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特許7129140細胞受容体結合親和性のあるペプチドを含むマイクロカプセル及びこれを含む化粧料組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】細胞受容体結合親和性のあるペプチドを含むマイクロカプセル及びこれを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20220825BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220825BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K8/64 ZNA
A61K8/11
A61K38/08
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021087377
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2020530295の分割
【原出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2021130684
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0107511
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0006114
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513160763
【氏名又は名称】コルマー コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOLMAR KOREA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Kolmar Korea, 12-11, Deokgogae-gil, Jeonui-myeon, Sejong, 30004, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン クン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ヒュン シュク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ア
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン、スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チェ ワ
(72)【発明者】
【氏名】リン、チェ ミ
(72)【発明者】
【氏名】パク、タ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒェ チン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ハク ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チ フン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ウン ヨン
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0046961(KR,A)
【文献】米国特許第05164488(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06
A61K 8/00
A61Q 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞受容体結合能のあるペプチドであって、
前記ペプチドは配列番号2からなるペプチド。
【請求項2】
細胞はメラニン細胞(melanocytes)を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記細胞受容体は、
ラノコルチン受容体(melanocortin receptor)を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記メラノコルチン受容体はメラノコルチン1受容体(melanocortin 1 receptor、MC1R)である、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドが表面上に連結されているマイクロカプセル。
【請求項6】
前記ペプチドは、マイクロカプセルの総断面積を基準として、0.1~10peptides/μmの密度で含まれる、請求項5に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
前記マイクロカプセルは、カプセル内に封入された有効成分をさらに含み、
前記有効成分は、アミノ酸類;植物由来のタンパク質またはその加水分解物;酵母発酵物、その溶解物またはその濾過物;及び植物抽出物のうちの少なくとも一つを含む、請求項5に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
前記植物由来のタンパク質はルピンタンパク質を含み、
前記酵母はピキア・パストリス( Pichia pastoris)を含む、請求項7に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
前記アミノ酸類は、有効成分の総重量を基準として0.00001~0.1重量%で含まれ、
前記植物由来のタンパク質またはその加水物、酵母発酵物、その溶解物またはその濾過物、及び植物抽出物それぞれは、有効成分の総重量を基準としてそれぞれ0.0001~30重量%で含まれる、請求項7に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを含む、化粧料組成物。
【請求項11】
前記組成物は、美用である、請求項10に記載の化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、細胞受容体結合能のあるペプチド、前記ペプチドが連結されているマイクロカプセル、及びこれを含む化粧料組成物が開示される。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、医薬品、塗料、電子産業及び化粧品などの様々な分野で使用される基盤技術であって、特に、有効成分の初期力価を維持するための最良のツールであって、医薬品及び化粧品分野で脚光を浴びている(Journal of controlled release, 58, 9, 1999)。
【0003】
しかし、これまで知られているマイクロカプセルを含有した化粧料組成物は、人体に適用したとき、マイクロカプセルを使用していない化粧料組成物と比較して顕著に改善された効果を得ていない。
【0004】
このため、最近、薬物送達システム原理を利用して、標的細胞にマイクロカプセルを伝達しようとする開発が続けられている。ところが、これまで知られているものは、マイクロカプセルの分子的不安定性や、標的細胞との結合力の問題などにより、まだ満足すべき効果を得ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許第10-1051557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様において、本発明の目的は、標的細胞との結合力に優れたペプチドを提供することである。
