IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイ・オー・データ機器の特許一覧

<>
  • 特許-外部記憶装置 図1
  • 特許-外部記憶装置 図2
  • 特許-外部記憶装置 図3
  • 特許-外部記憶装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】外部記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G06F3/06 306Z
G06F3/06 301Z
G06F3/06 304N
G06F3/06 540
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017101852
(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公開番号】P2018197922
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591275481
【氏名又は名称】株式会社アイ・オー・データ機器
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川久保 優
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】須田 勝巳
【審判官】山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-250566(JP,A)
【文献】特開2006-318310(JP,A)
【文献】特開2008-257411(JP,A)
【文献】特開2004-152336(JP,A)
【文献】特開2005-250644(JP,A)
【文献】特開2006-079219(JP,A)
【文献】特開2010-224954(JP,A)
【文献】特開2017-054228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/06-3/08
G06F13/10-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーリング動作を行う複数のメイン記憶装置と、
メイン記憶装置の動作中に休止状態に設定される予備記憶装置と、
前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置の故障確率に相関する故障確率相関情報と前記メイン記憶装置の故障確率に応じて変更される所定の値とを参照し、前記メイン記憶装置の故障確率相関情報に基づいて算出された算出値と前記予備記憶装置の故障確率相関情報に基づいて算出された算出値との差が前記所定の値より大きいという条件を満たしている場合に前記メイン記憶装置前記予備記憶装置に切り替えて前記複数のメイン記憶装置の切り替え用の予備記憶装置とする制御部と、を備える、外部記憶装置。
【請求項2】
前記故障確率相関情報は、前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置の動作時間である、請求項1記載の外部記憶装置。
【請求項3】
前記動作時間は、前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置のデータ転送を伴うアクセス時間である、請求項2記載の外部記憶装置。
【請求項4】
前記故障確率相関情報は、各記憶装置が持っているSMART値である、請求項1記載の外部記憶装置。
【請求項5】
前記故障確率相関情報は、各記憶装置の任意の場所に設けられたセンサからの情報である、請求項1記載の外部記憶装置。
【請求項6】
前記故障確率相関情報は、前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置の動作時間、各記憶装置が持っているSMART値、各記憶装置の任意の場所に設けられたセンサからの情報のうちの複数の情報に基づいている、請求項1記載の外部記憶装置。
【請求項7】
前記センサは、各記憶装置の任意の場所に設けられている温度センサである、請求項6記載の外部記憶装置。
【請求項8】
前記センサは、各記憶装置の任意の場所に設けられている振動センサである、請求項6記載の外部記憶装置。
【請求項9】
前記センサは、各記憶装置の任意の場所に設けられている電圧センサである、請求項6記載の外部記憶装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記所定の条件を満たしているか否かの判断を所定周期で行う、請求項1~9のいずれかに記載の外部記憶装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記切り替え時に、切り替え対象の前記メイン記憶装置と前記予備記憶装置の差分ファイルのみを前記予備記憶装置にコピーする、請求項1~10のいずれかに記載の外部記憶装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置の故障確率相関情報のいずれかが予め設定した故障間近値以上であると、前記複数のメイン記憶装置及び前記予備記憶装置でのミラーリング動作を開始し、記憶装置交換アラームを生成する、請求項1~11のいずれかに記載の外部記憶装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の外部記憶装置と、
前記故障確率相関情報を前記外部記憶装置から受信し、前記所定の条件を満たすか否かの判断に関する情報を生成し、その結果を前記外部記憶装置に送信する判定サーバと、
を備える外部記憶システム。
【請求項14】
請求項12に記載の外部記憶装置と、
前記記憶装置交換アラームを前記外部記憶装置から受信し、予め登録されている前記外部記憶装置の固有情報に基づいて、交換用記憶装置の購入Website情報をユーザ宛先に送信するサーバと、
を備える外部記憶システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCやネットワークに接続されるバックアップ装置などの外部記憶装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーリング機能を持つバックアップ装置などの外部記憶装置には、通常、ミラーリング動作を行う複数のディスクドライブ(メインディスクドライブ)と、メインディスクドライブのバックアップ及び故障に備えて予備のディスクドライブが内蔵されている。
【0003】
従来、メインディスクドライブと予備ディスクドライブを備えたバックアップ装置において、予備ディスクドライブを使用しないときにその電源をOFFしたり、メインディスクドライブが故障したときに、そのドライブを仮想的に予備ディスクドライブに切替える提案がなされている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、予備ディスクドライブを所定時間ごとに、動作状態にあるメインディスクドライブと入れ替える提案がなされている(特許文献2)。
