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特許7129288アルカリ二次電池用の正極及びこの正極を含むアルカリ二次電池
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  • 特許-アルカリ二次電池用の正極及びこの正極を含むアルカリ二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池用の正極及びこの正極を含むアルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/32 20060101AFI20220825BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220825BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M4/32
H01M4/62 C
H01M10/30 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018170657
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020043010
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】谷本 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】井本 雄三
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】木原 勝
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 英之
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130249(JP,A)
【文献】特開2007-149647(JP,A)
【文献】特開2005-56733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/32
H01M 4/62
H01M 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極基材と、前記正極基材に担持されている正極合剤と、を備え、
前記正極合剤は、正極活物質であるニッケル水酸化物と、正極添加剤と、導電材と、を含み、
前記正極添加剤は、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含み、
前記ニッケル水酸化物100質量部に対して、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量が0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、
前記第1の添加剤の質量をXとし、前記第2の添加剤の質量をYとした場合に、第1の添加剤と前記第2の添加剤との質量比が、X:Y=1:0.2~5の関係にあり、
活性化処理後の前記正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下であり、
前記ニッケル水酸化物は、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも1種を含み、
前記第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、
前記第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる、アルカリ二次電池用の正極。
【請求項2】
前記導電材は、粒子の形態及び前記ニッケル水酸化物の粒子の表面に形成された表面層の形態のうちの少なくとも一つの形態で前記正極合剤の中に含まれている、請求項1に記載のアルカリ二次電池用の正極。
【請求項3】
外装缶と、前記外装缶内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、
前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含み、
前記正極は、請求項1又は2に記載のアルカリ二次電池用の正極である、アルカリ二次電池。
【請求項4】
前記負極は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出できる水素吸蔵合金を含んでいる、請求項3に記載のアルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池用の正極及びこの正極を含むアルカリ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ二次電池に用いられる正極には、正極活物質として、ニッケル水酸化物が用いられている。このニッケル水酸化物は導電性が低いので、ニッケル水酸化物のみでは正極活物質の利用率を高めることが難しい。そこで、一般的には、導電性を付与するために、導電材が利用されている。この導電材の利用の態様としては、導電材の粒子の集合体である粉末を正極合剤中に添加する態様やニッケル水酸化物粒子の表面に導電材の層、すなわち導電層を形成する態様が挙げられる。これらの態様は、それぞれ単独で又は組み合わされて利用される。
【0003】
導電材の粉末を正極合剤中に添加する態様では、導電材として、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH))などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。これら導電材の粒子及びニッケル水酸化物粒子が互いに接触することにより導電性ネットワークが形成される。
【0004】
一方、ニッケル水酸化物粒子の表面に導電層を形成する態様では、ニッケル水酸化物粒子の表面にコバルト化合物を析出させて導電層を形成させる。この場合、各ニッケル水酸化物粒子の表面の導電層が互いに接触することにより導電性ネットワークが形成される。
【0005】
以上のようにして、正極における導電性は高められ、それにともない正極活物質の利用率は高められる。
【0006】
ところで、アルカリ二次電池においては、複数のアルカリ二次電池を組み合わせた電池パックとして使用される用途が多くなってきている。例えば、電気自動車の駆動用電源、再生可能エネルギーの蓄電システム、停電対策のバックアップ電源などが挙げられる。このような電池パックの場合、充放電にともなって、電池反応による反応熱やジュール熱が発生し、温度が上昇し易く、高温にさらされることが多い。また、近年は、更なる用途の拡大に伴い、アルカリ二次電池がより厳しい環境、例えば、高温環境で使用されることが多くなっている。特に、高温環境下で負荷に繋がれたまま放置され過放電されることがある。
