(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】冷菓又は凍結飲料用物性改良剤
(51)【国際特許分類】
A23G 9/34 20060101AFI20220825BHJP
A23G 9/46 20060101ALI20220825BHJP
A23G 9/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A23G9/34
A23G9/46
A23G9/00 101
(21)【出願番号】P 2018092048
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳代
(72)【発明者】
【氏名】黒田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松原 拓哉
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-354990(JP,A)
【文献】特開2008-136364(JP,A)
【文献】特開2014-132912(JP,A)
【文献】特開2002-253126(JP,A)
【文献】特開2008-220268(JP,A)
【文献】特開2015-159790(JP,A)
【文献】沙嵩種子表層を覆う高吸水性多糖類の応用,浦上財団研究報告書,2001, vol.9, p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷菓の気泡安定性及び/又は造形性を改良するための剤であって、以下1)及び2)を満たす剤;
1)サバクヨモギシードガムを含有する、
2)前記冷菓中のサバクヨモギシードガムが0.01~0.4重量%となるように用いられる。
【請求項2】
冷菓
に対して、サバクヨモギシードガムを0.01~0.4重量%添加することを特徴とする、冷菓
の気泡安定化及び/又は造形性付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷菓の気泡安定性、保形性、造形性、ヒートショック耐性(離水抑制、糖の染み出し抑制)、といった特性を改良する方法が種々検討されている。とりわけ、食品多糖類を使用することにより冷菓の特性を改良する方法について、数多く検討されている。
【0003】
食品多糖類は特異な物性を有し、それ自身が食品素材として有用なだけでなく、他の食品に少量添加することにより、食品の物性や機能性を改良する作用がある。冷菓においては、食感、保形性等の品質は、美味しさを決定付ける重要な因子である。従って、安定した美味しい冷菓を製造するためには、食品多糖類が有する物性、機能性を有効に活用して、冷菓の食感、保形性等を向上させることが肝要である。
【0004】
食品多糖類の起源は様々であり、その物性、機能性も多種多様である。食品多糖類の起源としては、種子、根茎、樹液、果実、海藻、微生物、動物由来等がある。種子を起源とするものとしては、ガラクトマンナン(グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム等)、水溶性ヘミセルロース、タマリンドシードガム、大豆多糖類、澱粉、サイリウムシードガム等が挙げられる。根茎を起源とするものとしては、コンニャク粉、グルコマンナン、澱粉等が挙げられる。樹液を起源とするものとしては、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム等が挙げられる。果実を起源とするものとしては、ペクチン等が挙げられる。海藻を起源とするものとしては、寒天、カラギナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)等が挙げられる。微生物を起源とするものとしては、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、カードラン等が挙げられる。動物由来を起源とするものとしては、ゼラチン等が挙げられる。近年、冷菓に要求される特性は多様化しており、その特性を満たすために必要な、新規素材の開発が進められている。
【0005】
食品多糖類の一つとして、サバクヨモギシードガムが知られている。特許文献1には、サバクヨモギシードガムが、水産練り製品、パン、麺類等の品質改良を目的とする新しい食品素材として期待できることが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1には、サバクヨモギシードガムが、冷菓の食感、保形性等の品質を向上させることについて開示されていない。
【0007】
