IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱航空機株式会社の特許一覧

特許7129159液量算出装置および移動体の重心変更装置
<>
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図1
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図2
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図3
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図4
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図5
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図6
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図7
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図8
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図9
  • 特許-液量算出装置および移動体の重心変更装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】液量算出装置および移動体の重心変更装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/58 20060101AFI20220825BHJP
   G01F 22/00 20060101ALI20220825BHJP
   B64D 45/00 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
G01F23/58
G01F22/00
B64D45/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017204157
(22)【出願日】2017-10-23
(65)【公開番号】P2019078579
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】508208007
【氏名又は名称】三菱航空機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】齋木 康寛
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷 卓
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-166893(JP,A)
【文献】特開平01-136028(JP,A)
【文献】特開平10-206209(JP,A)
【文献】特開2013-252756(JP,A)
【文献】特開2008-114789(JP,A)
【文献】特開平10-140637(JP,A)
【文献】特開2008-261781(JP,A)
【文献】実開平02-146328(JP,U)
【文献】実開平07-009215(JP,U)
【文献】特開昭62-179611(JP,A)
【文献】特開平09-152370(JP,A)
【文献】実開平07-006730(JP,U)
【文献】米国特許第04914962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 22/00-23/80,
B64D 45/00,
B64B 1/70,
B64C 17/08-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される容器に貯留される、燃料を除く液体の量を算出する液量算出装置であって、
前記移動体の移動に伴う前記容器の状態量の変化に基づいて、前記液体の液面の傾斜角を検出する第一傾斜検出部と、
前記第一傾斜検出部に対して別の要素であって、前記容器に貯留される前記液体の液面の位置を検出する液位検出部と、
前記第一傾斜検出部が検出する前記液面の傾斜角と、前記液位検出部が検出する前記液面の位置と、前記容器の仕様と、に基づいて、前記容器に貯留される前記液体の量を算出する演算部と、を備え、
複数の前記液位検出部が、平面方向における前記容器の第一方向および前記第一方向と直交する第二方向の少なくとも一つの方向に間隔をあけて前記容器内に配置され
前記液位検出部は、
揺動中心を介して前記容器に支持されるとともに、軸線方向に伸縮する伸縮体と、
前記伸縮体に支持されるとともに、前記液面に浮く浮体と、
前記揺動中心から前記浮体までの距離を検出する測距部と、
鉛直方向に対する前記伸縮体の傾斜角を検出する第二傾斜検出部と、を含み、
前記液位検出部は、前記伸縮体の伸縮および揺動運動により前記浮体が前記液面の変動に追従するように構成されている、
ことを特徴とする液量算出装置。
【請求項2】
複数の前記液位検出部は、
前記第一方向の一方端に偏って配置される第一液位検出部と、
前記第一方向の他方端に偏って配置される第二液位検出部と、を備える、
請求項1に記載の液量算出装置。
【請求項3】
複数の前記液位検出部は、
前記第二方向の一方端に偏って配置される第三液位検出部と、
前記第二方向の他方端に偏って配置される第四液位検出部と、を備える、
請求項1または2に記載の液量算出装置。
【請求項4】
前記第一傾斜検出部は、
前記容器に対応して設けられ、前記液面の前記傾斜角を検出する、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の液量算出装置。
【請求項5】
前記第一傾斜検出部は、
前記移動体に設けられた機体姿勢センサである、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の液量算出装置。
【請求項6】
前記移動体は、航空機であり、