【0007】
このようにアルカリ二次電池が過放電されると、特に、上記したコバルト化合物が還元されて導電性ネットワークが破壊され、充電効率が低下したり、放置した後の電池特性が低下するといった不具合が生じることがある。
【0008】
このような不具合を避けるためには、コバルト化合物の還元を抑制することが効果的であると考えられている。そこで、コバルト化合物の還元を抑制する方法について、様々な研究がなされている。そのようなコバルト化合物の還元を抑制する方法の一例としては、Ti、Nb、Y、Yb等の化合物を正極合剤に添加することが知られている(例えば、特許文献1参照)。つまり、Ti、Nb、Y、Yb等の化合物を正極添加剤として、正極合剤に添加することにより、導電性ネットワークの破壊を少なく抑えることができ、アルカリ二次電池の充電効率の低下の抑制等が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-031292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記したような正極添加剤は、それ自体の導電性が低いので、電池の放電特性に影響を与えることがあり、特に、電池をハイレートで放電させた場合に放電特性を低下させることがある。詳しくは、上記したような正極添加剤を正極に加えると、例えば、1Cレート程度の放電であれば、電池の放電特性の低下は少ない。しかしながら、よりハイレート、例えば、3Cレートでの放電では、電池の放電特性は大幅に低下する。
【0011】
このため、上記したようなハイレートの放電でも放電特性の低下を抑えることができるアルカリ二次電池の開発が望まれている。
【0012】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、導電性ネットワークを維持するための正極添加剤を含有させた場合でも、ハイレートでの放電特性の低下を抑えることができるアルカリ二次電池用の正極及びこの正極を含むアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、正極基材と、前記正極基材に担持されている正極合剤と、を備え、前記正極合剤は、正極活物質であるニッケル水酸化物と、正極添加剤と、導電材と、を含み、前記正極添加剤は、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含み、前記ニッケル水酸化物100質量部に対して、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量が0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、前記第1の添加剤の質量をXとし、前記第2の添加剤の質量をYとした場合に、第1の添加剤と前記第2の添加剤との質量比が、X:Y=1:0.2~5の関係にあり、活性化処理後の前記正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下であり、前記ニッケル水酸化物は、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも1種を含み、前記第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、前記第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる、アルカリ二次電池用の正極が提供される。
【0014】
また、前記導電材は、粒子の形態及び前記ニッケル水酸化物の粒子の表面に形成された表面層の形態のうちの少なくとも一つの形態で前記正極合剤の中に含まれている構成とすることが好ましい。
【0015】
更に、本発明によれば、外装缶と、前記外装缶内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含み、前記正極は、上記した何れかのアルカリ二次電池用の正極である、アルカリ二次電池が提供される。
【0016】
また、前記負極は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出できる水素吸蔵合金を含んでいる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアルカリ二次電池用の正極は、正極基材と、前記正極基材に担持されている正極合剤と、を備え、前記正極合剤は、正極活物質であるニッケル水酸化物と、正極添加剤と、導電材と、を含み、前記正極添加剤は、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含み、前記ニッケル水酸化物100質量部に対して、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量が0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、前記第1の添加剤の質量をXとし、前記第2の添加剤の質量をYとした場合に、第1の添加剤と前記第2の添加剤との質量比が、X:Y=1:0.2~5の関係にあり、活性化処理後の前記正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下であり、前記ニッケル水酸化物は、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも1種を含み、前記第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、前記第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる。上記した条件の正極添加剤を用いた正極を含むアルカリ二次電池は、ハイレートでの放電特性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を部分的に破断して示した斜視図である。
図2】抵抗率測定装置を概略的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用されるアルカリ二次電池について図面を参照して説明する。本発明が適用されるアルカリ二次電池としては特に限定されないが、例えば、図1に示すようなAAサイズの円筒型のニッケル水素二次電池(以下、電池という)2に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0020】
