(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】変換器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/107 20060101AFI20220825BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01P5/107 B
H01P5/02 601D
(21)【出願番号】P 2018144704
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
(72)【発明者】
【氏名】岸田 武紘
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-191428(JP,A)
【文献】米国特許第06396364(US,B1)
【文献】特開2008-193243(JP,A)
【文献】特開平08-139504(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105789806(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/107
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体により形成された内部空間を有し、当該内部空間に信号が伝送される方形導波管と、
前記方形導波管に接続されており、第1面と第2面を有しており、厚み方向が信号の伝送方向に一致するように配置された回路基板と、
一端が導体で閉鎖された終端管と、
を備え、
前記回路基板は、
前記回路基板の前記第1面に形成され、信号の伝送モードを変換する導体を含む第1変換部と、
前記回路基板の前記第1面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第1変換部の少なくとも一部を囲む第1周囲導体と、
前記回路基板の前記第2面に形成され、前記第1変換部に電気的に接続され、信号の伝送モードを変換する導体を含む第2変換部と、
前記回路基板の前記第2面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第2変換部の少なくとも一部を囲む第2周囲導体と、
を備え
、
前記回路基板は、前記方形導波管と前記終端管とに挟まれており、
前記回路基板の前記厚み方向で見たときに、前記終端管の長辺方向の内寸が、前記方形導波管の長辺方向の内寸よりも長い部分を有することを特徴とする変換器。
【請求項2】
導体により形成された内部空間を有し、当該内部空間に信号が伝送される方形導波管と、
前記方形導波管に接続されており、第1面と第2面を有しており、厚み方向が信号の伝送方向に一致するように配置された回路基板と、
一端が導体で閉鎖された終端管と、
を備え、
前記回路基板は、
前記回路基板の前記第1面に形成され、信号の伝送モードを変換する導体を含む第1変換部と、
前記回路基板の前記第1面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第1変換部の少なくとも一部を囲む第1周囲導体と、
前記回路基板の前記第2面に形成され、前記第1変換部に電気的に接続され、信号の伝送モードを変換する導体を含む第2変換部と、
前記回路基板の前記第2面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第2変換部の少なくとも一部を囲む第2周囲導体と、
を備え、
前記回路基板は、前記方形導波管と前記終端管とに挟まれており、
前記回路基板の前記厚み方向で見たときに、前記終端管の短辺方向の内寸が、前記方形導波管の短辺方向の内寸よりも長い部分を有することを特徴とする変換器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の変換器であって、
前記第1周囲導体は、前記回路基板の厚み方向で見たときにおいて、前記方形導波管の長辺に沿う向きで配置される長辺導体と、前記方形導波管の短辺に沿う向きで配置される短辺導体と、を有しており、
前記長辺導体は、短辺方向に間隔を空けて配置されており、当該間隔が、伝送される信号の波長の4分の1以下であることを特徴とする変換器。
【請求項4】
請求項1
から3までの何れか一項に記載の変換器であって、
前記回路基板の前記第1面及び前記第2面のうち、前記第1面のみには、信号を伝送するための細長状の部分である伝送部が設けられており、
前記伝送部は、前記第1変換部に接続されることを特徴とする変換器。
【請求項5】
請求項
4に記載の変換器であって、
前記第2周囲導体は、前記第2変換部を全周にわたって囲むことを特徴とする変換器。
【請求項6】
請求項
