(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220825BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B60H1/00 102S
B60H1/34 611Z
B60H1/00 102P
(21)【出願番号】P 2018181682
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角 省吾
(72)【発明者】
【氏名】野口 純弘
(72)【発明者】
【氏名】足立 太
(72)【発明者】
【氏名】水島 涼
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074413(JP,A)
【文献】特開2018-140713(JP,A)
【文献】特開平04-228318(JP,A)
【文献】特開昭60-151113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室(I)の天井部(R)に配置され、前記車室の内部の空気が吸い込まれる吸込口(16)を有する空調ケース(10)と、
前記空調ケースの内部に収容され、前記空調ケースの内部の空気を送風する送風機(20)と、
上下方向が短い扁平状に形成されると共に、予め定められた第1方向に伸び、前記送風機で送風された送風空気が通過する吹出通路(46)を備え、前記吹出通路を通過した前記送風空気を前記車室の内部へ吹き出す吹出口部(45)と、を有し、
前記吹出通路は、
当該吹出通路の上側を構成すると共に、前記吹出通路を通過する前記送風空気の流れ方向下流側ほど下方に位置するように傾斜して伸びる上側壁部(47)と、
前記上側壁部の下方にて間隔をあけて配置され、前記送風空気の流れ方向下流側ほど下方に位置するように伸びる下側壁部(48)と、を有し、
前記上側壁部の下端部が前記下側壁部の下端部に水平方向に並ぶように形成され、
前記上側壁部は、当該上側壁部の下方側が前記下側壁部によって覆われた被覆部(47a)と、前記被覆部の下方にて、当該上側壁部の下方側が露出した露出部(47b)と、を有しており、
前記吹出通路の内部には、前記第1方向に交差する第2方向へ回動することで、前記吹出口部から送風される送風空気の流れを前記第2方向へ調整するガイド部材(50)が配置され、
前記ガイド部材は、前記上側壁部における前記露出部に臨む位置において、前記第2方向への回動操作に用いられる操作部(52)を
有すると共に、前記上側壁部における前記露出部に配置された支持部(55)によって、前記第2方向へ回動可能に支持されており、
前記支持部は、前記ガイド部材の全体に対して前記操作部の側に偏った位置にて、前記ガイド部材を支持している車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の天井部に配置され、車室内の空調に用いられる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置として、車両の天井に配置され、送風空気を天井から車室内へ供給するように構成されたものが知られている。このような車両用空調装置に関する技術として、特許文献1に記載された発明が知られている。
【0003】
特許文献1の車両用空調装置は、天井部に配置されており、ファンの作動によって取り込んだ空気をエバポレータで冷却して、天井部側から車室内に送風するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では、車両における居住空間を大きく確保することが望まれている。この要望に対応する為、特許文献1に記載されているような車両用空調装置では、その上下方向のサイズをできるだけ小さくする必要が生じている。居住空間の確保に関する要望に対応すると、車両用空調装置における吹出口の上下方向の寸法が小さくなることが想定される。
【0006】
又、乗員の快適性を向上させる上では、吹出口の上下方向の寸法が小さくなった場合でも、車両用空調装置として送風空気を車室における所望の場所に送風できることが望ましい。
【0007】
例えば、特許文献1に記載された車両用空調装置では、吹出口の内部に、複数の吹出ルーバ(ガイド部材)が回動可能に配置されており、車両の左右方向へ回動させることで、送風空気の流れを左右方向における任意の向きに調整するように構成されている。この為、吹出口の上下方向の寸法を小さくした場合であっても、送風空気の風向きの調整に関する操作性を高くしておく必要がある。
【0008】
本発明は、これらの点に鑑みてなされており、車両の天井部に配置される車両用空調装置に関し、車両の居住空間を確保しつつ、風向き調整に関する操作性の向上を図ることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の車両用空調装置は、
車室(I)の天井部(R)に配置され、車室の内部の空気が吸い込まれる吸込口(16)を有する空調ケース(10)と、
空調ケースの内部に収容され、空調ケースの内部の空気を送風する送風機(20)と、
上下方向が短い扁平状に形成されると共に、予め定められた第1方向に伸び、送風機で送風された送風空気が通過する吹出通路(46)を備え、吹出通路を通過した送風空気を車室の内部へ吹き出す吹出口部(45)と、を有し、
吹出通路は、
当該吹出通路の上側を構成すると共に、吹出通路を通過する送風空気の流れ方向下流側ほど下方に位置するように傾斜して伸びる上側壁部(47)と、
上側壁部の下方にて間隔をあけて配置され、送風空気の流れ方向下流側ほど下方に位置するように伸びる下側壁部(48)と、を有し、
上側壁部の下端部が下側壁部の下端部に水平方向に並ぶように形成され、
上側壁部は、当該上側壁部の下方側が下側壁部によって覆われた被覆部(47a)と、被覆部の下方にて、当該上側壁部の下方側が露出した露出部(47b)と、を有しており、
吹出通路の内部には、第1方向に交差する第2方向へ回動することで、吹出口部から送風される送風空気の流れを第2方向へ調整するガイド部材(50)が配置され、
ガイド部材は、上側壁部における前記露出部に臨む位置において、第2方向への回動操作に用いられる操作部(52)を有すると共に、前記上側壁部における前記露出部に配置された支持部(55)によって、前記第2方向へ回動可能に支持されており、
前記支持部は、前記ガイド部材の全体に対して前記操作部の側に偏った位置にて、前記ガイド部材を支持している。
【0010】
当該車両用空調装置によれば、車室の天井部に配置された空調ケースの内部にて送風機を作動させることで、吸込口から吸い込んだ空気を、吹出口部から車室の内部へ吹き出すことができ、車室の内部の快適性を向上させることができる。
