(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】改善された量子ドット樹脂配合物を作製する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220825BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220825BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08
C08F220/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018019158
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リアン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】レスリー・イー・オリーリ
(72)【発明者】
【氏名】ツィーフェン・バイ
(72)【発明者】
【氏名】ユーミン・ライ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・チュ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504660(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125524(WO,A1)
【文献】特表2012-509604(JP,A)
【文献】特表2009-519053(JP,A)
【文献】特表2005-508493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/18
C08F 2/00
G02B 5/20
C09K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマー組成物を作製する方法であって、
(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(ii)エステルが脂環式基、またはC
6~C
24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーとの(b)モノマー混合物を、以下のうちのいずれか1つ以
上;前記モノマー混合物を、真空中でシーブ乾燥し、次に平均孔径が2~20オングストロームの乾燥モレキュラーシーブで乾燥すること;器または容器中の前記モノマー混合物を-75℃以下の温度に冷凍し、前記モノマー混合物を、10
2~10
-2Paの範囲の)真空の適用により脱気し、真空下で器または容器を密閉し、そして前記組成物を室温に解凍することにより凍結脱気(FPT)処理すること、
により精製するステップと、
前記精製したモノマー混合物(b)を、乾燥した
窒素ガス中で保管するステップと、
得られた前記モノマー混合物(b)を、乾燥形態または有機溶媒溶液中の量子ドットの組成物(a)と
不活性雰囲気中で合わせて、150ppm以下のH
2O、100ppm以下の全重合阻害化合物、及び150ppm以下の有機ラジカル活性分子を含む重合性モノマー組成物を作製するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記モノマー混合物(b)を精製する前記ステップが、凍結脱気(FPT)処理し、次に、得られた前記処理済みモノマー混合物を
前記平均孔径が2~20オングストロームの乾燥モレキュラーシーブで乾燥することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合性モノマー組成物を作製する方法であって、
(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(ii)エステルが脂環式基、またはC
6
~C
24
アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーとの(b)モノマー混合物を、前記モノマー混合物を10
2~10
-2Paの真空下で脱気することと、次に、使い捨てポリプロピレンカラム中にパックされた
表面積が100~300m
2
/gの活性
多孔質アルミナカラム中で処理すること
により精製するステップと、
前記精製したモノマー混合物(b)を、乾燥した窒素ガス中で保管するステップと、
得られた前記モノマー混合物(b)を、乾燥形態または有機溶媒溶液中の量子ドットの組成物(a)と不活性雰囲気中で合わせて、150ppm以下のH
2
O、100ppm以下の全重合阻害化合物、及び150ppm以下の有機ラジカル活性分子を含む重合性モノマー組成物を作製するステップと、
を含む方法。
【請求項4】
前記モノマー混合物(b)を精製する前記ステップが、前記モノマー混合物を10
2~10
-2Paの真空下で脱気することと、次に、75~200℃の温度で4~24時間の間脱水し、かつ不活性雰囲気中で保管された
前記平均孔径が2~20オングストロームの乾燥モレキュラーシーブへの曝露または前記
平均孔径が2~20オングストロームの乾燥モレキュラーシーブとの混合により、前記モノマー混合物を乾燥することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モノマー混合物(b)及び前記量子ドットの組成物(a)を合わせる前記ステップにおいて、合わせる前記ステップの前に前記(a)量子ドットを真空下で乾燥して任意の有機溶媒を除去するか、または前記重合性モノマー組成物を前記(a)量子ドットと共に真空下で乾燥して任意の有機溶媒を除去する、請求項1