3に記載の変換器であって、
前記方形導波管と前記回路基板とが接続される部分において、前記方形導波管の前記短辺方向の内寸は、伝送される信号の波長の4分の1以下であることを特徴とする変換器。
【請求項7】
請求項
6に記載の変換器であって、
前記方形導波管は、前記回路基板から前記伝送方向に沿って離れるに従って前記短辺方向の内寸が長くなる部分を有することを特徴とする変換器。
【請求項8】
請求項
3に記載の変換器であって、
前記長辺導体の内側の端部には、前記方形導波管の内面よりも、更に内側に位置している部分があることを特徴とする変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、導波管と回路基板との間で信号を変換して伝送する変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波管と、終端ブロックと、平面線路(回路基板)と、を備える給電線変換器が開示されている。導波管及び終端ブロックは、断面が長方形の管状の部材である。終端ブロックの軸方向の一端は開放されており、他端は閉鎖されている。平面線路は、導波管と終端ブロックの開放部分とに挟まれるように配置されている。平面線路には、プローブが含まれている。このプローブにより、導波管の伝送モード(TE10モード)と平面線路の伝送モード(TEMモード)の変換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導波管と回路基板との間で信号の変換を行う変換器においては、低損失で信号を変換可能な帯域が広いことが好ましい。しかし、特許文献1では、この種の課題を解決する具体的な構成が記載されていない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、導波管と回路基板との間で、広い帯域で信号を変換可能な変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の変換器が提供される。即ち、変換器は、方形導波管と、回路基板と、を備える。前記方形導波管は、導体により形成された内部空間を有し、当該内部空間に信号が伝送される。前記回路基板は、前記方形導波管に接続されており、第1面と第2面を有しており、厚み方向が信号の伝送方向に一致するように配置される。前記回路基板は、第1変換部と、第1周囲導体と、第2変換部と、第2周囲導体と、を備える。前記第1変換部は、前記回路基板の前記第1面に形成され、信号の伝送モードを変換する導体を含む。前記第1周囲導体は、前記回路基板の前記第1面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第1変換部の少なくとも一部を囲む。前記第2変換部は、前記回路基板の前記第2面に形成され、前記第1変換部に電気的に接続され、信号の伝送モードを変換する導体を含む。前記第2周囲導体は、前記回路基板の前記第2面に形成され、前記回路基板を厚み方向で見たときにおいて前記第2変換部の少なくとも一部を囲む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【
図2】第1実施形態の変換器を終端管側から見た分解斜視図。
【
図3】第1実施形態における、回路基板の周囲導体の間隔及び方形導波管の内寸を示す平面図。
【
図4】Xバンドの周波数特性を従来例と第1実施形態とで比較したグラフ。
【
図5】第2実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【
図6】第2実施形態における、回路基板の周囲導体の間隔及び方形導波管の内寸を示す平面図。
【
図7】第3実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【
図8】第4実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【
図9】第5実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【
図10】第6実施形態の変換器を方形導波管側から見た分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1から
図3を参照して、第1実施形態の変換器1について説明する。
図1は、変換器1を方形導波管10側から見た分解斜視図である。
図2は、変換器1を終端管20側から見た分解斜視図である。
図3は、回路基板30の周囲導体32の間隔及び方形導波管10の内寸を示す平面図である。
【0011】
変換器1は、レーダ装置又は通信機等に配置されている。変換器1は、導波管と回路基板との間で信号の伝送モードを変換して伝送する構造を有している。例えば、変換器1は、信号(高周波信号)が導波管から回路基板へ伝送される場合は、伝送モードをTE
