(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20220825BHJP
A47K 3/20 20060101ALI20220825BHJP
A47K 3/28 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
A47K3/00 E
A47K3/20
A47K3/28
(21)【出願番号】P 2018105135
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 和久
(72)【発明者】
【氏名】森下 正彦
(72)【発明者】
【氏名】末安 草
(72)【発明者】
【氏名】松下 圭太
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-005508(JP,A)
【文献】特開2017-124042(JP,A)
【文献】特開平02-234729(JP,A)
【文献】特開平05-084267(JP,A)
【文献】特開平03-008941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00- 4/00
A61H 7/00-15/02
A61H 33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に設置される吐水装置であって、
浴槽に設けられる吸水口と、
前記吸水口に連結される吸水路と、
前記吸水路に連結され、前記吸水口から浴槽水を吸い込むポンプと、
前記ポンプに連結される導水路と、
前記導水路に連結され、前記ポンプが吸い込む浴槽水を吐出する吐水口と、
前記吸水路に連結され、前記浴槽水を排出する排水路と、
前記ポンプ、前記吸水口および前記排水路の連通状態を切り替える第1切替弁と、
前記第1切替弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、所定のタイミングで、前記ポンプと前記排水路とを連通し前記吸水口と前記ポンプおよび前記排水路とを遮断するように前記第1切替弁を動作させる切替制御を実行
し、前記吸水口と前記ポンプおよび前記排水路とが遮断された状態において、前記吐水装置内の浴槽水を前記排水路から排出する排水モードを実行するように構成されることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記吐水口は、浴槽の内壁面に設置される下部吐水口を含み、
前記吐水装置は、装置外部につながる通気口と、前記ポンプ、前記下部吐水口および前記通気口の連通状態を切り替える第2切替弁と、を備え、
前記制御装置は前記切替制御において、前記第1切替弁の制御とともに、前記ポンプと前記通気口とを連通し前記下部吐水口と前記ポンプおよび前記通気口とを遮断するように前記第2切替弁を動作させる請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水口は、前記下部吐水口と、浴槽のフランジ部に設置される上部吐水口と、を含み、
前記導水路は、前記ポンプに連結される共通導水路と、前記共通導水路から分岐して前記上部吐水口に連結される上部導水路と、前記共通導水路から分岐して前記下部吐水口に連結される下部導水路と、を含み、
前記第2切替弁は、前記共通導水路から前記上部導水路および前記下部導水路への分岐点に設けられ、
前記上部吐水口は、前記通気口を兼ね、
前記制御装置は前記切替制御において、前記ポンプと前記上部吐水口とを連通し前記下部吐水口と前記ポンプおよび前記上部吐水口とを遮断するように前記第2切替弁を動作させる請求項2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ポンプの停止中に前記切替制御を実行する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記第1切替弁は、鉛直方向において前記吸水口よりも上方に位置する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記ポンプは、鉛直方向において前記第1切替弁よりも上方に位置する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に設置される吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴者の腰や首、肩などに局所的な吐水をすることにより、マッサージ効果を提供する吐水装置が知られている(特許文献1参照)。