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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】建替え用の建物床構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20220825BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20220825BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20220825BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20220825BHJP
   E02D 35/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D27/12 Z
E02D27/34 Z
E02D27/01 Z
E02D35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018171975
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020041387
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】萱嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】有山 伸之
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 舞
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147782(JP,A)
【文献】特開平09-067824(JP,A)
【文献】特開平11-350745(JP,A)
【文献】特開2002-146809(JP,A)
【文献】特開平09-316891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/32
E02D 27/12
E02D 27/34
E02D 27/01
E02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建替え用の建物床構造であって、
地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる土間コンクリートと、
前記土間コンクリートの下方に設けられる改良地盤と、
前記改良地盤の下方に埋設された既存耐圧板、または既存杭及び前記既存耐圧板と、を備え、
前記土間コンクリートが、前記改良地盤と前記既存耐圧板とで支持されている、または前記改良地盤、前記既存杭及び前記既存耐圧板とで支持されており、
前記改良地盤は、新設柱が立設されたフーチングと、地盤改良土、ラップルコンクリート、砕石および解体コンクリートガラのうち、少なくとも1つ以上で形成されていることを特徴とする建替え用の建物床構造。
【請求項2】
前記改良地盤には、さらに、前記既存耐圧板、および前記土間コンクリートに接合された長尺のコンクリート体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建替え用の建物床構造。
【請求項3】
前記長尺のコンクリート体の上部に位置する前記土間コンクリートには、誘発目地によって形成された凹型断面形状の溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建替え用の建物床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存地下躯体を全て解体、撤去することなく、一部の既存地下躯体を埋設させたまま、その既存地下躯体上に改良地盤を設けて、その改良地盤上に設置する建替え用の建物床構造である。
【背景技術】
【0002】
倉庫等の低層建築物では、最下階の床構造を、柱や梁と同様に、建物荷重を支える構造床スラブとして設けるのではなく、床スラブを直接、地盤の地表面と接する土間コンクリートとして計画、設計される場合がある。土間コンクリートは、床スラブ内に複雑なスラブ鉄筋を配筋することなく、建物荷重を直接、地盤に伝達する床構造であり、重量物を支持することができる反面、地盤が軟弱であると土間コンクリートの不同沈下を抑える構成とする必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、パイプ状物を芯材とする小径のソイルセメントコラムが多数設けられたソイルセメントコラム群と、ソイルセメントコラム群上に設けられたコンクリートスラブと、を備える土間コンクリートが開示されている。このような構成によれば、コンクリートスラブをソイルセメントコラム群で支持することで、土間コンクリートの沈下を抑えている。
