(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】付箋積層体および付箋積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 5/00 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
B42D5/00
(21)【出願番号】P 2018154650
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池上 大輔
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-021494(JP,A)
【文献】特開2008-162042(JP,A)
【文献】登録実用新案第3103350(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材の一方の面の一部に粘着剤層を有する付箋が複数積層されているとともに、積層方向に隣り合う前記付箋同士が、前記一方の面の反対の他方の面と前記粘着剤層とで、剥離自在に貼り合わされている付箋積層体であって、
当該付箋積層体は、
少なくとも、前記粘着剤層の形成されている粘着部と、その他の部分である非粘着部との境界において、
外力が付与されない状態で、前記積層方向の最外面で前記一方の面のある側が凹となり、前記積層方向の最外面で前記他方の面のある側が凸となるように湾曲している、付箋積層体。
【請求項2】
前記基材は、紙である、請求項1に記載の付箋積層体。
【請求項3】
シート状の基材の一方の面の一部に、粘着剤を塗工する粘着剤塗工工程と、
前記基材同士を、前記一方の面の反対の他方の面と前記一方の面とで隣り合わせつつ、複数積層する積層工程と、を有するとともに、
前記粘着剤塗工工程と前記積層工程との間、または前記積層工程後、
前記基材を、少なくとも前記粘着剤の塗工部と当該塗工部と異なる未塗工部との境界において湾曲させる曲げ工程を有し、
当該曲げ工程において、前記基材を、
前記基材の積層方向の最外面で前記一方の面のある側が凹となり、前記積層方向の最外面で前記他方の面のある側が凸となるように、湾曲させる、付箋積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、紙である、請求項3に記載の付箋積層体の製造方法。
【請求項5】
前記曲げ工程において、前記基材を、力を加えることによって湾曲させる、請求項3または請求項4に記載の付箋積層体の製造方法。
【請求項6】
前記曲げ工程において、前記基材を、前記一方の面と前記他方の面との膨張・収縮の違いによって湾曲させる、請求項4に記載の付箋積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋積層体および付箋積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、付箋が積層された付箋積層体がある(例えば特許文献1)。付箋は、付箋積層体から剥がされ、目的の被着体に貼付される。その際、付箋は、一般的にめくるようにして剥がされ、その結果、カールするようにクセがつくことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのようなクセがついてしまうと、被着体に貼付された付箋に浮きが生じ易い。特に、付箋において、粘着剤層のある箇所は被着体に固定されるためクセの影響が出難いものの、粘着剤層のある箇所とない箇所との境界で上記のようなクセがつくと、付箋に浮きが生じ易く、はがれ等の要因となるため、好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、被着体に貼付される付箋の浮きを抑制させうる付箋積層体、および付箋積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の付箋積層体は、シート状の基材の一方の面の一部に粘着剤層を有する付箋が複数積層されているとともに、積層方向に隣り合う前記付箋同士が、前記一方の面の反対の他方の面と前記粘着剤層とで、剥離自在に貼り合わされている。また、本発明の付箋積層体は、少なくとも、前記粘着剤層の形成されている粘着部と、その他の部分である非粘着部との境界において、外力が付与されない状態で、前記積層方向の最外面で前記一方の面のある側が凹となり、前記積層方向の最外面で前記他方の面のある側が凸となるように湾曲している。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の付箋積層体の製造方法は、シート状の基材の一方の面の一部に、粘着剤を塗工する粘着剤塗工工程と、前記基材同士を、前記一方の面の反対の他方の面と前記一方の面とで隣り合わせつつ、複数積層する積層工程と、を有する。また、本発明の付箋積層体の製造方法は、前記粘着剤塗工工程と前記積層工程との間、または前記積層工程後、前記基材を、少なくとも前記粘着剤の塗工部と当該塗工部と異なる未塗工部との境界において湾曲させる曲げ工程を有し、当該曲げ工程において、前記基材を、前記基材の積層方向の最外面で前記一方の面のある側が凹となり、前記積層方向の最外面で前記他方の面のある側が凸となるように、湾曲させる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する発明によれば、付箋積層体における粘着部と非粘着部との境界の湾曲した形状が、付箋を剥がす際にその境界に生じるクセを相殺するため、被着体に貼付される付箋の浮きを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】粘着剤が塗工されたシート状の基材を示す図である。