【0005】
また、動作状態にあるディスクドライブの障害早期発見や故障予測を目的として、SMART(Self-Monitoring,Analysis and Reporting Technology)機能がディスクドライブに搭載されていたり、ディスクドライブに搭載されているセンサからの情報でディスクドライブの生存確率や故障時間を予測する手法が従来から提案されている(特許文献3)。このような装置では、ディスクドライブが故障する前に、その交換を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-207166号公報
【文献】特開平9-251353号公報
【文献】特開平2009-266291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、予備ディスクドライブを使用しないときにその電源を切るため、予備ディスクドライブの寿命を延ばすことが出来るが、メインディスクドライブの寿命を延ばすことは出来ず、このため外部記憶装置全体としての寿命も延ばすことは出来ない。
【0008】
また、特許文献2では、所定時間ごとに予備ディスクドライブとメインディスクドライブを切り替えるが、メインディスクドライブが複数個ある場合、各ディスクドライブの寿命がバラバラとなり、外部記憶装置全体としての寿命が長くなることに限界がある。また、所定時間ごとに切り替え動作が発生するため、所定時間経過前にメインディスクドライブが故障してしまった場合は、切り替え動作を行うことが出来なくなる。
【0009】
また、特許文献3では、ディスクドライブが故障しやすくなった状態を事前に把握することはできるが、各ディスクドライブの寿命や外部記憶装置全体としての寿命を延ばすための解決策は示されていない。
【0010】
この様に、従来の外部記憶装置では、結果的に、外部記憶装置全体の寿命を延ばすことが出来なかった。
【0011】
本発明の目的は、ディスクドライブなどの記憶装置の故障確率に基づき、長寿命化を実現する外部記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る外部記憶装置は、ミラーリング動作を行う複数のメイン記憶装置と、予備記憶装置と、制御部と、を備える。制御部は、複数のメイン記憶装置及び予備記憶装置の故障確率に相関する故障確率相関情報を参照し、ミラーリング動作の対象となる記憶装置を、所定の条件を満たすメイン記憶装置から予備記憶装置に切り替えて前記複数のメイン記憶装置の切り替え用の予備記憶装置とする。故障確率相関情報は、記憶装置の故障確率に相関する情報であればどのようなものであっても良い。
【0013】
外部記憶装置の典型例としてはバックアップ装置がある。また、メイン記憶装置及び予備記憶装置としては、一例としてディスクドライブが考えられるがそれ以外であっても良い。
【0014】
以下、外部記憶装置としてはバックアップ装置を示し、また、メイン記憶装置をメインディスクドライブ、予備記憶装置を予備ディスクドライブと称して説明する。
【0015】
上記バックアップ装置によれば、予備ディスクドライブに切り替えられるメインディスクドライブは、故障確率に相関する故障確率相関情報から設定される所定の条件を満たすものである。本発明のバックアップ装置は、故障する確率に相関する故障確率相関情報を参照し、故障する確率の高いメインディスクドライブがあると、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに、それまでの予備ディスクドライブをメインディスクドライブに切り替える。切り替えにより、予備ディスクドライブはメインディスクドライブとして使用され、切り替えられたメインディスクドライブは予備ディスクドライブとして作動しない休止状態となる。休止状態に置かれた予備ディスクドライブは、その後、メインディスクドライブよりも、故障する確率の上昇が抑えられるため、次にメインディスクドライブに切替えられたときは、それまでのメインディスクドライブと比較して故障確率が下がった状態で駆動される。これが繰り返されることで、各ディスクドライブの故障確率が平準化されていき寿命を長く出来、全体としてバックアップ装置の寿命が長くなる。
【0016】
なお、休止状態とは、記憶装置がディスクドライブの場合、その電源をオフするか、スピンドルモータをオフするなど、寿命に大きく影響を及ぼす負荷、例えば機械的な負荷がなくなる状態である。
【0017】
また、所定の条件は、例えば、前記メイン記憶装置の故障確率相関情報に基づいて算出された算出値と前記予備記憶装置の故障確率相関情報に基づいて算出された算出値との差が所定の値より大きい場合である。
【0018】
本発明の一つの実施態様では、故障確率相関情報を、複数のメインディスクドライブ及び予備ディスクドライブの動作時間とする。この実施態様では各動作時間に基づいて故障確率が算出される。故障確率が上記各算出値となる。この場合の所定の条件は、例えば下記の式で求めることができる。
【0019】
(複数のメインディスクドライブにおいて値が最大の算出値(メインディスクドライブが2台の場合は算出値1と算出値2のうち値が大きい方))-(算出値3)>第1所定値
ただし、
算出値1は、第1のメインディスクドライブの動作時間に基づいて算出された故障確率、
算出値2は、第2のメインディスクドライブの動作時間に基づいて算出された故障確率、
算出値3は、予備メインディスクドライブの動作時間に基づいて算出された故障確率。
【0020】
本実施態様では、メインディスクドライブの動作時間が長い場合、そのメインディスクドライブは疲労しており、故障確率は高いと言える。そこで、所定の条件として、動作時間に関する閾値である第1所定値を設定し、上記式の左辺の差が第1所定値を超えていれば、当該メインディスクドライブの故障確率が高い(メインディスクドライブと予備ディスクドライブ間の故障確率の差が大きい)とみなして、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替える。これにより、故障する前に、メインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替えることができ、そのメインディスクドライブの故障確率の上昇を抑えておくことができる。これが繰り返されることで、各ディスクドライブの故障確率が平準化され、全体としてバックアップ装置全体の寿命が長くなる。
【0021】
尚、複数のメインディスクドライブの動作時間が同一であって、いずれの動作時間も長い場合には、何れかのメインディスクドライブを切り替え用に選択する。この選択は、予め設定したメインディスクドライブでもよく、或いは、ランダムに選択してもよい。
【0022】
