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  • 特許-減速装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/028 20120101AFI20220825BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F16H57/028
F16F7/00 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018150070
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020026804
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】牧添 義昭
(72)【発明者】
【氏名】バゼミニエクス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】島田 英史
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-082842(JP,A)
【文献】特開2014-000958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/028
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機と、該減速機を収容するハウジングと、該減速機と該ハウジングとの間に配置された弾性部材とを備え、該弾性部材は、球状に形成された球状部を含み、該減速機は、該ハウジングに対して、該減速機の回転軸方向及び該減速機の回転軸の周方向に移動可能に構成したことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記弾性部材はゴムにより形成されている請求項に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃を吸収ないし緩和することができる減速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業用ロボットの動作に不可欠な技術的要素として、様々な減速装置が知ら
れている。このような減速装置として、バックラッシュが少ない装置が求められている。
例えば、バックラッシュの少ない減速装置として、遊星歯車型減速装置、偏心揺動型減速
装置、波動歯車型減速装置などが知られている。特に、波動歯車型減速装置は、バックラ
ッシュが少ないだけでなく、高減速比で軽量かつコンパクトであるため、産業用ロボット
の分野に広く採用されている。
【0003】
特許文献1は、各剛性内歯車について、可撓性外歯車を各噛み合い位置に複数の円板か
らなる円板群で均一に押し付けているので、噛み合わせが強固になり、負荷容量を大きく
し、さらに、各円板を介して入力回転軸が受ける荷重は、主にラジアル荷重となり、入力
回転軸にかかる回転モーメントを低減できるため、波動歯車装置の剛性が高くなり、長寿
命となることを開示しています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-84989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような波動歯車型減速装置では、フレクス
プラインがウェーブジェネレータにより楕円形状に構成され、長軸の部分で外輪の内歯と
歯が噛み合う構成となっており、外部からの衝撃を受けると歯の噛み合いがずれるという
現象(脱調現象)が生じてしまう。
【0006】
産業用ロボットには、予期せず様々な方向からの衝撃が作用するが、このような衝撃に
より、波動歯車型減速装置内において脱調が容易に発生し、また歯車が損傷してしまうと
いう問題があった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作用する
衝撃を吸収ないし緩和する構成を採用し、脱調や歯車の損傷を回避し、安全かつ安心に使
用可能な減速装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る減速装置は、減速機と、該減速機を収容するハウジングと、
該減速機を該ハウジングに対して該減速機の回転軸方向に移動可能にする緩衝手段と、を
備えるよう構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る減速装置は、前記緩衝手段は前記減速機と前記ハウジングと
の間に配置された弾性部材である。本発明の一実施形態に係る減速装置において、前記弾
性部材はゴムにより形成されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係る減速装置は、前記弾性部材は球状に形成されている。また、
本発明の一実施形態に係る減速装置は、前記弾性部材は球状に形成された球状部を有する
よう構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る減速装置において、前記減速機は、前記ハウジングに対して
、該減速機の回転軸の周方向に移動可能に構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る減速装置は、減速機と、該減速機を収容するハウジングと、
該減速機と該ハウジングとの間に配置された弾性部材とを備え、該弾性部材は、球状に形