吐水装置は、浴槽水をポンプで吸い込んで、浴槽内の入浴者に向けて吐水することで浴槽水を循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは時として、浴槽に浴槽水を長時間溜めた状態で放置する場合がある。例えば、近年の浴槽は、8時間程度経過した後でも、浴槽水の温度低下を数℃に抑えることができる。このため、夜に湯を張り翌朝に入浴するという使用態様がある。また、洗濯用水として利用するために、浴槽水を溜めておくことがある。また、災害時に貯水目的で浴槽水を溜めておくことがある。
【0005】
浴槽に浴槽水が溜まった状態では、吐水装置の内部にも浴槽水が浸入した状態となる。浴槽水が溜まった状態が長くなれば、装置内部が浴槽水に接触した状態も長く続くことになる。この場合、装置内部に湯垢やバイオフィルムといった汚れが発生しやすくなる。また、装置内の浴槽水中に、菌が発生するおそれもある。一方で、吐水装置内部の洗浄は面倒であるとともに容易でない。とはいえ、清掃を怠れば不衛生であるばかりか、ポンプ内への異物混入などが起こり得る。このような状況から、本発明者らは吐水装置のメンテナンス性のさらなる向上が望ましいことを認識するに至った。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、吐水装置のメンテナンス性を向上させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は吐水装置である。当該吐水装置は、浴槽に設けられる吸水口と、吸水口に連結される吸水路と、吸水路に連結され、吸水口から浴槽水を吸い込むポンプと、ポンプに連結される導水路と、導水路に連結され、ポンプが吸い込む浴槽水を吐出する吐水口と、吸水路に連結され、浴槽水を排出する排水路と、ポンプ、吸水口および排水路の連通状態を切り替える第1切替弁と、第1切替弁を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、所定のタイミングで、ポンプと排水路とを連通し吸水口とポンプおよび排水路とを遮断するように第1切替弁を動作させる切替制御を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐水装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る吐水装置を備える浴槽システムの構成図である。
【
図4】
図4(A)は、変形例1に係る吐水装置を備える浴槽システムの構成図である。
図4(B)は、変形例2に係る吐水装置を備える浴槽システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る吐水装置を備える浴槽システムの構成図である。浴槽システム1は、浴槽2と、浴槽2に設置される吐水装置4とを備える。吐水装置4は、吸水口6と、吸水路8と、ポンプ10と、導水路12と、吐水口14と、排水路32と、第1切替弁34と、制御装置20とを主な構成として備える。なお、
図1では、制御装置20を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0012】
吸水口6は、浴槽2の内壁面に設けられる。吸水口6には、吸水路8の一端側が連結される。吸水路8の他端側には、ポンプ10が連結される。ポンプ10は、浴槽2に溜まった湯または水である浴槽水Wを吸い込んで、吐水口14側へ送り出す動力源である。ポンプ10は、公知のポンプを用いることができる。ポンプ10の駆動により、吸水口6から浴槽水Wが吸い込まれる。
【0013】
ポンプ10には、導水路12の一端側が連結される。導水路12の他端側には、吐水口14が連結される。ポンプ10が吸い込む浴槽水Wは、導水路12を経由して吐水口14から浴槽2に吐出される。「吐出」あるいは「吐水」とは、浴槽水Wを単に吐き出すことを意味し、その吐き出し方を限定するものではない。例えば、帯状に浴槽水Wを垂らすような吐水方法も、ジェット噴射や噴霧のような吐水方法も、「吐出」あるいは「吐水」の一種である。
【0014】