本発明の他の実施態様では、故障確率相関情報を、各ディスクドライブが予め持っているSMART値とする。この実施態様では各SMART値に基づいて故障確率が算出される。故障確率が上記各算出値となる。この場合の所定の条件は、例えば下記の式で求めることができる。
【0023】
(複数のメインディスクドライブにおいて値が最大の算出値(メインディスクドライブが2台の場合は算出値1と算出値2のうち値が大きい方))-(算出値3)>第2所定値
ただし、
算出値1は、第1のメインディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率、
算出値2は、第2のメインディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率、
算出値3は、予備メインディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率。
【0024】
SMART値は、そのディスクドライブのエラー発生頻度情報やワーストエラー情報など、ディスクドライブに固有の情報であって、故障確率に有意に相関する情報である。よって、上記式において、左辺のSMART値に基づいて算出された故障確率(算出値)の差が大きい場合、メインディスクドライブの故障確率が高いと判断できる。そこで、所定の条件としてSMART値に関する閾値である第2所定値を設定し、上記式の左辺の差が第2所定値を超えていれば、故障確率が高いとみなして、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替える。これにより、故障する前に、予備ディスクドライブに切り替えることができる。
【0025】
尚、複数のメインディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率が同一である場合、何れかのメインディスクドライブを選択する。この選択は、予めバックアップ装置に設定したメインディスクドライブでもよく、或いは、ランダムに選択してもよい。
【0026】
本発明の他の実施態様では、故障確率相関情報を、各ディスクドライブまたはバックアップ装置の任意の場所に設けられている温度センサからの温度情報とする。この実施態様では各温度情報に基づいて故障確率が算出される。故障確率が上記各算出値となる。この場合の所定の条件は、例えば下記の式で求めることができる。
【0027】
(複数のメインディスクドライブにおいて値が最大の算出値(メインディスクドライブが2台の場合は算出値1と算出値2のうち値が大きい方))-(算出値3)>第3所定値
ただし、
算出値1は、第1のメインディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率、
算出値2は、第2のメインディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率、
算出値3は、予備メインディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率。
【0028】
メインディスクドライブは、長時間動作し続けると、スピンドルモータ部の摩擦熱等によって温度が高くなり、故障しやすくなる。また、各ディスクドライブの周囲温度も故障確率の上昇に影響を与え、例えば各ハードディスクが動作状態であるのか、電源オフ状態であるのかといった動作状態によっても温度による影響度が異なる。そこで、所定の条件として温度センサからの温度情報に関する閾値である第3所定値を設定する。温度情報に基づいて算出された故障確率値(算出値)が第3所定値を超えていれば、故障確率が高いとみなして、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替える。これにより、故障する前に、予備ディスクドライブに切り替えることができる。
【0029】
尚、複数のメインディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率値が同一である場合、何れかのメインディスクドライブを選択する。この選択は、予めバックアップ装置に設定したメインディスクドライブでもよく、或いは、ランダムに選択してもよい。
【0030】
本発明の他の実施態様では、故障確率相関情報を、各ディスクドライブまたはバックアップ装置の任意の場所に設けられている振動センサからの振動情報とする。この実施態様では各振動情報に基づいて故障確率値が算出される。故障確率値が上記各算出値となる。この場合の所定の条件は、例えば下記の式で求めることができる。
【0031】
(複数のメインディスクドライブにおいて値が最大の算出値(メインディスクドライブが2台の場合は算出値1と算出値2のうち値が大きい方))-(算出値3)>第4所定値
ただし、
算出値1は、第1のメインディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率、
算出値2は、第2のメインディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率、
算出値3は、予備メインディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率。
【0032】
メインディスクドライブは、長時間動作し続けると、動作が不安定になり、振動振幅が大きくなったり、振動周期が不規則となる。また、各ディスクドライブに対する外部からの衝撃も故障確率に影響を与え、例えば各ハードディスクが動作状態であるのか、電源オフ状態であるのかといった動作状態によっても影響度が異なる。そこで、所定の条件として振動情報に関する閾値である第4所定値を設定する。振動情報に基づいて算出された故障確率値(算出値)が第4所定値を超えていれば、故障確率が高いとみなして、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替える。振動情報としては振動周期を使用することも出来る。この場合は、振動周期が第4所定値を超えたメインディスクドライブを切り替え対象とする。
【0033】
尚、複数のメインディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率値が同一である場合、何れかのメインディスクドライブを選択する。この選択は、予めバックアップ装置に設定したメインディスクドライブでもよく、或いは、ランダムに選択してもよい。
【0034】
本発明の他の実施態様では、故障確率相関情報を、各ディスクドライブまたはバックアップ装置の任意の場所に設けられている電圧センサからの電圧情報とする。この実施態様では各HDDに供給される電源の電圧情報に基づいて故障確率値が算出される。故障確率値が上記各算出値となる。この場合の所定の条件は、例えば下記の式で求めることができる。
【0035】