10モードからTEMモードへ変換する。一方、変換器1は、信号が回路基板から導波管へ伝送される場合は、伝送モードをTEMモードからTE
10モードへ変換する。
図1に示すように、変換器1は、方形導波管10と、終端管20と、回路基板30と、を備える。
【0012】
方形導波管10は、
図3に示すように、信号の伝送方向(方形導波管10の軸方向)で見たときに内部空間が長方形となるように平板状の導体が配置された導波管である。言い換えれば、方形導波管10は、伝送方向に垂直な平面で切った断面形状が長方形である。方形導波管10の伝送方向の一端には開口部10aが形成されている。以下の説明では、
図3等に示すように、この長方形の長辺に沿う方向を長辺方向と称し、この長方形の短辺に沿う方向を短辺方向と称する。また、方形導波管10で発生する磁界は、長辺方向に平行である。方形導波管10で発生する電界は短辺方向に平行である。
【0013】
図1に示すように、方形導波管10は、第1部分11と、第2部分12と、第3部分13と、を有している。第1部分11は、開口部10aが形成されている部分を含んでいる。第2部分12は、第1部分11よりも伝送方向の下流側に配置されている。第3部分13は、第2部分12よりも伝送方向の下流側に配置されている。第1部分11、第2部分12、及び第3部分13は、何れも長辺方向の内寸が同じである。また、第1部分11の短辺方向の内寸は、第3部分13の短辺方向の内寸よりも短い。第2部分12は、短辺方向の内寸が徐々に変化する。具体的には、第2部分12の短辺方向の内寸は、第1部分11に接続される側の端部において第1部分11と同じであり、第1部分11(回路基板30)から伝送方向に沿って離れるに従って徐々に長くなり、第3部分13に接続される側の端部において第3部分13と同じである。
【0014】
終端管20は、方形導波管10と同様に、信号の伝送方向(終端管20の軸方向)で見たときに内部空間が長方形となるように平板状の導体が配置された導波管である。なお、詳細は後述するが、終端管20の内部空間は長方形に限られない。終端管20は、信号の伝送モードを変換を適切に行うために設けられている。終端管20の軸方向の一端には開口部20aが形成されている。方形導波管10と終端管20は、開口部10aと開口部20aとを合わせるようにして接続される。終端管20の他端には、閉鎖部20bが形成されている。閉鎖部20bは導体で閉鎖された部分である。具体的には、閉鎖部20bは、軸方向に垂直となるように配置された平板状の導体で構成されている。
【0015】
回路基板30は、ベースとなる板状の誘電体35の表面及び裏面の一部に複数の導体箔を配置したマイクロストリップラインと称される構成である。回路基板30は、回路基板30の厚み方向と、方形導波管10の伝送方向と、が同じとなるように、方形導波管10と終端管20に挟まれている。以下の説明では、回路基板30のうち方形導波管10を向く面を表面とし、終端管20を向く面を裏面とする。回路基板30の表面には、
図1に示すように、線状導体31と、周囲導体32と、が配置されている。
【0016】
線状導体31は、伝送部31aと、変換部31bと、を有している。伝送部31aは、信号を伝送する細長状の部分である。本実施形態では、伝送部31aの長手方向は、短辺方向と同じである。また、伝送部31aは、回路基板30の厚み方向で見たときに、方形導波管10及び終端管20の長辺と交差するようにして、内部空間に達している。伝送部31aの先端には、変換部31bが接続されている。変換部31bは、長辺方向に沿って延びる部分を有している。変換部31bは、信号の伝送モードを変換する部分である。本実施形態では、変換部31bは短辺方向の中央に位置しているが、中央よりも挿入の下流側に位置していてもよい。変換部31bの位置と帯域の関係については後述する。
【0017】
周囲導体32は、線状導体31との間に誘電体35が位置するように、かつ、
図3に示すように、回路基板30の厚み方向で見たときに線状導体31の周囲を囲むように配置されている。具体的には、周囲導体32は、回路基板30の厚み方向で見たときに、長方形の辺を構成するように導体が配置されている。周囲導体32のうち、この長方形の短辺に相当する導体を短辺導体と称する。短辺導体は長辺方向で対向するように一対で配置されている。以下では、この短辺導体には、符号32Sa,32Sbを付して説明する。なお、短辺導体32Sa,32Sbは方形導波管10の短辺に沿う向きで配置される。また、周囲導体32のうち、この長方形の長辺に相当する導体を長辺導体と称する。長辺導体は短辺方向で対向するように一対で配置されている。また、一方の長辺導体は、伝送部31aと干渉しないように分離して構成されている。以下では、この長辺導体には、符号32La,32Lbを付して説明する。なお、長辺導体32La,32Lbは方形導波管10の長辺に沿う向きで配置される。