一態様において、本発明の目的は、有効成分を標的細胞へ正確かつ安定に伝達することである。
一態様において、本発明の目的は、有効成分の皮膚への伝達力が改善された化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、細胞受容体結合能のあるペプチドであって、前記ペプチドは、配列番号2を含むペプチドを提供する。
一態様において、本発明は、前記ペプチドが表面上に連結されているマイクロカプセルを提供する。
また、一態様において、本発明は、前記マイクロカプセルを含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様であるペプチドは、ターゲットに対する選別的結合力に優れる。また、本発明の一態様であるマイクロカプセルは、物理化学的安定性に優れる。よって、前記ペプチドに結合されたマイクロカプセルを含む化粧料組成物は、カプセル内に含まれている有効成分の標的細胞に対する伝達効率に優れるため、皮膚状態改善効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a】本発明のカプセルのターゲット(標的細胞)との結合力を確認した結果である(図1a:カプセル1、図1b:カプセル2、図1c:カプセル3)
図1b】本発明のカプセルのターゲット(標的細胞)との結合力を確認した結果である(図1a:カプセル1、図1b:カプセル2、図1c:カプセル3)
図1c】本発明のカプセルのターゲット(標的細胞)との結合力を確認した結果である(図1a:カプセル1、図1b:カプセル2、図1c:カプセル3)
図2a】本発明のカプセル1を処理したとき、コラーゲン1(図2a)、コラーゲン2(図2b)及びエラスチン(図2c)の発現変化を示す図である。
図2b】本発明のカプセル1を処理したとき、コラーゲン1(図2a)、コラーゲン2(図2b)及びエラスチン(図2c)の発現変化を示す図である。
図2c】本発明のカプセル1を処理したとき、コラーゲン1(図2a)、コラーゲン2(図2b)及びエラスチン(図2c)の発現変化を示す図である。
図3】本発明のカプセルを含有したアンプルを使用した後の目元しわ改善効果を確認して示す図である。
図4a】本発明のカプセル(カプセル2)を処理したときのα-MSHの結合妨害能(図4a)とメラニン合成阻害能(図4b)を示す図である。
図4b】本発明のカプセル(カプセル2)を処理したときのα-MSHの結合妨害能(図4a)とメラニン合成阻害能(図4b)を示す図である。
図5】本発明のカプセルを含有したトナーを使用した後の美白効果を確認して示す図である。
図6a】本発明のカプセル(カプセル3)を処理したときのケラチン1(図6a)、ケラチン5(図6b)及びフィラグリン(図6C)の発現変化を確認して示す図である。
図6b】本発明のカプセル(カプセル3)を処理したときのケラチン1(図6a)、ケラチン5(図6b)及びフィラグリン(図6C)の発現変化を確認して示す図である。
図6c】本発明のカプセル(カプセル3)を処理したときのケラチン1(図6a)、ケラチン5(図6b)及びフィラグリン(図6C)の発現変化を確認して示す図である。
図7】本発明のカプセルを含有した栄養クリームを使用した後の皮膚バリア(真皮緻密度、皮膚厚み)改善効果を確認して示す図である。
図8】本発明の過量の親水性生理活性物質を脂質部からなる多層構造上に安定化したマイクロカプセルの模式図である。
図9】ペプチドを含むマイクロカプセルの模式図である。
図10】本発明のスマートカプセル化製造技術によって作られた濃縮組成物試料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、一態様において、細胞受容体結合能のあるペプチドであって、前記ペプチドは、配列番号1~3のいずれかを含むペプチドである。
本明細書において、細胞受容体結合能とは、細胞上に形成されている受容体に結合することができる能力を意味する。
前記配列番号1乃至3のペプチドのアミノ酸配列は、下記表1のとおりである。
【0011】
【表1】
【0012】
前記表1において、Alaはアラニン、Aspはアスパラギン酸、Gluはグルタミン酸、Glyはグリシン、Hisはヒスチジン、Ileはイソロイシン、Lysはリシン、Pheはフェニルアラニン、Proはプロリン、Serはセリン、Trpはトリプトファン、Tyrはチロシン、Thrはトレオニンをそれぞれ意味する。
【0013】
一態様において、前記ペプチドのターゲットとなる細胞は、メラニン細胞(melanocytes)、ケラチン細胞(keratinocyte)または線維芽細胞(fibroblast)を含むことができる。
【0014】
また、前記細胞受容体は、線維芽細胞成長因子受容体(fibroblast growth factor receptor)、インテグリン受容体またはメラノコルチン受容体(melanocortin receptor)を含むことができる。具体的には、前記メラノコルチン受容体は、メラノコルチン1受容体(melanocortin 1 receptor、MC1R)であり得る。
一実施形態において、前記配列番号1のペプチドは、線維芽細胞をターゲットとするものであって、線維芽細胞成長因子受容体と結合するものであり得る。
また、一実施形態において、配列番号2のペプチドは、メラニン細胞をターゲットとするものであって、メラノコルチン受容体と結合するものであり得る。
【0015】
また、一実施形態において、配列番号3のペプチドは、ケラチン細胞をターゲットとするものであって、インテグリン受容体、特にインテグリン受容体のベータ1ファミリーと結合するものであり得る。
【0016】
本発明の一態様である前記ペプチドは、それぞれがターゲットとする細胞またはそのレセプター以外の他の細胞とは結合せず、その結合力にも優れるため、ペプチドに他の成分を連結させたときにターゲットへの高い伝達力を期待することができる。
【0017】
本発明は、一態様において、前記ペプチドが表面上に連結されているマイクロカプセルである。前記ペプチドは、マイクロカプセル上の親水性基、例えば、カルボキシル基とペプチド上のN-末端とを結合させてマイクロカプセル上に連結できるが、連結方法は、限定されず、当業者によく知られている様々な方法によることができる。
【0018】
マイクロカプセルは、広範囲かつ多様なポリマーを含むことができ、これらは、ポリマー、熱感受性ポリマー、感光性ポリマー、磁性ポリマー、pH感受性ポリマー、塩感受性ポリマー、化学的感受性ポリマー、高分子電解質、多糖類、ペプチド、タンパク質および/またはプラスチックを含むが、これらに限定されない。ポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、ポリ(アリルアミン)(PAAm)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(ジアリルメチル-塩化アンモニウム)(PDADMAC)、ポリ(ピロール)(PPy)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVPON)、ポリ(ビニルピリジン)(PVP)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ(テトラヒドロフラン)(PTHF)、ポリ(フタルアルデヒド)(PTHF)、ポリ(ヘキシルビオロゲン)(PHV)、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(L-アルギニン)(PARG)、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)などの物質を含むが、これらに限定されない。