図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の開口には、封口体11が固定されている。この封口体11は、蓋板14及び正極端子20を含み、外装缶10を封口するとともに正極端子20を提供する。蓋板14は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0021】
ここで、蓋板14は、その中央に中央貫通孔16を有している。そして、蓋板14の外面上には、中央貫通孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
【0022】
通常時、中央貫通孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、中央貫通孔16を開き、その結果、外装缶10内から中央貫通孔16及び正極端子20のガス抜き孔(図示せず)を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
【0023】
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28を含んでおり、これらは正極24と負極26との間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁面と接触している。即ち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
【0024】
外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極24に接続され、その他端が蓋板14に接続されている。従って、正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30は上部絶縁部材32に設けられたスリット39を通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0025】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。このアルカリ電解液は、電極群22に含浸され、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH、LiOH等を溶質として含むアルカリ電解液を用いることが好ましい。
【0026】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。
【0027】
正極24は、正極基材、及び、この正極基材に担持された正極合剤を有している。
正極基材は、三次元網目構造を有する導電性の材料により形成される。正極基材としては、具体的には、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体、あるいは、発泡ニッケルを用いることができる。
【0028】
正極合剤は、正極活物質粒子、正極添加剤、導電材及び結着剤を含む。この結着剤は、正極合剤の構成材料を正極基材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
【0029】
正極活物質粒子は、ニッケル水酸化物粒子又は高次のニッケル水酸化物粒子が用いられる。これらニッケル水酸化物粒子には、必要に応じて、亜鉛やコバルトを固溶させることが好ましい。
【0030】
導電材は、金属単体、合金、導電性の金属酸化物、導電性の金属水酸化物等を挙げることができる。好ましくは、コバルト、コバルト合金、コバルト化合物(酸化コバルトや水酸化コバルト)等を挙げることができる。
【0031】
この導電材は、正極合剤中においては、粒子の状態で含まれている態様、及び、上記した正極活物質粒子の表面に形成された導電層の状態で含まれている態様のうち、少なくとも一つの態様で存在している。つまり、粒子の状態及び導電層の状態のどちらか一方、又は、粒子の状態及び導電層の状態の両方である。
【0032】
ここで、導電層として添加される導電材は、ベース粒子となるニッケル水酸化物粒子100質量部に対して、2質量部以上、5質量部以下とすることが好ましい。また、粒子の状態で添加される導電材は、ベース粒子となるニッケル水酸化物粒子100質量部に対して、2質量部以上、5質量部以下とすることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、上記したニッケル水酸化物粒子の表面に、コバルト化合物を含む導電層を形成するとともに、コバルト化合物の粒子を正極合剤中に添加させる態様を採用する。
【0034】
コバルト化合物の粒子としては、例えば、平均粒径が0.1μm~10μmの水酸化コバルト(Co(OH))、酸化コバルト(CoO)等の粒子を用いることが好ましい。
【0035】
ここで、本発明においては、平均粒径といった場合、対象となる粒子の集合体である粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置を用いて体積基準で粒径分布を測定して得られた体積平均粒径を指すものとする。
【0036】
一方、正極活物質粒子の表面を覆う導電層の形態で正極合剤に導電材を含ませる場合、コバルト化合物としては、水酸化コバルト(Co(OH))、酸化コバルト(CoO)等を用いることが好ましい。導電層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、0.1μmとすることが好ましい。なお、厚さが0.1μmのCoの化合物を形成することにより、ベース粒子となるニッケル水酸化物粒子100質量部に対して、導電層としてのコバルト化合物は2.0質量部~5.0質量部程度となる。
【0037】
導電層としてのCoの化合物には、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)などの高次コバルト化合物を採用することが好ましい。そして、この高次コバルト化合物には、アルカリ金属を含有させることが好ましい。より好ましくは、アルカリ金属としてNaを採用する。ここで、Naを含有しているコバルト化合物を、以下、ナトリウム含有コバルト化合物という。このナトリウム含有コバルト化合物は、詳しくは、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)の結晶中にNaが取り込まれた化合物である。このように、コバルト化合物にNaを含有させると、得られる導電層の厚さの均一性が高くなるので好ましい。
【0038】
上記したような導電材の粒子と正極活物質粒子とが接触すること、あるいは、導電層を有する正極活物質同士が接触することにより導電性ネットワークが形成され、これにより、正極の導電性が確保され、正極活物質の利用率が高められる。
