(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
A61H 15/00 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
A61H15/00 310C
A61H15/00 310D
(21)【出願番号】P 2017188976
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2016251516
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/054450(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201814806(CN,U)
【文献】特開2015-163177(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166299(JP,U)
【文献】特開2000-152970(JP,A)
【文献】特開2013-034694(JP,A)
【文献】仏国特許発明第618121(FR,A)
【文献】特表2014-532522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持するためのハンドル部を備えた本体と、
上記本体に対して相対的に旋回可能に設けられたアーム部と、
上記アーム部に固定された2つのローラシャフトと、
上記2つのローラシャフトにそれぞれ回転可能に保持された2つのローラと、
上記旋回移動の範囲内にある基準位置に向かって上記アーム部を付勢する付勢機構とを有して
おり、
上記アーム部の旋回軸は、上記2つのローラの並び方向に平行に延びている、美容器。
【請求項2】
上記本体と上記アーム部との間に介在し、上記アーム部を上記本体に対して相対的に旋回可能とする旋回機構を更に有している、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
上記美容器は、上記アーム部、上記旋回機構及び上記付勢機構を備えたローラ保持体を有している、請求項2に記載の美容器。
【請求項4】
上記アーム部は、上記美容器の使用時に上記美容器が往復移動する往路及び復路において旋回可能であり、
上記2つのローラは幅方向に並び、
上記2つのローラの回転軸は、上記本体から離れるほど互いの距離が広がるように配置されて
おり、
上記美容器を往復移動させることにより、往路及び復路のいずれにおいても、上記2つのローラにより肌を摘み上げることができるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の美容器。
【請求項5】
上記2つのローラの回転軸は共通の平面上に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の美容のために、ローラを肌に押し当てつつ回転させて用いる美容器が知られている。この種の美容器として、ハンドルと、ハンドルに回転可能に取り付けられた複数のローラとを有し、隣り合うローラの間に使用者の身体各部を挟みこんで使用する美容器がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、二股に分岐した形状を呈する本体部と、本体部の各先端に取り付けられたローラとを有し、2つのローラの回転軸が、本体部から離れるほど互いの距離が広がる先広がり状に配置された美容器が記載されている。この美容器は、ローラを肌に押し当てた状態で本体部を引き寄せることにより、2つのローラの間の肌を摘み上げるように揉みほぐすことができる。その結果、高いマッサージ効果を奏することができる。
【0004】
また、特許文献2には、棒状の把持部の上端に、互いに対向する一対の軸受腕部を設けるとともに、2つの球体が軸回転可能に設けられた回動部を一対の軸受腕部の間に上下回転自在に支持したマッサージ器具が開示されている。そして、軸受腕部には回動部を軸受腕部に押し付けて両者を圧接することにより、回動部が上下回動動作しないように固定する回動動作固定部が固定解除自在に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-130327号公報
【文献】特開2013-34694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の美容器の使用態様としては、ローラを肌に押し当てた状態で美容器を往復移動させる態様が最も簡便である。しかし、美容器を往復移動させる場合には、往路におけるローラの回転方向が、復路のローラの回転方向とは逆方向になる。さらに、美容器の移動方向が反転することにより、肌に対するローラの回転軸の角度が変化する。それ故、往路及び復路の両方において所望のマッサージ効果を奏することが難しいという問題がある。
【0007】
即ち、例えば特許文献1の美容器は、本体部を引き寄せるように移動させることにより、上述したように肌の摘み上げによるマッサージ効果を奏することができる。しかし、本体部を上記の方向とは反対方向に移動させる場合には、一対のローラの間の肌が押し広げられるため、肌の摘み上げによるマッサージ効果を奏することができない。
【0008】
また、特許文献2のマッサージ器は、回動動作固定部によって回動部の回動動作を固定した状態で使用される。そのため、肌面に対する回転部の角度、すなわち球体の回転軸の角度が往路と復路とで変化することから、往路及び復路の両方において所望のマッサージ効果を奏することは難しい。
【0009】
このように、従来の美容器においては、肌に対する姿勢を一定にして往復移動させても、所望のマッサージ効果を奏することができるのは、実質的には、往路または復路のいずれかに限られている。また、往路及び復路の両方において所望のマッサージ効果を得ようとすると、往路と復路とで肌に対する美容器の姿勢を大きく変更したり、美容器を持ち替えたりする必要があった。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、簡便かつ効率的に所望のマッサージ効果を得ることができる美容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、使用者が把持するためのハンドル部を備えた本体と、
上記本体に対して相対的に旋回可能に設けられたアーム部と、
上記アーム部に固定された2つのローラシャフトと、
上記2つのローラシャフトにそれぞれ回転可能に保持された2つのローラと、
上記旋回移動の範囲内にある基準位置に向かって上記アーム部を付勢する付勢機構とを有しており、
上記アーム部の旋回軸は、上記2つのローラの並び方向に平行に延びている、美容器にある。
【発明の効果】
【0012】
上記美容器は、本体に対して旋回可能に設けられたアーム部と、アーム部に回転可能に保持された2つのローラとを有している。また、アーム部は、付勢機構により、旋回移動の範囲内にある基準位置に向かって付勢されている。
【0013】
上記美容器は、上記の構成を有していることにより、アーム部及びこのアーム部に保持された2つのローラを本体に対して相対的に旋回させることができる。また、上記旋回によって基準位置から移動したアーム部及び2つのローラを基準位置に向かって付勢することができる。これにより、上記美容器は、2つのローラを肌に押し当てて往復移動させるという簡便な操作で、往路及び復路のいずれの進行方向においても肌に対するハンドル部の姿勢を大きく変更することなく効率的に所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0014】
即ち、往路において上記美容器を前進させると、アーム部及び2つのローラが付勢機構の付勢力に抗して基準位置よりも後方に旋回する。これにより、各ローラの回転軸を、上記基準位置における回転軸よりも相対的に後方に傾斜させることができる。この状態から更に上記美容器を前進させることにより、2つのローラを回転させ、2つのローラの間の肌を摘み上げるようにして揉みほぐすマッサージ効果等の所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0015】
また、2つのローラを付勢機構の付勢力に抗して基準位置から離れる方向に旋回させた場合、2つのローラは、付勢機構の付勢力によって基準位置に復帰しようとする。そのため、2つのローラは、往路での移動が完了して復路に折り返す際に美容器を後進させることにより、付勢力によって自然に基準位置に復帰する。この状態から更に美容器を後進させることにより、2つのローラを往路における旋回方向とは逆方向に旋回させることができる。
【0016】
復路においては、上述したローラの旋回により、各ローラの回転軸が上記基準位置における回転軸よりも相対的に前方に傾斜している。この状態で上記美容器を後進させると、2つのローラを往路とは逆回転させることができる。このように、復路において、ローラの回転軸を往路とは逆方向に傾斜させ、さらに2つのローラを往路とは逆回転させることにより、肌に対するハンドル部の姿勢を大きく変更することなく、往路と同様のマッサージ効果を奏することができる。