【0018】
また、本実施形態では、回路基板30の厚み方向で見たときに、周囲導体32が配置される位置と、方形導波管10及び終端管20の平板状の導体の位置と、が同じとなる部分を含むように構成されている。従って、同方向で見たときに、周囲導体32の内部空間側の縁部の位置と、方形導波管10及び終端管20の内部空間側の導体面(内面)の位置と、が同じとなる部分を含む。また、伝送部31aが配置される箇所においては、伝送部31aに対して所定の距離を離して当該伝送部31aに沿うように、周囲導体32が配置されている。なお、伝送部31aが配置されている箇所以外においても、周囲導体32が配置される位置と、方形導波管10及び終端管20の平板状の導体の位置と、が異なっていてもよい。
【0019】
図2に示すように、回路基板30の裏面には、裏面変換部41bと、裏面周囲導体42と、が配置されている。裏面変換部41bは変換部31bと同じ形状である。回路基板30の厚み方向で見たときに、裏面変換部41bと変換部31bとは同じ位置に配置されている。また、回路基板30の裏面には伝送部31aに相当する導体箔は配置されていない。そのため、裏面周囲導体42は、裏面変換部41bの周囲を360°にわたって囲むように配置されている。
【0020】
回路基板30には、変換部31bと裏面変換部41bとが配置されている箇所にスルーホール33が形成されている。スルーホール33は、導体の内壁面を有しているため、変換部31bと裏面変換部41bとを電気的に接続する。この構成により、変換部31bに加えて裏面変換部41bが電界の発生に寄与するため、回路基板30と方形導波管10及び終端管20との間に発生する電界エネルギーが増大する。そのため、変換器1の帯域を広くすることができる。
【0021】
次に、方形導波管10及び周囲導体32の配置と、変換器1の帯域と、の関係について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図4は、Xバンドの周波数特性を従来例と第1実施形態とで比較したグラフである。また、以下の説明では、短辺方向において、伝送部31a側(線状導体31の先端側)を奥側と称し、その反対側を手前側と称する。
【0022】
一般的に、方形導波管の短辺方向の内寸(即ち、磁界に平行な面同士の間隔)は、伝送される信号の波長に応じて定められる。一般的には、方形導波管の短辺方向の内寸は、伝送される信号の波長の約1/3である(
図3に示す長さL0)。これに対し、本実施形態では、方形導波管10の短辺方向の内寸は、伝送される信号の波長の1/4以下である(
図3に示す長さL1)。また、短辺方向における周囲導体32の内側の端部同士の間隔(
図3に示す長さL2、言い換えれば、長辺導体32Laと長辺導体32Lbとの短辺方向における間隔)は、上述したように、方形導波管10(終端管20)の短辺方向の内寸と同じである。
【0023】
図4のグラフでは、短辺方向の内寸が波長の約1/3である導波管を用いた変換器を従来例とし、短辺方向の内寸が波長の1/4以下である方形導波管10を用いた変換器1を第1実施形態として、それぞれのXバンドでの周波数毎の減衰率が示されている。
図4に示すように減衰率の許容値を設定した場合、従来例と比較して第1実施形態では、基本的には帯域が非常に広くなっていることが分かる。
【0024】
本実施形態において帯域が広くなる理由は以下のとおりである。即ち、変換部31bから奥側の周囲導体32(奥側の方形導波管10及び終端管20の内面、以下同じ)までの距離は短い方が電界が強くなる。しかし、変換部31bの挿入量を多くして変換部31bを奥側の周囲導体32に近づけた場合、伝送部31aと手前側の周囲導体32との間で、信号の変換を阻害する不要な電界が発生する。この点、本実施形態のように短辺方向における周囲導体32の間隔を短くすることで、変換部31bの挿入量を少なくしつつ、変換部31bから奥側の周囲導体32までの距離を短くすることができる。従って、
図4に示した広帯域が実現できる。
【0025】
次に、
図5及び
図6を参照して、第2実施形態の変換器1を説明する。
図5は、第2実施形態の変換器1を方形導波管10側から見た分解斜視図である。
図6は、第2実施形態の回路基板30の周囲導体32の間隔及び方形導波管10の内寸を示す平面図である。なお、第2実施形態及びそれ以降の説明においては、第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0026】
