(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】自転車用のブレーキディスク
(51)【国際特許分類】
B62L 1/00 20060101AFI20220825BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B62L1/00 A
F16D65/12 A
F16D65/12 R
F16D65/12 X
F16D65/12 S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018019845
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】102017000013990
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】メッジョラン・マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ツェネーレ・ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェ・フィリッポ
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-120732(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015108377(DE,A1)
【文献】国際公開第2008/090809(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0144836(US,A1)
【文献】実開昭64-046539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62L 1/00
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用のブレーキディスク(10)であって、
ブレーキパッド(14)と協働するように構成された制動トラック(32)と、内側に向かって延び、個々に第1の連結領域(36)を有する、複数の第1の連結部(34)とを含む、第1の部品(30)と、
(i)前記自転車の車輪のハブとカップリングする半径方向内側の環状カップリング部(42)と、(ii)前記複数の第1の連結部(34)に対応する数で、前記半径方向内側の環状カップリング部(42)から前記第1の部品(30)に向けて外方に延び、個々に第2の連結領域(46)を有する、複数の第2の連結部(44)とを含む、第2の部品(40)と、
前記第1の連結領域(36)と対応する前記第2の連結領域(46)との間で作用する連結部材(50)と、
を備える、ブレーキディスク(10)において、
前記第2の連結部(44)がそれぞれ、前記第2の連結領域(46)と前記半径方向内側の環状カップリング部(42)との間に延びるそれぞれの少なくとも一対のアーム(45)を含み、該一対のアーム(45)が、両アーム間に貫通口(47)を形成しており、
前記第2の連結部(44)がそれぞれ、該第2の連結部(44)と連結される前記第1の部品(30)の前記第1の連結部(34)と平行な配置を有する補強アーム(
49)を備え、該補強アーム(49)は、前記第2の連結領域(46)から延びて、周方向で該第2の連結部(44)の隣りに位置する別の第2の連結部(44)に達する、
ことを特徴とする、ブレーキディスク(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキディスク(10)において、前記一対のアーム(45)が、個々の前記第2の連結領域(46)から前記半径方向内側の環状カップリング部(42)に向かって末広がりに分岐する配置を持つ、ブレーキディスク(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキディスク(10)において、前記補強アーム(49)が、前記別の第2の連結部(44)の前記一対のアーム(45)を構成する一つのアーム(45)の半径方向外側の端部(44a)に達している、ブレーキディスク(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結部(34)がそれぞれ、前記制動トラック(32)に繋がる半径方向外側の端部(34a)および前記第1の連結領域(36)に位置する半径方向内側端部(34b)を有し、前記第1の連結部(34)が、前記半径方向内側の環状カップリング部(42)の中心と前記半径方向内側の端部(34a)を通る半径方向に対し、傾斜した方向に延びている、ブレーキディスク(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記一対のアーム(45)の各アーム(45)は、同じ軸方向厚さを有するブレーキディスク(10)。
【請求項6】
請求項5に記載のブレーキディスク(10)において、前記補強アーム(49)の軸方向厚さが、前記一対のアーム(45)の軸方向厚さよりも薄い、ブレーキディスク(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記連結部材(50)が、前記第1の連結領域(36)及び前記第2の連結領域(46)に形成された各貫通孔(36c,46c)内に軸方向に収容される穴あきリベット(52)を含む、ブレーキディスク(10)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記連結部材(50)が互いに一様に距離(L)で離間しており、該距離(L)は、10mm~80mmの範囲内である、ブレーキディスク(10)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結領域(36)が、対応する前記第2の連結領域(46)と軸方向で重なり合っており、かつ、該第2の連結領域(46)の凹所(46a)に収容されている、ブレーキディスク(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結領域(36)が、軸方向でのみ、前記第2の連結領域(46)に接触している、ブレーキディスク(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のブレーキディスク(10)において、前記制動トラック(32)が長手形状の複数の貫通スリット(32a)を含み、該貫通スリット(32a)は、前記ブレーキパッド(14)の側縁(14a)の延在方向に対して傾斜している、ブレーキディスク(10)。