特許文献1に開示されたような土間コンクリートでは、既存の建物がある場所に新たな建物を建て替えて設ける場合、上記のようなソイルセメントコラム群、コンクリートスラブを設けるには、既存の建物の基礎杭や耐圧板等の地下躯体を撤去した後、新たにソイルセメントコラム群を設けなければならない。このため、作業に多大な手間が掛かり、工期が長期化してしまう場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、下端が地盤の支持層よりも上方に位置して支持層に到達しない支持杭と、支持杭との間に間隔をあけて設けられた土間コンクリート床と、土間コンクリート床および支持杭の間に介装された緩衝部材とを備える構成が開示されている。このような構成によれば、土間コンクリート床が、支持杭と地盤との摩擦力によって支持されるので、床全体の沈下を抑えることができる。
特許文献2に開示されたような構成においても、既存の建物がある場所に新たな建物を建て替えて設ける場合、上記のような支持杭、土間コンクリート床、緩衝部材を設けるには、既存の建物の基礎杭や耐圧板等の地下躯体を撤去した後、新たに支持杭を設けなければならない。このため、特許文献1と同様に、作業に多大な手間が掛かり、工期が長期化してしまう場合があった。
【0005】
また、特許文献3には、軟弱地盤に打設されると共にその下層の支持地盤に達しない沈下抑制杭を含む浮上支持体と、軟弱地盤及び浮上支持体の上に、改良地盤による盛土、又は砕石層からなる荷重伝達層を介して支持されたコンクリート土間と、を備える構成が開示されている。このような構成によれば、コンクリート土間に作用した鉛直荷重を荷重伝達層及び浮上支持体を介して軟弱地盤に伝達することで、コンクリート土間の沈下を抑制する。
特許文献3に開示されたような構成においても、既存の建物がある場所に新たな建物を建て替えて設ける場合、上記のような浮上支持体、荷重伝達層、コンクリート土間を設けるには、既存の建物の基礎杭や耐圧板等の地下躯体を撤去した後、新たに浮上支持体やコンクリート土間を設ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-119798号公報
【文献】特開2011-47196号公報
【文献】特開2010-196346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、比較的簡単な施工により実現可能な構成によって、土間コンクリートの沈下を効果的に抑制することが可能な、建替え用の建物床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、建替え用建物を対象として、既存構造物の地下部分を全て解体・撤去するのではなく、既存地下躯体の一部を存置させた状態で、既存地下躯体上に改良地盤を設置し、その改良地盤上に土間コンクリートを設けることで、既存地下躯体より深い地盤部分が掘削されないために当該深い地盤部分は現状の締め固められた地盤状態が保持されており、土間コンクリート下を全て改良地盤に置き換える場合に比べて、高い地盤支持力が得られる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の建替え用の建物床構造は、建替え用の建物床構造であって、地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる土間コンクリートと、前記土間コンクリートの下方に設けられる改良地盤と、前記改良地盤の下方に埋設された既存耐圧板、または既存杭及び前記既存耐圧板と、を備え、前記土間コンクリートが、前記改良地盤と、前記既存耐圧板、または前記既存杭及び前記既存耐圧板とで支持されていることを特徴とする。
このような構成によれば、土間コンクリートの下方側に、改良地盤と、既存耐圧板、または既存杭及び前記既存耐圧板とが設けられて、土間コンクリートを支持する。これにより、土間コンクリートの下方に、2種類、または3種類の沈下抑止手段(改良地盤、既存杭、既存耐圧板)が設けられるために、改良地盤単体の場合に比べて、高い地盤支持力を発揮し、土間コンクリートの沈下を抑止できる。
また、既存耐圧板や既存杭を流用した構成となっており、施工の際に、建替え前の地下躯体よりも深い地盤部分が採掘されないため、締め固められた地盤状態が維持されている。したがって、高い地盤支持力を発揮し、土間コンクリートの沈下を抑止できる。
また、既存耐圧板、または既存杭及び前記既存耐圧板を解体、撤去することなく、既存耐圧板、または既存杭及び前記既存耐圧板を埋設させたまま、その上に改良地盤、土間コンクリートを設ける。このため、既存耐圧板、または既存杭及び既存耐圧板の撤去作業、新設の基礎杭の施工等が不要となり、作業の手間を低減でき、短工期化が可能となる。
したがって、比較的簡単な施工により実現可能な構成によって、土間コンクリートの沈下を効果的に抑制することが可能な、建替え用の建物床構造を提供することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の建替え用の建物床構造は、前記改良地盤は、地盤改良土、ラップルコンクリート、砕石および解体コンクリートガラのうち、少なくとも1つ以上で形成されている。
