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  • 特許-一液常温湿気硬化型シーリング材組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】一液常温湿気硬化型シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20220825BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20220825BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220825BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C09K3/10 G
C08L101/10
C08K7/24
C08K7/00
C08K5/17
E04F13/02 K
C09K3/10 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018034148
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147900
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151688
【弁理士】
【氏名又は名称】今 智司
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 知紀
(72)【発明者】
【氏名】岡村 直実
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-016129(JP,A)
【文献】特開平09-053063(JP,A)
【文献】特開2001-059083(JP,A)
【文献】特開2001-39755(JP,A)
【文献】特開2001-115142(JP,A)
【文献】特開2001-59083(JP,A)
【文献】特開2007-16248(JP,A)
【文献】特開2004-307556(JP,A)
【文献】特開2009-179776(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098998(WO,A1)
【文献】特開2004-107607(JP,A)
【文献】特開2014-227427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10- 3/12
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
E04F 13/00- 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体と、
(B)平均粒子サイズが0.5mmを超え2mm以下の範囲である無機多孔質性膨張体と、
(D)融点が30℃以上の脂肪族アミン化合物と
(E)平均直径が0.1mm以上4.0mm以下の範囲である鱗片状物質と
を含有すると共に、
前記(B)無機多孔質性膨張体を、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に対して容積濃度2vol%以上10vol%以下の範囲で含有
前記(E)鱗片状物質を、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に対して容積濃度0.05vol%以上0.9vol%以下の範囲で含有する一液常温湿気硬化型シーリング材組成物。
【請求項2】
前記(B)無機多孔質性膨張体と併用される、(C)平均粒子サイズが0.2mm以上0.5mm以下である無機多孔質性膨張体を更に含有する請求項1に記載の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物。
【請求項3】
目地部分に請求項1又は2に記載の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物が充填された壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に関する。特に、本発明は、自然石調の表面テクスチャーを有する壁材用に適した一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁材の表面に意匠性を付与するための薄付仕上塗材には、代表的な塗料として砂壁状吹付材(リシン)や陶石状吹付塗材(スキン)がある。リシン吹付壁材に対応したシーリング材としては、特許文献1に記載の砂壁状表面仕上げシーリング材組成物や、特許文献2に記載の光乱反射が十分大きく、艶のない、砂をまぶしたような比較的大きな凹凸のあるざらついた外観を有する一液湿気硬化型の硬化性組成物及びシーリング材組成物が挙げられる。
【0003】
一方、割石調、石肌調等の自然石調の表面テクスチャーを有するような壁材としては、表面に複数本の突条と溝とを所要のピッチで列設した軽量気泡コンクリートパネルにおいて、当該突条に割砕模様が形成されている軽量気泡コンクリートパネルが知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、表面に縦横目地溝によって区画された凸ブロックの複数個を縦横に配列したブロック調模様を有する建築板であって、当該縦横目地溝を画定する一方又は両方の側縁に直線部、彎曲部、屈曲部をそれぞれ混在させ、それによって当該縦横目地溝巾を変化させた建築板が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-059083号公報
【文献】特開2003-089742号公報
【文献】特開平11-254417号公報
【文献】特開2004-316277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3や特許文献4に記載のような壁材を用いる場合、従来のシーリング材では、壁材の表面テクスチャーとシーリング材の表面形状とを調和させることが困難であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、基本性能(最大荷重時の伸び、汚れ防止等)を損なうことなく、自然石調(天然石調)の比較的凹凸が明確な表面テクスチャーを有する壁材や、自然石調(天然石調)の比較的凹凸が明確な表面テクスチャーを有し、表面に目地溝が形成された目地構造を有する壁材の目地構造と一体感のある外観を形成する一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体と、(B)平均粒子サイズが0.5mmを超え2mm以下の範囲である無機多孔質性膨張体と、(D)融点が30℃以上の脂肪族アミン化合物とを含有すると共に、(B)無機多孔質性膨張体を、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に対して容積濃度2vol%以上15vol%以下の範囲で含有し、自然石調の表面テクスチャーを有する壁材に調和する、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物によれば、基本性能(最大荷重時の伸び、汚れ防止等)を損なうことなく、自然石調(天然石調)の比較的凹凸が明確な表面テクスチャーを有する壁材や、自然石調(天然石調)の比較的凹凸が明確な表面テクスチャーを有し、表面に目地溝が形成された目地構造を有する壁材の目地構造と一体感のある外観を形成する一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】リシン調の壁面を示す図である。
図2】自然石調の壁面を示す図である。
図3】目地模様があるサイディングボードの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の詳細]
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体と、(B)無機多孔質性膨張体と、(D)脂肪族アミン化合物とを含有し、自然石調の表面テクスチャーを有する壁材に調和する、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物である(以下、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を、単に「シーリング材組成物」と称する場合がある。)。本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、平均粒子サイズが(B)無機多孔質性膨張体の平均粒子サイズより小さい(C)無機多孔質性膨張体、及び/又は(E)鱗片状物質を更に含有することもできる。なお、壁材に調和するとは、壁材の表面テクスチャーと外観が調和すること、及び/又は壁材の表面に設けられる目地溝等の表面形状と外観が調和することを含む。そして、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、壁材の表面に設けられる目地(目地溝、目地構造、若しくは目地模様)ではなく、複数の壁材間の目地に充填されるシーリング材である。なお、本発明において単に「目地」とした場合、当該「目地」はシーリング材組成物の硬化物による目地、つまり、壁材間の隙間に充填されて構成される目地を指す。また、壁材としてはサイディング材が挙げられ、以下の説明では壁材としてのサイディング材を例にして説明する。
【0011】
(A成分:架橋性ケイ素基含有有機重合体)
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の架橋性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。架橋性ケイ素基としては、例えば、一般式(1)で示される基が好適である。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、Rは、有機基を示す。なお、Rは、炭素数が1~20の炭化水素基が好ましい。これらの中でRは、特にメチル基が好ましい。Rは、置換基を有していてもよい。Rが2個以上存在する場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。Xは水酸基、又は加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3の整数のいずれかである。硬化性を考慮し、十分な硬化速度を有するシーリング材組成物を得るためには、式(1)においてaは2以上が好ましく、3がより好ましい。十分な柔軟性を有するシーリング材組成物を得るためには、aは2が好ましい。
【0014】
加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができる。加水分解性基や水酸基が架橋性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0015】
Xで示される加水分解性基としては、特に限定されない。例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。
【0016】
