(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/216 20110101AFI20220825BHJP
B60R 21/20 20110101ALI20220825BHJP
【FI】
B60R21/216
B60R21/20
(21)【出願番号】P 2017197666
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基継
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108740(JP,A)
【文献】特開2010-163142(JP,A)
【文献】国際公開第2009/035116(WO,A1)
【文献】特開2010-052619(JP,A)
【文献】特開2009-154709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に沿って配置された複数の座席の間の上側空間に展開する気室上部と、
前記気室上部に連通し、前記複数の座席の間の下側空間に展開する気室下部と、
を備え、
前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記車幅方向において重なり合うように構成され、
前記気室上部の下部は、展開時に車両の上下方向において前記気室下部に重なり合わない、又は、前記気室下部の上部は、展開時に車両の上下方向において前記気室上部に重なり合わない、ように構成され
、
前記気室上部は、展開時に前記座席に着座する乗員と対向する第1面と、前記車幅方向において前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、
前記気室下部は、展開時に前記座席に着座する乗員と対向する第3面と、前記車幅方向において前記第3面とは反対側に位置する第4面とを有し、
前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記第2面と前記第3面とが当接することによって、前記車幅方向において重なり合うように構成され、
前記気室上部及び前記気室下部は、前記第2面と前記第3面とが幅広の可撓性を有する規制部材で連結されている、
エアバッグ。
【請求項2】
前記規制部材は、緊張状態で、前記第2面の下部から前記第3面の上部に至るまで前記気室上部および前記気室下部の表面に沿って配置される、
請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に、前記気室上部が車室の天井部に当接して下方に撓む、又は、前記気室下部が車室の床部に当接して上方に撓むように構成される、
請求項1
または2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記気室上部及び前記気室下部の後側に展開する気室後部を更に備え、
前記気室上部及び前記気室下部は、前記気室後部を介して互いに連通する、
請求項1乃至請求項
3の何れか一項に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグに関する。特に、本発明は、ファーサイドエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
ファーサイドエアバッグは、車両の側面衝突時等に運転席及び助手席の間等に展開して乗員を保護する。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の天井部に折り畳んだ状態で収容されており、膨張時には搭乗員との接触による衝撃力を受け止める反力が生じるエアバッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたエアバッグは、天井部から射出されて展開する際に車室内の構造物等に当接し、所望の形状又は所望の位置に展開することができない可能性がある。すなわち、特許文献1に開示されたエアバッグは、展開時に車室内の構造物と干渉して、乗員を適切に保護することができない可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員を適切に保護可能なエアバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点に係るエアバッグは、車幅方向に沿って配置された複数の座席の間の上側空間に展開する気室上部と、前記気室上部に連通し、前記複数の座席の間の下側空間に展開する気室下部と、を備え、前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記車幅方向において重なり合うように構成され、前記気室上部の下部は、展開時に車両の上下方向において前記気室下部に重なり合わない、又は、前記気室下部の上部は、展開時に車両の上下方向において前記気室上部に重なり合わない、ように構成される。
【0008】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部は、展開時に前記座席に着座する乗員と対向する第1面と、前記車幅方向において前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、前記気室下部は、展開時に前記座席に着座する乗員と対向する第3面と、前記車幅方向において前記第3面とは反対側に位置する第4面とを有し、前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記第2面と前記第3面とが当接することによって、前記車幅方向において重なり合うように構成される。
