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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】歯車減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20220825BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018049820
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019158116
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】有澤 秀則
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正教
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 直樹
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196675(JP,A)
【文献】実開平2-113055(JP,U)
【文献】実開昭56-117160(JP,U)
【文献】特開2007-315568(JP,A)
【文献】特開2011-133042(JP,A)
【文献】実開昭64-12965(JP,U)
【文献】特開2015-68492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギヤからなる歯車機構を有する歯車減速装置であって、
前記歯車機構から軸方向に離間して設けられて、当該歯車減速装置内の正圧域から吐出されるオイルミストを回収するオイルミスト回収箱、
を備え、
前記オイルミスト回収箱が、前記複数のギヤのうちの駆動側の1つのギヤの軸受を収容する軸受箱である、
歯車減速装置。
【請求項2】
複数のギヤからなる歯車機構を有する歯車減速装置であって、
前記歯車機構から軸方向に離間して設けられて、当該歯車減速装置内の正圧域から吐出されるオイルミストを回収するオイルミスト回収箱、
を備え、
前記オイルミスト回収箱が、当該オイルミスト回収箱における前記複数のギヤの噛み外れ領域に対向する部分に設けられて、当該オイルミスト回収箱内に流入したオイルミストが前記歯車機構側へ流出するのを防止するバッフル壁を備えており、
前記正圧域が前記複数のギヤの噛み込み領域である歯車減速装置。
【請求項3】
複数のギヤからなる歯車機構を有する歯車減速装置であって、
前記歯車機構から軸方向に離間して設けられて、当該歯車減速装置内の正圧域から吐出されるオイルミストを回収するオイルミスト回収箱と、
前記オイルミスト回収箱内に設けられてオイルミストをオイルと空気に分離するオイルセパレータと、
前記オイルセパレータによって分離された空気を当該歯車減速装置内の負圧域に還流する空気還流路と、
を備え
前記オイルミスト回収箱が、当該オイルミスト回収箱における前記複数のギヤの噛み外れ領域に対向する部分に設けられて、当該オイルミスト回収箱内に流入したオイルミストが前記歯車機構側へ流出するのを防止するバッフル壁を備えている、
歯車減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車機構を用いた減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機用や船舶用などの高速回転する歯車減速装置において、一般的に、歯車機構に、冷却および摩耗抑制のため、潤滑油を供給する機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-068492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような減速装置において、歯車機構に供給された潤滑油が歯車の回転や噛み合いによって撹拌される結果、オイルミストが減速装置内に滞留する。減速装置内に滞留するオイルミストが増加すると、歯車を回転させるための追加の動力が必要となり、減速装置の効率が低下する。
【0005】