【
図3】粘着剤が塗工されたシート状の基材の積層を示す図である。
【
図4】基材の積層によって形成された積層体の切断を示す図である。
【
図5】切断によって形成された複数の積層体を示す図である。
【
図6】付箋が剥がされる実施形態の付箋積層体を示す図である。
【
図7】被着体に貼付された付箋に浮きが生じた状態を示す図である。
【
図8】被着体に貼付された付箋の浮きが抑制された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0011】
図1に示すように、実施形態の付箋積層体100は、付箋110が複数積層された構成を有する。それぞれの付箋110は、紙によって構成されたシート状の基材120と、粘着剤層130とを有する。基材120を構成する紙は、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙等であるが、特に限定されない。粘着剤層130は、基材120の一方の面121の一部に形成されている。
【0012】
付箋110同士は、それらの積層方向Dで隣り合い、面121の反対の他方の面122と粘着剤層130とで、剥離自在に貼り合わされている。
【0013】
付箋積層体100は、粘着剤層130の形成されている粘着部101と、その他の部分である非粘着部102との境界103において、湾曲しており、積層方向Dの最外面で面121のある側104が凹となり、積層方向Dの最外面で面122のある側105が凸となっている。
【0014】
次に、付箋積層体100の製造方法について述べる。
【0015】
付箋積層体100の製造方法は、粘着剤塗工工程、および積層工程を有し、また、積層工程後、基材120を湾曲させる曲げ工程を有する。
【0016】
図2に示すように、粘着剤塗工工程では、基材120の一方の面121の一部に、粘着剤30が塗工される。粘着剤30の塗工箇所は、一箇所に限定されず、複数箇所であってもよい。粘着剤30は、どのような方法で塗工されるか特に限定されず、例えば、ロータリースクリーン印刷等の印刷技術によって塗工されてもよく、あるいは、塗工方向に沿ってストライプ状に延びる塗工箇所が複数同時に形成されるようなストライプ塗工によって、塗工されてもよい。
【0017】
粘着剤30は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステルとタッキファイヤーとを主成分とするアクリル系粘着剤であるが、これに限定されず、他の公知の粘着剤を使用してもよい。
【0018】
図3に示すように、積層工程では、粘着剤30の塗工された基材120同士が、面121とその反対の面122とで隣り合わせて複数積層され、積層体10が形成される。積層体10では、粘着剤30の塗工部11が積層方向Dに並び、また、塗工部11と異なる未塗工部12が積層方向Dに並ぶ。
【0019】
粘着剤30の乾燥・硬化は、粘着剤塗工工程と積層工程との間に行われてもよいし、積層工程後に行われてもよい。粘着剤30が乾燥・硬化することによって、粘着剤層130が形成される。
【0020】
図4に示すように、積層工程後、積層体10は、刃Bによって塗工部11で切断され、複数個の積層体10aに分けられる。
図4に示した例では、積層体10は、2つの積層体10aに分けられているが、何分割するかは特に限定されず、例えば、積層体10に切断箇所となる塗工部11をより多く設けておき、2つよりも多い積層体10aが形成されるようにしてもよい。曲げ工程は、例えば、積層体10aの形成後に行われる。
【0021】
図5に示すように、曲げ工程では、積層体10aに力Fが加えられ、少なくとも塗工部11と未塗工部12との境界13において、基材120が上述の境界103と同様の湾曲した形状に変形させられる。
【0022】
曲げ工程は、積層体10aの形成後に力Fを加えることによって行われたが、これに限定されず、積層体10aの形成と同時に、刃Bが基材120を面122側から面121側に押圧する力を利用して行われてもよい。この場合、刃Bの押圧力は、積層された複数の基材120を切断し、かつ境界13を所望の湾曲形状に塑性変形させるのに必要な力以上である。
【0023】
このように刃Bの押圧力を利用して基材120を湾曲させるようにすれば、積層体10aの形成と曲げ工程とを同時に行うことができ、作業効率が増す。
【0024】