【0019】
一実施形態において、カプセルは2重層であってもよい。このとき、外殻に位置した層はポリビニルアルコールを含むことができ、内面に位置した層はポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)を含むことができる。
【0020】
また、マイクロカプセルは、カプセルの外殻層に有効中性電荷、負電荷または正電荷を生成することができる1つ以上の物質を含むことができる。場合によっては、カプセルの電荷は、粒子の凝集またはクラスタリング(clustering)を防止または促進するのを助けることができる。
【0021】
一態様において、前記ペプチドは、マイクロカプセルの総断面積を基準として、0.1~10peptides/μmの密度で含まれ得る。前記ペプチドの密度は、好ましくは0.3~8peptides/μm、最も好ましくには0.4~7peptides/μmである。ペプチドの密度とは、マイクロカプセルの単位表面積を基準に存在するペプチドの本数を意味することができる。
【0022】
例えば、前記マイクロカプセル上のペプチドの密度が0.1peptides/μm未満である場合、または前記マイクロカプセル上のペプチドの密度が10peptides/μmを超える場合には、ペプチドが連結されていないマイクロカプセルと類似する程度の皮膚状態改善効果を示すため、上記の密度範囲で優れた標的細胞への結合力及び有効成分伝達力がある。
【0023】
一態様において、前記マイクロカプセルは、カプセル内に封入された有効成分をさらに含み、前記有効成分は、アミノ酸類;植物由来タンパク質またはその加水分解物;及び酵母発酵物、その溶解物またはその濾過物の少なくとも一つを含むことができる。また、カプセルに封入される有効成分としては、様々な植物抽出物とその果実抽出物を含むことができる。具体的には、前記植物抽出物は、フサザキスイセン根抽出物、スノーフレーク鱗茎抽出物などを含むことができ、果実抽出物は、ドラゴンフルーツ抽出物を含むことができる。
【0024】
また、前記アミノ酸類は、限定されず、アルギニン、アラニン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン、プロリン、チロシン、セリン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、トレオニン、アスパラギン酸などを含むことができる。
【0025】
一実施形態において、前記植物由来のタンパク質は、ルピンタンパク質を含むことができ、前記酵母は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含むことができる。一実施形態において、前記酵母発酵物は、ピキア発酵溶解濾過物であり得る。
【0026】
上述した態様において、植物由来のタンパク質またはその加水物、酵母発酵物、その溶解物またはその濾過物は、有効成分の総重量を基準として、それぞれ0.0001~30重量%で含まれ得る。0.0001重量%未満の場合には、効能が微々たるものであり、30重量%を超える場合には、変色や変臭などの安定性の問題があり得る。前記植物由来のタンパク質またはその加水分解物;酵母発酵物;及びその溶解物またはその濾過物は、有効成分の総重量を基準として、それぞれ好ましくは0.01~30重量%、さらに好ましくは0.01~25重量%ずつ含まれ得る。
【0027】
前記アミノ酸類は、0.00001~0.1重量%、好ましくは0.0001~0.1重量%、さらに好ましくは0.0001~0.05重量%で含まれ得る。前記植物抽出物または果実抽出物は、0.0001~30重量%で含まれ得る。前記植物抽出物と果実抽出物は、それぞれ好ましくは0.001~20重量%、最も好ましくは0.001~15重量%で含まれ得る。
【0028】
アミノ酸類の含有量が0.00001重量%未満である場合には、効能が微々たるものであり、アミノ酸類の含有量が0.1重量%を超える場合には、剤形の粘度安定性において問題があり得る。
【0029】
植物抽出物及び果実抽出物が0.0001重量%未満である場合には、効果が微々たるものであり、植物抽出物及び果実抽出物が30重量%を超える場合には、変色、変臭及び剤形の粘度安定性において問題があり得る。
前記羅列された成分が前記含有量の範囲内に含まれる場合、最も優れた保湿、皮膚バリア強化、美白、しわ改善、及び皮膚弾力改善効果を得ることができる。
【0030】
一態様において、本発明は、前記マイクロカプセルを含む化粧料組成物である。前記組成物は、保湿用、皮膚バリア強化用、美白用、しわ改善用または皮膚弾力改善用であり得る。
【0031】
本明細書において、皮膚バリア強化とは、皮膚角質細胞の分化を促進して皮膚の最外殻層を強化することにより皮膚状態を改善することを意味することができる。
【0032】
一態様において、前記組成物は、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14、フィラグリン、ロリクリン(loricrin)、エラスチン、コラーゲンなどの合成を促進することができる。
【0033】
一態様において、前記化粧料組成物内のマイクロカプセルの含有量は、0.0001~30重量%ており、好ましくは0.001~20重量%、最も好ましくは0.01~10重量%であり得る。
【0034】
化粧料組成物内のマイクロカプセルの含有量が0.0001重量%未満である場合には、効果が微々たるものであり、化粧料組成物内のマイクロカプセルの含有量が30重量%を超える場合には、組成物内のカプセルの分散度が低下し、化粧料組成物としての粘度を失うおそれがある。
【0035】
本明細書において、前記有効成分を最適の含有量で配合し、この有効成分が封入されたマイクロカプセルを「CellActive Code」という。また、これを含む組成物を用いて様々な剤形、例えば、トナー、アンプル、セラム、アイクリーム、栄養クリーム及びローションなどに製造することができる。前記有効成分をマイクロカプセル内に封入させることをスマートカプセル化という。また、前記有効成分が封入されたマイクロカプセル(スマートカプセル)を含む組成物を標的細胞へ正確に伝達する技術を「CellActive Technology」という。
以下、製造例と実施例によって本発明を説明する。下記製造例と実施例は、本発明を説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するものではない。
[製造例]
[製造例1]ペプチドの製造
【0036】
前記表1の配列番号1~3のペプチドは、自動化合成器(PeptrEx-R48、PEPTRON社製、大田、韓国)を用いて、FMOC固相方法(FMOC solid-phase method)で合成した。合成されたペプチドは、RPカラム(Shiseido capcell pak)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse-phase HPLC)(Prominence LC-20AB、Shimadzu社製、日本)で精製および分析し、質量分析計(HP 1100 Series LC/MSD、Hewlett-Packard社製、Roseville、アメリカ)を用いて同定した。