【0011】
又、車両用空調装置によれば、吹出口部を上下方向が短い扁平状に形成している為、装置全体としての上下方向のサイズを小型化することができ、車室における居住空間を広く確保することができる。
【0012】
当該車両用空調装置には、上下方向が短い扁平状に形成された吹出口部の吹出通路の内部に、ガイド部材が第2方向へ回動可能に配置されている。この為、当該車両用空調装置は、上下方向が短い扁平状に形成された吹出口部の場合においても、吹出口部から吹き出される送風空気の流れを第2方向へ調整することができ、第2方向に関して乗員の望む送風態様を実現することができる。
【0013】
そして、当該車両用空調装置において、ガイド部材の操作部は、上側壁部における露出部に臨む位置に配置されている。この為、当該車両用空調装置によれば、吹出口部を上下方向が短い扁平状に形成した場合であっても、車室の乗員が下方からガイド部材の操作部に、容易にアクセスすることができる。
【0014】
これにより、当該車両用空調装置は、第2方向に対するガイド部材の操作性を向上させることができ、車室の内部における第2方向に関する風向き調整を精度よく実行することができる。
【0015】
又、当該車両用空調装置において、ガイド部材の操作部は、上側壁部及び下側壁部の下端より上方で、上側壁部における露出部の下方というデッドスペースを有効に活用して配置される。この為、当該車両用空調装置によれば、ガイド部材の操作部の観点においても、上下方向に関する小型化に貢献することができる。
【0016】
尚、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る車両用空調装置の上面図である。
【
図2】一実施形態に係る車両用空調装置の車両搭載位置を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係る車両用空調装置の正面図である。
【
図4】一実施形態に係る車両用空調装置の側面図である。
【
図5】一実施形態に係る車両用空調装置の下面図である。
【
図6】車両用空調装置の内部における送風空気の流れを示す平面断面図である。
【
図7】
図1におけるVII-VII断面を示す断面図である。
【
図8】車両用空調装置におけるフラップの外観斜視図である。
【
図9】
図1におけるIX-IX断面を示す断面図である。
【
図10】車両用空調装置における吹出口部を拡大した断面図である。
【
図11】車両用空調装置の右側部分に配置されたガイド部材の回動範囲を示す説明図である。
【
図12】車両用空調装置の左側部分に配置されたガイド部材の回動範囲を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
先ず、本実施形態に係る車両用空調装置の概略構成について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明で前後左右上下の方向を用いて説明するときは、シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとする。そして、各図に適宜示す矢印についても同様の定義を用いており、車両幅方向とは左右方向に相当している。
【0020】
先ず、本実施形態に係る車両用空調装置1の概要について説明する。当該車両用空調装置1は、
図1、
図2に示すように、車両Cの車室I内を快適な空調環境にする為に、車室Iの天井部Rに配置されており、空調ケース10内部に送風機20や蒸発器70等を収容して構成されている。
【0021】
当該車両用空調装置1の空調ケース10には、吸込口16及び吹出口部45が配置されており、それぞれ車室Iの内部と連通している。従って、当該車両用空調装置1は、送風機20の作動によって、吸込口16から車室I内の空気を空調ケース10内部に吸い込み、蒸発器70によって温度調整された送風空気Fとして、吹出口部45から車室Iへ供給することができる。
【0022】
本実施形態に係る車両用空調装置1は、
図2に示すように、三列シートの所謂ミニバンタイプの車両Cに搭載されている。当該車両Cの車室Iには、一列目シートSa、二列目シートSb及び三列目シートScが、車両前方から後方に向かってこの順番で配置されている。
【0023】
当該車両Cにおいて、一列目シートSaは、運転席及び助手席として構成されている。そして、二列目シートSb及び三列目シートScは、例えば、複数の乗員が着座可能なベンチタイプのシートによって構成されている。
【0024】
三列目シートScは、車両Cの後輪に係る配置スペースとの関係上、二列目シートSbよりも車両幅方向の中央側に寄った配置とされている。この為、車両左右方向に関して、二列目シートSbにおける着座位置の間に、三列目シートScの着座位置が位置するように配置される。
【0025】
図2に示すように、車両用空調装置1は、車室Iの天井部Rにおいて、一列目シートSaの後方且つ二列目シートSbの前方に配置されており、車両幅方向における中央部分に位置している。当該車両用空調装置1は、二列目シートSb、三列目シートScの近くに配置された操作パネルの操作に従って作動し、車室Iにおける二列目シートSb、三列目シートSc側の空調を行うように構成されている。
【0026】
当該車両用空調装置1は、主に、二列目シートSbや三列目シートScに着座した乗員Pによって操作され、当該車室I後側の乗員Pの快適性を向上させる為に用いられる。つまり、二列目シートSb、三列目シートScの乗員は、運転席や助手席の乗員Pを介さずに、当該車両用空調装置1の空調運転を行うことができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、
図1~
図5を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用空調装置1の上面図を示し、
図3は、車両用空調装置1の正面図を示している。
図4は、車両用空調装置1の側面図を示しており、
図5は、車両用空調装置1の下面図を示している。
【0028】
上述したように、当該車両用空調装置1は、車両Cの天井部Rに配置される空調ケース10内部に、送風機20と、蒸気圧縮式の冷凍サイクルの一部を構成する蒸発器70とを収容して構成されている。
【0029】
図1、
図3~
図5に示すように、当該空調ケース10は、車両用空調装置1における上側の外殻を構成する上部ケース11と、車両用空調装置1における下側の外殻を構成する下部ケース13とによって構成されている。上部ケース11と下部ケース13は、ネジ等によって組み付けられている。
【0030】