【0017】
復路から往路に折り返す際には、上述した往路から復路への折り返しと同様に、上記美容器の前進に伴って2つのローラを自然に上記基準位置よりも後方に旋回させ、各ローラの回転軸を上記基準位置における回転軸に対して後方に傾斜させることができる。
【0018】
従って、上記美容器は、肌に対するハンドル部の姿勢をほぼ一定にした状態で往復移動するという最も簡便な使用態様で使用した際に、往路及び復路のいずれにおいても、ローラよりも進行方向前方の肌に対して上記回転軸が同じ方向に傾斜した状態を容易に実現することができる。その結果、往路及び復路のいずれにおいても所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0019】
また、上記美容器は、上述した往復移動中に上記美容器と肌との距離や上記回転軸と肌とのなす角度等の位置関係が変動した場合に、その変動を付勢機構により緩衝することができる。これにより、上記の位置関係が変動した場合においても、2つのローラから肌へ付与される力を適度な大きさに調整することができる。その結果、上記美容器の使い心地をより上質なものへと向上させることができる。
【0020】
以上のように、上記美容器によれば、簡便かつ効率的に所望のマッサージ効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】実施例1における、美容器の(a)前進時の側面図、(b)後進時の側面図である。
【
図7】実施例1における、ローラ保持体の斜視図である。
【
図8】実施例1における、ローラ保持体の要部の下面図である。
【
図9】実施例1における、ローラ保持体の要部の側面図である。
【
図10】
図9における、旋回シャフト近傍の拡大図である。
【
図11】実施例1における、ローラ保持体の要部の正面図である。
【
図12】実施例2における、ローラ保持体の要部の斜視図である。
【
図13】実施例3における、ローラ保持体の要部の下面図である。
【
図14】実施例4における、美容器の上面図である。
【
図15】実施例4における、美容器の側面図である。
【
図16】実施例4における、美容器の分解斜視図である。
【
図17】
図15における、XVII-XVII線位置での断面図である。
【
図18】実施例4における、アーム部の(a)基準状態での断面図、(b)後進時の断面図、(c)前進時の断面図である。
【
図19】実施例4における、組付工程を説明する概念図である。
【
図22】実施例5における、美容器の上面図である。
【
図23】実施例5における、美容器の側面図である。
【
図24】実施例5における、ローラの側面図である。
【
図25】実施例5における、ローラの上面図である。
【
図26】実施例5における、ローラの軌跡を示す図である。
【
図27】
図24における、XXVII-XXVII線位置での断面図である。
【
図28】
図22における、XXVIII-XXVIII線位置での断面図である。
【
図29】実施例5における、美容器の分解斜視図である。
【
図31】
図31(a)は比較例1における美容器の上面図、
図31(b)は比較例1におけるローラの軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記美容器において、2つのローラの回転軸は、本体から離れるほど互いの距離が広がるように配置されていてもよい。即ち、2つのローラの回転軸は、先広がり状に配置されていてもよい。この場合には、美容器を往復移動させることにより、往路及び復路のいずれにおいても、2つのローラにより肌を摘み上げるように揉みほぐし、肌の摘み上げによるマッサージ効果を奏することができる。
【0023】
また、2つのローラの回転軸を、本体から離れるほど互いの距離が狭まるように配置することもできる。この場合には、美容器を往復移動させることにより、往路及び復路のいずれにおいても、2つのローラにより肌を押し広げるように揉みほぐすことができる。
【0024】
2つのローラの回転軸は共通の平面上に配置されていてもよい。この場合には、美容器を往復移動させた際に、アーム部をより容易に旋回させることができる。それ故、美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0025】
また、上記の場合には、さらに、ハンドル部が当該平面に対して傾いていることが好ましい。この場合には、ハンドル部が肌に沿うようにして美容器を往復移動させるという自然な動作により、所望のマッサージ効果をより容易に奏することができる。それ故、美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0026】
2つのローラは、アーム部に回転可能に保持されている。そして、2つのローラは、上述したように、アーム部の旋回に伴って本体に対して相対的に旋回する。アーム部は、2つのローラの旋回が連動するように構成されていてもよく、各ローラが独立して旋回するように構成されていてもよい。具体的には、前者の構成としては、2つのローラがアーム部を介して接続されている構成等がある。後者の構成としては、一方のローラを保持するアーム部と、他方のローラを保持するアーム部とが分離されている構成等がある。
【0027】
アーム部と本体との間には、アーム部を本体に対して相対的に旋回可能とする旋回機構が介在していてもよい。この場合、アーム部は、本体上、または、本体とアーム部との間に位置する旋回軸を中心として、本体に対して相対的に旋回することができる。それ故、美容器の往復移動において、2つのローラをより容易に旋回させることができる。その結果、美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0028】
アーム部の旋回軸は、2つのローラの重心を結んでなる仮想直線に対して平行であることが好ましい。この場合には、美容器の往復移動において、2つのローラをより容易に旋回させることができる。その結果、美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0029】
上記美容器は、アーム部、旋回機構及び付勢機構を備えたローラ保持体を有していてもよい。この場合には、美容器の組み立て作業において、先にローラ保持体を組み立て、このローラ保持体を本体内に収容することにより、美容器の組み立て作業の作業性をより向上させることができる。
【0030】
上記旋回機構は、ハンドル部の外部に露出し、上記旋回が可能なオフ状態と、上記旋回が不可能なオン状態とを切り替えるロックスイッチと、上記ロックスイッチの操作に連動する係止部と、上記2つのローラに連結される被係止部とを有しており、上記オン状態において上記係止部と上記被係止部とが係合されるように構成されていてもよい。ロックスイッチがオフ状態の場合には、上述したように、美容器の使用時にアーム部及びこれに保持された2つのローラを旋回させることができる。これにより、2つのローラから肌へ付与される力を適度な大きさに調整し、美容器の使い心地をより向上させることができる。
【0031】
一方、ロックスイッチをオン状態とした場合には、上記係止部と上記被係止部とが係合するため、アーム部の旋回を規制することができる。そして、アーム部の旋回を規制することにより、2つのローラをより大きな力で肌に押し当て、ひいては肌をより大きな力で揉みほぐすことができる。その結果、ローラによるマッサージ効果をより高めることができる。
【0032】
このように、ロックスイッチを操作してアーム部の旋回の可否を切り替えることにより、美容器の使い心地を重視したモードと、マッサージ効果を高めるモードとの2種のモードを使い分けることができる。それ故、上記美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0033】
なお、特許文献2に開示の従来の構成では、回動動作固定部は回動部を軸受腕部に押し付けることによって回動部の回動動作を固定するため、使用中に肌面に球体が押し当てられるのに伴って回動部の回動動作の固定位置がずれやすい。そのため、回転部を所望の位置に固定したままとすることが難しく、所望のマッサージ効果が得られにくい。一方、上記ロックスイッチ、上記係止部及び被係止部を有する構成の場合には、係止部と被係止部とが互いに係合してアーム部の旋回が規制されるため、ローラを肌面に押し当てても規制位置がずれるおそれがない。よって、アーム部の旋回を規制した状態においても所望のマッサージ効果を得ることができる。
【0034】
上記係止部は、アーム部が上記基準位置に配置されている状態において上記被係止部に係合可能に構成されていてもよい。この場合には、ロックスイッチのオン状態とオフ状態との切り替えをより容易に行うことができる。それ故、上記美容器の使い勝手をより向上させることができる。
【0035】