~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマー混合物(b)及び前記量子ドットの組成物(a)を合わせる前記ステップにおいて、前記量子ドットがカドミウムフリー量子ドットを含む、請求項1
~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記量子ドットの組成物(a)が、コアシェル構造を有するコアシェルカドミウムフリー量子ドットを含み、前記シェルの材料が、前記コアの材料よりもバンドギャップが広く、かつ前記コアの材料に対する格子不整合が小さい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマー混合物(b)が、(i)ジビニルベンゼン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、イソボルニルジメタクリレート、またはこれらの混合物と、(b)(ii)エステルが脂環式基またはC
6~C
24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、を含む、請求項1
~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマー混合物(b)が、(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(b)(ii)イソボルニルアクリレート(IBOA)と、を含む、請求項1
~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合性モノマー組成物が、カール・フィッシャー滴定により決定される150ppm以下のH
2Oを含み、かつ参考文献(J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 2004, volume 42, pages 1285-1292)に記載される光化学の方法により決定される75ppm以下の全溶存酸素を含む、請求項1
~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット、好ましくはカドミウムフリーの量子ドットを含有し、初期量子収率パフォーマンスの改善をもたらす重合性モノマー組成物を作製する方法に関し、さらにこの組成物を用いて作製される組成物及びポリマー複合体にも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の量子ドット(QD)は光吸収及び光放出(フォトルミネッセンスPLまたはエレクトロルミネッセンスEL)挙動をもたらし、これらの挙動により多くのディスプレイ及び照明用途で量子ドットの使用が可能になる。多くのQDは、電子及び正孔の対をコア領域内に拘束し、任意の表面電荷状態を防ぐために、バンドギャップの大きい材料でできている。そして、外部シェルまたはQD自らが、有機リガンドにキャッピングされてシェルのトラップ状態を低減することで、量子収率(QY)の低減につながり得る。QDを囲む典型的な有機リガンドは、QDが有機/水性溶液中に分散し、非極性溶媒またはモノマー中の高い可溶性をもたらす比較的長いアルキル鎖を有する助けをする。残念ながら、QDは、光吸収及び/または光変換プロセス中の光酸化に対する感受性が高い。また、水分も同様な影響を有し得る。典型的には、QDは、水及び酸素の悪影響から保護するため、ポリマーマトリックス中にカプセル化されている。しかし、QDが溶媒溶液からモノマー配合物、次に重合に移行してフィルムなどのQDポリマー複合体を形成する際に、明らかなQYの損失が依然として存在する。
【0003】
Leongに対する米国特許出願第US2009/0146202A1号は、制御層、活性層、及びこれら2つの間の、有機誘電コポリマー材料の表面または内側にあるナノ粒子の電荷貯蔵層を備えた有機メモリデバイスであって、ポリマーが溶媒抽出によって処理されてイオン性不純物を除去しポリマー溶液を形成する、有機メモリデバイスを開示している。ナノ粒子は、誘電コポリマーをコーティングすることができ、またはコポリマー層の一部になることができる。ポリマー溶液及びナノ粒子が共に使用される場合、ナノ粒子またはQDはその場で溶液中に形成される。ナノ粒子を含有するポリマー溶液からイオン性不純物を抽出しようとしても、Leongは塩または水溶性イオンの除去のみを開示しており、このためポリマーの有機溶媒溶液がもたらされることになる。このような方法は、QD及び重合性モノマー組成物を含有する配合物のパフォーマンスを改善しないと考えられる。
【0004】
発明者らは、初期量子収率パフォーマンスが改善されたQD及びそのフィルムを含有する重合性モノマー組成物の作製方法を提供する努力をしてきた。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、重合性モノマー組成物であって、(a)量子ドットと、(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマー、及び(ii)エステルが脂環式基、または脂肪アルキル基などのC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーの(b)モノマー混合物と、を含み、組成物が、カール・フィッシャー滴定により決定される、150ppm以下、または好ましくは60ppm以下、例えば5~60ppmのH2Oを含み、かつ参考文献(J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 2004, volume (42), pages 1285-1292)に記載される光化学の方法により決定される、75ppm以下、または好ましくは60ppm以下の全溶存酸素を含み、かつ50ppm以下、または好ましくは25ppm以下、例えば1~25ppmの、ヒドロキノンなどの全重合阻害化合物、ならびに150ppm以下、または好ましくは100ppm以下、例えば10~100ppmの、ラジカル開始剤及び光開始剤などの有機ラジカル活性分子を含む、重合性モノマー組成物を提供する。
