(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】事例検索システム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/33 20190101AFI20220825BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20220825BHJP
【FI】
G06F16/33
G06F30/10
(21)【出願番号】P 2018052527
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 寛子
(72)【発明者】
【氏名】出羽 達也
(72)【発明者】
【氏名】布目 光生
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206308(JP,A)
【文献】特開平09-054797(JP,A)
【文献】特開2012-185755(JP,A)
【文献】特開2013-182289(JP,A)
【文献】特開平11-025142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物に対応する文字列が入力されると、
複数の文書から前記第1構造物に関連する第1文書を取得し、
別の複数の文書から、前記第1文書と類似する第2文書を取得し、
前記第2文書に関連付けられた第2構造物を選定し、
前記第1構造物と、前記第2構造物と、の間の類似性を示す評価を
、前記第1文書と前記第2文書との間の類似度に基づいて決定し、
複数の事例から、前記第2構造物と関連付けられた事例を取得し、
前記第2構造物の識別情報、前記評価、及び
取得された前記事例を含む第1画面を表示させる、
処理部を備えた事例検索システム。
【請求項2】
前記処理部は、互いに異なる複数の前記第2構造物と、前記複数の第2構造物にそれぞれ対応する複数の前記評価と、前記複数の第2構造物にそれぞれ対応
して取得された複数の前記事例と、を前記第1画面に表示させる請求項1記載の事例検索システム。
【請求項3】
第1構造物に対応する文字列が入力されると、
複数の文書から前記第1構造物に関連する第1文書を取得し、
別の複数の文書から、前記第1文書と類似する第2文書を取得し、
前記第2文書に関連付けられた第2構造物を選定し、
前記第1構造物と、前記第2構造物と、の間の類似性を示す評価を
、前記第1文書と前記第2文書との間の類似度に基づいて決定し、
複数の事例から、前記第2構造物と関連付けられた事例を取得し、
前記第2構造物の識別情報と、前記評価と、
取得された前記事例を表示させるためのリンクと、を含む第1画面を表示させる、
処理部を備えた事例検索システム。
【請求項4】
前記処理部は、互いに異なる複数の前記第2構造物と、前記複数の第2構造物にそれぞれ対応する複数の前記評価と、前記複数の第2構造物にそれぞれ対応
して取得された複数の前記事例を表示させるための複数の前記リンクと、を前記第1画面に表示させる請求項3記載の事例検索システム。
【請求項5】
前記第1画面において、前記複数の第2構造物の1つの第1表示態様は、前記複数の第2構造物の別の1つの第2表示態様と異なる請求項2または4に記載の事例検索システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記複数の第2構造物の前記1つと関連付けられた前記事例の重要度に応じて、前記第1表示態様を前記第2表示態様と異ならせる請求項5記載の事例検索システム。
【請求項7】
前記処理部は、前記複数の第2構造物の前記1つと関連付けられた前記事例に対するユーザからのフィードバックに応じて、前記第1表示態様を前記第2表示態様と異ならせる請求項5または6に記載の事例検索システム。
【請求項8】
前記処理部は、前記第1構造物及び前記第2構造物と関連する複数の単語を前記第1画面にさらに表示させる請求項1~7のいずれか1つに記載の事例検索システム。
【請求項9】
第1構造物に対応する文字列が入力されると、複数の文書を記憶する第1記憶部から、前記第1構造物と関連付けられた第1文書を取得し、
前記第1文書と前記複数の文書との間のそれぞれの類似度を用いて、別の複数の文書を記憶する第2記憶部から第2文書を取得し、
前記第2文書と関連付けられた第2構造物を選定し、
複数の事例を記憶する第3記憶部から、前記第2構造物と関連付けられた第1事例を取得し、
前記第2構造物の識別情報及び前記第1事例を含む第1画面を表示させる、
処理部を備えた事例検索システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記第2文書を取得する際に、前記第1文書と前記複数の文書との間のそれぞれの文書間類似度をさらに用いて、前記第2文書を抽出して取得する請求項
9記載の事例検索システム。
【請求項11】
