(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】熱膨張性マイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
(21)【出願番号】P 2018065005
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224949
【氏名又は名称】徳山積水工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰広
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-002133(JP,A)
【文献】特開2006-002134(JP,A)
【文献】国際公開第2006/083041(WO,A1)
【文献】特開2009-120660(JP,A)
【文献】特開2006-045532(JP,A)
【文献】特開2007-197684(JP,A)
【文献】特開2009-203451(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038615(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/052972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
B01J13/14
C08F20/00-20/70
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
前記シェルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び塩化ビニリデンから選択される少なくとも1種からなる重合性モノマー(I)40~90重量%と、カルボキシル基を有し、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)5~50重量%と、分子内に二重結合を2つ以上有する架橋性モノマー(III)0.4~0.9重量%と、金属含有化合物をモノマーの合計量に対して0.1~10重量%を含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体からなり、
前記架橋性モノマー(III)は2~4官能性の(メタ)アクリレートであり、
最大発泡温度が190℃以上、電気伝導度が2.15mS/m未満であ
り、
体積平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、
ナトリウムイオン含有量が0.55重量%以下、塩素イオン含有量が0.25重量%以下である
ことを特徴とする熱膨張性マイクロカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性を有するとともに、発泡倍率が高く、ナトリウムイオンや塩素イオンの含有量が少ない熱膨張性マイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性マイクロカプセルは、意匠性付与剤や軽量化剤として幅広い用途に使用されており、発泡インク、壁紙をはじめとした軽量化を目的とした塗料等にも利用されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られている。例えば、特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の揮発性膨張剤をモノマーと混合した油性混合液を、油溶性重合触媒とともに分散剤を含有する水系分散媒体中に攪拌しながら添加し懸濁重合を行うことにより、揮発性膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
【0003】
熱膨張性マイクロカプセルの製造工程では、粒度分布を制御するために分散剤が添加されており、コロイダルシリカ等を用いることが一般的である。また、スケールの付着を防止するために亜硝酸ナトリウム等が添加されたり、重合開始剤として、種々のイオン発生剤が添加されたりすることも一般的である。通常は、重合終了後に熱膨張性マイクロカプセルを濾過、水洗することで、これらの添加剤成分を除去することが行われている。
しかしながら、熱膨張性マイクロカプセルに、これらの添加剤成分に起因する微量のイオンが不純物として残留することによって、当該熱膨張性マイクロカプセルを使用して作製される成型体に種々の問題が引き起こされることが明らかになった。
【0004】
例えば、製造されたマスターバッチにイオン不純物が多いと、腐食によってスクリューやノズル、金型の摩耗・劣化が促進されるという問題があった。
また、自動車の部材は軽量化志向が強く、シール材、UBC等の様々な部位に熱膨張性マイクロカプセルを含む成型体が使用されているが、成型体にイオン不純物が含まれていると、他の金属部品と接することで錆が誘発されるという問題もあった。
更に、熱膨張性マイクロカプセルを含む粘着剤は、電子部品の製造プロセスの中で熱剥離性を付与する目的で使用されるが、イオン不純物が多く含まれると腐食を誘発し、電子回路の劣化や回路不良につながるという問題があった。
従って、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、ナトリウムイオンや塩素イオン等のイオン不純物の含有量が少ない熱膨張性マイクロカプセルが必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた耐熱性を有するとともに、発泡倍率が高く、ナトリウムイオンや塩素イオンの含有量が少ない熱膨張性マイクロカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び塩化ビニリデンから選択される少なくとも1種からなる重合性モノマー(I)40~90重量%と、カルボキシル基を有し、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)5~50重量%と、分子内に二重結合を2つ以上有する架橋性モノマー(III)0.1~1.0重量%と、金属含有化合物をモノマーの合計量に対して0.1~10重量%を含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体からなり、最大発泡温度が190℃以上、電気伝導度が2.15mS/m未満である熱膨張性マイクロカプセルである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
特許第5612245号には、熱膨張性マイクロカプセルの洗浄方法を制御することにより、イオン性不純物の含有量が低減される製法が開示されている。
このような方法では、比較的簡単にイオン性不純物が取り除かれると考えられるが、シェルを構成するモノマー組成物がイオンと反応するモノマー(酸モノマー等)を含まないため、得られる熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性が不充分なものとなっていた。