[製造例2]マイクロカプセルの製造
[製造例2-1]ペプチド未付着マイクロカプセルの製造
【0037】
別途の溶解槽に脂質濃縮部(セラミド、コレステロール、水素化レシチン)を投入し、70℃に加温して溶解させ、別途の溶解槽に親水性生理活性物質部(パンテノール、ラフィノース、ナイアシンアミド、チャ葉水)を投入し、45℃に加温して溶解させて準備した。そして、脂質安定化部を有する溶解槽に、前記準備した脂質濃縮部を投入し、50℃に維持しながら、攪拌機(Agitator)を用いて1,500rpmの速度で5分間攪拌し、ここに親水性生理活性物質部を投入し、攪拌機(Agitator)を用いて1,500rpmの速度で5分間撹拌して均一化させることにより、過量の親水性活性成分をバルキー(Bulky)に均一化させた第1濃縮相を準備した。前記第1濃縮相を50℃の温度に維持しつつ、攪拌機(Agitator)を用いて低速の500rpmで1時間攪拌して前記第1濃縮相を十分に水和(Hydration)させた。前記水和された第1濃縮相を50℃で高圧型乳化機に投入して9,000barの圧力で2回処理し、過量の親水性生理活性物質が最内相の水相及び脂質二重層(Bilayer)の間に形成された水相に位置しながら、ナノサイズに濃縮カプセル化して第2濃縮相を形成した。これを28℃まで攪拌機(Agitator)で500rpmの速度にて徐々に攪拌しながら冷却させて安定化することにより、ペプチド未結合状態のマイクロカプセルを製造した。製造されたマイクロカプセルの直径は約0.2μmであった。