架橋性ケイ素基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、-Si(OR)、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基、-SiR(OR)が挙げられる。ここでRはメチル基やエチル基等のアルキル基である。また、架橋性ケイ素基は1種で用いても、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基は、主鎖又は側鎖、若しくはいずれに結合していてもよい。シーリング材組成物の硬化物の引張特性等の硬化物の物性が優れる観点からは、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在することが好ましい。(A)成分の有機重合体において、架橋性ケイ素基は、有機重合体1分子中に平均して1.0個以上5個以下存在することが好ましく、1.1~3個存在することがより好ましい。
【0017】
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の主鎖骨格としては、具体的には、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、又は、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。これらの骨格は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の中に単独で含まれていても、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。本発明では、硬化して得られるシーリング材の伸び特性を良好にする観点からテレケリックポリマー(すなわち、両末端に官能基としてのシリル基を実質的に有する重合体)を含むことが好ましい。ここで「実質的に」とは、主鎖骨格の50%以上が両末端にシリル基を有する重合体であることを示す。よって、本発明に係るテレケリックポリマーは、その全体の50%以上の主鎖骨格が、両端にシリル基を有する重合体を含むことになる。なお、テレケリックポリマーは、伸び特性を良好にする観点から、両端にシリル基を有する重合体を、その全体の60%以上含むことが好ましく、70%以上含むことがより好ましく、80%以上含むことが最も好ましい。また、硬化して得られるシーリング材が優れた接着性を発揮し、柔軟性を維持する観点から、主鎖骨格がブチル(メタ)アクリレートであり末端に官能基を有するポリマーを所定量、含むことが好ましい。更に、シーリング材組成物の相溶性を向上させる観点から、主鎖骨格がブチル(メタ)アクリレート単量体単位、及びステアリル(メタ)アクリレート単量体単位で構成され、末端に官能基を有するポリマーを所定量、含むことも好ましい。
【0018】
更に、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。また、ポリオキシアルキレン系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、透湿性が高く一液型組成物にした場合に深部硬化性に優れることから特に好ましい。
【0019】
シーリング材に求められる大きい伸び特性や小さい引張モジュラス(引張応力)を有する観点から、これらの中では、オキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、若しくはこれらの混合物が主鎖骨格として好ましい。特に、シーリング材組成物の硬化物の引張モジュラスとしては、サイディング用シーリング材規格に準拠して測定される試験温度23℃における初期の50%引張モジュラスが0.2N/mm未満であることが好ましい。なお、JASS8防水工事(日本建築学会)において規定される50%引張モジュラスも低い値であることが好ましい。また、シーリング材、特に建築用に用いられるシーリング材は屋外で長期間暴露されることから、悪条件での暴露後においても引張モジュラスが保持されることが好ましい。例えば、熱暴露促進試験後の引張モジュラスが0.2N/mmを超えないことが好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
-R-O-・・・(2)
一般式(2)中、Rは炭素数が1~14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基であり、炭素数が1~14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が好ましく、炭素数が2~4の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が更に好ましい。
【0021】
一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては、-CHO-、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CHCH(C)O-、-CHC(CHO-、-CHCHCHCHO-等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体からなる主鎖骨格が好ましい。
【0022】
架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の分子量は、硬化物の初期の引張特性である引張モジュラスを小さくし、破断時伸びを大きくするため高い分子量が好ましい。本発明においては、オキシアルキレン系重合体の数平均分子量の下限としては15,000が好ましく、18,000以上が更に好ましく、20,000以上がより好ましい。分子量が高くなると重合体の粘度が上昇してシーリング材組成物の粘度も上昇するので、数平均分子量が20,000以上の重合体を一部に含む重合体も好ましい。また、数平均分子量の上限は50,000、更には40,000が好ましい。なお、本発明に係る数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量である。数平均分子量が15,000未満の場合、引張モジュラスや破断時伸びが十分でない場合があり、50,000を超えると組成物の粘度が大きくなり作業性が低下することがある。
【0023】
また、架橋性ケイ素基を有する数平均分子量15,000以上の(メタ)アクリル系重合体(以下、A1成分という場合がある。)と、架橋性ケイ素基を有する数平均分子量15,000以上のオキシアルキレン系重合体(以下、A2成分という場合がある。)とを併用できる。本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を硬化して得られるシーリング材が、加熱後のモジュラスの変化率を低くし、加熱後の伸長率を大きくする観点から、A1成分は、A1成分とA2成分との合計量に対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレン系重合体において架橋性ケイ素基の含有量を適度に低下させると、硬化物における架橋密度が低下するので、初期においてより柔軟な硬化物になり、モジュラス特性が小さくなると共に破断時伸び特性が大きくなる。ポリオキシアルキレン系重合体において架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2個以上2.8個以下存在することが好ましく、1.3個以上2.6個以下存在することがより好ましく、1.4個以上2.4個以下存在することが更に好ましい。分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が1個未満になると硬化性が不十分になり、また多すぎると網目構造があまりに密になるため良好な機械特性を示さなくなる。そして、主鎖骨格が直鎖である2官能の重合体の場合、当該重合体の架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2個以上1.9個未満存在することが好ましく、1.25個以上1.8個以下存在することがより好ましく、1.3個以上1.7個未満存在することが更に好ましい。また、特に、フタル酸エステル系可塑剤のような分子量800以下、更には分子量1000以下の低分子量の可塑剤を含有しない、いわゆる無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合には、架橋性ケイ素基は重合体1分子中に平均して1.2個以上1.8個以下、更に好ましくは1.3個以上1.7個以下存在することが好ましい。
【0025】
架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体は直鎖状でも分岐を有してもよい。引張モジュラスを小さくする観点からは、架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体は直鎖状の重合体が好ましい。特に、無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合、直鎖状であることが好ましい。また、架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2以下、特には1.6以下が好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、例えば、複金属シアン化物錯体触媒による重合法等が挙げられるが、特に限定されない。複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0027】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体との反応から得られる成分を挙げることができる。
【0028】
分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を有する官能基、並びに架橋性ケイ素基を反応させることで、ポリオキシアルキレン系重合体へ架橋性ケイ素基を導入できる(以下、高分子反応法という)
【0029】
高分子反応法の例として、不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体に架橋性ケイ素基を有するヒドロシランや、架橋性ケイ素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得る方法を挙げることができる。不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0030】
また、高分子反応法の他の例として、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基、並びに架橋性ケイ素基とを反応させる方法や、末端にイソシアネート基を有するポリオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基、並びに架橋性ケイ素基とを反応させる方法を挙げることができる。イソシアネート化合物を用いると、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を容易に得ることができる。
