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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/42 20060101AFI20220825BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20220825BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B41J11/42
B41J2/32 Z
B41J11/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018111662
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214147
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390034223
【氏名又は名称】イーデーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】永野 勝仁
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-016337(JP,U)
【文献】特開平07-256957(JP,A)
【文献】実開平04-040953(JP,U)
【文献】特開2006-334950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送と停止とを繰り返して間欠的に移送される被印刷物の停止時に印刷動作を実行するサーマルプリンタであって、
被印刷物の面方向に移動可能なプリントヘッドと、
被印刷物を挟んで前記プリントヘッドに対向して配置され、前記プリントヘッドに対向した位置を維持しながら前記プリントヘッドの移動に同期して被印刷物の面方向に移動可能な円筒状の印字受けローラと、
前記印字受けローラを軸方向に交差する方向であって被印刷物の面方向に移動させることで、前記印字受けローラに対する前記プリントヘッドの角度を調整可能な角度調整機構と、を備えるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記プリントヘッドは、被印刷物の移送方向に交差する方向に移動可能である請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記プリントヘッドの被印刷物の面方向への移動の際の移動速度と同じ周速度となるように前記印字受けローラを回転動作させる印字受けローラ回転機構を更に備える請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記印字受けローラ回転機構は、前記印字受けローラの回転軸と同軸上に前記印字受けローラと一体的に回転可能に接続され外周面の径が前記印字受けローラの径と同じ径で形成されるプーリと、前記プリントヘッドの移動方向に延びると共に前記プーリの外周面に当接して前記印字受けローラが被印刷物の面方向に移動した場合に前記プーリを摩擦力で回転させることが可能なベルトと、を有する請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷物の停止中に印刷動作を行う間欠式のサーマルプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。間欠式のサーマルプリンタは、印刷動作に応じて被印刷物の面方向に移動してプラテンプレート側に押圧することで印刷を行うサーマルヘッドと、被印刷物を挟んでサーマルヘッドに対向して固定して配置されるプラテンプレートと、を備える。間欠式のサーマルプリンタにおいては、プラテンプレートの表面は、平面状に形成される。プラテンプレートは、サーマルヘッドの移動範囲に亘って配置される。
【0003】
一方、連続式のサーマルプリンタが知られている。連続式のサーマルプリンタは、被印刷物の移動中に停止状態でプラテンローラ側に押圧することで印刷を行うサーマルヘッドと、被印刷物を挟んでサーマルヘッドに対向して配置される円筒状のプラテンローラと、を備える。連側式のサーマルプリンタにおいては、サーマルヘッドが停止しているため、プラテンローラは、停止状態のサーマルヘッドに対向して固定して配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4299008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
