(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】希釈水素ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20220825BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20220825BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20220825BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20220825BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20220825BHJP
C25B 9/13 20210101ALI20220825BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20220825BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20220825BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20220825BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20220825BHJP
B01D 47/05 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/08 302
C25B9/67
C25B9/23
C25B9/13
C25B15/021
C25B15/023
C25B11/031
B01D47/06 Z
B01D47/05
(21)【出願番号】P 2022016968
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522243794
【氏名又は名称】株式会社LIBLAT identity
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恒
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0091436(US,A1)
【文献】特開2018-068531(JP,A)
【文献】特開2009-005881(JP,A)
【文献】特開2017-036482(JP,A)
【文献】特開2013-249531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/00
B01D 47/00-47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出
し、かつ負極部の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液から発生した水蒸気と共存する水素ガスを下側から上側に循環する循環パイプを突設すると共に、循環パイプにおける上側の突設位置から更に負極部の底部側に向かう排出口を設置し、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置。
【請求項2】
負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出
し、かつ正極部又は電解液供給部の上下の2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液を上側から下側に循環する循環パイプを突設し、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも上流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置。
【請求項3】
負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出
し、かつ正極部又は電解液供給部の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって電解液を下側から上側に循環する循環パイプを突設し、更に底部側に向かう排出口を設置しており、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置。
【請求項4】
負極における加熱温度が30℃~80℃であり、かつ水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上であることを特徴とする請求項
1、2、3の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項5】
水蒸気から凝縮した水が流動パイプに貯留した後に、流動パイプから落下することを特徴とする請求項1、2、3
、4の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項6】
水蒸気から凝縮した水が流動パイプに貯留した後に、流動パイプから落下すると共に、水素ガス、酸素ガス、及び希釈ガスが当該貯留領域を通過することを特徴とする請求項
5記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項7】
流動パイプの各位置のうち、回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューを設置していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5
、6の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項8】