【請求項12】
請求項11に記載のブレーキディスク(10)において、前記貫通スリット(32a)の、前記ブレーキパッド(14)の前記側縁(14a)の延在方向に対する傾斜は、5°~60°の範囲内である、ブレーキディスク(10)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のブレーキディスク(10)において、前記貫通スリット(32a)の数が、第1の連結部(34)の数の倍数である、ブレーキディスク(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用のブレーキディスクに関する。
【0002】
具体的には、前記ブレーキディスクは、自転車の車輪のハブに取り付けられるように構成されている。
【0003】
好ましくは、前記自転車は、競走用自転車である。
【背景技術】
【0004】
周知のとおり、今日の自転車では、ディスクブレーキの使用が普及している。実際、このようなブレーキは、高い制動力や、顕著な制動感度をもたらす優れたモジュール性を確実にするだけでなく、泥や水により引き起こされる問題に曝され難いことから、他の種類の従来型ブレーキよりもしばしば好まれている。
【0005】
典型的に、ディスクブレーキは、自転車のフレームに固定されたキャリパーと、車輪のハブに取り付けられたブレーキディスクとを備える。キャリパーの内部には、2つ又は4つのブレーキパッドが両側に(対面して)存在する。ブレーキディスクは、両側のパッド間に形成された空間内を回転する。ブレーキレバーを作動することによりパッドがブレーキディスクに向けて動かされ、ブレーキディスク上で摩擦を引き起こし、結果として車輪を制動する。
【0006】
ブレーキディスクは、パッドと協働するように構成された制動トラック、およびハブとカップリングする半径方向内側の環状カップリング部を有する。
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲において「軸方向」、「軸方向に」、「長手方向」、「長手方向に」などの用語は、(ハブの長手方向軸と略一致する)ブレーキディスクの回転軸と略一致するか又は該回転軸と略平行な方向のことを意味し、「半径方向」、「半径方向に」などの用語は、ブレーキディスクの回転軸に略直交する平面上に延在し、前記回転軸を通る方向を意味する。
【0008】
上記ブレーキディスクは、単体として構成されていてもよく又は2つの部品で構成されていてもよい。
【0009】
後者の場合、ブレーキディスクは、制動トラックを有する第1の部品と、ハブとカップリングする半径方向内側の環状カップリング部を有する第2の部品と、を備える。
【0010】
上記第1の部品は典型的には、例えば鋼のような、良好な制動特性を確実にする第1の材料からなり、第2の部品は典型的には、例えばアルミニウム、軽合金等のような、より軽量の第2の材料からなる。
【0011】
第2の部品は半径方向外側に複数の連結部を有し、これらはそれぞれ、第1の部品の半径方向内側の複数の連結部において該第1の部品と連結する。
【0012】
当技術分野では、上記第2の部品は「スパイダー」又は「キャリア」と称され、上記第1の部品は「ロータ」と称されるか又は単に「制動トラック」という表現で表される。
【0013】
第2の部品の半径方向外側の連結部と第1の部品の半径方向内側の連結部との連結は、これら第1の部品および第2の部品が実質的に同一平面上にありながら、直接には接触しないように行われる。これは、該第1及び第2の部品の2種類の材料の異なる熱膨張係数が原因となって機械的張力が半径方向に発生することを防ぐためである。上記ブレーキディスクのこれら2つの部品は、ロータとスパイダーとを同一平面上に(ただし、半径方向には若干離間した状態で)保持するリベットなどで互いに接続される。この種のカップリングがなされるブレーキディスクは、フローティングロータ型ブレーキディスクとして知られるが、ブレーキディスクの平面性は基本的にリベットのみに委ねられているため、短所として捩れを生じる可能性がある。
【0014】
あるいは、ブレーキディスクの2つの部品は、ロータの一部とスパイダーの一部の間の領域が重なり合うように互いにカップリングされ、所謂「非フローティングロータ」を形成する。この場合でもリベットなどがブレーキディスクの2つの部品を安定的に接続することになるが、ブレーキディスク全体の構造的連続性は、ロータとスパイダーの重なり合う領域によっても確保される。
【0015】
ハブへのカップリングに関しては、本願と同じ出願人による特許文献1に開示されているように、ブレーキディスクの半径方向内側の環状部に半径方向内側の溝付きの表面(すなわち、長手方向に延在し且つ長手方向の溝が設けられた半径方向内側表面)が設けられ、該溝付きの半径方向内側表面が、これに対応するようハブの一部に溝が設けられた半径方向外側の表面(すなわち、長手方向に延在し且つ上記半径方向内側表面の長手方向の溝と係合する長手方向の溝が設けられている半径方向外側表面)に取り付けられる。
【0016】
特許文献1には、さらに、ブレーキディスクの半径方向内側の環状部に軸方向で当接するまでハブにねじ込まれ、ハブ上におけるブレーキディスクの安定的な軸方向位置を定めるロックナットが開示されている。
【0017】
上記第2の部品の半径方向外側の連結部は、通常、周方向に一様に離間して設けられ、半径方向内側の環状カップリング部から延びる複数のアームで構成される。これらのアームは、略半径方向の配置を持つか又は好ましくは半径方向に対して(典型的には、どのアームも同じ傾きで)傾いている。アームの数は様々である。例えば、5つ又は6つのアームを有するブレーキディスクがよく知られている。