間欠式のサーマルプリンタにおいては、サーマルヘッドがプラテンプレート側に押圧された場合に、サーマルヘッドがプラテンプレートの平面状の部分に接触する。そのため、サーマルヘッドがプラテンプレートへ喰い込むことなどにより、プラテンプレートが弾性変形して、プラテンプレートには、隆起部分が形成される可能性がある。これにより、プラテンプレートの隆起部分が、被印刷物への印刷時に影響を与える可能性がある。よって、印刷品質が低下する虞がある。
【0006】
一方、連続式のサーマルプリンタのように、円筒状のプラテンローラを使用する場合には、サーマルヘッドがプラテンローラへ喰い込むことなどによりプラテンローラが弾性変形して隆起部分が形成されても、サーマルヘッドがプラテンローラの円弧状の部分に接触する。このことにより、プラテンローラの隆起部分は、プラテンプレートの隆起部分よりも見かけ上、小さくなりがちであり、プラテンローラを使用した方が、プラテンプレートを使用する場合よりも、被印刷物への印刷時に影響が少ない。
【0007】
そのため、被印刷物の停止中に印刷動作を行う間欠式のサーマルプリンタにおいて、被印刷物の移動中に印刷動作を行う連続式のサーマルプリンタと同等の印刷品質を確保して、印刷品質を向上させることが望まれる。
【0008】
本発明は、被印刷物の停止中に印刷動作を行うサーマルプリンタにおいて、印刷品質を向上させることができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移送と停止とを繰り返して間欠的に移送される被印刷物の停止時に印刷動作を実行するサーマルプリンタであって、被印刷物の面方向に移動可能なプリントヘッドと、被印刷物を挟んで前記プリントヘッドに対向して配置され、前記プリントヘッドに対向した位置を維持しながら前記プリントヘッドの移動に同期して被印刷物の面方向に移動可能な円筒状の印字受けローラと、を備えるサーマルプリンタに関する。
【0010】
また、前記プリントヘッドは、被印刷物の移送方向に交差する方向に移動可能であることが好ましい。
【0011】
また、前記プリントヘッドの被印刷物の面方向への移動の際の移動速度と同じ周速度となるように前記印字受けローラを回転動作させる印字受けローラ回転機構を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記印字受けローラ回転機構は、前記印字受けローラの回転軸と同軸上に前記印字受けローラと一体的に回転可能に接続され外周面の径が前記印字受けローラの径と同じ径で形成されるプーリと、前記プリントヘッドの移動方向に延びると共に前記プーリの外周面に当接して前記印字受けローラが被印刷物の面方向に移動した場合に前記プーリを摩擦力で回転させることが可能なベルトと、を有することが好ましい。
【0013】
また、前記印字受けローラを軸方向に交差する方向に移動させることで、前記印字受けローラに対する前記プリントヘッドの角度を調整可能な角度調整機構を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被印刷物の停止中に印刷動作を行うサーマルプリンタにおいて、印刷の品質を向上させることができるサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタ1の全体構成を説明する正面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタ1を図1の矢視Aから視た図である。
図4】サーマルヘッド21に対してプラテンローラ41をオフセットさせる状態を示す図であって、(a)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置にプラテンローラ41を位置させた状態を示す図であり、(b)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置からX1側にプラテンローラ41をオフセットさせた状態を示す図であり、(c)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置からX2側にプラテンローラ41をオフセットさせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタ1の全体構成を説明する正面図である。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタ1を図1の矢視Aから視た図である。
【0017】
