(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/66 20060101AFI20220825BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20220825BHJP
B01D 24/46 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B01D29/38 520Z
B01D29/08 520A
B01D29/08 530D
B01D29/08 540A
B01D29/38 510B
(21)【出願番号】P 2018093047
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596154376
【氏名又は名称】日本原料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 安弘
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-121885(JP,A)
【文献】特開2004-160432(JP,A)
【文献】特開2005-131443(JP,A)
【文献】国際公開第2001/083076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-35/04;35/08-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過槽の内部に濾過材層を有し、供給された原水を、前記濾過材層を通過させて濾過する濾過装置であって、
前記濾過槽内に立てて配置された円筒状の外筒、この外筒内において、該外筒の長手方向に長軸が延びる向きに設けられた螺旋状のスクリュー、およびこのスクリューを回転させるスクリュー駆動手段を有し、前記スクリューを回転させて濾過材を揉み洗い洗浄するスクリュー洗浄機構を備えた濾過装置において、
前記スクリューが、
該スクリューを構成する螺旋状のスクリュー羽根部材が、スクリューの長軸方向から見たとき、スクリューの回転軸から軸外方に離れた位置において環状をなす、コイルばね型の形状とされていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記スクリューの長軸方向の一端部において、スクリューを構成するスクリュー羽根部材に、前記駆動手段の回転軸が連結されている請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記スクリューを構成するスクリュー羽根部材の内周縁部に、スクリューの略全長に亘ってスクリュー長軸方向に延びて、スクリュー羽根部材の互いに離れている部分同士を連結する補強部材が固定されている請求項1または2に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過装置、特に詳しくは濾過槽の内部に濾過材層を有し、供給された原水を、濾過材層を通過させて濾過する濾過装置、特に、濾過槽内にスクリューによる濾過材洗浄機構を備えた濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や2に示されているように、濾過槽の内部に濾過材層を有し、供給された原水を濾過材層を通過させて濾過する濾過装置が公知となっている。また、この種の濾過装置において濾過材を洗浄する機構として、同じく特許文献1や2に示されているように、螺旋状のスクリューを用いる洗浄機構が知られている。
【0003】
上述のスクリューを用いる洗浄機構は基本的に、濾過槽内に立てて配置された円筒状の外筒、この外筒内に配置された回転軸に沿って設けられた螺旋状のスクリュー、およびこのスクリューを回転させるスクリュー駆動手段を有するもので、濾過槽内の濾過材を上記スクリューにより上方へ移送しながら揉み洗いする。
【0004】
上記のスクリュー洗浄機構を用いて濾過材を洗浄することにより、濾過材層の目詰まりや、付着物、凝集物による濾過材の汚れに起因する濾過効率の低下を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-121885号公報
【文献】特開2005-131443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スクリュー洗浄機構を備えた濾過装置は、上述した通り、高い濾過材洗浄効果が得られるものであるが、濾過効率および濾過材洗浄効率、並びに軽量化の点で改良の余地が残されている。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、スクリュー洗浄機構を備えた濾過装置において、濾過効率および濾過材洗浄効率を高め、そして軽量化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による濾過装置は、
濾過槽の内部に濾過材層を有し、供給された原水を、濾過材層を通過させて濾過する濾過装置であって、