【0039】
次に、正極添加剤は、上記したコバルト化合物が還元されることを抑制し、導電性ネットワークが破壊されることを抑える働きをするものであり、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含んでいる。
【0040】
第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0041】
これら第1の添加剤及び第2の添加剤の合計の添加量は、正極活物質(ベース粒子となるニッケル水酸化物粒子)100質量部に対して、0.1質量部以上、2.5質量部以下とする。
【0042】
そして、第1の添加剤と、第2の添加剤との質量比は、第1の添加剤の質量をXで表し、第2の添加剤の質量をYで表した場合に、X:Y=1:0.2~5の関係が成り立つように設定する。
【0043】
第1の添加剤としての酸化イットリウムは必須であり、酸化イットリウムの代わりに酸化イッテルビウムを採用すると、3Cレートでのハイレート放電特性が低下してしまう。
【0044】
また、第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量を上記した範囲内に設定すれば、3Cレートでのハイレート放電特性の低下を抑制できるが、第1の添加剤及び第2の添加剤の添加量が上記した範囲を外れると、3Cレートでのハイレート放電特性が低下してしまう。
【0045】
上記した酸化イットリウムは、粒子状のものが採用される。酸化イットリウムの粒子としては、特に限定されるものではないが、平均粒径が、1μm~10μmのものを用いることが好ましい。
【0046】
上記した酸化二オブは、粒子状のものが採用される。酸化二オブの粒子としては、特に限定されるものではないが、平均粒径が、0.1μm~10μmのものを用いることが好ましい。
【0047】
上記した酸化チタンは、粒子状のものが採用される。酸化チタンの粒子としては、特に限定されるものではないが、平均粒径が、1nm~100nmのものを用いることが好ましい。
【0048】
また、正極合剤は、全体としての抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下に設定される。ここで、正極合剤の抵抗率を上記した範囲に設定する具体的な方法としては、上記した導電材の添加量や正極活物質粒子の表面に析出させる導電材の量を調整する方法が挙げられる。
【0049】
正極合剤の抵抗率は、低い方が望ましいが、1Ω・m未満まで下げるには、導電材の種類にもよるが、ニッケル水酸化物100質量部に対して20質量部以上の導電材が必要になる。導電材の量が多くなると、その分だけ正極活物質の量が減り、電池容量が低下してしまう。よって、正極合剤の抵抗率は、1Ω・m以上とする。
【0050】
また、正極合剤の抵抗率が、10Ω・mを超えると放電特性が低下してくる。よって、正極合剤の抵抗率は、10Ω・m以下とする。
【0051】
ここで、正極合剤は、初期状態では導電性が低いので、活性化処理を施し、使用可能状態とした後の抵抗率を上記範囲に設定する。
【0052】
正極24は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子の集合体である正極活物質粉末に、正極添加剤、導電材、水及び結着剤を添加して混練し、正極合剤スラリを調製する。得られた正極合剤スラリは、例えば、発泡ニッケルに充填され、乾燥させられる。乾燥後、正極活物質(水酸化ニッケル粒子)等が充填された発泡ニッケルは、ロール圧延されてから裁断される。これにより、正極合剤を担持した正極24が得られる
【0053】
次に、負極26について説明する。
負極26は、帯状をなす導電性の負極芯材を有し、この負極芯材に負極合剤が保持されている。
【0054】
負極芯材は、貫通孔が分布されたシート状の金属材であり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤は、負極芯材の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯材の両面上にも層状にして保持されている。
【0055】
負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、導電材及び結着剤を含む。この結着剤は、水素吸蔵合金粒子、負極添加剤及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマーを用いることができ、導電材としては、カーボンブラックや黒鉛を用いることができる。また、必要に応じて負極添加剤を添加しても構わない。
【0056】
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、一般的なニッケル水素二次電池に用いられるものが好適に用いられる。
【0057】
また、負極26は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤ペーストを調製する。得られた負極合剤ペーストを負極芯材に塗着し、乾燥させる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極芯材にロール圧延及び裁断を施す。これにより負極26が製造される。
【0058】
以上のようにして製造された正極24及び負極26は、セパレータ28を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群22が形成される。
【0059】
このようにして得られた電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内にはアルカリ電解液が所定量注入される。その後、電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた蓋板14により封口され、本発明に係る電池2が得られる。得られた電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0060】