[製造例2-2]ペプチド付着マイクロカプセルの製造
製造例1のペプチドを、製造例2-1で製造したマイクロカプセルに付着させた。
【0038】
ペプチドのN末端とペプチド未結合状態のマイクロカプセル表面のカルボキシル基とを連結してマイクロカプセルの表面に製造例1のペプチドをそれぞれ付着させた。具体的には、ペプチド未結合状態のマイクロカプセルを、MES(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)バッファサリン(MES buffered saline、pH5.5)上で再懸濁させ、EDAC(1-Ethyl-3-(3-Dimethylaminopropyl)carbodiimide)及びNHS(N-Hydroxysuccinimide)と一緒に約1時間反応させた。その後、マイクロカプセルを約15000rpmで1時間ほど遠心分離してEDACとNHSを除去することにより、ペプチド未結合マイクロカプセルの表面を活性化させた。その後、約100mlのPBS(phosphate-buffered saline)にマイクロカプセルを浮遊させた後、室温で約0.1gの配列番号1のペプチドとマイクロカプセルとを反応させた。その後、PBSバッファで洗浄することにより、未反応ペプチドは除去した。配列番号2および3のペプチドも、上記と同様の方法で、試薬の投与量を調節して、ペプチドが連結されているマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセル上にペプチドが付着したか否かは、Kaiser testで確認した。また、走査型電子顕微鏡(JSM-7100F)を用いて、マイクロカプセル表面上のペプチドの密度を測定し、およそ2peptides/μmの密度を示した。
【0039】
配列番号1のペプチドが連結されているマイクロカプセルはカプセル1とし、配列番号2のペプチドが連結されているマイクロカプセルはカプセル2とし、配列番号3のペプチドが連結されているマイクロカプセルはカプセル3とする。