上記係止部は、テーパ面を備え、上記被係止部に差し込まれる差込片を有していることが好ましい。この場合には、差込片を被係止部に差し込んだ際にテーパ面を被係止部に当接させることにより、上記オン状態における係止部と被係止部とのがたつきを低減することができる。その結果、上記オン状態における2つのローラのがたつきを低減し、上記美容器の使い心地をより向上させることができる。
【0036】
本発明の他の態様では、使用者が把持可能な本体と、
上記本体に回転軸を中心に回転可能に設けられたローラとを有しており、
上記ローラが上記回転軸を中心に回転して描く軌跡は、回転軸方向において両端側から内側に向かうにつれて縮径してなる縮径部を有している、美容器とすることができる。
【0037】
本発明の他の態様の美容器では、上記ローラが上記回転軸を中心に回転して描く軌跡は、回転軸方向において両端側から内側に向かうにつれて縮径した縮径部を有しているため、当該縮径部を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に沿わせやすくなる。その結果、ローラが肌面にフィットしやすくなるため、マッサージ効果が向上するとともに使用感が向上する。
【0038】
以上のように、上記他の態様の美容器によれば、マッサージ効果や使用感の向上が図られる。
【0039】
上記縮径部の周面は、上記回転軸に直交する方向からみて円弧状をなしていることが好ましい。この場合には、縮径部を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に一層沿わせやすくなる。そのため、ローラが肌面に一層フィットしやすくなって、マッサージ効果及び使用感が一層向上する。
【0040】
上記縮径部は、上記回転軸に直交する方向からみて回転軸方向の中央位置の径が最も小さいことが好ましい。この場合には、縮径部を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に一層沿わせやすくなる。そのため、ローラが肌面に一層フィットしやすくなって、マッサージ効果及び使用感が一層向上する。
【0041】
上記ローラの外周面には、回転軸方向に沿うとともに径方向外方に突出する複数の凸部が周方向に並んで設けられており、該複数の凸部の頂部の少なくとも一部が上記軌跡の上記縮径部を描くことが好ましい。この場合は、ローラを肌面に沿わせた状態で移動させて回転させることにより、ローラが肌面にフィットした状態で複数の凸部が肌面を繰り返し押圧したり若しくは叩くことができる。これにより、マッサージ効果が一層向上する。
【0042】
上記複数の凸部は、回転軸方向における第1端部から該第1端部と反対側の第2端部に向かうにつれて頂部が上記回転軸に近づく第1凸部と、上記第2端部から上記第1端部に向かうにつれて頂部が上記回転軸に近づく第2凸部と、を含むことが好ましい。これにより、ローラが肌面にフィットした状態を維持しつつ、回転軸方向の両側から内方に向けて肌面を押圧若しくは叩くことができ、マッサージ効果が一層向する。
【0043】
上記第1凸部と上記第2凸部とが周方向に交互に配列していることが好ましい。この場合には第1凸部による押圧若しくは叩く作用と、第2凸部による押圧若しくは叩く作用とが交互に奏されるため、マッサージ効果が一層向する。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
上記美容器の実施例について、図を用いて説明する。
図1~
図11に示すように、本例の美容器1は、使用者が把持するためのハンドル部21を備えた本体2と、本体2に対して相対的に旋回可能に設けられたアーム部6(
図7参照)と、アーム部6に回転可能に保持された2つのローラ3と、旋回移動の範囲内にある基準位置に向かってアーム部6を付勢する付勢機構42(
図7参照)とを有している。
【0045】
本例の美容器1は、
図6(a)、
図6(b)、
図7に示すように、本体2とアーム部6との間に介在し、アーム部6を本体2に対して相対的に旋回可能とする旋回機構41を更に有している。美容器1は、旋回機構41により、本体2上に位置する旋回軸Sを中心に、アーム部6及びアーム部6に保持された2つのローラ3を本体2に対して相対的に旋回させることができる。また、美容器1は、付勢機構42により、この旋回によって基準位置から移動したアーム部6及び2つのローラ3を基準位置に向かって付勢することができる。
【0046】
図1に示すように、美容器1の本体2は、略棒状を呈するハンドル部21と、その長手方向の一端に設けられた分枝部22とを有している。分枝部22は先広がり状に二又に分岐しており、分枝部22の先端にローラ3が配置されている。
図6(a)、
図6(b)に示すように、分枝部22は、アーム部6及びローラ3の旋回に連動して、旋回軸Sを中心に本体2に対して相対的に旋回することができる。
【0047】
図2及び
図5に示すように、2つのローラ3は、本体2の長手方向と直交する方向に間隔を空けて並んでいる。2つのローラ3の回転軸Rは、本体2から離れるほど互いの距離が広がるように、先広がり状に配置されている。また、
図3に示すように、2つのローラ3の回転軸Rは共通の平面P上に配置されており、本体2は平面Pに対して傾いている。
【0048】
以下において、本体2の長手方向に平行な方向を「前後方向X」といい、前後方向Xにおけるローラ3が配置されている側を「前方X1」、その反対側を「後方X2」ということがある。また、2つのローラ3の並び方向を「幅方向Y」ということがある。更に、前後方向X及び幅方向Yの両方に直交する方向を「上下方向Z」ということがあり、上下方向Zにおける、本体2が配置されている側を「上方Z1」、ローラ3が配置されている側を「下方Z2」ということがある。これらの方向に関する表示は便宜上のものであり、美容器1を実際に使用する際の向きとは何ら関係がない。
【0049】
図3に示すように、アーム部6の旋回軸Sは、本体2の前方X1の端部上に配置されており、幅方向Yに延びている。旋回軸Sは、2つのローラ3の重心を結んでなる仮想直線Lと平行な方向に延びている。
【0050】
本例におけるアーム部6の基準位置は、旋回の全範囲における中央である。また、アーム部6は、基準位置から前方X1または後方X2に最大で30°旋回することができる。これにより、2つのローラ3は、
図3及び
図6に示すように、基準位置30、即ちアーム部6が基準位置にあるときの位置から、前方X1または後方X2に最大で30°旋回することができる(
図3、記号θ参照)。なお、アーム部6の最大旋回角度θは、基準位置を0°としたときに20~45°の範囲内から適宜設定することができる。美容器1の使い心地の観点からは、最大旋回角度θを25~35°の範囲内から設定することが好ましい。
【0051】
次に、美容器1の各部をより詳細に説明する。
【0052】
図1に示すように、本体2は、ハンドル部21の上半分を構成するハンドル上部211と、ハンドル部21の下半分を構成するハンドル下部212とを有している。ハンドル上部211における前後方向Xの中央部には、太陽電池ユニット11(後述)が設けられている。また、
図4に示すように、ハンドル下部212には、ロックスイッチ71(後述)が設けられている。
【0053】
本体2の内部には、
図7に示すローラ保持体4が収容されている。ローラ保持体4は、アーム部6、旋回機構41及び付勢機構42を備えており、2つのローラ3を回転可能に保持している。旋回機構41は、本体2に固定されたベース部5と、ベース部5とアーム部6とを旋回可能に連結する旋回シャフト43(
図9、
図10参照)とを有している。
【0054】
ベース部5は、
図7に示すように、金属板から構成され、前後方向Xに伸びた平板状のベース板51と、樹脂からなり、ベース板51の上面及び側面を覆うカバー52と、ベース板51の下面を覆う抑え板53とを有している。
図9~
図11に示すように、ベース板51における前方X1の端部には、一対のシャフト受け部511が立設されている。
図10に示すように、シャフト受け部511の輪郭は、幅方向Yから見て略U字状を呈している。また、シャフト受け部511の中央には、旋回シャフト43が挿入されている。
【0055】
アーム部6は、金属板から構成されており、各ローラ3を回転可能に保持するアーム板61(
図11参照)を有している。アーム板61における後方X2の端部には、一対のタブ部611が立設されている。
図11に示すように、一対のタブ部611は、ベース部5における一対のシャフト受け部511の内側に配置され、ブッシング612を介してシャフト受け部511に摺接している。
【0056】
図9及び
図10に示すように、タブ部611は、幅方向Yから見て略円状を呈している。
図10に示すように、タブ部611の外周端縁には、ねじりばね421の端部424(後述)を固定するばね固定溝613と、平坦面614とが設けられている。平坦面614は、アーム部6が基準位置にある状態においてベース板51の表面512と平行になるように配置されている。この平坦面614とベース板51との間には、係止部72の差込片74(後述)が挿入される。また、タブ部611の中央には、旋回シャフト43が挿入されている。
【0057】