濾過槽内に立てて配置された円筒状の外筒、この外筒内において、該外筒の長手方向に長軸が延びる向きに設けられた螺旋状のスクリュー、およびこのスクリューを回転させるスクリュー駆動手段を有し、スクリューを回転させて濾過材を揉み洗いするスクリュー洗浄機構を備えた濾過装置において、
スクリューが、コイルばね型の形状とされていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、上記「コイルばね型の形状」とは、スクリューの長軸方向から見たスクリューの形状が、部材が何も存在しない中央の孔の周囲にスクリュー羽根部材が環状に存在する形状を意味するものである。このようなコイルばね型の形状は、望ましくはスクリューの全長に亘って適用されるが、一部、例えばスクリュー長軸方向の端部等において、そのような形状とされていなくても構わない。
【0010】
なお、本発明の濾過装置においては、スクリュー羽根部材のスクリュー長軸方向の一端部に、駆動手段の回転軸が連結されるのが望ましい。
【0011】
また、本発明の濾過装置においては、スクリューを構成するスクリュー羽根部材の内周縁部に、スクリュー羽根部材の略全長に亘ってスクリュー長軸方向に延びて、スクリュー羽根部材の互いに離れている部分同士を連結する補強部材が固定されていることが望ましい。
【0012】
上述したようにスクリュー羽根部材のスクリュー長軸方向の一端部に、駆動手段の駆動軸が連結される場合、上記補強部材は直接的にあるいは上記連結を果たす連結部材を介して、駆動手段の駆動軸に連結されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の濾過装置においては、スクリューがコイルばね型の形状とされているので、つまりスクリュー長軸方向から見たスクリューの形状が、部材が何も存在しない中央の孔の周囲にスクリュー羽根部材が環状に存在する形状とされているので、上記孔の部分に存在する濾過材も濾過のために有効利用されることになる。こうして本発明の濾過装置は、従来装置に比べると、濾過槽内の断面積が共通なら、より大きな濾過面積を確保でき、濾過効率を高めることが可能となる。
【0014】
また、濾過材の洗浄時、スクリューの中央の孔の部分に存在する濾過材が、スクリューの回転で生じる渦によって掻き混ぜられるようになり、この点から濾過材洗浄効率が高められる。さらに逆流洗浄においても、スクリューの中央に孔の部分が有るために外筒内に逆洗水が流入しやすくなり、逆流洗浄効果が高くなって、この点からも濾過材洗浄効率が高められる。
【0015】
さらに本発明の濾過装置においては、スクリューの形状が中央に孔を有する形状とされているので、スクリューが軽量化され得る。こうしてスクリューが軽量化されれば、濾過槽を構成する例えば鏡板等の部材として比較的低強度の部材を適用可能となり、濾過装置のコストダウンも実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による濾過装置を示す縦断面図
【
図3】
図1の濾過装置に用いられた濾床を示す平面図
【
図4】
図3の3b-3b線で切断した濾床の部分を示す断面図
【
図5】
図1の濾過装置が備えるスクリューを示す部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による濾過装置の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による濾過装置を示す縦断面図、
図2は、
図1の濾過装置の濾過槽を示す平面図である。以下、
図1および
図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の濾過装置1は、
図1に示すように、上下が閉鎖された略円筒形の濾過槽2と、この濾過槽2の内側の下部において水平に配置された例えば鋼板からなる濾床4と、濾過槽2の湾曲した上壁20に取り付けられたスクリュー洗浄機構(以下、単に洗浄機構ともいう)6とを有する。この洗浄機構6は、後述するモータ26、減速機構部27、台座28、洗浄槽(外筒)38および、スクリュー32を含む。さらに濾過装置1は、処理水出口管46および原水注入管56も有する。
【0019】
濾過槽2には、4本の支持脚8(
図1では1本のみを示す)が取り付けられており、これによって、濾過槽2が床面10上に設置される。なお、濾過槽2を支える構造としては、このような支持脚8に限らず、その他、帯状の板材を巻いて構成された支持構造等が適用されてもよい。濾床4は、濾過槽2の湾曲した底壁9から上方に離して設けられている。なお、底壁9および上述の上壁20は、例えば鏡板から構成される。濾床4には、濾過された処理水(濾過水)を集水して下方に通過させる複数のストレーナ12が設置されている。なお、濾床4およびストレーナ12の詳細については後述する。また、前述の原水注入管56は、
図1において、濾過槽2の右側に位置しており、原水の出口が上向きの略L字状を呈している。この原水注入管56は、他の形状とすることも可能である。