本発明の目的は、歯車機構周辺のオイルミストを回収して外部へ排出することにより効率低下を抑制できる歯車減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る歯車減速装置は、複数のギヤからなる歯車機構を有する歯車減速装置であって、前記歯車機構から軸方向に離間して設けられて、当該歯車減速装置内の正圧域から吐出されるオイルミストを回収するオイルミスト回収箱を備えている。
【0007】
この構成によれば、装置内の正圧を利用することにより簡易な構造で効率的に歯車機構周辺のオイルミストを回収することができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記オイルミスト回収箱が、このオイルミスト回収箱内に流入したオイルミストが前記歯車機構側へ流出するのを防止するバッフル壁を備えていてもよい。この構成によれば、バッフル壁を設けたことによって、より確実にオイルミストを回収することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記オイルミスト回収箱が、前記複数のギヤのうちの1つのギヤの軸受を収容する軸受箱であってもよい。この構成によれば、軸受箱をオイルミスト回収箱として利用するので、部材点数や装置寸法の増大を抑制可能な構造でオイルミストの回収が可能になる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記正圧域が前記複数のギヤの噛み込み領域であってもよい。この構成によれば、歯車機構の噛み込み領域の正圧を利用するので、歯車周辺のオイルミストを簡易な構造で極めて効率的に回収することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、さらに、前記オイルミスト回収箱内に設けられてオイルミストをオイルと空気に分離するオイルセパレータと、前記オイルセパレータによって分離された空気を当該歯車減速装置内の負圧域に還流する空気還流路とを備えていてもよい。この構成によれば、装置内の負圧域を利用することによってオイルミストから分離された空気を還流するので、簡易な構造で効率的に空気を循環させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歯車減速装置によれば、歯車機構周辺のオイルミストが回収されて歯車減速装置の外部へ排出されるので、歯車減速装置の効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る歯車減速装置の概略構造を示す縦断面図である。
図2図1の歯車減速装置の歯車機構の概略構成を模式的に示す正面図である。
図3図1の歯車減速装置の歯車機構とバッフル壁の位置関係を模式的に示す正面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る歯車減速装置の概略構造を示す正面図である。
図5図4の歯車減速装置の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る歯車減速装置を示す。この歯車減速装置1は、複数のギヤからなる歯車機構3を備えている。本実施形態の歯車機構3は、図2に示すように、互いに噛合する駆動側ギヤ5および従動側ギヤ7からなる歯車機構3Aである。駆動側ギヤ5は、歯車減速装置1の外部からの回転動力を入力する入力軸9の外周に嵌合されている。従動側ギヤ7は、歯車減速装置1の外部へ回転動力を出力する出力軸11の外周に嵌合されている。駆動側ギヤ5の外径は従動側ギヤ7の外径よりも小さい。本実施形態では、駆動側ギヤ5および従動側ギヤ7のそれぞれが、互いに逆方向に傾斜した2列のはすば歯車からなる外歯を有する歯車として形成されている。
【0015】
図1に示すように、入力軸9の両端部(同図では一端部のみを示している。)はそれぞれ駆動側軸受13によって回転可能に支持されている。この軸受は、駆動側ギヤ5の側面に軸方向C1に対向して設けられた駆動側軸受箱15に収容されている。なお、図示は省略するが、同様に、出力軸11の両端部はそれぞれ従動側軸受によって回転可能に支持されており、この軸受は、従動側ギヤの側面に軸方向に対向して設けられた従動側軸受箱に収容されている。
【0016】