なお、以下の説明及び図面において、本実施形態においては、長尺フィルムFの移送方向Pは、例えば、図1の紙面を貫く方向であって、奥側から手前側に向かう方向である。なお、長尺フィルムFの移送方向Pに直交する方向であってヘッドユニットが移動する方向をX方向(図1における左右方向)ともいう。X方向における一方側(図1における右側)をX1側ともいい、X方向における他方側(図1における左側)をX2側ともいう。また、上下方向を上下方向Zともいう。
【0018】
本実施形態のサーマルプリンタ1は、例えば、長尺フィルムF(被印刷物)を移送して被包装物を包装する包装機などの印刷工程に使用され、包装機(不図示)における長尺フィルムFの移送経路の途中に配置される。なお、本実施形態のサーマルプリンタ1が用いられる機器は、包装機に限定されない。
【0019】
長尺フィルムFは、X方向に幅を有して、移送方向Pに長い長尺状に形成され、図1に示すように、サーマルプリンタ1のサーマルヘッド21とプラテンローラ41との間を移送方向Pに搬送される。長尺フィルムFの移送方向Pは、例えば、図1の紙面を貫く方向であって、奥側から手前側に向かう方向である。サーマルプリンタ1は、移送と停止とを繰り返して間欠的に移送される長尺フィルムFの停止時に印刷動作を実行する。
【0020】
サーマルプリンタ1は、図1に示すように、ヘッドユニット2と、ヘッド直線移動機構3と、プラテンローラ41(印字受けローラ)を有するプラテンユニット4と、プラテン直線移動機構5と、プラテンローラ回転機構6(印字受けローラ回転機構)と、リボン搬送機構7と、を備える。
【0021】
なお、本実施形態の図1においては、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4を1組で構成している。しかし、実際には、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4を2組以上で構成している場合が多い。本実施形態では、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4を2組以上備えるサーマルプリンタであるが、説明の便宜上、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4が1組の場合について説明している。ヘッドユニット2及びプラテンユニット4を2組以上で構成する場合には、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4は、X方向に並んで複数配置される。ヘッドユニット2及びプラテンユニット4をX方向に2組以上並べて配置することで、長尺フィルムFの幅方向の印刷範囲を分割することで、印刷速度を向上させることができる。なお、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4の組数は制限されない。
【0022】
ヘッドユニット2は、長尺フィルムFの上方側に配置されている。ヘッドユニット2は、ヘッド直線移動機構3により、X方向に移動可能に構成される。本実施形態においては、X方向は、長尺フィルムFの面方向であって、長尺フィルムFの移送時の移送方向Pに直交する方向である。
【0023】
ヘッド直線移動機構3は、ヘッドユニット駆動モータ31と、X方向に延びるヘッドユニットガイドレール32と、を有する。ヘッドユニット2は、ヘッドユニット駆動モータ31が駆動することで、ヘッドユニットガイドレール32に沿ってX方向に直線的に移動可能である。ヘッドユニット駆動モータ31の駆動は、制御部(図示せず)により制御される。
【0024】
ヘッドユニット2は、図2に示すように、サーマルヘッド21(プリントヘッド)と、押圧機構部22と、サーマルヘッド21に対してインクリボンRの上流側及び下流側に配置される2つのガイドローラ23,23と、を有する。サーマルヘッド21、押圧機構部22及び2つのガイドローラ23,23は、ユニット化されている。押圧機構部22は、サーマルヘッド21を保持して、サーマルヘッド21をプラテンローラ41に押圧するように、サーマルヘッド21を上下方向に移動させる。また、ヘッド直線移動機構3(図1参照)によりヘッドユニット2をX方向に移動することで、サーマルヘッド21は、X方向に移動可能である。2つのガイドローラ23,23は、サーマルヘッド21の上流側及び下流側において、インクリボンRをガイドする。
【0025】
サーマルヘッド21は、移送方向Pに移送される長尺フィルムFに、印刷部(不図示)を印刷する。サーマルヘッド21は、リボン搬送機構7のインクリボンR及び長尺フィルムFを挟んで、プラテンローラ41に対向して配置される。