また、凍らせることによって、揉み崩しながらシャーベット状飲料として飲用することができる凍結飲料は、融解しながら飲む際、融け始めは味が濃く、融けていくにしたがって味が薄くなるといった特性を有しており、改良が求められている。しかし、特許文献1には、サバクヨモギシードガムによって、凍結飲料の融解過程において呈味の調整を図ることができることについて開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、冷菓の気泡安定性、保形性、造形性、ヒートショック耐性(離水抑制、糖の染み出し抑制)を向上でき、また凍結飲料の融解過程においてその呈味を調整することができる冷菓又は凍結飲料用物性改良剤、前記の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有する冷菓又は凍結飲料、前記の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を添加することを特徴とする冷菓又は凍結飲料の物性改良方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討したところ、以下の発明に想到した。
項1.サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤。
項2.項1に記載の物性改良剤を含有する冷菓又は凍結飲料。
項3.冷菓又は凍結飲料に、項1に記載の物性改良剤を添加することを特徴とする、冷菓又は凍結飲料の安定化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤、冷菓又は凍結飲料の安定化方法により、冷菓の保形性、造形性、気泡安定性、ヒートショック耐性(離水抑制、糖の染み出し抑制)が向上し、また凍結飲料の融解過程における呈味が調整される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有するラクトアイスの、経過時間と融解率との関係を示すグラフである。
【
図2】冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有するアイスキャンデーの、経過時間と融解率との関係を示すグラフである。
【
図3】冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有する凍結飲料の、融解率と可溶性固形分濃度(Brix)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤は、サバクヨモギシードガムを含有する。サバクヨモギシードガムは、キク科サバクヨモギ(Artemisia halodendron TURCZ. ex BESS., Artemisia ordosica KRASCHEN., Artemisias sphaerocephala KRASCH)の種子の外皮を、脱脂、乾燥して得られたものである。サバクヨモギシードガムの主成分は、α-セルロースを基本骨格に持つ、中性多糖類及び酸性多糖類である。
【0014】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が対象とする冷菓としては、アイスクリーム類(アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク等)、ソフトクリーム、アイスケーキ、クラッカーサンドアイス、コーン入りアイス、カップ入りアイス、シューアイス、アイスもなか、ソフトクリームミックス、アイスクリームミックス、シャーベット、アイスキャンデー、みぞれ、かき氷(微細氷を含む)、フローズンヨーグルト、シェイク等が挙げられる。
【0015】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が対象とする凍結飲料は、一般に飲料として流通している全ての飲料、例えば、飲料水(例えば、天然水等)、茶(例えば、緑茶、紅茶、中国茶、烏龍茶、ハブ茶、麦茶、そば茶、ブレンド茶、ほうじ茶、プーアル茶、うめこぶ茶、マテ茶等)、清涼飲料水(例えば、柑橘類、リンゴ、ブドウ、パイナップル、ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、マンゴ、パパイヤ等の果汁飲料、ノンアルコール飲料等)、炭酸飲料(例えば、サイダー、コーラ等)、スポーツ飲料、コーヒー、ココア、紅茶、アルコール性飲料(例えば、酎ハイ、リキュール、カクテル等)、酒類(例えば、ビール、ワイン、ジン、ラム酒、ウォッカ、テキーラ、清酒、焼酎、ブランデー、ウィスキー等)、牛乳、豆乳、野菜等のジュース(トマト等)又はこれらを含む飲料等を凍結させたものが挙げられる。なかでも、甘味等を含む呈味成分が含有されているものが好ましい。
【0016】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が奏する冷菓の保形性とは、冷菓を保存温度より高い温度の環境下に放置した際に、冷菓の融解を抑制し、形状を長時間保持する性能を意味する。冷菓の造形性とは、冷菓を特定の形状に造形する際に、所望の形状が得られる性能を意味する(例えばソフトクリームの渦巻状の形状等)。冷菓の気泡安定性とは、冷菓に気泡を含有させる場合に、冷菓をおよそ-35℃以下で硬化するまでの間、その気泡が安定して冷菓に含有される性能を意味する。
【0017】
冷菓は、冷凍庫の開閉や保存流通中の温度変化(ヒートショック)によって溶融することがある。その結果、冷菓から水分が染み出してしまう離水現象や、冷菓から糖分が染み出してしまう現象が起こる。冷菓のヒートショック耐性とは、冷菓の温度変化に起因する離水を抑制する性能や、糖の染み出しを抑制する性能を意味する。
