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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】地中レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G01V3/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018130609
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020008451
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰之
(72)【発明者】
【氏名】千賀 敦夫
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-323590(JP,A)
【文献】特開平04-120487(JP,A)
【文献】特開平11-287851(JP,A)
【文献】特開2012-247320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0012411(US,A1)
【文献】特開平03-259775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 -99/00
G01S 7/00 - 7/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査信号を送信する送信部と、検出信号を受信する受信部と、前記受信部からの検出信号を処理する処理部とを備え、
前記処理部は、前記受信部からの検出信号によって得たチャート上において手動で設定された所定領域で信号強度の調整を行い、
前記処理部は、指定された枠の周辺領域を含めて前記所定領域として扱い、
前記チャートは、受信強度に対する、経路方向の距離に対応する移動距離と、深さ方向の距離に対応する電波の送信から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データである、地中レーダ装置。
【請求項2】
前記所定領域は、前記指定された枠内の領域又は前記指定された枠外の領域である、請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記所定領域の境界領域でゲインを漸次変化させる、請求項1及び2のいずれか一項に記載の地中レーダ装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記所定領域の境界領域でゲインを連続的に変化させる、請求項1~のいずれか一項に記載の地中レーダ装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記所定領域の境界領域でゲインをガウシアン分布に従って変化させる、請求項及びのいずれか一項に記載の地中レーダ装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記所定領域内で所定の信号レベルを超えた領域以外の残余領域のゲインを調整する、請求項1~のいずれか一項に記載の地中レーダ装置。
【請求項7】
前記送信部は、地中探査用の電波を周期的に送信するとともに、前記受信部は、前記地中探査用の電波に同期させて電波を受信する、請求項1~のいずれか一項に記載の地中レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を利用した地中レーダ装置に関し、特に探査用の電波を周期的に送受信する送受信部を有する地中レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中レーダ装置として、地中に向けて電波を送信し、地中の埋設物からの反射波を受信することで、受信強度に対する移動距離と電磁波の送信から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データを生成するものが公知となっている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の装置では、時間又は距離軸方向の1次元画像データについて、1次元ウェーブレット解析により時間-周波数領域へ変換して時間-周波数データを算出して縦縞ノイズの周波数成分を算出した後、ノイズ成分を抽出する第1フィルタリング処理を実行し、元の2次元画像データから抽出した縦縞ノイズ成分を除去する第2フィルタリング処理を実行して縦縞ノイズを除去する。なお、特許文献1には明示されていないが、地中レーダ装置によって得られる反射信号は、地表面又はアンテナに近い程、反射強度が大きく、探査ターゲットが深くなるにつれ反射信号が小さくなる。そのため、一般の地中レーダ装置はAGC(Automatic Gain Control)や表示STC(Sensitivity Time Control)と呼ばれる機能を有している。
【0003】