【0009】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部及び前記気室下部は、前記第2面と前記第3面とが規制部材で連結されている。
【0010】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記車幅方向における移動が規制され、前記気室上部は、展開時に前記座席に着座する乗員から加えられる前記車幅方向の力に対する反力であって前記移動が規制されることに基づいた反力が作用する第5面と、前記車幅方向において前記第5面とは反対側に位置する第6面とを有し、前記気室下部は、前記車幅方向において前記第5面と同じ側に位置する第7面と、前記車幅方向において前記第7面とは反対側に位置する第8面とを有し、前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に前記第5面と前記第8面とが当接することによって、前記車幅方向において重なり合うように構成される。
【0011】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部及び前記気室下部は、前記第5面と前記第8面とが規制部材で連結されている。
【0012】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部及び前記気室下部は、展開時に、前記気室上部が車室の天井部に当接して下方に撓む、又は、前記気室下部が車室の床部に当接して上方に撓むように構成される。
【0013】
好適には、前記エアバッグにおいて、前記気室上部及び前記気室下部の後側に展開する気室後部を更に備え、前記気室上部及び前記気室下部は、前記気室後部を介して互いに連通する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの観点に係るエアバッグは、展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】本発明の実施形態1に係るエアバッグ装置が搭載された車両の構成を示す図である。
【
図2】エアバッグの展開時におけるエアバッグ装置を前方から視た正面図である。
【
図3】
図2に示されたエアバッグを右方から視た側面図である。
【
図4】車両の側面衝突時における乗員及びエアバッグの様子を示す図であって、乗員がエアバッグに衝突し始めた時点の様子を示す。
【
図5】車両の側面衝突時における乗員及びエアバッグの様子を示す図であって、
図4の直後の様子を示す。
【
図6】実施形態1の変形例1に係るエアバッグ装置を前方から視た正面図である。
【
図7】実施形態1の変形例2に係るエアバッグ装置を前方から視た正面図であって、エアバッグが撓む前の様子を示す図である。
【
図8】
図7に示されたエアバッグを右方から視た側面図である。
【
図9】実施形態2に係るエアバッグを右方から視た側面図である。
【
図10】実施形態3に係るエアバッグを右方から視た側面図である。
【
図11】実施形態4に係るエアバッグ装置を前方から視た正面図である。
【
図12】実施形態5に係るエアバッグ装置を前方から視た正面図である。
【
図13】実施形態6に係るエアバッグ装置を前方から視た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本発明のいくつかの例を示すものであって、本発明の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本発明の構成及び動作として必須であるとは限らない。また、各実施形態において、従前に説明された構成及び動作と同様の構成及び動作に係る説明については、重複する説明となるため省略する。
【0017】
[実施形態1:エアバッグ装置の構成]
図1は、本発明の実施形態1に係るエアバッグ装置10が搭載された車両1の構成を示す図である。
図2は、エアバッグ20の展開時におけるエアバッグ装置10を前方から視た正面図である。
図3は、
図2に示されたエアバッグ20を右方から視た側面図である。
【0018】
エアバッグ装置10は、
図1及び
図2に示されるように、車両1の車室内において車幅方向に沿って配置された複数の座席2の間の空間Sに対してエアバッグ20を展開させる装置である。すなわち、エアバッグ装置10は、ファーサイドエアバッグ装置である。エアバッグ装置10は、車両1の側面衝突時等において、エアバッグ20によって車幅方向における乗員Aの移動を規制し、乗員Aを保護することができる。
【0019】
なお、複数の座席2は、運転席及び助手席であってよい。空間Sは、車幅方向が複数の座席2によって画定され、上下方向が車両1の車室内の床部5と天井部7とによって画定されてよい。空間Sは、前後方向が、座席2のヘッドレスト4の後背面とダッシュボートとによって画定されてよい。空間Sのうちの上側の部分を、「上側空間S1」とも称し、空間Sのうちの下側の部分を、「下側空間S2」とも称する。
【0020】
エアバッグ装置10は、
図2に示されるように、収納部11と、インフレータ12と、エアバッグ20と、規制部材40と、を備える。
【0021】
収納部11は、エアバッグ20を収納する容器である。収納部11は、空間Sに面する床部5に設けられる。好適には、収納部11は、複数の座席2の間における床部5のセンタコンソール6に固定されてよい。