【0006】
本発明の重合性モノマー組成物によれば、(a)量子ドットは、好ましくはカドミウムフリー量子ドット、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsまたはこれらの混合物であり、より好ましくは、(a)量子ドットは、シェルの材料がコアの材料よりもバンドギャップが広く、かつコアの材料に対する格子不整合が小さいコアシェル構造を有するコアシェルカドミウムフリー量子ドット、例えばIII-Vナノ粒子コア及びII-VIナノ粒子シェルを有するもの、であり、さらにより好ましくは、(a)量子ドットは、インジウムを含有するInP、GaP、GaN、GaAs、またはInAsコア、及び亜鉛を含有するZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、またはHgTeシェルを有する、カドミウムフリー量子ドットである。
【0007】
本発明の重合性モノマー組成物によれば、モノマー混合物(b)は、(i)ジビニルベンゼン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、イソボルニルジメタクリレート、またはこれらの混合物と、(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、を含む。
【0008】
本発明の重合性モノマー組成物によれば、モノマー混合物(b)は、(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(b)(ii)イソボルニルアクリレート(IBOA)と、を含む。
【0009】
本発明の重合性モノマー組成物によれば、当該組成物は、(a)0.001~5重量%、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.1~5重量%の量子ドットと、(b)0.5~40重量%、好ましくは0.5~10重量%の(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、55~95重量%または55~94.999重量%または55~94.99重量%または55~94.9重量%、好ましくは65~92重量%の(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、を含む(全ての重量%は当該組成物の全固形分に基づく)。
【0010】
第2の態様では、本発明は、重合性モノマー組成物を作製する方法であって、(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(ii)エステルが脂環式基、または脂肪アルキル基などのC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーとの(b)モノマー混合物を、以下のいずれか1つ以上の方法:モノマー混合物を、表面積が例えば100~300m2/g、例えば130~180m2/g、例えば155m2/gの活性多孔質アルミナまたはシリカのカラム中で処理すること;モノマー混合物を、真空中でシーブ乾燥し、次に、重量平均孔径(weight average pore sizes)が2~20オングストローム、好ましくは2.5~10オングストロームのゼオライトなどの乾燥モレキュラーシーブで乾燥すること;器(vessel)または容器(container)中のモノマー混合物を-75℃以下の温度に冷凍し、次にモノマー混合物を、例えば102~1×10-2Paの真空の適用により脱気し、真空下で器または容器を密閉し、そして当該組成物を室温に解凍することにより凍結脱気(FPT:freeze-pump-thaw)処理することであって、好ましくは解凍時に気泡が認識できなくなるまでFPTを繰り返す、凍結脱気処理すること;
により精製するステップと、
精製したモノマー混合物(b)を、乾燥した不活性な(例えば、窒素)ガス中で保管するステップと、
不活性雰囲気下、例えば窒素下で、得られたモノマー混合物(b)を、乾燥形態または有機溶媒溶液、好ましくは乾燥形態または次に乾燥を行う量子ドットの組成物(a)と合わせて、重合性モノマー組成物であって、150ppm以下、好ましくは60ppm、例えば5~60ppmのH2Oを含み、かつ参考文献(J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 2004, volume 42, pages 1285-1292)に記載される光化学の方法により決定される、75ppm以下、好ましくは60ppm以下の全溶存酸素を含み、かつ50ppm以下、好ましくは25ppm以下、例えば1~25ppmの、例えば、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、ヒドロキノンなどのキノン、及び4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシル(4-HT)などのN-オキシル化合物、などの全重合阻害化合物、ならびに150ppm以下、100ppm以下、例えば10~100ppmの、ラジカル開始剤及び光開始剤などの有機ラジカル活性分子を含む、重合性モノマー組成物を作製するステップと、
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)を精製するステップは、好ましくは、凍結脱気(FPT)処理し、次に、得られた処理済みモノマー混合物を乾燥モレキュラーシーブで乾燥することを含む。