酸素ガス排出口と水素ガス排出口とを区分して設け、かつ酸素ガスの排出口が電解液供給部における電解液中に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内への供給等を目的とする希釈水素ガス供給装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
生体内に供給する水素ガスは、通常0.1~18.0vol%の濃度に希釈されている混合ガスが採用されており、希釈ガスとしては通常、空気及び/又は酸素が採用されている。
【0003】
このような希釈された水素ガス供給装置として、例えば特許文献1においては、負極を備えた負極部(陰極室)と正極を備えた正極部(陽極室)を隔膜又は電解液貯留領域によって区分している電解槽において負極部及び正極部の双方に電解液を供給し、かつ負極部及び正極部の上側にそれぞれ水素ガス排出口及び酸素ガス排出口を設けると共に、負極部に希釈ガスを噴出(吐出)する希釈ガス供給器を備える構成が採用されている。
【0004】
前記構成による技術上のメリットとして、希釈ガスに含まれる塵埃等の異物が陰極室を電解中に分離されることによって、清浄な混合ガス、即ち希釈された水素ガスを生体内に供給することができることが説明されている(特許文献1の段落[0007]の発明の効果に関する項)。
【0005】
前記構成においては、希釈ガス中の塵埃は、電解液中を流動する希釈ガスの気泡内に含まれているが、前記説明は、浮上の過程において塵埃の殆ど全てが電解液と接触することによって、電解液中に分離されることを前提としている。
【0006】
しかしながら、希釈ガスの気泡は、水素ガスと共に電解液から浮上するまでに完全に消失する訳ではなく、気泡中に残存している場合には、必然的に当該気泡中に含まれる塵埃もまた水素ガスと共に排出口に至ることにならざるを得ない。
【0007】
他方、特許文献2においては、気泡中の粉塵の捕塵効率を増強するために、気泡の乱流を発生させ、気泡を小型化することによって、気泡中の粉塵を電解水である水と接触する確率を向上させている。
【0008】
しかしながら、たとえ多少小型化したとしても、粉塵が気泡中に存在する限り、気泡を十分水中に溶解させることはできない。
【0009】
このように、特許文献1のような希釈水素ガス供給装置において、電解液中を希釈ガスの気泡が流動することによる構成と全く異なる技術的発想の下に希釈ガス中の粉塵を除去すると共に、当該除去において前記構成を十分補強し得るような技術的提案は全く行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6667873号公報
【文献】特開平4-200615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電気分解によって水素ガスが発生する電解槽において、希釈ガス中の粉塵を電解液から発生した水蒸気によって除去し得る希釈水素ガス供給装置の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出し、かつ負極部の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液から発生した水蒸気と共存する水素ガスを下側から上側に循環する循環パイプを突設すると共に、循環パイプにおける上側の突設位置から更に負極部の底部側に向かう排出口を設置し、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置、
(2)負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出し、かつ正極部又は電解液供給部の上下の2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液を上側から下側に循環する循環パイプを突設し、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも上流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置、
(3)負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを、電解液を透過し得る隔膜又は電解液貯留領域によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口を有する電解槽において、負極及び正極が電解液を滲出可能な状態にあり、かつ負極と正極との間には、負極から滲出した電解液から水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプを設置し、流動パイプにおける下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプから落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプから導出し、かつ正極部又は電解液供給部の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって電解液を下側から上側に循環する循環パイプを突設し、更に底部側に向かう排出口を設置しており、循環パイプにおける各位置のうち、前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置、
(4)負極における加熱温度が30℃~80℃であり、かつ水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上であることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)の何れかの希釈水素ガス供給装置、
からなる。
