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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】人形の腰部関節構造及び人形
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/46 20060101AFI20220825BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A63H3/46
A63H3/36 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018100826
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202074
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋和
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-076627(JP,A)
【文献】特開2017-077429(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153501(JP,U)
【文献】「マテリア Normal Ver. フレームアームズ・ガール」サンプル組立てレビュー,メリクリウスの杖, [online],2016年01月26日,1-22頁,<URL>https://www.blog-tagimi.net/archives/25719,[2022年2月21日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の腰部に相当する外殻部材に固定され、断面弧状の第1のガイド面を有する支持部材と、
前記第1のガイド面と対向し前記第1のガイド面と相補的な断面弧状の第2のガイド面と、前記第2のガイド面から所定距離離間して配置され脚部材との連結部を為す脚部材連結部とを有する、スライド部材を備え、
前記第1のガイド面と前記第2のガイド面とは互いのガイド面に沿ってスライド可能に構成され、それにより、前記脚部材連結部は、前記第1のガイド面と前記第2のガイド面で定義される回転中心を中心として弧状軌跡を描いて回転する、人形の腰部関節構造。
【請求項2】
前記スライド部材は、さらに、その上端から前記第2のガイド面の下部へと至る孔部を備え、
記支持部材は前記孔部を介して前記スライド部材へと挿入されて集成され、それにより、前記第1のガイド面は前記第2のガイド面の下部へと配置されて前記第2のガイド面と対向する、請求項1に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項3】
前記スライド部材の前記孔部には一対の挟持爪部が設けられ、
前記スライド部材は、前記弧状軌跡を描く回転の始端において、前記挟持爪部により前記支持部材を挟持して前記スライド部材と前記支持部材との間の相対的位置関係を保持する、請求項2に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項4】
前記スライド部材の前記第2のガイド面は、前記第1のガイド面と、前記外殻部材の内周面に設けられ前記第1のガイド面と対向する第3のガイド面とで形成される空間に収容され、前記空間内においてスライドする、請求項に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項5】
前記スライド部材は、さらに、所定の突出部を有し、
前記外殻部材の内面側には、前記突出部と前記外殻部材との接触を避ける所定の逃げ溝が設けられ、
前記弧状軌跡を描く回転の終端は、前記突出部が前記逃げ溝の端部と当接することにより定義される、請求項に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項6】
前記弧状軌跡を描く回転の始端は、前記人形が直立状態の場合に好適な前記脚部材連結部の位置を定義し、前記弧状軌跡を描く回転の終端は、前記人形が座った状態の場合に好適な前記脚部材連結部の位置を定義するものである、請求項1に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項7】
前記支持部材は、上方へと延びる柱部を備え、前記柱部は、その上端に前記人形の胴部に相当する部材との所定の連結機構を備える、請求項1に記載の人形の腰部関節構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の人形の腰部関節構造を備えた人形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、人形の腰部に用いることが可能な関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人間類似の自然な姿勢をとらせることが可能な人形が人気を集めており、そのような人形においては、直立姿勢と屈身姿勢との両方を人間類似の自然な態様で実現可能であることが求められる。
【0003】