(複数のメインディスクドライブにおいて値が最大の算出値(メインディスクドライブが2台の場合は算出値1と算出値2のうち値が大きい方))-(算出値3)>第5所定値
ただし、
算出値1は、第1のメインディスクドライブの電圧情報に基づいて算出された故障確率、
算出値2は、第2のメインディスクドライブの電圧情報に基づいて算出された故障確率、
算出値3は、予備メインディスクドライブの電圧情報に基づいて算出された故障確率。
【0036】
メインディスクドライブは、メインディスクドライブに供給されている電源の電圧として、メインディスクドライブの電源定格値以上の電圧が印加された場合や電圧が大きく低下した場合に、電気的なストレスを受け、故障確率に影響を及ぼす。例えば、雷によってバックアップ装置100の電源に雷サージ電圧が印加されてしまった場合や、停電により電源が瞬停した場合などである。また、例えば各ハードディスクが動作状態であるのか、電源オフ状態であるのかといった動作状態によっても故障確率への影響度は異なる。そこで、所定の条件として電圧情報に関する閾値である第5所定値を設定する。電圧情報に基づいて算出された故障確率値(算出値)が第5所定値を超えていれば、故障確率が高いとみなして、そのメインディスクドライブを予備ディスクドライブに切り替える。電圧情報としては電圧値の他に、電圧がメインディスクドライブの定格値を超えた回数や瞬停した回数といった回数情報を使用することも出来る。この場合は、回数情報に基づいて算出された算出値が第5所定値を超えたメインディスクドライブを切り替え対象とする。
【0037】
尚、複数のメインディスクドライブの電圧情報に基づいて算出された故障確率値が同一である場合、何れかのメインディスクドライブを選択する。この選択は、予めバックアップ装置に設定したメインディスクドライブでもよく、或いは、ランダムに選択してもよい。
【0038】
上記バックアップ装置においては、制御部は、所定の条件を満たしているか否かの判断を、電源が供給された時点から所定周期で行うことが好ましい。
【0039】
この構成によれば、制御部は、所定の条件を満たしているか否かの判断を所定周期ごとに行うが、その判断は故障前の故障確率相関情報に基づくものである。このため、故障前の切り替えが可能である。
【0040】
上記バックアップ装置においては、制御部は、前記切り替え時に、切り替え対象のメインディスクドライブと予備ディスクドライブとの差分ファイルのみを予備ディスクドライブにコピーすることが好ましい。
【0041】
差分ファイルのみをファイル単位でコピー(リビルド)するため、そのリビルド時間が短時間で良い。
【0042】
なお、以上の説明では記憶装置としてディスクドライブを示したが、本発明は、アクセス回数や電源オン時間が故障確率に相関するソリッドステートドライブ(SSD)などにも適用できる。
【0043】
本発明によれば、ディスクドライブ等の記憶装置の故障確率に基づき、長寿命化のバックアップ装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態のバックアップ装置の構成を示したブロック図である。
図2】本実施形態のバックアップ装置におけるRest動作を示すフローチャートである。
図3】本実施形態のバックアップ装置における定期バックアップ動作を示すフローチャートである
図4】本実施形態のバックアップ装置におけるRest動作の具体例を示す
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明の実施形態のバックアップ装置のブロック図である。
【0046】
図1に示される様に、本実施形態に係るバックアップ装置100は、CPUなどを含む制御部10と、バックアップ装置100をネットワークに接続するための外部インターフェイス部20と、HDD制御部30とを備えている。図1のバックアップ装置に外部のサーバが接続されることで本発明のバックアップシステムが構成される。
【0047】
HDD制御部30には、データを記憶する外部記憶部1~3として複数のハードディスクドライブ(以降、「HDD」と表記する。)1~3が接続されている。本実施形態では、「メイン記憶装置」に相当するHDDとして、HDD1とHDD2を、「予備記憶装置」に相当するHDDとしてHDD3を定義する。上記2つのHDD1、2は、通常時にペアでミラーリング動作する様に構成されており、本実施形態では、ペアでミラーリング動作するHDDを、「正常:HDDペア」と称する。バックアップ装置100の動作開始時では、「正常:HDDペア」に、HDD1とHDD2とが充てられる。
【0048】
なお、ミラーリング動作におけるHDDペアの記憶領域の実効容量は、ペアとなっている各HDDの内、最も記憶容量が小さいものに合わせられる。例えば、HDD1の記憶容量が2TBでありHDD2の記憶容量が1TBの場合、HDDペアの実効容量は1TBとなる。
【0049】
また、本実施形態にかかるバックアップ装置100におけるミラーリング動作はファイル単位でのミラーリング動作(拡張ボリューム動作と称することもある)を行っているが、ファイルをブロック単位で書き込み・読み込みをおこなう、通常のRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)構成によるミラーリング動作にも応用は可能である。
【0050】
また、図1に示されるように、各HDDはバックアップ装置100の内部に存在するが、外部に存在する構成としても良い。その場合、HDD制御部30は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などの外部接続インターフェイスを持ち、外部のUSBインターフェイスをもつHDDを「メイン記憶装置」または「予備記憶装置」としてバックアップ装置100に接続する。
【0051】
図に示す例では、バックアップを行う「正常:HDDペア」はミラーリング動作のため常時駆動しているが、予備記憶装置のHDDは休止状態であり、予め設定した日時になったときに駆動して「正常:HDDペア」のデータのバックアップをする。なお、本実施形態での休止状態とは、ディスクドライブの電源をオフするか、スピンドルモータをオフするなど、寿命に最も影響を及ぼす機械的な負荷がなくなる状態である。
【0052】
各HDDにはホットスワップを採用し、ここでは予備記憶装置のHDDを「ホットスペアHDD」と称する。本実施形態では、バックアップ装置100の動作開始時は、HDD3が「ホットスペアHDD」とされる。各HDDにホットスワップを採用する利点としては、HDD制御部30からHDD1~3に電源(不図示)が供給されているホット状態で、HDD3を手動により他のHDDに置き換える(抜き差しする)ことができることである。
【0053】