図9に示すように、旋回シャフト43は、アーム部6の旋回軸S上に配置されている。旋回シャフト43の両端は、ベース部5のカバー52に回転可能に保持されている(図示略)。また、旋回シャフト43は、シャフト受け部511と、タブ部611との両方に挿入されている。これにより、ベース部5とアーム部6とが旋回シャフト43を介して旋回可能に連結されている。
【0058】
図11に示すように、本例の42は、2つのねじりばね421(421a、421b)を有している。2つのねじりばね421は、一対のタブ部611の間に幅方向Yに並んで配置されている。各ねじりばね421は、幅方向Yの中央部において上方Z1に突出した一方の端部422(422a、422b)と、この端部422を起点として時計回りに巻回されたコイル部423(423a、423b)と、コイル部423の末端から幅方向Yにおける外方に延びる他方の端部424(424a、424b)とを有している。
【0059】
各ねじりばね421における一方の端部422は、ベース板51のばね固定穴(図示略)に挿入されている。他方の端部424は、
図10に示すように、各ねじりばね421と対面するタブ部611のばね固定溝613に挿入されている。また、各ねじりばね421におけるコイル部423の内側には、
図10に示す旋回シャフト43及び
図11に示すブッシング612が配置されている。
【0060】
アーム部6が基準位置にあるときには、2つのねじりばね421は、自然状態となっている。なお、アーム部6が基準位置にあるときに、第1のねじりばね421aによる付勢力と第2のねじりばね421bによる付勢力とが釣り合った状態とすることも可能である。アーム部6を基準位置から離れる方向に旋回させた場合、各ねじりばね421における、ばね固定溝613に挿入された端部424の位置が、ベース板51に挿入された端部422に対して、旋回軸Sを中心として相対的に旋回する。
【0061】
即ち、アーム部6を前方X1に旋回させた場合には、第1のねじりばね421aのコイル部423aが巻き戻され、第2のねじりばね421bのコイル部423bが巻き込まれるように、ばね固定溝613に挿入された端部424の位置が旋回する。また、アーム部6を後方X2に旋回させた場合には、第1のねじりばね421aのコイル部423aが巻き込まれ、第2のねじりばね421bのコイル部423bが巻き戻されるように、ばね固定溝613に挿入された端部424の位置が旋回する。
【0062】
そして、アーム部6が前方X1または後方X2のいずれの方向に旋回した場合にも、上述のように巻き込まれ、または巻き戻されたコイル部423により、旋回方向とは反対方向への付勢力が生じる。その結果、アーム部6に基準位置に復帰しようとする方向への付勢力を付与することができる。
【0063】
また、ばね固定溝613に挿入された端部424は、アーム部6が基準位置から最も離れた状態において、シャフト受け部511に当接するように配置されている。即ち、アーム部6が基準位置から前方X1に30°旋回した状態においては、2つのねじりばね421のうち一方のねじりばね421aの端部424aとシャフト受け部511とが当接する(
図10、符号424a’参照)。また、図には示さないが、アーム部6が基準位置から後方X2に30°旋回した状態においては、他方のねじりばね421bの端部424bとシャフト受け部511とが当接する。これにより、アーム部6の旋回範囲が、基準位置から前方X1及び後方X2のいずれの方向にも30°を超えないように規制されている。
【0064】
本例の旋回機構41は、更に、本体2の外部に露出し、アーム部6の旋回が可能なオフ状態と、旋回が不可能なオン状態とを切り替えるロックスイッチ71(
図3~
図4及び
図8~
図9参照)と、ロックスイッチ71の操作に連動する係止部72(
図8~
図9参照)と、2つのローラ3に連結される被係止部73(
図9~
図10参照)とを有している。
図7に示すように、係止部72と被係止部73とは、オン状態において係合されるように構成されている。
【0065】
図8~
図9に示すように、ロックスイッチ71はホイール状を呈している。ロックスイッチ71は、幅方向Yに延びる回転軸Qを中心として回転することができるように、ベース部5に保持されている(
図7参照)。
図8に示すように、ロックスイッチ71の側面からは、一対のピン711が突出している。これらのピン711は、係止部72に設けられたピン収容溝721(後述)内に収容されている。
【0066】
図8及び
図9に示すように、係止部72は、前後方向Xに延びる略棒状を呈しており、ベース板51とロックスイッチ71の回転軸Qとの間に配置されている。係止部72の前方X1の端部には、テーパ面741を備え、被係止部73に差し込まれる差込片74が設けられている。
図8に示すように、差込片74は略平板状を呈しており、その幅方向Yにおける両端にテーパ面741を有している。また、差込片74よりも後方X2には、ロックスイッチ71のピン711を収容するピン収容溝721が設けられている。
【0067】
本例の美容器1は、以下のようにしてオン状態とオフ状態との切り替えを行うことができる。ロックスイッチ71をオフ状態からオン状態に切り替える場合には、ロックスイッチ71を後方X2に回転させる(
図9、矢印701)。この回転により一対のピン711が前方X1に移動し、ピン711の移動に連動して係止部72が前方X1にスライドする。なお、ロックスイッチ71をオン状態からオフ状態に切り替える場合には、ロックスイッチ71を前方X1に回転させればよい。
【0068】
アーム部6が基準位置にあるときには、ベース板51の表面512とタブ部611の平坦面614との間に隙間が形成されている(
図10参照)。ロックスイッチ71の回転に伴って前方X1にスライドした差込片74は、この隙間に差し込まれる。そして、テーパ面741とタブ部611の平坦面614とが当接することにより、アーム部6及びローラ3の旋回が規制される。このように、本例においては、ベース板51と、ローラ保持体4における一対のタブ部611とが、被係止部73としても機能するように構成されている。
【0069】
また、図には示さないが、本例の美容器1においては、アーム部6が基準位置から外れた位置にあるときには、ベース板51の表面512とタブ部611との隙間がテーパ面741の厚みよりも狭くなっている。そのため、アーム部6が基準位置から外れた位置にあるときには、差込片74を被係止部73に差し込むことができず、オフ状態からオン状態に切り替えることができないように構成されている。
【0070】
次に、本例の美容器1の作用効果について説明する。本例の美容器1は、本体2上に位置する旋回軸Sを中心として、アーム部6及びこれに保持された2つのローラ3を本体2に対して相対的に旋回させることができる。また、この旋回によって基準位置から移動したアーム部6及び2つのローラ3を基準位置に向かって付勢することができる。これにより、美容器1は、2つのローラ3を肌に押し当てて往復移動させるという簡便な操作で、往路及び復路のいずれの進行方向においても肌に対するハンドル部21の姿勢を大きく変更することなく効率的に所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0071】
即ち、
図6(a)に示すように往路において美容器1を前進させると(矢印121)、アーム部6及び2つのローラ3が付勢機構42の付勢力に抗して基準位置30よりも後方X2に旋回する(矢印131)。これにより、各ローラ3の回転軸Rを、基準位置30における回転軸R’よりも相対的に後方X2に傾斜させることができる。
【0072】
2つのローラ3は、往路での移動が完了して復路に折り返す際に美容器を後進させることにより、付勢機構42の付勢力によって自然に基準位置30に復帰する。
図6(b)に示すように、この状態から更に美容器を後進させることにより(矢印122)、2つのローラ3を基準位置30よりも前方X1に旋回させることができるとともに(矢印132)、回転軸Rを基準位置30における回転軸R’よりも相対的に前方X1に傾斜させることができる。
【0073】
復路から往路に折り返す際には、往路から復路への折り返しと同様に、美容器1の前進に伴って2つのローラ3を自然に基準位置30よりも後方X2に旋回させ、回転軸Rを基準位置30における回転軸R’よりも相対的に後方X2に傾斜させることができる。
【0074】
このように、美容器1は、肌8に対するハンドル部21の姿勢をほぼ一定にした状態で往復移動するという最も簡便な使用態様で使用した際に、往路及び復路のいずれにおいても、ローラ3よりも進行方向前方の肌80に対して回転軸Rが同じ方向に傾斜した状態を容易に実現することができる。その結果、往路及び復路のいずれにおいても簡便かつ効率的に所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0075】
図2及び
図5に示すように、2つのローラ3は回転軸Rは、本体2から離れるほど互いの距離が広がるように配置されている。それ故、美容器1を往復移動させることにより、往路及び復路のいずれにおいても、
図6に示すように2つのローラ3により肌8を摘み上げるように揉みほぐし、肌8の摘み上げによるマッサージ効果を奏することができる。