本発明に係るアルカリ二次電池用の正極は、正極基材と、この正極基材に担持されている正極合剤と、を備えており、この正極合剤は、正極活物質であるニッケル水酸化物と、正極添加剤と、導電材と、を含んでいる。上記したニッケル水酸化物は、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも1種を含んでいる。そして、上記した正極添加剤は、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含んでおり、第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる。これら第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量は、ニッケル水酸化物100質量部に対して、0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、第1の添加剤の質量をXとし、第2の添加剤の質量をYとした場合に、第1の添加剤と第2の添加剤との質量比が、X:Y=1:0.2~5の関係にある。更に、活性化処理後の正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下に設定されている。このような正極は、導電性ネットワークの破壊を抑制しつつ、ハイレートでの放電特性の低下を抑制することができる。斯かる正極を備えたアルカリ二次電池は、ハイレートでの放電を行うことができる。
【0061】
つまり、本発明によれば、導電性ネットワークを維持するための正極添加剤を含有させた場合でも、ハイレートでの放電特性の低下が抑えられた優れたアルカリ二次電池を提供することができる。
【0062】
[実施例]
1.電池の製造
【0063】
(実施例1)
(1)正極の製造
ニッケルに対して亜鉛3質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛及び硫酸コバルトを計量し、これらを、アンモニウムイオンを含む1Nの水酸化ナトリウム水溶液に加え、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に10Nの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させ、ここでの反応中、pHを13~14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛及びコバルトを固溶したベース粒子を生成させた。
【0064】
得られたベース粒子を10倍の量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥した。なお、得られたベース粒子は、平均粒径が10μmの球状をなしている。
【0065】
次に、得られたベース粒子をアンモニア水溶液中に投入し、その反応中のpHを9~10に維持しながら硫酸コバルト水溶液を加えた。これにより、ベース粒子を核として、この核の表面に水酸化コバルトが析出し、厚さ約0.1μmの水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子を得た。ついで、この中間体粒子を80℃の環境下にて酸素を含む高温空気中に対流させ、45分間の加熱処理を施した。これにより、前記中間体粒子の表面の水酸化コバルトが導電性の高いオキシ水酸化コバルトとなる。つまり、オキシ水酸化コバルトの導電層が形成される。その後、斯かるオキシ水酸化コバルトの導電層を備えた粒子を濾取し、水洗いしたのち、60℃で乾燥させた。このようにして、ベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトからなる導電層を有した正極活物質粒子の集合体である正極活物質の粉末を得た。
【0066】
なお、オキシ水酸化コバルトの導電層は、厚さは約0.1μmであり、ベース粒子100質量部に対して4.0質量部であった。
【0067】
次に、平均粒径が5.0μmの酸化イットリウムの粒子の集合体である酸化イットリウム粉末と、平均粒径が3.0μmの酸化ニオブの粒子の集合体である酸化ニオブ粉末を準備した。
【0068】
また、平均粒径が1.0μmの水酸化コバルト(Co(OH))の粒子の集合体である水酸化コバルト粉末を別添の導電材として準備した。
【0069】
次に、正極活物質の粉末104質量部(内訳は、ニッケル水酸化物としてのベース粒子が100質量部であり、導電層としてのオキシ水酸化コバルトが4質量部である。)に、0.3質量部の酸化イットリウム粉末(第1の添加剤)、0.6質量部の酸化二オブ粉末(第2の添加剤)、3.0質量部の水酸化コバルト粉末(別添の導電材)、0.2質量部のHPCの粉末、0.3質量部のPTFEのディスパージョン液及び30質量部の水を混合して正極活物質スラリを調製し、この正極活物質スラリを正極基材としての発泡ニッケルに充填した後、乾燥させた。これにより、発泡ニッケルに正極活物質粒子等が充填された正極の中間製品を得た。
【0070】
得られた中間製品を、ロール圧延により、厚さが0.52mmとした後、所定寸法に切断し、AAサイズ用の正極24を得た。
【0071】
(2)水素吸蔵合金及び負極の製造
まず、12質量%のLa、88質量%のSmを含む希土類成分を調製した。得られた希土類成分、Mg、Ni、Alを計量して、これらがモル比で0.90:0.10:3.40:0.10の割合となる混合物を調製した。得られた混合物を誘導溶解炉で溶解し、その溶湯を鋳型に流し込んだ後、室温(25℃程度)まで冷却し水素吸蔵合金のインゴットを得た。
【0072】
次いで、このインゴットに対し、アルゴンガス雰囲気下にて温度1000℃で10時間保持する熱処理を施した。そして、当該インゴットを、熱処理後、室温(25℃程度)まで冷却した。熱処理後のインゴットより採取したサンプルにつき、高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって組成分析を行った。その結果、水素吸蔵合金の組成は、(La0.12Sm0.880.90Mg0.10Ni3.40Al0.10であった。
【0073】
次に、熱処理後の水素吸蔵合金のインゴットをアルゴンガス雰囲気中で機械的に粉砕し、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末を得た。ここで、得られた水素吸蔵合金粉末につき、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置を用いて粒子の粒径を測定した結果、かかる水素吸蔵合金粒子の体積平均粒径(MV)は60μmであった。
【0074】
得られた水素吸蔵合金の粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.4質量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.1質量部、スチレンブタジエンゴム(SBR)のディスバージョン(固形分50質量%)1.0質量部(固形分換算)、カーボンブラックの粉末1.0質量部、及び水30質量部を添加して混練し、負極合剤のペーストを調製した。
【0075】
この負極合剤のペーストを負極芯材としての鉄製の孔あき板の両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。なお、この孔あき板は60μmの厚みを有し、その表面にはニッケルめっきが施されている。