[製造例3]マイクロカプセル上のペプチド密度の調整
【0040】
製造例2と同様にマイクロカプセルを製造するが、ペプチドの投与量を調節することにより、マイクロカプセル上のペプチド密度を調節した。密度によって、実験群を次のように分けた。
【0041】
【表2】
[実施例]
[実施例1]細胞毒性テスト
【0042】
B16メラノーマ細胞(B16 melanoma cell)にカプセル1~3それぞれを10μMずつ処理し、細胞生存率を確認した。対照群としては、コウジ酸とアルブチンを処理した。その結果、本発明のカプセルを処理した場合に細胞生存率がほとんど変化しないため、細胞毒性がないことを確認することができた。

[実施例2]標的細胞との結合選択度(selectivity)テスト
【0043】
カプセル1~3それぞれが標的細胞以外に他の細胞とも結合するか否かを確認するために、さまざまな種類の細胞との結合有無を確認してみた。その結果、カプセル1~3それぞれは、それぞれの標的細胞以外の細胞とはほとんど結合しないことを確認することができた。

[実施例2-1]カプセル1
【0044】
カプセル1の細胞との結合力を蛍光免疫法によってフローサイトメトリー(Flow Cytometry、FACS)を用いて確認した。使用された細胞は、線維芽細胞(fibroblasts)、ケラチン細胞(keratinocytes)、リンパ球(lymphocyte)、単球(monocytes)、メラニン細胞(melanocytes)、樹枝状細胞(dendritic cells)及び皮膚ニューロン(skin neuron)であった。測定の結果、カプセル1と標的細胞である線維芽細胞との結合率は約75%を示したのに対し、標的細胞以外の細胞との結合力は著しく低いことを確認した(図1a)。

[実施例2-2]カプセル2
【0045】
カプセル2に対しても、実施例2-1と同様にして実験を行った。その結果、カプセル2は、標的細胞であるメラニン細胞とは約70%の結合力を示すが、これに対し、他の細胞との結合率は著しく低いことを確認することができた(図1b)。

[実施例2-3]カプセル3
【0046】
カプセル3に対しても、実施例2-3と同様にして実験を行った。その結果、カプセル3は、標的細胞であるケラチン細胞との結合率は約85%であるが、これに対し、他の細胞との結合率は著しく低いことを確認することができた(図1c)。

[実施例3]ペプチド連結されているマイクロカプセルの抗老化効果(カプセル1-3)
[実施例3-1]線維芽細胞とカプセルとの結合力(ペプチドの有無による結合力の比較)
【0047】
カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセルと、カプセルの表面にペプチドが連結されていないマイクロカプセルの線維芽細胞との結合力及び有効成分の吸収力を比較した。
【0048】
カプセル1を4℃で標的細胞と一緒に1時間培養して結合プロセスを遅延させた後、カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセルと、カプセルの表面にペプチドが連結されていないマイクロカプセルの線維芽細胞との結合力を測定した。カプセル1の線維芽細胞との結合力は、ペプチドが連結されていないマイクロカプセルの結合力に比べて約4倍程度優れている。

[実施例3-2]コラーゲン及びエラスチン生成力の比較
カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセルを線維芽細胞と反応させ、エラスチンとコラーゲンの生成量を観察した。
【0049】
ペプチドが連結されていないカプセルを使用した場合には、コラーゲン生成量が微々たるものであるが、これに対し、ペプチドが連結されているカプセル1を使用した場合には、ペプチドが連結されていないカプセルに比べてコラーゲンタイプ1と3の生成量が約1.7倍以上増加した(図2a、図2b)。
【0050】
エラスチン生成量は、カプセル反応後の7日経過時に、ペプチドが連結されているカプセル1を使用した場合が、ペプチド連結されていないカプセルを使用した場合に比べて、最大9倍以上のエラスチン生成量を示した(図2c)。

[実施例3-3]皮膚しわ改善パネルテスト
【0051】
カプセル1が総重量に対して30wt%で含まれているアンプルを製造し、皮膚疾患のない35~65歳の女性21人それぞれに対して、前記アンプルを1日2回ずつ顔の全面にまんべんなく28日間塗り、目元しわ改善程度を確認した。その結果、おおむね約10%の目元しわ改善効果を確認することができた(図3)。

[実施例4]ペプチドが連結されているマイクロカプセルの美白効果(カプセル2-3)
[実施例4-1]メラニン細胞とα-MSHとの結合妨害能
【0052】
カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセル(カプセル2)と、カプセルの表面に連結されていないマイクロカプセルを10μMずつ処理し、メラニン細胞とα-メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)との結合力を測定した。その結果、カプセル2を使用した場合に、メラニン細胞とα-MSHとの結合力が95%以上減少することが分かった(図4a)。