上部ケース11には、複数の上側固定部12が左右対称に形成されている。当該上側固定部12は、車両Cの天井部Rにおける上方側車体部材に対して、空調ケース10を固定する際に用いられる。
【0031】
図1等に示すように、空調ケース10の車両幅方向中央部分には、ファン収容部15が配置されている。ファン収容部15は、当該空調ケース10における車両後方側部分を構成しており、その内部に送風機20を収容している。又、
図5に示すように、ファン収容部15の下面には、吸込口16が形成されており、空調ケース10及びファン収容部15の内部と車室I内とを連通している。
【0032】
送風機20は、ファン収容部15内部において吸込口16に対向するように配置されており、吸込口16から車室I内の空気を吸い込み、送風空気Fとして空調ケース10内部へ送風する。
【0033】
送風機20は、天井部Rにおける車体部材(例えば、ルーフリインフォースメント)に対して固定されることで、ファン収容部15内部に配置されている。当該送風機20は、遠心多翼ファン(即ち、シロッコファン)を電動モータ21にて駆動する電動送風機である。遠心多翼ファンは略円筒形を為しており、径方向外側に多数の羽根を有している。
【0034】
図3~
図5に示すように、電動モータ21は、送風機20の下部を構成しており、車両上下方向に沿って伸びる駆動軸を有している。遠心多翼ファンは電動モータ21の駆動軸に固定されている。
【0035】
この為、送風機20は、電動モータ21を作動させることで、吸込口16を介して遠心多翼ファンの軸芯部に吸い込んだ空気を径方向外側へ吹き出させることができる。送風機20における遠心多翼ファンの回転数(送風量)は、図示しない空調制御装置から出力される制御電圧によって制御される。
【0036】
図1等に示すように、ファン収容部15における車両前方側には、送風口25が形成されている。当該送風口25は、送風機20の作動によって、吸込口16から吸い込まれた空気が送風空気Fとして送風される際にファン収容部15から吹き出される部分である。当該送風口25は、空調ケース10内を流れる送風空気Fを供給する為の部分である。
【0037】
そして、当該車両用空調装置1は、ファン収容部15に加えて、第1空気通路30と、第2空気通路35と、第3空気通路40とを有している。第1空気通路30、第2空気通路35、第3空気通路40は、それぞれ、送風口25を介して送風された送風空気Fの流路として機能する。
【0038】
第1空気通路30は、車両用空調装置1の空調ケース10内部において、ファン収容部15に形成された送風口25から車両前方側に伸びるように形成されている。従って、送風口25から送風された送風空気Fは、第1空気通路30内部を車両前側に流れる。
【0039】
尚、空調ケース10内部の車両前方側には、リブ31が配置されている。
図6、
図7等に示すように、リブ31の上端は、空調ケース10における車両上側の内面から所定の距離だけ離れた位置に位置しており、車両左右方向に伸びている。
【0040】
従って、第1空気通路30を流れた送風空気Fは、空調ケース10の内部においてリブ31の上方を通過する。つまり、本実施形態に係る第1空気通路30は、ファン収容部15の送風口25から車両前方側へリブ31まで伸びた空気通路として定義できる。
【0041】
図1等に示すように、当該車両用空調装置1は、空調ケース10における第1空気通路30内部に蒸発器70を有している。当該蒸発器70は、冷媒配管接続部71を介して、蒸気圧縮式の冷凍サイクルに接続されており、冷媒が流れるチューブ72と、チューブ72に接合された複数枚のプレートフィン73を有している。
【0042】
図示は省略するが、蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、蒸発器70に加えて、圧縮機と、凝縮器と、減圧部(例えば、膨張弁やキャピラリチューブ等)とを有しており、これらを冷媒配管で接続して構成されている。従って、当該冷凍サイクルでは、圧縮機によって冷媒を高温高圧状態に圧縮して凝縮器において放熱させた後、この冷媒を減圧部で減圧させて蒸発器70内に流入させる。
【0043】
これにより、蒸発器70は、第1空気通路30を流れる送風空気Fとチューブ72内を流れる冷媒との間における熱交換によって、送風空気Fから吸熱して冷却することができる。即ち、蒸発器70は、当該車両用空調装置1における冷却用熱交換器として機能し、本発明における熱交換器に相当する。
【0044】
そして、蒸発器70におけるチューブ72は、第1空気通路30を車両幅方向に横断するように直線状に伸びる複数の直管部分の端部を、略U字状を為すU字管で接続して構成されている。従って、当該チューブ72は、第1空気通路30内を車両幅方向に従って蛇行するように配置される。そして、チューブ72の端部は、冷媒配管接続部71に接続されている為、チューブ72の内部には、冷媒配管接続部71を介して、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒が流出入する。
【0045】
当該蒸発器70において、チューブ72の直管部分は、車両前後方向に複数配置され、車両上下方向には、車両前後方向よりも少ない複数配置されている。即ち、各チューブ72の直管部分の間には、車両前後方向及び車両上下方向にそれぞれ所定の間隔が形成されている。従って、第1空気通路30を流れる送風空気Fは、蒸発器70を通過する際に、チューブ72の間を通過して、チューブ72内部を流れる冷媒との熱交換が行われる。
【0046】
複数枚のプレートフィン73は、熱伝導性の良い材料でプレート状に形成されており、
図1に示すように、車両幅方向に間隔をあけてチューブ72の直管部分に対して接合されている。従って、チューブ72内部を流れる冷媒は、チューブ72の管壁に加えてプレートフィン73を介して、第1空気通路30を流れる送風空気Fから吸熱できる。
【0047】
尚、この冷凍サイクルで用いられる冷媒としては、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。
【0048】
そして、空調ケース10内部における車両前方側には、第2空気通路35が形成されている。
図1等に示すように、第2空気通路35は、空調ケース10における車両前側の壁面とリブ31の間の空間によって構成されている。即ち、第2空気通路35は、車両幅方向中央部分を車両前方に伸びる第1空気通路30の端部から、それぞれ車両幅方向(即ち、車両右方向及び左方向に)に伸びている。
【0049】
第2空気通路35の車両前側の部位は、空調ケース10における車両前側の壁面によって閉塞されている。従って、当該車両用空調装置1では、第1空気通路30を通過した送風空気Fは、第2空気通路35内に流入すると、第2空気通路35の車両前側の壁面にあたる。