前記処理部は、前記第2文書を取得する際に、前記第1文書に含まれる文章と、前記複数の文書に含まれる複数の文章と、の間のそれぞれの意味的類似度をさらに用いて、前記第2文書を抽出して取得する請求項
9または
10に記載の事例検索システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、事例検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
事例検索システムでは、参考となる事例をより容易に探し出せることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、参考となる事例をより容易に探し出せる事例検索システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る事例検索システムは、処理部を含む。前記処理部は、第1構造物に対応する文字列が入力されると、第2構造物を前記文字列に基づいて選定し、前記第2構造物に関する評価を決定し、且つ前記第2構造物と関連付けられた事例を取得する。前記処理部は、前記第2構造物の識別情報、前記評価、及び前記事例を含む第1画面を表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る事例検索システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】実施形態に係る事例検索システムの動作を例示するフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図4】実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図5】実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図6】実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図7】実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図8】実施形態に係る別の事例検索システムの構成を例示する模式図である。
【
図9】実施形態に係る別の事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【
図10】実施形態に係る別の事例検索システムの動作を例示するフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る事例検索システムを実現するハードウェアを例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る事例検索システムの構成を例示する模式図である。
実施形態に係る事例検索システム1は、処理部10を含む。
図1に表した例では、事例検索システム1は、入力部20、表示部30、第1記憶部41、第2記憶部42、及び第3記憶部43をさらに含む。
【0009】
ユーザは、入力部20を操作して、新たに構成される構造物に対応する文字列を処理部10に入力する。処理部10は、文字列の入力を受け付けると、その文字列に対応する構造物と類似する別の構造物の識別情報と、その評価、及び別の構造物の事例を、表示部30に表示させる。
【0010】
ここでは、構造物とは、複数の部品から構成される物を指す。構造物は、例えば、火力発電所、水力発電所、原子力発電所などの発電プラント、またはその部品である。このような構造物は、一般的に、長い年月を掛けて設計及び組み立てが行われる。例えば、構造物に不適切な設計が存在すると、構造物を適切に組み立てることができずに多大な損失が生じる可能性がある。従って、新たな構造物を設計する際には、既に建造されている構造物で発生した問題とその対応策を把握し、同じ問題が繰り返されないようにすることが望ましい。例えば、問題としては、寸法の設計誤り、材質の選定誤り、部品の意図せぬ破損などが挙げられる。
しかし、発電プラントなどの構造物は、受注から納入までの期間が長く、一つの構造物の耐用年数も一般的に長い。一人の設計者が新たな構造物の設計に関わる回数は限られている。従来、過去の問題について、その原因および対応策は、ベテランの設計者の経験知として蓄積されることが多かった。新たな構造物を設計する際には、若手の設計者は、ベテランの設計者から指導を受け、その新たな構造物に関係する過去の問題事例を学んでいた。このような人から人への経験知の継承では、人とともに継承すべき知識が失われてしまうリスクがある。このため、近年は、議事録、参考事例、成功事例、不適合事例などの事例を記録し、それらを集めてデータベースが構築されている。議事録には、例えば、過去に行われた、設計に関する検討会議の内容とその結果が記録されている。不適合事例には、例えば、過去の構造物について発生した問題の内容、その原因、及びその対応策が記録されている。参考事例は、設計において発見した課題とその解決策が記録されている。成功事例は、構造物の機能を向上させたり、工期を短縮させたりするのに有効な方策が記載されている。これらの事例をまとめたデータベースを構築することにより、より多くの設計者が、より多くの事例を参照し、学ぶことが可能となる。