このような構成によれば、改良地盤により、土間コンクリートに作用する鉛直荷重を、既存耐圧板、または既存杭及び既存耐圧板に効率良く伝達することができる。特に、改良地盤を、解体コンクリートガラを再利用して形成することで、解体コンクリートガラの搬出、及び改良地盤を構成する建設材料の搬入が不要となる。これにより、作業の手間を抑え、短工期化が可能となる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の建替え用の建物床構造は、前記既存耐圧板上には長尺のコンクリート体が設けられ、当該コンクリート体上に前記土間コンクリートが設けられている。
このような構成によれば、土間コンクリートが、改良地盤と長尺のコンクリート体とを介して既存耐圧板、または既存杭及び既存耐圧板に支持される。これにより、土間コンクリート面に載置される重量物の荷重が、土間コンクリートの下面に接する改良地盤から存置されている既存地下躯体に伝達されるとともに、土間コンクリートから長尺のコンクリート体(例えば、連続束体、基礎梁)に伝達され、次に、その長尺のコンクリート体が設置される既存地下躯体(既存耐圧板、既存杭)に伝達されるために、高い地盤支持力が実現され、土間コンクリートの沈下を有効に抑止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既存地下躯体の一部を存置した状態で、その既存地下躯体上に改良地盤を設けるという、比較的簡単な施工により実現可能な構成によって、土間コンクリートの沈下を効果的に抑制することが可能な、建替え用の建物床構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
図2】本発明の第一実施形態の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
図3】本発明の第二実施形態における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
図4図3のB-B部分の断面図である。
図5】本発明の第二実施形態において、誘発目地が設けられた土間コンクリートを、コンクリート体がピン支持状態として支持する状態を模式的に示す図である。
図6】本発明の第二実施形態の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
図7】本発明のその他の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
図8】本発明の関連技術における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、建替え用の建物床構造として、既存地下躯体の一部を存置した状態で、既存地下躯体上に改良地盤を充填し、その改良地盤上に土間コンクリートを設けた。
第一実施形態は、既存耐圧板と既存杭を存置した状態で、その上部に改良地盤、土間コンクリートを設けた建物床構造である(図1、2)。第二実施形態は、既存耐圧板と既存杭を存置した状態で、既存耐圧板上に長尺のコンクリート体を設置し、そのコンクリート体と改良地盤で土間コンクリートを支持する建物床構造である(図3、4、5)。その他に、長尺のコンクリート体と土間コンクリートとの接合部分に設ける誘発目地構造、及び既存耐圧板と改良地盤、土間コンクリートで構成される建物床構造等がある。
以下、添付図面を参照して、本発明による建替え用の建物床構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0014】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図1(a)に示す。図1(b)は、図1(a)のA-A部分の断面図である。
図1に示される建物1は、既存の建物が建てられていた場所に、建て替えられて設けられたものである。既存の建物は、地盤G中に構築された既存耐圧板3および既存杭5を残し、それ以外が解体撤去されている。建て替えられた建物1の建物床2Aは、既存杭5と、既存耐圧板3と、土間コンクリート10と、改良地盤20と、を備えている。
既存杭5は、既存の建物の基礎の一部を構成していたもので、水平方向に間隔をあけて、複数本が設けられている。既存杭5は、上下方向に延び、地盤G中に埋設されている。既存杭5は、鋼管杭、コンクリート充填鋼管杭、コンクリート杭等からなる。本実施形態において、既存杭5は、下端が地盤G中の強固な支持層まで到達していてもよいし、下端が支持層よりも上方に位置していてもよい。
既存耐圧板3は、既存の建物の基礎の一部を構成していたもので、複数本の既存杭5上に支持されている。既存耐圧板3は、水平方向に延び、上下方向に所定の厚さを有した板状(盤状)で、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート等から形成されている。
【0015】
建物1の躯体を構成する新設柱7は、既存耐圧板3上に設けたフーチング9上に立設されている。新設杭7間には、基礎梁13が架設されている。
