(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】パッドタイプ吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20220825BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220825BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220825BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61F13/47 300
A61F13/15 200
A61F13/56 110
A61F13/532 200
(21)【出願番号】P 2018034877
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本城 良太
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176449(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/47
A61F 13/15
A61F 13/56
A61F 13/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側の表面同士が合わさるように前後方向に二つ折りされ、
前記二つ折りの折目と、
前記二つ折りの折目よりも前側に位置する前側領域と、
前記二つ折りの折目よりも後側に位置する後側領域とを有し、
前記前側領域及び前記後側領域に吸収体が内蔵され、
前記前側領域及び後側領域の裏面に粘着剤層が設けられ
、
前記吸収体の前後方向の中間に括れ部分が設けられている、
パッドタイプ吸収性物品において、
前記括れ部分は、前記前側領域に位置する部分の前後方向の中間から前記後側領域に位置する部分の前後方向の中間まで、幅方向の寸法が一定の領域を有しており、
前記吸収体は、前記
幅方向の寸法が一定の領域の前端部及び後端部にのみ、幅方向に沿うスリット若しくは溝を有している、
ことを特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【請求項2】
パッドタイプ吸収性物品の前端の位置を0%とし、パッドタイプ吸収性物品の後端の位置を100%としたとき、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝は、30~40%の位置及び60~70%の位置にそれぞれ設けられている、
請求項1記載のパッドタイプ吸収性物品。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝と重なる部分に設けられていない、
請求項1又は2記載のパッドタイプ吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、
前側に位置する前記幅方向に沿うスリット若しくは溝
の幅方向中間
から前記括れ部分よりも前側まで前後方向に延びるスリット若しくは溝
と、後側に位置する前記幅方向に沿うスリット若しくは溝の幅方向中間から前記括れ部分よりも後側まで前後方向に延びるスリット若しくは溝とを有している、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパッドタイプ吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にテープタイプやパンツタイプ等の使い捨ておむつ又は下着(以下、総称してアウターともいう)の内面に固定して使用されるパッドタイプ吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなパッドタイプ吸収性物品の一つとして、おむつ交換費用の低減や、トイレトレーニングを目的としてアウターの内面に取り付けて使用されるパッドタイプ使い捨ておむつがある(例えば特許文献1参照)。また、生理用ナプキンもアウターに固定されるパッドタイプ吸収性物品に含まれる。
【0003】
一般に、アウターに固定されるパッドタイプ使い捨ておむつの裏面には、粘着剤層からなる粘着剤層が設けられており、この粘着剤層がおむつ又は下着の内面に粘着されることにより装着時のズレが防止されるようになっている。
【0004】
また、一般的なパッドタイプ吸収性物品は、三つ折りや二つ折りに折り畳まれた状態で販売されている。例えば三つ折りのパッドタイプ吸収性物品300は、
図9(a)に示すように表側内側に隠れるように、前後方向中間に位置する中間領域302の上に、中間領域よりも前側に位置する前領域301、及び中間領域302よりも後側に位置する後領域303が折り返されたものである。
図9(b)は三つ折りのパッドタイプ吸収性物品300の一般的な装着方法を示している。すなわち、三つ折り状態のパッドタイプ吸収性物品300を装着する際には、前領域301及び後領域303を起こしてU字形状にした後、中間領域302からアウター100内に導入し、中間領域302をアウター100の股間部の内面に手で押し付けて中間領域302の裏面の粘着剤層30をアウター100内面に粘着させた後、前領域301及び後領域303をアウター100内面に押し付けて前領域301及び後領域303の裏面の粘着剤層30をアウター100内面に粘着させる。
【0005】
しかし、この場合、パッドタイプ吸収性物品300は、三つ折り状態の折り癖により前後に長いU字形状になるため、アウター100内に導入しにくい。このため、中間領域302の粘着剤層30をアウター100の適切な位置に粘着させる前に、中間領域302の粘着剤層30の前後端部や、前領域301又は後領域303の粘着剤層30が、アウター100の不適切な位置に誤って粘着してしまうことがあり、この点で装着容易性について改善の余地がある。