第1実施形態の変換器1は、短辺方向の周囲導体32の間隔を1/4波長以下まで短くしたことに合わせて、方形導波管10及び終端管20の短辺方向の内寸も同様に短くした構成である。これに対し、第2実施形態の変換器1は、方形導波管10及び終端管20の短辺方向の内寸は、通常の導波管と同様の1/3波長程度(即ち、長さL1=長さL0)である。そして、周囲導体32の短辺方向の間隔(長辺導体32Laと長辺導体32Lbとの短辺方向における間隔)は、第1実施形態と同様である。更に言い換えれば、第2実施形態の変換器1は、回路基板30の厚み方向で見たときに、方形導波管10及び終端管20の内面から内側に突出するように周囲導体32が配置されている。更に詳細には、長辺導体32La,32Lbの内側の端部には、方形導波管10の内面よりも、更に内側に位置している部分がある。
【0027】
第2実施形態の構成であっても、第1実施形態で説明した帯域が広くなる原理は成り立つ。従って、一般的に流通している導波管を用いて、広い帯域が実現できる。
【0028】
次に、第3から第6実施形態の変換器1を説明する。第3から第6実施形態の変換器1は、終端管20等の様々な方向の長さを小さくするための構造を有している。第3から第6実施形態の変換器1では、方形導波管10及び回路基板30の構成は第1実施形態と同じであり、終端管20の構成が第1実施形態とは異なる。以下、各実施形態毎に詳細に説明する。
【0029】
図7に示す第3実施形態の変換器1の終端管20は、方形導波管10(第1部分11)と比較して、長辺方向の内寸が長い部分を有している。具体的には、第3実施形態の終端管20は、直方体状であり開口部10aと同じ大きさの開口部20aが形成されている。従って、開口部20aよりも閉鎖部20b側において、終端管20には、第1実施形態よりも長辺方向の内寸が大きい直方体状の内部空間が形成されている。
【0030】
また、終端管20の内部空間の長辺方向の内寸を大きくすることで、軸方向の長さを短くしても同じ帯域が実現できることが、発明者らによって確かめられている。従って、第3実施形態の終端管20を採用することで、同じ帯域を維持しつつ、終端管20及び変換器1の軸方向の長さを小さくすることができる。
【0031】
図8に示す第4実施形態の変換器1の終端管20は、第3実施形態と同様に、方形導波管10(第1部分11)と比較して、長辺方向の内寸が長い部分を有している。具体的には、第4実施形態の終端管20には、短辺方向に平行な外面において、長辺方向に突出する凸部21が複数形成されている。終端管20は短辺方向に平行な外面を2つ有しており、それぞれの外面において、2つの凸部21が間隔を空けて形成されている。なお、これらの凸部21の内側にも内部空間が形成されている。従って、凸部21が形成されている部分において、終端管20は、方形導波管10(第1部分11)と比較して、長辺方向の内寸が長い部分を有している。このような形状であっても、第3実施形態と同様に、同じ帯域を維持しつつ、終端管20及び変換器1の軸方向の長さを短くすることができる。
【0032】
また、終端管20の短辺側の2つの外面には、2つの凸部21で囲まれる凹部22がそれぞれ形成されている。この凹部22を用いて終端管20を他の部材に取り付けることで、取付構造も含めた変換器1の長辺方向の長さを小さくすることができる。
【0033】
図9に示す第5実施形態の変換器1の終端管20は、方形導波管10(第1部分11)と比較して、短辺方向の内寸が長い部分を有している。具体的には、第5実施形態の終端管20には、長辺方向に平行な外面(詳細には手前側の外面)において、長辺方向に突出する凸部23が複数(具体的には2つ)形成されている。なお、これらの凸部23の内側にも内部空間が形成されている。従って、凸部23が形成されている部分において、終端管20は、方形導波管10(第1部分11)と比較して、短辺方向の内寸が長い部分を有している。このような形状であっても、第3及び第4実施形態と同様に、同じ帯域を維持しつつ、終端管20及び変換器1の軸方向の長さを短くすることができる。
【0034】
また、終端管20の長手方向に平行な外面には、2つの凸部23で囲まれる凹部24が形成されている。第5実施形態では、凸部23が短辺方向に延びる構成であるため、例えば終端管20の長辺方向の外面等を用いて終端管20を固定することで、第3実施形態と比較して、変換器1(具体的には終端管20)の長辺方向の長さを短くすることができる。なお、凹部24を用いて終端管20を他の部材に取り付ける構成であってもよい。
【0035】
図10に示す第6実施形態の変換器1の終端管20は、方形導波管10(第1部分11)と比較して、短辺方向の内寸が長い部分を有している。具体的には、第6実施形態の終端管20は、開口部20aよりも回路基板30から離れた位置において、短辺方向の内寸が長い部分を有している。言い換えれば、終端管20は、軸方向が、方形導波管10の軸方向と同じ方向から、方形導波管10の短辺方向と同じ方向になるように変化する部分を有している。このような形状であっても、同じ帯域を維持しつつ、終端管20及び変換器1の軸方向の長さを短くすることができる。