データベースから事例を検索する際、通常、設計者が、設計対象の構造物に関連するキーワードを入力する。構造物が発電プラントである場合、キーワードに代えて、火力、水力、原子力等の発電プラント種類、最大出力、発電機回転数、発電方式(例えば、火力発電の場合、蒸気、ガス、コンバインド等の種別)などが指定されても良い。
しかし、これらの検索条件だけを指定した場合、検索結果として、関連する事例が大量に出力される。この場合、出力された記録を確認するために多くの時間を要する。また、特に経験の少ない若手の設計者は、検索結果のどの事例に注目すべきか判断がつかない場合がある。
【0011】
この課題について、実施形態に係る事例検索システム1によれば、上述したように、入力された文字列に基づき、別の構造物の識別情報と、その評価、及び別の構造物の事例が表示される。入力される文字列は、新たに設計される構造物に対応する。
従って、この事例検索システム1によれば、新たな構造物を構成する際に参考となる可能性のある事例を探し易くなる。このため、事例の調査に要する時間を短縮できる。また、ユーザは、例えば、類似性が高い構造物に関連付けられた事例を確認することで、参考となる可能性がより高い事例を効果的に学習できる。
【0012】
図2は、実施形態に係る事例検索システムの動作を例示するフローチャートである。
図3~
図7は、実施形態に係る事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【0013】
図3~
図7は、構造物が発電プラントである場合を例示している。処理部10は、例えば、ユーザの端末上に
図3に表した画面100aを表示させる。この例では、画面100aは、3つの入力領域101~103を含む。ユーザは、入力領域101~103のいずれかに、これから構成される構造物を特定するための文字列を入力する。ユーザが文字列を入力し、アイコン104をクリックすると、処理部10へ入力した文字列が送信される。
【0014】
処理部10は、文字列の入力を受け付けると、第1記憶部41を参照する。第1記憶部41は、新たに構成される構造物に関する文書を記憶する。処理部10は、それらの文書の中から、文字列により特定された構造物に関連する第1文書を取得する(
図2のステップS1)。一例として、新たに構成される構造物に関して、設計書、検討を行った際の議事録、報告書などが第1文書として取得される。以降では、ユーザにより入力された文字列により特定される構造物を新規構造物(第1構造物)と呼ぶ。また、過去に構成された構造物を既存構造物(第2構造物)と呼ぶ。
【0015】
処理部10は、第2記憶部42を参照する。第2記憶部42は、過去に構成された構造物に関する文書を記憶する。処理部10は、第2記憶部42から、第1文書と類似する1つ以上の第2文書を取得する(ステップS2)。なお、1つの記憶部が第1記憶部41及び第2記憶部42として機能しても良い。
【0016】
処理部10は、それぞれの第2文書に関連付けられている既存構造物を、新規構造物と類似する構造物として選定する(ステップS3)。また、処理部10は、新規構造物と、選定された構造物と、の間の類似性を示す評価を決定する(ステップS4)。この評価は、例えば、第1文書と第2文書との類似度に基づいて決定される。
【0017】
処理部10は、第3記憶部43を参照する。第3記憶部43は、例えば、既存構造物に関する事例を記憶している。処理部10は、選定された既存構造物のそれぞれについて、関連付けられた事例を取得する(ステップS5)。処理部10は、第1画面を表示させる(ステップS6)。第1画面は、選定された既存構造物、新規構造物と既存構造物との類似性を示す評価、及びその既存構造物に関連付けられた事例を含む。
【0018】
処理部10は、例えば
図4に表した画面100b(第1画面)を表示させる。画面100bは、選定された既存構造物の情報111~113、それら既存構造物の評価121~123、及びそれら既存構造物に関連付けられた事例131~133を含む。
【0019】
図4に示した例では、既存構造物を識別するための情報111~113として、既存構造物の名称と既存構造物の種類が表示されている。情報111~113として、既存構造物のIDなどが表示されても良い。
【0020】
評価121~123として、新規構造物と各既存構造物のそれぞれとの類似性(類似の度合い)を示すバーが表示されている。バーが長いほど、その既存構造物は、新規構造物と類似性が高い(より類似している)ことを示す。バーに代えて、類似性を示す評点が表示されても良い。または、類似性の順位が表示されても良い。
【0021】