【0076】
図3に示すように、2つのローラ3の回転軸Rは共通の平面P上に配置されており、本体2は当該平面Pに対して傾いている。それ故、本体2が肌8に沿うようにして美容器1を往復移動させるという自然な動作により、所望のマッサージ効果をより容易に奏することができ、美容器1の使い勝手をより向上させることができる。
【0077】
図3に示すように、アーム部6の旋回軸Sは、2つのローラ3の重心を結んでなる仮想直線Lに対して平行である。それ故、美容器1の往復移動において、2つのローラ3をより容易に旋回させることができる。その結果、美容器1の使い勝手をより向上させることができる。
【0078】
図7に示すように、美容器1は、アーム部6、旋回機構41及び付勢機構42を備えたローラ保持体4を有している。それ故、美容器1の組み立て作業において、先にローラ保持体4を組み立て、このローラ保持体4を本体2内に収容することにより、美容器1の組み立て作業の作業性をより向上させることができる。
【0079】
図9に示すように、旋回機構41は、ハンドル部21の外部に露出し、ローラ3の旋回が可能なオフ状態と、旋回が不可能なオン状態とを切り替えるロックスイッチ71と、ロックスイッチ71の操作に連動する係止部72と、アーム部6に連結される被係止部73とを有している。そして、係止部72と被係止部73とがオン状態において係合されるように構成されている。それ故、ロックスイッチ71により2つのローラ3の旋回の可否を切り替え、美容器1の使い心地を重視したモードと、マッサージ効果を高めるモードとの2種のモードを使い分けることができる。それ故、美容器1の使い勝手をより向上させることができる。
【0080】
被係止部73は、2つのローラ3が基準位置に配置されている状態において係止部72に係合可能に構成されている。そのため、ロックスイッチ71のオン状態とオフ状態との切り替えをより容易に行うことができ、美容器1の使い勝手をより向上させることができる。
【0081】
係止部72は、テーパ面741を備え、被係止部73に差し込まれる差込片74を有している。そのため、差込片74を被係止部73に差し込んだ際にテーパ面741を被係止部73に当接させることにより、オン状態における係止部72と被係止部73とのがたつきを低減することができる。その結果、オン状態における2つのローラ3のがたつきを低減し、美容器1の使い心地をより向上させることができる。
【0082】
また、本例の美容器1は、
図1及び
図3に示すように、ハンドル上部211に露出した太陽電池ユニット11と、本体2の表面に設けられたハンドル電極213と、ローラ3の表面に設けられたローラ電極31と、肌8とを含む電流経路に微弱電流を流すことができるように構成されている。
【0083】
具体的には、本例のハンドル電極213は、ハンドル上部211の外表面に設けられている。ハンドル電極213は、図示しない電線により、本体2の内部において太陽電池ユニット11の正極と電気的に接続されている。なお、本例のハンドル電極213は、導電性を有するクロムめっき膜である。
【0084】
ローラ電極31は、ローラ3内部の導電体(図示略)、ローラ保持体4におけるアーム部6、ねじりばね421、ベース部5及び図示しない電線をこの順に経由して太陽電池ユニット11の負極と電気的に接続されている。アーム部6とねじりばね421とは、タブ部611とばね固定溝613に挿入された端部424との当接部において電気的に接続されている。また、ねじりばね421とベース部5とは、ベース部5に挿入された端部422とベース部5のばね固定穴との当接部において電気的に接続されている。なお、本例のローラ電極31は、導電性を有するクロムめっき膜である。
【0085】
本例の美容器1は、肌8に微弱電流を流すことにより、血流の促進、新陳代謝の活性化等の美容効果を奏することができる。そして、これらの効果とローラ3によるマッサージ効果とが相乗的に作用することにより、より高い美容効果を奏することができる。
【0086】
(実施例2)
本例は、係止部72及び被係止部73の他の態様の例である。なお、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
【0087】
図12に示すように、本例のローラ保持体402は、前後方向Xにスライドするロックスイッチ71を有している。ロックスイッチ71には、前後方向Xに延びる棒状の係止部72が取り付けられている。
【0088】
被係止部73は、アーム板61における、一対のタブ部611を接続する接続部615に設けられている。接続部615は、アーム部6が基準位置にある状態において、係止部72に対面するように配置されている。接続部615の中央には、係止部72の先端を挿入する貫通穴616が設けられている。
【0089】
本例の美容器102では、アーム部6が基準位置にあるときにロックスイッチ71を前方X1にスライドさせることにより、係止部72の先端を接続部615の貫通穴616に挿入することができる。これにより、係止部72と被係止部73とが係合され、アーム部6及びローラ3の旋回を規制することができる。その他は実施例1と同様である。本例の美容器102は、テーパ面741による作用効果を除いて、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0090】
(実施例3)
本例は、付勢機構42の他の態様の例である。
図13に示すように、本例の付勢機構42は、一対のタブ部611(611a、611b)のうち一方のタブ部611aに連動して回転する端面カム63と、端面カム63の回転に伴って幅方向Yに往復移動する従動部64と、従動部64と他方のタブ部611bとの間に介在するコイルばね65とを有している。なお、
図13においては、便宜上、アーム部6の記載を省略している。
【0091】
アーム部6が基準位置にある状態においては、
図13に示すように、端面カム63の全面が従動部64に当接している。なお、コイルばね65は、アーム部6が基準位置にある状態において自然長よりも圧縮されている。そのため、従動部64は端面カム63に押し付けられている。
【0092】
本例の美容器103における付勢機構42の動作は、以下のとおりである。アーム部6が本体2に対して相対的に旋回し、基準位置から離れると、端面カム63がアーム部6の旋回に連動し、旋回軸Sを中心として回転する。従動部64は、この端面カム63の回転に伴って幅方向Yにおける他方のタブ部611b側へ押し出される。
【0093】
幅方向Yにおける他方のタブ部611側へ押し出された従動部64は、コイルばね65の付勢力により、端面カム63側へ向けて付勢される。この付勢力が端面カム63及びアーム板61を介してアーム部6に伝達される結果、アーム部6及びローラ3に、基準位置に復帰しようとする方向への付勢力を付与することができる。
【0094】
また、本例の美容器103において、オフ状態からオン状態への切り替えを行う場合には、ロックスイッチ71を前方X1にスライドさせる。係止部72は、ロックスイッチ71に連動して前方X1にスライドし、その先端が従動部64の表面に当接する(図示略)。そして、係止部72と従動部64との摩擦力によりアーム部6の移動を規制し、ひいてはローラ3の旋回を規制することができる。このように、本例の美容器103は、従動部64が被係止部73としても機能するように構成されている。その他は実施例2と同様である。本例の美容器103は、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【0095】
本発明に係る美容器の態様は実施例1~3に示した態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。例えば、実施例1~3には、2つのローラ3の回転軸Rが先広がり状に配置されている例を示したが、2つのローラ3の回転軸Rを互いに平行に配置してもよいし、先細り状に配置してもよい。
【0096】
また、実施例1~3には、アーム部6により2つのローラの旋回が連動するように構成された美容器1の例を示したが、各ローラ3が独立して旋回するように構成されていてもよい。この場合には、例えば、一方のローラを保持するアーム部と、他方のローラを保持するアーム部とが分離されている構成等を採用することができる。
【0097】
また、アーム部6としては、実施例1~3のように金属板から構成された部材以外にも、ユニバーサルジョイント等を採用することも可能である。例えば、ユニバーサルジョイントをアーム部に採用した場合には、ユニバーサルジョイントの一端を本体に保持し、他端にローラを取り付けることにより、ローラを本体に対して相対的に旋回させることができる。
【0098】
実施例1~3には球状を呈するローラ3の例を示したが、ローラ3を円筒状とすることもできる。
また、実施例1には、太陽電池ユニット11により肌8に流す微弱電流を発生させる構成を示したが、太陽電池ユニット11に替えて、電池等の公知の電源を用いて微弱電流を発生させてもよい。
【0099】