【0026】
サーマルヘッド21は、先端21a側が下方側に突出するように配置される。サーマルヘッド21は、その先端21aに複数の発熱素子を備える。サーマルヘッド21は、サーマルプリンタ1がサーマルヘッド21に通電させることにより、所望の発熱素子が発熱する。
【0027】
サーマルヘッド21は、押圧機構部22により、上下方向Zに移動可能に構成され、プラテンローラ41に対して、プラテンローラ41から離間する待機位置又はプラテンローラ41を押圧する押圧位置に移動可能に構成される。
【0028】
サーマルヘッド21を、待機位置から、押圧位置に向かうように移動させることで、インクリボンRを、長尺フィルムF及びプラテンローラ41側に押圧する。そして、ヘッドユニット2がX方向に移動されることにより、プラテンローラ41の表面において、発熱した所望の発熱素子と接触したインクリボンRは、長尺フィルムFに接触した状態で移動される。これにより、サーマルプリンタ1は、インクリボンRに塗布されたインクを長尺フィルムFに接着させ、印刷部(不図示)を印刷する。
【0029】
リボン搬送機構7は、図1に示すように、巻回された未使用のインクリボンRを保持する原反側リボンホルダ71と、インクリボンRを巻き取る巻取側リボンホルダ72と、複数のガイドローラ73と、原反側駆動モータ741と、原反側タイミングベルト742と、巻取側駆動モータ751と、巻取側タイミングベルト752と、を備える。リボン搬送機構7は、原反側リボンホルダ71に巻回された未使用のインクリボンRをサーマルヘッド21へ向けて搬送すると共に、サーマルヘッド21に使用されたインクリボンRを巻取側リボンホルダ72へ向けて搬送する。複数のガイドローラ73は、原反側リボンホルダ71から巻取側リボンホルダ72に向かって搬送されるインクリボンRをガイドするローラである。
【0030】
プラテンユニット4は、図2に示すように、長尺フィルムFを挟んでヘッドユニット2の下方側に配置されている。プラテンユニット4は、プラテン直線移動機構5により、X方向に移動可能に構成される。
【0031】
プラテン直線移動機構5は、図1に示すように、プラテンローラ駆動モータ51と、X方向に延びるプラテンユニットガイドレール52と、を有する。プラテンユニット4は、プラテンローラ駆動モータ51が駆動することで、ヘッドユニット2の移動に伴って、プラテンユニットガイドレール52に沿ってX方向に移動可能である。プラテンユニット4のプラテンローラ41は、ヘッドユニット2のサーマルヘッド21に対向した位置を維持しながら、ヘッドユニット2の移動に同期して、X方向に移動するように制御される。プラテンローラ駆動モータ51の駆動は、制御部(図示せず)により制御される。
【0032】
プラテンユニット4は、図2及び図3に示すように、プラテンローラ41と、ローラ保持部42と、2つのベルトガイドローラ43,43と、を有する。ローラ保持部42は、プラテンローラ41を回転自在に支持する。プラテンローラ41は、インクリボンR及び長尺フィルムFを挟んでサーマルヘッド21に対向して配置される。プラテンローラ41は、サーマルヘッド21との間に長尺フィルムFを配置した状態で回転可能である。2つのベルトガイドローラ43,43は、プラテンローラ41のX方向のX1側及びX2側の下方側において、プラテンローラ回転機構6(後述)の摩擦ベルト62(後述)をガイドする。
【0033】
プラテンローラ41は、長尺フィルムFを挟んでヘッドユニット2に対向して配置される。プラテンローラ41は、所定径の金属製芯金の周面にシリコーンゴム等の所定の弾性を有する素材による弾性層が形成され、所定外径の円筒状に形成されたローラである。プラテンローラ41は、プラテンローラ本体411と、プラテン軸部材412と、を有する。
【0034】
プラテンローラ回転機構6は、サーマルヘッド21の長尺フィルムFのX方向への移動の際の移動速度と同じ周速度となるように、プラテンローラ41を回転動作させる機構である。プラテンローラ回転機構6は、図3に示すように、プラテンローラ41のプラテン軸部材412の軸方向の一端部に配置される従動プーリ61(プーリ)と、従動プーリ61に巻き掛けられた摩擦ベルト62(ベルト)と、を有する。
【0035】
従動プーリ61は、短筒状に形成され、プラテンローラ41のプラテン軸部材412の軸方向の一端部にプラテンローラ41の回転軸と同軸上に接続される。従動プーリ61の外周面611の部分の径(半径R2)は、プラテンローラ41の径(半径R1)と同じ径で形成され、プラテンローラ41と一体的に回転可能である。従動プーリ61の外周面611には、摩擦ベルト62が巻き掛けられる。