【0031】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、各種のモノマーを用いることができる。例えば、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー;脂環式(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;芳香族(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸の誘導体;フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共に、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。また、単量体単位(以下、他の単量体単位とも称する)として、これら以外にアクリル酸、グリシジルアクリレートを含有してもよい。
【0034】
これらは、単独で用いても、複数を共重合させてもよい。生成物の物性等の観点からは、(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。また、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを用い、必要に応じて他の(メタ)アクリル酸モノマーを併用した(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましい。更に、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを併用することで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体中のケイ素基の数を制御できる。接着性が良いことからメタクリル酸エステルモノマーからなるメタクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。また、低粘度化、柔軟性の付与、粘着性の付与をする場合、アクリル酸エステルモノマーを適宜用いることが好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、例えば、ラジカル重合反応を用いたラジカル重合法を用いることができる。ラジカル重合法としては、重合開始剤を用いて所定の単量体単位を共重合させるラジカル重合法(フリーラジカル重合法)や、末端等の制御された位置に反応性シリル基を導入できる制御ラジカル重合法が挙げられる。ただし、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いるフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなる。したがって、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る場合には、制御ラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0036】
制御ラジカル重合法としては、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法やリビングラジカル重合法が挙げられる。付加-開裂移動反応(ReversibleAddition-FragmentationchainTransfer;RAFT)重合法、遷移金属錯体を用いたラジカル重合法(Transition-Metal-MediatedLivingRadicalPolymerization)、原子移動ラジカル重合法(Atom-Transfer-Radical-Polymerization;ATRP)等の等のリビングラジカル重合法を採用することが好ましい。また、反応性シリル基を有するチオール化合物を用いた反応や、反応性シリル基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いた反応も好ましい。
【0037】
これらの架橋性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。具体的には、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、並びに架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される2種以上をブレンドした有機重合体も用いることができる。特に、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体が優れた特性を有する。本発明に係るシーリング材組成物に適用すると、最大荷重時の伸長率、及び接着力を高めることができる。
【0038】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体の製造方法としては、様々な方法が挙げられる。例えば、架橋性ケイ素基を有し、分子鎖が実質的に、一般式(3):
-CH-C(R)(COOR)- ・・・(3)
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数が1~5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、一般式(4):
-CH-C(R)(COOR)- ・・・(4)
(式中、Rは前記に同じ、Rは炭素数が6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法が挙げられる。
【0039】
一般式(3)のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数が1~5、好ましくは炭素数が1~4、更に好ましくは炭素数が1~2のアルキル基が挙げられる。なお、Rのアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0040】
一般式(4)のRとしては、例えば、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数が6以上、通常は炭素数が7~30、好ましくは炭素数が8~20の長鎖のアルキル基が挙げられる。なお、Rのアルキル基はRの場合と同様、単独でも2種以上混合してもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子鎖は実質的に式(3)及び式(4)の単量体単位からなる。ここで、「実質的に」とは、共重合体中に存在する式(3)及び式(4)の単量体単位の合計が50質量%を越えることを意味する。式(3)及び式(4)の単量体単位の合計は好ましくは70質量%以上である。また式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位との存在比は、質量比で95:5~40:60が好ましく、90:10~60:40が更に好ましい。
【0042】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体の製造方法に用いられる架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体として、例えば、架橋性ケイ素基を有し、分子鎖が実質的に(1)炭素数が1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(2)炭素数が10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とを含有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体も用いることができる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃未満の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がアクリル酸ブチル単量体単位から主として構成される場合、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、35,000以上が更に好ましく、40,000以上が特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以上の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がメタクリル酸メチル単量体単位から主として構成される場合、数平均分子量は、600以上10,000以下が好ましく、600以上5,000以下がより好ましく、1,000以上4,500以下が更に好ましい。数平均分子量をこの範囲とすることにより、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が向上する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との配合比には特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃未満の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がアクリル酸ブチル単量体単位から主として構成される場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が30質量部以上90質量部以下の範囲内であることが好ましく、40質量部以上80質量部以下の範囲内であることがより好ましく、50質量部以上70質量部以下の範囲内であることが更に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が90質量部より多いと粘度が高くなり、作業性が悪化するため好ましくない。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以上の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がメタクリル酸メチル単量体単位から主として構成される場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が10質量部以上60質量部以下の範囲内であることが好ましく、20質量部以上50質量部以下の範囲内がより好ましく、25質量部以上45質量部以下の範囲内が更に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が60質量部より多いと粘度が高くなり、作業性が悪化するため好ましくない。
【0044】
更に、本発明においては架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とをブレンドした有機重合体も用いることができる。架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をブレンドして得られる有機重合体の製造方法としては、他にも、架橋性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する方法を利用できる。
【0045】
(B成分:無機多孔質性膨張体)
(B)無機多孔質性膨張体は、一例として、硝子廃材を用い、これを加熱膨張させて得ることができ、平均粒子サイズが0.5mmを超え2mm以下の無機多孔質性膨張体である。(B)無機多孔質性膨張体は、シーリング材が壁材であるサイディング材の表面テクスチャーの外観と調和することに加え、十分な強度を有しており、比較的大きいサイズの粒子を用いてもシーリング材組成物の硬化物について経時での物性低下を抑えることができる。透明な粒子(ガラスビーズ等)を用いた場合、明るい場所での外観が変化する(暗くなる)ため、壁材であるサイディング材との外観が調和せず好ましくない。無機多孔質性膨張体は、耐熱性、耐候性、耐久性に優れており、また、表面が多孔質であるので、投錨効果により(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体との付着性が良好である。