また、実施例1~3には2つのローラ3を備えた美容器1、102、103の例を示したが、ローラ3の数を更に増やしてもよい。例えば、ローラ3の数を4つにする場合には、これらのローラ3を本体2の下方に配置する構成を採用することができる。この場合において、4つのローラ3のうち少なくとも2つのローラ3が上述したように本体2に対して相対的に旋回可能であれば、本発明の美容器による作用効果を奏することができる。残り2つのローラ3は旋回可能としてもよいし、旋回不可能としてもよい。ローラ3の数を更に増やす場合にも同様である。
【0100】
(実施例4)
本実施例の美容器104は、
図14~
図19に示す構造を有する。なお、実施例1~3の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。本例では、実施例1におけるロックスイッチ71、差込片74等のアーム部6を旋回不能な状態にするための機構を有していない。そのため、アーム部6は常時旋回可能な状態となっている。
【0101】
また、本例では、
図15に示すように、本体2のハンドル部21は把持可能に構成されており、ハンドル上部211及びハンドル下部212を備える。
図14に示すように、ハンドル上部211には、上面視で前後方向に延びる複数の溝215が形成されている。また、
図16に示すように、ハンドル上部211には開口部211aが形成されている。開口部211aには、レンズ114がテープ115を介して嵌め込まれている。レンズ114はねじ116によりハンドル上部211に固定されている。
【0102】
そして、
図16に示すように、ハンドル上部211には下面側にねじ217によってハンドルベース214が取り付けられている。ハンドル上部211とハンドルベース214との間にはパッキン214aが介在している。また、ハンドルベース214には、ねじ214cにより重り214bが取り付けられている。そして、ハンドル上部211とハンドル下部212とが、ねじ218とハンドル下部212に設けられた係合爪219を介して嵌め合わされている。そして、
図17に示すように、ハンドル上部211の外縁216は、ハンドル下部212の外縁及びハンドルベース214の外縁を覆っている。
【0103】
図16に示すように、本例では、ベース板51において、各ねじりばね421(421a、421b)における一方の端部422(422a、422b)が挿通される一対の固定孔513は、前後方向Xに長い長穴となっている。なお、各ねじりばね421(421a、421b)は、ブッシング612を介して旋回シャフト43に挿通されており、ねじりばね421aとねじりばね421bとの間にはワッシャー431も挿通されている。ワッシャー431により、ねじりばね421aとねじりばね421bとが互いに接しないようにして、アーム部6の旋回時に生じる軋み音の発生を抑制することができる。
【0104】
さらに、ベース板51には、一対の固定孔513に重なるように、アジャスター54が積層されている。アジャスター54は一対の係合孔541と、一対の取付孔542とを有する。一対の係合孔541はそれぞれ、一対の固定孔513と重なる位置に設けられている。一対の係合孔541はいずれも、略円形の孔であって、一対の固定孔513よりも前後方向Xの長さが短くなっている。そして、一対の係合孔541には、一対の固定孔513に挿通されたねじりばね421の端部422が嵌入している。
【0105】
一方、アジャスター54における一対の取付孔542は、ベース板51に設けられた一対の固定孔513と同様に、前後方向Xに長い長穴となっている。アジャスター54は当該一対の取付孔542に挿通されてベース板51に螺入されたねじ55によって、ベース板51に積層された状態で固定される。一対の取付孔542は前後方向Xに長い長穴となっているため、アジャスター54の取り付け位置をベース板51に対して相対的に前後方向Xにずらすことができる。
【0106】
そして、上述の如く、一対の係合孔541に係合されたねじりばね421の端部422が挿通された一対の固定孔513も前後方向Xに長い長穴となっているため、アジャスター54の前後方向Xの取り付け位置を変更することによって、ねじりばね421の端部422の前後方向Xの位置を変更して調節することができる。そして、ねじりばね421の端部422の前後方向Xの位置を調節することにより、アーム部6の基準位置を調節することができる。
【0107】
アーム部6の基準位置の調整は
図19に示す調整治具500を用いて、次のように行うことができる。まず、ねじ55を取り付けていない状態でアーム板61を設置したベース板51を用意する。そして、当該ベース板51を調整治具500の固定台501にセットする。その際、固定台501に設けられた固定用突起502をベース板51のねじ穴514に挿通させて、ベース板51を確実に固定する。
【0108】
そして、アジャスター54の前側端面に位置決め部材503を当接させる。位置決め部材503は、アジャスター54を後方X2に押圧してアジャスター54の位置を変更することができる。本例の調整治具500では、位置決め部材503は一対の支持棒504を介して前後方向Xに摺動可能に構成されており、一対の支持棒504に設けられたリブ付きナット505を締めこむことで位置決め部材503が後方X2に摺動するように構成されている。なお、アーム部6の位置(アーム角度)は、基準位置よりも若干後方X2側、すなわち、アジャスター54が若干前方側である状態としておく。
【0109】
アーム部6の位置(アーム角度)を所定のセンサーを用いて検出しつつ、位置決め部材503を後方X2に摺動させて、アジャスター54を後方X2に押圧する。そして、アーム部6の位置(アーム角度)が基準位置に相当する所定の角度になった状態で、ねじ55を取り付けてアジャスター54の位置を固定する。その後、リブ付きナット505を緩めて、ベース板51を固定台501から取り外して、アーム部6の基準位置の調整を終了する。
【0110】
図16に示すように、ベース板51におけるアジャスター54が取り付けられる側と反対側には、クッション56が設けられている。クッション56は熱可塑性エラストマー(TPE)からなり、シート状を成している。本例では、クッション56は硬度90度のTPEからなり、厚さは0.7mmとしている。
【0111】
図16、
図18(a)~(c)に示すように、アーム部6の一対のタブ部611の外縁には、前方規制部617と後方規制部618が設けられている。前方規制部617は平坦面を有し、
図18(b)に示すように、アーム部6が前方X1に最大旋回角度まで旋回したときに、クッション56を介してベース板51に当接する。これにより、前方規制部617はアーム部6が前方に最大旋回角度以上に前方に旋回することを規制する。また、後方規制部618も平坦面を有し、
図18(c)に示すように、アーム部6が後方X2に最大旋回角度まで旋回したときに、クッション56を介してベース板51に当接する。これにより、後方規制部618はアーム部6が前方に最大旋回角度以上に後方に旋回することを規制する。このように、前方規制部617及び後方規制部618によってアーム部6の旋回可能範囲が規定されている。また、前方規制部617及び後方規制部618がクッション56を介してベース板51に当接するため、当接時の衝撃音の発生が抑制され、静音性が向上する。
【0112】
図16に示すように、アーム部6においてアーム板61の前方端部には、ローラ3の回転軸R上に一対のシャフト取付部62が設けられている。一対のシャフト取付部62には、回転軸Rに平行に延びたローラシャフト32がそれぞれ取り付けられている。そして、アーム板61には、前側アームカバー221と後側アームカバー222とが取り付けられている。前側アームカバー221、後側アームカバー222には、それぞれ半円筒状の半筒部221a、222aが形成されており、一対のシャフト取付部62を覆っている。半筒部221a、222aには、合成樹脂よりなる円筒状のキャップ33が嵌着されている。キャップ33より、半筒部221a、222aがシールされるとともに、前側アームカバー221と後側アームカバー222とローラ電極31との間の電気絶縁性が確保されている。
【0113】
図16に示すように、ローラシャフト32には、ベアリング34が取り付けられている。ベアリング34は合成樹脂よりなり、円筒状をなしている。ベアリング34は、
図17に示すように、その内側にローラシャフト32が挿通されるとともに、ローラシャフト32の先端に取り付けられたストップリング35によりベアリングスペーサ36を介して抜け止め固定されている。ベアリング34の表裏両面を含む外側全面には金属メッキが施され、ベアリング34とローラシャフト32との間の導電が確保されている。また、金属メッキに代えて、ベアリング34を導電性樹脂によって構成することにより両者の導電を確保してもよい。なお、本実施例では、ベアリング34とキャップ33との間にはリング状のポリスライダー331が介在している。
【0114】
図16、
図17に示すように、ベアリング34の外周面には、係止爪341が径方向外方に突出形成されている。係止爪341には、