【0018】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が奏する凍結飲料の融解過程における呈味の調整とは、凍結飲料の融け始めと、融けていくにしたがっての呈味の差を低減する性能を意味する。
【0019】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤は、使用目的や使用する冷菓又は凍結飲料の原料に応じて、冷菓又は凍結飲料への添加量を適宜調整することができる。例えば、冷菓の保形性、造形性を向上させる場合における冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤中のサバクヨモギシードガム換算で、冷菓に対して好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.4重量%である。添加量が0.005重量%以上であれば、冷菓に十分な保形性、造形性が付与できるため好ましい。添加量が0.8重量%以下であれば、冷菓の粘度上昇によるハンドリング性の低下が抑制できるため好ましい。
【0020】
冷菓の気泡安定性を向上させる場合における冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤中のサバクヨモギシードガム換算で、冷菓に対して好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.4重量%である。添加量が0.005重量%以上であれば、冷菓に十分な気泡安定性が付与できるため好ましい。添加量が0.8重量%以下であれば、冷菓の粘度上昇によるハンドリング性の低下が抑制できるため好ましい。
【0021】
冷菓のヒートショック耐性(離水抑制、糖の染み出し抑制)を向上させる場合における冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤中のサバクヨモギシードガム換算で、冷菓に対して好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.4重量%である。添加量が0.005重量%以上であれば、冷菓に十分なヒートショック耐性が付与できるため好ましい。添加量が0.8重量%以下であれば、冷菓の粘度上昇によるハンドリング性の低下が抑制できるため好ましい。
【0022】
凍結飲料の融解過程における呈味の調整を図る場合における冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤中のサバクヨモギシードガム換算で、凍結飲料に対して好ましくは0.005~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.2重量%である。添加量が0.005重量%以上であれば、凍結飲料を融解しながら飲む際、融け始めは味が濃く、融けていくにしたがって味が薄くなるのを十分に抑制することができるため好ましい。添加量が0.5重量%以下であれば、凍結飲料の粘度を飲用に適切なものとすることができるため好ましい。
【0023】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤には、サバクヨモギシードガムの効果を妨げない範囲において、他の多糖類等を添加してもよい。他の多糖類としては、例えば、グルコマンナン、ガラクトマンナン(例えば、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム等)、タマリンドシードガム、カラギナン、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、ウェランガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、HMペクチン、LMペクチン、カードラン、アルギン酸類(例えば、アルギン酸、アルギン酸塩等)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、大豆多糖類、乳化性澱粉等が挙げられる。他の多糖類は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤には、各種添加物や食品原料を添加してもよい。各種添加物や食品原料としては、例えば香料、甘味料、酸味料、着色料、苦味料、乳化剤、ビタミン類、ミネラル類、機能性素材、果肉、植物の種実、根茎、木皮、葉、花及びこれらからの抽出物、動物性油脂、植物性油脂、動物性タンパク質、植物性タンパク質、デンプン、デンプン分解物(デキストリン)、水溶性食物繊維、難溶性食物繊維、ポリフェノール類、ペプチド、アミノ酸、アルコール等が挙げられる。
【0025】
本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の性状に特に制限はなく、任意の方法で、液状、粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル剤状等の形状にすることが可能である。冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を液状にする場合、サバクヨモギシードガムを水等の溶媒に溶解して液状にすることができる。