[実施例4-2]メラニン合成阻害能
【0053】
カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセルと、カプセルの表面にペプチドが連結されていないマイクロカプセルを10μMずつ処理し、メラニンの合成量を比較した。その結果、カプセル2を投与した場合に、メラニン細胞からのメラニンの生成量が大幅に減少することが分かった(図4b)。

[実施例4-3]皮膚美白効果パネルテスト
【0054】
皮膚疾患のない35~55歳の女性21人に対して、カプセル2が15%含まれているトナーを顔の全面にまんべんなく1日2回14日間皮膚に塗布し、美白効果を確認した。その結果、カプセル2を含むトナーを塗った場合、著しく改善された美白効果を確認することができた(図5)。

[実施例5]ペプチドが連結されているマイクロカプセルの皮膚バリア改善効果(カプセル3-3)
[実施例5-1]ケラチン1およびケラチン5の発現増進効果
【0055】
ペプチドが連結されているカプセル3の皮膚バリア改善効果を調べるために、ケラチンの発現増進効果を調べた。カプセルの表面にペプチドが連結されているマイクロカプセルと、カプセルの表面にペプチドが連結されていないマイクロカプセルを10μMずつ処理し、これらの因子の発現程度を確認した。その結果、カプセル3を使用した場合は、ペプチドが連結されていないカプセルを使用した場合に比べてケラチン1およびケラチン5の発現量が2倍程度高かった(順次図6a、図6b)。

[実施例5-2]フィラグリン合成増進効果
【0056】
実施例5-1と同様にしてカプセルを処理し、フィラグリン合成効果を確認した。その結果、カプセル3を使用した場合は、ペプチドが連結されていないカプセルを使用した場合と比較して、約5倍のフィラグリン発現量を確認することができた(図6c)。

[実施例6]皮膚バリア強化効果パネルテスト
【0057】
皮膚疾患のない35~55歳の女性20人に対して、カプセル3が20%含まれている栄養クリームを顔の全面にまんべんなく1日2回ずつ14日間皮膚に塗布し、皮膚真皮緻密度と皮膚厚みを確認した。その結果、カプセル3を含む栄養クリームを塗った場合には、真皮緻密度及び皮膚厚みが著しく改善され、皮膚バリア改善効果を確認することができた(図7)。

[実施例7]ペプチドの密度による効果差
【0058】
表2に記載されている実験群に対して、実施例3~6の実験を同様に行った。カプセル1-3、2-3、3-3を含む場合(密度が2peptides/μmである場合)の効果を10とし、各実験群の結果はカプセル1-3、2-3、3-3に対する相対的な値で表示した。
表3は実施例3の実験に対応した実験結果値を記録したものであり、表4は実施例4、表5は実施例6に対応した実験結果の値を記録したものである。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
その結果、ペプチドの密度が0.1~10peptides/μmの範囲を外れた場合、皮膚状態促進効果が微々たるものであることが分かった。

[剤形例]
[剤形例1]トナー(ブライトニング用)
【0062】
【表6】
[剤形例2]アンプル(老化改善用)
【0063】
【表7】
[剤形例3]セラム(老化改善用)
【0064】
【表8】
[剤形例4]アイクリーム(老化改善用)
【0065】
【表9】
[剤形例5]ローション(弾力用)
【0066】
【表10】
[剤形例6]栄養クリーム(弾力用)
【0067】
【表11】
【配列表フリーテキスト】
【0068】
配列番号1(Ala-Lys-Ser-Thr)は、線維芽細胞をターゲットとするペプチドの配列であって、配列番号1のペプチドは、線維芽細胞成長因子受容体と結合するものであり得る。
【0069】
配列番号2(Glu-Gly-His-Lys-Ile-Phe-Pro-Ser-Trp-Tyr)は、メラニン細胞をターゲットとするペプチドの配列であって、配列番号2のペプチドは、メラノコルチン受容体と結合するものであり得る。
【0070】
配列番号3(Ala-Asp-Gly-Ser-Pro)は、ケラチン細胞をターゲットとするペプチドの配列であって、配列番号3のペプチドは、インテグリン受容体、特にインテグリン受容体のベータ1ファミリーと結合するものであり得る。

図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10