【0016】
土間コンクリート10は、既存耐圧板3に対して、上下方向に所定間隔をあけて設けられている。土間コンクリート10は、鉄筋コンクリート造で、上下方向に所定の厚さで形成されたコンクリート部11と、コンクリート部11中に埋設された床鉄筋12と、を備えている。土間コンクリート10は、新設の建物1において、最下階となる、地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる。
改良地盤20は、土間コンクリート10の下方に設けられている。改良地盤20は、土間コンクリート10と既存耐圧板3との間に、上下方向に所定の厚さで設けられている。このような改良地盤20は、地盤改良土21、砕石24、および解体コンクリートガラ22のうち、少なくとも1つ以上を用いて形成されている。地盤改良土21は、地盤Gの掘削土に、セメントミルク等のセメント系固化剤を例えば80kg/m程度混在させて攪拌したものである。ここで、解体コンクリートガラ22として、既存の建物を解体する際に生じたものを用いることができる。また、改良地盤20は、例えば、解体コンクリートガラ22の所定の厚さで設け、その上に、地盤改良土21を積層して設けるようにしてもよい。
【0017】
このような建物1の建物床2Aにおいては、上方からの鉛直荷重が土間コンクリート10に作用すると、その面圧P1が改良地盤20に作用する。改良地盤20は、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。また、改良地盤20から鉛直荷重が伝達される既存耐圧板3は、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。また、既存耐圧板3は、地盤Gと、複数本の既存杭5によって下方から支持され、面圧P2が地盤Gと各既存杭5に作用する。地盤Gは、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。また、各既存杭5は、その外周面と周囲の地盤Gとの間の摩擦力によって支持抵抗力F2を発揮する。このようにして、上方から土間コンクリート10に作用する鉛直荷重を、改良地盤20と、既存耐圧板3と、既存杭5とによって、強固に支持する。
【0018】
上述したような建替え用の建物床2Aの構造によれば、地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる土間コンクリート10と、土間コンクリート10の下方に設けられる改良地盤20と、改良地盤20の下方に埋設された既存杭5及び既存耐圧板3と、を備え、土間コンクリート10が、改良地盤20と、既存杭5及び既存耐圧板3とで支持されている。
このような構成によれば、土間コンクリート10の下方側に、改良地盤20と、強固な既存杭5及び既存耐圧板3とが設けられて、土間コンクリート10を支持する。これにより、改良地盤20、既存杭5及び既存耐圧板3によって、土間コンクリート10に作用する鉛直荷重に対し、高い地盤支持力を発揮し、土間コンクリート10の沈下を有効に抑止することができる。すなわち、土間コンクリート10のみで、土間コンクリート10に作用する鉛直荷重に抗する必要がなく、土間コンクリート10に加えて、改良地盤20、既存杭5および既存耐圧板3によって、鉛直荷重を支持することができる。
また、既存耐圧板3や既存杭5を流用した構成となっており、施工の際に、建替え前の地下躯体よりも深い地盤部分Gが採掘されないため、締め固められた地盤状態が維持されている。したがって、高い地盤支持力を発揮し、土間コンクリート10の沈下を抑止できる。
また、既存杭5及び既存耐圧板3を解体、撤去することなく、既存杭5及び既存耐圧板3を埋設させたまま、その上に改良地盤20、土間コンクリート10を設けることができる。このため、既存杭5及び既存耐圧板3の撤去作業、新たに土間コンクリート10を支持するための杭の施工等が不要となり、作業の手間を低減でき、短工期化が可能となる。
その結果、比較的簡単な施工により実現可能な構成によって、土間コンクリート10の沈下を効果的に抑制し、施工コストを低減可能な、建替え用の建物床2Aの構造を提供することが可能となる。
また、既存耐圧板3から上方に突出する構造物を改良地盤20中に埋設させ、その上に土間コンクリート10を設けることができる。したがって、上記のような構造物を隠蔽するとともに、床面積を広くすることができる。
【0019】
また、図1に示す改良地盤20は、地盤改良土21、砕石24、および解体コンクリートガラ22のうち、少なくとも1つ以上で形成されている。
このような構成によれば、改良地盤20により、土間コンクリート10に作用する鉛直荷重を、既存杭5及び既存耐圧板3に効率良く伝達することができる。改良地盤20を、建設発生土や解体コンクリートガラ22、砕石24を再利用して形成することで、建設発生土や解体コンクリートガラ22、砕石24の搬出、及び改良地盤20を構成する建設材料の搬入が不要となる。これにより、作業の手間を低減でき、短工期化が可能となる。
【0020】
(第一実施形態の変形例)