【0022】
インフレータ12は、収納部11内に固定され、エアバッグ20内に圧縮気体を供給してエアバッグ20を展開させる装置である。インフレータ12は、図示しない制御部に接続され、制御部によって駆動が制御される。
【0023】
エアバッグ20は、空間Sに展開するファーサイドエアバッグである。エアバッグ20は、車両1の側面衝突等によって座席2に着座する乗員Aが車幅方向に移動する際に、移動する乗員Aを受け止めて、乗員Aを保護する。エアバッグ20の展開時の形状は、
図2及び
図3に示されるように、空間Sに起立して車幅方向に厚みを有する略板状の袋体において、その前縁部分が上下方向に分割されたような形状である。
【0024】
エアバッグ20は、上側空間S1に展開する気室上部21と、下側空間S2に展開する気室下部22と、インフレータ12、気室上部21及び気室下部22に連通し、気室上部21及び気室下部22の後側に展開する気室後部23とを備える。すなわち、気室上部21及び気室下部22は、気室後部23を介して、互いに連通すると共にインフレータ12に連通する。
【0025】
気室上部21、気室下部22及び気室後部23は、
図3に示されるように、一体的に形成されており、1つの袋体によって形成される。すなわち、エアバッグ20は、気室上部21、気室下部22及び気室後部23が、個別の袋体によって形成されるわけではなく、個別のインフレータ12によって展開されるわけではない。
【0026】
気室上部21は、気室上部21の表面である、第1面31及び第2面32を有する。第1面31は、エアバッグ20の展開時に座席2に着座する乗員Aと対向する面である。第2面32は、エアバッグ20の展開時に車幅方向において第1面31とは反対側に位置する面である。
【0027】
気室下部22は、気室下部22の表面である、第3面33及び第4面34を有する。第3面33は、エアバッグ20の展開時に座席2に着座する乗員Aと対向する面である。第4面34は、エアバッグ20の展開時に車幅方向において第3面33とは反対側に位置する面である。
【0028】
気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、車幅方向において重なり合うように構成される。好適には、気室上部21及び気室下部22では、エアバッグ20の展開時に、それぞれの一部が、車幅方向において重なり合うように構成される。
【0029】
具体的には、気室上部21及び気室下部22は、気室上部21の第2面32と、気室下部22の第3面33とが当接することによって、車幅方向において重なり合うように構成される。好適には、気室上部21及び気室下部22は、気室上部21の第2面32の下部と、気室下部22の第3面33の上部とが当接することによって、車幅方向において重なり合うように構成されてよい。
【0030】
また、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室上部21の上端部が、天井部7に当接するように構成される。好適には、気室上部21の上端部は、天井部7の凸部8に当接するように構成されてよい。より好適には、気室上部21の上端部の第2面32は、凸部8の乗員A側の側面部に当接するように構成されてよい。
【0031】
具体的には、気室上部21の上端部は、エアバッグ20の展開時に、凸部8の乗員A側の側面部近傍におけるルーフトリムに当接するように構成されてよい。そして、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室上部21の上端部が凸部8に当接すると、気室後部23が屈曲することで、気室上部21が下方に撓むように構成されてよい。
【0032】
凸部8は、天井部7のルーフトリムに設けられた車室内を照らす照明部、又は、天井部7のルーフトリムに設けられたエアコンの吹き出し口等であってよい。或いは、凸部8は、ルーフトリムの車幅方向中央部分が下方に向かって突出するように形成された部分であってよい。
【0033】
また、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室上部21の下端部が、座席2のヘッドレスト4の下端部4aより下方に位置するように構成されてよい。好適には、気室上部21の下端部は、座席2に着座する乗員Aの肩より下方に位置するように構成されてよい。気室下部22の上端部は、座席2のヘッドレスト4の下端部4aより上方に位置するように構成されてよい。好適には、気室下部22の上端部は、座席2に着座する乗員Aの肩より上方に位置するように構成されてよい。
【0034】
また、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、座席2の前後方向における可動範囲全体に亘って、前後方向に延びるように構成されてよい。好適には、気室上部21及び気室下部22は、座席2の前後方向における可動範囲全体に亘って、座席2に着座する乗員Aの肩部及び頭部が気室上部21に対向するように構成されてよい。なお、座席2は、最前方の位置では他の位置よりも上方に配置されるように構成されることがある。気室上部21及び気室下部22は、座席2が最前方の位置に配置された場合であっても、座席2に着座する乗員Aの肩部及び頭部が気室上部21に対向するように構成されてよい。
【0035】