本実施の形態の導水路12は、共通導水路12aと、上部導水路12bと、下部導水路12cとを含む。また、吐水口14は、上部吐水口14aと、下部吐水口14bとを含む。下部吐水口14bは、鉛直方向において上部吐水口14aよりも下方に配置される。なお、「鉛直方向において」とは水平方向の位置関係を問わないことを意味し、上部吐水口14aと下部吐水口14bとは水平方向において重なってもずれてもよい。共通導水路12aは、一端側がポンプ10に連結される。上部導水路12bは、共通導水路12aの他端側から分岐して上部吐水口14aに連結される。下部導水路12cは、共通導水路12aの他端側から分岐して下部吐水口14bに連結される。
【0015】
図2は、吐水装置4の使用状態を示す斜視図である。
図3は、吸水口6と下部吐水口14bの拡大図である。上部吐水口14aは、浴槽2のフランジ部22に設置される。フランジ部22とは、浴槽2の縁の上面である。したがって、上部吐水口14aは、浴槽2内の浴槽水Wに原則的には浸からない。上部吐水口14aは、横長扁平な形状を有し、膜状の横長な吐水流を前方に吐き出す。上部吐水口14aから吐き出される帯状水を入浴者の肩や首にかけることにより、打たせ湯に似たリラックス感を入浴者に与えることができる。
【0016】
吸水口6および下部吐水口14bは、浴槽2の内壁面に設置される。したがって、下部吐水口14bは、浴槽2内の浴槽水Wに浸かり得る。本実施の形態では、吸水口6と下部吐水口14bとは、単一のカバー24に設けられる。カバー24は扁平な円筒状であり、カバー24の側面に吸水口6が設けられ、カバー24の正面に下部吐水口14bが設けられる。下部吐水口14bは、入浴者の腰や背中に向けて勢いよく浴槽水Wを噴射する。これにより、入浴者にマッサージ効果を与えることができる。なお、外部から空気が取り入れられ、この空気と下部導水路12cを流れる浴槽水Wとが混合されて、下部吐水口14bから噴射されてもよい。
【0017】
図1に示すように、吸水路8の途中には、排水路32が連結される。排水路32は、吐水装置4内の浴槽水Wを排出するための配管である。「吐水装置内」とは、吸水路8や導水路12といった配管の内部や、ポンプ10、第1切替弁34、第2切替弁36において浴槽水Wが流れる部分を意味する。排水路32は、一端側が吸水路8に連結され、他端側が図示しない排水口に連結される。排水路32と吸水路8とは、第1切替弁34を介して連結される。第1切替弁34は、ポンプ10、吸水口6および排水路32の連通状態を切り替える弁である。第1切替弁34は、三方弁などの公知の弁を用いることができる。三者間の連通状態の切り替えについては、後に詳細に説明する。
【0018】
また、吐水装置4は、第2切替弁36を備える。本実施の形態の第2切替弁36は、共通導水路12aから上部導水路12bおよび下部導水路12cへの分岐点に設けられる。つまり、共通導水路12aと、上部導水路12bおよび下部導水路12cとは、第2切替弁36を介して連結される。第2切替弁36は、三方弁などの公知の弁を用いることができる。第2切替弁36を制御することで、共通導水路12aと上部導水路12bおよび下部導水路12cとの連通状態を切り替えることができる。
【0019】
本実施の形態では、制御装置20からの制御信号により、第1切替弁34および第2切替弁36が制御される。また、制御装置20は、ポンプ10の駆動も制御する。入浴者は、図示しないコンソールやリモートコントローラなどにより、制御装置20に入力を行うことができる。制御装置20は、外部の電源線に接続され、弁制御部20aとポンプ制御部20bとを含む。ユーザによる吐水装置4の使用態様は、例えば以下の通りである。
【0020】
例えばコンソールがユーザの操作を受け付けると、コンソールはこの操作入力にしたがって弁制御部20aに指示を出す。弁制御部20aは、第2切替弁36に制御信号を送り、第2切替弁36を動作させる。弁制御部20aは、内蔵プログラムにしたがって第2切替弁36に所定の制御を自動実行させることもできる。また、弁制御部20aは、コンソールからの指令の一部をポンプ制御部20bに転送する。ポンプ制御部20bは、ポンプ10に各種制御信号を送ることでポンプ10を制御する。なお、入浴者が手動で、つまり電気制御ではなく物理的に第2切替弁36を制御してもよい。また、ポンプ制御部20bは、弁制御部20aを介さずにコンソールからの指令を直に受けて、ポンプ10を制御してもよい。
【0021】
浴槽水Wは、吸水口6から吸水路8とポンプ10を経由して共通導水路12aに導かれる。入浴者が上部吐水口14aを選択すると、弁制御部20aは第2切替弁36を上開放状態にセットする。上開放状態では、第2切替弁36が共通導水路12aと上部導水路12bとを連通し、共通導水路12aと下部導水路12cとを遮断する。したがって、浴槽水Wは、共通導水路12aから上部導水路12bを経由して、上部吐水口14aのみから浴槽2内に吐出される。