これに対して、本発明者らは鋭意検討した結果、重合性モノマー(I)、ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)、架橋性モノマー(III)及び金属含有化合物を含有し、かつ、各成分の比率を所定の範囲内とした場合、高温度域において安定した発泡性能を実現することができ、発泡倍率が高くなることを見出した。
また、このような熱膨張性マイクロカプセルは、金属劣化防止性が高く、腐食や錆を避ける種々の用途に好適に使用するこが可能な熱膨張性マイクロカプセルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを構成するシェルは、重合性モノマー(I)40~90重量%と、ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)5~50重量%と、架橋性モノマー(III)0.1~1.0重量%と、金属含有化合物をモノマーの合計量に対して0.1~10重量%を含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体からなる。
【0010】
上記重合性モノマー(I)は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び塩化ビニリデンから選択される少なくとも1種からなる。
上記重合性モノマー(I)を添加することで、シェルのガスバリア性を向上させることができる。
【0011】
上記モノマー組成物中の重合性モノマー(I)の含有量の下限は40重量%、上限は90重量%である。40重量%以上とすることで、シェルのガスバリア性を高めて発泡倍率を向上させることができる。90重量%以下とすることで、耐熱性を向上させたり、黄変を防止したりすることができる。好ましい下限は50重量%、好ましい上限は80重量%である。
【0012】
上記カルボキシル基を有し、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)としては、例えば、イオン架橋させるための遊離カルボキシル基を分子当たり1個以上持つものを用いることができる。
具体的には例えば、不飽和ジカルボン酸やその無水物又は不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記不飽和ジカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等が挙げられる。
これらのなかでは、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
【0013】
上記モノマー組成物中における、上記カルボキシル基を有し、炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)の含有量の下限は5重量%、上限は50重量%である。5重量%以上とすることで、最大発泡温度を高めることができ、50重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることが可能となる。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は30重量%である。
【0014】
上記モノマー組成物は、分子内に二重結合を2つ以上有する架橋性モノマー(III)を含有する。上記架橋性モノマー(III)は、架橋剤としての役割を有する。上記架橋性モノマー(III)を含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
【0015】
上記架橋性モノマー(III)としては、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有するモノマーが挙げられ、具体例には例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、重量平均分子量が200~600であるポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートを用いてもよい。
上記3官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのなかでは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能性のものや、ポリエチレングリコール等の2官能性の(メタ)アクリレートが、アクリロニトリルを主体としたシェルには比較的均一に架橋が施される。
【0016】
上記モノマー組成物中における、上記架橋性モノマー(III)の含有量の下限は0.1重量%、上限は1.0重量%である。上記架橋性モノマー(III)の含有量を0.1重量%以上とすることで、架橋剤としての効果を充分に発揮することができ、上記架橋性モノマー(III)の含有量を1.0重量%以下とすることで、熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率を向上させることが可能となる。上記架橋性モノマー(III)の含有量の好ましい下限は0.15重量%、好ましい上限は0.9重量%である。
【0017】
上記モノマー組成物は、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及びスチレン系モノマーから選択される少なくとも1種からなる重合性モノマー(IV)を含有することが好ましい。上記重合性モノマー(IV)を含有することで、熱膨張性マイクロカプセルと熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂の混和性が良好となり、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体が優れた外観を有する。
なかでも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類、又は、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環・芳香環・複素環含有メタクリル酸エステル類が好ましい。
【0018】
上記モノマー組成物中における、上記重合性モノマー(IV)の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。上記重合性モノマー(IV)の含有量を10重量%以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた組成物の分散性を向上させることができ、25重量%以下とすることで、セル壁のガスバリア性を向上させて、熱膨張性を改善することが可能となる。上記重合性モノマー(IV)の含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は22重量%である。
【0019】
上記モノマー組成物は、金属含有化合物を含有する。
上記金属含有化合物を含有することで、上記ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)のカルボキシル基との間でイオン架橋が起こることから、架橋効率が上がり、耐熱性を高くすることが可能となる。その結果、高温領域において長時間破裂、収縮の起こらない熱膨張性マイクロカプセルとすることが可能となる。また、高温領域においてもシェルの弾性率が低下しにくいことから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行う場合であっても、熱膨張性マイクロカプセルの破裂、収縮が起こることがない。