バックアップ装置100は、この他に、表示部40、操作部50、交換用HDD購入支援部60を備えている。表示部40は、ユーザに対して、バックアップ装置の動作状態,機能設定、など様々な情報を表示し、操作部は、設定情報やその他の情報を入力するためのものである。また、交換用HDD購入支援部60は、いずれかのHDDが故障間近な場合、または、故障したときに、この装置を半手動で、または自動的にHDD購入サイト等のあるサーバへ接続して、ユーザによるHDD購入の便宜に供する機能を持つ。
【0054】
バックアップ装置100は、さらに、センサ部SSと、故障確率計測部70と、Rest動作判定部80とを備える。センサ部SSは、各HDDまたはバックアップ装置100の任意の場所に取り付けられていて、温度センサ、振動センサ、電圧センサ等で構成され、温度センサは各HDDの温度を計測し、振動センサは各HDDの振動振幅や振動周期を計測し、電圧センサは、各HDDに供給される電源電圧を計測する。
【0055】
また、バックアップ装置100の筐体外部にHDDが設置され、各HDDがUSB接続によってバックアップ装置100に接続される構成の場合は、その外部接続されたHDDにセンサ部SSを設け、バックアップ装置100はセンサ部SSからの情報をUSBによって取得する。
【0056】
バックアップ装置100と外部のHDDとの接続方法には、USB接続に限らず、LAN等のネットワーク接続を使用することも出来、その場合のインターフェイスは任意の仕様を採用可能である。
【0057】
なお、筐体外部にHDDが接続されたバックアップ装置100において、筐体内部のHDDが複数個ある場合は、一般には筐体内部のHDDが同一の電源で駆動される。このような構成で、筐体内部のHDDと筐体外部のHDDとで「正常:HDDペア」と「ホットスペアHDD」が組み合わされる場合、次のようにセンサ部SSを構成する。
【0058】
すなわち、筐体内部のHDDについては、電源環境が同一であるとみなして、電圧センサを一つのみ設け、その計測値を筐体内部の各HDDの計測値とする。また、筐体外部のHDDについては電圧センサを一つのみ設ける。筐体外部のHDDが複数個あって、それぞれのHDDの電源構成が異なる場合には、各筐体外部HDD毎に電圧センサを設ける。
【0059】
以上のように、バックアップ装置100の筐体内部のHDDと筐体外部のHDDで「正常:HDDペア」と「ホットスペアHDD」が組み合わされる場合には、電源毎に電圧センサを設け、これらの電圧センサにより計測した電源電圧から後述する故障確率(算出値)を算出する。
【0060】
バックアップ装置100の筐体内部のHDDと筐体外部のHDDで「正常:HDDペア」と「ホットスペアHDD」が組み合わされる構成において、センサ部SSとして温度センサ、振動センサを用いる場合も、上記の電圧センサと同様な構成にすることが可能である。すなわち、バックアップ装置100の筐体内部のHDDが複数個ある場合、筐体に温度センサ又は振動センサを一つ設けて、その計測値を筐体内部の各HDDの計測値とする。そして、筐体外部のHDDについても温度センサ又は振動センサを一つ設ける。筐体外部のHDDが複数個あってそれぞれが離れて配置される場合は、筐体外部の各HDD毎に温度センサ又は振動センサを一つ設ける。このようなセンサ配置であっても、各センサで計測した値から後述する故障確率(算出値)を算出する。
【0061】
故障確率計測部70は、「正常:HDDペア」の故障確率と、「ホットスペアHDD」の故障確率を算出し、それぞれのHDDの識別情報に関連付けて記憶する。HDD1の故障確率を算出値1とし、HDD2の故障確率を算出値2とし、HDD3の故障確率を算出値3とする。なお、HDDの識別情報はHDDを個別に識別可能な情報であり、元々HDDが持っているシリアル番号などの情報でも良いし、バックアップ装置100が生成し、各HDDに書き込んだ情報としても良い。後者の場合、バックアップ装置100はHDDから読み込んだ情報や日時情報等を組み合わせてHDDの識別情報を生成し、これを各HDDに対して記録する。
【0062】
故障確率を表す各算出値は、故障確率計測部70が計測したHDDの合計動作時間、SMART値、センサ部SSの計測値に基づいて算出されるものであり、これらのいずれか、または全部の情報から求める。HDD2、HDD3についても同様にして求める。
【0063】
Rest動作判定部80は、各HDDにおいて算出した算出値から、「正常:HDDペア」のいずれかを、「ホットスペアHDD」に切り替えることが必要であるか否かを判定し、必要であるなら、切り替える。切り替えは、制御部30において行われる。切り替えとは、それまで休止していた「ホットスペアHDD」が、新たに「正常:HDDペア」の一つとなり、切り替え対象となった「正常:HDDペア」の一つが「ホットスペアHDD」となることである。これらの切り替えは、物理的ではなく論理的な切り替えである。したがって、例えば、「正常:HDDペア」がHDD1、HDD2の状態から、HDD1が切り替え対象となれば、HDD2とHDD3が新たな「正常:HDDペア」となってミラーリング動作を開始し、HDD1が「ホットスペアHDD」となって休止状態(Rest状態)となる。ここでは、休止状態(Rest状態)は、電源が供給されていない状態とする。
【0064】
次に、上記バックアップ装置100の動作を説明する。
【0065】
図2図3は、バックアップ装置100のHDD制御部30の動作を説明するフローチャートである。
【0066】
バックアップ装置100の動作は、図2に示されるRest動作と、図3に示される定期バックアップ動作に分けられる。
【0067】
「Rest動作」
今、「正常:HDDペア」をHDD1、HDD2とし、「ホットスペアHDD」をHDD3とする。
【0068】
S1~S3において故障確率計測部70において各HDD1~3の故障確率相関情報をそれぞれ計測値1~3として計測開始し、所定時間ごとに計測し、それぞれのHDDの識別情報に関連付けて記憶する。
【0069】
また、S4、S5において、制御部30にてHDD1、HDD2をミラーリング動作状態とする。S6では、予め設定した日時になると、HDD3を駆動して、HDD1またはHDD2のデータをHDD3にバックアップする。その後、HDD3に対する電源供給をOFFしてHDD3を休止状態にする。
【0070】
次に、S15に進んで、故障確率計測部70において、計測値1~計測値3に基づいて故障確率である算出値1~算出値3を算出し、それぞれのHDDの識別情報に関連付けて記憶する。
【0071】
次に、S8に進んで、Rest動作判定部80によりRest動作判定処理を行う。Rest動作判定処理では、各HDDにおいて計測値に基づいて算出した故障確率である算出値から、「正常:HDDペア」のいずれかを、「ホットスペアHDD」に切り替えることが必要であるか否かを判定する処理である。
【0072】
上記判定は以下のようにして行う。
【0073】
以下、計測値を動作時間として説明する。また、算出値は各HDDの累積された動作時間として説明する。
【0074】
(算出値1と算出値2のうち、値が大きい方)―(算出値3)>Rest設定値
…(式1)
Rest設定値は、予め定めた値で、本発明の第1所定値である。