前記液面の傾斜角および前記液位検出部の傾斜角は、前記航空機のピッチ方向およびロール方向の成分を含む、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の液量算出装置。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の液量算出装置を複数有する移動体の重心変更装置であって、
前記液量算出装置の前記容器同士を接続する配管と、
前記配管を介して複数の前記容器の間で前記液体を移動させるポンプと、
前記液量算出装置で算出した各々の前記容器における前記液体の量と、前記移動体における前記容器の配置に基づいて、複数の前記容器間における前記液体の移動量が生ずるように前記ポンプの動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする移動体の重心変更装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、例えば航空機に搭載される容器に貯留された液体の量を算出する液量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に貯留された液体の量を検出できる容器が種々提案されている。容器を搭載している移動体が傾いたときには傾きを考慮して液体の量を検出する必要がある。例えば特許文献1、2は、容器内に設けられる一対の液位センサを用いて液面の傾き(以下、傾斜角)を検出する。具体的には、特許文献1、2は、所定の間隔をあけて配置されている一対のセンサのそれぞれのセンサで検出した液面の位置に基づいて液面の傾斜角を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-35334号公報
【文献】特開2012-137480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、航空機の飛行試験時には、旅客や貨物を想定したウエイトの配置を変化させて機体の重心が異なる状況を作りだし、このような機体の重心が異なる条件下における機体の空力特性のデータを取得することが行われる。このとき、機体内に複数の容器を搭載し、これらの容器間でウエイトとなる液体を移動させることで、機体の重心位置を調整する。
【0005】
航空機の飛行試験時に機体の重心を精度よく変更するためには、各々の容器における液体の量を正確に知ることが重要である。ところが、航空機は、飛行時にピッチ方向(左右を軸とする回転方向)およびロール方向(前後を軸とする回転方向)に傾く。そのため、航空機の飛行試験時に液量を求める際には、容器に対するピッチ方向およびロール方向の液面の傾斜角を考慮してセンサで検出された液位に基づき液量を算出する必要がある。
【0006】
特許文献1、2は、一対のセンサのそれぞれで検出した液位に基づいて液面の傾斜角を求めるので、一対のセンサの両方が液面に接している必要がある。ところが、液体の量が少ないか、または、液面の傾斜角が大きくなると、一方のセンサにしか液面が接しなくなるので、液面の傾斜角を求めることができない。したがって、特許文献1、2による液面の傾斜角を求める手法によれば、検出できる液面の傾斜角の範囲に制約があるので、検出できる液量の範囲にも制約がある。
【0007】
以上より、本発明は、液体の量が少ないか、または、容器の傾斜角が大きくなったとしても、広い範囲で液量を検出できる液量算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液量算出装置は、移動体に搭載される容器に貯留される液体の量を算出する。
本発明の液量算出装置は、第一傾斜検出部と、液位検出部と、演算部と、を備える。
第一傾斜検出部は、移動体の移動に伴う容器の状態量の変化に基づいて、液面の傾斜角を検出する。液位検出部は、容器に貯留される液面の位置を検出する。また、演算部は、第一傾斜検出部が検出した液面の傾斜角と、液位検出部が検出した液面の位置と、容器の仕様と、に基づいて、容器に貯留される液体の量を算出する。なお、本発明において、液面の傾斜角は、液体を貯留する容器の容積部分に対する、液面の傾斜角として定義される。
【0009】
本発明における液量算出装置において、複数の液位検出部を、平面方向における容器の第一方向および第一方向と直交する第二方向の少なくとも一つの方向に間隔をあけて容器内に配置することができる。
複数の液位検出部として、第一方向の一方端に偏って配置される第一液位検出部と、第一方向の他方端に偏って配置される第二液位検出部とを備えることができる。
また、複数の液位検出部として、第二方向の一方端に偏って配置される第三液位検出部と、第二方向の他方端に偏って配置される第四液位検出部と、を備えることができる。
【0010】
本発明における液量算出装置において、第一傾斜検出部を容器に対応して設けることができる。この形態は、複数の容器が存在する場合に、全ての容器に第一傾斜検出部を設けること、および、複数の容器の中から選択された単数または複数の容器に第一傾斜検出部を設けること、を包含しており、それぞれの容器における液面の傾斜角を検出する。
また、本発明における液量算出装置において、第一傾斜検出部は、移動体に設けられた機体姿勢センサであってもよい。この形態は、複数の容器が存在する場合に、容器とは独立して単数または複数の第一傾斜検出部が設けられることを包含している。
【0011】
本発明における液量算出装置において、液位検出部は、移動体の姿勢によらず、容器に対する姿勢が維持される液位検出部であってもよいし、または、移動体の姿勢によって、容器に対する姿勢が変わる液位検出部であってもよい。
【0012】
後者の具体例として、伸縮体と、浮体と、測距部と、第二傾斜検出部と、を含む液位検出部とすることができる。
この伸縮体は、揺動中心を介して容器に支持されるとともに、軸線方向に伸縮する。浮体は、伸縮体に支持されるとともに、液面に浮く。測距部は、揺動中心から浮体までの距離を検出する。また、第二傾斜検出部は、鉛直方向に対する伸縮体の傾斜角を検出する。
【0013】