また、共有結合でなくイオン架橋が起こることによって、熱膨張性マイクロカプセルの粒子形状が真球に近くなり、歪みが生じにくくなる。これは、イオン結合による架橋が、共有結合による架橋に比べて結合力が弱いため、重合中のモノマーからポリマーへ転化時において、熱膨張性マイクロカプセルの体積が収縮する際に均一に収縮が生じることが原因と考えられる。
【0020】
上記金属含有化合物としては、金属カチオン塩、金属含有有機化合物が挙げられる。
上記金属カチオン塩の金属カチオンとしては、上記ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)と反応してイオン架橋させる金属カチオンであれば、特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Zn、Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Al、Ti、Ru、Fe、Ni、Cu、Cs、Sn、Cr、Pb等のイオンが挙げられる。これらのなかでは、2~3価の金属カチオンであるCa、Zn、Alのイオンが好ましく、特にZnのイオンが好適である。
また、上記金属カチオン塩としては、上述の金属カチオンのハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
これらの金属カチオン塩は、単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0021】
なお、上記金属カチオン塩を2種以上用いる場合の組み合わせとしては特に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンと上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属カチオンとを組み合わせて用いることが好ましい。上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンを有することにより、カルボキシル基等の官能基が活性化され、上記アルカリ金属以外の金属カチオンと上記カルボキシル基等との反応を促進させることができる。上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、例えば、Na、K、Li、Ca、Ba、Sr等が挙げられ、なかでも塩基性の強いNa、K等を用いることが好ましい。
【0022】
上記金属含有有機化合物としては、アルキル金属のほか、金属キレート化合物、金属エステル、金属アシレート、金属アルコキシド等が挙げられる。なお、上記金属含有有機化合物の金属としては、上述の金属カチオンと同様のものが使用できる。
【0023】
上記金属含有化合物の含有量の好ましい下限は、モノマーの合計量に対して0.1重量%、好ましい上限が10重量%である。0.1重量%以上とすることで、耐熱性を向上させることができ、10重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることができる。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0024】
上記モノマー組成物中には、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を含有させる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。
具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル等が挙げられる。
また、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
また、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
更に、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
加えて、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物等が挙げられる。
【0025】
上記シェルを構成する重合体の重量平均分子量の好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。10万未満であると、シェルの強度が低下することがあり、200万を超えると、シェルの強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0026】
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0027】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。
上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。
上記揮発性膨張剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、石油エーテル、イソオクタン、オクタン、デカン、イソドデカン、ドデカン、ヘキサンデカン等の低分子量炭化水素等が挙げられる。
また、CCl3F、CCl2F2、CClF3、CClF2-CClF2等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。なかでも、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、イソオクタン、イソドデカン及び、これらの混合物が好ましい。これらの揮発性膨張剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状となる熱分解型化合物を用いてもよい。
【0028】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルでは、上述した揮発性膨張剤のなかでも、炭素数が5以下の低沸点炭化水素を用いることが好ましい。このような炭化水素を用いることにより、発泡倍率が高く、速やかに発泡を開始する熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いることとしてもよい。
【0029】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、電気伝導度が2.15mS/m未満である。
電気伝導度を2.15mS/m未満とすることで、イオン性不純物の含有量を低減することができる。
また、上記電気伝導度は2.00mS/m未満であることが好ましい。上記電気伝導度の下限は特に規定されないが0.001mS/m以上とすることが好ましい。
なお、上記電気伝導度は、熱膨張性マイクロカプセル1gをイオン交換水1kgに添加し、60℃の水浴で1時間加熱した後、25℃まで空冷したろ液を電気伝導度計で測定することで得られる。