【0026】
次に、本発明の冷菓又は凍結飲料について以下に説明する。本発明の冷菓又は凍結飲料は、本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有する。冷菓又は凍結飲料としては、本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が対象とする冷菓又は凍結飲料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
本発明の冷菓又は凍結飲料は、可溶性固形分の割合が、好ましくは1~60重量%、より好ましくは10~40重量%である。可溶性固形分を構成する成分としては、通常冷菓又は凍結飲料に使用される水溶性の固形分であれば特に制限はない。具体的には、サバクヨモギシードガム以外に、本発明の効果を奏する限りにおいて、例えば、油脂、果汁、タンパク質、甘味料、無脂乳固形分、香料、酸味料、色素、乳化剤、酸化防止剤等から選択された添加材料を、所定の割合で混合したものを用いることができる。なお、凍結飲料については、甘味料を含むものが好ましい。本発明によれば、凍結飲料の融解過程において呈味、特に甘味を調整することができるためである。
【0028】
油脂としては、例えば、植物油脂(例えば、ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、カカオ脂、パーム核油等)、乳脂肪分(例えば、バター等)、あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等が挙げられる。油脂は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0029】
タンパク質としては、例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳、脱脂濃縮乳、生クリーム等に含まれる乳由来のタンパク質、卵白等に含まれる卵由来のタンパク質等が挙げられる。タンパク質は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0030】
甘味料としては、例えば、糖類(例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、粉末水あめ、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等)、糖アルコール類(例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等)、高甘味度甘味料(例えば、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、アドバンテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイド、ラカンカ抽出物に含まれるモグロシドV等)等が挙げられる。
【0031】
乳化剤としては、冷菓又は凍結飲料用途に一般的に用いられている乳化剤であればよい。具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩等)等が挙られる。
【0032】
本発明の冷菓又は凍結飲料には、例えば、カルシウム等のミネラル分、ビタミン、カテキン、プロテイン類等の栄養強化に用いられる食品素材を添加してもよい。また、冷菓又は凍結飲料の風味、食感にバラエティ感を付与するために、冷菓又は凍結飲料に、例えば、果肉、ナッツ類、クッキー、チョコレート、クルトン、パン、ソース類等の不溶性の固形分を添加してもよい。
【0033】
本発明の冷菓又は凍結飲料の製造方法に特に制限はなく、冷菓又は凍結飲料の種類に応じて、通常の製造方法を利用すればよい。
【0034】
次に、本発明の冷菓又は凍結飲料の安定化方法について以下に説明する。本発明の冷菓又は凍結飲料の安定化方法は、本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を冷菓又は凍結飲料に添加することを特徴とする。冷菓又は凍結飲料としては、本発明の冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が対象とする冷菓又は凍結飲料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0035】
本発明の冷菓又は凍結飲料の安定化方法における、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の冷菓又は凍結飲料への添加量は、上記の冷菓又は凍結飲料に対する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量と同様の範囲であればよい。
【0036】
本発明の冷菓又は凍結飲料の安定化方法における、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を冷菓又は凍結飲料に添加する方法に特に制限はなく、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤が冷菓又は凍結飲料中に均一に溶解又は分散できる方法であればよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、文中の「*」は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0038】