【0036】
摩擦ベルト62は、図1図3に示すように、帯状に形成され、サーマルヘッド21の移動方向であるX方向に延びる。摩擦ベルト62は、両端部がサーマルプリンタ1の両端部側に固定されている。摩擦ベルト62のX方向の途中には、プラテンユニット4のプラテンローラ41に接続された従動プーリ61が配置される。摩擦ベルト62は、従動プーリ61の外周面611に当接して、プラテンローラ41がX方向に移動した場合に、従動プーリ61を摩擦力で回転させることが可能である。
【0037】
摩擦ベルト62は、図2に示すように、X方向の途中において、従動プーリ61の外周面611に沿って上方側に凸となる略C字形状に湾曲する湾曲部分621を有する。湾曲部分621は、従動プーリ61において、X1側の下端部側の部分及びX2側の下端部側の部分を上方側において繋いで円弧状に形成される略C字状の外周面611に巻き掛けられる。湾曲部分621は、プラテンローラ41に接続される従動プーリ61のX方向への移動に同期してX方向に移動する。
【0038】
摩擦ベルト62における従動プーリ61に巻き掛けられる近傍の部分は、従動プーリ61のX1側及びX2側の下方において、ベルトガイドローラ43,43にガイドされている。
【0039】
以上のように構成されるプラテンローラ回転機構6においては、プラテンユニット4がX方向に移動した場合に、プラテンユニット4に配置されるプラテンローラ41がX方向に移動され、プラテンローラ41に接続された従動プーリ61もX方向に移動される。これにより、摩擦ベルト62に巻き掛けられて接触した従動プーリ61が、摩擦ベルト62の摩擦力により従動して回転する。このように、プラテンローラ41がX方向に移動した場合に、摩擦ベルト62は、従動プーリ61を摩擦力で回転させる。これにより、プラテンローラ41をサーマルヘッド21の移動速度と同じ周速度で回転させることができる。
【0040】
次に、プラテン直線移動機構5により実現可能なサーマルヘッド21の角度調整機構について説明する。図4は、サーマルヘッド21に対してプラテンローラ41をオフセットさせる状態を示す図であって、(a)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置にプラテンローラ41を位置させた状態を示す図であり、(b)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置からX1側にプラテンローラ41をオフセットさせた状態を示す図であり、(c)は、サーマルヘッド21がプラテンローラ41の頂部Tに接触する位置からX2側にプラテンローラ41をオフセットさせた状態を示す図である。
【0041】
プラテン直線移動機構5は、前述の通り、プラテンローラ41をX方向に移動可能に構成される。プラテン直線移動機構5は、プラテンローラ41をX方向に移動させることで、プラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の接触角度を調整可能な角度調整機構として機能する。
【0042】
サーマルヘッド21は、サーマルヘッド21の先端21aをプラテンローラ41の周面に押圧させて長尺フィルムFに印刷を行う。そして、長尺フィルムFに印字を行うためには、サーマルヘッド21の先端21aをプラテンローラ41の外周面に対して所定の接触角度αで接触させる必要がある。所定の接触角度αは、図4(a)に示すように、サーマルヘッド21の先端21aが接触する部分において、サーマルヘッド21の端面21bとプラテンローラ41の接線方向とがなす角度である。
【0043】
所定の接触角度としては、サーマルヘッド21の製造メーカが推奨するメーカ推奨角度がある。メーカ推奨角度は、サーマルヘッドの接触角度において良好な印刷品質を得られることをメーカが推奨する接触角度である。しかし、サーマルヘッド21の製造バラツキにより、最適な接触角度は、メーカが推奨するメーカ推奨角度とは異なる場合もある。メーカ推奨角度は、例えば、20~30°の範囲の所定の角度である。
【0044】
従来、一般的に、サーマルヘッドの所定の接触角度について、メーカ推奨角度に基づいて、サーマルヘッドのサーマルプリンタへの取付構造を設計している。しかし、サーマルヘッドの製造バラツキにより、メーカ推奨角度と異なるサーマルヘッドの接触角度の方が、サーマルヘッドの性能を十分に発揮できることがあった。サーマルヘッドの最適な接触角度がメーカ推奨角度と異なる場合に、サーマルヘッドの接触角度を変更することは、サーマルヘッドのサーマルプリンタへの取り付け角度を変更するなどの構造の変更が伴い、難しかった。