本発明の液量算出装置は、移動体としての航空機に設けることができる。そして、液面の傾斜角および液位検出部の傾斜角は、航空機のピッチ方向およびロール方向の成分を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の移動体の重心変更装置は、上記の液量算出装置を複数有しており、液量算出装置の容器同士を接続する配管と、ポンプと、制御部と、を備える。ポンプは、配管を介して複数の容器の間で液体を移動させる。制御部は、液量算出装置で算出した各々の容器における液体の量と、移動体における容器の配置に基づいて、複数の容器間における液体の移動量が生ずるようにポンプの動作を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液量算出装置は、液面の傾斜角を容器の状態量の変化に基づいて求めるので、液面の傾斜角を検出するために液位検出部が液体に接する必要がない。
したがって、本発明の液量算出装置によれば、例えば容器の傾斜角が大きいために一対の液位検出部の一方が液面を検出できなくても、他方の液位検出部が液面と接していれば、液面の傾斜角と液面の位置を用いて液体の量を算出できるので、検出できる液量の範囲の制約を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の重心変更装置における航空機への搭載例を示す図である。
図2】第1実施形態の重心変更装置の構成例を示す図である。
図3】(a)第1実施形態の液量算出装置を示す側面図であり、(b)第1実施形態の液量算出装置を示す正面図である。
図4】(a)タンクの前側が上向きに傾斜した状態を示す図であり、(b)タンクの前側が下向きに傾斜した状態を示す図である。
図5】(a)第1実施形態において一方の液面検出センサで液面を検出しているときの側面方向概要図であり、(b)第1実施形態において一方の液面検出センサで液面を検出しているときの正面方向概要図である。
図6】(a)第1実施形態において2つの液面検出センサで液面を検出しているときの側面方向概要図であり、(b)第1実施形態において2つの液面検出センサで液面を検出しているときの正面方向概要図である。
図7】(a)第2実施形態の液量算出装置を示す側面図であり、(b)第2実施形態の液量算出装置を示す正面図である。
図8】(a)第2実施形態においてタンクがピッチ方向に傾斜した状態を示す図であり、(b)第2実施形態においてタンクがロール方向に傾斜した状態を示す図である。
図9】(a)第2実施形態において一方の液面検出センサで液面を検出しているときの側面方向概要図であり、(b)第2実施形態において一方の液面検出センサで液面を検出しているときの正面方向概要図である。
図10】(a)第2実施形態において2つの液面検出センサで液面を検出しているときの側面方向概要図であり、(b)第2実施形態において2つの液面検出センサで液面を検出しているときの正面方向概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る重心変更装置を移動体としての航空機に適用した例について説明する。
本実施形態は第1実施形態と第2実施形態を含み、両者は一対の液位検出部としての液位センサがタンク20の長手方向(第一方向)に間隔をあけて配置される点で共通する。ただし、第1実施形態は、航空機の姿勢によらず、タンクに対する液位センサの姿勢が維持される例に該当し、第2実施形態は、航空機の姿勢によって、タンクに対する姿勢が変わる例に該当する。以下、第1実施形態、第2実施形態の順に説明する。
【0018】
〔第1実施形態の説明〕
第1実施形態の重心変更装置10は、図1に示すように、航空機100の飛行試験時において航空機100の胴体部分100Aに取り付けられる。重心変更装置10は、複数のタンク20を有しており、各々のタンク20には旅客や貨物を想定したウエイトとして機能する液体(水)が貯留される。そして、重心変更装置10は、これらのタンク20の間で水を移動させることで航空機100の胴体部分100Aにおける重心位置を変更する。
ここで、以下の説明において、航空機100の前後方向はXで示し、航空機100の左右方向はYで示し、航空機100の上下方向はZで示す。また、航空機100のピッチ方向はPで示し、航空機100のロール方向はRで示す。
【0019】
〔重心変更装置〕
重心変更装置10は、図2に示すように、タンク20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,20Hと、マニホールド部30A,30Bと、ポンプ40と、制御部50とを有している。
ここで、タンク20A-20Hは同様の構成を有しており、個々の要素を区別する必要がないときにはタンク20と総称する。同様に、マニホールド部30A,30Bは同様の構成を有しており、個々の要素を区別する必要がないときにはマニホールド部30と総称する。
【0020】
タンク20は、ウエイトとしての水を貯留する容器であって、各々のタンク20に貯留される水量は後述の液量算出装置60によって検出される。第1実施形態においては、航空機100の前後方向Xに沿って4つずつ、左右方向Yに2列となるように並べられた合計8個のタンク20が配置される。例えば、第1実施形態のタンク20は、図3に示すように、水が貯留される内部空間である容積部分が直方体の形状を有している。なお、本実施形態において、タンク20の容積部分とタンク20の外形が異なることがあることを考慮して、傾斜角などについて容積部分を対象とする。また、本実施形態においては、タンク20の外形とタンク20の容積部分の形状が直方体で一致しかつ寸法も一致するとみなせるので、以下ではタンク20の容積部分を単にタンク20と略記することがある。
【0021】
また、第1実施形態におけるタンク20は、容積部分の長さ方向Lが航空機の前後方向Xと一致し、容積部分の幅方向が航空機の左右方向Yと一致し、容積部分の高さ方向Hが航空機の上下方向Zと一致するように配置される。そのため、航空機100がピッチ方向Pに傾斜するとタンク20もピッチ方向Pに傾斜し、航空機100がロール方向Rに傾斜するとタンク20もロール方向Rに傾斜する。