【0012】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)を精製するステップは、モノマー混合物を102~10-2Paの真空下で1時間脱気することと、次に、102~1×10-2Paの真空中で2~16時間、60~120℃における熱処理により乾燥し、次に使い捨てポリプロピレンカラムなどのカラム中にパックされた活性多孔質アルミナまたはシリカのカラム中で、モノマー混合物を処理することと、を含む。
【0013】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)を精製するステップは、モノマー混合物を102~10-2Paの真空下で脱気することと、次に、75~200℃、例えば120~200℃の温度で4~24時間の間脱水し、かつ窒素ガスなどの不活性雰囲気中で保管されたモレキュラーシーブへの曝露、好ましくはモレキュラーシーブとの混合により、モノマー混合物を乾燥することと、を含む。
【0014】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)及び量子ドットの組成物(a)を合わせるステップにおいて、合わせるステップの前に(a)量子ドットを真空下で乾燥して任意の有機溶媒を除去するか、または重合性モノマー組成物を(a)量子ドットと共に真空下で乾燥して任意の有機溶媒を除去する。
【0015】
モノマー混合物(b)及び量子ドットの組成物(a)を合わせるステップにおける本発明の方法によれば、量子ドットは、好ましくはカドミウムフリー量子ドット、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsまたはこれらの混合物を含み、より好ましくは、量子ドットの組成物(a)は、シェルの材料がコアの材料よりもバンドギャップが広く、かつコアの材料に対する格子不整合が小さいコアシェル構造を有するコアシェルカドミウムフリー量子ドット、例えば、III-Vナノ粒子コア及びII-VIナノ粒子シェル、を含み、さらにより好ましくは、量子ドットはインジウム含有コアを有するカドミウムフリー量子ドットを含み、さらにより好ましくは、(a)量子ドットは、InP、GaP、GaN、GaAs、またはInAsコア、及び亜鉛を含有するZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、またはHgTeシェルを有する、カドミウムフリー量子ドットである。
【0016】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)は、(i)ジビニルベンゼン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、イソボルニルジメタクリレート、またはこれらの混合物と、(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、を含む。
【0017】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)は、(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、(b)(ii)イソボルニルアクリレート(IBOA)と、を含む。
【0018】
本発明の方法によれば、モノマー混合物(b)は、固体として、0.5~40重量部、好ましくは0.5~10重量部の(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、55~95重量部、好ましくは65~92重量%の(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーとを含む。
【0019】
本発明の方法によれば、当該方法は、重合性モノマー組成物を重合してフィルムなどのポリマー複合体を形成するステップをさらに含む。
【0020】
第3の態様では、本発明は、(a)量子ドットと、(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマー、好ましくは、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、イソボルニルジメタクリレート、ジビニルベンゼン、またはこれらの混合物と、(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーと、の重合性モノマー組成物から形成させるポリマーを含む、ポリマー複合体を提供する。
【0021】
本発明のポリマー複合体によれば、(a)量子ドットは、カドミウムフリー量子ドット、好ましくはコアシェル量子ドットである。
【0022】
本発明のポリマー複合体によれば、当該複合体はフィルムである。
【0023】
本発明のポリマー複合体によれば、当該ポリマー複合体は、ポリマー複合体の各側面に外部層も含む多層フィルム、積層体、またはアセンブリの一部を含む。好ましくは、この外部層は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの酸素バリアであり、水分の通過も阻害する。
【0024】
別段の明記がない限り、パーセンテージは重量パーセンテージ(重量%(wt.%))であり、温度は℃で表される。
【0025】
別段の明記がない限り、操作及び実施例は室温(20~25℃)で実施した。
【0026】
別段の明記がない限り、沸点は大気圧(約101kPa)において測定されている。
【0027】