しかしながら、従来の地中レーダ装置において、AGCや表示STCによって深度方向に対する信号強度の調整は可能であったが、移動方向又は横位置に対するゲイン調整は行われていない。特に、反射信号強度が強い鋼管と反射信号強度が弱い樹脂管とが近接している場合には、深度方向及び移動方向の両方に関して反射信号の視認性を確保することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-247844号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、反射信号強度が異なる複数種の対象について検出信号の視認性を高めた地中レーダ装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る地中レーダ装置は、探査信号を送信する送信部と、検出信号を受信する受信部と、受信部からの検出信号を処理する処理部とを備え、処理部は、受信部からの検出信号によって得たチャート上において手動で設定された所定領域で信号強度の調整を行い、処理部は、指定された枠の周辺領域を含めて所定領域として扱い、チャートは、受信強度に対する、経路方向の距離に対応する移動距離と、深さ方向の距離に対応する電波の送信から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データである
【0007】
上記地中レーダ装置では、処理部が受信部からの検出信号によって得たチャート上で設定された所定領域で信号強度の調整を行うので、反射信号強度が異なる複数種の対象について検出信号の視認性を高めることができる。
また、処理部が、指定された枠の周辺領域を含めて所定領域として扱うことにより、指定された枠の周辺領域を所定領域に準じて取り扱って信号強度の調整を行うことができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、所定領域は、指定された枠内の領域又は指定された枠外の領域である。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、処理部は、所定領域の境界領域でゲインを漸次変化させる。この場合、ゲインの変更の有無による境界線が目立ってしまうことを防止できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、処理部は、所定領域の境界領域でゲインを連続的に変化させる。この場合、ゲインの変更の有無による境界線をより目立たなくすることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、処理部は、所定領域の境界領域でゲインをガウシアン分布に従って変化させる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、処理部は、所定領域内で所定の信号レベルを超えた領域以外の残余領域のゲインを調整する。この場合、所定領域内において所定の信号レベルを超えた領域でゲインを調整しないので、ここで信号の飽和が生じてチャートが見にくくなることを防止できる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、処理部は、検出信号の信号レベルに基づいて所定領域を抽出することで所定領域の設定を行う。この場合、信号強度の調整を自動化して地中レーダ装置の操作性の向上を図ることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、送信部は、地中探査用の電波を周期的に送信するとともに、受信部は、地中探査用の電波に同期させて電波を受信する。この場合、低レベルの信号から埋設物に対応する信号を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の地中レーダ装置を組み込んだ移動体を説明する概念的な側面図である。
図2】地中レーダ装置を説明するブロック図である。
図3】計測部の一例を説明するブロック図である。
図4】表示部に表示される経路断面計測情報のチャートを説明する概念図である。
図5】(A)~(C)は、非加工領域から所定領域にかけての信号強度の調整方法を例示する図である。
図6】(A)及び(B)は、ゲイン増加の処理前及び処理後のチャートを例示する図であり、(C)は、ゲインの増加処理の具体的手法を説明する概念図である。
図7図4に示す領域設定の変形例を示す概念図である。
図8図4に示す領域設定の別の変形例を示す概念図である。
図9】制御装置の動作の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である地中レーダ装置について説明する。
【0019】
図1に示すように、地中レーダ装置100は、台車等の各種移動体200に搭載されて移動しながら地中探査を行う装置である。地中レーダ装置100は、電波により計測を行う計測部100Aと、移動体200の位置情報を収集する位置情報取得部100Bと、データ処理等を行う制御装置100Cとを備える。移動体200は、計測部100Aによる探査位置を変化させるため、車輪200aや駆動機構200b等を有する。
【0020】
地中レーダ装置100のうち、計測部100Aは、詳細は後述するが、探査信号を送信する送信部20aと、検出信号を受信する受信部20bとを備える(図3参照)。位置情報取得部100Bは、GPS受信機、速度計、加速度計等を備えており、計測部100Aの位置である測定点つまり探査位置を計測して位置情報として出力する。制御装置100Cは、受信部20bを含む計測部100Aからの検出信号を処理する処理部である。
【0021】