また、サーマルプリンタの組み立て時の組立誤差や構成部品の寸法誤差などにより、サーマルプリンタにサーマルヘッドをそのまま取り付けると、サーマルヘッドの接触角度が最適な接触角度からずれた状態となることがあった。このような場合に、サーマルヘッドのサーマルプリンタへの取り付け角度を変更するなどの構造の変更をすることは、難しかった。
【0045】
これに対して、本実施形態においては、所定の接触角度αを変更することを、プラテン直線移動機構5により、プラテンローラ41をX方向に移動させることで実現している。プラテンローラ41をX方向に移動させることで、サーマルヘッド21の先端21aとプラテンローラ41とが接触する位置を、プラテンローラ41の頂部Tから、X1側に第1オフセット量(Off1)の位置と、X2側に移動される第2オフセット量(Off2)の位置と、に移動させることが可能である。
【0046】
例えば、図4(a)に示すように、サーマルヘッド21の先端21aがプラテンローラ41の頂部Tを押圧するように配置する場合において、サーマルヘッド21の所定の接触角度αをメーカ推奨角度である推奨接触角度αsとなるように、サーマルヘッド21を傾けて配置している。
【0047】
推奨接触角度αsを変更したい場合には、プラテンローラ41を、図4(a)に示すプラテンローラ41の頂部Tから、プラテン直線移動機構5により、X1側に第1オフセット量(Off1)又はX2側に第2オフセット量(Off2)移動させる。これにより、所定の接触角度αを変更することができる。
【0048】
プラテンローラ41を、図4(a)に示すプラテンローラ41の頂部Tから、プラテン直線移動機構5により、X1側に第1オフセット量(Off1)移動させると、図4(b)に示すように、プラテンローラ41が円弧状に形成されるため、サーマルヘッド21の先端21aは、プラテンローラ41の頂部TよりもX2側の位置であって頂部Tよりも下方側の位置において、プラテンローラ41の周面に接触する。これにより、所定の接触角度αを、第1接触角度α1に変更することができる。第1接触角度α1は、推奨接触角度αsよりも大きい接触角度である。頂部TからX1側に移動させる第1オフセット量(Off1)は、例えば、約2mm程度の範囲である。
【0049】
また、プラテンローラ41を、図4(a)に示すプラテンローラ41の頂部Tから、プラテン直線移動機構5により、X2側に第2オフセット量(Off2)移動させると、図4(c)に示すように、プラテンローラ41が円弧状に形成されるため、サーマルヘッド21の先端21aは、プラテンローラ41の頂部TよりもX1側の位置であって頂部Tよりも下方側の位置において、プラテンローラ41の周面に接触する。これにより、所定の接触角度αを、第2接触角度α2に変更することができる。第2接触角度α2は、推奨接触角度αsよりも小さい接触角度である。頂部TからX2側に移動させる第2オフセット量(Off2)は、例えば、約2mm程度の範囲である。
【0050】
以上のように、本発明においては、プラテンローラ41をX方向に移動させるプラテン直線移動機構5を用いることにより、プラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の接触角度αを調整可能である。そのため、プラテン直線移動機構5を利用することで、プラテン直線移動機構5におけるサーマルヘッド21とのX方向の位置関係をX1側又はX2側にオフセットした状態で、プラテンローラ41をサーマルヘッド21の移動に同期させてX方向に移動させることができる。これにより、プラテン直線移動機構5を利用することで、サーマルヘッド21のプラテンローラ41に対する接触角度αを容易に調整できる。
【0051】
本実施形態のサーマルプリンタ1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態のサーマルプリンタ1は、移送と停止とを繰り返して間欠的に移送される被印刷物Fの停止時に印刷動作を実行するサーマルプリンタ1であって、X方向に移動可能なサーマルヘッド21と、長尺フィルムFを挟んでサーマルヘッド21に対向して配置され、サーマルヘッド21に対向した位置を維持しながらサーマルヘッド21の移動に同期してX方向に移動可能な円筒状のプラテンローラ41と、を備える。
【0052】