【0018】
前述のアームは、典型的に、半径方向内側の環状カップリング部との一体品として形成されている。
【0019】
ブレーキのパッドによって制動トラックに加えられた制動力は、ブレーキディスクの半径方向内側の環状カップリング部に伝わって車輪のハブに送り込まれる。つまり、ブレーキのパッドによって加えられた制動力は、ブレーキディスクの半径方向内側の環状カップリング部にトルクを生成し、このトルクはブレーキディスクと車輪のハブとのカップリング部分において、同じ強さで逆方向の一対の抵抗力により相殺される。
【0020】
本願の出願人は、アームと半径方向内側の環状カップリング部との接続部分に、高度の応力集中が生じる領域があることに気づいた。これらの領域では、ブレーキのパッドからの距離が実質上最大となり、伝えられるトルクも最大となるからである。この理由から、既述したように、前記アームは完全な半径方向に対して傾いていることが、アーム自体に直交する制動力成分(したがって、半径方向内側の環状カップリング部に伝わるトルク)の低減を図る上で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、本願の出願人は、アームは効率よく半径方向内側の環状カップリング部まで伸びなければならないことから、半径方向に対するアームの傾きを一定の限度を超えては大きくできないことに気付いた。
【0023】
本願の出願人は、さらに、アームの傾きを大きくすると同時に、アームを半径方向内側の環状カップリング部まで確実に効率的に伸ばそうとすると、アームの寸法が大きくなり、結果としてブレーキディスクの重量が増加することに気付いた。
【0024】
本願の出願人は、制動トラックと半径方向内側の環状カップリング部との間での力の効果的・且つ安全な伝達を確実にしながらブレーキディスクの重量を抑えることが有利であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって、本発明は、自転車用のブレーキディスクであって、
ブレーキパッドと協働するように構成された制動トラックと、内側に向かって延び、個々に第1の連結領域を有する、複数の第1の連結部とを含む、第1の部品と、
(i)前記自転車の車輪のハブとカップリングする半径方向内側の環状カップリング部と、(ii)前記複数の第1の連結部に対応する数で、前記半径方向内側の環状カップリング部から前記第1の部品に向けて外方に延び、個々に第2の連結領域を有する、複数の第2の連結部とを含む、第2の部品と、
前記第1の連結領域と対応する前記第2の連結領域との間で作用する連結部材と、
を備える、ブレーキディスクにおいて、
前記第2の連結部がそれぞれ、前記第2の連結領域と前記半径方向内側の環状カップリング部との間に延びる少なくとも一対のアームを含み、該一対のアームが、両アーム間に貫通口(貫通型開口)を形成していることを特徴とする、ブレーキディスクに関する。
【0026】
本願の出願人は、前記第2の連結領域と前記半径方向内側の環状カップリング部とを一対のアームで接続することにより、これら第2の連結領域と半径方向内側の環状カップリング部との間の効果的な機械的カップリングと、制動トラックから半径方向内側の環状カップリング部への効果的な荷重の伝達との両方を同時に確保できることを見出した。
【0027】
実際、本願の出願人は、前記一対のアームのそれぞれを、相互に異なる方向に配向させる(伸ばす)ことにより、二つのアームが協働して制動トラックからの荷重を伝達し得ることを見出した。
【0028】
さらに、前記一対のアーム間に形成された貫通口により、前記ブレーキディスクの重量を確実に抑えることができる。
【0029】
以下では、本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの好適な構成について説明するが、これらは単独で提供してもよく、複数の組合せとして提供してもよい。
【0030】
好ましくは、前記一対のアームを構成するアームは、アーチ状の線に沿って延びている。
【0031】
設計段階で予め決められるこのアーチ状の線は、前記一対のアームの各アームについて凹形状を定める。これによって、制動時にアームが受ける圧縮力はアームの凹形を強調する傾向となり、アームが常に同じ方向に曲がることを確実にし、アームの破損や変形(降伏変形)を防止する。
【0032】
好ましくは、前記一対のアームは、第2の連結領域から前記半径方向内側の環状カップリング部に向かって末広がりに分岐するよう配置されており、相異なる方向に延びる分岐アームを形成している。
【0033】
相異なる方向に延びるこれら2つの分岐アームにより、制動トラックからの荷重が、半径方向内側の環状カップリング部の周方向で互いに離間した部分に確実に伝達される。これにより、制動トラックからの荷重が半径方向内側の環状カップリング部上の、大きな円弧(circular sector)に沿って分散され、該半径方向内側の環状カップリング部の極めて限定的な領域に荷重が集中する可能性を低減することができる。
【0034】
好ましくは、第2の連結部はそれぞれ、前記第2の連結領域から延在し、該第2の連結部に周方向で隣接する別の第2の連結部まで伸びる補強アームを含む。
【0035】
好ましくは、前記補強アームは、アーチ状の線に沿って延びている。
【0036】
設計段階で予め決められるこのようなアーチ状の線は、前記補強アームについて凹形状を定める。これにより、制動時に前記補強アームが受ける圧縮力は該補強アームの凹形状を強調する傾向となり、補強アームが常に同じ方向に曲がることを確実にし、アームの破損や変形を防止する。
【0037】
有利なことに、前記補強アームは、前記半径方向内側の環状カップリング部上におけるバランスのとれた荷重の分散を確実にする。
【0038】
具体的には、各補強アームは、第2の連結領域から周方向で次に位置する第2の連結部の一対のアームのうち一つのアームへ延びて、その半径方向外端部またはその近傍に到達している。
【0039】