規制部材40は、テザー、ストラップ、幅広の布等の、可撓性を有する部材である。規制部材40は、エアバッグ20の表面に接続され、エアバッグ20の展開時の動作を規制する。それにより、規制部材40は、エアバッグ20の展開形状及び展開位置を調整し得る。具体的には、規制部材40は、気室上部21の第2面32の下部と、気室下部22の第3面33の上部とにそれぞれ接続され、気室上部21の第2面32と、気室下部22の第3面33とを連結する。それにより、規制部材40は、気室上部21及び気室下部22の展開形状及び展開位置を調整し得る。
【0036】
[実施形態1:エアバッグ装置の動作]
図4は、車両1の側面衝突時における乗員A及びエアバッグ20の様子を示す図であって、乗員Aがエアバッグ20に衝突し始めた時点の様子を示す。
図5は、車両1の側面衝突時における乗員A及びエアバッグ20の様子を示す図であって、
図4の直後の様子を示す。なお、
図4及び
図5の白抜き矢印は、車両1の側面衝突時に車両1に加えられる衝撃力の方向を示している。
【0037】
車両1の側面衝突時、エアバッグ20は、インフレータ12から気室後部23、気室下部22及び気室上部21の順に圧縮空気が供給され、収納部11から上方に向かって射出される。そして、エアバッグ20は、空間Sに展開し、
図2に示されるように、気室上部21の上端部が凸部8に当接する。この時、気室上部21は、上端部が凸部8に押されて、下方に向かって撓む。また、この時、気室上部21の第2面32は、その上部が凸部8の乗員A側の側面部に当接し、その下部が気室下部22の第3面33の上部に当接する。また、この時、規制部材40は、ある程度の張力が付与された緊張状態で、気室上部21の第2面32の下部から気室下部22の第3面33の上部に至るまで、気室上部21及び気室下部22の表面に沿って配置される。
【0038】
それにより、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、車幅方向における移動が規制される。特に、気室上部21は、凸部8及び気室下部22の第3面33への当接と、気室上部21と一体的に形成された気室後部23からの支持とによって、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)への移動が規制される。更に、気室上部21は、規制部材40によって気室下部22に拘束されるため、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)への移動が更に規制される。
【0039】
展開時のエアバッグ20に乗員Aが衝突し始めた時点では、
図4に示されるように、乗員Aの肩部が気室上部21の第1面31に当接する。それにより、気室上部21の第1面31には、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)へ向かう力Fが乗員Aから加えられる。この時、気室上部21には、力Fの反力R1及び反力R2が作用する。反力R1は、エアバッグ20に供給された圧縮気体の圧力に基づくエアバッグ20の反発力である。反力R2は、凸部8及び気室下部22の第3面33への当接によって気室上部21の移動が規制されることに基づいて発生する反力であり、気室上部21の第2面32に作用する。エアバッグ20は、これらの反力R1及びR2によって力Fを確実に緩和し、乗員Aの運動エネルギーを確実に吸収することができる。
【0040】
その後、
図5に示されるように、乗員Aの頭部が気室上部21の第1面31に当接する。エアバッグ20は、
図4の時点で乗員Aの運動エネルギーをある程度吸収しているため、乗員Aの頭部が当接する時には、乗員Aの運動エネルギーが極端に低下されているため、乗員Aの頭部を確実に保護しつつ、乗員Aを適切に受け止めることができる。
【0041】
このようなことから、気室上部21の第2面32は、気室上部21の移動が規制されることに基づいて発生する反力R2が作用する面であると定義することもできる。気室上部21の第1面31は、車幅方向において反力R2が作用する面(第2面32)とは反対側に位置する気室上部21の面であると定義することもできる。また、気室下部22の第4面34は、車幅方向において反力R2が作用する面(第2面32)と同じ側に位置する気室下部22の面であると定義することもできる。気室下部22の第3面33は、車幅方向において反力R2が作用する面(第2面32)とは反対側に位置する気室下部22の面であると定義することもできる。
【0042】
そして、気室上部21及び気室下部22は、反力R2が作用する気室上部21の面(第2面32)と、反力R2が作用する気室上部21の面と車幅方向において反対側に位置する気室下部22の面(第3面33)とが当接するとも言える。また、規制部材40は、反力R2が作用する気室上部21の面(第2面32)と、反力R2が作用する気室上部21の面と車幅方向において反対側に位置する気室下部22の面(第3面33)とを連結するとも言える。
【0043】
[実施形態1:作用効果]
以上のように、実施形態1に係るエアバッグ20では、気室上部21及び気室下部22が、エアバッグ20の展開時に車幅方向において重なり合うように構成される。特に、実施形態1に係るエアバッグ20は、気室上部21の第2面32と気室下部22の第3面33とが当接することによって、車幅方向において重なり合うように構成される。このため、エアバッグ20では、エアバッグ20の展開時に、乗員Aの頭部を保護する気室上部21を気室下部22よりも乗員Aに近い側に配置することができる。更には、エアバッグ20では、エアバッグ20の展開時に、乗員Aの頭部を保護する気室上部21の移動を規制することができるため、乗員Aから加わる力Fを確実に緩和することができ、乗員Aの運動エネルギーを確実に吸収することができる。よって、実施形態1に係るエアバッグ20は、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0044】