【0046】
無機多孔質性膨張体としては、例えば、市販品である、ProductSpecificationForPoraverGermany製(商品名:Poraver)を用いることができる。粒子サイズ(ただし、金属製網ふるいを用いてふるい分けにより得られる範囲値である。)としては、以下の種類が存在する。
【0047】
0.1mm~0.3mm(粒子密度0.66、平均粒子サイズ0.2mm)
0.3mm~0.5mm(粒子密度0.52、平均粒子サイズ0.4mm)
0.5mm~1mm(粒子密度0.43、平均粒子サイズ0.75mm)
1mm~2mm(粒子密度0.34、平均粒子サイズ1.5mm)
2mm~4mm(粒子密度0.32、平均粒子サイズ3mm)
4mm~8mm(粒子密度0.61、平均粒子サイズ6mm)
【0048】
なお、平均粒子サイズは、下記式を用いて算出され、粒子密度は浸液としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いた液浸法により算出される値である。
【0049】
[平均粒子サイズ]=([最小粒子サイズ]+[最大粒子サイズ])÷2
【0050】
本発明においては、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の基本性能(最大荷重時の伸び、汚れ防止等)を損なわずに、割石調、石肌調、石目調等の自然石調の表面テクスチャーを有し高級感を有するサイディング材と、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物との一体感ある外観を構成する観点から、(B)無機多孔質性膨張体の平均粒子サイズは、0.5mmを超え2mm以下の範囲が好ましい。平均粒子サイズが0.5mm以下では自然石調のサイディング材との一体感が出にくく、平均粒子サイズが2mmを超えると、シーリング材としての基本性能が悪化する場合がある。そして、平均粒子サイズは、0.5mmを超え1.0mm以下の範囲がより好ましく、0.7mm以上0.9mm以下の範囲が更に好ましい。
【0051】
(C成分:(B)無機多孔質性膨張体よりも平均粒子サイズが小さい無機多孔質性膨張体)
本発明においては、(C)成分として、(B)成分よりも平均粒子サイズが小さい無機多孔質性膨張体を更に添加することもできる。例えば、上記の平均粒子サイズの(B)無機多孔質性膨張体に、0.2mm以上0.5mm以下の平均粒子サイズの無機多孔質性膨張体(以下、「小サイズ無機多孔質性膨張体」と称する。)を併用できる。小サイズ無機多孔質性膨張体を併用するとサイディング材との一体感がより向上する。小サイズ無機多孔質性膨張体の平均粒子サイズは、0.3mm以上0.5mm以下の範囲が好ましく、0.35mm以上0.5mm以下の範囲がより好ましい。
【0052】
本発明に係る(B)無機多孔質性膨張体を用いない場合、例えば、従来のバルーンのみを用いたシーリング材組成物の硬化物の表面はざらざらした表面テクスチャーを呈する一方で(リシン調の表面の場合、塗布面の表面にしかバルーンは存在しない)、本発明に係る(B)無機多孔質性膨張体を用いると、本発明のシーリング材組成物の硬化物の表面テクスチャーが自然石・天然石調と調和し得る表面形状を形成する(本発明のシーリング材組成物中にB成分が埋まった状態になっていることも影響している。)。つまり、(B)無機多孔質性膨張体は明瞭な凹凸を硬化物の表面に生じさせるので(組成物内部にも含有されていることから、より凹凸が際立たされる)、硬化物の表面を自然石調の表面テクスチャーと調和させることができる。
【0053】
(B)無機多孔質性膨張体の配合量は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に対して2vol%以上15vol%以下の範囲の容積濃度であると自然石調の表面テクスチャーと調和し得る表面形状を呈することから好ましい。2vol%未満では自然石調のサイディング材との一体感が発揮されず、15vol%を超える容積濃度では、基本性能(最大荷重時の伸び率)を損なう。容積濃度は、2.5vol%以上10vol%以下の範囲がより好ましい。また、小サイズ無機多孔質性膨張体の配合量は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物に対して1vol%以上10vol%以下の範囲の容積濃度であることが好ましく、1.5vol%以上8vol%以下がより好ましい。
【0054】
なお、容積濃度は以下の式を用いて算出される。
【0055】
容積濃度(vol%)=100×無機多孔質性膨張体(小サイズ無機多孔質性膨張体)の体積/(無機多孔質性膨張体(小サイズ無機多孔質性膨張体)の体積+シーリングの体積)
【0056】
(D成分:脂肪族アミン化合物)
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材は、硬化物を艶消し状にすることを目的として、(D)融点が30℃以上140℃以下の脂肪族アミン化合物を含有する。硬化物が艶消し状でない場合、サイディング材間の隙間にシーリング材を充填して構成される目地が目立ってしまい、自然石調の表面テクスチャーと調和させることが困難となる。
【0057】
本発明に係る(D)脂肪族アミン化合物は、融点が30℃以上140℃以下の脂肪族アミン化合物である。融点が30℃未満であると得られるシーリング材組成物から脂肪族アミン化合物が染み出しやすくなり、シーリング材として用いる場合に基材を汚染させ、汚れの原因となる。また、融点が140℃を超えると(A)成分との混合が難しくなり、混合時に高温による溶融又は多量の溶剤が必要となるので、上記範囲であることを要する。
【0058】
(D)融点が30℃以上140℃以下である脂肪族アミン化合物の含有量は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下の範囲である。含有量が0.1質量部未満である場合、艶消し効果が得られず、20質量部を超えると接着性が悪くなるので、上記範囲であることを要する。
【0059】
(D)融点が30℃以上140℃以下である脂肪族アミン化合物としては、例えば、ラウリルアミン(融点25℃)、ステアリルアミン(融点50℃)等の一分子中に1個のアミノ基を有する化合物;CH(CH17NH(CHNH(融点48℃)、トリベンジルアミン(融点90℃)、ジフェニルアミン(融点53℃)、m-フェニレンジアミン(融点63℃)、m-フェニレンジアミン(融点63℃)等の一分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物等が挙げられる。特に、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-ステアリルプロピレンジアミン等の脂肪族アミンがより艶消し効果が大きく好ましい。
【0060】
融点30℃以上の脂肪族第1級アミンと融点30℃以上の脂肪族第2級アミンとの混合物は艶消し効果がより大きく好ましい。融点30℃以上の脂肪族第1級アミンは、シーリング材内部から表層への移行速度が速いため、屋外暴露後の表面汚染防止効果に優れている。融点30℃以上の脂肪族第1級アミンと、融点30℃以上の脂肪族第2級アミンとを併用すると、シーリング材の施工直後から融点30℃以上の脂肪族第1級アミンが表面に移行して比較的短期の表面汚染防止効果を発揮し、その後、融点30℃以上の脂肪族第2級アミンが表面に移行して、長期間にわたり艶消し効果が持続する。また、特開2008-291159号公報記載の微粉体コーティングアミンも好適に用いることができる。
【0061】
なお、水と反応して上記アミン化合物を生成する化合物を用いることもできる。具体的には、原料入手の容易性、貯蔵安定性、水との反応性等の観点から、アミン化合物のケチミン化合物、エナミン化合物、及び/又はアルジミン化合物が挙げられる。これらのケチミン化合物、エナミン化合物、アルジミン化合物はそれぞれ、ケトン類若しくはアルデヒド類とアミン化合物との脱水反応により得ることができる。
【0062】
このケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、4-メチル-2-ペンタノン等の脂肪族ケトン類;ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類;シクロヘキサノン等の環状ケトン類、アセト酢酸エチル等のβ-ジカルボニル化合物等が挙げられる。また、アルデヒド類としては、例えば、イソブチルアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。前記と同様の観点から、これらのうち4-メチル-2-ペンタノンが好ましい。また、上記アミン化合物は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0063】
(E成分:鱗片状物質)
本発明に係る(E)鱗片状の物質(鱗片状物質)は、平均直径が0.1mm以上4.0mm以下程度の鱗片状物質である。(E)鱗片状物質を0.05vol%以上0.9vol%以下の容積濃度で用いると、着色された砂が混入された自然石調のサイディング材との一体感がある表面テクスチャーを有するシーリング材を実現できる。すなわち、(E)鱗片状物質を添加することにより、硬化物の表面テクスチャーを、砂のような色や模様のテクスチャーを呈するようにすることができる。
【0064】
ここで、容積濃度が0.05vol%未満では、着色された砂が混入された効果が発揮されない。また、鱗片状物質の容積濃度が0.9vol%を超えると、不自然な表面テクスチャーになり、自然石調のサイディング材との一体感が発揮されなくなる。
【0065】
(E)鱗片状物質は、平均直径が0.1mm以上4.0mm以下程度であり、外壁の材質、模様等に合わせて適切な大きさの物質を採用できる。なお、(E)鱗片状物質の場合、鱗片状物質の厚さは、直径の1/10~1/5程度(0.01~1.00mm程度)とされる。(E)鱗片状物質は、平均直径が0.1mm以上3.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上2.0mm以下が更に好ましい。
【0066】
(E)鱗片状物質は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下程度、配合される。配合量は、個々の鱗片状物質の大きさ、外壁の材質、模様等によって、適宜、選定される。
【0067】
(E)鱗片状物質としては、例えば、ケイ砂、マイカ(真比重2.9)等の天然物、合成ゴム、合成樹脂、アルミナ等の無機物が挙げられる。サイディング材間の目地部分に充填した場合における意匠性を向上させる観点から、外壁の材質、模様等に合わせて、適当な色に着色することができる。これらの(E)鱗片状物質の中では、着色マイカが好ましい。また、鱗片状物質は0.05vol%以上0.9vol%以下で配合されることがより好ましく、0.1vol%以上0.6vol%以下で配合されることが更に好ましい。
【0068】
(その他の配合物質)