図2に示すように、制御装置(処理部)100Cは、演算処理部101と、記憶部102と、入力部103と、表示部104と、インターフェース部105とを備える。制御装置100Cは、具体的には、地中探査用のプログラムを搭載したコンピューターを含み、ユーザーは、計測部100Aによる計測結果を、表示部104によって観察することができるだけでなく、各種計測パラメータの設定、信号処理に関する条件設定、計測結果の表示のためのデータ処理方法の選択等を、入力部103を介して演算処理部101に指示することができる。
【0022】
演算処理部101は、記憶部102に保管されたプログラムやデータに基づいて動作し、入力部103やインターフェース部105から得た情報に基づいて処理を行い、処理の経過や結果を記憶部102に保管するとともに表示部104に提示する。特に、演算処理部101は、プログラム等に基づいてインターフェース部105を介して計測部100Aを動作させ、計測部100Aからの検出信号を処理して得た地点計測情報や経路断面計測情報を表示部104に表示させることができる。ここで、地点計測情報は、特定測定点での探査によって得た検出信号を深さ方向の距離の関数として表した強度パターンであり、経路断面計測情報は、検出信号の受信強度に対する移動距離と電波の送信から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示すチャートである。具体的には、経路断面計測情報(チャート)は、移動体200の移動経路に沿った測定点で収集した検出信号の強度分布を、一方の軸を深さ方向の距離(又は反射時間)とし他方の軸を経路方向の距離として、2方向の距離の関数として2次元的に表示する2次元画像データである。
【0023】
図3に示すように、計測部100Aは、レーダ信号発生部10と、送信用増幅器21と、送信アンテナ31と、受信アンテナ32と、受信用増幅器22と、サンプリング処理部25と、タイミング制御部70と、計測側制御部80とを備える。
【0024】
レーダ信号発生部10は、タイミング制御部70の制御下でパルス状の送信波SP1を生成する。レーダ信号発生部10は、より具体的には、パルス状の送信波SP1を所定の周期で間欠的に出力する。送信用増幅器21は、レーダ信号発生部10で形成される送信波SP1を増幅し、送信アンテナ31は、送信用増幅器21に駆動されて送信波SP1に対応する電波としての探査信号S1を地面に向けて放射する。レーダ信号発生部10、送信用増幅器21、及び送信アンテナ31は、探査信号(電波)S1を周期的に送信する送信部20aとして機能する。送信波SP1は、例えばパルスやチャープである。
【0025】
受信アンテナ32は、地中UGに存在する埋設物その他の探査対象物OBで反射されて戻って来た応答波(電波)S2を検出信号として受信し、受信用増幅器22は、受信アンテナ32で受信した応答波S2に対応する信号を増幅して応答波SP2として出力し、サンプリング処理部25は、応答波SP2から広義の検出信号である信号出力SRを生成する。受信アンテナ32、受信用増幅器22、及びサンプリング処理部25は、地中探査用の電波に同期させて電波である応答波(検出信号)S2を受信し信号出力(検出信号)SRを出力する受信部20bとして機能する。
【0026】
サンプリング処理部25は、受信アンテナ32で受信され受信用増幅器22で増幅された応答波SP2について、レーダ信号発生部10で形成された送信波SP1に対応するアナログの参照波S3を用い、この参照波S3のタイミングをずらしながら相関サンプリング処理を行って、応答波SP2から送信波SPとの相関性の高い信号成分を抽出する。サンプリング処理部25で得られる信号成分は、参照波S3とのタイミング差(遅延時間ともいう)に対応する深さ方向の距離に関連付けられて、デジタル信号として出力される。つまり、サンプリング処理部25の信号出力SRは、埋設物その他の探査対象物OBの分布を示す強度出力値であり、深さ方向の距離ごとに応答波SP2から得た信号成分の振幅を算出したものとなっている。サンプリング処理部25は、応答波SP2と参照波S3とについて相関サンプリング処理を行う相関器の他に、重み付けフィルター等を備える。重み付けフィルターは、応答波SRに対して遅延時間に応じた重み付けを行うものであり、例えばSTC(sensitivity time control)を用いることができる。STCを用いることで、地表での反射や深さ方向の減衰の影響を補正することができる。
【0027】
計測側制御部80は、タイミング制御部70を動作させるとともに、サンプリング処理部25からの信号出力SR又はこれに加工を施した計測データを制御装置100Cに出力する。計測側制御部80は、信号出力SRを加工する場合、図2に示す制御装置100Cと協働して処理部として機能する。
【0028】
図2に戻って、演算処理部101は、処理部として、移動体200の移動経路に沿って受信部20bからの信号出力(検出信号)SRを収集し、信号出力SRから経路断面計測情報をチャートとして表示するためのデータを作成し、かかるデータに対応する経路断面計測情報(チャート)を表示部104に表示する。演算処理部101は、処理部として、表示部104に表示された経路断面計測情報(チャート)上で設定された局所的な所定領域で信号強度の調整を行う。具体的には、演算処理部101は、所定領域で信号出力(検出信号)SRの信号強度をゲイン上昇によって増加させ、所定領域外の元の信号強度によるチャート部分と、所定領域内の増強後の信号強度によるチャート部分とを合成した合成チャートを表示部104に表示する。実際の動作では、経路断面計測情報(チャート)全体を加工する際に、局所的な所定領域内でゲインを1より大きくし所定領域外でゲインを1とするフィルターをかければ、上記のような合成が自動的に行われる。なお、ゲインの調整は、例えば画像の輝度又は階調の増幅によって行うことができ、輝度増幅は、輝度の線形的な増加に限らず、輝度の非線形的な増加であってもよい。