【0030】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、ナトリウムイオン含有量が0.6重量%未満、塩素イオン含有量が0.3重量%未満であることが好ましい。これにより、自動車部材、塗料、粘着剤、インク等に好適に使用することができる。
なお、熱膨張性マイクロカプセルのナトリウムイオン含有量は、ICPで測定することができる。
また、熱膨張性マイクロカプセルの塩素イオン含有量は、熱膨張性マイクロカプセル1mgを純水1mlに分散し、100℃で1時間抽出したのち、一晩静置し、得られた抽出水をフィルター濾過後、イオンクロマトグラフによる塩素イオン含有量を定量し、熱膨張性マイクロカプセル1gあたりのイオン含有量(mg/g)を算出する方法で測定する。
【0031】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の好ましい下限が190℃である。190℃以上とすることで、耐熱性が高くなり、熱膨張性マイクロカプセルを含有する組成物を高温領域で塗工する際に、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することを防止することができる。また、塗工時における熱膨張性マイクロカプセル同士の凝集を抑制して、外観を良好なものとすることができる。より好ましい下限は200℃、好ましい上限は240℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。
【0032】
また、発泡開始温度(Ts)の好ましい上限は175℃である。175℃以下とすることで、発泡が容易となり所望の発泡倍率を実現することができる。好ましい下限は130℃、より好ましい上限は170℃である。
【0033】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は40μmである。5μm未満であると、得られる成形体の気泡が小さすぎるため、発泡倍率が不充分となることがあり、40μmを超えると、得られる塗工物の気泡が大きくなりすぎるため、外観の面で問題となることがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は30μmである。
【0034】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、水性媒体を調製する工程、モノマー組成物と揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
上記モノマー組成物としては、上述した重合性モノマー(I)40~90重量%と、上記ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)5~50重量%と、上記架橋性モノマー(III)0.1~1.0重量%と、金属含有化合物をモノマーの合計量に対して0.1~10重量%を含有するものを用いることができる。
【0035】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0036】
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0038】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物等が挙げられる。また、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0039】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0040】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0041】
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、ビニル系モノマー100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は10重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が2重量部である。
【0042】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0~100重量部が好ましい。
【0043】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3~4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0044】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、モノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。
具体的には、重合性モノマー(I)40~90重量%と、ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)5~50重量%と、架橋性モノマー(III)0.1~1.0重量%と、金属含有化合物をモノマーの合計量に対して0.1~10重量%を含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー組成物及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0045】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0046】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上述した工程を経て得られた分散液を、加熱することによりモノマーを重合させる工程、及び、洗浄する工程を行うことにより、製造することができる。このような方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度が高く、耐熱性に優れ、高温領域での塗工時においても破裂、収縮することがない。
【0047】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法では、洗浄工程を行う。
上記洗浄工程を行うことで、特に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を除去することが可能となる。その結果、上記電気伝導度が2.15mS/m未満、ナトリウムイオン含有量が0.6重量%未満、及び、塩素イオン含有量が0.3重量%未満を達成することが可能となる。
上記洗浄工程としては、例えば、浸漬洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄方法等が挙げられ、さらにはこれらと超音波や揺動を合わせた洗浄方法等を適用することができる。
また、上記洗浄工程は、脱水工程と併用して行うことで生産効率を向上させることが可能となる。具体的には以下の方法が挙げられる。
圧搾脱水機で供給されたスラリーをウエットケーキにした後に所定量の洗浄水(イオン交換水が望ましい)を脱水機内に供給し再度、圧搾する。再度、洗浄水を供給し圧搾する。この工程を数回繰り返す。ここで脱水機に供給するスラリー量と洗浄水の量や比率及び洗浄回数が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を除去する上で重要となる。