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(D)成分と、必要に応じて添加される(C)成分や(E)成分に加え、他の微小中空粒子、単官能エポキシ化合物、ケチミン化したアミノシラン化合物、多官能エポキシ樹脂、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物、ケチミン化したアミノシラン化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤、可塑剤、充填剤、シラノール縮合触媒、シランカップリング剤、希釈剤、脱水剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、発泡剤等を更に添加してもよい。
【0069】
(微小中空粒子)
本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、(B)無機多孔質性膨張体とは異なる性質を有する微小中空粒子を添加してもよい。微小中空粒子は、軽量化、低コスト化を図る観点から補強性の充填材と併用できる。
【0070】
このような微小中空粒子(以下、「バルーン」という場合がある。)は、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm以下である微小中空体を用いることが好ましい。
【0071】
無機系のバルーンとしては、ケイ酸系バルーンと非ケイ酸系バルーンとが挙げられる。ケイ酸系バルーンとしては、例えば、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン等が挙げられる。また、非ケイ酸系バルーンとしては、例えば、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等が挙げられる。これらの無機系バルーンの具体例として、シラスバルーンとしてイヂチ化成製のウインライト、三機工業製のサンキライト、ガラスバルーンとして住友スリーエム製のセルスターZ-28、EMERSON&CUMING製のMICRO BALLOON、PITTSBURGE CORNING製のCELAMIC GLASSMODULES、3M製のGLASS BUBBLES、シリカバルーンとして旭硝子製のQ-CEL、太平洋セメント製のE-SPHERES、フライアッシュバルーンとして、PFAMARKETING製のCEROSPHERES、FILLITE U.S.A製のFILLITE、アルミナバルーンとして昭和電工製のBW、ジルコニアバルーンとしてZIRCOA製のHOLLOW ZIRCONIUM SPHEES、カーボンバルーンとして呉羽化学製クレカスフェア、GENERAL TECHNOLOGIES製カーボスフェア等が挙げられる。
【0072】
有機系のバルーンとしては、熱硬化性樹脂のバルーンと熱可塑性樹脂のバルーンとが挙げられる。熱硬化性のバルーンとしては、例えば、フェノールバルーン、エポキシバルーン、尿素バルーンが挙げられる。また、熱可塑性バルーンとしては、例えば、サランバルーン、ポリスチレンバルーン、ポリメタクリレートバルーン、ポリビニルアルコールバルーン、スチレン-アクリル系バルーン等が挙げられる。また、架橋した熱可塑性樹脂のバルーンを用いることもできる。ここで、バルーンは、発泡後のバルーンでも良く、発泡剤を含む化合物を配合後に発泡させてバルーンとしても良い。
【0073】
これらの有機系バルーンの具体例として、フェノールバルーンとしてユニオンカーバイド製のUCAR及びPHENOLIC MICROBALLOONS、エポキシバルーンとしてEMERSON&CUMING製のECCOSPHERES、尿素バルーンとしてEMERSON&CUMING製のECCOSPHERES VF-O、サランバルーンとしてDOW CHEMICAL製のSARAN MICROSPHERES、AKZO NOBEL製のエクスパンセル、松本油脂製薬製のマツモトマイクロスフェア、ポリスチレンバルーンとしてARCO POLYMERS製のDYLITE EXPANDABLE POLYSTYRENE、BASF WYANDOTE製のEXPANDABLE POLYSTYRENE BEADS、架橋型スチレン-アクリル酸バルーンとして日本合成ゴム製のSX863(P)等が挙げられる。
【0074】
これらのバルーンは単独で用いることも、2種類以上を混合して用いることもできる。更に、分散性及び配合物の作業性を改良することを目的として、これらバルーンの表面に、脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等を用いて表面処理を施して用いてもよい。
【0075】
バルーンの含有量は、特に限定されないが、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.1~30質量部の範囲で用いることがより好ましい。0.1質量部未満では軽量化の効果が小さく、50質量部以上では一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められる場合がある。またバルーンの比重が0.1以上の場合は3~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。
【0076】
(単官能エポキシ化合物)
本発明に係るシーリング材組成物は、本発明に係るシーリング材の効果を阻害しない範囲で、分子中に1個のエポキシ基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物(以下、単官能エポキシ化合物ともいう)を含有してもよい。単官能エポキシ化合物としては、アルキルモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、直鎖アルコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のグリシジルエーテル、グリシジルエステル若しくはこれらの混合物、1,2エポキシドデカン、スチレンオキシド等のエポキシ炭化水素若しくはこれらの混合物、シクロヘキサンオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメタノール、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル等の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。これらの中では、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0077】
単官能エポキシ化合物の使用量は、(A)成分の架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対し、1~100質量部の範囲である。
【0078】
ここで、分子中に1個のエポキシ基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物を添加すると、硬化物の柔軟性を改善できると共に、水中に浸漬後や熱暴露後に伸び特性の低下を防止できる。本発明に係るシーリング材組成物は、サイディング用シーリング材規格に準拠して測定される試験温度23℃における初期の50%引張モジュラスを0.2N/mm未満にすることができる。単官能エポキシ化合物としては、架橋性ケイ素基を有しないことが要求される。架橋性ケイ素基を有する場合、架橋性ケイ素基が(A)成分の重合体と架橋反応を起こすので、柔軟性を改善することが困難になり得る。
【0079】
(ケチミン化したアミノシラン化合物)
本発明に係るシーリング材組成物は、本発明に係るシーリング材の効果を阻害しない範囲で、水と反応して、1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミン化合物を生成するアルコキシシラン化合物(ケチミン化したアミノシラン化合物)を含有してもよい。アルコキシシリル基は、ケイ素原子にアルコキシ基が結合したケイ素原子含有基である。係る化合物としては、アルコキシシリル基を有するアミン化合物(以下、アミノシラン化合物ともいう)のアミノ基をカルボニル化合物でケチミン化等した化合物を挙げることができる。ケチミン化するアミノシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
また、カルボニル化合物としては、後述する架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物の欄で説明するカルボニル化合物を用いることができる。ケチミン中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルエステル等と反応させてもよい。
【0081】
アミノ基をケチミン化した化合物等を用いると、組成物の保存中にエポキシ樹脂と反応しないので、一成分型組成物にすることができる。ケチミン化したアミノシラン化合物は接着性付与剤として作用し、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化触媒としても作用する。ケチミン化したアミノシラン化合物は、2種以上併用して用いることもできる。
【0082】
ケチミン化したアミノシラン化合物の使用量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲で添加でき、1~10質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0083】
(多官能エポキシ樹脂)
本発明に係るシーリング材組成物は、本発明に係るシーリング材の効果を阻害しない範囲で、多官能エポキシ樹脂を含有してもよい。多官能エポキシ樹脂としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である様々なエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン-ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン-ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、pオキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、mアミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,Nジグリシジルアニリン、N,Nジグリシジル-oトルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリン等の多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂等の不飽和重合体のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中では特に下記式(5)で示されるエポキシ基を少なくとも分子中に2個含有する化合物が、硬化時の反応性が高く、また、硬化物が3次元的網目を形成しやすい等の観点から好ましい。
【0084】
【化2】
【0085】