【0050】
第2空気通路35の内部には、風量分配リブ36が配置されている。風量分配リブ36は、車両幅方向に関する送風口25の中央部分の前方に位置している。当該風量分配リブ36の水平断面は略二等辺三角形状を為している。そして、風量分配リブ36は、二等辺三角形の頂点が第1空気通路30側に位置するように配置される。
【0051】
この為、風量分配リブ36は、当該風量分配リブ36の頂点及び側面によって、第1空気通路30から流出した送風空気の流れを2つに分配する機能と、分配した送風空気の流れを、第2空気通路35を車両右側へ流れる流れと第2空気通路35を車両左側へ流れる流れとに、流れの向きをそれぞれ変更する機能を果たす。
【0052】
そして、空調ケース10における車両前側の壁面は車両幅方向に伸びている為、風量分配リブ36にて分配された送風空気Fは、この壁面に従って車両右方向、車両左方向へと案内される。つまり、第2空気通路35に流入すると、当該送風空気Fは、風量分配リブ36にて分配された後、第2空気通路35に従って車両右方向、車両左方向へと流れる。
【0053】
尚、空調ケース10における車両前側の壁面は、
図7等に示すように、上部ケース11の車両前側の壁面と、下部ケース13の車両前側の壁面によって構成されている。上部ケース11の車両前側の壁面と、下部ケース13の車両前側の壁面は、凹凸嵌合構造によって嵌め合わされている。
【0054】
この構造を採用することで、空調ケース10における車両前側の壁面は、空調ケース10の外部に対する気密性を担保している。第2空気通路35は、当該第2空気通路35に流入した送風空気Fを空調ケース10の外部に漏出させることなく、第3空気通路40へ案内することができる。
【0055】
空調ケース10内部における車両幅方向両側には、夫々、第3空気通路40が形成されており、車両後方側に向かって伸びている。つまり、各第3空気通路40は、空調ケース10における第1空気通路30及び蒸発器70に対して、車両左右側方の位置に形成されている。車両前後方向は第1方向に相当しており、特に車両後方側は第1方向一方側に相当する。
【0056】
図1に示すように、車両右側における第3空気通路40の内部には、分配部材41が配置されている。当該分配部材41は、第2空気通路35から車両右側の第3空気通路40に流入した送風空気Fを2つの流れに分配する。つまり、車両右側の第3空気通路40は、分配部材41によって、車両幅方向外側に位置する第3空気通路40aと、車両幅方向内側位置する第3空気通路40bに区分けされる。
【0057】
又、車両左側における第3空気通路40の内部においても、分配部材41が配置されている。当該分配部材41は、第2空気通路35から車両左側の第3空気通路40に流入した送風空気Fを2つの流れに分配する。つまり、車両左側の第3空気通路40は、車両幅方向内側位置する第3空気通路40cと、車両幅方向外側に位置する第3空気通路40dに区分けされる。尚、以下の説明において、第3空気通路40を、第3空気通路40a~第3空気通路40dの総称として取り扱う。
【0058】
そして、各第3空気通路40は、空調ケース10の車幅方向両側において、それぞれ第2空気通路35に接続されている為、第2空気通路35を通過した送風空気Fを車両後方側へ導くことができる。つまり、第2空気通路35は、車両前方に向かって第1空気通路30を通過した送風空気Fの流れの向きを、水平方向に180°転換させることができ、第3空気通路40内を車両後方側へ導くことができる。
【0059】
そして、第3空気通路40は、空調ケース10の車両幅方向両側にて、車両後方部分に形成された吹出口部45まで伸びている。第3空気通路40aにおける車両後方部分には吹出口部45aが配置されており、第3空気通路40bの車両後方部分には、吹出口部45bが配置されている。又、第3空気通路40cの車両後方部分には、吹出口部45cが配置されており、第3空気通路40dの車両後方部分には、吹出口部45dが配置されている。吹出口部45は、吹出口部45a~吹出口部45dの総称とする。
【0060】
各吹出口部45は、空調ケース10の車両後方側において、下部ケース13を開口して形成されており、空調ケース10における第3空気通路40内部と車室I内部とを連通している。従って、第3空気通路40を流れた送風空気Fは、各吹出口部45を介して、空調ケース10内部から車両後方側へ向かって車室I内に吹き出される。吹出口部45の具体的な構成については、後に図面を参照しつつ説明する。
【0061】
続いて、上述した車両用空調装置1における送風空気Fの流れについて、
図6を参照しつつ詳細に説明する。当該車両用空調装置1による空調運転が開始されると、冷凍サイクルにおける圧縮機の作動と共に、送風機20の電動モータ21の作動が開始される。
【0062】
これにより、送風機20の作動が開始され、車両用空調装置1におけるファン収容部15の吸込口16を介して、車室I内の空気が空調ケース10内に吸い込まれる。
【0063】
図6に示すように、吸込口16から吸い込まれた空気は、送風機20の作動に伴って、ファン収容部15の車両前方側に形成された送風口25から、送風空気Fとして、第1空気通路30内に吹き出される。
【0064】
第1空気通路30内に流入した送風空気Fは、蒸発器70におけるチューブ72及びプレートフィン73の間を通過して、第1空気通路30内を車両前方側に流れていく。この時、送風空気Fは、蒸発器70にて冷媒との間で熱交換を行って冷却される。
【0065】
そして、第1空気通路30内の蒸発器70を通過した送風空気Fは、空調ケース10の車両前方側に配置されたリブ31の上方を通過して第2空気通路35内に流入する。
図6に示すように、第2空気通路35に流入した送風空気Fは、風量分配リブ36によって、第2空気通路35を車両右側へ流れる送風空気Fと、第2空気通路35を車両左側へ流れる送風空気Fとに分配される。
【0066】
図6に示すように、風量分配リブ36は、送風口25の車両幅方向における中央部分に対向するように配置されている為、第2空気通路35を車両右側へ流れる送風空気Fの風量と、第2空気通路35を車両左側へ流れる送風空気Fの風量が均等になるように分配することができる。
【0067】
第2空気通路35内を車両右方向へ分配された送風空気Fは、第2空気通路35の前側壁面に沿って車両右側へ流れ、空調ケース10の車両右側に配置された第3空気通路40内に流れ込む。一方、第2空気通路35内を車両左方向へ分配された送風空気Fは、第2空気通路35の前側壁面に沿って車両右側へ流れ、空調ケース10の車両左側に配置された第3空気通路40内に流れ込む。
【0068】