別段の指示がない限り、括弧を含む任意の用語は、二者択一的に、丸括弧がない場合の用語、及び丸括弧内を含まない用語、ならびに各選択の組み合わせを指す。したがって、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、またはこれらの混合物を意味する。
【0028】
全ての範囲は両端値を含み、組み合わせ可能である。例えば、「50~3000cPs、または100cPs以上」という用語には、50~100cPs、50~3000cPs、及び100~3000cPsのそれぞれが含まれることになる。
【0029】
本明細書で使用される「ASTM」という用語は、ASTM International, West Conshohocken, PAの刊行物を指す。
【0030】
本明細書で使用される「平均孔径」という用語は、BET表面積法により決定され、製造業者の文書により提供される指示材料の孔径を指す。
【0031】
本明細書で使用される「バンドギャップ」という用語は、所与の量子ドットまたはその層において、紫外光電子分光法(UPS)により測定される、最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)との間のエネルギーギャップを指す。
【0032】
本明細書で使用される「固体」という用語は、本発明の方法では揮発しないため、結果的に本発明のポリマー複合体となる任意の材料を指す。アンモニア、水、及び揮発性有機溶媒(VOC)は、固体とはみなされない。本発明によれば、ポリマー複合体のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、量子ドット(QD)含有組成物を精製したアクリルまたはビニルモノマーのモノマー混合物中に分散させたところ、改善された。本発明では、水、酸素、ラジカル開始剤、光開始剤、及び重合阻害剤などのほとんどの不純物を、ポリマー複合体の作製に使用する重合性モノマー組成物から除去した。発明者らは、QDのモノマー混合物への移行及び後続のQD含有モノマー混合配合物の重合の間にこれらの不純物が存在すると、PLQYに悪影響が及ぶことになることを見いだした。他の不純物、例えばいくつかの溶解イオン種、酸、アルコール、ケトン、及びアルデヒドなどは、光を吸収する可能性があり、またはこれらもQD合成中及びQDの長期的運用において、QDのPLQYに有害である。配合中に不純物を除去することにより、当該QDを含有するポリマー複合体またはフィルムにおける、より高い初期パフォーマンスまたはタイムゼロパフォーマンスが達成された。
【0033】
量子ドットは当技術分野において周知であり、例えば、Dubrow他に対する米国特許公開第US2012/0113672A号を参照されたい。好ましくは、本発明のポリマー複合体における量子ドットはカドミウムフリー量子ドットであり、より好ましくはカドミウムフリーコアシェル量子ドットである。
【0034】
好適な量子ドット及びコアシェル量子ドットとしては、以下のうちのいずれかで開示されているもののいずれかを挙げることができる:Mushtaq他に対する米国特許第7,588,828B2号で開示されているもの、例えば、インジウムリッチなInPコアを含有する量子ドット、例えばInPをカルボン酸インジウム(すなわち、カルボン酸インジウム(III))に接触させることにより形成されるもの、例えばラウリン酸インジウム;Guo他に対する米国特許公開第2015/0236195A1号で開示されているもの;Mingjun他に対する米国特許公開第2015/0166342A1号で開示されているもの;III~IV族半導体ナノ構造、例えば、Scher他に対する米国特許第7,557,028B1号、Scher他に対する米国特許第8,062,967B1号、Scher他に対する米国特許第US8,884,273B1号、またはScher他に対する米国特許第US9,469,538B1号におけるもの;IIIA族及びVA族元素を含むコアを有するナノクリスタル、例えばClough他に対する米国特許第9,136,428B2号におけるもの;Breen他に対する米国特許第US9,212,056B2号で開示されているナノ粒子;またはBawendi他に対する第US6,322,901B1号で開示されているナノ結晶材料。
【0035】
カドミウムフリー量子ドット材料について許容される効率(PLQY)は、40%超、好ましくは60%超、より好ましくは75%以上、例えば75~95%である。
【0036】
好ましくは、(b)モノマー混合物における重合性ビニル基は、(メタ)アクリレートエステル基(CH2=C(R)C(O)O-(式中、RはHまたはCH3である)であり、これは(メタ)アクリロイルオキシとしても知られる。
【0037】
好ましくは、(b)モノマー混合物におけるモノマーは炭素、水素、酸素、及び窒素原子のみを有し、より好ましくは炭素、水素、及び酸素原子のみを有する。
【0038】
(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーにおいて、当該芳香族環は、例えばベンゼン、ナフタレン、またはピリジン環とすることができ、好ましくは、当該芳香族環は、3~20個の炭素原子、好ましくは5~15個の炭素原子を有する。好ましくは、当該芳香族環は、ヘテロ原子を含有せず、かつ6~15個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を有する。
【0039】
好ましくは、(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基、または芳香族環もしくは脂環式基に直接結合した少なくとも2つの重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーは、2~6つの重合性ビニル基、より好ましくは4つ以下の重合性ビニル基を有する。