図17に示すように、後述するローラ3の段差部305が係合する。また、ベアリング34の端部には、径方向外方Y1に拡径してなる拡径部342が形成されている。そして、係止爪341と拡径部342との間に段差部305が位置している。段差部305は、係止爪341及び拡径部342に当接して、両者に挟持されている。これにより、ローラ3はローラシャフト32に対する位置決めがなされるとともに、ローラ3のガタツキが低減されている。
【0115】
図17に示すように、ローラ3は、ローラシャフト32に設けられたベアリング34を介して、ローラシャフト32にベアリング34とともに回転可能に支持されている。そして、ローラ3は、合成樹脂よりなる芯材301と、芯材301の先端内周に嵌着された合成樹脂よりなるキャップ材302と、芯材301及びキャップ材302の外周に被覆成形された合成樹脂よりなる外被材303とから構成されている。外被材303の外表面には、導電金属メッキが施されてローラ電極31が形成されており、ベアリング34との間の導電が確保されている。芯材301の内側には、ベアリング34が挿入配置される空間304が形成されている。そして、空間304の内壁面には、係止爪341に係合可能な段差部305が形成されている。空間304にベアリング34が挿入配置されて、係止爪341が段差部305に係合されることにより、ローラ3がベアリング34に対して抜け止めされている。
【0116】
図16に示すように、太陽電池ユニット11は負極接続端子111、正極接続端子112を有する。負極接続端子111は、導電性ビス12とナット13によってベース板51に電気的及び機械的に接合されている。一方、正極接続端子112は、導電性を有するビス113によって、ハンドル上部211の内側壁面に取り付けられている。ハンドル上部211はその内面にもハンドル電極213を形成する金属メッキが施されている。
【0117】
これにより、以下の通り、通電回路が形成されることとなる。すなわち、太陽電池ユニット11、負極接続端子111、導電性ビス12、ベース板51、ねじりばね421、アーム板61、ローラシャフト32、ベアリング34、ローラ3のローラ電極31、肌面、ハンドル上部211を把持する手、ハンドル電極213、正極接続端子112、太陽電池ユニット11の順に電気的に接続されてなる通電回路が形成される。これにより、確実に通電回路を形成できるため、十分な通電性能を得ることができる。
【0118】
本例の美容器104の作用効果について詳述する。本例の美容器104は本体2の内部に旋回機構等を有しており、部品点数が比較的多くなっているため、本体2の内部構造における寸法誤差が大きくなるおそれがある。これに伴って、本体2を構成するハンドル上部211とハンドル下部212との間で位置ずれが生じるおそれがある。しかしながら、本例の美容器104では、ハンドル上部211の外縁216がハンドル下部212の外縁及びハンドルベース214の外縁を覆っているため、ハンドル上部211とハンドル下部212との間で位置ずれが生じても、ハンドル上部211とハンドル下部212の隙間が開きにくくなっている。その結果、本体2内部への水等の侵入を抑制するとともに、外観の見栄えが良くなる。なお、本例の美容器104においても、実施例1と同等の作用効果を奏する。
【0119】
(確認試験1)
次に、以下の確認試験1を行った。
実施例4の美容器104を試験例とし、実施例4の美容器104と同等の構成を有するがアーム部6が旋回せずに基準位置で固定されたものを比較例とした。
【0120】
確認試験1の試験条件は、試験例及び比較例の美容器を、被験者の頬を2秒間で1往復する速さで5分間使用し、使用直前、使用直後、使用後1分、使用後5分、使用後10分の血流量を2次元血流計(室町機械株式会社製、型番:OMEGA ZONE OZ-2Pro)により測定した。なお、被験者には測定前に安静状態を30分間維持して順化させた。そして、使用直前の血流量を100%として、それぞれのタイミングの血流量の変化率を表した。被験者は20~30歳代の女性6名(被験者1~6)とし、各人の試験結果を表1及び
図20に示した。
【0121】
【0122】
表1及び
図20に示すように、試験例では、比較例と比べて同等以上に血流量を増加させることができることが示された。従って、試験例では、比較例と同等以上の血流促進効果が得られることが確認できた。
【0123】
(確認試験2)
次に、以下の確認試験2を行った。
試験例及び比較例は、確認試験1と同じとした。
確認試験2の試験条件は、試験例及び比較例の美容器を、被験者の顔、前腕にそれぞれ2秒間で1往復する速さで30秒間使用し、使用中の腕橈骨筋及び浅屈筋群における筋電位を測定した。筋電位が高い程、筋肉の収縮強度が高く、筋肉への負担が大きくなる。そして、比較例における筋電位を100%として、試験例における筋電位を比較した。被験者は20~30歳代の女性2名(被験者7、8)、20歳代の男性1名(被験者9)とし、各人の使用部位ごとの試験結果を表2及び
図21に示した。
【0124】
【0125】
表2及び
図21に示すように、いずれの被験者及び使用部位においても、試験例では、比較例と比べて筋肉の収縮量が少なくなっており、使用時における使用者の腕の負担が軽減されたことが示された。従って、試験例では、比較例に比べて楽に使用できることが確認できた。
【0126】
(実施例5)
本実施例の美容器105は、
図22~
図29に示す構造を有する。なお、実施例1~4の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。本例においても、上述の実施例4の場合と同様に、実施例1におけるロックスイッチ71、差込片74等のアーム部6を旋回不能な状態にするための機構を有していない。そのため、アーム部6は常時旋回可能な状態となっている。
【0127】
そして、本例では、
図26に示すように、ローラ3が、回転軸Rを中心に回転して描く軌跡300は、回転軸方向における両端R1、R2側から内側に向かうにつれて縮径している縮径部310を有している。そして、縮径部310は、回転軸Rに直交する方向からみて回転軸方向の中央位置311aの径D1が最も小さい。そして、縮径部310における回転軸方向の両端312a、312bにおける径D2、D3はいずれもD1よりも大きい。
【0128】
また、
図26に示すように、縮径部310の周面311は、回転軸Rに直交する方向からみて円弧状をなしている。本例では、縮径部310全体が回転軸Rに直交する方向からみて円弧状となって滑らかに連続している。
【0129】
また、
図24、
図25に示すように、ローラ3の外周面には複数の凸部37が設けられている。凸部37は回転軸方向に沿うとともに径方向外方に突出している。そして、複数の凸部37は周方向に並んで設けられており、複数の凸部37の頂部371a、372aの少なくとも一部が
図26に示す軌跡300の縮径部310を描く。
【0130】
図24に示すように、複数の凸部37は第1凸部371と、第2凸部372とを含む。
図25に示すように、第1凸部371は、回転軸方向の第1端部R1から第1端部R1と反対側の第2端部R2に向かうにつれて頂部371aが回転軸Rに近づいている。一方、第2凸部372は、回転軸方向の第2端部R2から第1端部R1に向かうにつれて頂部372aが回転軸Rに近づいている。なお、第1凸部371及び第2凸部372の突出高さH1、H2(
図24参照)は適宜設定することができる。なお、突出高さとは、回転軸方向に垂直な断面における外周面において、最も回転軸Rに近い部分の位置との径方向の位置の差を指す。
【0131】
本例では、
図25に示すように、第1端部R1から第2端部R2に向かうにつれて突出高さH1が小さくなっており、第2端部R2から第1端部R1に向かうにつれて突出高さH2が小さくなっている。これに替えて、突出高さH1、H2を一定としつつ、第1端部R1から第2端部R2に向かうにつれて頂部371aが回転軸Rに近づくように第1凸部371を形成し、第2端部R2から第1端部R1に向かうにつれて頂部372aが回転軸Rに近づくように第2凸部372を形成してもよい。
【0132】
また、本例では、
図24に示すように、第1凸部371及び第2凸部372はいずれも回転軸R方向から見て、台形形状を成している。そして、台形形状の上辺に相当する第1凸部371及び第2凸部372の頂部371a、372aの幅W1、W2は、回転軸方向において一定となっている。頂部371a、372aの幅W1、W2の大きさは、適宜設定することができる。そして、
図27に示すように、第1凸部371の頂部371aはわずかに回転軸R側に凹むように緩やかに湾曲している。同様に、第2凸部372の頂部372aもわずかに回転軸R側に凹むように緩やかに湾曲している。
【0133】
本例では、
図24に示すように、第1凸部371と第2凸部372とが周方向に交互に配列している。また、本例では、第1凸部371及び第2凸部372はそれぞれ9個づつ設けられている。
【0134】
図27、