事例131~133としては、例えば、事例の名称と、事例の内容の一部(スニペット)と、が表示されている。例えば、事例の名称またはスニペットを選択すると、その事例の詳細が画面に表示される。
【0022】
図4に表した例では、より多くの事例を所定の範囲内でユーザが確認できるように、事例の表示領域にスクロールバー131a~133aが設けられている。ユーザは、スクロールバー131a~133aを操作することで、各事例の表示領域に別の事例を表示させることができる。
または、初期状態において、事例の表示領域が折り畳まれて一部の事例のみが表示されていても良い。ユーザは、例えば、一部の事例が表示された領域をクリックすると、折り畳まれた領域を展開し、より多くの事例を同じ画面上で表示させることができる。
【0023】
出力画面において事例の表示領域が大きすぎると、類似する既存構造物が多い場合に、全ての既存構造物を確認することが困難となる。スクロールバー又は表示領域の折り畳みを設けることで、各既存構造物に関する事例の概要を確認しつつ、全ての類似する既存構造物の確認が容易となる。
【0024】
処理部10は、出力画面において、単語(キーワード)105をさらに表示させても良い。表示される単語は、第1文書から抽出され、第1文書と第2文書との間でマッチした複数の単語の少なくとも一部である。単語を表示させることで、ユーザは、表示されている既存構造物が選定された理由を推測できる。これにより、例えば、選定された既存構造物がユーザの想定と異なる場合には、ユーザは入力する文字列を変更するなどの対策を採ることができる。
【0025】
処理部10は、
図5に表したように、出力画面において、既存構造物ごとに単語(キーワード)を表示させても良い。
図5の例では、単語105aが、情報111により特定される第1既存構造物と対応付けられて表示されている。単語105b及び106cは、それぞれ、情報112に係る第2既存構造物及び情報113に係る第3既存構造物と対応付けられて表示されている。例えば、単語105aの少なくとも1つは、単語105bの少なくとも1つ及び単語105cの少なくとも1つと異なる。
【0026】
単語105aは、第1文書から抽出され、第1文書と、第1既存構造物と関連付けられた第2文書と、の間でマッチした複数の単語の少なくとも一部である。同様に、単語105bは、第1文書から抽出され、第1文書と、第2既存構造物と関連付けられた別の第2文書と、の間でマッチした複数の単語の少なくとも一部である。単語105cは、第1文書から抽出され、第1文書と、第3既存構造物と関連付けられたさらに別の第2文書と、の間でマッチした複数の単語の少なくとも一部である。
【0027】
処理部10は、
図6に表したように、複数の構造物に関する情報111~114、各構造物の評価121~124、及びリンク141~144を画面100bに表示させても良い。ユーザがリンク141~144のいずれかをクリックすると、処理部10は、例えば
図7に表した画面100cのように、リンクに対応する既存構造物の事例の一覧を表示させる。事例に代えて、リンクを、既存構造物の識別情報及び評価と一緒に表示させることで、より多くの既存構造物の識別情報を表示部30に表示できる。
【0028】
以下で、実施形態に係る事例検索システム1の詳細を説明する。
実施形態に係る事例検索システム1において、処理部10は、
図1に表したように、受付部11、第1取得部12、選定部13、第2取得部14、及び出力部15を含む。
【0029】
ユーザは、入力部20を用いて、文字列を入力する。入力される文字列は、構造物を特定できるものであれば良い。文字列は、例えば、構造物の名称、構造物のID、及び構造物の部品名の少なくともいずれかを含む。受付部11は、入力された文字列を受け付ける。
【0030】
第1取得部12は、第1記憶部41を参照し、入力された文字列に対応する新規構造物と関連する1つ以上の文書を取得する。または、ユーザが入力部20を用いて、処理部10に入力する文書を指定しても良い。この場合、第1記憶部41から文書を取得する工程は、省略される。
【0031】
選定部13は、第2記憶部42を参照し、記載されたテキストが第1文書と類似する第2文書を抽出する。第1文書と別の文書との間の類似判定には、一般的なテキスト間の類似度を判定する手法を用いることができる。この類似判定において、第1文書中に含まれる語の同義語がさらに用いられても良い。具体的には、第一文書から抽出した単語が同義語辞書に登録されていた場合、その単語の同義語として登録されている単語も類似度判定に利用する。
【0032】
また、この類似判定において、第1文書に含まれる文の意味的類似度がさらに用いられても良い。具体的には、まず、一般的なテキスト間の類似度判定手法により類似度スコアを得る。この類似度スコアを、文の意味的類似度による類似度スコアを利用して補正する。補正では、例えば、得られたそれぞれの類似度スコアが重みをつけて加算される。文の意味的類似度は、例えば、文の分散表現を求める手法により得られる。文の分散表現では、意味的に類似した文がベクトル空間上で近い距離に配置される。このため、類似度は、例えば、2つのベクトルの距離を用いて求めることができる。