【0036】
以上に説明したように、上記実施形態の変換器1は、方形導波管10と、回路基板30と、を備える。方形導波管10には、信号が伝送される。回路基板30は方形導波管10に接続されており、信号の伝送モードを変換する導体である変換部31b及び周囲導体32を有する。回路基板30の厚み方向と、方形導波管10の伝送方向が同じである。回路基板30を厚み方向で見たときにおいて、周囲導体32は、変換部31bの少なくとも一部を囲むように配置されている。周囲導体32は、回路基板30の厚み方向で見たときにおいて、方形導波管10の長辺に沿う向きで配置される長辺導体32La,32Lbと、方形導波管10の短辺に沿う向きで配置される短辺導体32Sa,32Sbと、を有している。長辺導体32La,32Lbは、短辺方向に間隔を空けて配置されており、当該間隔が、伝送される信号の波長の4分の1以下である。
【0037】
これにより、変換部31bの挿入量を少なくしつつ、変換部31bから変換部31bまでの距離を短くすることができるので、帯域が広い変換器1を実現できる。
【0038】
また、本実施形態の変換器1では、方形導波管10と回路基板30とが接続される部分において、方形導波管10の短辺方向の内寸は、伝送される信号の波長の4分の1以下である。
【0039】
これにより、周囲導体32と方形導波管10の内側の位置を揃えることができる。
【0040】
また、本実施形態の変換器1において、方形導波管10は、回路基板30から伝送方向に沿って離れるに従って短辺方向の内寸が長くなる部分を有する。
【0041】
これにより、信号を変換する部分と信号を伝送する部分とで、それぞれ最適な形状とすることができる。
【0042】
また、本実施形態の変換器1において、長辺導体32La,32Lbの内側の端部には、方形導波管10の内面よりも、更に内側に位置している部分がある。
【0043】
これにより、短辺方向の内寸が一般的な長さの導波管を用いて、変換器1の帯域を広くすることができる。
【0044】
また、本実施形態の変換器1において、回路基板30の両面に変換部(変換部31b及び裏面変換部41b)が配置されており、当該2つの変換部が当該回路基板30の導体(スルーホール33)を通じて電気的に接続されている。
【0045】
これにより、回路基板30の両面で信号を変換できるので、変換効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の変換器1は、一端が導体で閉鎖された終端管20を備える。回路基板30は、方形導波管10と終端管20とに挟まれている。回路基板30の厚み方向で見たときに、終端管20の長辺方向の内寸が、方形導波管10の長辺方向の内寸よりも長い部分を有する。あるいは、本実施形態の変換器1は、回路基板30の厚み方向で見たときに、終端管20の短辺方向の内寸が、方形導波管10の短辺方向の内寸よりも長い部分を有していてもよい。
【0047】
これにより、要求される仕様等に応じた方向の長さを短くすることができる。
【0048】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0049】
第1から第6実施形態に記載した特徴は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、第2実施形態の周囲導体32を短辺方向の内側に突出させる特徴を、第3から第6実施形態の何れかに適用することができる。
【0050】
方形導波管10及び終端管20においては、外形ではなく内部空間の形状が変換特性に影響を及ぼす。そのため、方形導波管10及び終端管20の外形は、上記実施形態とは異なる形状であってもよい。
【0051】
第2実施形態以外では、周囲導体32と、方形導波管10の回路基板30を向く端面と、終端管20の回路基板30を向く端面と、が同じ範囲に形成されているが、少なくとも1つが異なる範囲に形成されていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、変換器1は1組の方形導波管10、終端管20、及び回路基板30を備えているが、複数組の方形導波管10、終端管20、及び回路基板30を備えていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、方形導波管10及び終端管20の内部は空洞であるが、方形導波管10及び終端管20の少なくとも一方において、内部に誘電体が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 変換器
10 方形導波管
20 終端管
30 回路基板
31 線状導体
31a 伝送部
31b 変換部
32 周囲導体