【0029】
図4は、表示部104に表示される経路断面計測情報のチャートを説明する概念図である。チャートCHの横軸Lは、地中レーダ装置100の移動距離を示し、チャートCHの縦軸tは、電波の送信から受信までの経過時間である反射時間又は深さを示す。チャートCH中において、複数の比較的強度の高い埋設物パターンEP1が現れており、各埋設物パターンEP1が指定枠DF11,DF12で囲まれている。この場合、指定枠DF11,DF12外の領域が所定領域SAとして信号強度の調整の対象となっている。つまり、演算処理部101は、処理部として、信号出力(検出信号)SRから所定領域SAのチャート部分に対応する信号部分を抽出し、この信号部分をデジタルデータ上で選択的に増幅して信号増強後のチャート部分を得る。これにより、強度の高い埋設物パターンEP1の周辺に存在する強度の低い埋設物パターンEP2が増強され見やすくなる。強度の高い埋設物パターンEP1は、例えば埋設された鋼管であり、強度の低い埋設物パターンEP2は、例えば埋設された樹脂管である。なお、表示部104の表示画像のコントラストを調整することによっても強度の低い埋設物パターンEP2の視認性を若干高めることができるが、強度の高い埋設物パターンEP1の視認性が低下する。
【0030】
演算処理部101は、指定枠DF11,DF12の内側の帯状の周辺領域PAも所定領域SAに準じたものとして扱う。つまり、周辺領域PAも拡張した意味で所定領域を構成する。ただし、演算処理部101は、周辺領域PA又は境界領域BAを遷移領域として処理し、指定枠DF11,DF12内の非加工領域NAから所定領域SAにかけて信号の増強度を漸次又は徐々に変化させる。非加工領域NAから所定領域SAにかけての信号強度の調整は、連続的であることがさらに望ましい。
【0031】
図5(A)は、非加工領域NAから所定領域SAにかけての信号強度の調整方法の一例を示すものであり、非加工領域NAと所定領域SAとの間であって、広義の所定領域に含まれる周辺領域PA又は境界領域BAにおいて、ゲインの調整特性CIが連続的であるが直線的に増加している。図5(B)の場合、非加工領域NAから所定領域SAにかけての境界領域BAでゲインの調整特性CIが切れ目や折れ目無く曲線的に増加する分布となっている。ゲインの調整特性CIは、例えばガウシアン分布とすることができる。図5(B)中の一点鎖線GHは、参考として示した曲線部分であり、調整特性CIと合わせてガウシアン分布のピーク位置又は平均位置を挟んだ全体的分布特性を示している。つまり、調整特性CIは、ガウシアン分布の片側部分に対応するものとなっている。なお、ゲインの調整特性CIは、ガウシアン分布に限らず各種統計的分布とすることができ、例えばシグモイド関数といったものを用いることができる。図5(C)の場合、非加工領域NAと所定領域SAとの間に境界領域BAを設けておらず、ゲインの調整特性CIが階段状に変化している。
【0032】
以上では、所定領域SAの外側に非加工領域NAを設けているが、指定枠DF11,DF12が狭い場合、非加工領域NAを設けないで、指定枠DF11,DF12内全体で所定領域SAよりも低レベルでゲイン調整を行ってもよい。また、指定枠DF11,DF12が広くても、ゲイン調整の程度が小さければ指定枠DF11,DF12内で若干のゲイン調整を行うことができる。
【0033】
図6(A)は、所定領域SAにおけるゲインの増加処理前のチャートCH0を示し、図6(B)は、所定領域SAにおけるゲインの増加処理後のチャートCH1を示す。強度の高い埋設物パターンEP1を含む枠内領域AR1ではゲインの調整が行われておらず、強度の低い埋設物パターンEP2を含む所定領域SAではゲインの調整が行われている。なお、図6(B)において、元の低強度の埋設物パターンEP2に対応するものであって、ゲインの調整によって強度が増した埋設物パターンを符号EP2'で表した。図6(C)は、演算処理部101によるゲインの増加処理を具体的に説明する図であり、処理前の強度パターンIP0は、図6(A)のチャートCH0中の線LDに対応する特定位置での深さ方向又は時間軸方向の信号強度を示す。処理前の強度パターンIP0は、高強度信号部A1と低強度信号部A2とを有する。ゲイン曲線GCは、強度の高い埋設物パターンEP1を含む枠より外の所定領域SAでゲインが増加している。強度パターンIP0に対してゲイン曲線GCのフィルターをかけると、処理後の強度パターンIP1が得られる。処理後の強度パターンIP1では、高強度信号部A1がそのまま維持されるが、低強度信号部A2のゲインを増加させた修正信号部A3が得られている。処理後の強度パターンIP1は、図6(B)のチャートCH1中の線LDに対応する。
【0034】
図7は、図4に示す所定領域SAの設定の変形例を示す。この場合、チャートCH中において、高強度の埋設物パターンEP1と低強度の埋設物パターンEP2とが現れており、低強度の埋設物パターンEP2が指定枠DF21で囲まれている。この場合、指定枠DF21内の領域が所定領域SAとして信号強度の調整の対象となっている。演算処理部101は、指定枠DF21の外側の帯状の周辺領域PAも所定領域SAに準じたものとして扱う。つまり、演算処理部101は、指定枠DF21外の非加工領域NAから指定枠DF21内の所定領域SAにかけて信号の増強度を漸次又は徐々に変化させる。非加工領域NAから所定領域SAにかけての信号強度の調整は、連続的であることが望ましい。