ところで、自然な屈身姿勢が可能な人形を実現する上では、脚部の付け根を人形の前方下部へと移動可能に構成することが重要となる。例えば、特許文献1には、断面長方形形状の腰基部に設けられた弧状のガイド溝に沿って、大腿部と連結されるボールスタッドを前方下部へと揺動させることにより、屈身姿勢をとらせることが可能な人形玩具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-77429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1のような構成では、腰部材の基礎となる腰基部上には、大腿部との連結部(特許文献1の例にあってはボールスタッド)の移動軌道に沿って予め弧状のガイド溝を設けなければならならず、人形の腰基部の小型化が困難で、その結果、腰部関節構造の小型化が困難であった。
【0006】
本発明は、上述の技術的背景の下になされたものであり、その目的とすることころは、腰部から脚部にかけて人間類似の自然な屈曲を実現することが可能であって、かつ、コンパクトな人形の腰部関節構造を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する人形の関節構造及び人形により解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明に係る人形の腰部関節構造は、人形の腰部に配置され、断面弧状の第1のガイド面を有する支持部材と、前記第1のガイド面と対向し前記第1のガイド面と相補的な断面弧状の第2のガイド面と、前記第2のガイド面から所定距離離間して配置され脚部材との連結部を為す脚部材連結部とを有する、スライド部材を備え、前記第1のガイド面と前記第2のガイド面とは互いのガイド面に沿ってスライド可能に構成され、それにより、前記脚部材連結部は、前記第1のガイド面と前記第2のガイド面で定義される回転中心を中心として弧状軌跡を描いて回転する、ものである。
【0010】
このような構成によれば、脚部材連結部は、第1のガイド面と第2のガイド面で定義される回転中心を中心として弧状軌跡を描いて回転するので、回転機構は第1のガイド面と第2のガイド面へと集約しつつも、脚部を弧状軌跡を回転させることができるので、腰部から脚部にかけて人間類似の自然な屈曲を実現することが可能であって、かつ、コンパクトな人形の腰部関節構造を提供することができる。
【0011】
前記スライド部材は、さらに、その上端から前記第2のガイド面の下部へと至る孔部を備え、前記第1の支持部材は前記孔部を介して前記スライド部材へと挿入されて集成され、それにより、前記第1のガイド面は前記第2のガイド面の下部へと配置されて前記第2のガイド面と対向する、ものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、孔部を介して支持部材とスライド部材とを集成させてガイド面同士を対向させることができるので、より小型な腰部関節構造を提供することができる。
【0013】
前記スライド部材の前記孔部には一対の挟持爪部が設けられ、前記スライド部材は、前記弧状軌跡を描く回転の始端において、前記挟持爪部により前記支持部材を挟持して前記スライド部材と前記支持部材との間の相対的位置関係を保持する、ものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、挟持爪部を利用して支持部材とスライド部材との相対的位置関係を保持することができるので、特定の姿勢を適切に保持させることができる。
【0015】
前記支持部材は、前記人形の腰部に相当する外殻部材に固定される、ものであってもよい。
【0016】
前記スライド部材の前記第2のガイド面は、前記第1のガイド面と、前記外殻部材の内周面に設けられ前記第1のガイド面と対向する第3のガイド面とで形成される空間に収容され、前記空間内においてスライドする、ものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、回転機構が所定空間に集約されるので、コンパクトな腰部構造を実現することができる。
【0018】
前記スライド部材は、さらに、所定の突出部を有し、前記外殻部材の内面側には、前記突出部と前記外殻部材との接触を避ける所定の逃げ溝が設けられ、前記弧状軌跡を描く回転の終端は、前記突出部が前記逃げ溝の端部と当接することにより定義される、ものであってもよい。
【0019】
外殻部材内のスペースを有効に利用しつつ、回転の終端を定義することができる。
【0020】
前記弧状軌跡を描く回転の始端は、前記人形が直立状態の場合に好適な脚部材連結部の位置を定義し、前記弧状軌跡を描く回転の終端は、前記人形が座った状態の場合に好適な脚部材連結部の位置を定義するものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、直立姿勢と座った姿勢のいずれの姿勢も再現することができる。
【0022】
前記支持部材は、上方へと延びる柱部を備え、前記柱部は、その上端に前記人形の胴部に相当する部材との所定の連結機構を備える、ものであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、連結機構との共用により部品点数を最小限にすることができ、よりコンパクトな構造を実現することができる。