【0020】
濾床4上には、原水注入管56から注入された原水を濾過するための濾過材14の層が配されている。例えばステンレス鋼板等の鋼板からなる濾床4は、濾過材14等の重量を支えるために、一般に厚みが5mm程度から30mm程度に形成される。濾過材14は、具体的には、約0.2mm~4.9mmの直径(粒径)を有するものである。この直径は、処理する原水の水質にもよるが、一般的には約0.6~1mmであることがより好ましい。濾過材14は、複数のものが積層されてもよく、その場合は一例として、下側に直径が0.6mm程度の砂、上側に直径が1.2mm程度のアンスラサイト等が用いられる。濾床4の詳細については、後述する。濾過材14の上方から流入した原水16は、濾過材14の層を通過して濾過された後にストレーナ12を通過して、浄化された処理水として濾床4から下方に流れる。
【0021】
濾過槽2の上壁20の中央部には、円形の取付口22が形成されており、この取付口22に洗浄機構6がボルト(図示せず)により取り付けられている。取付口22の周縁は、取付用のリム24に形成されている。リム24上には、モータ26および減速機構部27を取り付けた台座28が取り付けられている。この台座28には、複数の軸受30を有する保持部36が形成されており、これらの軸受30により、後述するスクリュー回転用の駆動軸34がぶれなく回転自在に支持されている。
【0022】
次に、洗浄機構6について詳細に説明する。洗浄機構6の円筒状の洗浄槽(外筒)38は、上部に円板状の取付壁29を有する。そして、取付壁29が台座28とともにリム24にボルト(図示せず)により取り付けられている。図中、ボルトはその位置を示す中心線に代えて省略して示す。このようにして、洗浄槽38の上部がリム24に取り付けられると、洗浄槽38の略全体が濾過槽2の上部から垂下している状態となる。
【0023】
図1に示すように洗浄槽38の下部は、開放した円形の下部開口40となっている。洗浄槽38の上部には、その外周に沿って所定間隔で形成されて上下方向に延びる複数の上部開口42が形成されている。下部開口40は濾過材14の中に位置するように、洗浄槽38と濾過材14との位置関係が決められている。洗浄槽38の内側には、洗浄槽38と共にスクリューコンベアを構成するスクリュー32が配置されている。スクリュー32を回転させるための駆動軸34は、比較的小径の縮径部34aと、直径の大きい大径部34bとから構成されている。
【0024】
駆動軸34は、継手49を介してモータ26と連結されている。駆動軸34に強度を持たせるための大径部34bは、上端部から下に所定の長さの部分は無垢の棒状とされ、その下端には円板37が固定されている。円板37には、螺旋形のスクリュー羽根部材(以下、単に羽根部材という)43が連結されている。そこで、モータ26の駆動軸34が回転されると、羽根部材43が回転される。なお、羽根部材43と円板37との連結については、後に詳しく説明する。
【0025】
羽根部材43の外縁は、洗浄槽38の内周面との間に僅かにギャップを形成して配置されている。このギャップの寸法は、濾過材14の粒径の約3倍が望ましい。このギャップにより、羽根部材43と洗浄槽38との間に濾過材14が挟まっても、濾過材14が破砕するおそれが少なくなる。
【0026】
次に、濾過槽2の外部に付属する部品について説明する。濾過槽2の湾曲した底壁9の中央には、下方に延びる処理水出口管46が取り付けられている。前述したように濾過材14の層を通過して濾過された後にストレーナ12を通過した処理水は、この処理水出口管46を通って濾過槽2の外に送出される。また、濾過槽2の上部には、濾過槽2内の空気を排出する空気抜き弁81が取り付けられている。
【0027】
次に、
図3および
図4を参照して濾床4について説明する。
図3は、濾床4の半分のみを示す平面図である。また
図4は、濾床4を
図3の3b-3b線で切断した状態を示す断面図である。濾床4は、例えばステンレス鋼製の4つの板状部分から構成されている。より詳しくは、濾床4は1対の半月状部分4a、4bおよび、それらの半月状部分4a、4bの間に配された1つの略矩形部分4cから構成されている。略矩形部分4cの一辺は弧状部分47として形成されている。なお
図3では、上記部分4a、4bおよび4cの各半分のみを示している。つまり濾床4は、
図3において、1つの直径の両側に線対称の円板状である。なお濾床4は、必ずしも上記部分4a、4bおよび4cのように割り振って構成する必要はなく、濾過槽2の大きさに応じて適宜割り振って構成することができる。
【0028】
濾床4には、多数の孔60が穿設されており、これらの孔60に、前述のストレーナ12が配設されている。また、各部分4a、4b、4cには、それらの外周に沿って所定間隔で複数個のねじ止め用の小孔62が穿設されている。他方、濾過槽2の内周面には、その内周に沿った環状の取付リング64が突設されている。この取付リング64には、前述の小孔62に対応するねじ孔63が形成されている。また濾過槽2には、各部分4a、4b、4cの相互の合わせ目に沿って、断面T字状の支持梁66が取り付けられている。そして、この支持梁66にも、ねじ孔63が形成されている。上記部分4a、4b、4cは、小孔62およびねじ孔63にボルト61が螺入されることにより、取付リング64および支持梁66にねじ止め固定される。