なお、本発明の建替え用の建物床構造は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第一実施形態では、改良地盤20として、地盤改良土21、および解体コンクリートガラ22、砕石24のうち、少なくとも1つ以上を用いて形成されているが、これに限らない。
本発明の第一実施形態の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図2に示す。
図2に示されるように、改良地盤20として、ラップルコンクリート23を用いるようにしてもよい。ラップルコンクリート23は、鉄筋を配筋せずに所定の厚さでコンクリートを打設した無筋コンクリートである。
【0021】
(第二実施形態)
次に、本発明の建替え用の建物床構造の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記第一実施形態と共通する構成については、図中に同一符号を付してその説明を省略する。
本発明の第二実施形態における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図3に示す。図3の、B-B部分の断面図を、図4に示す。本発明の第二実施形態において、誘発目地が設けられた土間コンクリートを、コンクリート体がピン支持状態として支持する状態を模式的に図5に示す。
図3図4に示される建物1は、既存の建物が建てられていた場所に、建て替えられて設けられたものである。既存の建物は、地盤G中に構築された既存耐圧板3および既存杭5を残し、それ以外が解体撤去されている。建て替えられた建物1の建物床2Bは、既存杭5と、既存耐圧板3と、土間コンクリート10Bと、改良地盤20と、コンクリート体40と、を備えている。
【0022】
コンクリート体40は、図3図4に示す既存耐圧板3上に、新設増打コンクリート部51、レベルコンクリート52を介して設けられている。新設増打コンクリート部51は、既存耐圧板3上に、所定の厚さで形成されている。新設増打コンクリート部51は、例えば鉄筋コンクリートから形成されている。レベルコンクリート52は、新設増打コンクリート部51上に設けられ、新設増打コンクリート部51の表面の不陸を均すとともに、コンクリート体40の高さを調整する。
コンクリート体40は、既存耐圧板3上で、水平方向に沿って連続する長尺に形成されている。コンクリート体40は、レベルコンクリート52上に設けられている。コンクリート体40は、プレキャストコンクリート、現場打ち鉄筋コンクリート等から形成されている。コンクリート体40上に、上記土間コンクリート10Bが設けられている。コンクリート体40には、鉄筋45が上方に突出して設けられ、土間コンクリート10Bとの位置決めを図っている。コンクリート体40と土間コンクリート10Bとは、位置決め用の鉄筋45のみを介して接合されており、剛接合はなされていない。
また、既存耐圧板3上の新設増打コンクリート部51と、土間コンクリート10Bとの間において、コンクリート体40以外の部分には、改良地盤20が設けられている。改良地盤20は、地盤改良土21、解体コンクリートガラ22、ラップルコンクリート23、砕石24のうち、少なくとも1つ以上を用いて形成されている。
【0023】
建物1の躯体を構成する新設柱7は、地盤G中に構築した新設杭8上に設けたフーチング9上に立設されている。新設杭8は、既存耐圧板3、および新設増打コンクリート部51に形成された貫通孔3h、51hの内側に設けられている。また、フーチング9は、貫通孔51hの外周部において、新設増打コンクリート部51上に支持されている。貫通孔51hと新設杭8の頭部との間には、埋め戻し土53が充填され、新設杭8と新設増打コンクリート部51とが分離されている。
【0024】
また、本実施形態において、土間コンクリート10Bには、所定の区画範囲ごとに、誘発目地35が形成されている。誘発目地35は、例えば土間コンクリート10Bの表面に対してカッター等により形成された、凹型断面形状の溝36である。この誘発目地35は、後述するように、土間コンクリート10Bを形成するコンクリート部11が乾燥し収縮した際に生じ得るヒビ割れを誘発させて集中させ、ヒビ割れの分散を抑制するためのものである。誘発目地35の一部下方にはコンクリート体40が設けられている。誘発目地35は、コンクリート体40の幅方向中央部に配置するのが好ましい。
【0025】
このような建物1の建物床2Bにおいては、図3に示すように上方からの鉛直荷重が土間コンクリート10Bに作用すると、その面圧P3が改良地盤20とコンクリート体40とに作用する。コンクリート体40は、土間コンクリート10Bに作用する鉛直荷重(面圧P3)を、下方の新設増打コンクリート部51、既存耐圧板3および既存杭5に伝達する。改良地盤20は、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。また、改良地盤20およびコンクリート体40から鉛直荷重が伝達される新設増打コンクリート部51、既存耐圧板3は、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。既存耐圧板3は、地盤Gと、複数本の既存杭5によって下方から支持され、面圧P4が地盤Gと各既存杭5に作用する。地盤Gは、その平面積に応じた支持抵抗力を発揮する。また、既存耐圧板3を支持する各既存杭5は、その外周面と周囲の地盤Gとの間の摩擦力によって支持抵抗力F4を発揮する。このようにして、上方から土間コンクリート10Bに作用する鉛直荷重を、改良地盤20およびコンクリート体40と、新設増打コンクリート部51と、既存耐圧板3と、既存杭5とによって、強固に支持する。