【0035】
図8は、図4等を用いて説明した動作の変形例を説明する図である。この場合、チャートCH中において、複数の比較的強度の高い埋設物パターンEP1,EP3が現れているが、一部の埋設物パターンEP1のみを指定枠DF11で囲んでおり、指定枠DF11外の領域が所定領域SAとして信号強度の調整の対象となっている。結果的に、埋設物パターンEP3は、所定領域SA内で所定の信号レベルを超えた高強度信号領域A4を形成している。このような埋設物パターンEP3又は高強度信号領域A4についてゲインの増加処理を行うと、信号の飽和によって却って埋設物パターンEP3の視認性が低下する。よって、所定領域SA内で所定の信号レベルを超える高強度信号領域A4を検出した場合、高強度信号領域A4の外側の残余領域A5でゲインの調整処理(つまりゲインの増加処理)を行う。
【0036】
以上の説明では、制御装置(処理部)100Cを扱うユーザーが指定枠DF11を設定することを前提として説明を行ったが、指定枠DF11は、制御装置100Cが自動的に設定することもできる。例えばチャートCHを構成する検出信号のうち所定レベルを超えるものを選択し、クラスタリングを行ったりパターンマッチを行ったりして埋設物パターンを抽出する。このようにして抽出できた埋設物パターンの外側を所定領域SAとして信号強度の調整を行うことができる。
【0037】
図9は、地中レーダ装置100の表示部104に表示されるチャートCHの修正動作を説明する図である。まず、制御装置(処理部)100C又は演算処理部101は、入力部103及び表示部104を利用してユーザーとの間で情報のやり取りを行うことにより、指定枠DF11,DF12,DF21,…の設定を受け付ける(ステップS11)。次に、制御装置(処理部)100Cは、指定枠DF11,DF12,DF21,…の内側と外側のいずれを所定領域SAとして信号強度の調整を行うかをユーザーに確認する(ステップS12)。次に、制御装置(処理部)100Cは、ユーザーから所定領域SAにおけるゲイン調整量の設定を受け付ける(ステップS13)。ゲイン調整量は、ユーザーが段階的に設定するものとすることができるが、信号出力(検出信号)SRの飽和を防止するような自動調整とすることもできる。次に、制御装置(処理部)100Cは、現在表示しているチャートCH中のうち局所的な所定領域SAにおいて信号強度の調整を行って処理後のチャートCHを表示部104に表示する(ステップS14)。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の地中レーダ装置100によれば、制御装置(処理部)100Cが受信部20bからの信号出力(検出信号)SRによって得たチャートCH上で設定された所定領域SAで信号強度の調整を行うので、反射信号強度が異なる複数種の対象について検出信号の視認性を高めることができる。
【0039】
以上の実施形態で説明された構造、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明を理解及び実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。したがたって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0040】
例えば、上記実施形態では、経路断面計測情報のチャートについて所定領域SAで信号強度の調整を行っているが、地点計測情報について深さ方向の所定領域で信号強度の調整を行ってもよい。
【0041】
計測部100Aと制御装置100Cとを移動体200に一緒に搭載する必要はなく、計測部100Aに対して制御装置100Cを遠隔的に配置することができる。また、移動体200は、自動車や列車のようなものであってもよい。
【0042】
以上では、所定領域SAでゲインの増加処理を行っているが、埋設物パターンの表示が飽和している場合、ゲインの低減処理を行ってもよい。
【0043】
指定枠DF11,DF12,DF2の形状は、矩形に限らず、円形、著円形等を含む各種形状とすることができ、探査対象物OBに検出パターンに適合したものとすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10…レーダ信号発生部、 20a…送信部、 20b…受信部、 25…サンプリング処理部、 70…タイミング制御部、 80…計測側制御部、 100…地中レーダ装置、 100A…計測部、 100B…位置情報取得部、 100C…制御装置、 101…演算処理部、 102…記憶部、 103…入力部、 104…表示部、 105…インターフェース部、 200…移動体、 A1…高強度信号部、 A2…低強度信号部、 A3…修正信号部、 A4…高強度信号領域、 A5…残余領域、 AR1…枠内領域、 BA…境界領域、 CH,CH0,CH1…チャート、 CI…調整特性、 DF11,DF12,DF2…指定枠、 EP1,EP2,EP3…埋設物パターン、 GC…ゲイン曲線、 IP0,IP1…強度パターン、 L…横軸、 NA…非加工領域、 OB…探査対象物、 PA…周辺領域、 S1…探査信号、 S2…応答波、 S3…参照波、 SA…所定領域、 SR…信号出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9