車両右側における第3空気通路40に流入すると、送風空気Fは、分配部材41によって、第3空気通路40aを流れる送風空気Fと、第3空気通路40bを流れる送風空気Fの2つの流れに分配される。
【0069】
第3空気通路40aを車両後方側へ流れた送風空気Fは、吹出口部45aから車室Iの内部へ吹き出される。そして、第3空気通路40bを車両後方側へ流れた送風空気Fは、吹出口部45bから車室Iの内部へ吹き出される。
【0070】
上述したように、本実施形態に係る車両Cにおいて、三列目シートScは、車両Cの後輪に係る配置スペースとの関係上、二列目シートSbよりも車両幅方向の中央側に寄った配置とされている。この為、吹出口部45aから吹き出される送風空気Fは、二列目シートSbの車両右側に到達しやすく、吹出口部45bから吹き出される送風空気Fは、三列目シートScの車両右側に到達しやすくなっている。
【0071】
一方、車両左側における第3空気通路40に流入すると、送風空気Fは、分配部材41によって、第3空気通路40cを流れる送風空気Fと、第3空気通路40dを流れる送風空気Fの2つの流れに分配される。
【0072】
第3空気通路40cを車両後方側へ流れた送風空気Fは、吹出口部45cから車室Iの内部へ吹き出される。そして、第3空気通路40dを車両後方側へ流れた送風空気Fは、吹出口部45dから車室Iの内部へ吹き出される。
【0073】
二列目シートSb、三列目シートScの配置によって、吹出口部45cから吹き出される送風空気Fは、三列目シートScの車両左側に到達しやすく、吹出口部45dから吹き出される送風空気Fは、二列目シートSbの車両左側に到達しやすくなっている。
【0074】
これにより、当該車両用空調装置1によれば、蒸発器70における熱交換によって温度調整された送風空気Fを、各吹出口部45から供給することができるので、車室I内の快適性を向上させることができる。
【0075】
次に、当該車両用空調装置1における吹出口部45の具体的構成について、
図7等を参照しつつ詳細に説明する。
図7は、
図1におけるVII-VII断面を示しており、吹出口部45dの内部構成を示している。
【0076】
尚、
図7は、吹出口部45dの内部構成を示しているが、吹出口部45a~吹出口部45cの内部構成も同様の構成である。従って、以下の説明では、吹出口部45dを例として、吹出口部45の構成について説明する。
【0077】
図7に示すように、吹出口部45は、第3空気通路40を通過した送風空気が車室Iの内部へ吹き出される部分であり、吹出通路46を有している。当該吹出口部45の開口形状は、車両左右方向に対して上下方向が短い扁平なスリット状に形成されており、車両用空調装置1全体の上下方向の小型化に貢献している。
【0078】
各吹出口部45の吹出通路46は、第3空気通路40の後端部から車両後方側に向かって伸びており、車室Iの内部と連通している。当該吹出通路46の通路断面は、車両左右方向に対して上下方向が短い扁平なスリット状に形成されている。
【0079】
そして、
図7に示すように、当該吹出通路46は、車両後方側に向かうほど下方に位置するように傾斜して伸びている。上述したように、吹出通路46内において、送風空気Fは、車両後方側に向かって流れる為、吹出通路46は、送風空気Fの流れ方向下流側ほど下方に位置するように傾斜している。
【0080】
当該吹出通路46は、上側壁部47と、下側壁部48を含む壁部によって管路状に形成されている。上側壁部47は、吹出通路46の上側にあたる壁部を構成しており、車両後方側ほど下方に位置するように傾斜して伸びている。
【0081】
そして、下側壁部48は、上側壁部47の下方において一定の間隔を隔てて配置されており、吹出通路46の下側にあたる壁部を構成している。下側壁部48は、車両後方側ほど下方に位置するように傾斜して伸びており、上側壁部47と平行を為している。
図7に示すように、上側壁部47の下端部は、下側壁部48の下端部と同じ高さに位置し、水平に並ぶように配置されている。
【0082】
吹出通路46を
図7のように構成することで、上側壁部47には、被覆部47aと、露出部47bが形成される。被覆部47aは、上側壁部47のうち、その下方側の車室Iに対して下側壁部48によって覆われている部分である。露出部47bは、上側壁部47における被覆部47aの下方に位置し、上側壁部47の下方側が車室Iに対して露出している部分である。
【0083】
そして、
図1、
図6等に示すように、吹出通路46の内部には、ガイド部材50が配置されている。当該ガイド部材50は、車両左右方向に回動可能に支持されており、吹出通路46を通過する送風空気Fの流れを車両左右方向へ調整する機能を果たす。当該ガイド部材50の構成については、後に図面を参照しつつ説明する。
【0084】
図7に示すように、上側壁部47の下端部(即ち、露出部47bの下端部)には、下面部49が配置されている。下面部49は、上側壁部47の下端部から車両後方側に向かって水平に伸びている。
【0085】
ここで、吹出通路46の開口形状は、上下方向が短い扁平のスリット形状を為している為、吹出通路46を通過した送風空気Fは、所謂コアンダ効果によって、上側壁部47及び下面部49に沿って、その送風方向を変化させる。従って、吹出通路46を通過した送風空気Fの送風方向は、概ね水平方向に車両Cの後方側に変化して、下面部49の表面に沿って導かれる。
【0086】
そして、下面部49の車両後方側には、フラップ60が配置されている。当該フラップ60は、下面部49の車両後方側において、空調ケース10に対して車両上下方向に回動可能に取り付けられており、下面部49に沿って流れた送風空気Fの送風方向を上下方向へ調整する機能を果たしている。
【0087】
続いて、下面部49の車両後方側に配置されるフラップ60の構成について、
図8を参照しつつ説明する。
図1、
図5、
図6に示すように、当該車両用空調装置1においては、吹出口部45aの車両後方側には、フラップ60aが配置されており、吹出口部45bの車両後方側にはフラップ60bが配置されている。そして、吹出口部45cの車両後方側には、フラップ60cが配置されており、吹出口部45dの車両後方側には、フラップ60dが配置されている。
【0088】
ここで、フラップ60a~フラップ60dは、基本的構成を同じくするものである。従って、
図8及び以下の説明においては、フラップ60dを例として挙げて説明することとし、フラップ60a~フラップ60cに関する説明は省略する。そして、フラップ60はフラップ60a~フラップ60dの総称とする。
【0089】
図8に示すように、当該フラップ60は、平板部61と、補強リブ62と、回動支持部63とを有しており、樹脂成形によって平板部61等が一体に形成されている。平板部61は、上面視においてフラップ60の凡そ全体を占める部分であり、略矩形の平板状に形成されている。