【発明の効果】
【0013】
基本構成(1)、(2)、(3)において、電解液は、
滲出可能な正極
↓
隔膜、又は、電解液貯留領域
↓
滲出可能な負極
の順序にて流動し、かつ負極内を流動する際に、電解液中の水素イオン(H+)が水素ガス(H2)に還元される。
【0014】
但し、電解液中の水の全てが、加水分解に伴って水素ガス(H2)に変化する訳ではなく、相当部分は負極から、加熱された電極によって当該水から水蒸気が発生している。
【0015】
その結果、負極においては、還元反応によって生成された水素ガスと水蒸気との共存状態が形成され、かつ当該共存状態にて排出口から排出される。
【0016】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、このような共存状態にある水素ガス並びに水蒸気又は正極において発生した酸素ガスに対し、電解槽からの排出の前に希釈ガスが混入しており、その結果、希釈ガスは流動パイプ中を水蒸気と共存状態にある水素ガス、酸素ガスと混合状態にて流動している。
【0017】
前記流動状態においては、希釈ガス中の粉塵は、希釈ガス、水素、酸素だけでなく、水蒸気に対しても、混合状態を呈している。
【0018】
このような場合、流動パイプのうち下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気が水に凝縮した場合には、水蒸気と混合状態にある粉塵もまた水と混合し、かつ下方に流動することによって、流動パイプから落下することに帰する。
【0019】
即ち、基本構成(1)、(2)、(3)においては、
流動パイプ中における希釈ガス中の粉塵と水蒸気との混合
↓
流動パイプのうち下方への流動領域に対する冷却に伴う水蒸気の水への凝縮
↓
水と混合した粉塵の下方への流動
↓
水及び粉塵の流動パイプからの落下
という工程によって、凝縮した水によって粉塵を除去した希釈水素ガスを得ることができる。
【0020】
その結果、希釈ガスの気泡内の粉塵が電解液に溶解せずに残留したとしても、残留した粉塵を十分除外し、特許文献1の場合よりも純化した希釈水素ガスを確保することができる。
尚、水蒸気は、希釈ガス、水素、及び酸素と一体を成して希釈ガス中の粉塵と接触している以上、極端に水蒸気の相対的濃度が極端に低くない限り、当該凝縮に基づく水は、粉塵と一体となって流動パイプから落下している。
【0021】
基本構成(1)、(2)、(3)において、循環パイプ中を循環する希釈ガスの方が、回転するポンプの羽根車又はスクリューの衝突によって小型化し、希釈ガスの気泡中の粉塵が電解液中に溶解することを十分促進し得ることについては、後に具体的に説明する通りである。
【0022】
基本構成(4)は、加電の温度として、30℃~80℃に設定し、且つ水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上であることを要件としているが、上記温度範囲の設定は、前記加電における電流値又は電圧値を選択することによって当然実現することができる。
【0023】
発明者の経験では、水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上である場合には、水蒸気は、希釈ガス、水素ガス、及び酸素ガスと一様に混合した上で、粉塵と接触し、かつ一様に混合することができる。
【0024】
このような場合、水蒸気から凝縮した水は、粉塵との混合状態を形成し、かつ粉塵と共に流動した後に、流動パイプから落下することに帰する。
【0025】
前記のような1/10以上の比率を達成するためには、正極及び負極につき、電解液が十分滲出し得る素材を採用することが必要であり、具体的には、多孔質状又は緻密なメッシュ状の電極を採用するとよい。
尚、負極における水蒸気の蒸発にも拘らず、負極からの電解液の滲出によって、電解液が負極の底部に貯留する場合が生じ得るが、その場合には、電解液を電解液供給部にフィードバックすることによって処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】基本構成(1)の構成を示す側断面図であって、(a)は、負極と正極とが隔膜によって区分されて
おり、かつ循環パイプに回転羽根を有するポンプを設置した場合を示し、(b)は、負極と正極とが電解液貯留領域によって区分されて
おり、かつ循環パイプにスクリューを設置した場合を示す。
【
図2】
基本構成(2)の構成を示す側断面図であって、(a)は、負極と正極とが隔膜によって区分されており、かつ循環パイプを正極部に突設すると共に、循環パイプ中に回転羽根を有するポンプを設置した場合を示し、(b)は、循環パイプを電解液供給部に突設すると共に、循環パイプ中にスクリューを設置した場合を示す。
【
図3】
基本構成(3)の構成を示す側断面図であって、(a)は、循環パイプを正極部に突設すると共に、循環パイプ中に回転羽根を有するポンプを設置した場合を示し、(b)は、循環パイプを電解液供給部に突設すると共に、循環パイプ中にスクリューを設置した場合を示す。
【
図4】流動パイプにおいて、希釈ガスが混入された位置よりも下流の位置に回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリューを設定している
実施例を示す部分的側断面図であって、(a)は、回転する羽根車を備えたポンプの場合を示し、(b)は、スクリューの場合を示す。
【
図5】
酸素ガスの排出口を電解液供給部による電解液中に配置している実施例を示す部分的側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
基本構成(1)は、負極11を備えている負極部と正極12を備えている正極部とを、
図1(a)に示すように、電解液Wを透過し得る隔膜13によって区分するか、又は
