモルヒネ投与から4時間後に4mg/kgでナロキソンを腹腔内投与し、30分間内の跳躍回数を記録する。ナロキソン投与前に異なる時刻(1時間又は3時間)に溶媒対照、陽性対照薬又は被験薬を胃内投与する。
2.2.2 統計学的分析
実験結果は平均値±標準誤差で示し、群間差はt-testで検証し、P<0.05であると有意差を認める。
【0039】
3.実験結果
モルヒネの身体的依存の表現に対するナメクジ抽出物の影響
次の表2~表4の実験結果に示すように、漸増的なモルヒネ処理後、ナロキソンを投与して嗜癖を誘発すると、動物に明らかな離脱跳躍症状が出現し、メサドン(20mg/kg)投与から1時間後、ナメクジ粗抽出物(10g/kg)投与から3時間後、3,12,13-トリアセチルリマクソルA(0.5g/kg)投与から1時間後に、動物の離脱跳躍症状が明らかに緩和される。表5に示すように、3,12,13-トリアセチルリマクソルA(0.5g/kg)投与から3時間後に、動物の離脱跳躍症状が緩和される傾向はあるが、モデル群と比べて有意差が認められない。図8に示すように、モルヒネ離脱跳躍症状に対する3種の薬物の抑制率で、ナメクジ粗抽出物(10g/kg、3時間)は3,12,13-トリアセチルリマクソルA(0.5g/kg、1時間)より高く、メサドン(20mg/kg、1時間)は3,12,13-トリアセチルリマクソルA(0.5g/kg、1時間)とほぼ同じである。
【0040】
【表2】
表2の結果から分かるように、モルヒネ群と対照群の比較で有意差が認められる(***P<0.001)ことから、漸増的なモルヒネ処理後、ナロキソンによる嗜癖誘発で明らかな離脱跳躍症状が出現することが示される。モルヒネ+メサドン群とモルヒネ群の比較で有意差が認められる(P<0.05)ことから、メサドン20mg/kg投与から1時間後にナロキソンによる嗜癖誘発で出現する離脱跳躍症状が明らかに緩和されることが示される。
【0041】
【表3】
表3の結果から分かるように、モルヒネ群と対照群の比較で有意差が認められる(**P<0.01)ことから、漸増的なモルヒネ処理後、ナロキソンによる嗜癖誘発で明らかな離脱跳躍症状が出現することが示される。モルヒネ+ナメクジ粗抽出物とモルヒネ群の比較で有意差が認められる(P<0.05)ことから、ナメクジ粗抽出物10g/kg投与から3時間後にナロキソンによる嗜癖誘発で出現する離脱跳躍症状が明らかに緩和されることが示される。
【0042】
【表4】
表4の結果から分かるように、モルヒネ群と対照群の比較で有意差が認められる(***P<0.001)ことから、漸増的なモルヒネ処理後、ナロキソンによる嗜癖誘発で明らかな離脱跳躍症状が出現することが示される。モルヒネ+3,12,13-トリアセチルリマクソルA高用量群とモルヒネ群の比較で有意差が認められる(P<0.05)ことから、モルヒネ+3,12,13-トリアセチルリマクソルA0.5g/kg投与から1時間後、ナロキソンによる嗜癖誘発で出現する離脱跳躍症状が明らかに緩和されることが示される。
【0043】
【表5】
表5の結果から分かるように、モルヒネ群と対照群の比較で有意差が認められる(***P<0.01)ことから、漸増的なモルヒネ処理後、ナロキソンによる嗜癖誘発で明らかな離脱跳躍症状が出現することが示される。モルヒネ+3,12,13-トリアセチルリマクソルA高用量群とモルヒネ群の比較で有意差が認められない(P>0.05)ことから、モルヒネ+3,12,13-トリアセチルリマクソルA0.5g/kg投与から3時間後、ナロキソンによる嗜癖誘発で出現する離脱跳躍症状は緩和される傾向はあるが、有意差を認めるまでは至らなかった。
【0044】
4.結論
ナメクジ粗抽出物(10g/kg)は胃内投与から3時間後、モルヒネ依存動物の離脱跳躍症状に明らかな抑制効果が認められ、3,12,13-トリアセチルリマクソルA(0.5g/kg)は胃内投与から1時間後、モルヒネ依存動物の離脱跳躍症状に明らかな抑制効果が認められ、3時間後にも抑制効果が続きそうである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8