【0040】
特に好ましい(b)(i)(メタ)アクリレートエステル基の一部としての少なくとも2つの重合性ビニル基を有するモノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,10-ビス(アクリロイルオキシ)デカン、及び
【0041】
【0042】
が挙げられる。
【0043】
本発明の方法によるポリマー複合体は、(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有する、1つ以上のモノマーの重合単位をさらに含む。好ましくは、このようなモノマー(b)(ii)は、脂肪族または脂環式モノマー、例えばイソボルニルアクリレート(IBOA)である。
【0044】
特に好ましい(b)(ii)エステルが脂環式基またはC6~C24アルキル基を含有する(メタ)アクリレートエステル基の一部としての単一の重合性ビニル基を有するモノマーとしては、イソボルニルアクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、L-メンチルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。
【0045】
本発明によるポリマー複合体は、ポリマー複合体の各側面に外部層も含む多層フィルム、積層体、またはアセンブリの一部である。好ましくは、当該外部層は、水分の通過も阻害する酸素バリアである。好ましくは、当該外部層はポリマー複合体を含み、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、またはこれらの組み合わせを含むポリマー複合体である。好ましくは、当該外部層は、酸化物または窒化物、好ましくは、酸化シリコン、二酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、またはこれらの組み合わせをさらに含む。好ましくは、この酸化物または窒化物は、QD層に面したポリマー複合体の表面にコーティングされている。好ましくは、各外部層は、厚さが25~150ミクロン(好ましくは50~100ミクロン)のポリマー複合体及び厚さが10~100nm(好ましくは30~70nm)の酸化物/窒化物層を含む。
【0046】
本発明のポリマー複合体によれば、多層フィルム、積層体、またはアセンブリの外部層は、好ましくは、少なくとも2層のポリマー複合体層及び/または少なくとも2層の酸化物/窒化物層を含む。本発明の任意の多層フィルムにおいて、異なる層は異なる組成物でできていてもよい。好ましくは、当該外部層は、非常に低い酸素透過率(OTR、<10-1cc/m2/日)及び低い水蒸気透過率(WVTR、<10-2g/m2/日)を有する。
【0047】
好ましくは、外部層におけるポリマー複合体のTgは60~200℃、より好ましくは少なくとも90℃、最も好ましくは少なくとも100℃である。
【0048】
好ましくは、本発明によるポリマー複合体の厚さは、20~500ミクロンの範囲であり、好ましくは少なくとも50ミクロン、好ましくは少なくとも70ミクロン、好ましくは少なくとも80ミクロン、好ましくは少なくとも90ミクロン;好ましくは400ミクロン以下、好ましくは300ミクロン以下、好ましくは250ミクロン以下、好ましくは200ミクロン以下、好ましくは160ミクロン以下である。好ましくは、各 外部層の厚さは、20~100ミクロン、好ましくは25~75ミクロンである。
【0049】
好ましくは、本発明のポリマー複合体は、(b)モノマー混合物を1つ以上のQDの組成物(a)及び任意選択の添加物と混合することにより調製される配合物をフリーラジカル重合することにより、調製される。好ましくは、当該配合物は第1の外部層にコーティングしてから典型的な方法、例えばスピンコーティング、スロットダイコーティング、グラビア、インクジェット、及びスプレーコーティングによって硬化させる。好ましくは、硬化は、当該配合物を、紫外光または熱、好ましくは紫外光に、好ましくはUVA範囲の紫外光に曝露することにより開始する。
【0050】
好ましくは、本発明のポリマー複合体は、固体として、0.01~5重量%の量子ドットを含み、好ましくは少なくとも0.025重量%、好ましくは少なくとも0.03重量%;好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2重量%以下の量子ドットを含む。
【0051】
好ましくは、当該量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、またはこれらの組み合わせを含む。より好ましくは、当該量子ドットはカドミウムフリーである。最も好ましくは、当該量子ドットはコアシェル量子ドット、例えばコアシェルカドミウムフリー量子ドットである。
【0052】
好ましくは、(a)量子ドットの組成物は、量子ドットの無機部分の周囲に非極性構成成分を有するリガンドを含む。好ましいリガンドとしては、例えば、トリオクチルホスフィンオキシド、ドデカンチオール、及び脂肪酸塩(例えば、ステアリン酸塩、オレイン酸塩)が挙げられる。
【0053】
本発明の重合性モノマー組成物またはポリマー複合体に組み込むことができる他の添加物としては、紫外線(UV)安定剤、酸化防止剤、光抽出を改善するための散乱剤、及び粘性を増加させるための増粘剤(例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー)が挙げられる。好ましくは、当該重合性モノマー組成物における任意のUV安定剤は、わずか最大100ppm、好ましくは最大50ppmの量で使用する。
【0054】