このような構成により、特に連結領域での急速な放熱を可能にする空気の渦を生成することができる。
【0040】
しかも、補強アームを第2の連結領域よりも半径方向で内側の位置に延ばして接続することにより、該補強アーム内を通った圧縮力を、ディスクブレーキの第1および第2の部品間の連結部のピボットから離れた箇所に送り出すことが可能である。
【0041】
好ましくは、第1の連結部はそれぞれ、制動トラックに繋がる半径方向外側端部および、個々の第1の連結領域に位置する半径方向内側端部を有する。より好ましくは、前記第1の連結部は、半径方向内側の環状カップリング部の中心と前記半径方向内側端部とを通る半径方向に対し、傾斜した方向に延びている。
【0042】
有利なことに、このように半径方向に傾斜した配向によりバランス良く荷重を分散させることができ、第1の連結部には実質的に圧縮応力が作用し、半径方向で反対側の第1の連結部には実質的に引張力が作用するようにさせることができる。
【0043】
第2の連結部の各補強アームは、第2の部品の該第2の連結部に連結される第1の部品の第1の連結部と略平行な配置をとることが好ましい。
【0044】
有利なことに、前記第1の連結部の配置と略平行な配置を持つ補強アームにも実質的に圧縮応力が作用する。
【0045】
好ましくは、前記貫通口は、前記一対のアームの各アームがそれぞれ第2の連結領域、及び前記半径方向内側の環状カップリング部に繋がる領域において、丸みを帯びた縁部を有している。
【0046】
より好ましくは、前記丸みを帯びた縁部の曲率半径は、上下限値である極値を含め1mm~6mmの範囲内、好ましくは極値を含め2mm~4mmの範囲内、より好ましくは極値を含め2.5mm~3mmの範囲内である。
【0047】
有利なことに、前記丸みを帯びた縁部は、アームと第2の連結領域との間、及びアームと半径方向内側の環状カップリング部との間に応力が集中する領域が発生することを防ぐ。
【0048】
前記一対のアームを構成する各アームは軸方向の厚さが同じであることが好ましい。
【0049】
より好ましくは、前記補強アームの軸方向厚さは、前記一対のアームにおける前記アームの軸方向厚さよりも薄い。
【0050】
好適には、前記一対のアームにおける前記アームと前記補強アームとは2つの異なる平面上に延在している。前記一対のアームにおけるアームの中央平面は第2の連結部の最大厚部分の2つの平面間に位置し、前記補強アームの中央平面は前述の最大厚部分の平面間に位置する平面の上に位置している。これにより、前記ブレーキディスクの構造の軽量化に加え、表面の不連続性が形成され、動作時のブレーキディスク上における空気の乱流を有利に増大させ、結果として、放熱を増大させる。
【0051】
前記第2の部品の第2の連結部と、これに対応する前記第1の部品の第1の連結部との連結は、前述の連結部材によって行われる。
【0052】
好ましくは、この連結部材は、第1及び第2の連結領域に形成されたそれぞれの貫通孔内に収容される、軸穴のあけられたリベット(穴あきリベット)を含む。
【0053】
有利なことに、穴あきリベットの使用により、振動を確実により良好に減衰して、音の小さい制動を実現する効果が得られる。
【0054】
好ましくは、前記連結部材が一様に距離Lで離間しており、該距離Lは、10mm~80mmの極値を含む範囲内、好ましくは20mm~50mmの極値を含む範囲内、より好ましくは35mm~40mmの極値を含む範囲内である。
【0055】
有利なことに、本願の出願人は、距離Lを前述した範囲内とすることで、制動時の前記ブレーキディスクの振動が、発生する関連音とともに抑えられることを見出した。
【0056】
本願の出願人は、さらに、連結部材間の前述した距離Lの好適な数値が、ブレーキディスクの外径にかかわらず実質上変わらないことを見出した。この理由から、前記ブレーキディスクの外径が増えるにつれて、連結部材の数、すなわち、第1及び第2の連結部の数も増える。例えば、本願の出願人は、外径が140mmのブレーキディスクの場合には6つの連結部材を(すなわち、第1及び第2の連結部をそれぞれ6つずつ)備えることが有利であり、外径が160mmのブレーキディスクの場合には7つの連結部材を(すなわち、第1及び第2の連結部をそれぞれ7つずつ)備えることが有利であることを見出した。
【0057】
第1の連結領域は、対応する第2の連結領域と軸方向で重なり合うことが好ましい。
【0058】
第1の連結領域は、前記第2の連結領域における凹所に収容されることがより好ましい。
【0059】
前記第1の連結領域は、前記第2の連結領域と半径方向で接触していないことがさらに好ましい。
【0060】
これにより、有利なことに、前記第2の連結領域における前記凹所は、厳密な寸法公差を必要とすることなく形成することができる。前記第1及び第2の部品が相異なる材料(例えば、それぞれ鋼とアルミニウム)からなる場合であっても、これら第1及び第2の部品の相異なる熱膨張が前記第2の連結領域における凹所に対して半径方向の荷重を発生させることがない。
【0061】
前記制動トラックは、ブレーキパッドの側縁の延在方向に対して傾斜した長手形状(細長い形状)の複数の貫通口を含むことが好ましい。
【0062】
有利なことに、本願の出願人は、このような傾斜により、制動時に前記ブレーキパッドの側縁が一度に前記貫通口全体に会合するのではなく徐々に会合するため、制動時の音が抑えられることを見出した。
【0063】
本願の出願人は、さらに、全ての前記貫通口の傾斜を同じとすることにより、制動時の音が一定となることを見出した。
【0064】
好ましくは、前記貫通口の、前記ブレーキパッドの側縁の延在方向に対する傾斜は、極値を含め5°~60°の範囲内、好ましくは極値を含め15°~40°の範囲内、より好ましくは約29°である。
【0065】
有利なことに、本願の出願人は、上記数値の傾斜により、制動時のブレーキディスクの音が極めて小さくなることを見出した。
【0066】
好ましくは、前記貫通口の数は、第1の連結部の数の倍数である。
【0067】
有利なことに、本願の出願人は、これにより制動時の前記ブレーキディスクの音が大幅に低減されることを見出した。