【0024】
また、本発明は、上記のいずれか1つに記載の腰部関節構造を備えた人形として観念することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、腰部から脚部にかけて人間類似の自然な屈曲を実現することが可能であって、かつ、コンパクトな人形の腰部関節構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、人形の全体構成図である。
図2図2は、肩部及び胸部の組立図である。
図3図3は、回転態様について示す説明図(その1)である。
図4図4は、胴部の組立図である。
図5図5は、回転態様について示す説明図(その2)である。
図6図6は、胸部と胴部の接続部に関する説明図である。
図7図7は、腰部の組立図である。
図8図8は、腰部の動作図である。
図9図9は、作用説明図である。
図10図10は、保持機構に関する説明図である。
図11図11は、屈身した状態の人形の外観斜視図である。
図12図12は、脚部の組立図である。
図13図13は、回転態様について示す説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示に係る人形の実施の一形態を、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0028】
<1.第1の実施形態>
まず、図1図13を参照しつつ、第1の実施形態に係る人形体1及び人形体1の関節構造について説明する。
【0029】
<1.1 人形の全体構成>
図1は、本実施形態に係る人形体1の全体構成について示す説明図である。同図から明らかな通り、本実施形態において、人形体1は、人型であり、頭部10と、頭部10と結合された胸部20と、胸部20の左右に結合された肩部40と、各肩部と結合された腕部30と、胸部20から下方へと延びる胴部50と、胴部50から下方へと延びる腰部60と、腰部60から下方へと延びる左右の脚部70と、から構成されている。
【0030】
<1.1 人形の全体構成>
頭部10は、本実施形態においては、略三角錐形状を有する頭部部材11から構成され、回動自在に胸部部材21に結合されている。なお、本実施形態においては、頭部部材11は略三角錐形状の部材であるが、当該頭部部材11に代えて、人やキャラクタの顔等を模した頭部部材が配置されてもよいことは勿論である。
【0031】
胸部20は、左右の肩部40と下方の胴部50とに対してそれぞれ開口を有する中空の胸部部材21から成り、この胸部部材21は、人形体1の前面側に配置される前面側胸部部材21aと、人形体1の背面側に配置される背面側胸部部材21b(図2(b)参照)とを嵌め合うことにより形成されている。
【0032】
肩部40は、胸部20の左右に回動自在に接続された肩部部材41から成り、この肩部部材41は、人形体1の前面側に配置される前面側肩部部材41aと、人形体1の背面側に配置される背面側肩部部材41bとを嵌め合うことにより形成されている(図2(a)参照)。
【0033】
腕部材30は、肩部部材41と回動自在に結合されており、肩部部材41と回動自在に結合された上腕部部材31と、ボールジョイントから成る肘部材32と、肘部材32を介して上腕部部材31と結合された前腕部部材33と、ボールジョイントから成る手首部材34と、手首部材34を介して前腕部部材33と結合された手部35とから構成されている。すなわち、腕の付け根(肩部部材41)、肘(肘部材32)、手首(手首部材34)を中心として曲げることにより腕部材30を様々な形状に変形して固定することができる。
【0034】
胴部50は、上部において胸部20と回動自在に結合され、下部において腰部60と結合される胴部部材51から成り、この胴部部材51は、人形体1の前面側に配置される前面側胴部部材51aと、人形体1の背面側に配置される背面側胴部部材51bとを嵌め合うことにより形成されている(図4図6参照)。
【0035】
腰部60は、上部において胴部50と結合され、下部において左右の脚部70と回動自在に結合される腰部部材61から成り、この腰部部材61は、人形体1の前面側に配置される前面側腰部部材61aと、人形体1の背面側に配置される背面側腰部部材61bとを嵌め合うことにより形成されている(図7参照)。
【0036】
脚部70は、腰部部材61との間で回動可能に結合される付け根部材71と、付け根部材71と結合される大腿部部材72と、ボールジョイントから成る膝部材73と、膝部材73を介して大腿部部材72と回動自在に接続される下腿部部材74と、ボールジョイントから成る足首部材75と、足首部材75を介して下腿部部材74と回動自在に結合される足先部材76とから構成されている。
【0037】
<1.2 肩部及び胸部の構成>
次に、図2及び図3を参照しつつ、肩部40及び胸部20の構成と動作について説明する。
【0038】