【0006】
一方、二つ折りのパッドタイプ吸収性物品400は、
図10(a)に示すように表面同士が合わさるように二つ折りされたものであり、前後方向の中央部に位置する折目401と、折目401よりも前側に位置する前側領域F1と、折目401よりも後側に位置する後側領域B1とを有するものである。
図10(b)及び
図11は二つ折りのパッドタイプ吸収性物品400の一般的な装着方法を示している。すなわち、二つ折り状態のパッドタイプ吸収性物品400を装着する際には、折目401と反対側から前側領域F1及び後側領域B1の間に手を入れ、薄いV字形状の状態で、折目401側からアウター100内に導入し、折目401及びその近傍をアウター100の股間部の内面に押し付けて裏面の粘着剤層30をアウター100内面に粘着させた後、押し付け位置を前後方向にずらしながら粘着領域を前側領域F1及び後側領域B1の全体まで広げる。
【0007】
しかし、折目401及びその近傍をアウター100の股間部の内面に押し付けて裏面の粘着剤層30をアウター100内面に粘着させた後、押し付け位置を前後方向に移動させながら粘着領域を前側又は後側に広げる際、一度に前後両側を押し付けることができない。また、二つ折りのパッドタイプ吸収性物品400は、前後方向の中間に折り癖が残っているものの、その他の部分は吸収体23の剛性により曲がりにくいため、V字形状を維持しようとする力が働きやすい。このため、
図11に示すように、折目401及びその近傍をアウター100の股間部の内面に粘着させた後に、粘着領域を前後方向に広げる際、押し付け位置よりも先の未押し付け領域F2,B2が倒れてアウター100の不適切な位置に粘着することがあり、この点で装着容易性について改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-192849号公報
【文献】特開2013-166029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、アウターに固定されるパッドタイプ使い捨ておむつの装着容易性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決したパッドタイプ吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
肌側の表面同士が合わさるように前後方向に二つ折りされ、
折目と、折目よりも前側に位置する前側領域と、折目よりも後側に位置する後側領域とを有し、
前記前側領域から前記後側領域にかけて吸収体が内蔵され、
前記前側領域及び後側領域の裏面に粘着剤層が設けられている、
パッドタイプ吸収性物品において、
前記吸収体は、前記前側領域に位置する部分及び前記後側領域に位置する部分の少なくとも一方における前後方向の中間に、幅方向に沿うスリット若しくは溝を有している、
ことを特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本パッドタイプ吸収性物品は、肌側の表面同士が合わさるように前後方向に二つ折りされたものである。したがって、本パッドタイプ吸収性物品をアウターに装着する際には、折目と反対側から前側領域及び後側領域の間に手を入れ、薄いV字形状の状態で、折目側からアウター内に導入するため、三つ折りのパッドタイプ吸収性物品のように導入が困難となることがない。
また、吸収体は、前側領域に位置する部分及び前記後側領域に位置する部分の少なくとも一方における前後方向の中間に、幅方向に沿うスリット若しくは溝を有しているため、このスリット若しくは溝の位置で本パッドタイプ吸収性物品が前後方向に折れ曲りやすくなっている。その結果、本パッドタイプ吸収性物品をアウター内に導入した後、折目及びその近傍をアウターの股間部の内面に押し付けて裏面の粘着剤層をアウター内面に粘着させた後、押し付け位置を前後方向にずらしながら粘着領域を広げる際、幅方向に沿うスリット若しくは溝と折目との間の部分をアウター内面に押し付けても、押し付け位置よりも先の未押し付け領域が倒れにくい。よって、未押し付け領域が誤ってアウターの不適切な位置に粘着しにくい。まとめると、本パッドタイプ吸収性物品は、狭いアウター内空間に導入しやすく、導入後の粘着作業も容易なものとなる。
なお、スリットは隙間が無いものだけでなく、ある程度の隙間を有するものも含む。また、溝は、エンボス加工等の圧縮加工により局所的に厚み方向に圧縮された圧密部のほか、密度は周囲と同じであるが吸収体材料の目付けが少ない低目付け部を含む。
【0012】
<第2の態様>
パッドタイプ吸収性物品の前端の位置を0%とし、パッドタイプ吸収性物品の後端の位置を100%としたとき、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝は、30~40%の位置及び60~70%の位置にそれぞれ設けられている、
第1の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
幅方向に沿うスリット若しくは溝の位置は適宜定めればよいが、本項記載の範囲内であることが好ましい。
【0014】
<第3の態様>
前記粘着剤層は、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝と重なる部分に設けられていない、
第1又は2の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
パッドタイプ吸収性物品における折れ曲がりやすい部分の裏面に粘着剤層が設けられていると、装着作業中のちょっとした変形で、折れ曲がりやすい部分を挟んで一方側の粘着剤層と他方側の粘着剤層とがくっついてしまい、装着作業が困難になることがある。この種の粘着剤層はアウターに対しては容易に剥離可能であるが、粘着剤層同士の粘着の場合には通常は剥離が困難である。よって、粘着剤層はこのような配置となっていることが好ましい。