【0022】
入浴者が下部吐水口14bを選択すると、弁制御部20aは第2切替弁36を下開放状態にセットする。下開放状態では、第2切替弁36が共通導水路12aと下部導水路12cとを連通し、共通導水路12aと上部導水路12bとを遮断する。したがって、浴槽水Wは、共通導水路12aから下部導水路12cを経由して、下部吐水口14bのみから浴槽2内に吐出される。
【0023】
このように、共通導水路12aを流れる浴槽水Wを、分流させずに上部吐水口14aと下部吐水口14bのいずれか一方のみから吐水することで、ポンプ10のパワーが小さい場合であっても十分な吐水量を確保しやすくすることができる。なお、上開放状態と下開放状態のいずれにおいても、第1切替弁34は、吸水口6とポンプ10とを連通し、排水路32と吸水口6およびポンプ10とを遮断する。これにより、吸水路8から排水路32への浴槽水Wの流入が阻止される。
【0024】
また、制御装置20は、所定のタイミングで、以下に説明する切替制御を実行するように構成される。好ましくは、制御装置20は、ポンプ10の停止中に切替制御を実行する。なお、ポンプ10の停止状態と、切替制御を受けた第1切替弁34および第2切替弁36の状態とが少なくとも一時において重なっていれば、「ポンプ10の停止中」の要件を満たす。
【0025】
この切替制御は、排水モードにおいて実行される制御である。排水モードとは、浴槽2に浴槽水Wが溜まった状態であっても吐水装置4の内部に浸入している浴槽水Wを装置外部に排出することができるモードである。例えば、浴槽水Wが浴槽2に溜まった状態において、ユーザがコンソールからポンプ10の停止指示を入力すると、制御装置20は、ポンプ10の停止とともに排水モードを実行する。あるいは、浴槽水Wが浴槽2に溜まった状態において、ユーザがコンソールから排水モードの実行指示を入力すると、制御装置20は排水モードを実行する。この場合、排水モードの中で、ポンプ10の停止指示がなされるとともに、切替制御が実行される。
【0026】
切替制御において、制御装置20は、ポンプ10と排水路32とを連通し、吸水口6とポンプ10および排水路32とを遮断するように第1切替弁34を動作させる。また、吐水装置4は装置外部につながる通気口38を備える。そして、制御装置20の制御のもと、第2切替弁36がポンプ10、下部吐水口14bおよび通気口38の連通状態を切り替える。具体的には、制御装置20は、ポンプ10と通気口38とを連通し、下部吐水口14bとポンプ10および通気口38とを遮断するように第2切替弁36を動作させる。
【0027】
前述のとおり、本実施の形態の第2切替弁36には、導水路12を介してポンプ10、上部吐水口14aおよび下部吐水口14bが連結されている。そして、上部吐水口14aは、フランジ部22に設置されている。このため、上部吐水口14aを通気口38として利用することができる。つまり、上部吐水口14aは、通気口38を兼ねる。したがって、制御装置20は切替制御において、ポンプ10と上部吐水口14aと連通し、下部吐水口14bとポンプ10および上部吐水口14aとを遮断するように第2切替弁36を動作させる。
【0028】
第2切替弁36が下部吐水口14bとポンプ10および上部吐水口14aとを遮断し、第1切替弁34が吸水口6とポンプ10および排水路32とを遮断した状態では、浴槽2内の浴槽水Wは、第1切替弁34および第2切替弁36までしか浸入することができない。そして、ポンプ10と上部吐水口14aとが連通され、ポンプ10と排水路32とが連通されることで、上部吐水口14a、上部導水路12b、第2切替弁36、共通導水路12a、ポンプ10、吸水路8(ポンプ10と第1切替弁34との間の領域)および第1切替弁34に残った浴槽水Wは、排水路32から装置外に排出される。これにより、吐水装置4内の大部分を、浴槽水Wに非接触の状態とすることができる。
【0029】
本実施の形態では、第1切替弁34は、鉛直方向において吸水口6よりも上方に位置する。つまり、第1切替弁34における浴槽水Wが流れる部分は、吸水口6における浴槽水Wが流れる部分よりも上方に位置する。また、第1切替弁34における吸水路8(第1切替弁34と吸水口6との間の領域)との接続部の下端B1が、吸水口6における吸水路8との接続部の下端B2よりも上方に位置する。したがって、吸水路8は、第1切替弁34から吸水口6に向かって下方に傾斜する。これにより、浴槽2から浴槽水Wが抜かれたときに、吸水路8内の浴槽水Wは浴槽2側に流れ落ちる。