図2は、肩部40及び胸部20の組立図である。図2(a)は、肩部40及び胸部20の組立中の様子について説明した図である。同図から明らかな通り、胸部20は、前面側胸部部材21a(図1参照)と背面側胸部部材21bとの間に、上腕部部材31と肩部部材41(図1参照)との集成体を挟持するように収容することにより形成される。上腕部部材31と肩部部材41との集成体は、上腕部部材31の一端から突出した棒状接続部36を、ガイド部材42のU字軸受部422へと当てがい、その状態において、ガイド部材42の左右両側の一対の耳部421a、421bが係合孔411a、411bと係合するように、ガイド部材42を一対の肩部部材41a、41bにより覆うことにより形成される。上腕部部材31と肩部部材41との集成体は、ガイド部材42の一部であって肩部部材41から突出した係合部423を背面側胸部部材21bに設けられた肩部部材結合凹部213b及び係合部214bへと適合させることにより、背面側胸部部材21bへと収容される。この状態において、前面側胸部部材21aの図示しない突起部217aを、背面側胸部部材21bの嵌合孔217bへと嵌め合うことにより、上腕部部材31及び肩部部材41が胸部部材21へと固定される。なお、前面側胸部部材21a及び背面側胸部部材21bには、他に、その内面側に、頭部部材11を結合するための頭部結合溝211b、胴部50を結合するための胴部結合溝215bが備えられている。
【0039】
図2(b)は、組立後の状態を示した図である。同図から明らかな通り、腕部30(図1参照)は、上腕部部材31と一体となった肩部部材41を背面側胸部部材21bの左右の肩部部材結合凹部213b(図2(a)参照)へと収容することにより胸部20と一体とされ、この状態において、背面側胸部部材21bに対して前面側胸部部材21aを嵌め合わせることで、肩部部材41が回動可能な態様で胸部20に対して固定される。なお、図2では、説明の便宜のため、前面側胸部部材21aの表示は省略されている。
【0040】
図3は、図1に示される腕部30と肩部40との回動態様について示す説明図である。図の矢印から明らかな通り、本実施形態において、人形体1の肩周りは、互いに直交する3つの軸(鉛直方向の軸、人形体1の左右方向の軸、及び、人形体1の前後方向の軸)周りにそれぞれ回転自由度を有しており、各々P1、P2において、3つの軸は互いに一点で交わっている。なお、図3では、説明の便宜のため、前面側胸部部材21aの表示は省略されている。
【0041】
このような構成によれば、複数の回転自由度を有しつつも各回動軸は互いに1点で交わるので、コンパクトな関節構造を提供することができる。これにより、例えば、外観に優れ、かつ、高い設計自由度を提供することができる関節構造を提供することができる。
【0042】
<1.3 胴部の構成>
次に、人形体1の胴部50の構成と動作について、図4~6を参照しつつ、説明する。
【0043】
図4は、胴部50の組立図であり、図4(a)は組立中の状態について示す説明図である。同図から明らかな通り、胴部50は、前面側胴部部材51a(図1参照)と背面側胴部部材51bとの間に、胸部接続部材53と摺動ガイド部材52との集成体と、腰部連結部材55と摺動ガイド部材54との集成体とを挟持するように収容することにより形成されている。胸部接続部材53と摺動ガイド部材52との集成体は、逆T字型の胸部接続部材53の長軸530を摺動ガイド部材52の円形孔部522へと挿通し、かつ、短軸531を断面U字状の切欠部521へとあてがうことにより形成される。また、腰部連結部材55と摺動ガイド部材54との集成体は、略J字型の腰部連結部材55の直線状の柱状部555を摺動ガイド部材54の円形孔部542へと挿通し、かつ、柱状部555の先端の断面円形状の連結部551を断面U字状の切欠部541へとあてがうことにより形成される。これらの集成体を、上下の開口部514b、515bから胸部接続部材53と腰部連結部材55とが突出するように、背面側胴部部材51bへと嵌め込む。具体的には、各集成体を、摺動ガイド部材52に設けられた左右一対の耳部523及び摺動ガイド部材54に設けられた左右一対の耳部543がそれぞれ背面側胴部部材51bの摺動ガイド溝511b、512bへと係合するように、背面側胴部部材51bへと嵌め込む。嵌合後、前面側胴部部材51a(図1参照)を、前面側胴部部材51aの図示しない凸部が背面側連結部材51bの孔部513bへと嵌合するよう、背面側胴部部材51bへと嵌め込むことにより胴部50が形成される。組立後の胴部50の構成について示したものが図4(b)である。なお、図4では、説明の便宜のため、前面側胴部部材51aの表示は省略されている。
【0044】
図5は、胴部50の回転態様について示す説明図である。同図の矢印から明らかな通り、各集成体は、それぞれ3つの軸(人形体1の鉛直方向の軸、人形体1の左右方向の軸、及び人形体1の前後方向の軸)周りに回転自由度を有しており、各軸は、それぞれP3及びP4において、互いに1点で交わるように構成されている。なお、図5では、説明の便宜のため、前面側胴部部材51aの表示は省略されている。
【0045】
このような構成によれば、複数の回転自由度を有しつつも各回動軸は互いに1点で交わるので、コンパクトな関節構造を提供することができる。これにより、例えば、外観に優れ、かつ、高い設計自由度を有する関節構造を提供することができる。
【0046】