【0075】
算出値1と算出値2が同じ値の場合は、予め設定された方の値か、ランダム方式でいずれかを選択する。
【0076】
なお、計測部70の算出結果に応じて、Rest設定値が変更される構成であっても良い。例えば、「正常:HDDペア」側のHDDの故障確率が高い場合に、Rest設置値を小さい値に変更し、より早いタイミングでRest動作を実施するようにしても良い。以下のような設定が可能である。
【0077】
・動作時間が短い(故障確率が低)…Rest設定値は大(例えば1000時間)
・動作時間が3年以上(故障確率が中)…Rest設定値は中(例えば500時間)
・動作時間が5年以上(故障確率が大)…Rest設定値は中(例えば100時間)
S8で式(1)が満たされれば、S11以下に進む。また、S9でHDD制御部30によりHDD3を電源ONし(またはHDD3のスピンドルモータ起動)、S10でHDD制御部30によりHDD1(またはHDD2)のデータをHDD3にバックアップし、切り替えに際してHDD3のリビルドを行う。その結果、HDD1とHDD2とHDD3は同じデータを持つ事になる。本実施例におけるHDD3のリビルドは、HDD1またはHDD2とHDD3の差分ファイルをHDD3にコピーすることで行う。差分ファイルのコピーとは、ファイル単位でデータの異なるファイルについてのみ更新、追加、削除することであり、データが同一のファイルは何もしないことである。このため、リビルド時間が短時間で済む。
【0078】
切り替えを行う前のS11で、Rest動作判定部80により次の判定を行う。
【0079】
S11では、算出値1、算出値2、算出値3のいずれかが、予め設定された故障間近値以上に到達しているかどうかを判定する。イエスの場合はS12へと進み、HDD制御部30によりHDD1~HDD3をすべてミラーリング動作状態とし、S13で、交換用HDD購入支援部60を駆動する。
【0080】
S11で、算出値1、算出値2、算出値3のいずれかが、予め設定された故障間近値以上に到達しているということは、いずれかのHDDが交換すべき状態であることを意味する。そこで、この場合は、HDD1~HDD3をすべてミラーリング動作状態として、故障間近のHDDが故障しても他のHDDでデータを確保できる確率を高くしておく。
【0081】
交換用HDD購入支援部60は、ユーザに対して、故障間近なHDDがあることと、新たなHDDの購入推奨を知らせるとともに(HDD交換アラームの生成)、購入のための支援を行う。例えば、以下のような動作が考えられる。
【0082】
・バックアップ装置にユーザのe-mailアドレスが登録されている場合
交換用HDD購入支援部60は、HDDの容量を確認し、その容量情報とともに、交換用HDDの購入を促す通知をe-mailアドレスに対して行う。
【0083】
・インターネット上のサーバにバックアップ装置の固有情報とともに、ユーザの宛先情報が登録されている場合。
【0084】
交換用HDD購入支援部60は、HDDの容量を確認し、その容量情報と、自身の固有情報(シリアル番号等)をインターネット上のサーバに送信する。サーバは受信した情報を元に最適な交換用HDDを選択し、ユーザの宛先上(e-mailアドレスがLINEアドレスなど)に、その交換用HDD情報を送信する。この場合、そのHDDを購入可能なページへのリンク情報(購入Website情報)を送信することでも良い。また、購入が不要の時はキャンセルするためのリンク先情報を送信しておくと良い。
【0085】
以上の動作は、バックアップ装置100に、交換用HDD購入申請ボタンを設け、このボタンを押したときに開始させることも出来る。また、HDD交換時期通知用表示部をさらに設け、この表示部に交換時期通知表示がなされた場合に上記ボタンの動作を有効としても良い。
【0086】
S13の上記交換用HDD購入支援によってユーザが購入した交換用HDDを故障間近なHDDと交換を行う場合、HDD1~HDD3は全てミラーリング動作状態である。このため、いずれかのHDDを交換する作業中であっても、交換対象でない残りのHDDがミラーリング動作状態を維持している。このことから、HDD交換時においてもデータ保全の確率を高くできる。
【0087】
なお、HDDの交換時に作業ミス等により故障間近なHDDを再度バックアップ装置100に誤接続した場合、バックアップ装置100はHDDの識別情報によってその事を検知し、ユーザに報知することが可能である。
【0088】
そして、正常にHDDが交換された場合、バックアップ装置100は、そのHDDの動作時間や故障確率をそのHDDの初期状態に設定する。
【0089】
また、ユーザは全てのHDD(この場合、HDD1~HDD3)を交換したい場合がある。その場合も、HDD1~HDD3はミラーリング動作状態であるため、例えば、以下の1)~3)の手順でミラーリング動作状態を維持したまま交換が可能である。
【0090】
1)HDD1を交換用HDD1と交換→HDD2またはHDD3内のデータを使用して交換用HDD1をリビルド(新HDD1)→バックアップ装置100はユーザに新HDD1の リビルド終了を通知→
2)HDD2を交換用HDD2と交換→新HDD1またはHDD3内のデータを使用して交換用HDD2をリビルド(新HDD2)→バックアップ装置100はユーザに新HDD2のリビルド終了を通知→
3)HDD3を交換用HDD3と交換→新HDD1または新HDD2内のデータを使用して交換用HDD3をリビルド(新HDD3)→バックアップ装置100はユーザに新HDD3のリビルド終了を通知、
上記1)~3)の手順とすることによって、全てのHDDを一新する場合においてもデータ保全の確率を高くしておくことができる。
【0091】
なお、本実施例では交換間近なHDDと交換する場合を記載しているが、ユーザが任意のタイミングでHDDを一新したい場合も考慮し、全てのHDDをミラーリング状態とするための操作部を設けても良い。その場合、リビルド終了と共に自動的に通常動作(HDDペア+ホットスペアHDD)に戻る構成としても良いし、通常動作に戻るための操作部をユーザが操作することによって戻る構成としても良い。
【0092】
上記S11で、Rest動作判定部80において、算出値1~3のいずれも故障間近でない場合は、S14に進んで制御部30でHDD切り替えのための制御を行う。
【0093】
すなわち、算出値1と算出値2のうち値が大きい方のHDD(HDD1又はHDD2)とHDD3の動作を論理的に入れ替える。論理的に入れ替えるとは、物理的に2つのHDDを入れ替えることではなく、「正常:HDDペア」のいずれかを「ホットスペアHDD」に切り替え、また、それまでの「ホットスペアHDD」を「正常:HDDペア」にすることである。この場合、「正常:HDDペア」が3台以上である場合は、切り替え対象の「正常:HDDペア」のHDDを「ホットスペアHDD」にするだけでも良い。残った「正常:HDDペア」のHDDでミラーリング動作を継続出来るからである。なお、算出値1と算出値2が同じ値である場合は、予め設定された側を選択するか、またはランダム方式で選択する。