【0076】
ペーストの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末が付着した孔あき板を更にロール圧延して体積当たりの合金量を高めた後、裁断し、AAサイズ用の負極26を得た。
【0077】
(3)ニッケル水素二次電池の製造
得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を製造した。ここでの電極群22の製造に使用したセパレータ28は、ポリプロピレン繊維製不織布を発煙硫酸でスルフォン化処理した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して得られたスルフォン化セパレータであり、その厚みは0.14mm(目付量60g/m)であった。
【0078】
一方、KOH、NaOH及びLiOHを計量し、これらKOH、NaOH及びLiOHをイオン交換水に投入し、総濃度が7.0Nであり、KOHが5.0N、NaOHが1.0N、LiOHが1.0NとなるKOHが主体のアルカリ電解液を準備した。
【0079】
次いで、有底円筒形状の外装缶10内に上記した電極群22を収納するとともに、準備したアルカリ電解液を2.2ml注液した。この後、封口体11で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量1100mAhのAAサイズのニッケル水素二次電池2を製造した。
【0080】
(4)初期活性化処理
電池2に対し、温度25℃の環境下にて、0.2Cで16時間の充電を行った後に、0.2Cで電池電圧が1.0Vになるまで放電させる充放電作業を5回繰り返すことにより初期活性化処理を行った。このようにして、電池2を使用可能状態とした。
【0081】
(5)正極合剤の抵抗率の測定
電池2は、特性評価用及び正極合剤の抵抗率の測定用に複数個製造しておいた。そして、正極合剤の抵抗率の測定用の電池について、初期活性化処理後に解体作業を行い、正極合剤を回収し、当該正極合剤の抵抗率の測定を行った。詳しい手順を以下に示す。
【0082】
初期活性化処理における最後の放電(0.2Cで電池電圧が1.0Vになるまで放電)をさせた後の電池を解体し、電池内から正極を取り出した。取り出された正極からアルカリ電解液を取り除くために水洗を行った。水洗後の正極を60℃の恒温槽に収容し、12時間~18時間乾燥させた。乾燥後の正極に超音波振動を与えて正極合剤を剥離させた。次いで、剥離された正極合剤を篩いにかけて、正極基材のかけらを取り除き、正極合剤のみの粉末を得た。得られた正極合剤の粉末を1.0gだけ量り取り抵抗率測定用のサンプルSとした。そして、このサンプルSを以下に示すような抵抗率測定装置40にセットし、サンプルSの抵抗率を測定した。詳しい測定手順は以下に示す。
【0083】
抵抗率測定装置40は、図2に示すように、台座42の上に載置された銅製の下側治具44と、絶縁性の樹脂により形成されている円筒状の胴体46と、銅製の上側治具48であって、下側治具44と対向する位置に位置付けられている上側治具48と、上側治具48を下側治具44へ向かって押圧するプレス機50と、下側治具44及び上側治具48にリード線52、54を介して取り付けられたデジタルマルチメータ56とを備えている。
【0084】
下側治具44は、円板状のベース部44aと、このベース部44aの中央に設けられた円柱状の下側接触部44bとを含んでいる。下側接触部44bの外径寸法rは、胴体46の中央貫通孔46aの内径寸法と同じであり、下側接触部44bは、胴体46の中央貫通孔46aの中に挿通されている。この下側接触部44bの外径寸法rは15mmである。
【0085】
上側治具48は、円板状のベース部48aと、このベース部48aの中央に設けられた円柱状の上側接触部48bとを含んでいる。上側接触部48bの外径寸法は、胴体46の中央貫通孔46aの内径寸法と同じであり、上側接触部48bは、胴体46の中央貫通孔46aの中に挿通されている。この上側接触部48bの外径寸法も15mmである。
【0086】
サンプルSは、胴体46内において下側治具44の下側接触部44b上に配置される。そして、胴体46の中央貫通孔46aの上端開口46bから上側治具48の上側接触部48bが挿通され、上側接触部48bの端面48cがサンプルSと接触する。この状態で、プレス機50を稼働させ、上側治具48を下側治具44に向かって押圧し、サンプルSを圧縮するとともに、デジタルマルチメータ56でサンプルSの抵抗率を測定した。なお、抵抗率の測定中、10kNの力でサンプルSを圧縮した。
【0087】
(実施例2)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.5質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0088】
(実施例3)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0089】
(比較例1)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0質量部、すなわち第1の添加剤を用いなかったことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0090】
(比較例2)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を3質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0091】
(比較例3~5)
第1の添加剤として、酸化イットリウムの代わりに酸化イッテルビウムを用い、その添加量を0質量部、1.5質量部、3質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。ここで、酸化イッテルビウムは、平均粒径が8.0μmの酸化イッテルビウムの粒子の集合体である酸化イッテルビウム粉末を用いた。なお、以下の比較例において使用する酸化イッテルビウムについても同様とする。
【0092】
(実施例4~6)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、及び、第2の添加剤としての酸化ニオブの添加量を0.6質量部、1.2質量部、1.5質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0093】
(比較例6、7)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、及び、第2の添加剤としての酸化ニオブの添加量を0質量部、2質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0094】