<実験例1>ラクトアイス1
以下の処方に従い、ラクトアイス1を調製した。調製したラクトアイス1は、全固形分33.6重量%、無脂乳固形分8.6重量%、植物油脂分9.0重量%、甘味度14.3であった。
【0039】
<処方> (重量%)
砂糖 13.5
水あめ 3.0
脱脂粉乳 9.0
ヤシ油 9.0
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表1参照
ホモゲン※DM-S* 0.2
ワニラフレーバー NO.93-I* 0.1
イオン交換水にて全量 100.0
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤:サバクヨモギシードガム
ホモゲン※DM-S*:グリセリン脂肪酸エステル
ワニラフレーバー N0.93-I*:香料
【0040】
<ラクトアイス1の調製方法>
1)容器に水あめ及びイオン交換水を投入し、撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤、乳化剤を投入し、撹拌下80℃まで昇温した。
2)80℃に到達後、ヤシ油を投入し、温度を保持したまま10分間撹拌した。
3)ホモジナイザーにて均質化(第一段:10MPa、第二段:5MPa)した。
4)5℃以下まで冷却後、一晩エージングした。
5)フリージング(オーバーラン:約80重量%)を行い、カップに充填して-40℃まで急速凍結した。
【0041】
以下の方法により、ラクトアイス1の離水抑制を評価した。結果を表1に示す。
<離水抑制>
-20℃の試料(ラクトアイス1)をカップから取り出し、室温(25℃)にてろ紙の上に試料を静置し、60分経過時のろ紙の質量を測定し、以下の計算式から離水率を測定した。離水率が低いほど、離水抑制に優れることを意味する。
離水率(重量%)=[(60分経過時のろ紙重量-ろ紙の元重量)/試料の元重量]×100
【0042】
以下の方法により、ラクトアイス1の造形性を評価した。結果を表1に示す。
<造形性>
フリージング直後の-4.5℃の試料(ラクトアイス)を、ステンレスの口金を取り付けたポリエチレン袋を用いて円錐状に成形し、室温(25℃)にて5分間静置後、その形状を観察して、以下の判断基準に基づき造形性を評価した。
[造形性の判断基準]
◎:口金の凹凸の形がくっきりと残っていて、エッジがある
○:口金の凹凸の形がやや丸みを帯びているものの、はっきり残っている
△:口金の凹凸の形が丸みを帯びてはっきりしなくなっていて、表面のテカリがある
×:口金の凹凸の形がなくなりかけている
【0043】
【0044】
表1から明らかなように、ラクトアイス1に冷菓又は凍結飲料用物性改良剤(サバクヨモギシードガム)を添加することにより、ラクトアイス1の離水が抑制され、ヒートショック耐性が向上する。離水抑制は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量が多いほど向上する。また、ラクトアイスに冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を添加することにより、ラクトアイスの造形性が向上する。造形性は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量が0.05~0.1重量%付近のときに最も良好となる。
【0045】
<実験例2>ラクトアイス2
以下の処方に従い、ラクトアイス2を調製した。調製したラクトアイス2は、全固形分33.6重量%、無脂乳固形分8.6重量%、植物油脂分9.0重量%、甘味度14.3であった。
<処方> (重量%)
砂糖 13.5
水あめ 3.0
脱脂粉乳 9.0
ヤシ油 9.0
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表2参照
ホモゲン※DM-S* 0.2
ワニラフレーバー N0.93-I* 0.1
イオン交換水にて全量 100.0
【0046】
上記の離水抑制性の評価方法と同様の方法により、ラクトアイス2の離水抑制を評価した。結果を表2に示す。
【0047】
【0048】
以下の方法により、ラクトアイス2の保形性を評価した。結果を表3に示す。また、表3の結果をグラフ化した(
図1)。
<保形性>
-20℃の試料(ラクトアイス2)を網の上に載せ、室温(25℃)の環境下に放置し、経過時間と融解率の関係を調べた。融解率は、以下の計算式から算出した。融解率が低いほど、保形性に優れることを意味する。
融解率(%)=(開始から任意の経過時間において網から垂れ落ちた試料の重量/試料の元重量)×100
【0049】
【0050】
表3、
図1から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したラクトアイス2(実験例2-1、2-4)は、キサンタンガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したラクトアイス2(実験例2-7)と比較して融解率が低く、保形性に優れる。