また、多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂類、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂類、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂類、ノボラック型エポキシ樹脂等の芳香環を有するエポキシ樹脂類が更に好ましい。このような芳香環を有するエポキシ樹脂類の中でも、基材への密着性の観点からは、芳香環を有するエポキシ樹脂類であって、柔軟性を付与するセグメントであるオキシアルキレン鎖を有しない化合物が特に好ましい。更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂類が最も好ましく、特にオキシアルキレン鎖を有しないビスフェノールA型エポキシ樹脂類が好ましい。分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物は、架橋性ケイ素基を有する有機重合体、特に架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の接着性を向上させる機能を有する。エポキシ樹脂は常温で液状であることが好ましい。また、エポキシ樹脂の分子量は500以下であることが好ましい。
【0086】
多官能エポキシ樹脂の配合量は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対し、1~50質量部の範囲である。1質量部未満になると、シーリング材組成物の硬化物の接着性が不十分になり、50質量部を超えると、シーリング材組成物の硬化物の可撓性が不十分になる。好ましい範囲は1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下、更に好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0087】
(ケチミン)
本発明に係るシーリング材組成物は、本発明に係るシーリング材組成物の効果を阻害しない範囲で、分子中にケチミン基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物(以下、ケチミン、若しくはケチミン化合物ともいう)、すなわち、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物を含有してもよい。架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物をシーリング材組成物に添加することで、シーリング材組成物の硬化物のモジュラスの変化率を低くできる。すなわち、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物をシーリング材組成物に添加することで、シーリング材組成物の硬化物を熱暴露した後であってもモジュラスが所定値以上になることを抑制し、柔軟性を保つことができると共に、水浸漬や熱暴露後における破断時伸びの低下を抑制できる。
【0088】
ケチミンは、水分のない状態では安定に存在し、水分によって一級アミンとケトンに分解され、生じた一級アミンがシラノール縮合触媒として作用する。その後、エポキシ樹脂と反応することにより、シラノール縮合触媒作用が失効し、硬化物を熱暴露した後も低モジュラスのままで保持できる。また、ケチミンを用いると組成物の保存中にエポキシ樹脂と反応しないので一成分型組成物にすることができる。このようなケチミンは、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得ることができる。
【0089】
ケチミンの合成には様々なアミン化合物、及びカルボニル化合物を用いることができる。アミン化合物としては、例えば、2ーエチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、iーステアリルアミン等のモノアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン;1,2,3-トリアミノプロパン、テトラ(アミノメチル)メタン等の多価アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシアルキレン系ポリアミン等を用いることができる。
【0090】
また、カルボニル化合物としては、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;シクロヘキサノン等の環状ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のβジカルボニル化合物等を用いることができる。ケチミン中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルエステル等と反応させてもよい。
【0091】
シーリング材組成物の硬化物を柔軟に保つことを目的として、モノアミンとカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミン化モノアミン、又はジアミンとカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミン化ジアミンを用いることが好ましく、ケチミン化モノアミンを用いることがより好ましい。これらのケチミンは、単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。また、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物の配合量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲で用いることができ、1~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0092】
(ケチミン化したアミノシラン化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤)
ケチミン化したアミノシラン化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤としては、様々なエポキシ樹脂硬化剤を一種、又は複数種選択して用いることができる。係るエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン類、酸無水物類、イミダゾール類やその他の硬化剤を挙げることができる。ただし、活性が強い硬化剤は室温でエポキシ樹脂を硬化させ、一成分型組成物にすることが困難な場合があるので、本発明に係るシーリング材組成物の目的が達成される範囲で用いることが好ましい。
【0093】
(可塑剤)
可塑剤としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;グリコールエステル類;脂肪族エステル類;リン酸エステル類;ポリエステル系可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;炭化水素系可塑剤類;塩素化パラフィン類;低分子量のアクリル酸エステル重合体等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0094】
可塑剤を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、10~300質量部を用いることができ、20~250質量部の範囲で用いることが好ましい。可塑剤の使用量が10質量部未満の場合には組成物の粘度が高くなりすぎる場合があり、また、使用量が300質量部を越える場合は硬化物からの可塑剤の染み出し等が生じる場合があるため好ましくない。本発明に係るシーリング材組成物は、フタル酸エステル系可塑剤のような分子量800以下、更には分子量1,000以下の低分子量の可塑剤を含有しない、無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合に特に有用である。
【0095】
(充填剤)
充填剤としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、及びカーボンブラック等の補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、硬化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン等の充填剤;石綿、ガラス繊維、及びフィラメント等の繊維状充填剤等を用いることができる。
【0096】
これらの充填剤の添加により強度の高い硬化物を製造する場合は、主としてフュームドシリカ、及びカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム等から選択される充填剤を用いることが好ましい。また、低強度で高伸びの硬化物を製造する場合は、主として酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びシラスバルーン等から選択される充填剤を用いることが好ましい。これらの充填剤は単独で用いても、2種類以上を混合してもよい。
【0097】
充填剤を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、1~300質量部の範囲で用いることができ、5~300質量部の範囲で用いることが好ましく、5~250質量部の範囲で用いることが更に好ましい。
【0098】
(シラノール縮合触媒)
シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の有機錫化合物:カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄等のカルボン酸金属塩:脂肪族アミン類、芳香族アミン類、DBU等のアミジン類、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、ビグアニド類等のアミン化合物:バーサチック酸等のカルボン酸:ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)等のチタン化合物、アルミニウム化合物類等のアルコキシ金属:無機酸:三フッ化ホウ素エチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素錯体:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等の金属キレート化合物等が挙げられる。これらの中では有機錫化合物が好ましい。シラノール縮合触媒は、(A)成分の架橋性ケイ素基含有有機重合体の硬化触媒として作用する。シラノール縮合触媒を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲で用いることができ、0.2~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0099】
(シランカップリング剤)
本発明に係るシーリング材組成物は、更にシランカップリング剤を含有することもできる。本発明に係るシーリング材組成物は、シランカップリング剤を配合することにより、金属、プラスチック、ガラス等、全般的な被着体に対する接着性を向上させることができる。