成された球状部を含み、該減速機は、該ハウジングに対して、該減速機の回転軸方向及び
該減速機の回転軸の周方向に移動可能に構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る減速機は、前記減速機は弾性部材が収まる凹部または弾性
体に収まる凸部を有するよう構成される。また、本発明の一実施形態に係る減速装置は、
ハウジングに収容され、該ハウジングとの間に配置された弾性部材が収まる凹部または弾
性体に収まる凸部を有するよう構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態の減速装置によれば、作用する衝撃を吸収ないし緩和する構成を採
用し、脱調や歯車の損傷を回避し、安全かつ安心に使用可能な減速装置を提供することが
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る減速装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る減速装置の緩衝手段の詳細を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る減速装置における弾性部材を減速装置の上下方向からみた図である。
図4】本発明の一実施形態に係る減速装置における弾性部材を図3のA-A断面でみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る減速装置1の概略図である。本発明の一実施形態に
係る減速装置1は、減速機(減速部ともいうが、以下減速機とする)2と、該減速機2を
収容するハウジング3と、該ハウジング3と該減速機2との間の緩衝手段4を備える。図
示の例では、緩衝手段4の説明のため、減速機2を収容するハウジング3の一部を省略し
ている。
【0018】
減速機2は、入力回転軸と出力回転軸との間で入力に対する出力の回転数を減じる役割
を果たす。緩衝手段4は、減速機2の回転軸12に対する過剰な負荷を吸収し減速機2を
構成する歯車などの各構成部材の損傷を回避する役割を果たす。
【0019】
本発明の一実施形態に係る減速装置1は、減速機2と、該減速機2を収容するハウジン
グ3と、を備え、該減速機2は、該ハウジング4に対して、該減速機2の回転軸方向に移
動可能に構成される。本発明の一実施形態に係る減速装置1は、減速機2と、該減速機2
を収容するハウジング3と、該減速機2とハウジング3との間の緩衝手段4とを備え、該
減速機2は、該ハウジング4に対して、該減速機2の回転軸方向に移動可能に構成される
【0020】
これにより、ハウジングに衝撃が作用したときに、ハウジングが回転軸方向に移動して
、衝撃を緩和することができる。
【0021】
減速機の詳細は省略するが、減速機として、例えば、偏心揺動型の減速機構を採用する
場合、入力回転軸はクランクに接続され、クランクは、遊星歯車に接続される。入力回転
軸の回転により遊星歯車は、波型形状の接触面を備える金属製の内歯車と自信の波型形状
の歯を接触させ転がり(自転)ながら、自転方向と逆向きに公転する。この時点を6つの
内ピンにより取り出す。6つの内ピンを入力回転軸の中心と同心円上に配置することで入
力回転軸と出力回転軸を同心にすることができる。
【0022】
ハウジング3は、例えば、ロボットの関節の基部側又はアーム側に固定され減速装置1
を収容するように構成することができる。入力回転軸はモータなどによる動力が伝達され
る回転軸であり、出力回転軸は、入力回転数に応じて減じられた回転運動を出力する回転
軸12である。例えば、産業用ロボットでは、複数の減速装置と、各減速装置を介して接
続された一対のアームとを有し、一方のアームは、他方のアームに対して相対回転可能に
構成される。
【0023】
ハウジング3が、基部側又はアーム側のいずれか一方に固定されることで、他方側を相
対的に動かすことができる。例えば、産業用ロボットの関節に減速装置1を用いる場合、
入力回転軸側となる上側のアーム側にハウジング3を固定することで、出力回転軸側の下
側にある基部側を上側に対して動かすことができる。
【0024】
図1に示すように、緩衝手段4は、減速機2(後述するが、より正確には減速機2のケ
ース5)の側部領域を取り囲むように配置されている。ハウジング3は、当該緩衝手段4
をさらに取り囲むようにして、減速機2及び緩衝手段4を収容するように構成される。緩
衝手段4は、このようにして、例えば、減速装置1が外部から衝撃を受けた場合にあって
も、減速機2とハウジング3とが衝突することを回避し、減速機2における脱調や歯車の
損傷を低減することが可能となる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る減速装置1は、減速機2と、ハウジング3との間に緩衝手段
4として弾性部材(以下弾性部材4とする)が配置されるよう構成されている。ここで、
緩衝手段は、弾性部材4に限られず、適宜従来公知の材料を使用することができる。これ
により、減速機とハウジングとの間の弾性部材4が、外部からの減速機への衝撃を緩和す
ることができる。ここで、弾性部材4は通常駆動ではほとんど撓まないように形成され得
る。このようにして、外部からの突発的な衝撃等に際して吸収性を効果的に発揮するよう
にさせることができる。
【0026】
次に、図2を参照して緩衝手段4のより詳細を説明する。図2は、図1の減速機2の回転軸12を通る面で切断した断面図である。図示のように本発明の一実施形態に係る減速装置における弾性部材4は、球状に形成されている。図示の例では、紙面の左右方向において2つの球状の弾性部材4Aが、減速機2のケース5の外周面15に設けられた溝6と、ハウジング3の内周面13とに設けられた溝7に嵌るようにして形成されている。