【0090】
当該フラップ60の平板部61における長手方向は、その車両前方側(即ち、送風方向上流側)に位置する吹出口部45の長手方向(車両左右方向)に並行に配置されている。そして、フラップ60における平板部61の下面は、下面部49の表面に沿って流れた送風空気Fを案内する案内面として機能する。
【0091】
図8等に示すように、平板部61の上面には、補強リブ62が配置されている。当該補強リブ62は、平板部61の外縁に沿って配置されている。又、補強リブ62には、平板部61の前側端縁及び後側端縁に沿って配置された補強リブ62を連結するものも含まれている。これらの補強リブ62は、フラップ60における平板部61を補強して、平板部61の変形を抑制して平坦な状態を維持する機能を果たしている。
【0092】
回動支持部63は、空調ケース10に対してフラップ60を上下方向に回動可能に支持する為の部分である。当該回動支持部63は、フラップ60における左右両側において、車両前側に配置されている。
【0093】
そして、回動支持部63は平板状に形成されており、その法線方向は車両左右方向に沿っている。当該回動支持部63には、車両左右方向に貫通する円形の支持穴が形成されている。当該支持穴には、空調ケース10において下面部49の後方に形成された円柱状の軸部が挿通される。これにより、フラップ60は、吹出口部45の車両後方側において、空調ケース10に対して車両上下方向へ回動可能に取り付けられる。
【0094】
次に、本実施形態に係る車両用空調装置1において、吹出口部45から吹き出された送風空気Fの流れの調整について、
図7を参照しつつ説明する。
図7に示すように、吹出口部45から吹き出された送風空気Fは、いわゆるコアンダ効果によって、上側壁部47の下端部と下面部49に沿って、その流れ方向を変化させる。これにより、送風空気Fは、下面部49の表面に沿って、概ね水平方向に車両後方側に向かって流れ、フラップ60に到達する。
【0095】
フラップ60が下面部49の表面に沿って水平な状態になっている場合、フラップ60における平板部61の下面は、下面部49の表面と同一の平面上に位置している。この場合、
図7にて破線で示すように、下面部49に沿って車両後方側へ流れる送風空気Fは、フラップ60における平板部61の下面に沿って水平方向に流れた後、車室Iを車両用空調装置1の後方側へ向かって送風される。
【0096】
つまり、この場合の車両用空調装置1は、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を、車両Cの後方側へ水平に案内する為、車室I内において最も後方に、送風空気Fを供給することができる。例えば、このように調整した場合、車両用空調装置1は、吹出口部45から吹き出された送風空気Fを、最も後方に配置された三列目シートScの乗員Pに供給することができる。
【0097】
続いて、フラップ60の回動操作を行い、フラップ60の傾斜角度を変更した場合について説明する。上述したように、フラップ60は円柱状の軸部を中心として、空調ケース10に対して回動可能に支持されている為、車両Cの乗員Pは、フラップ60の後方側を把持して、軸部周りに上下方向へ回動させることができる。これにより、乗員Pは下面部49に対するフラップ60の下面の傾斜角度を任意に調整することができる。
【0098】
図7にて一点鎖線で示すように、フラップ60の後方側が引き下げられた状態に回動操作が行われた場合、吹出口部45から吹き出された送風空気Fは、下面部49に沿って車両後方側へ流れ、フラップ60の下面に到達する。
【0099】
この時、フラップ60の後方側が引き下げられた状態である為、送風空気Fは、フラップ60における平板部61の下面に沿って、車両用空調装置1の後方側且つ下方側に向かって流れる。
【0100】
つまり、この場合の車両用空調装置1は、フラップ60が下面部49の表面に沿って水平な状態になっている場合によりも前方に、吹出口部45から吹き出される送風空気Fを供給することができる。例えば、このように調整した場合、車両用空調装置1は、吹出口部45から吹き出された送風空気Fを、三列目シートScよりも前方に配置された二列目シートSbの乗員Pに供給することができる。
【0101】
このように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、フラップ60の上下方向への回動操作によって調整された傾斜角度に応じて、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を上下方向へ任意に調整することができる。この結果、当該車両用空調装置1によれば、吹出口部45から吹き出された送風空気Fの供給先を、車室Iの内部において車両前後方向に調整することができる。
【0102】
次に、各吹出口部45の吹出通路46に配置されるガイド部材50の構成について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、
図1におけるIX-IX断面を示しており、吹出口部45dの内部におけるガイド部材50dの構成を示している。
図10は、
図9におけるガイド部材50の周辺に関する拡大図である。
【0103】
尚、
図9は、
図7と同様に、吹出口部45dの内部におけるガイド部材50dの構成を示しているが、吹出口部45a、吹出口部45b、吹出口部45cにおけるガイド部材50a、ガイド部材50b、ガイド部材50cの構成も同様の構成である。
【0104】
従って、以下の説明においては、吹出口部45dの内部におけるガイド部材50dを例として、吹出口部45におけるガイド部材50の構成について説明する。ガイド部材50は、ガイド部材50a~ガイド部材50dの総称である。
【0105】
図1、
図5、
図6等に示すように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、吹出口部45a~吹出口部45dにおける吹出通路46の内部に、ガイド部材50a~ガイド部材50dを有している。各ガイド部材50は、吹出通路46の内部に沿って伸びる平板状に形成されており、上側壁部47に配置された支持部55を中心として回動可能に取り付けられている。
【0106】
上述したように、各吹出口部45における吹出通路46は、車両上下方向の寸法が車両幅方向の寸法よりも短い扁平状の開口形状を為すように構成されている。各ガイド部材50は、長手寸法を予め定められた長さLとし、短手寸法を吹出通路46の車両上下方向の寸法よりもやや短い平板状に形成されている。
【0107】
図9、