【0030】
また、本実施の形態では、ポンプ10は、鉛直方向において第1切替弁34よりも上方に位置する。つまり、ポンプ10における浴槽水Wが流れる部分は、第1切替弁34における浴槽水Wが流れる部分よりも上方に位置する。また、ポンプ10における吸水路8との接続部の下端B3が、第1切替弁34における吸水路8(ポンプ10と第1切替弁34との間の領域)との接続部の下端B4よりも上方に位置する。したがって、吸水路8は、ポンプ10から第1切替弁34に向かって下方に傾斜する。これにより、排水モードにおいて、吐水装置4内の浴槽水Wは排水路32に円滑に流れ込む。
【0031】
制御装置20は、以下に説明する洗浄モードを実行することもできる。例えば、浴槽水Wが浴槽2に溜まった状態において、ユーザがコンソールから洗浄モードの実行指示を入力すると、制御装置20は洗浄モードを実行する。あるいは、浴槽水Wが浴槽2に溜まった状態において、ユーザがコンソールからポンプ10の停止指示を入力すると、制御装置20は洗浄モードを実行する。洗浄モードのプログラムは、制御装置20が有する図示しないメモリに予め内蔵されている。
【0032】
洗浄モードでは、まずポンプ制御部20bがポンプ10を所定時間駆動させる。これにより、浴槽水Wが吐水装置4内を循環する。ポンプ10の駆動時間は、設計者による実験やシミュレーションに基づいて適宜設定することが可能である。例えば、複数の駆動時間を設定しておき、求める洗浄度合いや吐水装置4の使用状況等に応じてユーザが駆動時間を適宜選択できるように設計される。
【0033】
所定時間経過後、ポンプ制御部20bがポンプ10を停止させ、続いて弁制御部20aが前述した切替制御を実行する。つまり、吸水口6側および下部吐水口14b側からの浴槽水Wの浸入を遮断し、上部吐水口14aからポンプ10を経由して排水路32に至る流路を形成し、吐水装置4内に残った浴槽水Wを排出する。これにより、吐水装置4の内部が清潔な状態に維持される。例えば、ポンプ10の停止毎に洗浄モードを実行することで、吐水装置4の内部をより清潔に保つことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態に係る吐水装置4は、吸水口6と、吸水口6に連結される吸水路8と、吸水路8に連結され浴槽水Wを吸い込むポンプ10と、ポンプ10に連結される導水路12と、導水路12に連結され浴槽水Wを吐出する吐水口14と、吸水路8に連結され浴槽水Wを排出する排水路32と、ポンプ10、吸水路8および排水路32の連通状態を切り替える第1切替弁34と、第1切替弁34を制御する制御装置20とを備える。そして、制御装置20は、所定のタイミングでポンプ10と排水路32とを連通し、吸水口6とポンプ10および排水路32とを遮断するように第1切替弁34を動作させる切替制御を実行する。
【0035】
このように、制御装置20が切替制御、言い換えれば排水モードを実行することで、浴槽2からの浴槽水Wの浸入を遮断しながら、吐水装置4内に残った浴槽水Wを排出することができる。この結果、装置内部に湯垢やバイオフィルムといった汚れが発生することや残水中に菌が発生することを、抑制することができる。また、ユーザのボタン操作1つで排水モードが実行されるといった設計が可能であるため、ユーザに煩雑な作業を強いることなく吐水装置4の内部を清掃することができる。よって、吐水装置4のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、吐水装置4内の残水は、排水路32から排出される。つまり、残水は浴槽2に排出されない。このため、浴槽2も清潔に保つことができる。
【0036】
また、本実施の形態の吐水口14は、浴槽2の内壁面に設置される下部吐水口14bを含み、吐水装置4は、装置外部につながる通気口38と、ポンプ10、下部吐水口14bおよび通気口38の連通状態を切り替える第2切替弁36とを備える。そして、制御装置20は切替制御において、第1切替弁34の制御とともに、ポンプ10と通気口38とを連通し下部吐水口14bとポンプ10および通気口38とを遮断するように第2切替弁36を動作させる。これにより、下部吐水口14bが浴槽水Wに浸かった場合であっても、第2切替弁36より内部への浴槽水Wの浸入を防ぎながら、吐水装置4内の浴槽水Wを排出することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態の吐水口14は、下部吐水口14bに加えて、浴槽2のフランジ部22に設置される上部吐水口14aを含む。