【0068】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う本発明の好適な実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図4】
図2のブレーキディスクの一部であって、
図2において長方形の破線で示した部分の拡大図である。
【
図5】
図4のブレーキディスクの、面V-Vに沿った拡大スケールの断面図である。
【
図6】
図1のブレーキディスクについての、
図2と全く同じ正面図にブレーキパッドを付け加えた図である。
【
図7】
図1のブレーキディスクを示す背面図であって、ディスクブレーキのキャリパーが付け加えられている図である。
【
図8】本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第2の実施形態を示す正面図である。
【
図9】
図1のブレーキディスクについての、
図2と全く同じ正面図であって、
図8とほぼ同じ縮尺を有する図である。
【
図10】本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図11】
図10のブレーキディスクの一部を示す拡大切欠図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1~
図7及び
図9をまず参照する。参照符号10は、本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第1の実施形態の全体を指す。
【0071】
ブレーキディスク10は、自転車の車輪のハブ(図示せず)に取り付けられるように構成されている。
【0072】
ハブは、自転車のフレームに取り付けられている。具体的には、フレームは各自由端に各2つの、両側で車輪を支持する(対向する)支持アームを有し、該両側の2つの支持アームの各自由端部に、前記ハブの両側の自由端部を収容する収容座部が存在する。
【0073】
ディスクブレーキのキャリパー12(
図7)は自転車の前記フレームに固定されている。具体的には、キャリパーは、車輪を支持する前記支持アームの一方に、従来方式で固定されている。
【0074】
キャリパー12の内部には、少なくとも2つの、対面する(両側の)ブレーキパッド14(
図6)が存在する。
【0075】
ブレーキディスク10は、両側のブレーキパッド14間に形成された空間内を回転する。ブレーキレバー(図示せず)を作動することによりブレーキパッド14がブレーキディスク10に向かって動かされ、該ブレーキディスク10上で摩擦を引き起こす結果、車輪を制動する。
【0076】
具体的には、ハブは、自転車の車輪及びブレーキディスク10の回転軸と一致する長手方向軸X(
図1)に沿って延在する。
【0077】
前記ハブは、ブレーキディスク10を回転可能な状態で収容・固定するディスク座部、およびディスク座部に取り付けられたブレーキディスク10の軸方向の当接位置を提供するショルダー部を有する。
【0078】
前記ディスク座部は、溝付きの半径方向外側表面(すなわち、長手方向に延在し且つ長手方向の溝が設けられている半径方向外側表面)を有している。
【0079】
ブレーキディスク10は、前記ディスク座部の溝付きの半径方向外側表面と係合する、溝付きの半径方向内側表面42a(すなわち、長手方向に延在し且つ前記ディスク座部の前記溝付きの半径方向外側表面の前記長手方向の溝と合致する長手方向の溝が設けられている半径方向内側表面42a)を有する。
【0080】
より一般的には、前記ディスク座部は、形状カップリングプロファイルに従って形成されている。この用語は、前記ディスク座部のプロファイルが、(該ディスク座部が形成されている)ハブとディスク座部に取り付けられて且つ適合するプロファイルを有するブレーキディスク10との間でねじりの伝達を可能にするような幾何学的特性を有していることを意味する。形状カップリングプロファイルは、例えば多角形状プロファイル、(例えば、帯状の平らな)変化を付けた円形状プロファイル等であってもよい。具体的には、(本発明を限定するものではないが)図面の例に示されたディスク座部の形状カップリングプロファイルは、軸Xと平行な方向に配向する、隆起部(凸部)及びスロート部(凹部)を含む溝付きプロファイルである。
【0081】
前記ショルダー部は、前記ディスク座部の軸方向内側に隣設されている。
【0082】
これと反対側の、ディスク座部の軸方向外側には、ねじ切りされた部位が隣設されている。該ねじ切りされた部位は、ハブの自由端部にロックナット(図示せず)とカップリングするために形成されており、該ロックナットは、ディスク座部内のブレーキディスク10を前記ショルダー部に対して保持する。
【0083】
ブレーキディスク10は、第1の部品30および第2の部品40を備える。
【0084】
第1の部品30は制動トラック32を有し、第2の部品40はハブとカップリングする半径方向内側の環状部42を有する。
【0085】
制動トラック32は、ブレーキパッド14と協働するように構成されており、かつ、第1の部品30の半径方向外側のプロファイルが略円形となるように略環形の広がりを有している。第1の部品30の鋭さを抑えるために、該第1の部品30の半径方向外側縁部30aは
図3に示すように丸みをつけられている。
【0086】
半径方向内側の環状部42には、前述した溝付きの半径方向内側表面42aが設けられている。
【0087】
第1の部品30は、良好な制動特性及び酸化と摩耗との両方に対する良好な耐性を確保し得る、例えば鋼のような、第1の材料からなることが好ましい。第2の部品40は、より軽量の、例えばアルミニウム、アルミニウム系合金、他種の軽合金等のような第2の材料からなることが好ましい。制動時に発生する熱をより容易に移動させて排出することが可能なので、アルミニウム(またはアルミニウム系合金)が特に推奨される。
【0088】
第1の部品30は、制動トラック32から内側に向かって(すなわち、ブレーキディスク10の軸Xに向かって)延びる複数の第1の連結部34を有する。第1の連結部34は、第1の部品30が第2の部品40と連結されるそれぞれの第1の連結領域36を含む。第1の連結部34同士は周方向に一様に離間しており、