図6は、胸部20(図1参照)と胴部50との結合部に関する説明図である。前述の態様で予め組み立てられた胴部50の上部からは、先端に径の異なる段状連結部532(図4(a)参照)を有する胸部連結部材53が突出しており、胸部部材21と胴部部材51とは、段状連結部532を胸部部材21の中心の係合溝216bへと嵌め込み、その状態で表裏の胸部部材21a、21bを嵌め合うことにより一体とされる。なお、図6では、説明の便宜のため、前面側胸部部材21aの表示は省略されている。
【0047】
このような構成によれば、胸部20と胴部50との間をコンパクトな関節構造により連結することができる。また、部分的に組み立てた部材を組み上げることができるので組み立てが容易である。
【0048】
<1.4 腰部の構成>
次に、図7図11を参照しつつ、人形体1の腰部60の構成及び動作について説明する。
【0049】
図7は、腰部60の組立図である。図7(a)は、腰部60の組立方法について示す説明図である。同図から明らかな通り、腰部60は、前面側腰部部材61aと背面側腰部部材61bとの間の略中央に、胴部50から突出する腰部連結部材55と腰部スライド部材62との集成体を配置した後、各嵌合部613a、613b、614a、614bをそれぞれ嵌め合うことにより形成される。なお、腰部連結部材55は、背面側に水平に伸びた梁部556の先端に配置された突出部552を背面側腰部部材61bの係合孔611bへと挿入することにより腰部部材61へと固定される。また、腰部スライド部材62は、腰部スライド部材62の中央に配置されたスライド孔621へと腰部連結部材55の下部を、腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553と、凹弧面状ガイド面553と相補的な形状を有する腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625とが沿うように挿入することにより、腰部連結部材55と後述の態様でスライド可能に集成される。なお、後述するように、スライド孔621の内壁面の上端には、腰部連結部材55の突出部552を挟持する一対の挟持爪部628が設けられている。
【0050】
腰部スライド部材62の背面側には、図7に示されるように、底面が水平面に対して鋭角をなす突出部629が設けられており、後述する腰部スライド部材62の回転の際には、前記突出部629が背面側腰部部材61bの内面側溝部612bの内部を通過する。腰部スライド部材62の下部には、脚部70の付け根部材71の間をつなぐ軸部材627を保持する保持片624が設けられており、軸部材627の保持により腰部60と脚部70との間が結合される。また、軸部材627の両端には、脚部70との結合部となりその中心に所定の空隙623を有する断面略円形状の結合部622が備えられている。図7(b)は、腰部60の組立後の状態を示している。
【0051】
次に、図8を参照しつつ、腰部60の動作について説明する。図8(a)は、直立状態の人形体1の腰部60の構成について示した図であり、図8(b)は、胴部50に対して脚部70を曲げた状態、すなわち、屈身状態のときの腰部60の構成を示した図である。
【0052】
図8(a)から明らかな通り、人形体1が直立状態にあるとき、腰部スライド部材62は、その上面が腰部連結部材55の梁部556上面と平行に水平な状態に保持されている。このとき、腰部連結部材55は、後述するように、腰部スライド部材62の一対の挟持爪部628により挟持されて仮留めされている(スナップフィット機構)。また、腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625は、前面側腰部部材61aの上部内周面に設けられる凹弧面状ガイド面616aと腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553とで形成された空間Aに収容・保持されている。この状態において、腰部スライド部材62に対して前方かつ下方の外力が加えられると、腰部スライド部材62が、挟持爪部628による保持状態を離れ、図8(b)に示される通り、その前面に配置された当接面626及び背面側の突出部629の底面が前面側腰部部材61aの内側面615a及び背面側腰部部材61bの内面側溝部612bの底面へとそれぞれ当接するまで、腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の曲率中心付近を中心として時計回り方向にスライド回転する。
【0053】
図9は、腰部スライド部材62のスライド動作に関する作用説明図である。腰部スライド部材62に対して図中下向きに力が働くと、腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625は、前面側腰部部材61aの上部内周面に設けられた相補的形状の凹弧面状ガイド面616aと腰部連結部材55に設けられた相補的形状の凹弧面状ガイド面553とで形成された空間Aに収容・保持されているので、腰部スライド部材62は全体として腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の曲率中心付近を中心として時計回り方向にスライド回転する。このとき、腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625は、主に図中S1で示される腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の所定の面に押し当てられつつスライド回転する。