(比較例8~12)
第1の添加剤として、酸化イットリウムの代わりに酸化イッテルビウムを用い、その添加量を1.5質量部としたこと、及び、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、2質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。ここで、酸化チタンは、平均粒径が5nmの酸化チタンの粒子の集合体である酸化チタン粉末を用いた。なお、以下の実施例及び比較例において使用する酸化チタンについても同様とする。
【0095】
(実施例7~9)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、及び、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.2質量部、0.5質量部、1質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0096】
(比較例13、14)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、及び、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0質量部、2質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0097】
(比較例15)
第1の添加剤を添加しなかったこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、ニッケル水酸化物としてのベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの導電層を形成しなかったこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末を3.3質量部添加したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0098】
(比較例16~18)
第1の添加剤を添加しなかったこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末の添加量を0.5質量部、3.0質量部、15.0質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0099】
(比較例19)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、ニッケル水酸化物としてのベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの導電層を形成しなかったこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末を3.3質量部添加したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0100】
(実施例10~14)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を0.9質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末の添加量を0質量部、0.5質量部、1.0質量部、3.0質量部、15.0質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0101】
(比較例20)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を1.8質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、ニッケル水酸化物としてのベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの導電層を形成しなかったこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末を3.3質量部添加したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0102】
(実施例15~17)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を1.8質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末の添加量を0.5質量部、3.0質量部、15.0質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0103】
(比較例21)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を3質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、ニッケル水酸化物としてのベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの導電層を形成しなかったこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末を3.3質量部添加したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0104】
(比較例22~24)
第1の添加剤としての酸化イットリウムの添加量を3質量部としたこと、第2の添加剤として、酸化ニオブの代わりに酸化チタンを用い、その添加量を0.5質量部としたこと、及び、別添の導電材としての水酸化コバルト粉末の添加量を0.5質量部、3.0質量部、15.0質量部と変化させたことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
【0105】
2.ニッケル水素二次電池の評価
(1)Niの利用率
実施例1~17、比較例1~24の初期活性化処理済みの特性評価用電池に対し、25℃の環境下にて、0.1Cで充電電流を流し、公称容量の160%になるまで充電を行った。その後、60分間放置した。次いで、同一環境下にて0.2Cで電池の電圧が1.0Vになるまで放電した。このときの各電池の放電容量を測定した。この放電容量を初期容量とした。そして、正極に含まれる水酸化ニッケル1g当たりの容量値である289mAh/gと、得られた初期容量からNiの利用率を計算した。その結果をNi利用率として各表に記載した。このNi利用率は、実質的に正極活物質の利用率を示す。