また、導水路12は、ポンプ10に連結される共通導水路12aと、共通導水路12aから分岐して上部吐水口14aに連結される上部導水路12bと、共通導水路12aから分岐して下部吐水口14bに連結される下部導水路12cとを含む。そして、第2切替弁36は、共通導水路12aから上部導水路12bおよび下部導水路12cへの分岐点に設けられる。このような構成では、上部吐水口14aが通気口38を兼ねることができる。したがって、制御装置20は切替制御において、ポンプ10と上部吐水口14aとを連通し下部吐水口14bとポンプ10および上部吐水口14aとを遮断するように第2切替弁36を動作させる。
【0038】
これにより、上部吐水口14aから吐出される浴槽水Wを入浴者の肩や首にかけ、下部吐水口14bから吐出される浴槽水Wを入浴者の腰や背中に当てるといった入浴方法を提供することができる。また、上部吐水口14aを通気口38として利用しているため、切替制御に必要な構成の複雑化を低減することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、制御装置20がポンプ10の停止中に切替制御を実行する。これにより、吐水装置4内の浴槽水Wをより円滑に排水することができる。また、排水路32から浴槽水Wが逆流することを回避することができる。
【0040】
また、第1切替弁34は、鉛直方向において吸水口6よりも上方に位置する。これにより、吸水路8を吐水装置4側から浴槽2側に向けて下方に傾斜させることができる。このため、浴槽2から浴槽水Wが抜かれたときに、吸水路8内の浴槽水Wを浴槽2側に排水することができる。この結果、吐水装置4内をより清潔に保つことができる。
【0041】
また、ポンプ10は、鉛直方向において第1切替弁34よりも上方に位置する。これにより、吸水路8をポンプ10から第1切替弁34に向けて下方に傾斜させることができる。このため、吐水装置4内の浴槽水Wをより円滑に排水路32に導くことができる。この結果、吐水装置4内に浴槽水Wが残る可能性を減らすことができ、装置内部をより清潔に保つことができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0043】
実施の形態においては、2つの下部吐水口14bと1つの上部吐水口14aとを対象として説明したが(
図2参照)、言うまでもなく下部吐水口14bや上部吐水口14a、吸水口6の数は任意である。また、実施の形態では、共通導水路12aを流れる浴槽水Wを、分流させずに上部吐水口14aと下部吐水口14bのいずれか一方のみから吐水しているが、浴槽水Wを分流させて上部吐水口14aおよび下部吐水口14bから同時に吐水してもよい。また、実施の形態では、吸水口6と下部吐水口14bとが単一のカバー24に設けられているが、吸水口6と下部吐水口14bとは別々に配置されてもよい。
【0044】
さらに、吐水装置4は、上部吐水口14aと下部吐水口14bのいずれか一方のみを備えてもよい。
図4(A)は、変形例1に係る吐水装置4を備える浴槽システム1の構成図である。変形例1に係る吐水装置4は、上部吐水口14aのみを備える。この場合、上部吐水口14a側から浴槽水Wが浸入する可能性は低く、また上部吐水口14aは通気口38として機能することができるため、第2切替弁36を省略することができる。
【0045】
図4(B)は、変形例2に係る吐水装置4を備える浴槽システム1の構成図である。変形例2に係る吐水装置4は、下部吐水口14bのみを備える。この場合、下部吐水口14b側からの浴槽水Wの浸入を遮断するために、吐水装置4は第2切替弁36を備える。このとき、第2切替弁36は例えば三方弁で構成され、2つの接続口に共通導水路12aおよび下部導水路12cが接続され、配管の接続されない残る1つの接続口が通気口38として機能する。
【0046】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【符号の説明】
【0047】
2 浴槽、 4 吐水装置、 6 吸水口、 8 吸水路、 10 ポンプ、 12 導水路、 12a 共通導水路、 12b 上部導水路、 12c 下部導水路、 14 吐水口、 14a 上部吐水口、 14b 下部吐水口、 20 制御装置、 22 フランジ部、 32 排水路、 34 第1切替弁、 36 第2切替弁、 38 通気口。