図1(b)に示すように、電解液貯留領域13によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部10を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口14を有する電解槽1において、負極11及び正極12が電解液Wを滲出可能な状態にあり、かつ負極11と正極12との間には、負極11から滲出した電解液Wから水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口14から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプ2を設置し、流動パイプ2における下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプ2から落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプ2から導出
し、かつ負極部の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ41又はスクリュー41の作動によって、電解液Wから発生した水蒸気と共存する水素ガスを下側から上側に循環する循環パイプ4を突設すると共に、循環パイプ4における上側の突設位置から更に負極部の底部側に向かう排出口14を設置し、循環パイプ4における各位置のうち、前記ポンプ41又はスクリュー41よりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置である。
【0028】
基本構成(1)においては、流動パイプ2において排出された電解液Wから発生した水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが前記水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動することを要件としている。
【0029】
前記要件
に対応して、基本構成(1)においては、
図1(a)、(b)に示すように、希釈ガス噴出器3を
前記ポンプ41又はスクリュー41よりも下流側にて循環している領域の上側の位置に設置している。
【0030】
基本構成(1)の場合には、循環パイプ4中を水素ガスと共存している水蒸気及び希釈ガス中の粉塵が共にポンプ41の回転する羽根車、又はスクリュー41と衝突することによって、十分混合し合い、双方が一体となって循環パイプ4中を浮流し、かつ当該粉塵が凝縮した水と共に循環パイプ4から落下する状態を促進することができる。
【0031】
基本構成(2)は、負極11を備えている負極部と正極12を備えている正極部とを、図2(a)に示すように、電解液Wを透過し得る隔膜13によって区分するか、又は図2(b)に示すように、電解液貯留領域13によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部10を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口14を有する電解槽1において、負極11及び正極12が電解液Wを滲出可能な状態にあり、かつ負極11と正極12との間には、負極11から滲出した電解液Wから水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口14から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプ2を設置し、流動パイプ2における下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプ2から落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプ2から導出し、かつ正極部又は電解液供給部10の上下の2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ41又はスクリュー41の作動によって、電解液Wを上側から下側に循環する循環パイプ4を突設し、循環パイプ4における各位置のうち、前記ポンプ41又はスクリュー41よりも上流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置である。
【0032】
基本構成(2)においては、図2(a)、(b)に示すように、希釈ガス噴出器3を、ポンプ41又はスクリュー41よりも上流側にて循環している領域の上側の位置に設置している。
【0033】
基本構成(2)においては、希釈ガスの気泡が循環パイプ4中を循環する場合には、当該気泡は、必然的にポンプ41の回転する羽根車、又はスクリュー41と衝突することを原因として、更には、当該ポンプ41又は当該スクリュー41によって形成された乱流を原因として、噴出された段階よりも明らかに小型化されている。
【0034】
このような気泡の小型化によって、特許文献2記載のように、希釈ガスの気泡中の粉塵は、電解液Wと接触する機会を増大し、その結果、電解液W中に溶解することを十分促進することができる。
【0035】