図1~
図7及び
図9に示す例では7つ存在している。
図1~
図7及び
図9では、図示が複雑にならないように第1の連結部34の一部にしか参照符号を付しておらず、後述の他の構成要素の一部についても同様とする。
【0089】
第1の連結部34のそれぞれの自由端部に、第1の連結領域36が形成されている。
【0090】
具体的には、第1の連結部34はそれぞれ、制動トラック32に繋がる半径方向外側端部34a、および個々の第1の連結領域36に位置する半径方向内側端部34bを有している。
【0091】
図1~
図7及び
図9に示す例では、第1の連結部34は、個々の第1の連結領域36と制動トラック32との間に延びる各一対の接続エレメント35を含む。一対の接続エレメント35は、両者の間に、長手形状の貫通口37を形成している。
【0092】
接続エレメント35は、それぞれの第1の連結領域36から制動トラック32に向かって若干末広がりの又は略平行な配置を持つ。
【0093】
図1~
図7及び
図9に示す例では、各接続エレメント35は軸方向の厚さが同じである。
【0094】
第1の連結部34は、半径方向(半径方向内側の環状部42の中心と半径方向内側端部34bとを通る方向)に対し傾斜した方向に延びている。半径方向に対するこの傾きは、極値を含め5°~70°の範囲内、好ましくは極値を含め30°~60°の範囲内、より好ましくは極値を含め45°~55°の範囲内である。
【0095】
制動トラック32は、ブレーキパッド14の側縁14aの延在方向に対して傾斜した、細長い形状の複数の貫通スリット32aを含む(
図6)。
【0096】
言い換えれば、ブレーキパッド14の側縁14aは該ブレーキパッド14の中心とブレーキディスク10の中心とを通る半径方向と略平行な方向に従って延在するとした場合、貫通スリット32aはその半径方向に対して実質的に傾斜していることになる。
【0097】
貫通スリット32aの方向は、このような開口の縁が延在する方向であると定義される。好ましくは、そのような縁は、自転車を通常使用する時にブレーキパッド14に最初に触れる貫通スリット32aの縁である。
【0098】
具体的には、側縁14aの延在方向に対する貫通スリット32aの傾斜は、極値を含め5°~60°の範囲内、好ましくは極値を含め15°~40°の範囲内、より好ましくは約29°である。
【0099】
全ての貫通スリット32aの傾斜はほぼ同じであるか、あるいは、いずれにせよ前述した極値を含む範囲内の傾斜を有する。
【0100】
貫通スリット32aの数は、第1の連結部34の数の倍数である。具体的には、
図1~
図7及び
図9に示す例では、7つの第1の連結部34が存在し且つ49個のスリット32aが存在する。
【0101】
第2の部品40は、第1の連結部34の数に対応する数の、複数の第2の連結部44を有する。第2の連結部44同士は、周方向で一様に離間している。第2の連結部44は、半径方向内側の環状部42から第1の部品30に向かって外方に延び、かつ、第2の部品40が第1の部品30と連結されるそれぞれの第2の連結領域46を含む。
図1~
図7及び
図9では、図示が複雑にならないように第2の連結部44の一部にしか参照符号を付しておらず、後述の他の構成要素の一部についても同様である。
【0102】
第2の連結部44のそれぞれの自由端部に、第2の連結領域46が形成されている。
【0103】
具体的には、それぞれの第2の連結部44は、それぞれの第2の連結領域46の半径方向外側端部44a、および半径方向内側の環状部42に繋がる半径方向内側端部44bを有している。
【0104】
第2の連結部44は、個々の第2の連結領域46と半径方向内側の環状部42との間に延びる各一対のアーム45を含む。一対のアーム45は、両者の間に貫通口47を形成している。
【0105】
一対のアーム45は、個々の第2の連結領域46から半径方向内側の環状部42に向かって末広がりに分岐する配置を持つ。つまり、これらの分岐アーム45は、相異なる方向に延びている。
【0106】
添付の図面に示すように、半径方向内側の環状部42の中心と第2の連結領域46とを通る半径方向に対し、一対のアーム45の第1の分岐アーム45は、他方の分岐アームと逆向きに傾いている。
【0107】
好ましくは、第1の分岐アーム45は、他方の分岐アームに対して15°~90°、より好ましくは20°~60°、さらに好ましくは35°~45°の角度をもって傾いている。
【0108】
図1~
図7及び
図9に示す例では、それぞれのアーム45の軸方向の厚さが同じである。
【0109】
分岐アーム45は、直線状ではなくアーチ状の外形を有する。
【0110】
分岐アーム45のこのようなアーチ状の延びが、該分岐アーム45の凹形状を定める。これにより、アーム45の第2の連結領域46に拘束される端部と該アームの半径方向内側の環状部42に拘束される端部とを通る線は、それら2つの端部間の該アームの部とは交わらない。
【0111】
図2に明確に示されているように、両方の分岐アーム45の凹形状は、同じ方向を向いている。
【0112】
好ましくは、第2の連結部44における一方のアーム45の凹形状は貫通口37に直接面しており、(前記ブレーキディスクの回転方向に従って)周方向前方に存在するアーム45の凹形状は該貫通口37とは反対方向に面している。
【0113】
貫通口47は、それぞれのアーム45が第2の連結領域46及び半径方向内側の環状部42に繋がる領域において、丸みを帯びた縁部を有している。言い換えれば、それぞれのアーム45は、第2の連結領域46と半径方向内側の環状部42とに鋭い縁部ではなく丸みを帯びた縁部で接続されている。
【0114】
これらの丸みを帯びた縁部の曲率半径は、上下限値である極値を含め1mm~6mmの範囲内、好ましくは極値を含め2mm~4mmの範囲内、より好ましくは極値を含め2.5mm~3mmの範囲内である。このような曲率半径により、分岐アーム45間に応力を一様に分散させることが可能となる。
【0115】