また、曲げ工程は、力を加えて基材120を湾曲させる形態に限定されず、例えば、基材120の一方の面121と他方の面122との膨張・収縮の違いを利用して、基材120を境界13で湾曲させるようにしてもよい。
【0025】
そのような形態として、例えば、水系のエマルジョン型粘着剤を粘着剤30として用いることが考えられる。
【0026】
この例においては、粘着剤30が塗工された基材120の一方の面121で、紙の基材120に粘着剤30中の水分が吸収されるため、面121は、他方の面122に比べ、相対的に大きく膨張し、また乾燥時の収縮も相対的に大きくなる。このような面121、122での膨張・収縮の違いを利用し、面121側が凹となり面122側が凸となる湾曲が生じるよう、水系のエマルジョン型粘着剤の水分量や乾燥条件を調整すれば、必ずしも力Fを加えずとも、境界13を所定の形状に湾曲させることができる。
【0027】
また、水系のエマルジョン型粘着剤を利用せずとも、例えば、一方の面121にスプレー等によって他方の面122よりも水分を多く含ませる、あるいは、ヒータ等を用いて面121、122で乾燥条件を変える等、他の手段によって、面121、122での膨張・収縮の差を生じさせることが可能である。
【0028】
また、曲げ工程は、積層工程後に行われる形態に限定されず、粘着剤塗工工程と積層工程との間に行われてもよい。この場合、例えば、積層工程前に、各基材120を境界13で湾曲させておき、予め形状づけられた各基材120を、積層工程で複数積層していく。
【0029】
曲げ工程は、積層工程後に行われる場合と積層工程前に行われる場合のいずれにしろ、結果として、付箋積層体100における境界103の湾曲形状を形成すればよい。
【0030】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0031】
図6に示すように、本実施形態の付箋積層体100は、付箋110を剥がして使用される。その際、めくるようにして剥がされるのが一般的で、このような剥がし方は、カールするようなクセがつく要因となりうる。
【0032】
図7に示すように、そのようなクセがついた付箋110Aは、被着体Sに貼付された際、浮きが生じ、はがれ等の要因となるため、好ましくない。粘着部101は被着体Sに固定されるためクセの影響が出難いものの、境界103にクセがついてしまうと、非粘着部102の全体が浮き、クセの影響が特に出易い。
【0033】
しかしながら、本実施形態では、境界103に予めつけられている湾曲した形状が、付箋積層体100から付箋110を剥がす際に生じるクセを相殺する。
【0034】
このため、
図8に示すように、付箋110は、浮きが効果的に抑制され、被着体Sに貼付された際、略平坦な状態になる。
【0035】
本実施形態のように基材120が紙であると、例えば樹脂フィルム等に比べ、付箋積層体100から剥がす際にカールするようなクセがつき易いが、境界103における湾曲した形状によって、クセのつき易い形態であっても浮きが抑制されるため、特に有効である。
【0036】
境界103を湾曲させる曲げ工程において、基材120に力を加えて湾曲させるようにすれば、例えば力の大きさや力を加える位置等の調節が容易であり、基材120を所望の形状に湾曲させ易い。
【0037】
一方、曲げ工程において、基材120の一方の面121と他方の面122との膨張・収縮の違いによって、基材120を湾曲させるようにすれば、力を加えなくて済み、労力が軽減される。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0039】
例えば、上記実施形態の基材120は紙であったが、本発明は、この形態に限定されず、シート状の基材が樹脂フィルムである形態を含む。
【0040】
また、付箋の大きさ、形状、用途等は特に限定されない。例えば、付箋は、上記実施形態のように略正方形の形状に限定されず、細長い長方形であってもよい。また、付箋は、例えば、メモを書くのに使用されるような比較的大きな形態であってもよいし、しおりとして利用されるような比較的小さな小片であってもよい。
【0041】
また、付箋が貼付される被着体も特に限定されず、例えば、ノートや本等の紙であってもよいし、クリアファイル等の樹脂であってもよいし、あるいは金属であってもよい。
【0042】
また、上記付箋積層体100の一方の最外面の側104に、例えば台紙等の支持材を配置した形態、および、他方の最外面の側105に、例えば表紙を配置した形態等も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10 基材の積層体、
11 塗工部、
12 未塗工部、
13 塗工部と未塗工部との境界、
30 粘着剤、
100 付箋積層体、
101 粘着部、
102 非粘着部、
103 粘着部と非粘着部との境界、
104 積層方向の最外面で基材の一方の面のある側、
105 積層方向の最外面で基材の他方の面のある側、
110 付箋、
120 シート状の基材、
121 基材の一方の面、
122 基材の他方の面、
130 粘着剤層、
B 刃、
D 積層方向、
F 基材を湾曲させるのに加えられる力、
S 被着体。