基本構成(3)は、負極11を備えている負極部と正極12を備えている正極部とを、図3(a)に示すように、電解液Wを透過し得る隔膜13によって区分するか、又は図3(b)に示すように、電解液貯留領域13によって区分し、かつ正極部のみに電解液供給部10を備えると共に、負極部及び正極部の上側に水素ガス及び酸素ガスの排出口14を有する電解槽1において、負極11及び正極12が電解液Wを滲出可能な状態にあり、かつ負極11と正極12との間には、負極11から滲出した電解液Wから水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、前記排出口14から排出され、かつ前記水蒸気と共存状態にある水素ガス又は酸素ガスに対し、前記排出の前に混入された希釈ガスが水蒸気、水素ガス及び酸素ガスと混合状態にて流動する流動パイプ2を設置し、流動パイプ2における下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水を、流動パイプ2から落下させたうえで、水素ガスを酸素ガス及び希釈ガスと共に流動パイプ2から導出し、かつ正極部又は電解液供給部10の上下2か所の内壁から回転する羽根車を備えたポンプ41又はスクリュー41の作動によって電解液Wを下側から上側に循環する循環パイプ4を突設し、更に底部側に向かう排出口14を設置しており、循環パイプ4における各位置のうち、前記ポンプ41又はスクリュー41よりも下流側にて循環している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えていることを特徴とする希釈水素ガス供給装置である。
【0036】
基本構成(3)においては、図3(a)、(b)に示すように、希釈ガス噴出器3を、循環パイプ4のうち、回転羽根を有するポンプ41又はスクリュー41よりも下流側にて循環している領域の上側の位置に設置している。
【0037】
基本構成(3)においても、希釈ガスの気泡が前記ポンプ41の回転する羽根車、又はスクリュー41との衝突を原因として、更には、当該ポンプ41又は当該スクリュー41によって形成された乱流を原因として、噴出された段階よりも明らかに小型化されている。
【0038】
のみならず、電解液Wは、正極部又は電解槽1の底部に向かって局所的に上側から下側への逆流が生じており、その結果、希釈ガスの気泡の乱流が形成され、希釈ガスの小型化を更に促進することができる。
【0039】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、凝縮した水が粉塵と共に流動パイプ2から落下する工程について立ち入って説明するに、水蒸気が凝縮する際には、希釈ガス、水素、酸素は何れも、水の分子(H2O)が相互に当該凝縮する領域から排斥され、当該領域外に移動する。
【0040】
これに対し、固体である粉塵は、水蒸気の凝縮に際し、当該凝縮の領域から排斥される訳ではない。
【0041】
その結果、流動方向を下方としている流動パイプ2に対する冷却を原因として、粉塵は凝縮した水と共に流動パイプ2から落下することに帰する。
尚、
図1(a)、(b)
、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)においては、冷却器20によって冷却している流動パイプ2の下方への流動領域として、鉛直方向を設定しているが、下方への流動方向は鉛直方向に限定される訳ではなく、斜方向をも当然選択可能である。
【0042】
基本構成(4)は、負極11の温度を30℃~80℃に設定することを要件とする実施例に該当するが、上記要件の根拠は、このような温度範囲の場合に電解液Wから水蒸気を発生することが十分可能であり、しかも電解液Wの煮沸を避けることができることに由来している。
【0043】
水素ガス及び酸素ガスの発生容積は、負極11及び正極12を導通する電流量によって左右されることから、負極11と正極12との間の電源としては、定電流源を採用する場合が多いが、定電圧源を採用することもまた可能である。
【0044】
基本構成(4)は、負極11において水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上であることを要件としているが、当該要件によって、流動パイプ2中において水蒸気、更には水蒸気から凝縮した水が希釈ガス中の粉塵と十分混合し、かつ流動パイプ2からの水及び粉塵の落下によって、当該粉塵を十分除去することができる。
尚、1/10以上の比率による水蒸気の発生容積を得るために、多孔質状又は緻密なメッシュ状の電極を採用することが好都合であることについては、既に発明の効果の項において説明した通りである。
【0045】
基本構成(1)
、(2)、(3)の水素ガス及び酸素ガスの排出口14は、通常
図1(a)
、図2(a)、図3(a)に示すように、個別に設定するが、流動パイプ2中にて水素ガスと酸素ガスとが混合することを予定している基本構成(1)
、(2)、(3)の場合には、
図1(b)
、図2(b)、図3(b)に示すように、1個の排出口14であっても、電解槽1としての機能を発揮することができる。
【0046】
排出された水素ガス及び酸素ガス、更には混入された希釈ガスは、希釈ガスの噴出を原因とする圧力によって流動パイプ2中を流動することができる。
【0047】
但し、図4(a)、(b)に示すように、流動パイプ2の各位置のうち、希釈ガスが混入された位置よりも下流の位置に、回転する羽根車を備えたポンプ24又はスクリュー24を設置していることを特徴とする実施例の場合には、希釈ガスと水蒸気とが、回転する羽根車を備えたポンプ24又はスクリュー24の衝突によって、双方が十分に混合し、希釈ガス中の粉塵を水蒸気、さらには凝縮した水との混合状態を促進することができる。
【0048】
基本構成(1)
、(2)、(3)においては、
図1(a)、(b)
、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)に示すように、水蒸気から凝縮した水が流動パイプ2に貯留した後に、流動パイプ2から落下することを特徴とする実施
例を採用
することができる。
【0049】
このような実施例の場合には、希釈ガス、水素、酸素による各気体が落下する孔から漏洩することを防止することができる。
【0050】
但し、流動パイプ2中を流動する水蒸気の温度如何によっては、例外的に水蒸気の全てが水に凝縮しないというアクシデントは皆無ではない。
【0051】
このような場合、
図1(b)