【0022】
マニホールド部30は、タンク20およびポンプ40間で水をやりとりする配管である。マニホールド部30は、タンク20およびポンプ40にそれぞれ接続されている。マニホールド部30は、機体前側に配置された4つのタンク20A-20Dおよび機体後側に配置された4つのタンク20E-20Hに対してそれぞれ1つずつ設けられる。つまり、第1実施形態では航空機100の前後方向Xに沿って機体前側および機体後側にマニホールド部30A,30Bが配置されている。
【0023】
機体前側の4つのタンク20A-20Dは、機体前側のマニホールド部30Aと接続されている。機体後側の4つのタンク20E-20Hは、機体後側のマニホールド部30Bと接続されている。また、マニホールド部30において各タンク20に分岐している配管31には、給水または排水するタンク20を切り替えるためにそれぞれ弁32が設けられている。
【0024】
そして、機体前側のマニホールド部30Aと機体後側のマニホールド部30Bの中間に1つのポンプ40が配置されており、マニホールド部30A,30Bは配管33を介してそれぞれポンプ40と接続されている。ポンプ40は、機体前側のタンク20と機体後側のタンク20との間で水を移動させる。
【0025】
ここで、重心変更装置10は、弁32の開閉により、同じマニホールド部30に接続された4つのタンク20のうちで排水を行うタンク20と排水を行わないタンク20とを設定できる。同様に、重心変更装置10は、弁32の開閉により、同じマニホールド部30に接続された4つのタンク20のうちで給水を行うタンク20と給水を行わないタンク20とを設定できる。これにより、重心変更装置10は、ポンプ40を駆動させる際に開いている弁32を切り替えることで、機体前側で弁32の開いているタンク20と、機体後側で弁32の開いているタンク20との間で水を移動させることができる。このようなタンク20間での水の移動により、航空機100の胴体部分100Aにおける重心位置が変更される。
【0026】
制御部50は、重心変更装置10の各要素を制御する。例えば、制御部50は、弁32の開閉を切り替える制御や、タンク20間における水の移動量を決定する制御を実行する。また、制御部50は、後述の液量算出装置60の演算部63を含み、各々のタンク20に貯留された水の量(以下、水量)を演算部63によって算出する。なお、図2では演算部63を1つのみ示すが、演算部63は実際にはタンク20ごとに設けられている。
【0027】
〔液量算出装置〕
次に、各々のタンク20に対応する液量算出装置60の構成を説明する。なお、各々の液量算出装置60の構成は共通するので、タンク20Aの液量算出装置60Aを説明し、重複説明は省略する。
第1実施形態の液量算出装置60Aは、図3に示すように、タンク20Aに設けられており、第一傾斜センサ61と、一対の液面検出センサ62A,62Bと、演算部63とを有している。ここで、液面検出センサ62A,62Bは同様の構成を有しているので、個々の要素を区別する必要がないときには液面検出センサ62と総称する。
【0028】
〔第一傾斜センサ〕
第一傾斜センサ61は、タンク20の状態量の変化に基づいてタンク20の水平面に対する傾斜角、換言すると水の液面の傾斜角を検出する第一傾斜検出部の一例である。
【0029】
第一傾斜センサ61は、水平方向に対してタンク20がピッチ方向Pに傾斜している傾斜角αと、水平面に対してタンク20がロール方向Rに傾斜している傾斜角αとをそれぞれ検出する。なお、傾斜角αと傾斜角αを総称するときには、単に傾斜角αという。
第一傾斜センサ61は、例えば振動型のジャイロセンサで構成され、タンク20と相対位置が一定であるタンク20の外側上面に取り付けられている。第一傾斜センサ61は、航空機100の動きに伴ってタンク20の傾斜角が変化したときに、センサに加わるコリオリの力からピッチ方向Pとロール方向Rにおける角速度を検出する。そして、第一傾斜センサ61は、これらの角速度を積分演算することで、タンク20におけるピッチ方向Pとロール方向Rのそれぞれの傾斜角を検出する。なお、第一傾斜センサ61が検出したタンク20における傾斜角の情報は、演算部63に出力される。また、角速度は状態量の一例である。
【0030】
〔液面検出センサ〕
液面検出センサ62は、液位検出部の一例である。液面検出センサ62は、タンク20内の水面22の位置を検出する。この位置は、タンク20の高さ方向の位置である。液面検出センサ62が検出する水面22の位置は、水平面に対するタンク20の傾斜角に応じて変化する。なお、液面検出センサ62が検出した水面22の位置の情報は、演算部63に出力される。
【0031】
例えば、液面検出センサ62は、タンク20の上面から垂直に垂下した棒状のセンサ本体65を有している。センサ本体65は、一対の絶縁された電極(不図示)を有する検出領域65Aがセンサ本体65の長さ方向に沿って複数対配置される、導電率式の水位センサを構成している。センサ本体65において、検出領域65Aが空気に接触していると検出領域65Aの電極間に電流は流れないが、検出領域65Aが水に接触していると検出領域65Aの電極間には水の電気抵抗に応じた電流が流れる。そのため、液面検出センサ62は、電流が流れている検出領域65Aの位置を求めることで、センサ本体65のどの位置に水面22が位置しているかを検出できる。
なお、液面検出センサ62の構成は、例えば、静電容量型の水位センサなどの他の公知の水位センサであってもよい。
【0032】
ここで、第1実施形態の液面検出センサ62は、センサ本体65がタンク20の上面21に固定されており、タンク20の上面21とセンサ本体65のなす角度は、航空機100の姿勢に関らず常に直角の姿勢が維持される。また、センサ本体65の検出する水面22の位置から、タンク20の上面21において、センサ本体65の一端が固定されている箇所から水面22までセンサ本体65に沿った方向の距離を求めることができる。
【0033】