【0027】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4は、減速
機2のケース5の外周面15と、ハウジング3の内周面13との間にシート状の弾性部材
4Bが形成されている。本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4は、球
状の弾性部材4Aのみで構成されてもよいし、シート状の弾性部材4Bのみで構成しても
構わない。
【0028】
本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4は、球状に形成された球状弾
性部4Aと、シート状弾性部4Bとにより形成されている。球状弾性部4Aは、減速機2
と、ハウジングとの間に複数形成されている。
【0029】
このように構成することで、弾性部材をコンパクトに形成することが可能となる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4は、ゴムにより形成することができるが、適宜その他従来公知の材料を使用しても構わない。
【0031】
本発明の一実施形態に係る減速装置1において、減速機2は、ハウジング3に対して、
該減速機の回転軸の周方向に移動可能に構成される。これにより、周方向の衝撃を緩和す
ることができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る減速装置1は、減速機2と、該減速機2を収容するハウジン
グ3と、該減速機2と該ハウジング3との間に配置された弾性部材4とを備え、該弾性部
材4は、球状に形成された球状部4Aを含み、該減速機2は、該ハウジング3に対して、
該減速機2の回転軸12の方向及び該減速機の回転軸12の周方向に移動可能に構成され
る。
【0033】
本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4は、特に、球状に形成されて
いるか、若しくは球状に形成された球状弾性部4Aを備えることにより、図1、2に示す
ラジアル方向(R)、トルク方向(T)、モーメント方向(M)、スラスト方向(Sa、
Sb)のいずれの方向からの衝撃も緩和することができるようになる。
【0034】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4を減
速装置1の上下方向からみた様子を説明する。なお、ハウジング3は省略されている。
【0035】
図示のように、減速装置1は、中央部分に減速機2(減速機の詳細は省略している)を
備え、その周りに、複数の球状弾性部4Aとシート状弾性部4Bとで構成される弾性部材
4が配置されている。図示の例では、減速機2の周方向に18の球状弾性部(図4も参
照すると合計36の球状弾性部)4Aが形成されている。
【0036】
次に、図4を参照して、本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4を図
3のA-A断面でみた様子を説明する。なお、図3と同様にハウジング3は省略されてい
る。
【0037】
図示のように、減速装置1は、中央部分に減速機2(減速機の詳細は省略している)を
備え、その周りに、複数の球状弾性部4Aとシート状弾性部4Bとで構成される弾性部材
4が配置されている。図示の例では、減速機2の上下方向(紙面の左右方向)に2つの球
状弾性部(図4では4つ、図3、4も参照すると合計36の球状弾性部)4Aが減速機
2の両側に形成されている。
【0038】
このように、図3、4に示す例では、本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾
性部材4は、合計36の球状弾性部4Aとシート状弾性部4Bとにより形成されている
が、球状弾性部材の数、寸法、形状に何ら限定はなく、適宜変更することができる。また
、シーツ状弾性部4Bの寸法や形状も適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0039】
以上のように、本発明の一実施形態に係る減速装置1における弾性部材4により、図1
、2に示すラジアル方向(R)、トルク方向(T)、モーメント方向(M)、スラスト方
向(Sa、Sb)のいずれの方向からの衝撃も緩和することができるようになる。
【0040】
その結果、本発明の一実施形態の減速装置によれば、作用する衝撃を吸収ないし緩和す
る構成を採用し、脱調や歯車の損傷を回避し、安全かつ安心に使用可能な減速装置を提供
することが可能となる。
【0041】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。上述の様々な実施形態は、上記に説明
したものに限定されず、様々な減速装置に適用可能である。上述の様々な実施形態のうち
1つに関連して説明された様々な特徴のうち一部が、他のもう1つの実施形態に関連して
説明された減速装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 減速装置
2 減速機
3 ハウジング
4 緩衝手段(弾性部材)
4A 球状の弾性部材
4B シート状の弾性部材
5 ケース
6 溝
7 溝
15 外周面
13 内周面
R ラジアル方向
T トルク方向
M モーメント方向
Sa スラスト方向
Sb スラスト方向
図1
図2
図3
図4