【0016】
<第4の態様>
前記吸収体は、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝よりも前側及び後側の少なくとも一方における幅方向中間に、前記幅方向に沿うスリット若しくは溝、又はその近傍から前後方向に延びるスリット若しくは溝を有している、
第1~3のいずれか1つの態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
本態様のパッドタイプ吸収性物品では、幅方向に沿うスリット若しくは溝、又はその近傍から前後方向に延びるスリット若しくは溝を有しているため、幅方向に沿うスリット若しくは溝よりも前側及び後側の少なくとも一方に位置する部分が、幅方向に折れ曲りやすく、アウターの内面に沿う形状となりやすい。
また、吸収体に幅方向に沿うスリット若しくは溝を設けた場合、排泄物が幅方向に拡散しやすくなり、いわゆる横漏れが発生しやすくなるおそれがある。しかし、本態様のように幅方向に沿うスリット若しくは溝、又はその近傍から前後方向に延びるスリット若しくは溝を有していると、排泄物が幅方向に沿うスリット若しくは溝、又はその近傍から前後方向にも拡散しやすくなり、横漏れのおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アウターに固定されるパッドタイプ吸収性物品の装着容易性が改善する、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図2】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。
【
図6】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図7】パッドタイプ使い捨ておむつの(a)二つ折り状態の断面図、(b)装着工程の断面図である。
【
図8】パッドタイプ使い捨ておむつの(a)装着工程の断面図、(b)装着工程の断面図である。
【
図9】パッドタイプ使い捨ておむつの(a)三つ折り状態の断面図、(b)装着工程の断面図である。
【
図10】パッドタイプ使い捨ておむつの(a)二つ折り状態の断面図、(b)装着工程の断面図である。
【
図11】パッドタイプ使い捨ておむつの装着工程の断面図である。
【
図12】パッドタイプ使い捨ておむつの要部を拡大して示す断面図である。
【
図13】パッドタイプ使い捨ておむつを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、パッドタイプ吸収性物品の一つである、パッドタイプ使い捨ておむつの例について添付図面を参照しつつ説明する。
図1~
図5は、パッドタイプ使い捨ておむつ200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、前後方向中央よりも前側に延在する前側領域F1及び前後方向中央よりも後側に延在する後側領域B1とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は200~480mm程度、全幅W1は120~200mm程度とすることができる。
【0021】
パッドタイプ使い捨ておむつ200は、液不透過性シート21の内面と、液透過性のトップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙や不織布(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100~600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0~400g/m2程度とするのが好ましい。
【0022】
吸収体23の裏側には、液不透過性シート21が設けられている。液不透過性シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。図示例では、液不透過性シート21が吸収体23の周囲にはみ出しているが、吸収体23の周囲にはみ出していなくてもよい。
【0023】
液不透過性シート21の外面(裏面)は、外装シート25により覆われている。外装シート25としては各種の不織布を用いることができる。なお、不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0024】
吸収体23の表側は、トップシート22により覆われている。図示例ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0025】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後端部は、吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延び出た、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFとなっている。エンドフラップ部EFを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート21、外装シート25及びトップシート22における、吸収体23の前後両側に延び出た部分となっている。
【0026】
また、パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部は、吸収体の側方に延び出たサイドフラップ部SFとなっている。サイドフラップ部SFを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート21、外装シート25、トップシート22、及びギャザーシート62における、吸収体23の幅方向両側に延び出た部分となっている。これらを含め、素材の貼り合わせは、図中に点模様で示されたホットメルト接着剤の他、ヒートシール、超音波シール等の素材溶着により行うことができる。