また、第1実施形態のタンク20は、容積部分の形状が直方体をなしており、平面方向において、長さ方向L(第一方向)と、長さ方向と直交する幅方向(第二方向)とを有する。タンク20の長さ方向の寸法は、幅方向W(第二方向)より大きい。このタンク20の仕様に応じて、タンク20がピッチ方向Pに傾斜するときに水面22の検出範囲を広げるために、液面検出センサ62A,62Bは、以下のようにタンク20に配置されている。
【0034】
図3に示すように、液面検出センサ62Aは、タンク20の長さ方向Lの中央よりも前側に偏って配置され、液面検出センサ62Bは、タンク20の長さ方向Lの中央よりも後側に偏って配置されている。なお、この液面検出センサ62A,62Bはあくまで一例であり、さらに前側、後側に偏って配置されてもよい。
【0035】
ここで、図4(a),(b)は、タンク20に貯留されている水量が少ない場合を想定している。
図4(a)において破線で示すように、タンク20の長さ方向Lの中央のみに液面検出センサ62を配置したとすると、この液面検出センサ62は水面22に接触しない。
図4(a)において実線で示すように、タンク20の長さ方向Lの中央よりも後側に位置している液面検出センサ62Bが、タンク20の後側に溜まっている水の水面22に接触する。同様に、図4(b)において実線で示すように、タンク20の長さ方向Lの中央よりも前側に位置している液面検出センサ62Aが、タンク20の前側に溜まっている水の水面22に接触する。
なお、ここでは水量が少ない場合を想定したが、傾斜角が大きい場合にも同様のことが当てはまる。
【0036】
したがって、タンク20の長さ方向Lに間隔をあけて液面検出センサ62A,62Bを配置すると、タンク20の長さ方向Lの中央のみに液面検出センサ62を配置する場合に比べて、タンク20がピッチ方向Pに傾斜するときに水面22を検出する範囲を、より水量が少ない範囲まで広げることができる。
なお、図4を用いた説明はあくまで液体の量が少ないか、または傾斜角が大きいことを前提としている。本実施形態において、この前提がない場合には長さ方向Lの中央のみに液面検出センサを設けることを許容する。
【0037】
図4に示す例では、タンク20の長さ方向Lにおいて複数の液面検出センサ62を配置し、タンク20がピッチ方向Pに傾斜するときに水面22の検出範囲を広げる例を説明した。一方、タンク20の幅方向W(機体の左右方向)に複数、典型的には一対の液面検出センサ62を配置すれば、タンク20がロール方向Rに傾斜するときに水面22の検出範囲を広げることができる。
なお、液面検出センサ62の数やそれらの配置位置は、タンク20の仕様、水平面に対するタンク20の傾斜角の範囲、あるいはタンク20に貯留される水(液体)の量の範囲を考慮して、適宜設定することができる。したがって、本実施形態において、液面検出センサ62はタンク20内に1つのみ設置してもよい。あるいは、本実施形態において、長さ方向Lや幅方向Wに3つ以上の液面検出センサ62を設置するようにしてもよい。
【0038】
〔演算部〕
次に、演算部63は、タンク20の仕様情報、第一傾斜センサ61で検出した傾斜角の情報(傾斜角情報)および液面検出センサ62で検出した水面22の位置の情報(水面位置情報)を用いて、タンク20に貯留されている現在の水量を算出する。演算部63は、タンク20の形状および寸法の仕様を示す仕様情報を保持する記憶媒体64を有している。記憶媒体64は、タンク20の仕様情報として以下の情報を保持する。
【0039】
タンク20の仕様情報
(i)タンク20の長手寸法L
(ii)タンク20の幅寸法B
(iii)タンク20の高さ寸法H
(iv)タンク20における液面検出センサ62の取付位置
(v)液位センサ62のタンク20に対する姿勢は直角で維持される
【0040】
また、演算部63は、記憶媒体64にタンク20の水量を算出するための演算式を保持している。この演算式は、タンク20の仕様情報、傾斜角情報および水面位置情報を変動要素としている。また、演算式は、タンク20の傾斜方向に対して側方からみたとき(ピッチ方向Pの傾斜であれば幅方向Wからみたとき、ロール方向Rの傾斜であれば長さ方向Lからみたとき)の水の領域の形状が、三角形、台形、五角形をなす場合にそれぞれ異なる演算式が適用される。なお、本実施形態では、演算式の例として、水の領域の形状が三角形をなすときに適用される第1演算式(1)と、水の領域の形状が台形をなすときに適用される第2演算式(2)と、をそれぞれ説明する。
【0041】
そして、演算部63は、タンク20の仕様情報、第一傾斜センサ61で検出した傾斜角情報および液面検出センサ62で検出した水面位置情報を、後述する演算式に代入してタンク20に貯留されている水量を算出する。演算部63が算出した水量の情報は、制御部50に出力される。
なお、演算部63は、専用のハードウエアで構築されたプロセッサであってもよく、制御部50内における演算処理によってソフトウェア的に実現されてもよい。
【0042】
演算部63は、タンク20に貯留されている水量を、例えば、以下のステップで算出する。
(ステップ1):演算部63は、タンク20の仕様情報((i)~(iv))を記憶媒体64から読み出す。
(ステップ2):演算部63は、タンク20におけるピッチ方向Pの傾斜角α1およびロール方向Rの傾斜角α2を第一傾斜センサ61から取得する。これら傾斜角情報α,αは、タンク20の水平面に対する傾斜角を示す。
(ステップ3):演算部63は、水面位置情報hを液面検出センサ62から取得する。この水面位置情報hは、タンク20の上面21において、センサ本体65の一端が固定されている箇所から水面22までセンサ本体65に沿った方向の距離hを示す。また、この水面位置情報hは、液面検出センサ62A,62Bのそれぞれで検出された水面位置情報haと水面位置情報hbを含んでいる。
【0043】
(ステップ4):演算部63は、ステップ1で取得した仕様情報((i)~(iv))と、ステップ2で取得したタンク20の傾斜角情報α,αと、ステップ3で取得した水面位置情報ha,hbと、を第一演算式(1)または第二演算式(2)に代入することで、タンク20に貯留されている水量を算出する。