【0051】
<実験例3>シャーベット
以下の処方に従い、シャーベットを調製した。調製したシャーベットは、全固形分23.8重量%、甘味度17であった。
【0052】
<処方> (重量%)
5倍濃縮柑橘混合混濁果汁 5.0
果糖ぶどう糖液糖 10.0
水あめ 8.0
砂糖 7.0
クエン酸 0.3
オレンジフレーバーNO.2902(P)* 0.07
オレンジエッセンスNO.51237(N)* 0.06
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表1参照
イオン交換水にて全量 100.0
オレンジフレーバーNO.2902(P)*、オレンジエッセンスNO.51237(N)*:香料
【0053】
<シャーベットの調製方法>
1)容器に果糖ぶどう糖液糖、水あめ及びイオン交換水を投入し、撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖と冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を投入し、撹拌下80℃まで昇温し、温度を保持したまま10分間撹拌した。
2)5℃以下まで冷却後、果汁、酸、香料を添加した。
3)フリージング(オーバーラン:約70重量%)を行い、氷管に充填して-30℃で硬化させた。
【0054】
以下の方法により、シャーベットの糖の染みだし抑制を評価した。結果を表4に示す。
<糖の染み出し抑制>
試料(シャーベット)約50gをろ紙で挟み、チャック付きビニール袋に入れたものをさらにプラスチックケースに入れ、試料同士が重ならないよう静置した。-15℃で3日間保存した後のろ紙の重量を測定し、試料から染み出した糖の重量を算出した。試料から染み出した糖の重量が低いほど、糖の染み出し抑制効果に優れることを意味する。
【0055】
【0056】
表4から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したシャーベット(実験例3-2~3-5)は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有しないシャーベット(実験例3-1)と比較して、糖の染み出し抑制効果に優れる。
【0057】
<実験例4>アイスキャンデー
以下の処方に従い、アイスキャンデーを調製した。調製したアイスキャンデーは、全固形分16.6重量%であった。
【0058】
<処方> (重量%)
果糖ぶどう糖液糖 11.0
砂糖 8.0
クエン酸 0.05
青色1号 0.0001
シャンペンサイダーエッセンス* 0.1
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表5参照
イオン交換水にて全量 100.0
青色1号:着色料
シャンペンサイダーエッセンス*:香料
【0059】
<アイスキャンデーの調製方法>
1)容器に果糖ぶどう糖液糖及びイオン交換水を投入し、撹拌しながら、予め混合した砂糖、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を投入し、80℃で10分間撹拌後、5℃以下まで冷却した。
2)酸、色素、香料を添加し、均一になるまで撹拌した。
3)氷管に70gずつ充填し、-30℃で硬化させた。
【0060】
<糖の染み出し抑制>
実験例3の糖の染み出し抑制の評価方法と同様の方法により、アイスキャンデーからの糖の染み出し量を測定し、以下の計算式から糖の染み出し率を算出した。糖の染み出し率が低いほど、糖の染み出し抑制に優れることを意味する。結果を表5に示す。
糖の染み出し率=(保存後のろ紙重量-ろ紙の元重量)/試料の元重量]×100
【0061】
【0062】
表5から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量が増加するほど、糖の染み出し抑制効果が向上する。
【0063】
<保形性>
実験例2と同様の方法により、アイスキャンデーの保形性を評価した。結果を表6に示す。また、表6の結果をグラフ化した(
図2)。
【0064】
【0065】
表6、
図2から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したアイスキャンデー(実験例4-3、4-4)は、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を含有しないアイスキャンデー(実験例4-1)と比較して融解率が低く、保形性に優れる。
【0066】
<実験例5>カキ氷
以下の処方に従い、カキ氷を調製した。使用した安定剤とその添加量を表7に示す。なお、調製されたカキ氷シロップは、全固形分18.3重量%であった。
【0067】
<カキ氷シロップ処方> (重量%)
砂糖 22.0
果糖ぶどう糖液糖 10.0
水あめ 12.0
クエン酸 0.1
青色1号 0.0002
シャンペンサイダーエッセンス* 0.2
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表7参照