【0106】
(2)放電特性
実施例1~17、比較例1~24の初期活性化処理済みの特性評価用電池に対し、25℃の環境下にて、0.1Cで充電電流を流し、公称容量の160%になるまで充電を行った。その後、60分間放置した。次いで、同一環境下にて0.2Cで電池の電圧が1.0Vになるまで放電した。このときの各電池の放電容量を測定した。このときの放電容量を0.2C容量とした。
【0107】
次に、実施例1~17、比較例1~24の電池に対し、25℃の環境下にて、0.1Cで充電電流を流し、公称容量の160%になるまで充電を行った。その後、60分間放置した。次いで、同一環境下にて1Cで電池の電圧が1.0Vになるまで放電した。このときの各電池の放電容量を測定した。このときの放電容量を1C容量とした。
【0108】
そして、以下に示す、(I)式より、0.2C放電時の放電容量に対する1C放電時の放電容量の比率(1C/0.2C容量比率)を求めた。
1C/0.2C容量比率[%]=1C容量/0.2C容量×100・・・(I)
この1C/0.2C容量比率を各表に示した。
【0109】
次に、実施例1~17、比較例1~24の電池に対し、25℃環境下にて、0.1Cで充電電流を流し、公称容量の160%になるまで充電を行った。その後、60分間放置した。次いで、同一環境下にて3Cで電池の電圧が1.0Vになるまで放電した。このときの各電池の放電容量を測定した。このときの放電容量を3C容量とした。
【0110】
そして、以下に示す、(II)式より、0.2C放電時の放電容量に対する3C放電時の放電容量の比率(3C/0.2C容量比率)を求めた。
3C/0.2C容量比率[%]=3C容量/0.2C容量×100・・・(II)
この3C/0.2C容量比率を各表に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
(3)考察
以上の結果より、第1の添加剤として酸化イットリウムを用いた場合、1C/0.2C容量比率は94.1%以上であり、3C/0.2C容量比率は90.0%以上であり、ハイレートでの放電を行っても放電特性の低下が抑制されていることがわかる。
【0116】
一方、第1の添加剤を用いない場合、あるいは、第1添加剤として酸化イッテルビウムを用いた場合、1C/0.2C容量比率は80%台から90%台を示しているが、3C/0.2C容量比率は70%台まで低下している。つまり、第1の添加剤を用いない場合、あるいは、第1添加剤として酸化イッテルビウムを用いた場合は、ハイレートでの放電を行うと放電特性が低下していることがわかる。
【0117】
このため、第1の添加剤として、酸化イットリウムを用いることは、ハイレートでの放電特性の低下を抑制することに効果があるといえる。
【0118】
また、第2の添加剤を添加しない比較例6や比較例13では、3C/0.2C容量比率が86.8%まで低下してしまう。このことから、第1の添加剤の酸化イットリウムだけでは、ハイレートでの放電特性の低下を抑制することができず、第2の添加剤として、酸化ニオブや酸化チタンが必要であるといえる。
【0119】
また、第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量がニッケル水酸化物100質量部に対して、0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、第1の添加剤と第2の添加剤との質量比が、1:0.2~5の関係にあり、正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下であるといった条件の範囲内にある実施例1~17は、3C/0.2C容量比率は90.0%以上である。
【0120】
これに対し、上記の条件の範囲を外れている比較例1~24は、3C/0.2C容量比率が、89.5%以下であり、特に、正極合剤の抵抗率が20Ω・mを超えている比較例15、19、20、21は、3C/0.2C容量比率が、77.6%~72.1%となっている。
【0121】
このことから、上記した条件の範囲に設定することが、ハイレートでの放電特性の低下の抑制に有効であるといえる。
【0122】
なお、本発明は、上記したニッケル水素二次電池に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、ニッケルカドミウム二次電池等、他のアルカリ二次電池であってもよい。
【0123】
<本発明の態様>
本発明の第1の態様は、正極基材と、前記正極基材に担持されている正極合剤と、を備え、前記正極合剤は、正極活物質であるニッケル水酸化物と、正極添加剤と、導電材と、を含み、前記正極添加剤は、第1の添加剤と、第2の添加剤とを含み、前記ニッケル水酸化物100質量部に対して、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤の合計量が0.1質量部以上、2.5質量部以下であり、前記第1の添加剤の質量をXとし、前記第2の添加剤の質量をYとした場合に、第1の添加剤と前記第2の添加剤との質量比が、X:Y=1:0.2~5の関係にあり、活性化処理後の前記正極合剤の抵抗率が、1Ω・m以上、10Ω・m以下であり、前記ニッケル水酸化物は、オキシ水酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも1種を含み、前記第1の添加剤は、酸化イットリウムであり、前記第2の添加剤は、酸化ニオブ及び酸化チタンのうちの少なくとも1種を含んでいる、アルカリ二次電池用の正極である。
【0124】
また、本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記導電材は、粒子の形態及び前記ニッケル水酸化物の粒子の表面に形成された表面層の形態のうちの少なくとも一つの形態で前記正極合剤の中に含まれている、アルカリ二次電池用の正極である。
【0125】
本発明の第3の態様は、外装缶と、前記外装缶内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含み、前記正極は、上記した本発明の第1の態様又は第2の態様に記載のアルカリ二次電池用の正極である、アルカリ二次電池である。
【0126】
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第3の態様において、前記負極は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出できる水素吸蔵合金を含んでいる、アルカリ二次電池である。
【符号の説明】
【0127】
2 ニッケル水素二次電池
10 外装缶
22 電極群
24 正極
26 負極
28 セパレータ
40 抵抗率測定装置
図1
図2