【0027】
(起き上がりギャザー)
トップシート22上を横方向に移動する尿や軟便を遮り、横漏れを防止するために、使い捨ておむつの表面の幅方向WDの両側には、トップシート22の側部から肌側に立ち上がる(突出する)起き上がりギャザー60が前後方向全体にわたり設けられている。
【0028】
図示例の起き上がりギャザー60は、サイドフラップ部SFを含む領域に固定された付根部分65と、この付根部分65から延び出た突出部分66と、この突出部分の前後方向両端部が倒伏状態に固定された倒伏部分67と、突出部分66のうち前後の倒伏部分間に位置する非固定の起き上がり部分68と、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定されたギャザー弾性部材63とを有している。起き上がりギャザー60は、先端で折り返されたギャザーシート62により形成されており、ギャザー弾性部材63は、図示例のように各複数本、間隔を空けて設ける他、各1本設けることができる。ギャザー弾性部材63を有する部分の伸長率は特に限定されないが、通常の場合150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。
【0029】
図示例の起き上がりギャザー60の付根部分65は、サイドフラップ部SFにのみ設けられており、液不透過性シート21の側部及び外装シート25の側部に接合されているが、サイドフラップ部SFから吸収体56と重なる領域の側部まで延びていてもよい。
【0030】
起き上がりギャザー60の突出部分66は、前後方向LDの両端部が倒伏部分となっているものの、その間の部分は非固定の起き上がり部分68とされており、この起き上がり部分68がギャザー弾性部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの装着時には、おむつが舟形に体に装着され、そしてギャザー弾性部材63の収縮力が作用するので、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がりギャザー60が立ち上がり脚周りに弾力的に密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0031】
ギャザーシート62の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。ギャザー弾性部材63としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0032】
図2、
図3及び
図5に示すように、前側領域及び後側領域の裏面には、粘着剤層30が設けられている。粘着剤層30は、図示例のように、剥離シート31により剥離可能に被覆しておき、使用時に剥離シート31を剥離して粘着剤層30を露出させるのが望ましい。
【0033】
図示例では、粘着剤層30を前後方向に沿って連続的に設けているが、前側領域F1及び後側領域B1のそれぞれに設けたり、いずれか一方のみに設けたりしても良い。粘着剤層30を複数設ける場合、前側領域F1及び後側領域B1に各少なくとも一つは設けるのが好ましい。
【0034】
粘着剤層30は、その全体が吸収体23と重なる領域内に収まるような寸法及び配置となっているのが好ましい。具体的には、粘着剤層30の幅W3は吸収体23の幅W2の70~80%程度、前後方向長さL3(前後方向に複数設ける場合は総長さ)は吸収体23の全長L2の60~95%程度、又は物品全長L1の50~95%程度であるのが好ましい。粘着剤層30は吸収体23と重なる領域からエンドフラップ部EFまで延びていてもよい。
【0035】
特徴的には、本パッドタイプ使い捨ておむつ200は、
図7(a)に示すように、肌側の表面同士が合わさるように前後方向に二つ折りされたものであり、吸収体23は、前側領域位置する部分の前後方向の中間及び前記後側領域に位置する部分の前後方向の中間に、幅方向に沿うスリット23sをそれぞれ有している。したがって、
図7(b)に示すように、本パッドタイプ使い捨ておむつ200をアウター100に装着する際には、折目201と反対側から前側領域F1及び後側領域B1の間に手を入れ、薄いV字形状の状態で、折目201側からアウター100内に導入するため、
図9に示す三つ折りの製品のように導入が困難となることがない。また、吸収体23は、前側領域F1位置する部分の前後方向の中間及び前記後側領域B1に位置する部分の前後方向の中間に、幅方向に沿うスリット23sをそれぞれ有しているため、このスリット23sの位置で本パッドタイプ使い捨ておむつ200が前後方向に折れ曲りやすくなっている。その結果、
図7(a)に示すように、本パッドタイプ使い捨ておむつ200をアウター100内に導入した後、折目201及びその近傍をアウター100の股間部の内面に押し付けて裏面の粘着剤層30をアウター100内面に粘着させた後、押し付け位置を前後方向にずらしながら粘着領域を広げる際、
図8(a)に示すように、幅方向に沿うスリット23sと折目201との間の部分をアウター100内面に押し付けても、押し付け位置よりも先の未押し付け領域F2,B2が倒れにくい。よって、未押し付け領域F2,B2が誤ってアウター100の不適切な位置に粘着しにくい。まとめると、本パッドタイプ使い捨ておむつ200は、狭いアウター100内空間に導入しやすく、導入後の粘着作業も容易なものとなる。
【0036】
なお、
図5(a)に示すように、スリット23sは隙間が無いものだけでなく、ある程度の隙間を有するものも含む。また、