更に、実施形態1に係るエアバッグ20では、気室上部21が規制部材40によって気室下部22に拘束されるため、乗員Aの頭部を保護する気室上部21の移動を更に規制することができる。このため、エアバッグ20では、乗員Aから加わる力Fを更に確実に緩和することができ、乗員Aの運動エネルギーを更に確実に吸収することができる。よって、実施形態1に係るエアバッグ20は、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを更に適切に保護することができる。
【0045】
更に、実施形態1に係るエアバッグ20では、エアバッグ20の展開時、気室上部21を凸部8に当接させて、下方に向かって撓ませることができる。すなわち、エアバッグ20は、気室上部21を車室内の構造物と意図的に干渉させることによって、気室上部21及び気室下部22が車幅方向において確実に重なるように構成することができる。このため、エアバッグ20では、乗員Aの頭部を保護する気室上部21を気室下部22よりも乗員Aに近い側に確実に配置することができる。よって、実施形態1に係るエアバッグ20は、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを更に適切に保護することができる。
【0046】
[実施形態1:変形例]
図6は、実施形態1の変形例1に係るエアバッグ装置10を前方から視た正面図である。
【0047】
エアバッグ20は、天井部7に凸部8が設けられていない車両1においても、適用可能である。実施形態1の変形例1に係るエアバッグ20は、エアバッグ20の展開時、気室上部21の上端部が天井部7に当接してよい。この時、気室上部21は、天井部7及び気室下部22への当接と、気室後部23からの支持とによって、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)への移動が規制される。よって、実施形態1の変形例1に係るエアバッグ20は、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0048】
図7は、実施形態1の変形例2に係るエアバッグ装置10を前方から視た正面図であって、エアバッグ20が撓む前の様子を示す図である。
図8は、
図7に示されたエアバッグ20を右方から視た側面図である。
【0049】
実施形態1の変形例2に係るエアバッグ20は、
図8に示されるように、気室上部21が天井部7に当接されて下方に撓む前の状態では、気室上部21及び気室下部22が車幅方向において重なり合う必要はない。そして、エアバッグ20は、気室上部21が天井部7に当接されて下方に撓んだ後に、気室上部21及び気室下部22が重なり合ってもよい。気室上部21が天井部7に当接する際、気室上部21は、規制部材40にガイドされることによって、気室下部22よりも乗員Aに近い側の下方に撓み得る。このため、エアバッグ20は、気室上部21が撓む前の状態で気室上部21及び気室下部22が重なり合っていなくても、気室上部21が撓んだ後の状態では、気室上部21及び気室下部22を重なり合わせることができる。よって、実施形態1の変形例2に係るエアバッグ20は、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0050】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係るエアバッグ20を右方から視た側面図である。
【0051】
実施形態2に係るエアバッグ20は、気室上部21及び気室下部22が、気室後部23の前方だけでなく、気室後部23の後方にもそれぞれ延びるように形成されてよい。それにより、エアバッグ20は、座席2の前後方向における可動範囲全体に亘って、座席2に着座する乗員Aの肩部及び頭部が気室上部21に対向し易くなり得る。よって、実施形態2に係るエアバッグ20は、座席2の前後方向の位置によらず、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、乗員Aを適切に保護することができる。
【0052】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係るエアバッグ20を右方から視た側面図である。
【0053】
実施形態3に係るエアバッグ20は、気室後部23が無く、気室上部21と気室下部22とが分離してもよい。この場合、エアバッグ20は、気室上部21及び気室下部22が、図示しないチューブ等を用いて、互いに連通すると共にインフレータ12に連通するように構成されればよい。そして、エアバッグ20は、規制部材40にガイドされることによって、気室上部21及び気室下部22が車幅方向において重なり合うように構成されればよい。それにより、実施形態3に係るエアバッグ20は、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0054】
[実施形態4]
図11は、実施形態4に係るエアバッグ装置10を前方から視た正面図である。
【0055】