この工程を経ることで、無機塩を除去することが可能となり、半導体用途や自動車部材用途(成形用途)における設備の腐食を防止することができる。
【0048】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを含有する成形用組成物を成形することで、自動車部材が得られる。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを含有する発泡用組成物は、塗料、粘着剤、インクとして使用することができる。なお、本発明の熱膨張性マイクロカプセルを含有する熱剥離性粘着層を基材に積層することで半導体用熱剥離テープとしても用いることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、優れた耐熱性を有するとともに、発泡倍率が高く、ナトリウムイオンや塩素イオンの含有量が少ない熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、自動車部材、塗料、粘着剤及びインクに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0051】
(参考例1)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
固形分20重量%のコロイダルシリカ130重量部、ポリビニルピロリドン6重量部、塩化ナトリウム640重量部をイオン交換水2,000重量部に加え混合した後、pH3.5に調整し水系分散媒体を調製した。
アクリロニトリル19.9重量部、メタクリロニトリル29.9重量部、メタクリル酸29.9重量部、メタクリル酸メチル19.9重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.4重量部、水酸化亜鉛0.25重量部を混合して均一溶液のモノマー組成物とした。これに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)10重量部、イソペンタン14重量部及びイソオクタン10重量部を添加してオートクレーブ中に仕込み混合した。
その後、水系分散媒体をオートクレーブ中に仕込み、10分間1,000rpmで攪拌後、窒素置換し、反応温度60℃で15時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。
その後、得られた重合スラリー170Lを圧搾脱水装置(石垣社製、フィルタープレス)に供給し、脱水した後に洗浄水800Lを脱水機に供給し、この操作を19回繰り返して洗浄工程を行った後、乾燥させて、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
【0052】
(実施例2~5、比較例1~5)
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、水酸化亜鉛、コロイダルシリカを表1に示す組成で混合し、モノマー組成物とした後、表1に示すスラリー量、洗浄水量で洗浄工程を行った以外は参考例1と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを得た。
なお、実施例5、比較例4では、イソペンタン14重量部及びイソオクタン10重量部に代えて、n-ペンタン24重量部を添加した。
また、比較例2では、トリメチロールプロパントリメタクリレートに代えて、金属キレート化合物(チタンキレート化合物、マツモトファインケミカル社製)を添加した。
【0053】
(実施例6)
アクリル酸2-エチルヘキシル29重量部、アクリル酸メチル67重量部、メタクリル酸メチル5重量部をトルエン溶媒下で重合したアクリル系共重合体(重量平均分子量50万)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤を調製した。
得られたアクリル系粘着剤100重量部にポリウレタン系架橋剤2重量部、参考例1で得られた熱膨張性マイクロカプセル30重量部を添加し、粘着剤組成物を得た。この粘着性組成物を厚さ100μmのポリエステルフィルム上に乾燥後の粘着剤組成物層の厚みが50μmになるように塗布し、乾燥させて熱剥離シートを作製した。
【0054】
(実施例7、比較例6、7)
表2に示す熱膨張性マイクロカプセルを使用した以外は、実施例6と同様にして熱剥離シートを作製した。
【0055】
(評価方法)
得られた熱膨張性マイクロカプセル及び熱剥離シートの性能を以下の方法で評価した。結果を表1及び2に示した。
【0056】
(1)熱膨張性マイクロカプセルの評価
(1-1)体積平均粒子径
粒度分布径測定器(LA-950、HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0057】
(1-2)発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位量
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大変位量(Dmax)及び最大発泡温度(Tmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度、その変位の最大値を最大変位量とし、最大変位量における温度を最大発泡温度とした。
【0058】
(1-3)電気伝導度
得られた熱膨張性マイクロカプセル1gをイオン交換水1kgに添加し、分散液を作製した。分散液を60℃の水浴で一時間加熱抽出した。加熱後の分散液をろ紙濾過後、25℃まで空冷し、得られたろ液について、電気伝導度計(東亜社製、DKKECメーターCM-31P)を用いて電気伝導度を測定した。
【0059】
(1-4)ナトリウムイオン含有量
得られた熱膨張性マイクロカプセルを硫酸及び硝酸にて湿式分解した後、ICP-AES(アジレント・テクノロジー社製)を用いてナトリウムイオン含有量を測定した。
【0060】
(1-5)塩素イオン含有量
得られた熱膨張性マイクロカプセルの1mg/mL水溶液を調製した。その後、100℃で30分加熱して一晩静置した。得られた抽出水をフィルター濾過した後、イオンクロマトグラフィー(島津製作所社製、HIC-SP サプレッサイオンクロマトグラフ)を用いて塩素イオン含有量を測定した。
【0061】
(2)熱剥離シートの腐食性の評価
得られた熱剥離シートをアルミニウム蒸着シリコンウェハ及び銅版に取り付けて、温度40℃、相対湿度92%の環境下で7日間放置し、190℃で1分間加熱した後、シートを剥離し、それぞれの表面の腐食度合いを目視で観察した。少しでも腐食がみられたものを「腐食あり」と判定した。結果を表2に示した。
なお、本評価は、水での抽出を行わないため、対象物と直接接触した場合の腐食防止性を確認することができる。
【0062】
【0063】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、優れた耐熱性を有するとともに、発泡倍率が高く、ナトリウムイオンや塩素イオンの含有量が少ない熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。