図5(b)に示すように、スリット23sに代えて溝23dを設けることもできる。溝23dは、エンボス加工等の圧縮加工により局所的に厚み方向に圧縮された圧密部のほか、密度は周囲と同じであるが吸収体23材料の目付けが少ない低目付け部を含む。スリット23s若しくは溝23dの幅s(隙間の寸法)は適宜定めることができるが、通常の場合、5~15mm程度とすることが好ましい。また、スリット23sは、図示例のように吸収体23の一方の側縁から他方の側縁まで連続していると、特に折れ曲りやすくなる。スリット23sは、幅方向の一部のみに設けられていたり、吸収体23の一方の側縁から他方の側縁まで点線状(断続的)に設けられていたりしてもよい。
【0037】
幅方向に沿うスリット23sの位置は適宜定めればよいが、折目201の前後両側に各一か所以上設けられていることが好ましく、特に図示例のように折目201の前後両側に各一か所設けられていることが好ましい。この場合におけるスリット23sの位置は適宜定めることができるが、通常の場合、パッドタイプ使い捨ておむつ200の前端の位置を0%とし、パッドタイプ使い捨ておむつ200の後端の位置を100%としたとき、幅方向に沿うスリット23sは、30~40%の位置及び60~70%の位置にそれぞれ設けられていると好ましい。また、図示例のように吸収体23に脚周りに沿う括れ部分23nが設けられている場合は、その括れ部分23nにスリット23sが位置していると、より折り曲げやすくなるため好ましい。特に図示例のように、括れ部分23nの前後方向の中間に幅方向寸法が一定の領域Mを有する場合には、当該領域の前端部及び後端部にスリット23sが位置していることが好ましい。
【0038】
図12(a)に示すように、パッドタイプ使い捨ておむつ200における折れ曲がりやすい部分の裏面に粘着剤層30が設けられていると、装着作業中のちょっとした変形で、
図12(b)に示すように、折れ曲がりやすい部分を挟んで一方側の粘着剤層30と他方側の粘着剤層30とがくっついてしまい、装着作業が困難になることがある。この種の粘着剤層30はアウター100に対しては容易に剥離可能であるが、粘着剤層30同士の粘着の場合には通常は剥離が困難である。よって、
図2及等に示すように、粘着剤層30は、幅方向に沿うスリット23sと重なる部分には設けないことが望ましい。これにより、
図12(c)に示すように、折れ曲がりやすい部分を挟んで一方側の粘着剤層30と他方側の粘着剤層30とがくっつくことを防止できる。具体的に、図示例の場合、前側の幅方向に沿うスリット23sより前側の領域F2、後側の幅方向に沿うスリット23sより後側の領域B2、及びこれらの幅方向に沿うスリット23sの間の領域Mのそれぞれに、幅方向に沿うスリット23sから若干(例えば5~20mm程度)離して粘着剤層30を設けることが好ましい。
【0039】
他方、
図6に示すように、吸収体23は、幅方向に沿うスリット23sよりも前側及び後側の少なくとも一方における幅方向中間(特に中央部)に、幅方向に沿うスリット23s、又はその近傍から前後方向に延びるスリット23cを有しているのも好ましい。この場合、幅方向に沿うスリット23s、又はその近傍から前後方向に延びるスリット23cを有しているため、
図13に示すように、幅方向に沿うスリット23sよりも前側及び後側の少なくとも一方に位置する部分が、幅方向に折れ曲りやすく、アウター100の内面に沿う形状となりやすい。また、吸収体23に幅方向に沿うスリット23sを設けた場合、排泄物が幅方向に拡散しやすくなり、いわゆる横漏れが発生しやすくなるおそれがある。しかし、本態様のように幅方向に沿うスリット23s、又はその近傍から前後方向に延びるスリット23cを有していると、排泄物が幅方向に沿うスリット23s、又はその近傍から前後方向にも拡散しやすくなり、横漏れのおそれを低減することができる。
【0040】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0041】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0042】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0043】
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0044】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0045】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0046】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0047】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0048】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0049】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0050】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、裏面に粘着剤層を有するパッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の、アウターの内面に固定されるパッドタイプ吸収性物品に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
21…液不透過性シート、22…トップシート、23…吸収体、60…起き上がりギャザー、25…外装シート、30…粘着剤層、31…剥離シート、100…アウター、200…パッドタイプ使い捨ておむつ、F1…前側領域、B1…後側領域、23c…前後方向に延びるスリット、23s…幅方向に沿うスリット、23d…溝、201…折目、F2,B2…未押し付け領域、23n…括れ部分。