実施形態4に係るエアバッグ20は、収納部11が床部5に設けられるのではなく、空間Sに面する天井部7に設けられてよい。そして、エアバッグ20は、天井部7に設けられた収納部11から下方に向かって射出されてよい。この場合、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室下部22の下端部が、床部5に当接するように構成されてよい。好適には、気室下部22の下端部は、床部5のセンタコンソール6に当接するように構成されてよい。より好適には、気室下部22の下端部は、センタコンソール6の乗員A側の側面部に当接するように構成されてよい。
【0056】
そして、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室下部22の下端部が床部5に当接すると、気室後部23が屈曲することで、気室下部22が上方に撓むように構成されてよい。
【0057】
実施形態4に係る気室上部21は、気室下部22への当接と、気室後部23からの支持とによって、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)への移動が規制される。よって、実施形態4に係るエアバッグ20は、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0058】
[実施形態5]
図12は、実施形態5に係るエアバッグ装置10を前方から視た正面図である。
【0059】
実施形態5に係るエアバッグ20は、収納部11が床部5に設けられるのではなく、シートバック3における車両1の中央側の側部3aに設けられてよい。そして、エアバッグ20は、シートバック3の側部3aに設けられた収納部11から上方及び下方に向かって射出されてよい。この場合、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室上部21の上端部が天井部7に当接するように構成され、気室下部22の下端部が床部5に当接するように構成されてよい。好適には、気室上部21の上端部は、天井部7の凸部8に当接するように構成され、気室下部22の下端部は、床部5のセンタコンソール6に当接するように構成されてよい。より好適には、気室上部21の上端部は、凸部8の乗員A側の側面部に当接するように構成され、気室下部22の下端部は、センタコンソール6の乗員A側の側面部に当接するように構成されてよい。
【0060】
そして、気室上部21及び気室下部22は、エアバッグ20の展開時に、気室上部21の上端部が天井部7に当接すると、気室後部23が屈曲することで、気室上部21が下方に撓むように構成されてよい。更に、気室下部22の下端部が床部5に当接すると、気室後部23が屈曲することで、気室下部22が上方に撓むように構成されてよい。
【0061】
実施形態5に係る気室上部21は、天井部7及び気室下部22への当接と、気室後部23からの支持とによって、乗員A側とは反対側(車両1の中央側)への移動が規制される。よって、実施形態5に係るエアバッグ20は、実施形態1に係るエアバッグ20と同様に、エアバッグ20の展開時に車室内の構造物と干渉しても、乗員Aを適切に保護することができる。
【0062】
[実施形態6]
図13は、実施形態6に係るエアバッグ装置10を前方から視た正面図である。
【0063】
実施形態6に係るエアバッグ装置10は、複数の座席2のそれぞれに対して設けられた複数のエアバッグ20を備えてよい。すなわち、実施形態6に係るエアバッグ装置10では、運転席及び助手席に着座する各乗員Aに対して専用のエアバッグ20が設けられてよい。それにより、実施形態6に係るエアバッグ20は、各乗員Aをより適切に保護することができる。
【0064】
[その他]
上述の実施形態において、エアバッグ20は、特許請求の範囲に記載された「エアバッグ」の一例に該当する。気室上部21は、特許請求の範囲に記載された「気室上部」の一例に該当する。気室下部22は、特許請求の範囲に記載された「気室下部」の一例に該当する。気室後部23は、特許請求の範囲に記載された「気室後部」の一例に該当する。第1面31は、特許請求の範囲に記載された「第1面」及び「第6面」の一例に該当する。第2面32は、特許請求の範囲に記載された「第2面」及び「第5面」の一例に該当する。第3面33は、特許請求の範囲に記載された「第3面」及び「第8面」の一例に該当する。第4面34は、特許請求の範囲に記載された「第4面」及び「第7面」の一例に該当する。規制部材40は、特許請求の範囲に記載された「規制部材」の一例に該当する。センタコンソール6を含む床部5は、特許請求の範囲に記載された「床部」の一例に該当する。凸部8を含む天井部7は、特許請求の範囲に記載された「天井部」の一例に該当する。
【0065】
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0066】
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本発明の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
1:車両、2:座席、3:シートバック、3a:側部、4:ヘッドレスト、4a:下端部、5:床部、6:センタコンソール、7:天井部、8:凸部、10:エアバッグ装置、11:収納部、12:インフレータ、20:エアバッグ、21:気室上部、22:気室下部、23:気室後部、31:第1面、32:第2面、33:第3面、34:第4面、40:規制部材、A:乗員、F:力、R1:反力、R2:反力、S:空間、S1:上側空間、S2:下側空間