【0029】
また濾過槽2の略中央には、支持梁66と直交して該支持梁66と連結する断面T字状の支持梁67が配置されている。支持梁67はねじ孔63を有し、このねじ孔63および上記小孔62にボルト61が螺入されることにより、部分4cが上記と同様に支持梁67にねじ止め固定される。また
図4に示すように、支持梁67の左右には支持梁68が設けられている。この支持梁68は、単に部分4aおよび4bの荷重を受けるためのものであり、該支持梁68に対して部分4a、4bおよび4cはねじ止め等によって固定される。
【0030】
次に、濾床4に配設されるストレーナ12について説明する。ストレーナ12は、管の先端が中空の傘状部分18となった、例えば「ABストレーナー」と称される市販のものであり、ABS樹脂製やPP(ポリプロピレン)製である。傘状部分18には、濾過材14が通過しない狭幅の複数のスロット(液体通過部)19が同心状に形成されており、濾過された液体のみを濾床4の下方に通過させるようにしている。
【0031】
なお
図4では、スロット19を、中央のストレーナ12のみに示している。そしてストレーナ12の管の部分には雄ねじが形成され、この雄ねじにナット65が螺合されることにより、該ナット65および傘状部分18により、ストレーナ12が濾床4に取り付けられる。スロット19は、濾過材14が通過しない大きさのものであればよく、一般にその幅は約0.1mm~2.0mmとされる。また、ストレーナ12としては、従来、上記のように傘状部分を有するものに限らず、円柱状部分を有するものや、半円柱状部分を有するものも知られており、そのようなストレーナが用いられてもよい。
【0032】
次に、再び
図1を参照して、濾過槽2による濾過について説明する。まず、原水注入管56を通して原水16が濾過槽2内に注入される。その際、空気抜き弁81から、濾過槽2内の空気が排出される。原水16の水位は、本実施形態の場合、原水注入管56を越えて濾過槽2の上部まで達するように、つまり、濾過槽2内の略全体が原水16で満たされるように設定される。原水16は洗浄槽38の外の濾過材14に浸透するとともに、洗浄槽38内にも上部開口42から進入する。そこで原水16は、洗浄槽38内の濾過材14に浸透し、洗浄槽38内においても濾過される。
【0033】
濾過材14を浸透し、濾過された水(処理水)は、ストレーナ12を経て濾床4を通過して、濾過槽2の下部の処理水出口管46から外部に送出され、使用に供される。なお、以上述べた濾床4およびストレーナ12は、集水機構を構成している。
【0034】
次に、濾過材14の層における目詰まりを解消するための、濾過材14の洗浄方法について詳しく説明する。なお、本装置が行う濾過材洗浄には、逆洗水を供給しながらスクリュー32を回転させて行うものと、逆洗水の供給だけで行うものとの2種類があるが、以下では前者を単に「洗浄」あるいは「スクリュー洗浄」と称し、後者を「逆流洗浄」あるいは「逆洗」と称することにする。
【0035】
最初に、スクリュー洗浄について説明する。スクリュー32を回転させるためのモータ26を起動する前に、処理水出口管46から浄水(逆洗水)を濾過槽2内に逆流させ、濾床4を経て濾過材14中に浄水を噴出させる。こうして濾過材14に対して下から逆洗水が噴き上げられると、濾過材14が逆洗水中に(原水が残っている際には逆洗水および原水中に)浮遊する。これにより、モータ起動時のモータ26への負荷が低減される。モータ26が駆動されて、スクリュー32が回転すると、スクリュー32の羽根部材43、特に洗浄槽38の下方に露出した部分の羽根部材43により、濾過材14が上方の洗浄槽38内に押し上げられる。
【0036】
スクリュー32の回転の初期段階では、前述した逆洗水の逆流が継続される。こうしてスクリュー32を逆流洗浄下と同じ状態で回転させることによって、スクリュー回転時のモータ26の負荷を低減させると共に、洗浄槽38の外側の濾過材14と、洗浄槽38の内側の濾過材14とが、スクリュー32の遠心力により容易に混ざり合い、かつ移動することで全体の濾過材14が満遍なく洗浄されるようになる。逆洗水の供給は、その後に供給量(つまりは流速)が落とされ、または停止されるが、その状態下で、濾過材14の洗浄のためにスクリュー32の回転は継続される。
【0037】
押し上げられた濾過材14の粒子同士は、羽根部材43の回転により互いに擦れ合って揉み洗いされつつ上昇し、上部開口42から洗浄槽38外に排出される。このとき、濾過材14が水面上に落下したときの衝撃で、汚濁物質が濾過材14から剥離することが促進される。落下した濾過材14は、洗浄の経過に従って下降し、再び羽根部材43により洗浄槽38内に押し上げられて揉み洗いされる。このようにして、洗浄槽38内で濾過材14の洗浄が繰り返されて、濾過材14から汚濁物質が剥離される。前述した通り、