図28に示すように、ローラ3の芯材301は、第1芯材361と第2芯材362とに回転軸方向に分割されてなる。第1芯材361は凹部からなる内空部361aを有し、第2芯材362は貫通孔からなる内空部362aを有する。第1芯材361と第2芯材362とが回転軸方向に接続されることで内空部361aと内空部362aとが連通している。本体2側に位置する第2芯材362の内側には、第1芯材361と接続される部分に内側に膨出してなる段差部38が形成されている。第1芯材361と第2芯材362とが接続された状態で、両者の外表面が外被材303により被覆されている。そして、ローラ3は、実施例4の場合と同様に、ベアリング34等を介してローラシャフト32に回転可能に取り付けられている。
図29に示すように、ローラシャフト32はアーム部6を介して本体2に取り付けられている
【0135】
図22に示すように、本例においてもローラ3は2つ設けられている。各ローラ3の互いの回転軸Rは、本体2から離れるほど互いの距離が広がっている。そして、実施例3の場合と同様に、
図23に示すように、2つのローラ3の回転軸Rは共通の平面上に配置されている。
【0136】
本例の美容器105の作用効果について詳述する。
本例の美容器105では、ローラ3が回転軸Rを中心に回転して描く軌跡300は、回転軸方向において両端側から内側に向かうにつれて縮径した縮径部310を有しているため、縮径部310を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に沿わせやすくなる。その結果、ローラ3が肌面にフィットしやすくなるため、マッサージ効果が向上するとともに使用感が向上する。
【0137】
また、本例では、縮径部310の周面311は、回転軸Rに直交する方向からみて円弧状をなしている。これにより、縮径部310を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に一層沿わせやすくなる。そのため、ローラ3が肌面に一層フィットしやすくなって、マッサージ効果及び使用感が一層向上する。
【0138】
また、本例では、縮径部310は、回転軸Rに直交する方向からみて回転軸方向の中央位置311aの径D1が最も小さい。これにより、縮径部310を顔などの緩やかに膨らむように湾曲した肌面に一層沿わせやすくなる。そのため、ローラ3が肌面に一層フィットしやすくなって、マッサージ効果及び使用感が一層向上する。
【0139】
また、本例では、ローラ3の外周面には、回転軸方向に沿うとともに径方向外方に突出する複数の凸部37が周方向に並んで設けられており、該複数の凸部37の頂部371a、372aの少なくとも一部が軌跡300の縮径部310を描く。これにより、ローラ3を肌面に沿わせた状態で移動させて回転させることにより、ローラ3が肌面にフィットした状態で複数の凸部37が肌面を繰り返し押圧したり若しくは叩くことができる。これにより、マッサージ効果が一層向上する。
【0140】
また、本例では、複数の凸部37は、回転軸方向における第1端部R1から第2端部R2に向かうにつれて頂部371aが回転軸Rに近づく第1凸部371と、第2端部R2から第1端部R1に向かうにつれて頂部372aが回転軸Rに近づく第2凸部372と、を含む。これにより、ローラ3が肌面にフィットした状態を維持しつつ、回転軸方向の両側から内方に向けて肌面を押圧若しくは叩くことができ、マッサージ効果が一層向上する。
【0141】
また、本例では、第1凸部371と第2凸部372とが周方向に交互に配列している。これにより、第1凸部371による押圧若しくは叩く作用と、第2凸部372による押圧若しくは叩く作用とが交互に奏されるため、マッサージ効果が一層向する。
【0142】
また、本例では、ローラ3は2つ設けられており、互いの回転軸Rは、本体2から離れるほど互いの距離が広がっている。これにより、
図22に示すように、2つのローラ3を顔の顎や頬を両側から挟むように沿わせて移動させることにより、ローラ3が肌面に一層フィットした状態とすることができる。その結果、マッサージ効果が一層高まるとともに、使用者の体感が一層向上する。
【0143】
また、本例では、2つのローラ3の回転軸Rは共通の平面上に配置されている。これにより、2つのローラ3を肌面に沿わせて前後方向に移動させることにより、2つのローラ3による肌面の摘み上げを行うことができ、肌の揉みほぐし効果を奏することができる。
【0144】
なお、本例では、第1凸部371及び第2凸部372の頂部371a、372aはわずかに回転軸R側に凹むように緩やかに湾曲していることとしたが、これに替えて、両頂部371a、372aはわずかに回転軸Rと反対側に膨らむように緩やかに湾曲しているようにしてもよいし、両頂部371a、372aは湾曲しない平面であってもよい。
【0145】
また、本例では、第1凸部371及び第2凸部372は回転軸R方向から見て台形形状を成していることとしたが、これに替えて、第1凸部371及び第2凸部372を回転軸R方向から見たときの形状は、三角形、半球形、扇形、長方形、正方形、又はこれらを組み合わせてなる形状などとすることができる。
【0146】
また、本実施例では、第1凸部371と第2凸部372との形状をともに回転軸R方向から見て台形形状としたが、互いに異なる形状としてもよい。また、第1凸部371及び第2凸部372と異なる形状を有する第3凸部を含むこととしてもよい。
【0147】
なお、
図30(a)に示す変形例1のように、縮径部310の外縁は、回転軸Rに直交する方向からみて、両端312a、312bから中央位置311aに向けて直線状をなしており、両直線状部が接する位置(当該変形例では中央位置311a)において周面311が凹状に角張っていてもよい。また、
図30(b)に示す変形例2のように、中央領域に平面状の中央部311bを有しており、縮径部310が中央部311bの回転軸方向の両側に分断されて形成されていてもよい。また、
図30(c)に示す変形例3のように、縮径部310が、回転軸方向の内側に向かうにつれて縮径するとともに平面状の中央部311bに連なる段差部を有していており、回転軸Rに直交する方向からみて、縮径部310が段差部311cにおいて滑らかに連続していなくともよい。これらの変形例1~3においても、本例と同等の作用効果を奏する。
【0148】
(確認試験3)
次に、以下の確認試験3を行った。試験対象は以下の通りである。
実施例5の美容器105を試験例とした。
図31(a)に示す従来の美容器900を比較例1とした。
実施例5の美容器105と同等の構成を有するがアーム部6が旋回せずに基準位置で固定されたものを比較例2とした。
実施例5の美容器105と同等の構成を有するがアーム部6が左右方向に旋回可能に構成されたもの比較例3とした。
【0149】
図31(a)に示す従来の美容器900では、ハンドル902の先端の分枝部901に2つのローラ903が回転可能に設けられている。分枝部901は旋回機構を有しておらず、ローラ903は旋回移動することができない。また、ローラ903の外周面には複数の凸部904が備えられているが、回転軸Rを中心に軸回転させた時に描かれる軌跡は
図31(b)に示すように円柱状であって、回転軸方向において一定の形状を成しており、回転軸方向の内側に向かうにつれて縮径した縮径部を有していない。
【0150】
確認試験3の試験条件は、試験例及び比較例1~3の美容器を、被験者の頬を2秒間で1往復する速さで5分間使用し、使用直前、使用直後、使用後1分、使用後5分、使用後10分の血流量を2次元血流計(室町機械株式会社製、型番:OMEGA ZONE OZ-2Pro)により測定した。なお、被験者には測定前に安静状態を30分間維持して順化させた。また、各美容器を頬に当てる強さは被験者自身が気持ちと感じる強さとした。血流量の変化量の規定は上述の確認試験1と同様とした。被験者は26~40歳代の女性8名、男性1名の合計9名とし、被験者における測定値の平均値を表3及び
図32に示した。
【0151】
【0152】
表3及び
図32に示すように、試験例では、比較例1~3と比べて同等以上に血流量を増加させることができることが示された。従って、試験例では、比較例と同等以上の血流促進効果が得られることが確認できた。
【0153】
(確認試験4)
次に、以下の確認試験4を行った。
試験例及び比較例1~3、被験者は確認試験3と同じとした。
確認試験4の試験条件は確認試験3と同様にし、血流量の測定に替えて、肌弾力を皮膚粘弾性測定装置(Courage + Khazaka electronic社製 型番:Cutometer DUAL MPA580)により測定した。そして、被験者ごとに使用直前の肌弾力の値を100%としたときの使用5分後の肌弾力の変化率を算出し、全被験者における変化率の平均値を表4及び
図33に示した。
【0154】
【0155】
表4及び
図33に示すように、試験例では、比較例1~3と比べて肌弾力の変化率が高くなった。これにより、試験例の美容器によれば、比較例1~3の美容器に比べて、マッサージ効果が向上し、肌弾力が高い状態に維持できることが確認できた。
【符号の説明】
【0156】
1、102、103、104、105 美容器
2 本体
21 ハンドル部
3 ローラ
300 軌跡
41 旋回機構
42 付勢機構
6 アーム部