図10に示すように、各ガイド部材50は、吹出通路46における上側壁部47に配置された支持部55によって回動可能に支持されている。支持部55における回動軸は、上側壁部47に対して鉛直を為している。従って、各ガイド部材50は、吹出口部45における吹出通路46の内部において、支持部55を中心として車両左右方向へ回動可能に取り付けられている。車両幅方向(車両左右方向)は、第1方向に相当する車両前後方向に対して直角に交差しており、第2方向に相当する。
【0108】
各ガイド部材50は、吹出通路46を通過する送風空気Fの流れを導く為の導風部51と、吹出通路46の内部にて当該ガイド部材50を車両幅方向に回動させる際に操作されるツマミ操作部52とを有している。
【0109】
ガイド部材50における導風部51は、吹出通路46における送風空気Fの送風方向に関して、支持部55よりも上流側に位置している。
図9、
図10に示すように、導風部51の大部分は、上側壁部47と下側壁部48の間に位置している。換言すると、導風部51は、吹出通路46の内部にて、上側壁部47の被覆部47aの下方に位置している。
【0110】
当該導風部51は、吹出通路46を通過する空気の流れを導く機能を有しており、吹出通路46の内部における車両幅方向の位置に応じて、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を車両幅方向に調整する。
【0111】
ツマミ操作部52は、車両幅方向へのガイド部材50の回動操作に際して、乗員Pによってつままれる部分である。
図9、
図10に示すように、当該ツマミ操作部52は、吹出通路46における送風空気Fの送風方向に関して、導風部51及び支持部55よりも下流側に位置している。ツマミ操作部52は操作部に相当する。
【0112】
即ち、当該ツマミ操作部52は、吹出口部45の上側壁部47において、露出部47bの下方に位置しており、露出部47bに臨む位置に配置されている。この為、ツマミ操作部52は、下側壁部48によって妨げられることなく、車室Iの内部に面している。
【0113】
従って、車両Cの内部の乗員Pは、車両用空調装置1の下方から、容易にツマミ操作部52をつまむことができ、車両左右方向へのガイド部材50の回動操作を行うことができる。これにより、当該車両用空調装置1によれば、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を、車両幅方向における任意の方向に容易に調整することができる。
【0114】
又、
図9、
図10に示すように、ガイド部材50のツマミ操作部52は、上側壁部47及び下側壁部48の下端よりも上方で、上側壁部47における露出部47bの下方に形成されるデッドスペースを有効に活用して配置される。当該ガイド部材50は、空調ケース10の下方に大きく突出することはない為、当該車両用空調装置1は、車両上下方向における車両用空調装置1自体の小型化及び、車室Iにおける居住空間の確保に貢献することができる。
【0115】
そして、支持部55は、吹出通路46の上側壁部47において、露出部47bに配置されており、ガイド部材50を車両幅方向へ回動可能に支持している。当該支持部55は、ガイド部材50の全長Lに対してツマミ操作部52の側に偏った位置において、当該ガイド部材50に取り付けられている。
【0116】
この為、支持部55を中心として、車両幅方向へガイド部材50を回動させた場合に、導風部51側の移動量は、ツマミ操作部52側の移動量よりも大きくなる。即ち、当該車両用空調装置1によれば、ツマミ操作部52に対する少ない回動操作によって、導風部51を大きく回動させることができ、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を、車両幅方向へ効率よく調整することができる。
【0117】
続いて、本実施形態に係る車両用空調装置1において、吹出口部45の吹出通路46内部における送風空気Fの流れの調整について、
図11、
図12を参照しつつ説明する。上述したように、当該車両用空調装置1において、第2空気通路35を流れた送風空気Fは、車両左側及び車両右側において、第3空気通路40に流入して、それぞれ分配部材41によって吹出口部45毎に分配される。
【0118】
車両用空調装置1の車両右側に配置された吹出口部45a、吹出口部45bには、車両右側に配置された分配部材41で分配された送風空気Fが流入する。ここで、車両右側の分配部材41は、第2空気通路35を車両右側へ流れた送風空気を均等に分配して、吹出口部45aと吹出口部45bへ導くように配置されている。
【0119】
そして、車両用空調装置1の車両左側に配置された吹出口部45c、吹出口部45dには、車両左側に配置された分配部材41で分配された送風空気Fが流入する。ここで、車両左側の分配部材41は、第2空気通路35を車両左側へ流れた送風空気を均等に分配して、吹出口部45cと吹出口部45dへ導くように配置されている。
【0120】
図11、
図12に示すように、各分配部材41は、その前方側端部(即ち、送風空気Fの送風方向上流側の端部)が予め定められた前側間隔Df及び内側間隔Diとなるように配置される。前側間隔Dfは、分配部材41の前方側端部と空調ケース10の車両前方側における内壁面との間隔を指し、内側間隔Diは、車両幅方向内側に対する分配部材41の前方側端部との間隔を意味する。
【0121】
車両右側の分配部材41における前側間隔Dfは、吹出口部45aに流入する送風空気Fの風量に対応し、内側間隔Diは、吹出口部45bに流入する送風空気Fの風量に対応している。車両右側の分配部材41における前側間隔Df及び内側間隔Diは、吹出口部45aにおける送風空気Fの風量と吹出口部45bにおける送風空気Fの風量が均等になるように定められている。
【0122】
一方、車両左側の分配部材41における内側間隔Diは、吹出口部45cに流入する送風空気Fの風量に対応し、前側間隔Dfは、吹出口部45dに流入する送風空気Fの風量に対応している。車両左側の分配部材41における前側間隔Df及び内側間隔Diは、吹出口部45cにおける送風空気Fの風量と吹出口部45dにおける送風空気Fの風量が均等になるように定められている。
【0123】
即ち、当該車両用空調装置1は、車両幅方向に並んで配置された吹出口部45a~吹出口部45dから、相互に均等な風量で送風空気Fが吹き出されるように構成されている。そして、各吹出口部45a~吹出口部45dの吹出通路46の内部に、ガイド部材50が夫々車両幅方向に回動可能に取り付けられている。
【0124】
車両幅方向に対するガイド部材50の回動操作が行われると、吹出通路46の内部における導風部51の位置及び姿勢が車両幅方向に変化する。この為、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向は、支持部55を中心としたガイド部材50の回動操作によって、車両幅方向の任意の方向へ変化する。