図2に示すように、この例では、歯車機構3は、2つのギヤ5,7が、噛合部分において鉛直方向上方が噛み込み側となり、下方が噛み外れ側となるように配置されている。歯車機構3の噛合部分の上方に、両ギヤ5,7の噛合部分に向かって(つまり下方に向かって)先細りとなる三角形状のバッフル突起17が設けられている。すなわち、このような形状を有するバッフル突起17の2つの側壁17a,17aは、それぞれ、駆動側ギヤ5の歯面(外周面)および従動側ギヤ7の歯面(外周面)に対向するように位置している。バッフル突起17の内方には図示しないオイル通路が形成されており、バッフル突起17の側壁に、駆動側ギヤ5および従動側ギヤ7の各歯面に向けて潤滑油OLを供給するオイル供給ノズル19が形成されている。オイル供給ノズル19はバッフル突起17の側壁17aを貫通する孔として形成されている。この例ではバッフル突起17は歯車減速装置1のハウジング21に突設されている。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る歯車減速装置1は、歯車機構3から軸方向C1に離間して設けられて、当該歯車減速装置1内の正圧域から吐出されるオイルミストOMを回収するオイルミスト回収箱23を備えている。具体的には、この例では、駆動側軸受箱15がオイルミスト回収箱23を兼ねている。本実施形態における以下の説明において、駆動側軸受箱15を「オイルミスト回収箱23」と称する場合がある。
【0018】
また、本明細書において、「正圧域」とは、歯車減速装置1の動作中に、その周囲よりも高圧となる領域を指す。本実施形態に係る歯車減速装置1において、正圧域の一例は、図2に示す歯車機構3の噛合部分の噛み込み領域Z1である。この噛み込み領域Z1に向かって駆動側ギヤ5および従動側ギヤ7がそれぞれの回転方向R1,R2に回転し、かつバッフル突起17が設けられていることにより、噛み込み領域Z1は正圧域となっている。他方、本明細書において、「負圧域」とは、歯車減速装置1の動作中に、その周囲よりも低圧となる領域を指す。
【0019】
図1に示すように、オイルミスト回収箱23は、前記正圧域からオイルミスト回収箱23内に流入したオイルミストOMが歯車機構3側へ流出するのを防止するバッフル壁25を備えている。具体的には、この例におけるバッフル壁25は、駆動側軸受箱15の歯車機構3側に設けられた壁である。図3に示すように、本実施形態の歯車機構3において、上述したように噛合部分の上方に位置する噛み込み領域Z1が正圧域となる一方、噛合部分の下方に位置する噛み外れ領域Z2は負圧域を形成する。そこで、駆動側軸受箱15の歯車機構3側を向く部分において、正圧域である噛み込み領域Z1に対向する部分には開口(以下、この開口を「オイル回収口」と呼ぶ。)27を形成し、負圧域である噛み外れ領域Z2に対向する部分を含む残りの部分にバッフル壁25を設けている。より具体的には、軸方向C1から見てほぼ円形の外形を有する駆動側軸受箱15の、上方かつ従動側ギヤ7寄りの約1/4の部分にオイル回収口27が形成され、残りの約3/4の領域にバッフル壁25が設けられている。
【0020】
図1に示すように、オイルミスト回収箱23内の空間であるオイル回収室29には、オイルミストOMを潤滑油OLと空気Aに分離するオイルセパレータ31が設けられている。本実施形態では、オイルセパレータ31として多数の孔を有する金属板を用いている。オイルセパレータ31は、駆動側軸受箱15内の入力軸9よりも下方の位置に、ほぼ水平に設置されている。
【0021】
駆動側軸受箱15内において、オイル回収口27から流入したオイルミストOMは入力軸9の回転方向に沿って下方に向かって流れ、オイルセパレータ31を通過する際に潤滑油OLと空気Aとに分離される。オイルセパレータ31によって分離された潤滑油OLは、駆動側軸受箱15の底部に接続されたオイル排出路33へ排出される。他方、オイルセパレータ31によって分離された空気Aは、入力軸9の回転方向R1に沿って上方へ流れ、オイルセパレータ31よりも上方の空間へ再流入する。
【0022】
本実施形態に係る歯車減速装置1は、さらに、オイルセパレータ31によってオイルミストOMから分離された空気を当該歯車減速装置1内の負圧域に還流する空気還流路35を備えている。具体的には、この例では、駆動側軸受箱15内の入力軸9よりも上方の空間と、負圧域である駆動側ギヤ5の2列のはすば歯車間の溝部37とを連通させる空気還流管39が設けられている。
【0023】
このような空気還流路35を設けることにより、装置内の負圧域を利用してオイルミストOMから分離された空気Aを還流することができるので、簡易な構造によって効率的な空気Aの循環が可能になる。