【0100】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基含有シラン類;ビニル型不飽和基含有シラン類;塩素原子含有シラン類;イソシアネート含有シラン類;アルキルシラン類;フェニル基含有シラン類;イソシアヌレート基含有シラン類等が挙げられるが、これらに限定されない。また、アミノ基含有シラン類と上記のシラン類を含むエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物とを反応させて、アミノ基を変性した変性アミノ基含有シラン類を用いてもよい。
【0101】
シランカップリング剤の配合割合は、例えば、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.2~20質量部が好ましく、0.3~15質量部がより好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。これらシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
(希釈剤)
本発明に係るシーリング材組成物は、希釈剤を更に含有することが好ましい。希釈剤を含有することにより、粘度等の物性を調整できる。希釈剤としては、様々な希釈剤を用いることができる。希釈剤としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤、リニアレンダイマー(出光興産株式会社商品名)等のα-オレフィン誘導体、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、クエン酸アセチルトリエチル等のクエン酸エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の各種溶剤が挙げられる。
【0103】
得られるシーリング材組成物の安全性を考慮する場合、シーリング材組成物の引火点が高い方が望ましく、シーリング材組成物からの揮発物質が少ない方が好ましい。したがって、希釈剤の引火点は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。2種類以上の希釈剤を混合する場合、混合した希釈剤の引火点が70℃以上であることが好ましい。しかし、一般的に引火点が高い希釈剤はシーリング材組成物に対する希釈効果が低くなる傾向があるので、引火点が250℃以下である希釈剤を用いることが好ましい。
【0104】
本発明に係るシーリング材組成物の安全性、希釈効果の双方を考慮する場合、希釈剤としては、飽和炭化水素系溶剤が好ましく、ノルマルパラフィン、イソパラフィンがより好ましい。ノルマルパラフィン、イソパラフィンの炭素数は10~16であることが好ましい。
【0105】
希釈剤の配合割合は、(A)有機重合体100質量部に対して、0~50質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1~30質量部の範囲で配合することがより好ましく、0.1~15質量部の範囲で配合することが更に好ましい。希釈剤は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0106】
(脱水剤)
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシラン化合物;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のエステル化合物等を挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。なお、脱水剤としては、ビニルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0107】
脱水剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5~20質量部の範囲で配合することが好ましく、1~15質量部の範囲で配合することがより好ましい。シーリング材組成物中における脱水剤の含有量が低過ぎると、脱水剤により得られる効果が十分ではない場合がある。また、シーリング材組成物中における脱水剤の含有量が高過ぎると、シーリング材組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0108】
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物は、加熱後の柔軟性(低モジュラス)に優れることから、シーリング材、特に建築物等のサイディングボード用シーリング材として用いることができる。また、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物は、窓枠、ドア枠等の枠部材や、軒天等と壁材との境界部のシール等に用いることもできる。
【0109】
図1は、リシン調の壁面を示す図であり、図2は、目地模様がない自然石調の壁面を示す図である。また、図3は、目地模様があるサイディングボードの概要の一例を示す図である。
【0110】
図1に示すリシン調の壁面を有するサイディング材とは異なり、図2に示すサイディング材は、自然石調(天然石調)の比較的凹凸が明確な表面テクスチャーを有し、高級感を有している。また、図3に示すように目地模様があるサイディングボード(サイディング材)においては、サイディング材の溝部15(つまり、サイディング材の目地溝)によりサイディング材に目地構造が形成される。例えば、自然石調の表面テクスチャーを有するサイディング材は、図3に示すように、表面に複数の突条部10と複数の溝部15とを配置することで割砕模様20を呈する表面テクスチャーを有する。また、図3に示すように、突条部10の縁部に直線部22、湾曲部24、及び屈曲部26からなる群から選択される少なくとも1つの形状を形成することで、サイディング材の溝部15の形状を様々な形状に変化させることができる。
【0111】
これらの表面テクスチャー及び/又は目地構造の外観と、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物の表面とは、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物が(B)成分を含有していることから、自然石調の表面テクスチャーと一体感のある外観になる。そして、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物が(E)成分を更に含有することで、自然石調の表面テクスチャーとより一体感のある外観を実現することができる。したがって、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物は、その基本性能(最大荷重時の伸び、汚れ防止等)を損なうことなく、自然石調の表面テクスチャーを有するサイディング材と一体感のある外観を呈することとなる。そして、本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を壁材間の目地部分に充填することで、目地部分に本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物が充填され、目地部分と壁材表面との一体感のある壁を得ることができる。
【0112】
(実施の形態の効果)
本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、(B)無機多孔質性膨張体を含有しているので、シーリング材組成物の硬化物の表面を自然石の表面テクスチャーに類似する凹凸を有する表面にすることができる。本発明の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物によるこの凹凸は、砂まき調塗料(リシン塗料)を用いた場合における砂壁状模様のような微細な粒状の表面テクスチャーとは異なり、より自然石や天然石の表面形状に近い凹凸が明確な表面テクスチャーである。これにより、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物によれば、自然石の表面テクスチャー(岩肌のような表面テクスチャー)を模した壁材としてのサイディング材との一体感を発揮させることができる。
【0113】
また、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物は、(E)鱗片状物質を更に含有することができるので、堆積岩等の自然石中に存在する黒色の粒子を模した表面テクスチャーを実現することができ、かつ、(B)無機多孔質性膨張体の存在と相まって、より凹凸を際立たせた表面テクスチャーを実現することができる。特に、所定の直径を有する(E)鱗片状物質を用いた場合、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物中に少なくとも一部の(E)鱗片状物質が埋没し、他の(E)鱗片状物質が組成物の表面付近に浮き出る状態になるので、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物の表面を自然石の表面テクスチャーにより近づけることができる。これにより、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物によれば、自然石を模した壁材としてのサイディング材の表面テクスチャーとの一体感を発揮させることができる。
【実施例
【0114】
以下、本発明に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物について、実施例を用いて詳細に説明する。
【0115】
(合成例1:数平均分子量15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体(A1成分))
アクリル酸ブチル62.7重量%、アクリル酸エチル18.3重量%、アクリル酸ステアリル19.0重量%、開始剤としてジエチル2,5-ジブロモアジペート及びα―ブロモ酪酸エチル、重合触媒として臭化第一銅及びペンタメチルジエチレントリアミン、ジエン化剤として1,7-オクタジエン、シリル剤としてメチルジメトキシシランを用い、特開2010-11644号公報の製造例1の方法に準じた原子移動ラジカル重合法(ATRP)で反応させ、両末端にメチルジメトキシシリル基を有し、平均して1分子中に1.8個の架橋性ケイ素基を有するポリスチレン換算の数平均分子量45,000のポリアクリル骨格の有機重合体(A1成分)を得た。
【0116】
(合成例2:数平均分子量15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体(A2成分))
プロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート-グライム錯体触媒の存在下プロピレンオキサイドを反応させ数平均分子量29,000の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体にNaOCHのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。脱塩精製処理後、ヒドロシリル化合物であるメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下反応させ、末端にメチルジメトキシシリル基を有し、平均して1分子中に1.8個の架橋性ケイ素基を有する数平均分子量29,000のポリオキシプロピレン骨格の有機重合体(A2成分)を得た。なお、数平均分子量は送液システムとして東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK-GELHタイプを用い、溶媒はTHFを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算分子量である。