また、新設柱7に作用する鉛直荷重は、その一部がフーチング9を介して新設増打コンクリート部51に伝達される。新設増打コンクリート部51に伝達された鉛直荷重は、既存耐圧板3および既存杭5により、強固に支持される。新設柱7に作用する鉛直荷重の残部は、新設杭8の外周面と周囲の地盤Gとの間の摩擦による支持抵抗力により、支持される。
さらに、土間コンクリート10Bの所定の区画範囲ごとに誘発目地35が設けられ、その一部下方にコンクリート体40が設けられることで、土間コンクリート10Bにヒビが発生するときには、ヒビが誘発目地35の部分に誘発されるようにする。図5に示されるように、誘発目地35にヒビが誘発されると、土間コンクリート10Bは、誘発目地35によって囲まれる所定の区画範囲ごとに、その外周部がコンクリート体40によってピン支持されるような状態となる。
【0026】
上述したような建替え用の建物床2Bの構造によれば、地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる土間コンクリート10Bと、土間コンクリート10Bの下方に設けられる改良地盤20と、改良地盤20の下方に埋設された既存杭5及び既存耐圧板3と、を備え、土間コンクリート10Bが、改良地盤20と、既存杭5及び既存耐圧板3とで支持されている。
このような構成によれば、上記第一実施形態と同様、比較的簡単な施工により実現可能な構成によって、土間コンクリート10Bの沈下を効果的に抑制し、施工コストを低減可能な、建替え用の建物床2Bの構造を提供することが可能となる。
【0027】
また、既存耐圧板3上には長尺のコンクリート体40が設けられ、コンクリート体40上に土間コンクリート10Bが設けられている。
このような構成によれば、土間コンクリート10Bの下方側に、改良地盤20と、コンクリート体40と、強固な既存杭5及び既存耐圧板3とが設けられて、土間コンクリート10Bを支持する。すなわち、土間コンクリート10Bのみで、土間コンクリート10Bに作用する鉛直荷重に抗する必要がなく、土間コンクリート10Bに加えて、改良地盤20、コンクリート体40、既存杭5および既存耐圧板3によって、鉛直荷重を支持することができる。これにより、改良地盤20、コンクリート体40、既存杭5及び既存耐圧板3によって、土間コンクリート10Bに作用する鉛直荷重に対し、高い地盤支持力を発揮し、土間コンクリート10Bの沈下を有効に抑止することができる。
【0028】
また、土間コンクリート10Bには、所定の区画範囲ごとに凹型断面形状の溝36が誘発目地35として設けられており、誘発目地35の一部下方にはコンクリート体40が設けられている。
このような構成によれば、土間コンクリート10Bを形成するコンクリート部11が乾燥し収縮した際に生じ得るヒビ割れを誘発目地35に誘発、集中させることで、土間コンクリート10Bの表面に生じるひび割れの発生を抑制することができる。また、土間コンクリート10Bの下面にコンクリート体40が配置されていることで、土間コンクリート10Bをコンクリート体40がピン支持状態として支持するために、土間コンクリート10Bの沈下を抑止することができる。
【0029】
(第二実施形態の変形例)
上記第二実施形態では、土間コンクリート10Bの所定の区画範囲ごとに設けた誘発目地35として、凹型断面形状の溝36を形成するようにしたが、これに限らない。
本発明の第二実施形態の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図6に示す。
例えば、図6に示されるように、本変形例においては、誘発目地として、ダボ鉄筋37が設けられた打継目地35Cが形成されている。すなわち、土間コンクリート10Cを施工する際に、所定の区画範囲ごとに、土間コンクリート10Cを構成する現場打コンクリート10cの打継ぎ部が設けられる。打継目地35Cは、この打継ぎ部に形成されている。ダボ鉄筋37は、基端部37aが、先行して打設した現場打コンクリート10c1に埋設され、先端部37bが、後から打設する現場打コンクリート10c2に埋設されている。ダボ鉄筋37の先端部37b側には、その外周面に、現場打コンクリート10cに付着しないよう、塗装、または筒状のスリーブ39を設けることで、非付着区間が形成されている。