【0054】
一方、最下端まで移動した腰部スライド部材62に対して図中上向きに力が働くと、腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625は、前面側腰部部材61aの上部内周面に設けられた凹弧面状ガイド面616aと腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553とで形成された空間Aに収容・保持されているので、腰部スライド部材62は全体として腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の曲率中心付近を中心として反時計回り方向にスライド回転する。このとき、腰部スライド部材62の凸弧面状ガイド面625は、主に図中S2で示される前面側腰部部材61aの上部内周面に設けられた凹弧面状ガイド面616aの上端付近と腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の上端付近の所定の面に押し当てられつつスライド回転する。
【0055】
このような構成によれば、腰部スライド部材62の回動機構が空間Aへと集約されているので、コンパクトな腰部構造を実現することができる。
【0056】
図10は、挟持爪部628を用いた保持機構の説明図であり、腰部連結部材55と腰部スライド部材62との集成体を背面側から観察した状態を表した図である。
【0057】
図10(a)は、挟持爪部628により腰部スライド部材62が保持状態にある場合を示している。同図から明らかな通り、腰部連結部材55の背面側にある円柱状の突出部552は、挟持爪部628により挟持されて腰部スライド部材62に保持されている。この状態において、上述の通り、腰部スライド部材62に対して人形1の前方かつ下方への外力が加えられると、挟持爪部628は弾性変形し、それにより、腰部連結部材55と腰部スライド部材62との保持状態は解除されることとなる。
【0058】
図10(b)は、保持状態が解除された後の状態を示している。同図から明らかな通り、挟持爪部628により連結保持部材55は挟持されていないので、腰部スライド部材62は、腰部連結部材55の凹弧面状ガイド面553の曲率中心付近を中心としてスライド回転する。
【0059】
図11は、屈身した状態の人形体1の外観斜視図である。同図から明らかな通り、腰部スライド部材62は、脚部70の付け根部材71を伴って弧状軌道を描いて人形体1の前方かつ下方へとスライド移動するので、例えば、立膝を伴う座位姿勢をとらせる場合でも、人間類似の自然な脚部70の曲げ状態を再現することができる。
【0060】
<1.5 脚部の構成>
次に、図12及び図13を参照しつつ、脚部70の付け根部材71の組み立てについて説明する。
【0061】
図12は、脚部70の組み立て工程について示した説明図である。まず、軸部材627の両端の結合部622に、その外周上に一対の耳部712を備えるリング状部材711が取り付けられる。次に、リング状部材711へと、その外側面に一対の凸状係合部715と結合用突起部714とを有する半球状結合片713を取り付ける(図12(a)、図12(b))。このとき、凸状係合部715は中空となっており、各耳部712は、各凸状係合部715の当該中空空所へと収容される。半球状結合片713は、その後、中空状の前面側付け根部材71aと背面側付け根部材71bにより前後から被覆される(図12(c))。最後に、結合用突起部714が結合孔721を有する大腿部部材72へと挿入される(図12(d))。
【0062】
図13は、上記の通り組み立てられた脚部付け根の回転態様について示す説明図である。同図の矢印から明らかな通り、半球状結合片713の凸状係合部715に垂直な軸回りと、軸部材627の軸回りに回転自由度が設けられている。このとき、それらの回転軸は、P5、P6において交点を有する。このような構成によれば、脚部70を自在に曲げることができる。なお、図13では、説明の便宜のため、前面側付け根部材71aの表示は省略されている。
【0063】
<2.変形例>
上述の実施形態においては、人形の関節構造として説明したが、回動自在な関節構造を要する対象であればどのような対象にも適用することができる。また、静止する人形に限定されず、動力源を備えた人形やロボット等に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、例えば、人形玩具を製造等する産業にて利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 人形体
10 頭部
20 胸部
30 腕部
40 肩部
50 胴部
60 腰部
70 脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13