なお、第1取得部12により複数の第1文書が取得された場合、選定部13は、例えばそれらを結合して1つの文書として扱う。
【0033】
選定部13は、第2文書に対応する既存構造物を、ユーザにより特定された新規構造物と類似する既存構造物として選定する。また、選定部13は、新規構造物と選定された既存構造物との類似性を示す評価を決定する。
【0034】
選定部13は、例えば、第1文書と第2文書との間の類似度を、新規構造物と選定された既存構造物との間の類似性を示す評価とする。複数の第2文書が1つの既存構造物に対応している場合、選定部13は、例えば、それらの第2文書を結合して1つの文書として扱う。選定部13は、例えば、その1つの文書と第1文書との間の類似度を算出し、その類似度を上記評価とする。または、選定部13は、複数の第2文書と第1文書との間のそれぞれの類似度を算出し、これらの類似度の平均値を上記評価としても良い。
【0035】
第2取得部14は、選定された既存構造物に関連付けられた事例を、第3記憶部43から取得する。出力部15は、選定された既存構造物の識別情報(構造物の名称、種類、ID等)と、評価と、事例と、を既存構造物ごとに対応付けて表示部30に出力する。
【0036】
この事例検索システム1によれば、上述した通り、新たな構造物を構成する際に参考となる可能性のある事例を探し易くなる。
【0037】
図8は、実施形態に係る別の事例検索システムの構成を例示する模式図である。
図9は、実施形態に係る別の事例検索システムによる表示画面を例示する模式図である。
【0038】
図8に表した事例検索システム2において、処理部10は、算出部16をさらに含む。算出部16は、選定された既存構造物のそれぞれの優先度を算出する。優先度の算出は、例えば、既存構造物に関連付けられた事例の重要度に基づく。
【0039】
例えば、既存構造物には、不適合事例が関連付けられる。不適合事例は、その重要度を示す文字を含む場合がある。例えば、重要性が低い不適合事例は、修正が容易であり軽微な不適合に関する。重要性が高い不適合事例は、設計や組み立ての後戻りが発生して工期が遅れるなどの重大な不適合に関する。重要度を示す文字は、例えば、ランク、区分、又は評価などと呼ばれる場合もある。例えば、文字は、A、B、C、及びDのいずれかである。Aは、その不適合事例が最も重要であることを示し、Dは、その不適合事例が最も軽微であることを示す。文字は、数字であっても良い。例えば、数字が大きいほど、その不適合事例が重要であることを示す。
【0040】
算出部16は、重要度を示す文字を利用し、優先度を算出する。例えば、文字がA、B、C、及びDのいずれかである場合、Aを6、Bを4、Cを2、Dを1とし、重要度を点数化する。算出部16は、ある既存構造物と関連付けられた全ての事例の重要度を点数化し、それらの平均値を優先度とする。算出部16は、選定された各既存構造物について、優先度を算出する。出力部15は、例えば、選定された既存構造物の情報と、評価と、事例の少なくとも一部と、優先度と、を既存構造物ごとに対応付けて表示部30に出力する。
【0041】
出力部15は、優先度を示す数値を表示させても良い。又は、出力部15は、複数の既存構造物の1つの表示態様(第1表示態様)を、複数の既存構造物の別の1つの表示態様(第2表示態様)と異ならせても良い。第1表示態様と第2表示態様との違いは、複数の既存構造物の1つと、複数の既存構造物の別の1つと、の優先度の違いに基づく。
【0042】
例えば、出力部15は、
図9に表したように、画面100bにおける領域151~153の表示態様を互いに異ならせる。領域151は、情報111及び評価121が表示された領域を含む。同様に、領域152は、情報112及び評価122が表示された領域を含む。領域153は、情報113及び評価123が表示された領域を含む。この例では、領域151及び152にドットが付されることで、これらの領域の表示態様が、領域153の表示態様と異なっている。また、領域151のドットの密度と、領域152のドットの密度と、が異なることで、領域151の表示態様が、領域152の表示態様と異なっている。例えば、ドットの密度が高いほど、関連付けられた事例の優先度が高いことを示す。すなわち、情報111により特定される既存構造物に関連付けられた事例の優先度は、情報112により特定される既存構造物に関連付けられた事例の優先度よりも低く、情報113により特定される既存構造物に関連付けられた事例の優先度よりも高い。
【0043】
又は、事例とともに、その事例対するユーザからのフィードバックが記憶される場合、優先度は、このフィードバックを用いて算出されても良い。一例として、事例の閲覧画面では、「役に立った」と表記されたアイコンと、「役に立たなかった」と表記されたアイコンと、が表示される。ユーザは、その事例を読んだ後に、いずれかのアイコンをクリックすることで、その事例に対するフィードバックを送信できる。多くのユーザに「役に立った」とフィードバックされている事例は、その重要度が低い場合でも、他の事例よりも有用である場合がある。ユーザからのフィードバックを用いて優先度を算出することで、このような事例をユーザがより探しやすくなる。