このような構成では、土間コンクリート10Cにヒビが発生するときには、打継目地35Cの現場打コンクリート10c1、10c2の打継ぎ面に沿ってヒビが誘発される。ダボ鉄筋37は、先端部37b側が、塗装またはスリーブ39によって、現場打コンクリート10c2に非付着とされているので、打継目地35Cにヒビを誘発するのを阻害しないようになっている。打継目地35Cにヒビが誘発されると、土間コンクリート10Cは、打継目地35Cによって囲まれる所定の区画範囲ごとに、その外周部がコンクリート体40によってピン支持されるような状態となる。
【0030】
上述したように、第二実施形態の変形例における土間コンクリート10Cには、所定の区画範囲ごとに非付着区間を有するダボ鉄筋37が打継目地35Cとして設けられており、打継目地35Cの一部下方にはコンクリート体40が設けられている。
このような構成によれば、土間コンクリート10Cを形成するコンクリート部11が乾燥し収縮した際に生じ得るヒビ割れを打継目地35Cに誘発、集中させることで、土間コンクリート10Cの表面に生じるひび割れの発生を抑制することができる。また、土間コンクリート10Cの下端面にコンクリート体40が配置されていることで、コンクリート体40が土間コンクリート10Cをピン支持状態として支持するために、土間コンクリート10Cの沈下を抑止することができる。
【0031】
(具体例)
上記第一、第二実施形態およびそれらの変形例では、土間コンクリート10、10B、10Cとして、具体的に、以下のいずれかの仕様とすることが好ましい。
「仕様I」
設計基準強度 :30N/mm以上
単位水量 :175kg/m以下
単位セメント量:300kg/m以上
スランプ :12cm以下
空気量 :4.5%
セメント種類 :普通ポルトランドセメントを原則とする。
コンクリート厚:180mm以上
配筋 :上側)D13-@200以下
下側)D13-@200以下
【0032】
「仕様II」
設計基準強度 :21N/mm以上
単位水量 :175kg/m以下
単位セメント量:280kg/m以上
スランプ :12cm以下
空気量 :4.5%
セメント種類 :普通ポルトランドセメントを原則とする。
コンクリート厚:180mm以上
配筋 :上側)D13+D10-@200以下
下側)D10-@200以下
【0033】
「仕様III」
設計基準強度 :18N/mm以上
単位水量 :185kg/m以下
単位セメント量:280kg/m以上
スランプ :12cm以下
空気量 :4.5%
セメント種類 :普通ポルトランドセメントを原則とする。
コンクリート厚:150mm以上
配筋 :上側)D13+D10-@200以下
【0034】
(その他の変形例)
上記第一、第二実施形態およびそれらの変形例では、既存耐圧板3を既存杭5で支持するようにしたが、これに限らない。
本発明のその他の変形例における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図7に示す。
例えば、図7に示されるように、既存耐圧板3のみを備えるようにしてもよい。すなわち、建て替えられた建物1は既存杭5を備えず、土間コンクリート10、10B、10Cが、改良地盤20と既存耐圧板3とで支持されていてもよい。
また、上記第二実施形態では、既存耐圧板3上に、新設増打コンクリート部51を設けるようにしたが、新設増打コンクリート部51を省略した構成とすることも可能である。
また、上記第一実施形態においては、改良地盤20は、地盤改良土21、砕石24、および解体コンクリートガラ22のうち、少なくとも1つ以上を用いて形成されていた。また、上記第一実施形態の変形例では、改良地盤20として、ラップルコンクリート23が用いられていた。これらに限られず、改良地盤20として、例えばラップルコンクリート23と組み合わせて、地盤改良土21、砕石24、および解体コンクリートガラ22を、例えばこれらを積層させて使用するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0035】
(関連技術)
次に、本発明の関連技術について説明する。
上記実施形態のような建替え用の建物床構造に関して、次のような特徴を備えた鉛直部材と水平部材の接合構造が考えられる。
本発明の関連技術における建替え用の建物床構造の構成を示す断面図を図8(a)に示す。図8(a)のC-C部分の断面を図8(b)に示す。
すなわち、図8に示されるように、建替え用の建物1の建物床2Eの構造によれば、地表面付近の地上1階、または地下階に設けられる土間コンクリート10と、土間コンクリート10の下方に設けられる改良地盤20と、改良地盤20の下方に設けられた解体コンクリートガラからなる支持層60と、支持層60上に設けられた長尺のコンクリート体40と、を備え、土間コンクリート10が、改良地盤20およびコンクリート体40と、解体コンクリートガラからなる支持層60とで支持されている。
【符号の説明】
【0036】
2A、2B、2E 建物床 23 ラップルコンクリート
3 既存耐圧板 24 砕石
5 既存杭 35 誘発目地
10、10B、10C 土間コンクリート 40 コンクリート体
20 改良地盤 G 地盤
21 地盤改良土 P1 面圧
22 解体コンクリートガラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8