第2の連結部44はそれぞれ、第2の連結領域46から延びて該第2の連結部44に周方向で隣りに位置する別の第2の連結部44まで伸びる補強アーム49を備える。
【0116】
具体的には、各補強アーム49は第2の連結領域46から延びて、前記別の第2の連結部44のうち、周方向で隣りに位置する一つのアーム45に達する。
図1~
図7及び
図9に示す例では、補強アーム49は、前記別の第2の連結部44の半径方向外側端部44a又はその近傍で分岐アーム45に達している。
【0117】
第2の連結部44の補強アーム49はそれぞれ、第1の部品30の第1の連結部34と略平行な配置を持つ。
【0118】
図1~
図7及び
図9に示す例では、補強アーム49の軸方向厚さがアーム45の軸方向厚さよりも薄い。
【0119】
図7に示すように、第2の部品40の最大外径は、キャリパー12に干渉しない円周C内に収まる。
【0120】
すなわち、第2の部品40の最大外径は、制動トラック32の内径よりも短い。
【0121】
第2の部品40の第2の連結部44と、これに対応する第1の部品30の第1の連結部34との連結、具体的には第2の連結領域46と対応する第1の連結領域36との連結は、連結部材50によって行われる。
【0122】
好ましくは、このような連結部材50はリベット52である。リベット52は、穴があけられており、第1及び第2の連結領域36,46に形成された各貫通孔36c,46cに収容されている。さらに、リベット52は、軸が前記軸Xと略平行になるように取り付けられて加締められている。リベット52の加締め部52aは第1の連結領域36上に設けられており、リベット52のショルダー部52bは第2の連結領域46に当接している。
【0123】
制動力は、第1及び第2の連結領域36,46間の接触面を通り抜けて作用する前記リベット52を介して伝達される。ブレーキディスク10に対する側方応力は、第1及び第2の連結領域36,46間の接触面に放出される。
【0124】
図4及び
図5に示すように第1の連結領域36は、対応する第2の連結領域46と軸方向で重なり合っており、かつ、該第2の連結領域46における凹所46aに収容されている。
【0125】
図4及び
図5に示すように第1の連結領域36は、第2の連結領域46に半径方向では接触していない。すなわち、第2の連結領域46の凹所46aの側壁46bと第1の連結領域36の側壁36aとの間には、半径方向に隙間が設けられている。側壁46bおよび側壁36aは、前記軸Xと略平行に配置されている。
【0126】
連結部材50は一様に距離L(
図9)で離間しており、該距離Lは、極値を含め10mm~80mmの範囲内、好ましくは極値を含め20mm~50mmの範囲内、より好ましくは極値を含め35mm~40mmの範囲内である。
【0127】
図8に、本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第2の好適な実施形態(全体に符号10を付す)を示す。
【0128】
図8において、
図1~
図7及び
図9に示す第1の実施形態を参照しながら前述した構成/構成要素と同様の、又は機能的に対応する構成/構成要素には、同じ参照符号が付されており、それらの詳細な説明については上述の内容を参照されたい。
【0129】
図8に示すブレーキディスク10の第2の実施形態は、(
図8と
図9の描画を比較すれば明確に分かるように)該ブレーキディスク10の直径が
図1~
図7及び
図9に示すブレーキディスク10の直径よりも短い点で、
図1~
図7及び
図9に示す実施形態と実質的に異なっている。
【0130】
例えば、
図8のブレーキディスク10の外径は140mmであり、
図9のブレーキディスク10の外径は160mmである。
【0131】
図8のブレーキディスク10の連結部材50間の距離Lは、
図9のブレーキディスク10の連結部材50間の距離Lと実質上変わらない。
【0132】
これを実現するために、
図8のブレーキディスク10の連結部材50の数(すなわち、第1及び第2の連結部34,44の数)は、
図9のブレーキディスク10の連結部材50の数よりも少ない。具体的には、
図9のブレーキディスク10の7つの連結部材50に代えて、
図8のブレーキディスク10の連結部材50は6つとされている。
【0133】
図8のブレーキディスク10には、6つずつの第1及び第2の連結部34,44が存在し、42個の貫通スリット32aが存在する。
【0134】
図10~
図12に、本発明にかかる自転車用のブレーキディスクの第3の好適な実施形態(全体に符号10を付す)を示す。
【0135】
図10~
図12において、
図1~
図7及び
図9に示す第1の実施形態を参照しながら前述した構成/構成要素と同様の、又は機能的に対応する構成/構成要素には、同じ参照符号が付されており、それらの詳細な説明については上述の内容を参照されたい。
【0136】
図10~
図12に示すブレーキディスク10の第3の実施形態は、該ブレーキディスク10の第2の連結領域46に
図1~
図7及び
図9のブレーキディスク10の第2の連結領域46に見込まれる凹所46aが設けられていない点で、
図1~
図7及び
図9に示す実施形態と実質的に異なっている。
図10~
図12に示すように第1の連結領域36は、対応する第2の連結領域46と軸方向で重なり合っている。
【0137】
この場合の第2の部品40は、打ち抜き加工された鋼板、複合材料またはプラスチック系材料からなるものであってもよい。
【0138】
具体的には、第2の部品40は鋼から作製することができ、連続する成形工程でその形状加工が行われる。
【0139】
図1~
図9のブレーキディスク10の第2の部品40は、一般的に、アルミニウム(またはアルミニウム系合金)が鍛造されて機械加工されたものからなる。
【0140】
当然ながら、当業者であれば、その時々の要件や偶発的な要件を満足するために、本発明にかかる自転車用のブレーキディスクに様々な変更や変形を施すことが可能であり、いずれにせよ、これら変更や変形の全ては添付の特許請求の範囲により定まる保護範囲に包含される。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