図1に示すようにスクリュー32の下端44が、濾床4の近傍に位置しているので、濾床4に近い位置に有る濾過材14も押し上げられて、多くの濾過材14が満遍なく洗浄される。
【0038】
なお、スクリュー洗浄機構6による濾過材洗浄工程においては、スクリュー32が連続して回転している期間内に、濾過材14を浮遊させる洗浄水の供給が、間に供給量低減期間および供給停止期間を挟んで複数回繰り返される。
【0039】
以上述べたスクリュー洗浄機構6による濾過材洗浄工程が完了すると、スクリュー32の回転が停止される前に、処理水出口管46から再度浄水を逆流させて、すすぎ効果を得る逆流洗浄(逆洗)が行われる。この逆洗は、スクリュー32の停止後も継続される。処理水出口管46から逆流した逆洗水は、濾床4のストレーナ12のスロット19を経て濾過材14の層に噴出する。このとき、ストレーナ12に詰まった汚濁物質も、逆洗水によりスロット19から容易に除去される。
【0040】
そして、濾過材14から剥離した汚濁物質は浮遊して、それを含んだ水と共に原水注入管56から外部へ排出される。逆流洗浄時に、逆洗水(洗浄水)は、羽根部材43の前述したギャップを通過して洗浄槽38内にも効果的に逆流するので、洗浄槽38内の汚濁物質も排出される。
【0041】
次に、
図1に示した円板37と羽根部材43との連結について詳しく説明する。螺旋状の羽根部材43は、例えばステンレス鋼等の金属から形成されている。そして羽根部材43は、スクリュー32の長軸方向から見た形状が
図5に示すような形状とされている。すなわち羽根部材43は、部材が何も存在しない中央の円孔43aの周囲に環状に存在している。それによりスクリュー32は、その略全長に亘って、前述したようなコイルばね型の形状となっている。
【0042】
また、上記環状の羽根部材43の内周縁部には、この羽根部材43の略全長に亘ってスクリュー長軸方向に延びる、一例として4本の長尺の補強部材35が固定されている。これらの補強部材35も、例えばステンレス鋼等の金属から形成されている。各補強部材35はより詳しくは、円筒形の部材の一部をその長軸に沿って細長く切り取ったような、板状の形とされたものである。これらの補強部材35は、環状の羽根部材43の内周縁部に(本例では内周面の上に)溶接等によって固定され、羽根部材43の互いに離れている部分同士を溶接等によって連結している。
【0043】
上記4本の補強部材35は、各一端部が円板37の一表面(下表面)に溶接等によって固定されている。それと共に羽根部材43も、スクリュー32の長軸方向の一端面(上端面)が、円板37の一表面に溶接等によって固定されている。以上の構成においては、モータ26によって駆動軸34が回転されて、円板37が回転されると、羽根部材43が回転する。こうして羽根部材43を回転させることにより、前述した洗浄機構6による濾過材の洗浄がなされ得る。
【0044】
従来のこの種の濾過装置に用いられている一般的なスクリューは、中心部を延びる回転軸の周りに羽根部材が取り付けられてなるものであるのに対し、本実施形態におけるスクリュー32は以上説明した通り、コイルばね型の形状のものとされている。このようなコイルばね型の形状のスクリュー32は、基本的に羽根部材43のみから構成された場合は、十分な強度を確保するのが難しい。しかし本実施形態におけるスクリュー32は、以上説明した通りの4本の補強部材35により補強されて、十分な強度を備えたものとなっている。
【0045】
以上説明した通り本実施形態の濾過装置1においては、スクリュー32の中央に円孔43aが存在するので、この円孔43aの部分に存在する濾過材14も濾過のために有効利用されることになる。こうして本実施形態の濾過装置1は、従来装置に比べると、濾過槽2内の断面積が共通なら、より大きな濾過面積を確保でき、濾過効率を高めることが可能となる。
【0046】
また、濾過材14の洗浄時、スクリュー32の中央の円孔43aの部分に存在する濾過材14が、スクリュー32の回転で生じる渦によって掻き混ぜられるようになり、この点から濾過材洗浄効率が高められる。さらに逆流洗浄においても、スクリュー32の中央に円孔43aが有るために洗浄槽38内に逆洗水が流入しやすくなり、逆流洗浄効果が高くなって、この点からも濾過材洗浄効率が高められる。
【0047】
さらに実施形態の濾過装置1においては、スクリュー32の形状が中央に円孔43aを有する形状とされているので、スクリュー32が軽量化され得る。こうしてスクリュー32が軽量化されれば、底壁9および上壁20を構成する例えば鏡板等の部材として比較的低強度の部材を適用可能となり、濾過装置1のコストダウンも実現される。
【符号の説明】
【0048】
1 濾過装置
2 濾過槽
4 濾床
6 スクリュー洗浄機構
12 ストレーナ
14 濾過材
16 原水
26 モータ
32 スクリュー
34 駆動軸
35 補強部材
37 円板
38 洗浄槽(外筒)
43 スクリュー羽根部材