演算部63は、水面位置情報ha,hbの一方しか取得できないときには取得できた水面位置情報ha,hbを用い、水面位置情報ha,hbの両方を取得したときには、例えば、水量の算出のときに予め決定されている一方の液面検出センサ62の水面位置情報を用いる。
なお、液面検出センサ62が1つのみの場合は、その液面検出センサ62の水面位置情報を用いる。
【0044】
次に、記憶媒体64が保持する第一演算式(1)、第二演算式(2)を順に説明する。なお、第一演算式(1)は、ピッチ方向Pに傾斜したときに適用される第一演算式(1p)とロール方向Rに傾斜したときに適用される第一演算式(1r)に区分して説明する。第二演算式(2)についても同様である。
【0045】
はじめに、図5(a)に示すように、第1実施形態においてタンク20がピッチ方向Pに傾斜したために、演算部63が液面検出センサ62Bから水面位置情報を取得したものとする。そして、図5(a)に示すように、幅方向Wからみたときに水の領域の形状が三角形をなす条件において、演算部63は第一演算式(1p)により水量Vを算出する。
【0046】
なお、第1実施形態は、液面検出センサ62のセンサ本体65はタンク20の上面21に対して垂直に固定され、タンク20は直方体である。したがって、第一演算式(1p)において、α=βの関係が成り立つ。次に説明する第一演算式(1r)についても同様にα=βの関係が成り立つ。つまり、第一演算式(1r),(1p)のβおよびβの値は、αおよびαの値から一義的に定まる。
また、後述する第2実施形態においては、α=βの関係およびα=βの関係が成り立つわけではない。
【0047】
【数1】
【0048】
第一演算式(1p)の変動要素の内訳は、以下の通りである。なお、第一演算式(1r)の変動要素の内訳も以下と同じである。なお、液面検出センサ62で検出された水面22は、検出された点を通過して水平方向に延びるものとみなしている。
V:水量
L:タンク20の長手寸法
B:タンク20の幅寸法
H:タンク20の高さ寸法
:容積部分の長さ方向Lにおけるタンク20の端から液面検出センサまでの距離
:容積部分の幅方向Wにおけるタンク20の端から液面検出センサまでの距離
α:容積部分のピッチ方向Pの傾斜角
α:容積部分のロール方向Rの傾斜角
h:センサ本体65におけるタンクの上面から水面までの距離
β:センサ本体65における鉛直方向からピッチング方向Pへの傾斜角(=α
β:センサ本体65における鉛直方向からロール方向Rへの傾斜角(=α
【0049】
また、図5(b)に示すように、タンク20がロール方向Rに傾斜したために、演算部63が液面検出センサ62Aおよび62Bの両方から水面位置情報を取得したものとする。そして、図5(b)に示すように、長さ方向Lからみたときに水の領域の形状が三角形をなす条件において、演算部63は下記の第一演算式(1r)により水量Vを算出する。図5(b)においては、タンク20の長さ方向Lにおける2つの液面検出センサ62のうち一方のみを図示している。
【0050】
【数2】
【0051】
次に、図6(a)に示すように、タンク20がピッチ方向Pに傾斜したことにより、液面検出センサ62Aおよび液面検出センサ62Bの両方が水面22に接し、演算部63が液面検出センサ62Aおよび液面検出センサ62Bの両方から水面位置情報を取得したものとする。そして、図6(a)に示すように、幅方向Wからみたときに水の領域の形状が台形をなす条件において、演算部63は第二演算式(2p)により水量Vを算出する。なお、第二演算式(2p)における変動要素は第一演算式(1p)と同様である。
【0052】
【数3】
【0053】
また、図6(b)に示すように、タンク20がロール方向Rに傾斜したことにより、液面検出センサ62Aおよび液面検出センサ62Bの両方が水面22に接し、演算部63が液面検出センサ62Aおよび液面検出センサ62Bの両方から水面位置情報を取得したものとする。そして、図6(b)に示すように、長さ方向Lからみたときに水の領域の形状が台形をなす条件において、演算部63は第二演算式(2r)により水量Vを算出する。図6(b)においては、タンク20の長さ方向Lにおける2つの液面検出センサ62のうち一方のみを図示している。なお、第二演算式(2r)における変動要素は第一演算式(1r)と同様である。
【0054】
【数4】
【0055】
以下、第1実施形態の液量算出装置60が奏する効果を述べる。
本実施形態の液量算出装置60は、タンク20の状態量の変化に基づいてそのタンク20の傾斜角を検出し、この傾斜角に基づいてタンク20の水量を算出する。傾斜角を検出するためには、液面検出センサ62A,62Bの少なくとも一方が水面22に接していなければならないが、液面検出センサ62A,62Bの両方が液面22に接している必要はない。
したがって、本実施形態の液量算出装置60によれば、一対の液面検出センサ62A,62Bの一方だけしか水面22と接していなくても、他方の液面検出センサが液面22と接していれば、液面22の傾斜角と液面22の位置を用いて水量を算出できる。この結果として、液量演算装置60は、検出する液量について、水量が少ない、または、液面の傾斜角が大きいといった制約の範囲を小さくできる。
【0056】
また、液量算出装置60は、タンク20のピッチ方向Pの傾斜角およびロール方向の傾斜角Rを用いることで、タンク20がピッチ方向Pに傾斜する場合とロール方向Rに傾斜する場合のいずれについても水量を算出できる。特に、寸法が相対的に大きいピッチ方向Pについて、間隔をあけて液面検出センサ62Aと液面検出センサ62Bを設けているので、正および負の方向の両方のピッチ方向Pに航空機100が傾いても、水量を算出できる。
【0057】
また、液量算出装置60は、各タンク20にそれぞれ第一傾斜センサ61が取り付けられている。そのため、第一傾斜センサ61は、タンク20の傾斜角をタンク20から直接検出するので傾斜角を高い精度で取得できる。このように、液量算出装置60は、高い精度の傾斜角の情報に基づいて水量を算出するため、算出する水量の精度も高い。
【0058】