自転車用のブレーキディスク(10)であって、
ブレーキパッド(14)と協働するように構成された制動トラック(32)と、内側に向かって延び、個々に第1の連結領域(36)を有する、複数の第1の連結部(34)とを含む、第1の部品(30)と、
(i)前記自転車の車輪のハブとカップリングする半径方向内側の環状カップリング部(42)と、(ii)前記複数の第1の連結部(34)に対応する数で、前記半径方向内側の環状カップリング部(42)から前記第1の部品(30)に向けて外方に延び、個々に第2の連結領域(46)を有する、複数の第2の連結部(44)とを含む、第2の部品(40)と、
前記第1の連結領域(36)と対応する前記第2の連結領域と(46)の間で作用する連結部材(50)と、
を備える、ブレーキディスク(10)において、
前記第2の連結部(44)がそれぞれ、前記第2の連結領域(46)と前記半径方向内側の環状カップリング部(42)との間に延びるそれぞれの少なくとも一対のアーム(45)を含み、該一対のアーム(45)が、両アーム間に貫通口(47)を形成していることを特徴とする、ブレーキディスク(10)。
〔態様2〕
態様1に記載のブレーキディスク(10)において、前記一対のアーム(45)が、個々の前記第2の連結領域(46)から前記半径方向内側の環状カップリング部(42)に向かって末広がりに分岐する配置を持つ、ブレーキディスク(10)。
〔態様3〕
態様1または2に記載のブレーキディスク(10)において、前記第2の連結部(44)がそれぞれ、前記第2の連結領域(46)から延び、周方向で該第2の連結部(44)の隣りに位置する別の第2の連結部(44)に達する補強アーム(49)を備える、ブレーキディスク(10)。
〔態様4〕
態様3に記載のブレーキディスク(10)において、前記補強アーム(49)が、前記別の第2の連結部(44)の前記一対のアーム(45)を構成する一つのアーム(45)の半径方向外側の端部(44a)又はその近傍に達している、ブレーキディスク(10)。
〔態様5〕
態様3または4に記載のブレーキディスク(10)において、前記第2の連結部(44)の各補強アーム(49)は、前記第2の部品(40)の該第2の連結部(44)と連結される、前記第1の部品(30)の前記第1の連結部(34)と略平行に配置される、ブレーキディスク(10)。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結部(34)がそれぞれ、前記制動トラック(32)に繋がる半径方向外側の端部(34a)および前記第1の連結領域(36)に位置する半径方向内側端部(34b)を有し、前記第1の連結部(34)が、前記半径方向内側の環状カップリング部(42)の中心と前記半径方向内側の端部(34a)を通る半径方向に対し、傾斜した方向に延びている、ブレーキディスク(10)。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記一対のアーム(45)の各アーム(45)は、同じ軸方向厚さを有するブレーキディスク(10)。
〔態様8〕
態様3に従属する場合の態様7に記載のブレーキディスク(10)において、前記補強アーム(10)の軸方向厚さが、前記一対のアーム(45)の軸方向厚さよりも薄い、ブレーキディスク(10)。
〔態様9〕
態様1から8のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記連結部材(50)が、前記第1の連結領域(36)及び前記第2の連結領域(46)に形成された各貫通孔(36c,46c)内に軸方向に収容される穴あきリベット(52)を含む、ブレーキディスク(10)。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記連結部材(50)が互いに一様に距離(L)で離間しており、該距離(L)は、極値を含め10mm~80mmの範囲内(好ましくは極値を含め20mm~50mmの範囲内、より好ましくは極値を含め35mm~40mmの範囲内)である、ブレーキディスク(10)。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結領域(36)が、対応する前記第2の連結領域(46)と軸方向で重なり合っており、かつ、該第2の連結領域(46)の凹所(46a)に収容されている、ブレーキディスク(10)。
〔態様12〕
態様1から11のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記第1の連結領域(36)が、軸方向でのみ、前記第2の連結領域(46)に接触している、ブレーキディスク(10)。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一態様に記載のブレーキディスク(10)において、前記制動トラック(32)が長手形状の複数の貫通スリット(32a)を含み、該貫通スリット(32a)は、前記ブレーキパッド(14)の側縁(14a)の延在方向に対して傾斜している、ブレーキディスク(10)。
〔態様14〕
態様13に記載のブレーキディスク(10)において、前記貫通スリット(32a)の、前記ブレーキパッド(14)の前記側縁(14a)の延在方向に対する傾斜は、極値を含め5°~60°mmの範囲内、好ましくは極値を含め15°~40°mmの範囲内、より好ましくは約29°である、ブレーキディスク(10)。
〔態様15〕
態様13または14に記載のブレーキディスク(10)において、前記貫通スリット(32a)の数が、第1の連結部(34)の数の倍数である、ブレーキディスク(10)。
【符号の説明】
【0141】
10 ブレーキディスク
14 ブレーキパッド
14a 側縁
30 第1の部品
32 制動トラック
32a 貫通スリット
34 第1の連結部
36 第1の連結領域
36c 貫通孔
40 第2の部品
42 環状カップリング部
44 第2の連結部
45 アーム
46 第2の連結領域
46c 貫通孔
47 貫通口
49 補強アーム
52 リベット