【0024】
以上説明した第1実施形態に係る歯車減速装置11によれば、装置内の正圧を利用することにより簡易な構造で効率的に歯車機構3周辺のオイルミストOMを回収することができる。特に、オイルミスト回収箱23にバッフル壁25を設けたことによって、確実にオイルミストOMを回収することが可能になる。
【0025】
しかも、軸受箱(この例では駆動側軸受箱15)をオイルミスト回収箱23として利用しているので、部材点数や装置寸法の増大を抑制可能な構造でオイルミストOMの回収が可能になる。なお、本実施形態では、駆動側軸受箱15をオイルミスト回収箱23として利用したが、従動側軸受箱をオイルミスト回収箱23として利用してもよい。もっとも、小さい外径を有する駆動側ギヤ5用の軸受箱をオイルミスト回収箱23として利用することにより、この軸受箱の周辺に排油管や上述の空気還流管を設けても、装置全体の寸法増大を抑制することができる。
【0026】
次に、図4に示す、本発明の第2実施形態に係る歯車減速装置1について説明する。本実施形態に係る歯車減速装置1も、複数のギヤからなる歯車機構3、および歯車機構3から軸方向に離間して設けられて、当該歯車減速装置1内の正圧域から吐出されるオイルミストOMを回収するオイルミスト回収箱23を備える点で第1実施形態と共通するが、歯車機構3の具体的構造が第1実施形態と異なる。
【0027】
本実施形態が適用される歯車機構3は、遊星歯車機構3Bである。この遊星歯車機構3Bは、中心部に配置された、外歯を有するサンギヤ51と、サンギヤ51の外周に配置された、外歯を有する複数のプラネットギヤ53と、プラネットギヤ53の外周に配置された、内歯を有するリングギヤ55とを備えている。隣接するプラネットギヤ53間の周方向の各間隙にバッフルユニット57が配置されている。サンギヤ51は、平歯車からなり、外部からの回転動力を入力する入力軸59の外周に嵌合されている。プラネットギヤ53は、サンギヤ51に対応した平歯車からなり、サンギヤ51に噛合している。プラネットギヤ53は、それぞれプラネット軸61の外周に軸受を介して回転自在に支持されている。本実施形態では、3つのプラネットギヤ53が、サンギヤ51の円周方向に等間隔で配置されている。リングギヤ55は、平歯車からなり、3つのプラネットギヤ53に噛合している。リングギヤ55は、リング体63の内周面に形成されている。
【0028】
図5に示すように、遊星歯車機構3Bを構成するサンギヤ51、プラネットギヤ53、リングギヤ55、およびバッフルユニット57は、歯車減速装置1のハウジング65内に収納されている。ハウジング65には、プラネットギヤ支持プレート67が固定されている。プラネットギヤ支持プレート67に、プラネット軸61の基端部(同図の左側の端部)が相対回転不能に取り付けられている。プラネット軸61の先端部は、支持プレートを介してハウジング65に取り付けられた円板状の端壁69に支持されている。
【0029】
入力軸59と同一軸心C2上に回転軸である出力軸71が配置されている。以下の説明では、この軸心C方向における入力軸59側(同図の左側)を「前側」と呼び、出力軸71側(同図の右側)を「後側」と呼ぶ。出力軸71の外周に回転プレート73が固定されている。リング体63には、リングギヤ55の後方に別の内歯歯車である出力ギヤ75が設けられている。リング体63の出力ギヤ75が、回転プレート73の外周縁部とギヤ連結されて、一体回転する。これにより、リングギヤ55の回転が出力軸71から出力される。
【0030】
バッフルユニット57は、図4の隣接する2つのプラネットギヤ53間に配置されており、図5のプラネットギヤ支持プレート67に図示しないボルトのような締結部材によって取り付けられている。
【0031】
入力軸59は、ハウジング65の前壁65aの中心部に形成された入力軸挿通孔77を貫通してハウジング65内に延びている。前壁65aの外面(前面)には、ハウジング65の一部をなす、入力軸59を支持する入力側軸受79を収容する入力側軸受箱81が設けられている。入力軸59は、入力側軸受箱81の上部から下方に突設された支持片83に、すべり軸受である入力側軸受79を介して回転自在に支持されている。
【0032】
バッフルユニット57は、後側の端壁69と、径方向外端壁85とを有している。端壁69は、径方向外端壁85の後側の端部に連結されている。径方向外端壁85の他端部には外径側に突設された取付フランジ87が設けられており、例えば図示しないボルトのような締結部材によって、取付フランジ87を介してハウジング65に取り付けられている。