【0044】
図10は、実施形態に係る別の事例検索システムの動作を例示するフローチャートである。
図10に表したフローチャートにおいて、ステップS1~S5は、
図2に表したフローチャートのステップS1~S5と同様に実行される。処理部10は、選定された既存構造物のそれぞれの優先度を算出する(ステップS7)。処理部10は、選定された既存構造物、新規構造物と既存構造物との類似性を示す評価、既存構造物に関連付けられた事例、及び既存構造物の優先度を第1画面に表示させる(ステップS8)。
【0045】
図11は、実施形態に係る事例検索システムを実現するハードウェアを例示する模式図である。
上述した実施形態に係る事例検索システム1(又は2)は、CPU(Central Processing Unit)111と、入力装置112と、出力装置113と、ROM(Read Only Memory)114と、RAM(Random Access Memory)115と、記憶装置116と、通信装置117と、バス118とを含む。各部は、バス118により接続される。
【0046】
CPU111は、ROM114または記憶装置116に予め記憶された各種プログラムと協働して各種処理を実行し、事例検索システム1を構成する各部の動作を統括的に制御する。CPU111は、処理において、RAM115の所定領域を作業領域として用いる。CPU111は、ROM114または記憶装置116に予め記憶されたプログラムと協働して、入力装置112、出力装置113、及び通信装置117等を実現させる。
【0047】
入力装置112は、例えば、キーボード、マウス、及びタッチパネルの少なくともいずれかを含む。入力装置112は、ユーザから入力された情報を指示信号として受け付け、その指示信号をCPU111に出力する。出力装置113は、例えばモニタである。出力装置113は、CPU111から出力された信号に基づいて、各種情報を視認可能に出力する。
【0048】
ROM114は、事例検索システム1の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を書き換え不可能に記憶する。RAM115は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。RAM115は、CPU111の作業領域として機能する。具体的には、事例検索システム1が用いる各種変数およびパラメータ等を一時記憶するバッファ等として機能する。
【0049】
記憶装置116は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。記憶装置116は、事例検索システム1の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を記憶する。記憶装置116は、第2記憶部42として機能する。記憶装置116は、さらに第1記憶部41として機能しても良い。通信装置117は、外部の機器と通信して情報の送受信を行うために用いられる。
【0050】
以上で説明した実施形態によれば、新規構造物の参考となりうる事例をより容易に探し出せる事例検索システムを提供できる。
【0051】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、処理部、入力部、出力部、記憶部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0052】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0053】
その他、本発明の実施の形態として上述した事例検索システムを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての事例検索システムも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0054】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1、2 事例検索システム、 10 処理部、 11 受付部、 12 第1取得部、 13 選定部、 14 第2取得部、 15 出力部、 16 算出部、 20 入力部、 30 表示部、 41 第1記憶部、 42 第2記憶部、 43 第3記憶部、 100a、100b、100c 画面、 101~103 入力領域、 104 アイコン、 111~114 情報、 121~124 評価、 131a~133a スクロールバー、 131~133 事例、 141~144 リンク、 151~153 領域、 S1~S8 ステップ