、図2(b)、図3(b)に示すように、水蒸気から凝縮した水が流動パイプ2に貯留した後に、流動パイプ2から落下すると共に、水素ガス、酸素ガス、及び希釈ガスが当該貯留領域を通過することを特徴とする実施
例の場合には、残水蒸気の殆どが、貯留領域内において水に凝縮し、水に凝縮しない水蒸気の放出を防止することができる。
【0052】
しかも、上記実施例の場合には、たとえ希釈ガス中に粉塵が残留したとしても、希釈ガスによる気泡は、凝縮した水と既に混合状態に至っていることを原因として、極めて微小化している。
【0053】
このような微小化の結果、当該残留した粉塵は貯留している水中に溶解することによって、粉塵の除去を一層助長することができる。
【0054】
通常、希釈ガスとしては空気が採用されているが、正極12及び負極11を流動する電流値の設定によって、電気分解によって生成する水素ガスの量を調整する一方、混入する希釈ガスの量を調整することによって、生体用希釈水素ガスの濃度を設定しているが、基本構成(1)、(2)、(3)においては、相当量の水蒸気を確保することが必要であることから、当該水蒸気と共存状態にある水素の濃度の下限値については、1.0vol%に設定する場合が多い。
【0055】
水素ガスの濃度の下限値が1.0vol%の場合には、酸素ガスの濃度の下限値が0.5vol%であることから、このような下限値による濃度の場合には、希釈ガスを98.5vol%混入させることに帰する。
【0056】
基本構成(4)に立脚している実施例において、水蒸気の発生容積が水素ガスの発生容積の1/10以上に設定する方法は、以下の通りである。
【0057】
図1(a)
、図2(a)、図3(a)のように、水素ガス及び酸素ガスの排出口14を個別に備えた場合には、酸素の単位時間当たりの排出量をVとした場合、水素の単位時間当たりの排出量は2Vである。
【0058】
一方、流動パイプ2から落下する水の単位時間当たりの質量をmとし、かつ負極11にて蒸発している水蒸気の温度をt℃とし、かつt℃に対応する水蒸気の密度dについては、一般的データによって把握することができる。
【0059】
因みに、30℃における水蒸気の密度dは、0.03037(g/dm3)であり、80℃における水蒸気の密度は、0.2933(g/dm3)である。
【0060】
したがって、落下する水の短時間当たりの質量がmであり、かつ負極11から蒸発した水蒸気の温度がt℃である場合の水蒸気の密度をdとした場合には、負極11において水蒸気の発生容積を水素ガスの発生容積の1/10以上であるためには、
m/d≧2V/10
=V/5
が成立することを必要不可欠とする。
【0061】
したがって、基本構成(4)において、蒸発する水蒸気を所定量確保するためには、水素ガスの排出口14と酸素ガスの排出口14とを区分した上で、前記不等式が成立するように、負極11の温度、ひいては電源における電流値又は電圧値を調整することを必要不可欠としている。
【0062】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、図5に示すように、酸素ガス排出口14と水素ガス排出口14とを区分して設け、かつ酸素ガスの排出口14が電解液供給部10における電解液W中に配置されていることを特徴とする実施例を採用することができる。
【0063】
このような特徴によって、前記実施例の場合には、電解液供給部10と酸素ガスの排出口14とが一体化し、かつ流動パイプ2と電解液供給部10とが一体化することによって、希釈水素ガス供給装置の構成をコンパクトな状態とすることができる。
【0064】
更には、排出された酸素ガスが正極12によって加熱されている場合には、電解液供給部10内の電解液Wによって冷却され、流動パイプ2に対する冷却を間接的に助長することができる。
尚、前記実施例の場合には、酸素ガスを流動パイプ2にスムーズに移動させるためには、希釈ガス噴出器3を電解液供給部10又は正極部に設置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)に立脚している本願発明は、流動パイプ内にて希釈ガス中の粉塵を水蒸気及び凝縮した水に混入させた上で、当該粉塵を流動パイプから落下させることによって、効率的な粉塵の除去を促進している点において画期的であり、その利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0066】
1 電解槽
10 電解液供給部
11 負極
12 正極
13 隔膜又は電解液貯留領域
14 排出口
2 流動パイプ
20 冷却器
21 流動パイプにおける水の落下口
22 流動パイプにおける希釈された水素ガスの導出口
23 水の収容容器
24 流動パイプにおける回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリュー
3 希釈ガス噴出器
4 循環パイプ
41 循環パイプにおける回転する羽根車を備えたポンプ又はスクリュー
W 電解液
【要約】
【課題】電気分解に
際し希釈ガス中の粉塵を効率的に除去し得る希釈水素ガス供給装置の構成の提供。
【解決手段】正極部のみに電解液供給部10を備えている電解槽1において、負極11及び正極12が電解液Wを滲出可能な状態にあり、かつ両電極に対し、負極11から
滲出した電解液Wから水蒸気が発生し得るような加熱を可能とする加電が行われると共に、排出された水蒸気、水素ガス、酸素ガス、及び
負極部又は正極部若しくは電解液供給部10から突設された流動パイプ2中に備えた希釈ガス噴出器3から噴出された希釈ガスを流動する流動パイプ2を設置し、流動パイプ2における下方への流動領域に対する冷却を原因として、水蒸気から凝縮し、かつ希釈ガス中に含有された粉塵が混入している水
が流動パイプ2から落下
し、かつ希釈された水素ガスを流動パイプ2から導出することによって、前記課題を達成する希釈水素ガス供給装置。
【選択図】
図1