【0033】
図5に示すバッフルユニット57の一部を形成する端壁69の径方向中心部に、貫通した円孔からなる支持部89が形成されている。この支持部89が、出力軸71を軸受を介して回転自在に支持している。
【0034】
端壁69における支持部89の下方近傍に、サンギヤ51の歯面に潤滑油OLを噴射する複数のオイル供給ノズル91が形成されている。オイル供給ノズル91から供給される潤滑油OLは、ハウジング65の壁内からバッフルユニット57の壁内にかけて形成されたオイル供給通路93を通って供給される。オイル供給ノズル91が設けられた端壁69は、上述のようにサンギヤ51よりも後方に位置するので、オイル供給ノズル91は、鉛直方向に対して前方に傾斜した向きに形成されている。
【0035】
オイル供給ノズル91からサンギヤ51に向けて噴射された潤滑油OLの大部分は、図示しない排出経路を経て遊星歯車装置1外へ排出される。他方、オイル供給ノズル91からサンギヤ51に向けて噴射された潤滑油OLによって形成されたオイルミストOMは、以下に説明する回収構造によって回収,排出される。
【0036】
本実施形態に係る歯車減速装置1も、歯車機構3(遊星歯車機構3B)から軸方向C2に離間して設けられて、当該歯車減速装置1内の正圧域から吐出されるオイルミストOMを回収するオイルミスト回収箱23を備えている。具体的には、この例では、入力側軸受箱81がオイルミスト回収箱23を兼ねている。本実施形態における以下の説明において、入力側軸受箱81を「オイルミスト回収箱23」と称する場合がある。
【0037】
オイルミスト回収箱23は、正圧域からオイルミスト回収箱23内に流入したオイルミストOMが歯車機構3側へ流出するのを防止するバッフル壁25を備えている。具体的には、この例におけるバッフル壁25は、入力側軸受箱81の入力軸挿通孔77の内周部に設けられた壁部である。本実施形態の歯車機構3においては、図4に示すサンギヤ51とプラネットギヤ53との噛み込み領域Z1が正圧域を形成する。他方、サンギヤ51とプラネットギヤ53との噛み外れ領域Z2は負圧域を形成する。そこで、図5の入力側軸受箱81の入力軸挿通孔77の内周部において、正圧域である噛み込み領域Z1に対向する部分にはオイル回収口27を形成し、負圧域である噛み外れ領域Z2に対向する部分を含む残りの部分にバッフル壁25を設けている。すなわち、この例では、周方向に3つのバッフル壁25が等間隔に設けられている。
【0038】
本実施形態では、オイルセパレータ31は、軸受室内の空間を軸方向C2に隔離するように、つまり軸方向C2に直交する向きにオイルセパレータ31が設けられている。
【0039】
入力側軸受箱81内において、オイル回収口27から流入したオイルミストOMは入力軸59の軸方向C2に沿って前方に向かって流れ、オイルセパレータ31を通過する際に潤滑油OLと空気Aにと分離される。オイルセパレータ31によって分離された潤滑油OLは、入力側軸受箱81の底部に接続された図示しないオイル排出路へ排出される。
【0040】
本実施形態においても、オイルセパレータ31によってオイルミストOMから分離された空気Aを当該歯車減速装置1内の負圧域に還流する空気還流路35が設けられている。具体的には、この例では、入力側軸受箱81内の入力軸59よりも上方の空間と、負圧域であるプラネットギヤ53とリングギヤ55との噛み外れ領域Z3とを連通させる空気還流管39が設けられている。
【0041】
以上説明した第2実施形態に係る歯車減速装置1によっても、装置内の正圧を利用することにより簡易な構造で効率的に歯車機構3周辺のオイルミストOMを回収することができる。特に、オイルミスト回収箱23にバッフル壁25を設けたことによって、確実にオイルミストOMを回収することが可能になる。
【0042】
なお、本発明が適用される歯車減速装置が備える歯車機構は、第1実施形態および第2実施形態に示した例に限定されない。
【0043】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 歯車減速装置
3 歯車機構
23 オイルミスト回収箱
25 バッフル壁
31 オイルセパレータ
OM オイルミスト
Z1 噛み込み領域(正圧域)
図1
図2
図3
図4
図5