そのため、プラテンローラ41が円筒状に形成されているため、サーマルヘッド21の先端21aがプラテンローラ41の円弧状の部分に接触する。これにより、サーマルヘッド21の先端21aにより押し付けられた場合のプラテンローラ41の円弧状の部分の弾性変形やプラテンローラ41の表面の摩耗が、表面が平面状のプラテンプレートの場合よりも低減される。よって、X方向に移動可能なサーマルヘッド21を備えるサーマルプリンタ1において、プラテンローラ41の表面の弾性変形や摩耗に起因する長尺フィルムFの皺や折れ曲がりやプラテンローラ41の表面への貼り付きなどを低減できる。よって、印刷品質を向上させることができる。
【0053】
また、表面が平面状のプラテンプレートを使用しないでよいため、表面が平面状のプラテンプレートの場合において表面の滑りを向上させるために使用されるコンスターチなどの滑り促進剤を使用しなくてよい。これにより、滑り促進剤に要する費用を低減できると共に、滑り促進剤が異物として混入されて印刷品質を悪化させることを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態においては、サーマルヘッド21のX方向への移動の際の移動速度と同じ周速度となるようにプラテンローラ41を回転動作させるプラテンローラ回転機構6を備える。そのため、サーマルヘッド21の移動速度とプラテンローラ41の周速度を同じとすることで、プラテンローラ41は、長尺フィルムFに対して回転しながらサーマルヘッド21に追従してX方向に移動する。これにより、長尺フィルムFに対するプラテンローラ41の摩擦抵抗を低減でき、印刷品質を向上できる。
【0055】
また、本実施形態においては、プラテンローラ回転機構6は、プラテンローラ41の回転軸と同軸上にプラテンローラ41と一体的に回転可能に接続され外周面の径(半径R2)がプラテンローラ41の径(半径R1)と同じ径で形成される従動プーリ61と、サーマルヘッド21の移動方向に延びると共に従動プーリ61の周面に当接してプラテンローラ41がX方向に移動した場合に従動プーリ61を摩擦力で回転させることが可能な摩擦ベルト62と、を有する。そのため、プラテンローラ41をX方向に移動させるだけで、プラテンローラ41を、サーマルヘッド21と同じ周速度で回転させることができる。本実施形態においては、プラテンローラ41をX方向に移動させる構成を有いるため、簡易な構成で、プラテンローラ41を、サーマルヘッド21と同じ周速度で回転させることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、プラテン直線移動機構5により、プラテンローラ41をX方向に移動させることで、プラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の角度を調整可能である。そのため、プラテン直線移動機構5により、プラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の接触角度を容易に調整することができる。これにより、プラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の接触角度を容易に調整することで、サーマルヘッド21の接触角度が製造時のバラツキにより個体差が生じても、又は、サーマルプリンタの組み立て時の組立誤差や構成部品の寸法誤差などが生じても、印刷品質を維持することができる。
【0057】
また、ヘッドユニット2及びプラテンユニット4をX方向に2組以上並べて配置した場合には、各々のプラテンローラ41に対するサーマルヘッド21の接触角度を調整できる。これにより、サーマルプリンタ1全体の印刷品質を維持することができる。
【0058】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、サーマルヘッド21及びプラテンローラ41を、長尺フィルムFの移送方向Pに直交するX方向に移動するように構成したが、これに限定されない。サーマルヘッド21及びプラテンローラ41を、長尺フィルムFの移送方向Pに移動するように構成してもよいし、長尺フィルムFの移送方向Pに交差する斜め方向に移動するように構成しいてもよい。
【0059】
また、前記実施形態においては、プラテンローラ回転機構6(従動プーリ61及び摩擦ベルト62)を備えて構成したが、これに限定されず、プラテンローラ回転機構6(従動プーリ61及び摩擦ベルト62)を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 サーマルプリンタ
5 プラテン直線移動機構(角度調整機構)
6 プラテンローラ回転機構(印字受けローラ回転機構)
21 サーマルヘッド(プリントヘッド)
41 プラテンローラ(印字受けローラ)
61 従動プーリ(プーリ)
62 摩擦ベルト(ベルト)
F 長尺フィルム(被印刷物)
図1
図2
図3
図4