【0125】
そして、
図11、
図12に示すように、吹出口部45a、吹出口部45b、吹出口部45c、吹出口部45dには、ガイド部材50a、ガイド部材50b、ガイド部材50c、ガイド部材50dが配置されており、それぞれ独立して車両幅方向へ回動可能に取り付けられている。
【0126】
従って、当該車両用空調装置1によれば、車両幅方向に並んで配置された複数の吹出口部45(即ち、吹出口部45a~吹出口部45d)から吹き出される送風空気Fの送風方向を、各ガイド部材50を車両幅方向へ回動操作することで、個別に車両幅方向の任意の方向へ調整することができる。
【0127】
そして、当該車両用空調装置1において、各吹出口部45の車両後方側には、各フラップ60が車両上下方向に回動可能に配置されており、フラップ60を車両上下方向に回動させることで、吹出口部45から吹き出された送風空気Fの送風方向を、車両上下方向の任意の方向へ調整することができる。
【0128】
即ち、当該車両用空調装置1によれば、車両幅方向に並んで配置された4つの吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を、車両幅方向及び車両上下方向の任意の方向に調整することができる。
【0129】
これにより、当該車両用空調装置1は、車室Iにおける車両用空調装置1よりも車両後方側において、各吹出口部45から吹き出される送風空気Fを任意の位置に供給したり、任意の位置を外して供給したりすることができる。送風空気Fに関する様々な供給態様を実現することで、当該車両用空調装置1は、車室Iにおける各乗員Pの要望にそれぞれ対応することができ、各乗員Pの快適性を高めることができる。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、車両Cの天井部Rに配置されており、空調ケース10内部に送風機20や蒸発器70を収容して構成されている。当該車両用空調装置1は、送風機20の作動に伴い空調ケース10内部を流れる送風空気Fを、蒸発器70によって温度調整して車両Cの車室Iの内部に供給して、車室I内の乗員Pの快適性を向上させることができる。
【0131】
又、車両用空調装置1によれば、各吹出口部45を車両左右方向に対して上下方向が短い扁平なスリット状に形成している為、装置全体としての上下方向のサイズを小型化することができ、車室Iにおける居住空間を広く確保することができる。
【0132】
図9~
図12等に示すように、当該車両用空調装置1には、車両上下方向が短い扁平なスリット状に形成された吹出口部45の吹出通路46の内部に、ガイド部材50が車両幅方向に回動可能に配置されている。
【0133】
この為、当該車両用空調装置1は、上下方向が短い扁平なスリット状に形成された吹出口部45の場合においても、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの流れを、車両幅方向の任意の方向へ調整することができ、車両幅方向に関して乗員Pの望む送風態様を実現することができる。
【0134】
図10に示すように、ガイド部材50のツマミ操作部52は、上側壁部47における露出部47bに臨む位置に配置されている。この為、当該車両用空調装置1によれば、吹出口部45を上下方向が短い扁平なスリット状に形成した場合であっても、車室Iの乗員Pが下方からガイド部材50のツマミ操作部52に容易にアクセスすることができる。
【0135】
これにより、当該車両用空調装置1は、車両幅方向に対するガイド部材50の操作性を向上させることができ、車室Iの内部における車両幅方向に関する風向き調整を精度よく実行することができる。
【0136】
図10に示すように、ガイド部材50は、上側壁部47における露出部47bに配置された支持部55によって、車両幅方向へ回動可能に支持されている。又、当該支持部55は、ガイド部材50の全体に対してツマミ操作部52の側に偏った位置にて、ガイド部材50を支持している。この為、ガイド部材50が車両幅方向に回動した場合に、導風部51側の移動量は、ツマミ操作部52側の移動量よりも大きくなる。
【0137】
従って、当該車両用空調装置1によれば、車両幅方向に対するガイド部材50の回動操作に関して、ツマミ操作部52に対する小さな操作で、吹出口部45から吹き出される送風空気Fの送風方向を、車両幅方向へ大きく変化させることができる。
【0138】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態の構成を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
【0139】
(1)上述した実施形態において、車両用空調装置1は、蒸発器70にて冷却した送風空気Fを吹出口部45から車室I内に供給する構成であったが、この態様に限定されるものではない。例えば、送風空気Fの温度を調整する構成として、冷凍サイクル装置の凝縮器やヒータコア等の熱交換器を用いて、送風空気を加熱しても良い。又、送風空気Fの温度調整を行う為の構成として、ペルチェ素子や電熱ヒータ等を採用しても良い。
【0140】
更に、当該車両用空調装置1は、送風空気Fの温度調整を必ずしも行う必要はなく、空調ケース10内に吸い込んだ空気を、そのまま吹出口部45から吹き出す構成(即ち、サーキュレータ)として構成することも可能である。
【0141】
(2)又、上述した実施形態においては、第3空気通路40に沿って車両後方側に向かって送風空気Fを吹き出すように構成し、ガイド部材50の回動操作によって、送風空気Fの送風方向を車両幅方向(車両左右方向)の任意の方向へ調整していたが、この態様に限定されるものではない。
【0142】
上述した実施形態のように、車両前後方向を第1方向、車両幅方向を第2方向とした態様ではなく、第1方向、第2方向として種々の方向を採用できる。例えば、車両幅方向が第1方向、車両前後方向が第2方向となるように、車両Cの天井部Rに車両用空調装置1を配置しても良い。
【0143】
(3)そして、上述した実施形態では、空調ケース10における送風空気Fの空気通路として、第1空気通路30、第2空気通路35、第3空気通路40を有する構成であったが、この態様に限定されるものではない。吹出口部45の構成が上述した態様であればよく、その上流側にあたる空気通路の構成は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 車両用空調装置
10 空調ケース
20 送風機
45 吹出口部
46 吹出通路
47 上側壁部
47a 被覆部
47b 露出部
50 ガイド部材
52 ツマミ操作部