【0094】
以下に、例を示す。
【0095】
・値が大きい方がHDD1の場合
HDD1とHDD3の動作を論理的に入れ替える。「正常:HDDペア」→HDD2、HDD3で、「ホットスペアHDD」→HDD1となる。
【0096】
・値が大きい方がHDD2の場合
HDD2とHDD3の動作を論理的に入れ替える。「正常:HDDペア」→HDD1、HDD3で、「ホットスペアHDD」→HDD2となる。
【0097】
以上の動作を終了すると、故障確率計測部70はHDD1、HDD2、HDD3の故障確率を算出し、それぞれのHDDの識別情報に関連付けて記憶する。その後、元のS15以下を繰り返す。
【0098】
S15以下を繰り返すことで、「正常:HDDペア」と「ホットスペアHDD」が切り替わっていき、各HDDの算出値が徐々に同じ値に漸近していく。これにより、各HDDの寿命を延ばすことが出来る。
【0099】
なお、S15以下の動作は所定時間ごとで行っても良い。例えば、一週間ごとのように定期的に行う。他の例として、各HDDの最長の動作時間やその平均値などにより所定時間を変えることも可能である。
【0100】
上記の動作において、以下の変形が可能である。
【0101】
・S15での動作として、S1~S3で計測を開始した各HDDの動作時間やSMART情報、各ディスクドライブまたはバックアップ装置の任意の場所に設けられているセンサ情報である計測値1~3をインターネットサーバ上に用意してある判定サーバに送り、判定サーバは、その情報を元にバックアップ装置100に対してRest動作をすべきかどうかを判定するための情報を生成する。この場合は、Rest動作判定部80は、判定サーバから取得した情報を元にRest動作をすべきかどうかの判定を実施する。
【0102】
上記S8でのRest動作判定では、故障確率相関情報として、動作時間の他、各HDDのSMART値を使うことも可能である。また、各HDDに設けられているセンサ部SSから得られる温度、振動、電圧(電源電圧)を使うことも可能である。
【0103】
SMART値、温度、振動、電圧を使う場合は、所定の条件式はそれぞれ下記のようになる。
【0104】
(値が最大のメインハードディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率)-(予備メインハードディスクドライブのSMART値に基づいて算出された故障確率)>第2所定値…(式1)
(値が最大のメインディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率)-(予備ディスクドライブの温度情報に基づいて算出された故障確率)>第3所定値…(式2)
(値が最大のメインディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率)-(予備ディスクドライブの振動情報に基づいて算出された故障確率)>第4所定値…(式3)
(値が最大のメインディスクドライブの電圧に基づいて算出された故障確率)-(予備ディスクドライブの電圧に基づいて算出された故障確率)>第5所定値…(式4)
上記式1においては、SMART値は各HDDが固有情報として持っているため、これを条件としたものである。
【0105】
式2においては、温度は、動作時間が長くなると高くなり、また、各HDDの周囲温度が高くなった場合も故障確率が高くなることに着目してこれを条件としたものである。このときの故障確率はHDDが動作状態か電源オフ状態(停止状態)かによっても異なってくる。
【0106】
式3においては、振動の振幅や周期は、動作時間が長くなると振幅大となったり振動周期不規則になり、また、各HDDに対する外部からの衝撃が加わった場合も故障確率が高くなることに着目してこれを条件としたものである。このときの故障確率はHDDが動作状態か電源オフ状態(停止状態)かによっても異なってくる。
【0107】
式4においては、電源電圧の変動によるHDDの故障確率に影響を及ぼすことに着目してこれを条件としたものである。このときの故障確率はHDDが動作状態か電源オフ状態(停止状態)かによっても異なってくる。
【0108】
式4においては、電源電圧が定格値以上となったり瞬停すると、HDDが電気的なストレスを受け、故障確率に影響を及ぼす。故障確率に影響を及ぼす電源電圧変動例としては雷の発生が考えられる。雷によってバックアップ装置100の電源に雷サージ電圧が印加されると、HDDは電気的に大きなストレスを受ける。
【0109】
各式1~4の所定値は、実験や予測により予め決められる。
【0110】
次に定期的に行われる、「正常:HDDペア」から「ホットスペアHDD」へのバックアップの動作について説明する。
【0111】
図3は定期バックアップ動作のフローチャートを示す。
【0112】
本実施形態では、「正常:HDDペア」の2台のHDDに対してミラーリング動作が行われ、「ホットスペアHDD」の1台のHDDに対して、定期的にデータのバックアップ動作が行われる。
【0113】
最後のバックアップから、ユーザにより予め設定した所定期間が経過した日時、例えば週末の夜の特定時刻になると、S20からのバックアップ動作がスタートする。別の実施態様として、故障確率計測部の算出結果に応じて、上記所定期間を変更しても良い。例えば、算出値1が小さい(故障確率が低い)場合は、所定期間を1か月とし、算出値1が3年以上の動作時間を表す場合は所定時間を2週間とする。バックアップ動作は、図2のRest動作とは独立して行われる。
【0114】
S20で「ホットスペアHDD」への定期バックアップを行うための日時になると、S21で「ホットスペアHDD」の電源をオンし(またはスピンドルモータを起動)、S22でHDD1またはHDD2のデータを「ホットスペアHDD」であるHDD3にバックアップする。バックアップが終了すると、S23で「ホットスペアHDD」であるHDD3の電源をOFFする(またはスピンドルモータを停止)。
【0115】
次に、図4を参照して、Rest動作の具体例を説明する。
【0116】
バックアップ装置100の動作開始時の「正常:HDDペア」をHDD1とHDD2とにし、「ホットスペアHDD」をHDD3とする。
【0117】
図4(A)は、最初の状態であり、各HDDの動作時間は「0」とする。HDD1、HDD2がミラーリング動作を開始し、HDD3は休止(Rest)状態である。なお、図の右側に示す数値は、HDDがこれまでに動作した単位時間数(電源オン時間:1単位時間を10時間としたときの単位時間数)を示す。
【0118】
図4(B)は、通常動作状態であり、10単位時間経過時である。通常動作状態中、所定期間が経過した日時になれば、S20以下の動作で、HDD1またはHDD2からHDD3へのバックアップが行われる。
【0119】