本実施形態においては、演算式を用いてタンク20の水量を算出する液量算出装置60の構成例を説明した。しかし、液量算出装置60は、演算式を用いずに他の手法によってタンク20の水量を算出してもよい。例えば、タンク20の仕様を3次元CAD(computer-aided design)でモデリングし、傾斜角(ピッチ、ロール)、水面22の位置と水量の組み合わせを予め算出してデータテーブル化しておいてもよい。そして、演算部63は、計測された傾斜角(ピッチ、ロール)、水面22の位置に基づいて上記のデータテーブルを参照し、予め算出されている水量の値をデータテーブルから読み出してもよい。
【0059】
〔重心変更装置の動作〕
次に、図1図2を参照して、液量算出装置60を備える第1実施形態の重心変更装置10の動作を説明する。
制御部50は、現在の重心変更装置10の設定における機体の重心位置をすでに算出している。この算出は、以下の手順で行われる。
制御部50は、各々のタンク20に設けられる液量算出装置60の演算部63から、各々のタンク20に貯留されている水量の情報を取得する。そして、制御部50は、各タンク20の水量および各タンク20の平面方向(XY方向)の位置に基づいて、現在の重心変更装置10の設定における機体の重心位置を算出する。
【0060】
制御部50は、その後に機体の重心位置の変更指示を受けると、指示された重心位置に合致する各タンク20の水量の配分、つまり各タンク20の水量の目標値を算出する。そして、制御部50は、各タンク20の現在の水量と目標値との差分から、各タンク20における水の移動量を算出する。
【0061】
制御部50は、各タンク20における水の移動量に基づいて、水を移動させるタンク20と水を移動させないタンク20を決定する。制御部50は、水を移動させるタンク20の弁32を開き、水を移動させないタンク20の弁32を閉じるように指示する。そして、制御部50はポンプ40の駆動を指示して、機体前側で弁32の開いているタンク20と、機体後側で弁32の開いているタンク20との間で水を移動させる。制御部50は、各タンク20の水量が目標値になると、タンク20間の水の移動を終了させる。
以上のようにして、重心変更装置10は、航空機100の胴体部分100Aにおける重心位置を変更できる。
【0062】
〔重心変更装置の効果〕
第1実施形態の重心変更装置10は、液量算出装置60を有することにより、タンク20がピッチ方向やロール方向に傾いていても各タンク20の水量を正しく検出できる。そのため、第1実施形態の重心変更装置10によれば、航空機100の機体がピッチ方向またはロール方向に傾いている状態でも機体の重心位置を正確に変更できる。
つまり、第1実施形態の重心変更装置10によれば、機体の重心位置を変更するときに、タンク20の水量を検出するために機体の姿勢を安定させる必要がなくなるので、試験飛行時の飛行時間を短縮できる。また、第1実施形態の重心変更装置10によれば、離陸後から試験飛行の高度に達するまでの時間のように、航空機100の姿勢が安定していないときにも機体の重心位置を変更できるので、飛行試験時の上昇時間を有効に利用できる。
【0063】
〔第2実施形態の説明〕
次に、図7図8を参照しつつ、第2実施形態の液量算出装置60’の構成を説明する。第2実施形態の液量算出装置60’は、図1図2に示す重心変更装置10において、第1実施形態の液量算出装置60に置き換えて使用される。
なお、以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0064】
第2実施形態の液量算出装置60’は、図7に示すように、第1実施形態の液面検出センサ62に代えて、フロート式の2つの液面検出センサ70A,70Bを有している。液面検出センサ70A,70Bが検出した水面22の位置の情報は、演算部63に出力される。
第2実施形態の液量算出装置60’において、タンク20内における2つの液面検出センサ70A,70Bの配置は、図3の場合と同様である。なお、液面検出センサ70A,70Bは同様の構成を有しており、個々の要素を区別する必要がないときには液面検出センサ70と総称する。
【0065】
〔液面検出センサ〕
液面検出センサ70は、水面22に浮く浮体71と、浮体71を支持する伸縮体72と、揺動中心として伸縮体72を揺動可能に支持する自在継手73と、伸縮センサ74と、第二傾斜センサ75とを有している。
【0066】
浮体71は、例えば、水よりも比重の低い気体(ヘリウムガス等)が内部に充填された中空の構造体である。浮体71は、伸縮体72の一端に取り付けられている。
伸縮体72は、それぞれ径の異なる複数の筒体72A1,72A2,72A3が入れ子状に収納された構成である。伸縮体72は、筒体72A1,72A2,72A3の相互の進退によりその軸線方向に伸縮する。
自在継手73は、タンク20の上面21と伸縮体72の他端とを接続する。浮体71が取り付けられた伸縮体72は、自在継手73を介してタンク20の容積部分を自由に揺動運動する。この揺動運動は、容器20の上面21に干渉しない範囲で行われる。
【0067】
伸縮センサ74は、伸縮体72の筒体72A1,72A2,72A3の各々の繰り出し量を検出することで伸縮体72の一端から他端までの距離を検出する。伸縮センサ74は、例えばリニアポテンショメータなどで構成される。伸縮センサ74が検出した伸縮体72の距離の情報は、演算部63に出力される。なお、伸縮センサ74は、測距部の一例である。
第二傾斜センサ75は、例えば伸縮体72に内蔵されたジャイロセンサで構成され、鉛直方向に対する伸縮体72のピッチ方向およびロール方向の傾斜角を検出する。第二傾斜センサ75が検出した伸縮体22の傾斜角の情報は、演算部63に出力される。なお、第二傾斜センサ75は、第二傾斜検出部の一例である。
【0068】
第2実施形態の液面検出センサ70は、水面22の傾斜角に応じて、水面22に浮く浮体71の位置が移動する。そうするために、液面検出センサ70は、伸縮体72の伸縮および自在継手73を介する揺動運動によって浮体71が水面22の変動に追従できるように構成されている。
以上の構成を有するので、液面検出センサ70における伸縮体72の一端から他端までの距離は変動し、浮体71は水面22の変動に応じて自由に位置が変わる。