好ましい増粘剤としては、ウレタンアクリレート、セルロースエーテル、アクリル酸エステル、ポリスチレンポリマー、ポリスチレンブロックコポリマー、アクリル樹脂、及びポリオレフィンエラストマーが挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、アクリル及びポリオレフィン増粘剤のMwは、50,000~400,000、好ましくは100,000~200,000の範囲である。好ましくは、セルロースエーテルのMwは1,000~100,000の範囲である。
【0055】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、自らが含有するアクリレート基間にポリエステル、ポリエーテル、ポリブタジエン、またはポリカプロラクトンの骨格を有し得る。これらは、2官能、3官能、6官能の反応性を有し得る。このようなオリゴマーの粘性は、50Cにおいて1000~200,000cPsを範囲とすることができる。非極性リガンドQDに関しては、ポリブタジエンウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。
【0056】
当該ポリマー複合体の好ましい形態としては、例えば、複合体、ビーズ、ストリップ、ロッド、キューブ、及びプレートが挙げられる。当該ポリマー複合体は、例えば、ディスプレイ、照明、及び医療用途を含めた多くの用途において有用である。好ましいディスプレイ用途としては、公共用電光掲示板、信号、テレビ、モニター、携帯電話、タブレット、ラップトップ、自動車その他用ダッシュボード、及び時計が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、本発明を例示するものである。別段の指示がない限り、全ての温度の単位は室温であり、全ての圧力の単位は標準圧力または101kPaである。
【0058】
以下の試験方法を使用した。
硬化フィルムをマイクロメーターで測定し、次に任意のバリアフィルムの厚さを減算することにより、フィルム厚さを決定した。
【0059】
フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)
液体及びフィルムを共に取り扱う上で、Quantaurus-QY絶対PL量子収率分光計(C11347-01モデル)(Hamamatsu Photonics KK, Hamamatsu City, Japan)を用いてフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を測定した。報告された各実施例について、各指示アナライト基体におけるランダム選択した3点から合計3つの測定値を得た。示されるPLQYは、これらの測定値の平均値に相当する。
【0060】
発光ピークの半値全幅(FWHM)は、Quantaurus-QY絶対PL量子収率分光計(C11347-01モデル)積分球(Hamamatsu Photonics KK)を用いて測定した。
【0061】
フィルム厚さは、硬化フィルムをマイクロメーターで測定し、次にバリアフィルムの厚さを減算することにより決定した。
【0062】
ピーク発光波長(PWL)は、Quantaurus-QY絶対PL量子収率分光計(C11347-01モデル、Hamamatsu Photonics KK)を用いて測定した。以下の実施例において、緑色QDの目標波長は520~540nm、赤色QDの目標波長は620~640nmである。
【0063】
カール・フィッシャー滴定:Metrohmモデル831電量法カール・フィッシャー滴定装置(Metrohm Ltd, Herisau, Switzerland)によりモノマーの含水量を分析し、製造業者の資料及び703 Ti stand(Metrohm)で説明されるように較正した。
【0064】
モノマー精製の方法:次の実施例で示されるように、以下の方法を使用した。
【0065】
凍結脱気(FPT):指示モノマー混合物を20mLのシンチレーションバイアルに装填した。シーブをモノマーの乾燥に使用する場合は、シーブをバイアルに添加し、次にバイアルに隔壁を取り付けた。モノマーが凍る(凍結)までバイアルを液体N2に浸した。凍ったら、真空(1~0.1Pa)を引いて、シュレンクライン(ポンプ)に装着するニードルを用いてヘッドスペースを排気した。静的真空下で、モノマーを完全に融解するまで解凍した。凍結脱気サイクルは、3回、または解凍サイクルで気泡が認識できなくなるまで実施した。凍結脱気(FPT)精製を行ったモノマーバイアルをN2でバックフィルし、後続のハンドリング用のN2充填グローブボックスにした。FPTモノマーは、精製から48時間以内に使用した。
【0066】
カラム精製:活性酸化アルミニウム(水中pH4.5~9.5、Aldrich, St. Louis, MO)を真空中80℃で4時間乾燥し、次に使い捨てポリプロピレンカラムにパックした。指示モノマーを真空オーブン(0.1~1Pa)で1時間脱気し、次にゆっくりとカラムに通した。カラムを不活性雰囲気中で実行し、精製したモノマーを窒素パージボックス中で保管した。精製したモノマーは、精製から48時間以内に使用した。
【0067】
シーブ乾燥:示される実施例では、ゼオライトモレキュラーシーブ(平均孔径4Å)を使用してモノマーを乾燥した。シーブを110℃のオーブンで終夜脱水し、熱いうちにN2充填グローブボックスに装填した。モノマーは乾燥していた。N2充填グローブボックス中のモノマーにシーブを添加し、穏やかに振とうし、次に室温で数時間静置してから使用した。シーブ乾燥したモノマーは、精製から48時間以内に使用した。
【0068】
実施例で使用される略語:
IBOAはイソボルニルアクリレートであり、SR833はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレートであり、I-819及びI-651はIRGACURE感光性重合開始剤(BASF AG, Leverkusen, DE)であり、Finex(商標)は酸化亜鉛粒子(Sakai Chemical Industry co., LTD., Japan)であり、CFQDはカドミウムフリー量子ドットを表す。緑色CFQDは、インジウム含有コアを含有するコアシェルQDを含み、73.9%のQY、44.1nmのFWHM、及び534.4nmのPWL(吸光度=0.3)を示す。赤色CQFDは、インジウム含有コアを含有するコアシェルQDを含み、85%のQY、52.8nmのFWHM、及び630nmのPWL(吸光度=0.35)を示す。
【0069】
別段の指示がない限り、以下の実施例では、配合物を以下のように調製した。
【0070】
全てのQD及びモノマーの混合配合物は、不活性環境中で調製した。量子ドットまたは量子ドット溶液を除く全ての指示構成成分をクリンプバイアルに装填し、バイアルを脱気し、2軸プラネタリーミキサー(THINKY ARE-310, Thinky CA)を用いて3~5分混合した。量子ドットを、10分間の窒素パージでQDからトルエンを除去することによりトルエンからモノマーに移行させ、次に乾燥したQD粉末を指示モノマー混合物中に分散させた。量子ドットを事前にイソボルニルアクリレート(IBOA)または指示モノマー混合物に分散させ、次に他の構成成分と混合し、次に2軸プラネタリーミキサーを用いてN2雰囲気中で1分間混合した。モノマー混合構成成分を、指示される方法で処理した後に乾燥したQD粉末と合わせた。この処理方法には、短時間脱気して不活性雰囲気に導入すること(比較例のみ)、または活性アルミナカラムに通すことにより精製し(カラム精製)、モレキュラーシーブで>2時間乾燥し(シーブ乾燥)、シーブを用いてもしくは用いずに凍結脱気を3サイクル行うこと(シーブを伴うFTPもしくはFTPのみ)、または室温で48~72時間真空を適用することにより脱気すること(RT脱気)が含まれる。
【0071】
フィルムの調製:2枚のi-Component PETバリアフィルム間に樹脂配合物を積層することにより、配合物のフィルムを調製した。約2mLの樹脂を下部フィルムに払い出し、所望のフィルム厚さに基づいてギャップを設定したギャップコーティングバーを用いて上部フィルムを適用した。Fusion UV F300SまたはFUSION UV SYSTEMS, INC(DRS-10/12 QNH, Fusion UV Systems, Inc., Gaithersburg, MD)硬化システムにおいてUVA~400mJ/cm2でサンプルを硬化させた。
【0072】
モノマー精製がPLQYに及ぼす影響:溶液PLQYを使用して、QDとモノマーとの間の適合性を判定した。下の表1における各溶液を約1グラム(組成物の全重量に基づいて0.025重量%のQD固体)を1mLのバイアルに対し使用し、450nm励起におけるPLQYを測定した。
【0073】
【0074】
上の表1で示されるように、量子ドットは溶液中では適正な量子収率を示す(比較例1及び10を参照)が、モノマー混合物またはモノマー配合物に移行させると、このQYの多くを失う(比較例2及び11を参照)。しかし、カラム精製、FPT、またはFPTとシーブ乾燥の組み合わせでは、使用モノマーに関係なく、モノマー混合物への移行後も、量子ドット溶液における当初のQYの多くが保持されている。実施例3、6、7、及び12を参照。シーブ乾燥のみの場合は、FPTの場合とほぼ同程度に、量子ドット溶液のQYの多くが保持されている。実施例8及び9を参照。
【0075】
【0076】
表2で示されるように、シーブ乾燥及びカラム精製は効果的にモノマー混合物を乾燥するが、FPT単体では、個別の乾燥なしではモノマー混合物を乾燥しない。
【0077】
下の表3における配合物を得て、コーティングバー(Paul N. Gardner Co., FL, USA)を用いて一定の厚さのフィルムを作製し、各フィルムについてPLQYを測定した。2枚のi-Component PETバリアフィルム間に指示配合物を積層することにより、各フィルムを調製した。約2mLの樹脂を下部フィルムに払い出し、250~300(10mil~12mil)のギャップを有するギャップコーティングバーで引き下ろし、所望のフィルム厚さを確保した。全ての配合物を、DRS-10/12 QNH(Fusion UV Systems, Inc., Gaithersburg, MD)を用いて500mJ/cm2のUV硬化強度で硬化させた。結果を下の表4に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
表4で示されるように、本発明の精製組成物は、カラム精製後に初期量子収率の著しい改善を示している。
【0081】
以下の実施例では、下の表5に示すモノマー混合物の配合及びQDを、上に示されるようにアルミナカラムで精製した脱気IBOAを用いて処理した。各QD組成物を、下の配合に基づいたモノマーに不活性雰囲気中で添加した。1.0グラムの各配合物をガラスバイアルに装填し、Quantaurus量子収率分光計を用いてPLQYを測定した。モノマー中へのQDの装填は、配合物の全重量に基づいて0.0025重量%である。試験結果を下の表6に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
上の表6で示されるように、本発明配合物の初期量子収率パフォーマンスは、比較配合物の場合よりも著しく高く、特にカドミウムフリーInPドット(InP/ZnSコアシェル)の場合に高かった。また、本発明の配合物は実施例20において、比較例21よりも少ない赤色シフトを示した。