図4(C)では、Rest動作判定が行われて、「正常:HDDペア」の一つのHDD1を「ホットスペアHDD」に、「ホットスペアHDD」のHDD3を「正常:HDDペア」に切り替えると判定され、切り替え動作が行われて10単位時間経過した状態である。このとき、「正常:HDDペア」はHDD2とHDD3であり、「ホットスペアHDD」はHDD1に切り替わっている。
【0120】
図4(D)では、Rest動作判定が行われて、「正常:HDDペア」の一つのHDD2を「ホットスペアHDD」に、「ホットスペアHDD」のHDD1を「正常:HDDペア」に切り替えると判定され、切り替え動作が行われて10単位時間経過した状態である。このとき、「正常:HDDペア」はHDD1とHDD3であり、「ホットスペアHDD」はHDD2に切り替わっている。
【0121】
図4(E)では、Rest動作判定が行われて、「正常:HDDペア」の一つのHDD3を「ホットスペアHDD」に、「ホットスペアHDD」のHDD2を「正常:HDDペア」に切り替えると判定され、切り替え動作が行われて10単位時間経過した状態である。このとき、「正常:HDDペア」はHDD1とHDD2であり、「ホットスペアHDD」はHDD3に切り替わっている。
【0122】
図4(F)では、Rest動作判定が行われて、「正常:HDDペア」の一つのHDD2を「ホットスペアHDD」に、「ホットスペアHDD」のHDD3を「正常:HDDペア」に切り替えると判定され、切り替え動作が行われて10単位時間経過した状態である。このとき、「正常:HDDペア」はHDD1とHDD3であり、「ホットスペアHDD」はHDD2に切り替わっている。
【0123】
図4(G)では、Rest動作判定が行われて、「正常:HDDペア」の一つのHDD1を「ホットスペアHDD」に、「ホットスペアHDD」のHDD2を「正常:HDDペア」に切り替えると判定され、切り替え動作が行われて10単位時間経過した状態である。このとき、「正常:HDDペア」はHDD2とHDD3であり、「ホットスペアHDD」はHDD1に切り替わっている。
【0124】
以上の動作中、Rest動作判定において切り替えると判定した時には、図2のS9、S10において、切り替え直前に「ホットスペアHDD」に対するバックアップを、差分ファイルをコピーすることで行う(リビルド)。この後、S14で切り替え動作を行ったときには、3台のHDDのデータは同じである。
【0125】
以上の具体例で示したように、合計動作時間が60単位時間経過した時点では、3台のHDD1~3は、その動作時間がいずれも40単位時間となっていて、且つ各HDDは20単位時間の休止を行っている。
【0126】
また、切り替え時には、差分ファイルのコピーによるバックアップで(S10)、「正常:HDDペア」に切り替えるときのリビルドが短時間で行われる。
【0127】
よって、各HDDは途中、休止(休息)しながら稼働していくこととなり、長時間の連続動作によるダメージを受けることがなくなる。また、各HDDの合計動作時間も等しくなっていくため、各HDDの寿命も同じようになり、且つ長くなる。このため、バックアップ装置100全体としても長寿命化が可能となる。
【0128】
なお、以上の説明では、HDDの故障確率相関情報の例としてHDDの動作時間を示したが、HDDの動作時間は電源オン時間であっても良いし、これに代えてHDDのデータ転送を伴ったアクセス時間であっても良い。後者の場合、例えば、ミラーリング動作をしている「正常:HDDペア」のそれぞれのHDDは読み書き動作用と書き込み動作用に分けることができ、それぞれの電源オン時間が同一であっても、読み書き動作用は書き込み動作用よりもデータ転送を伴ったアクセス時間が長くなる場合がある。この場合、読み書き動作用のHDDの方が動作時間が長くなり、故障確率は相対的に上昇する。
【0129】
また、以上の説明では、「正常:HDDペア」を2台のHDDとしてミラーリング動作を行うようにしたが、2台以上であっても良い。「ホットスペアHDD」も複数台であって良い。
【0130】
「ホットスペアHDD」が複数台ある場合は、Rest動作判定部80は各「ホットスペアHDD」の中から一番動作時間が短い(または故障確率が低い)ものを選択し、Rest動作対象とする。
【0131】
また、HDDを、「正常:HDDペア」と「ホットスペアHDD」を1つのグループとして、グループ1(HDDペア1、ホットスペアHDD1)、グループ2(HDDペア2、ホットスペアHDD2)、・・・、というように複数のグループによって構成してもよい。そうした場合、バックアップ装置100は、グループ毎にRest動作を実施しつつ、各HDDペアの記憶領域の実効容量を仮想的に結合させ、HDDペア1+HDDペア2+・・・の実効容量を持ったバックアップ装置100として動作する構成としても良い。
【0132】
そして、バックアップ装置100はHDDペアに対してファイルを書き込む際、各HDDペアの中で、最も空き実効容量の大きいHDDペアに対して自動的に割り振りを行い、ファイルの書き込みをおこなう構成としても良い。
【0133】
また、複数のグループによって構成されるHDDにおいて、グループ1に所属するHDDが故障間近となり、他のグループに所属するHDDは故障間近で無い場合、HDD制御部30はグループ1の全てのHDDをミラーリング動作状態とする構成としても良い。この場合グループ1の全てのHDDをミラーリング動作状態とし、ユーザがグループ1の故障間近なHDDと交換用HDDを交換可能な構成とすればよい。
【0134】
また、本発明は、ディスクドライブ以外の他の記憶装置、例えばソリッドステートドライブ(SSD)や、その他の記憶装置にも適用できる。
【0135】
また、本発明の算出値は複数種類の計測値を元に算出しても良い。例えば、各HDDの動作時間、SMART情報、各種センサからの情報といった複数種類の計測値の情報を元として故障確率を算出しても良い。
【0136】
また、各HDDが「正常:HDDペア」なのか「ホットスペアHDD」なのかわかる表示部を設けることも好ましい。また、図2のS11でいずれかのHDDが故障間近と判定されたときに、そのHDDを表示することも可能である。さらに、各HDDの動作時間などの故障確率相関情報を表示することも可能である。
【0137】
また、各HDDに対して、それぞれの計測値や算出値を記録する構成としても良い。そうした場合、例えば複数のバックアップ装置100a、バックアップ装置100bが存在する環境において、ユーザが故障間近なHDDを交換する際、バックアップ装置100aから取り出した故障間近なHDDを、間違って別のバックアップ装置100bに接続した場合であっても、バックアップ装置100bは故障間近なHDDに記録されている計測値や算出値を確認する事によって、その事を検知し、ユーザ等に報知することが可能となる。
【符号の説明】
【0138】
10…制御部
20…外部インターフェイス部
30…HDD制御部
40…表示部
HDD1~3…ハードディスクドライブ
70-故障確率計測部
80…Rest判定部
図1
図2
図3
図4