【0069】
なお、液面検出センサ70の浮体71が水面22に接触していない場合には、液面検出センサ70の伸縮体72は鉛直方向に垂下して最も伸長した状態となる。したがって、液面検出センサ70の伸縮体72の傾斜角が鉛直方向とほぼ一致し、伸縮体72の長さが閾値を超えていれば、演算部63は液面検出センサ70が水面22を検出していないと判定してもよい。
【0070】
第2実施形態の液量算出装置60’による水量の算出手順は、第1実施形態の液量算出装置60による水量の算出手順を踏襲する。ただし、液量算出装置60’は液面検出センサ70が揺動運動するので、伸縮体72の鉛直方向に対するピッチ方向の傾斜角βおよび伸縮体72の鉛直方向に対するロール方向の傾斜角βを考慮して水量が算出される。
【0071】
具体的には、前述した第一演算式(1p),(1r)および第二演算式(2p),(2r)におけるβおよびβとして、以下に示すように、第二傾斜センサ75で検出した値が代入される。また、第一演算式(1p),(1r)および第二演算式(2p),(2r)におけるhとして、伸縮センサ74で検出された伸縮体72の一端から他端までの距離が代入される。その他の第一演算式(1p),(1r)および第二演算式(2p),(2r)における変動要素は第1実施形態と同様である。
【0072】
ここで、図9(a)は、第1実施形態の図5(a)に対応し、幅方向Wからみたときに水の領域の形状が三角形をなし、演算部63が第一演算式(1p)により水量Vを算出する場合を示している。図9(b)は、第1実施形態の図5(b)に対応し、長さ方向Lからみたときに水の領域の形状が三角形をなし、演算部63が第一演算式(1r)により水量Vを算出する場合を示している。
また、図10(a)は、第1実施形態の図6(a)に対応し、幅方向Wからみたときに水の領域の形状が台形をなし、演算部63が第二演算式(2p)により水量Vを算出する場合を示している。図10(b)は、第1実施形態の図6(b)に対応し、長さ方向Lからみたときに水の領域の形状が台形をなし、演算部63が第二演算式(2r)により水量Vを算出する場合を示している。
【0073】
h:伸縮体72の一端から他端までの長さ
β:鉛直方向に対する伸縮体72のピッチ方向の傾斜角
β:鉛直方向に対する伸縮体72のロール方向の傾斜角
【0074】
〔第2実施形態の効果〕
第2実施形態の液量算出装置60’も、第1実施形態の液量算出装置60と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、液量算出装置60’によれば、伸縮体72が伸縮することと自在継手73により伸縮体72が揺動運動することにより、液量算出装置60よりも水量を検出する範囲が広くなる。
つまり、図4(a),(b)に破線で示した液面検出センサ62を液面検出センサ70に代替したとすれば、浮体71が水面22に浮くように、伸縮体72が揺動しかつ伸長することができる。したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態よりも水面22の位置を検出できる範囲が広くなるので、検出できる水量の範囲が広がる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択することや、他の構成に適宜変更することが可能である。例えば、重心変更装置10は航空機100に限定されず、船舶、車両などの移動体に搭載されてもよい。また、タンク20に貯留される液体は、水以外の揮発性の小さい液体であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、タンク20の容積部分が直方体である例を説明したが、タンク20の容積部分の形状は、円柱状、球状などの他の形状であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、タンク20に取り付けられた第一傾斜センサ61で、タンク20のピッチ方向の傾斜角およびロール方向の傾斜角を検出する例を説明した。しかし、各タンク20は航空機100の胴体部分100Aに取り付けられているため、航空機の胴体101Aの傾斜角をタンクの容積部分の傾斜角とみなすことができる。そのため、演算部63は、図2に示される機体姿勢センサ51で検出された航空機100のピッチ方向およびロール方向の傾斜角を、タンク20のピッチ方向の傾斜角およびロール方向の傾斜角として用いることができる。そうすれば、各タンク20に設けていた第一傾斜センサ61を省略することができる。
【0079】
また、上記実施形態において、第一傾斜センサ61や第二傾斜センサ75には、状態量として角速度を用いるジャイロセンサを採用した例を示した。しかし、本発明はこれに限らず状態量として加速度を用いる加速度センサをこれらのセンサに採用してもよい。
【0080】
上記実施形態における演算部63は、検出された水面22の1点から水平方向に水面22が伸びるとみなして水量を算出した。しかし、航空機100の飛行時においてタンク20に貯留される水には、移動方向の加速度に比例する慣性力と重力との合力が負荷される。そのため、演算部63は、移動方向の加速度を考慮して水面22の傾斜を水平から補正して水量を算出してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 重心変更装置
20,20A-20H タンク
21 上面
22 水面
30,30A,30B マニホールド部
31,33 配管
32 弁
40 ポンプ
50 制御部
51 機体姿勢センサ
60,60’,60A 液量算出装置
61 姿勢検出センサ
62,62A,62B 液面検出センサ
63 演算部
64 記憶媒体
65 センサ本体
65A 検出領域
70,70A,70B 液面検出センサ
71 浮体
72 伸縮体
72A1-A3 筒体
73 自在継手
74 伸縮センサ
75 傾斜センサ
100 航空機
100A 胴体部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10