【0117】
(合成例3:融点が30℃以上の脂肪族アミン化合物)
加熱装置及びエステル管付き攪拌容器に、加熱溶解したステアリルアミン(花王(株)製、ファーミン80、アミン価207)を500g入れた後、攪拌しながら4-メチル-2-ペンタノン(MW=100.2)を203g加えた。この中に更にトルエン130gを加えた後、加温して110~150℃で3時間攪拌を続け、エステル管により水29.9gを脱水した。次に減圧し、過剰の4-メチル-2-ペンタノン及びトルエンを除去して、ステアリルアミンのケチミン化化合物を得た。このケチミン化化合物は常温で半透明の液体であった。
【0118】
(シーリング材)
合成例1のA1成分50質量部、合成例2のA2成分50質量部、単官能エポキシ化合物(*1)20質量部、炭酸カルシウム(*2)100質量部及び、炭酸カルシウム(*3)100質量部、アクリル酸エステル重合体(*4)70質量部を仕込み、110℃で2時間、加熱減圧混合撹拌し、配合物質の脱水した。更に、シラン化合物(*5)3質量部、飽和炭化水素系溶剤(*6)10質量部、水と反応してアルコキシシリル基を有するアミン化合物を生成するアルコキシシラン化合物(*7)3質量部、シラノール縮合触媒としての有機錫化合物(*8)3質量部、及び合成例3のC成分(ステアリルアミンのケチミン化化合物)4質量部を混合し、シーリング材を調製した。なお、各成分の詳細は以下のとおりである。なお、シーリング材の比重は1.425であった。
【0119】
*1 エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザー E-PS)
*2 脂肪酸処理重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、MCコ-トS-1)
*3 脂肪酸処理コロイド炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、カルファイン500)
*4 無官能基アクリルポリマー、重量平均分子量2500(東亞合成(株)製、ARUFON UP-1110)
*5 ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM1003)
*6 ノルマルパラフィン〔主成分、n-ウンデカン〕(ジャパンエナジー(株)製、カクタスノルマルパラフィンN-11)
*7 γ-アミノプロピルトリメトキシシランをMIBKでケチミン化した化合物
*8 ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製、ネネオスタンU-220H)
【0120】
次に、表1に示す組成で各成分を混合し、実施例及び比較例に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を作製した。
【0121】
【表1】
【0122】
表1において各配合物質の配合量は質量部で示される。また、各配合物質の詳細は下記のとおりである。なお、表1のシーリング材は、上記で調製したシーリング材である。
【0123】
*9 無機多孔質性膨張体、ふるい分け粒子サイズ0.5~1.0mm(平均粒子サイズ0.75mm、粒比重0.43)、ProductSpecificationForPoraverGermany製、商品名:Poraver
*10 無機多孔質性膨張体、ふるい分け粒子サイズ0.3~0.5mm(平均粒子サイズ0.4mm、粒比重0.52)、ProductSpecificationForPoraverGermany製、商品名:Poraver
*11 無機多孔質性膨張体、ふるい分け粒子サイズ2~4mm(平均粒子サイズ3mm、粒比重0.32)、ProductSpecificationForPoraverGermany製、商品名:Poraver
*12 ガラスビーズ、ふるい分け粒子サイズ0.4~1.0mm(平均粒子サイズ0.7mm、ソーダ石灰ガラス、球形、比重2.5)、Potters-Ballotini(ポッターズ・バルティーニ)株式会社製、商品名:J-30
*13 着色マイカ(製品名:カラーフレーク、大阪マイカ工業(株)製、平均直径1mm、比重2.85)
*14 着色マイカ(製品名:カラーフレーク、大阪マイカ工業(株)製、平均直径5mm、比重2.85)
【0124】
なお、表1における容積濃度は、「容積濃度(vol%)=100×無機多孔質性膨張体の体積/(無機多孔質性膨張体の体積+シーリング材の体積)」の式を用いて算出した。例えば、参考例2において、2.0質量部の(B)無機多孔質性膨張体(平均粒子サイズ:0.75mm)を用いており、この無機多孔質性膨張体の粒比重は0.43である。また、シーリング材は100質量部用いており、シーリング材の比重は1.425である。この場合、参考例2のB成分の容積濃度は、(2.0質量部/0.43)/(2.0質量部/0.43+100質量部/1.425)×100=6.3vol%となる。
【0125】
(自然石調サイディング材との調和性試験[目地模様なしの場合])
厚さ25mmの目地模様なしの自然石調窯業系サイディング材を200mm×300mm角に切断し、その2枚をポリエチレンシートの上に10mmの間隔で平行に並べた。これにより生じる幅10mm×深さ25mm×長さ300mmの目地溝に15mm角のバックアップ材を入れ、参考例2に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を打設した。次に、20mm角のポリエチレン製のバックアップ材を用い表面をならして仕上げた。このようにして作製した各試験体について、シーリング材による目地が目立たず、自然石調窯業系サイディング材との一体感があるか否かを目視にて判定した。判定基準は以下のとおりである。また、参考例3~参考例4、実施例1~10、参考例1、比較例1~9についても同様に試験した。
【0126】
「◎」:一体感が極めて良好である。
「○」:一体感が良好である。
「△」:一体感がある。
「▲」:違和感がある。
「×」:明らかに違和感がある。
【0127】
(自然石調サイディング材との調和性試験[目地模様ありの場合])
厚さ25mmの目地模様がある自然石調窯業系サイディング材を、目地模様がシーリング材の目地溝に隣接するように200mm×300mm角に切断し、その2枚をポリエチレンシートの上に10mmの間隔で平行に並べた。これにより生じる幅10mm×深さ25mm×長さ300mmの目地に15mm角のバックアップ材を入れ、参考例2に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物をそれぞれ打設した。次に、20mm角のポリエチレン製のバックアップ材を用い表面をならして仕上げた。このようにして作製した各試験体について、シーリング材による目地が目立たず、自然石調窯業系サイディング材との一体感があるか否かを目視にて判定した。判定基準は上記と同一である。また、参考例3~参考例4、実施例1~10、参考例1、比較例1~9についても同様に試験した。
【0128】
(物性:最大荷重の伸び率試験:試験サンプルの作成)
サイディング用シーリング材規格に準拠して同規格の5.1.6に記載のI形試験体を作製した。すなわち、窯業系サイディングボードを縦50mm、横50mmの大きさに切断し、切断した窯業系サイディングボード2枚を間隔10mmで縦方向が相対するように固定した。隙間の下面に縦50mm、横10mm、厚さ6mmの発泡ポリエチレン製バックアップ材を置き、窯業系サイディングボードの表面をマスキングテープで覆った。そして、シーリング材と接触する領域にプライマー(セメダイン株式会社製のMP-1000)を塗布し、間隔10mmの隙間(目地)に参考例2に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を8mmの厚さに充填した後、マスキングテープを除去し、23℃50%RH環境下で28日間、養生し、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を硬化させた後、バックアップ材を取り外し、試験サンプルを作製した。また、参考例3~参考例4、実施例1~10、参考例1、比較例1~9についても同様に試験サンプルを作製した。
【0129】
(物性:最大荷重の伸び率試験:引張接着性測定法)
参考例2に係る試験サンプルを用い、サイディング用シーリング材規格に準拠して引張接着性試験を実施した(試験温度23℃)。養生終了後、23℃環境下において引張速度50mm/minで引張接着性試験を実施した。以下の基準に基づいて測定結果を評価した。また、参考例3~参考例4、実施例1~10、参考例1、比較例1~9についても同様に試験した。
【0130】
表1の参考例1(B成分、C成分、E成分を含有していない一液常温湿気硬化型シーリング材組成物)に対し、最大荷重時の伸び量が75%以上保持している場合を「○」、50~74%保持している場合を「△」、49%以下の場合を「×」とした。
【0131】
(汚れ防止性試験)
参考例2に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の汚れ防止性について、以下の方法で試験した。厚さ5mmのスレート板を用い、深さ5mm、幅25mm、長さ150mmの目地を作製し、その目地に一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を打設し、余分の一液常温湿気硬化型シーリング材組成物をヘラでかきとり、表面を平らにし、23℃、50%相対湿度で7日間養生し試験体を作製した。養生後の試験体の表面に黒色珪砂(粒径70~110μm)をふりかけ、直ちに試験体を裏返し、底面を手で軽く叩き、余分の黒色珪砂を落とした。表面に付着して残った黒色珪砂(汚れ)の状態を目視により観察し、養生後の汚れ防止性を判定した。また、参考例3~参考例4、実施例1~10、参考例1、比較例1~9についても同様に試験した。判断基準は以下のとおりである。
【0132】
「○」:黒色珪砂の付着がなくきれいな状態。
「△」:黒色珪砂が多少付着した状態。
「×」:黒色珪砂が多量に付着し黒く汚れた状態。
【0133】
表1を参照すると分かるように、すべての実施例において目地模様なしのサイディング材との調和性が良好であることが示された。また、目地模様があるサイディング材については、参考例2~3が多少、一体感が少ないものの、参考例4、実施例1~10においては一体感が良好であることが示された。更に、物性(最大荷重の伸び率)、及び汚れ防止性については、全ての実施例について良好な物性及び汚れ防止性を発揮することが示された。なお、実施例は、比較例1とはB成分の含有量が異なり、かつ、C成分を更に含む点で異なるところ、実施例においては、物性及び汚れ防止性が良好であるだけでなく、サイディング材との調和性が極めて優れていた。
【0134】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、及び本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0135】
10 突条部
15 溝部
20 割砕模様
22 直線部
24 湾曲部
26 屈曲部
図1
図2
図3