イオン交換水にて全量 100.0
【0068】
<カキ氷の調製方法>
1)容器に、水あめ、果糖ぶどう糖液糖及びイオン交換水を投入し、撹拌しながら、予め混合した砂糖、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を投入し、80℃で10分間撹拌溶解後、5℃まで冷却した。
2)酸、色素、香料を添加し、均一になるまで撹拌してシロップを調製した。
3)カキ氷機で氷を削り、氷:シロップ=1:1(質量比)となるようハンドミキサーで30秒間混合した後氷管に充填し、-30℃にて硬化させた。
【0069】
以下の方法により、カキ氷の気泡安定性を評価した。結果を表7に示す。
<気泡安定性の評価>
以下の方法により、カキ氷のオーバーランを測定した。オーバーランとは、冷菓中の気泡の量を意味し、以下の方法により測定することができる。容器に、調製したカキ氷を完全に融解させ、気泡を除いた液体を満量充填した時の重量と、前記容器と同容量の容器に起泡させた試料を満量充填した時の重量を測定し、以下の式により算出する。オーバーランの数値が大きいほど、冷菓中に気泡を多く含み、冷菓の気泡安定性が高いことを意味する。
オーバーラン(重量%)=[(起泡していない試料の重量-起泡後の試料の重量)/起泡後の試料の重量]×100
【0070】
実験例3の糖の染み出し抑制の評価方法と同様の方法により、カキ氷の糖の染み出し抑制を評価した。結果を表7に示す。
【0071】
【0072】
表7から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量が増加するほど、オーバーランが増加し、気泡安定性が向上する。また、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したカキ氷(実験例5-3)は、同量のキサンタンガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したカキ氷(実験例5-5)と比較して、オーバーランが高く、気泡安定性に優れる。
【0073】
表7から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤の添加量が増加するほど、糖の染み出し抑制効果が向上する。サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したカキ氷(実験例5-3)は、同量のキサンタンガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用したカキ氷(実験例5-5)と比較して、糖の染み出し抑制効果が優れる。
【0074】
<実験例6>凍結飲料
以下の処方に従い、凍結飲料を調製した。調製した凍結飲料は、全固形分15.0重量%、甘味度16.0であった。
【0075】
<処方> (重量%)
果糖ぶどう糖液糖 20.0
5倍濃縮柑橘混合混濁果汁 1.0
クエン酸 0.17
カロチンベースNO.35468* 0.02
オレンジエッセンスNO.51237(N)* 0.1
冷菓又は凍結飲料用物性改良剤 表8参照
イオン交換水にて全量 100.0
カロチンベースNO.35468*:着色料
オレンジエッセンスNO.51237(N)*:香料
【0076】
【0077】
<凍結飲料の調製方法>
1)容器に、果糖ぶどう糖液糖及びイオン交換水を投入し、撹拌しながら、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を投入し、80℃で10分間撹拌溶解した。
2)酸、カロチンベース、香料を添加した。
3)95℃まで加熱し、煮沸したイオン交換水で全量補正し、PET容器にホットパック充填後冷却した。
【0078】
<融解率、可溶性固形分濃度(Brix)の測定>
-20℃で凍結させたPET容器入り試料を室温(25℃)にて倒置状態で静置し、経過時間と融解率の関係を調べた。融解率は、以下の式により算出した。
融解率(%)=(経時的に容器から排出された試料の合計重量/試料の元重量)×100
また、それぞれの融解率における融解した凍結飲料の可溶性固形分濃度(Brix)を、糖度計(ATAGO製)を用いて測定した。融解率とBrixとの関係を
図3に示す。
【0079】
図3から明らかなように、サバクヨモギシードガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用した凍結飲料(実験例6-2)は、融解率が増加しても、Brixがほとんど変化しない。このことは、融解初期と融解後期における融解した凍結飲料のBrixに大きな差がなく、絶えずほぼ一定のBrixを有する凍結飲料が喫飲できることを意味する。一方、冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用しない凍結飲料(実験例6-1)は、融解初期のBrixが高く、融解後期のBrixが低くなっている。そのため、融解初期は融解した凍結飲料の味が濃く、融解後期では味が薄くなる。また、キサンタンガムを含有する冷菓又は凍結飲料用物性改良剤を使用した凍結飲料(実験例6-3)は、融解後期のBrixはほぼ一定であるが、融解初期のBrixが高いため、融解初期の融解した凍結飲料の味が濃い。